(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光路選択機構は、前記第2受光ファイバーを前記分光器または前記光源のいずれか一方に選択的に接続する光路切り替え装置であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜厚測定装置。
前記光路選択機構は、前記第2受光ファイバーと前記分光器との間に配置されたシャッター機構であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜厚測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド1を支持する研磨テーブル3と、ウェハWを保持しウェハWを研磨テーブル3上の研磨パッド1に押し付ける研磨ヘッド5と、研磨パッド1に研磨液(例えばスラリー)を供給するための研磨液供給ノズル10と、ウェハWの研磨を制御する研磨制御部12とを備えている。
【0017】
研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるテーブルモータ19に連結されており、このテーブルモータ19により研磨テーブル3が矢印で示す方向に回転されるようになっている。この研磨テーブル3の上面には研磨パッド1が貼付されており、研磨パッド1の上面がウェハWを研磨する研磨面1aを構成している。研磨ヘッド5は研磨ヘッドシャフト16の下端に連結されている。研磨ヘッド5は、真空吸引によりその下面にウェハWを保持できるように構成されている。研磨ヘッドシャフト16は、図示しない上下動機構により上下動できるようになっている。
【0018】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド5および研磨テーブル3をそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル10から研磨パッド1上に研磨液(スラリー)を供給する。この状態で、研磨ヘッド5は、ウェハWを研磨パッド1の研磨面1aに押し付ける。ウェハWの表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により研磨される。
【0019】
研磨装置は、ウェハWの膜厚を測定する光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)25を備えている。この光学式膜厚測定器25は、光を発する光源30と、研磨テーブル3内の所定の位置に配置された先端34aを有する投光ファイバー34と、研磨テーブル3内の前記所定の位置に配置された先端50aを有する第1受光ファイバー50Aと、第1受光ファイバー50Aの先端50aの周りに配置された複数の先端50bを有する第2受光ファイバー50Bと、ウェハWからの反射光を波長に従って分解して各波長での反射光の強度を測定する分光器26と、反射光の強度と波長との関係を示す分光波形を生成し、分光波形に基づいてウェハの膜厚を決定する処理部27を備えている。
図1では、光ファイバー34,50A,50Bの先端34a,50a,50bの配列は模式的に描かれている。処理部27は研磨制御部12に接続されている。本実施形態においては、研磨テーブル3は、ウェハWの膜厚測定中にウェハWを支持するためのウェハ支持構造体を構成する。
【0020】
光ファイバー34,50A,50Bの先端34a,50a,50bは研磨テーブル3の表面3bから突出しないように配置され、研磨テーブル3の表面3bから先端34a,50a,50bまでの距離はほぼ同一(0〜3mmの範囲)になるように揃えている。また、先端34a,50a,50bの形状は、研磨テーブル3の表面3bに対して水平または傾斜していてもよい。
【0021】
投光ファイバー34は光源30に接続されており、光源30から発せられた光をウェハWの表面に導くように配置されている。第1受光ファイバー50Aは分光器26に接続され、第2受光ファイバー50Bは光路選択機構70に接続されている。光路選択機構70は、第2受光ファイバー50Bと分光器26とを光学的に接続および切り離す装置である。
【0022】
投光ファイバー34の先端34aと、第1受光ファイバー50Aの先端50aと、第2受光ファイバー50Bの先端
50bは、互いに隣接しており、これらの先端34a,50a,50bは光センサ61を構成する。研磨パッド1は、光センサ61の上方に位置する通孔1bを有しており、光センサ61は通孔1bを通じて研磨パッド1上のウェハWに光を導き、ウェハWからの反射光を受けることができるようになっている。研磨パッド1の通孔1bは、光を透過させる透明な材料で塞がれてもよい。
【0023】
一実施形態では、投光ファイバー34は研磨テーブル3内の異なる位置に配置された複数の先端を有してもよく、同様に第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bは研磨テーブル3内の前記異なる位置に配置された複数の先端をそれぞれ有してもよい。この場合も、投光ファイバー34の先端と受光ファイバー50A,50Bの先端は互いに隣接して配置され、投光ファイバー34の先端と受光ファイバー50A,50Bの先端は、研磨パッド1上のウェハWに光を導き、ウェハWからの反射光を受ける複数の光センサを構成する。
【0024】
図2は、研磨パッド1および研磨テーブル3を示す上面図である。光センサ61は、研磨テーブル3が一回転するたびにウェハWを横切る。本実施形態では、研磨テーブル3の中心からの光センサ61の距離は、研磨テーブル3の中心からの研磨ヘッド5の中心までの距離に等しい。したがって、光センサ61は、研磨テーブル3が一回転するたびにウェハWの中心を横切りながら、ウェハWに光を導き、ウェハWからの反射光を受ける。
【0025】
図1に戻り、光路選択機構70および分光器26は、処理部27に電気的に接続されている。ウェハWの研磨中は、投光ファイバー34から光がウェハWに照射され、第1受光ファイバー50A(および第2受光ファイバー50B)によってウェハWからの反射光が受光される。反射光は分光器26に伝達される。分光器26は、反射光を波長に従って分解して各波長での反射光の強度を所定の波長範囲に亘って測定し、得られた光強度データを処理部27に送る。この光強度データは、ウェハWの膜厚を反映した光学信号であり、反射光の強度及び対応する波長から構成される。処理部27は、光強度データから波長ごとの光の強度を表わす分光波形を生成する。
【0026】
図3は、光学式膜厚測定器25の原理を説明するための模式図である。
図3に示す例では、ウェハWは、下層膜と、その上に形成された上層膜とを有している。上層膜は、例えばシリコン層または絶縁膜などの、光の透過を許容する膜である。ウェハWに照射された光は、媒質(
図3の例では水)と上層膜との界面、および上層膜と下層膜との界面で反射し、これらの界面で反射した光の波が互いに干渉する。この光の波の干渉の仕方は、上層膜の厚さ(すなわち光路長)に応じて変化する。このため、ウェハWからの反射光から生成される分光波形は、上層膜の厚さに従って変化する。
【0027】
分光器26は、反射光を波長に従って分解し、反射光の強度を波長ごとに測定する。処理部27は、分光器26から得られた反射光の強度データ(光学信号)から分光波形を生成する。この分光波形は、光の波長と強度との関係を示す線グラフとして表される。光の強度は、後述する相対反射率などの相対値として表わすこともできる。
【0028】
図4は、分光波形の一例を示すグラフである。
図4において、縦軸はウェハWからの反射光の強度を示す相対反射率を表し、横軸は反射光の波長を表す。相対反射率とは、反射光の強度を示す指標値であり、光の強度と所定の基準強度との比である。各波長において光の強度(実測強度)を所定の基準強度で割ることにより、装置の光学系や光源固有の強度のばらつきなどの不要なノイズが実測強度から除去される。
【0029】
基準強度は、各波長について予め測定された光の強度であり、相対反射率は各波長において算出される。具体的には、各波長での光の強度(実測強度)を、対応する基準強度で割り算することにより相対反射率が求められる。基準強度は、例えば、光センサ61から発せられた光の強度を直接測定するか、または光センサ61から鏡に光を照射し、鏡からの反射光の強度を測定することによって得られる。あるいは、基準強度は、膜が形成されていないシリコンウェハ(ベアウェハ)を研磨パッド1上で水の存在下で水研磨しているとき、または上記シリコンウェハ(ベアウェハ)が研磨パッド1上に置かれているときに分光器26により測定されたシリコンウェハからの反射光の強度としてもよい。実際の研磨では、実測強度からダークレベル(光を遮断した条件下で得られた背景強度)を引き算して補正実測強度を求め、さらに基準強度から上記ダークレベルを引き算して補正基準強度を求め、そして、補正実測強度を補正基準強度で割り算することにより、相対反射率が求められる。具体的には、相対反射率R(λ)は、次の式(1)を用いて求めることができる。
【数1】
ここで、λは波長であり、E(λ)はウェハから反射した光の波長λでの強度であり、B(λ)は波長λでの基準強度であり、D(λ)は光を遮断した条件下で測定された波長λでの背景強度(ダークレベル)である。
【0030】
処理部27は、分光波形にフーリエ変換処理(例えば、高速フーリエ変換処理)を行って周波数スペクトルを生成し、周波数スペクトルからウェハWの膜厚を決定する。
図5は、
図4に示す分光波形にフーリエ変換処理を行って得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
図5において、縦軸は分光波形に含まれる周波数成分の強度を表し、横軸は膜厚を表す。周波数成分の強度は、正弦波として表される周波数成分の振幅に相当する。分光波形に含まれる周波数成分は、所定の関係式を用いて膜厚に変換され、
図5に示すような膜厚と周波数成分の強度との関係を示す周波数スペクトルが生成される。上述した所定の関係式は、周波数成分を変数とした、膜厚を表す一次関数であり、膜厚の実測結果または光学的膜厚測定シミュレーションなどから求めることができる。
【0031】
図5に示すグラフにおいて、周波数成分の強度のピークは膜厚t1で現れる。言い換えれば、膜厚t1において、周波数成分の強度が最も大きくなる。つまり、この周波数スペクトルは、膜厚がt1であることを示している。このようにして、処理部27は、周波数成分の強度のピークに対応する膜厚を決定する。
【0032】
処理部27は、膜厚測定値として膜厚t1を研磨制御部12に出力する。研磨制御部12は、処理部27から送られた膜厚t1に基づいて研磨動作(例えば、研磨終了動作)を制御する。例えば、研磨制御部12は、膜厚t1が予め設定された目標値に達したときに、ウェハWの研磨を終了する。
【0033】
図6は、光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)25の一実施形態を示す拡大図である。投光ファイバー34は、複数の投光素線光ファイバー36を有しており、投光素線光ファイバー36の複数の先端は、投光ファイバー34の先端34aを構成する。投光素線光ファイバー36の光源側端部は、光源30に接続されている。第1受光ファイバー50Aの先端50a、投光ファイバー34の先端34a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bは光センサ61を構成する。第1受光ファイバー50Aの反対側の端部は分光器26に接続されている。第2受光ファイバー50Bは、複数の受光素線光ファイバー56を有しており、受光素線光ファイバー56の複数の先端は、第2受光ファイバー50Bの先端50bを構成する。第2受光ファイバー50Bの反対側の端部は、光路選択機構70に接続されている。本実施形態では、第1受光ファイバー50Aは1本の素線光ファイバーから構成される。
【0034】
本実施形態の光路選択機構70は、第2受光ファイバー50Bを、光源30または分光器26のいずれか一方に光学的に接続する光路切り替え装置である。光路選択機構70は、光源30に接続された第1接続ファイバー74Aと、分光器26に接続された第2接続ファイバー74Bと、第2受光ファイバー50Bを第1接続ファイバー74Aまたは第2接続ファイバー74Bのいずれか一方に接続する光スイッチ75を備えている。第1接続ファイバー74Aの一方の端部は光源30に接続され、他方の端部は光スイッチ75に接続されている。第2接続ファイバー74Bの一方の端部は分光器26に接続され、他方の端部は光スイッチ75に接続されている。第2受光ファイバー50Bの端部は光スイッチ75に接続されている。
【0035】
光スイッチ75は、図示しないピエゾ素子などのアクチュエータを備えており、アクチュエータは、第2受光ファイバー50Bの端部を移動させて、第1接続ファイバー74Aの端部または第2接続ファイバー74Bの端部のいずれか一方の端部に対向させる。第2受光ファイバー50Bの端部が第1接続ファイバー74Aの端部に対向しているとき、第2受光ファイバー50Bは分光器26から光学的に切り離され、光源30に光学的に接続される。第2受光ファイバー50Bの端部が第2接続ファイバー74Bの端部に対向しているとき、第2受光ファイバー50Bは光源30から光学的に切り離され、分光器26に光学的に接続される。光スイッチ75は処理部27に電気的に接続されており、光スイッチ75の動作は処理部27によって制御される。
【0036】
一実施形態では、アクチュエータは、第1接続ファイバー74Aおよび第2接続ファイバー74Bを一体に移動させて、第1接続ファイバー74Aの端部または第2接続ファイバー74Bの端部のいずれか一方を第2受光ファイバー50Bの端部に対向させてもよい。
【0037】
光スイッチ75が作動して第2受光ファイバー50Bを第1接続ファイバー74Aを介して光源30に光学的に接続すると、光源30から発せられた光は、第1接続ファイバー74Aおよび第2受光ファイバー50Bを通ってウェハWの表面に導かれる。このとき、第2受光ファイバー50Bは投光ファイバーとして機能する。光スイッチ75が作動して第2受光ファイバー50Bを第2接続ファイバー74Bを介して分光器26に光学的に接続すると、ウェハWからの反射光は第2受光ファイバー50Bおよび第2接続ファイバー74Bを通って分光器26に伝達される。
【0038】
投光素線光ファイバー36および第1接続ファイバー74Aの一部は、結束具31で束ねられた幹ファイバー35を構成している。幹ファイバー35は、光源30に接続されている。投光素線光ファイバー36および第1接続ファイバー74Aの他の部分は、幹ファイバー35から分岐した枝ファイバーを構成している。
【0039】
図6に示す実施形態では、1本の幹ファイバー35が2本の枝ファイバーに分岐しているが、素線光ファイバーを追加することにより、3本以上の枝ファイバーに分岐することも可能である。さらに、素線光ファイバーを追加することにより、ファイバーの径を簡単に大きくすることができる。このような多数の素線光ファイバーから構成されるファイバーは、曲げやすく、かつ折れにくいという利点を備えている。
【0040】
投光ファイバー34の先端34aは投光素線光ファイバー36の複数の先端から構成され、第2受光ファイバー50Bの先端50bは受光素線光ファイバー56の複数の先端から構成されている。投光ファイバー34の先端34a、第1受光ファイバー50Aの先端50a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bは結束具51で結束され、光センサ61を構成する。
【0041】
図7は、光センサ61を構成する投光ファイバー34の先端34a、第1受光ファイバー50Aの先端50a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bの配置の一例を示す図である。第2受光ファイバー50Bの複数の先端50bは第1受光ファイバー50Aの先端50aの周りに配置され、かつ第1受光ファイバー50Aの先端50aに接触している。投光ファイバー34の複数の先端34aは第2受光ファイバー50Bの複数の先端50bの周りに配置されている。
【0042】
光路選択機構70が第2受光ファイバー50Bを光源30に光学的に接続すると、第2受光ファイバー50Bは投光ファイバーとして機能し、
図8(a)に示すように、第2受光ファイバー50Bの先端50bは光をウェハに導く。
図8(a)および
図8(b)において、白丸は光をウェハに導く光ファイバーを示し、黒丸はウェハからの反射光を受ける光ファイバーを示している。
図8(a)に示す例では、第1受光ファイバー50Aの先端50aのみが反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aのみを通って分光器26に伝達される。
【0043】
光路選択機構70が第2受光ファイバー50Bを分光器26に光学的に接続すると、
図8(b)に示すように、第2受光ファイバー50Bの先端50bはウェハからの反射光を受け取る。
図8(b)に示す例では、第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの先端50a,50bの両方が反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの両方を通って分光器26に伝達される。
【0044】
図8(a)と
図8(b)との対比から分かるように、光路選択機構70は、光センサ61の受光領域の大きさ(または面積)を変化させることができる。一般に、膜厚測定領域の大きさは、ウェハからの反射光を受ける受光領域の大きさに依存する。本実施形態によれば、ウェハの表面に形成されているデバイスや膜などの構造体の種類に基づいて受光領域、すなわち膜厚測定領域の適切な大きさを選択することができる。結果として、膜厚測定器25は正確な膜厚を測定することができる。
【0045】
図9は、光センサ61を構成する投光ファイバー34の先端34a、第1受光ファイバー50Aの先端50a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bの配置の他の例を示す図である。本実施形態は、第2受光ファイバー50Bの複数の先端50bが第1受光ファイバー50Aの先端50aの周りに配置されている点では
図7に示す実施形態と同じであるが、第2受光ファイバー50Bの複数の先端50bは第1受光ファイバー50Aの先端50aから離れている点で異なっている。投光ファイバー34の複数の先端34aは第1受光ファイバー50Aの先端50aの周りに配置されている。
【0046】
光路選択機構70が第2受光ファイバー50Bを光源30に光学的に接続すると、第2受光ファイバー50Bは投光ファイバーとして機能し、
図10(a)に示すように、第2受光ファイバー50Bの先端50bは光をウェハに導く。
図10(a)および
図10(b)において、白丸は光をウェハに導く光ファイバーを示し、黒丸はウェハからの反射光を受ける光ファイバーを示している。
図10(a)に示す例では、第1受光ファイバー50Aの先端50aのみが反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aのみを通って分光器26に伝達される。
【0047】
光路選択機構70が第2受光ファイバー50Bを分光器26に光学的に接続すると、
図10(b)に示すように、第2受光ファイバー50Bの先端50bはウェハからの反射光を受け取る。
図10(b)に示す例では、第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの先端50a,50bの両方が反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの両方を通って分光器26に伝達される。
【0048】
この例においても、
図10(a)と
図10(b)との対比から分かるように、光路選択機構70は、光センサ61の受光領域の大きさ(または面積)を変化させることができる。なお、
図7および
図9に示す光ファイバーの配列は例であって、本発明はこれらの例に限定されない。
【0049】
第2受光ファイバー50Bを光源30に接続するか、または分光器26に接続するかは、ウェハの表面に形成されているデバイスや膜などの構造体の種類に基づいてウェハの研磨前に予め決定される。処理部27は、ウェハの研磨前に光路選択機構70を操作して第2受光ファイバー50Bを光源30または分光器26に接続する。さらに、ウェハの研磨中に処理部27は光路選択機構70を操作して、第2受光ファイバー50Bを光源30および分光器26のうちのいずれか一方から切り離し、他方に接続してもよい。例えば、ウェハの上層膜が除去されて下層膜が露出したときに、処理部27は光路選択機構70を操作して、第2受光ファイバー50Bを分光器26から切り離し、光源30に接続してもよい。このような動作により、ウェハの露出面の構造に基づいた正確な膜厚測定が可能となる。
【0050】
図11は、光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)25の他の実施形態を示す拡大図である。
図12は、
図11に示す投光ファイバー34の先端34a、第1受光ファイバー50Aの先端50a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bの配置の一実施形態を示す図であり、
図13は、
図11に示す投光ファイバー34の先端34a、第1受光ファイバー50Aの先端50a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bの配置の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1乃至
図10を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0051】
図11乃至
図13に示す実施形態では、第1受光ファイバー50Aは複数の先端50aを有し、これら先端50aは第2受光ファイバー50Bの先端50bの周りに配置されている。これらの実施形態でも、処理部27は、光路選択機構70を操作して第2受光ファイバー50Bを光源30または分光器26に接続することによって、光センサ61の受光領域の大きさ(または面積)を変化させることができる。
【0052】
図14は、光路選択機構70の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図6に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、光路選択機構70は、分光器26と第2受光ファイバー50Bとの間に配置されたシャッター機構である。シャッター機構として機能する光路選択機構70は、分光器26に接続された接続ファイバー74Cと、第2受光ファイバー50Bと接続ファイバー74Cとの間に配置されたシャッター78と、シャッター78を開閉させるアクチュエータ79を備えている。
【0053】
接続ファイバー74Cの一方の端部は分光器26に接続され、他方の端部は第2受光ファイバー50Bの端部に対向している。接続ファイバー74Cの端部と第2受光ファイバー50Bの端部との間には隙間がある。シャッター78がこの隙間内にある位置は、シャッター78が閉じた位置であり、シャッター78がこの隙間外にある位置は、シャッター78が開いた位置である。シャッター78は、スライド式でもよく、あるいは通孔が形成された回転プレートを備えた回転式でもよく、あるいは複数の羽根を備えたダイヤフラム式でもよい。一実施形態では、接続ファイバー74Cを省略し、分光器26上にシャッター78を配置してもよい。
【0054】
アクチュエータ79がシャッター78を開くと、第2受光ファイバー50Bは接続ファイバー74Cに光学的に接続され、アクチュエータ79がシャッター78を閉じると第2受光ファイバー50Bは接続ファイバー74Cから光学的に切り離される。より具体的には、シャッター78が第2受光ファイバー50Bと接続ファイバー74Cとから離れているとき(すなわちシャッター78が開いているとき)、第2受光ファイバー50Bは分光器26に接続ファイバー74Cを介して光学的に接続される。シャッター78が第2受光ファイバー50Bと接続ファイバー74Cとの間に位置しているとき(すなわちシャッター78が閉じているとき)、第2受光ファイバー50Bは分光器26から光学的に切り離される。アクチュエータ79は処理部27に電気的に接続されており、アクチュエータ79の動作は処理部27によって制御される。
【0055】
図15(a)は、
図7に示す光ファイバー配列の場合においてシャッター78を閉じたときの各光ファイバーの役割を説明するための図である。シャッター78が閉じて第2受光ファイバー50Bが分光器26から切り離されているとき、ウェハからの反射光はシャッター78に遮られて分光器26まで到達しない。
図15(a)および
図15(b)において、白丸は光をウェハに導いている光ファイバーを示し、黒丸はウェハからの反射光を分光器26に導いている光ファイバーを示し、×が付された丸記号は、反射光がシャッター78により遮られている光ファイバーを示している。
図15(a)に示す例では、第1受光ファイバー50Aの先端50aのみが反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aのみを通って分光器26に伝達される。
【0056】
図15(b)は、
図7に示す光ファイバー配列の場合においてシャッター78を開いたときの各光ファイバーの役割を説明するための図である。シャッター78が開いて第2受光ファイバー50Bが分光器26に接続されているとき、ウェハからの反射光は第2受光ファイバー50Bを通って分光器26まで到達する。
図15(b)に示す例では、第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの先端50a,50bの両方が反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの両方を通って分光器26に伝達される。
【0057】
図15(a)と
図15(b)との対比から分かるように、シャッター78を備えた光路選択機構70は、光センサ61の受光領域の大きさ(または面積)を変化させることができる。
【0058】
図16(a)は、
図9に示す光ファイバー配列の場合においてシャッター78を閉じたときの各光ファイバーの役割を説明するための図である。シャッター78が閉じて第2受光ファイバー50Bが分光器26から切り離されているとき、ウェハからの反射光はシャッター78に遮られて分光器26まで到達しない。
図16(a)において、白丸は光をウェハに導いている光ファイバーを示し、黒丸はウェハからの反射光を分光器26に導いている光ファイバーを示し、×が付された丸記号は、反射光がシャッター78により遮られている光ファイバーを示している。
図16(a)に示す例では、第1受光ファイバー50Aの先端50aのみが反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aのみを通って分光器26に伝達される。
【0059】
図16(b)は、
図9に示す光ファイバー配列の場合においてシャッター78を開いたときの各光ファイバーの役割を説明するための図である。シャッター78が開いて第2受光ファイバー50Bが分光器26に接続されているとき、ウェハからの反射光は第2受光ファイバー50Bを通って分光器26まで到達する。
図16(b)に示す例では、第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの先端50a,50bの両方が反射光を受け取り、ウェハからの反射光は第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bの両方を通って分光器26に伝達される。
【0060】
図16(a)と
図16(b)との対比から分かるように、シャッター78を備えた光路選択機構70は、光センサ61の受光領域の大きさ(または面積)を変化させることができる。
【0061】
図17は、光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)25の他の実施形態を示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図14乃至
図16を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図17に示す実施形態では、第1受光ファイバー50Aは複数の先端50aを有し、これら先端50aは第2受光ファイバー50Bの先端50bの周りに配置されている。
図12および
図13に示す投光ファイバー34の先端34a、第1受光ファイバー50Aの先端50a、および第2受光ファイバー50Bの先端50bの配置は、
図17に示す実施形態にも適用できる。本実施形態でも、処理部27は、光路選択機構70のシャッター78を操作することによって、光センサ61の受光領域の大きさ(または面積)を変化させることができる。
【0062】
図18は、光学式膜厚測定器(膜厚測定装置)25の他の実施形態を示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図14に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、膜厚測定器25は、第1受光ファイバー50Aおよび第2受光ファイバー50Bに代えて、受光ファイバー50Cを備えている。
【0063】
受光ファイバー50Cは、複数の受光素線光ファイバー57を有しており、受光素線光ファイバー57の複数の先端は、受光ファイバー50Cの先端50cを構成する。受光ファイバー50Cの反対側の端部は、ケーラー光学システム80に接続されている。投光ファイバー34の先端34aと受光ファイバー50Cの先端50cは、互いに隣接している。これらの先端34a,50cは結束具51により結束され、光センサ61を構成する。ウェハの研磨中、ウェハの反射光は受光ファイバー50Cおよびケーラー光学システム80を通って分光器26に伝達される。ケーラー光学システム80は、開度が可変な視野絞りを有する光学系の一例である。
【0064】
図19は、光センサ61を構成する投光ファイバー34の先端34aおよび受光ファイバー50Cの先端50cの配置の一例を示す図である。この例では、投光ファイバー34の複数の先端34aは、受光ファイバー50Cの複数の先端50cの周囲に配列されている。
【0065】
図20は
図18に示すケーラー光学システム80の模式図である。
図20に示すように、ケーラー光学システム80は、分光器26に接続された接続ファイバー74Dと、受光ファイバー50Cの端部50cに対向するコレクタレンズ82と、接続ファイバー74Dの先端74dに対向するコンデンサレンズ84と、コレクタレンズ82とコンデンサレンズ84との間に配置された視野絞り85および開口絞り88とを備えている。
【0066】
コレクタレンズ82、視野絞り85、開口絞り88、およびコンデンサレンズ84は一直線上に配列されており、コレクタレンズ82、視野絞り85、開口絞り88、およびコンデンサレンズ84の順に並んでいる。コレクタレンズ82、視野絞り85、開口絞り88、およびコンデンサレンズ84は、遮光ハウジング89内に配置されている。開口絞り88および受光ファイバー50Cの端部50cは、コレクタレンズ82に関する共役点であり、視野絞り85および接続ファイバー74Dの先端74dは、コンデンサレンズ84に関する共役点である。
【0067】
一実施形態では、接続ファイバー74Dを省略し、遮光ハウジング89を分光器26に接続して、コンデンサレンズ84を分光器26の入射面に対向させてもよい。この場合は、視野絞り85および分光器26の入射面は、コンデンサレンズ84に関する共役点である。
【0068】
視野絞り85の開度および開口絞り88の開度は可変に構成されている。視野絞り85および開口絞り88は処理部27に電気的に接続されており、視野絞り85および開口絞り88の動作は処理部27によって制御される。受光ファイバー50Cの端部50cから接続ファイバー74Dの先端74dまで進む光の量は、開口絞り88の開度によって調節される。したがって、分光器26に伝達されるウェハからの反射光の量は開口絞り88によって調節することができる。
【0069】
受光領域(すなわち膜厚測定領域)は、視野絞り85の開度によって調節することができる。具体的には、視野絞り85の開度を小さくすると、受光領域(すなわち膜厚測定領域)が小さくなり、視野絞り85の開度を大きくすると、受光領域(すなわち膜厚測定領域)が大きくなる。
【0070】
本実施形態によれば、ウェハの表面に形成されているデバイスや膜などの構造体の種類に基づいて受光領域、すなわち膜厚測定領域の適切な大きさを選択することができる。結果として、膜厚測定器25は正確な膜厚を測定することができる。
【0071】
膜厚測定領域、すなわち視野絞り85の開度は、ウェハの表面に形成されているデバイスや膜などの構造体の種類に基づいてウェハの研磨前に予め決定される。処理部27は、ウェハの研磨前に視野絞り85を操作して視野絞り85の開度を調節する。さらに、ウェハの研磨中に処理部27は視野絞り85を操作して視野絞り85の開度を変更してもよい。例えば、ウェハの上層膜が除去されて下層膜が露出したときに、処理部27は視野絞り85を操作して視野絞り85の開度を変更してもよい。このような動作により、ウェハの露出面の構造に基づいた正確な膜厚測定が可能となる。
【0072】
上述した各実施形態に係る膜厚測定器25は、研磨装置に組み込まれたIn-situタイプの膜厚測定装置であるが、本発明はスタンドアローンタイプの膜厚測定装置にも適用することが可能である。
【0073】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。