特許第6861313号(P6861313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6861313
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】微粒子含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20210412BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08L79/04 B
   C08K5/3445
   C08K7/16
【請求項の数】4
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2020-109147(P2020-109147)
(22)【出願日】2020年6月24日
(62)【分割の表示】特願2015-146227(P2015-146227)の分割
【原出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2020-152922(P2020-152922A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】三隅 浩一
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】 北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−139925(JP,A)
【文献】 特開2014−111788(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196435(WO,A1)
【文献】 特開2012−207196(JP,A)
【文献】 特開2016−191905(JP,A)
【文献】 特開2016−027089(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031928(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるイミダゾール化合物と、(B)微粒子と、(C)基材成分とを含み、
前記(B)微粒子の体積平均粒子径が3000nm以下である、組成物であって、
前記(C)基材成分は、ポリアミック酸またはポリベンゾオキサゾール前駆体であり、
前記(A)イミダゾール化合物が下記式(1a)で表される化合物である、組成物。
【化1】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子もしくは1価の有機基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。前記Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【化2】
(式(1a)中、R、R及びnは、式(1)と同じであり、Rは水素原子又はアルキル基であり、Rは置換基を有してもよいアルキレン基であり、RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項2】
前記(A)イミダゾール化合物が下記式(1−1)で表される化合物である請求項1に記載の組成物。
【化3】
(式(1−1)中、R、R、R、及びnは、式(1a)と同じであり、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基である。ただし、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項3】
前記(B)微粒子が、無機粒子及び有機粒子からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造のイミダゾール化合物と、微粒子とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、分散された状態の種々の微粒子を含む組成物が種々の用途において使用されている。代表的には、カーボンブラックのような黒色微粒子を含む組成物や、酸化チタンや硫酸バリウムのような白色微粒子を含む組成物が挙げられる。
【0003】
例えば、分散されたカーボンブラックを含む液状の組成物は、印刷や塗料用途のみならず、種々の表示パネルにおけるブラックマトリックスやブラックカラムスペーサのような遮光材を形成するための材料としても使用されている。
また、分散された酸化チタンを含む液状の組成物は、発光素子搭載用の基板の表面における白色のソルダーレジスト膜の形成に使用されている。酸化チタンを含むかかる液状の組成物を用いることで、発光素子の発する光を効率よく反射させることができる、高反射率のソルダーレジスト膜を形成できる。
【0004】
一般的に、カーボンブラックは、有機溶剤等の溶媒中で分散剤を用いて分散させた後に使用されることが多い。分散剤を用いるカーボンブラックの分散方法としては、有機色素誘導体やトリアジン誘導体等の低分子化合物を分散剤として用いて、アルコール、グリコール系溶剤、ケトン類、非プロトン性極性有機溶剤等の有機溶剤中で、カーボンブラックを分散させる方法が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の方法によれば、有機溶剤を分散媒とする、カーボンブラック分散液が調製される。
【0005】
また、ソルダーレジスト膜の形成に使用される酸化チタンを含む液状の組成物としては、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ化合物と、ルチル型酸化チタンと、希釈剤とを含む硬化性組成物が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−213405号公報
【特許文献2】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2に記載される組成物については、組成物を調製する際にカーボンブラックや酸化チタン等の微粒子を分散させにくかったり、組成物を保管する際に、継時的にカーボンブラックや酸化チタン等の微粒子の凝集が進行したりする問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、保管時における微粒子の継時的な凝集の進行が抑制された、微粒子を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、体積平均粒子径が3000nm以下である(B)微粒子を含む組成物に、特定の構造の(A)イミダゾール化合物を配合することにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の第一の態様は、(A)下記式(1)で表されるイミダゾール化合物と、(B)微粒子とを含み、
前記(B)微粒子の体積平均粒子径が3000nm以下である、組成物である。
【化1】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子もしくは1価の有機基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。前記Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0011】
本発明の第二の態様は、第一の態様にかかる組成物の硬化物である。
【0012】
本発明の第三の態様は、第一の態様にかかる組成物であって、(C)熱硬化性又は光硬化性の基材成分を含む組成物を所定の形状に成形した後に、成形された組成物を加熱又は露光して硬化物を形成する、硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保管時における微粒子の継時的な凝集の進行が抑制された、微粒子を含む組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪組成物≫
本発明にかかる組成物は、(A)イミダゾール化合物と、(B)微粒子とを含む。(A)イミダゾール化合物は、後述する所定の構造を有する。(B)微粒子の体積平均粒子径は3000nm以下である。本発明にかかる組成物では、(A)イミダゾール化合物の作用によって、組成物中での(B)微粒子の分散が安定化され、組成物の保管時における(B)微粒子の凝集の進行が抑制される。
以下、本発明にかかる組成物に含まれる、必須又は任意の成分について説明する。
【0015】
<(A)イミダゾール化合物>
本発明にかかる組成物は、下記式(1)で表される化合物である(A)イミダゾール化合物を必須に含む。組成物は、後述する(B)微粒子を含有する。(B)微粒子は、粒子径が小さいため、組成物中で凝集しやすい。しかし、組成物が、(A)イミダゾール化合物を含むことにより、(B)微粒子は組成物中に安定して分散される。
【0016】
【化2】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表し、Rは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Rはそれぞれ独立にハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を表し、nは0〜3の整数を表す。前記Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0017】
また、組成物が後述する熱硬化性又は光硬化性の(C)基材成分、特に熱硬化性の基材成分を含有する場合、(A)成分は、(C)基材成分の硬化を促進させる。特に、組成物が熱硬化性の(C)基材成分を含む場合、組成物を低温で熱硬化させやすい。
【0018】
式(1)中、Rは、水素原子又は1価の有機基である。1価の有機基としては、特に限定されず、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基等であってもよい。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基は鎖中にエステル結合等を有してもよい。
【0019】
アルキル基としては、例えば後述の式(1a)におけるR等と同様であってよい。アルキル基の炭素原子数は1〜40が好ましく、1〜30がより好ましく、1〜20が特に好ましく、1〜10が最も好ましい。
当該アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば後述の式(1a)におけるRであるアルキレン基が有していてもよい置換基と同様であってよい。
【0020】
置換基を有してもよい芳香族基としては、後述の式(1a)におけるRと同様であり、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。Rとしての置換基を有してもよい芳香族基は、Rと同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中、一方のRは水素原子であることが好ましく、一方のRが水素原子であり他方のRが置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族基であることがより好ましい。
式(1)中、Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成していてもよい。例えば、少なくとも1つのRが置換基を有してもよいアルキル基である場合、Rは他方のR又はRと結合して環状構造を形成していてもよい。
【0021】
イミダゾール化合物(A)は、下記式(1a)で表される化合物であってもよい。
【0022】
【化3】
(式(1a)中、Rは水素原子又はアルキル基であり、Rは置換基を有してもよい芳香族基であり、Rは置換基を有してもよいアルキレン基であり、Rは、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、nは0〜3の整数である。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0023】
式(1a)中、Rは水素原子又はアルキル基である。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0024】
として好適なアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチル−n−ヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基が挙げられる。
【0025】
式(1a)中、Rは、置換基を有してもよい芳香族基である。置換基を有してもよい芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基でもよく、置換基を有してもよい芳香族複素環基でもよい。
【0026】
芳香族炭化水素基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族炭化水素基は、単環式の芳香族基であってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が縮合して形成されたものであってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が単結合により結合して形成されたものであってもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、フェナンスレニル基が好ましい。
【0027】
芳香族複素環基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族複素環基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましい。
【0028】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、及び有機基が挙げられる。フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合、当該有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。この有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、及びこれらの構造の組み合わせのいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0030】
芳香族基が隣接する炭素原子上に置換基を有する場合、隣接する炭素原子上に結合する2つの置換基はそれが結合して環状構造を形成してもよい。環状構造としては、脂肪族炭化水素環や、ヘテロ原子を含む脂肪族環が挙げられる。
【0031】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合に、当該有機基に含まれる結合は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0032】
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(1)又は式(1a)で表されるイミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(−NR−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0033】
有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、炭化水素基以外の置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。炭化水素基以外の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアルミ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0034】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有する置換基としては、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアリール基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数1〜12のアリールオキシ基、炭素原子数1〜12のアリールアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0035】
としては、式(1)又は式(1a)で表されるイミダゾール化合物を安価且つ容易に合成でき、イミダゾール化合物の水や有機溶剤に対する溶解性が良好であることから、それぞれ置換基を有してもよいフェニル基、フリル基、チエニル基が好ましい。
【0036】
式(1a)中、Rは、置換基を有してもよいアルキレン基である。アルキレン基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキレン基が有していてもよい置換基の具体例としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐鎖アルキレン基であってもよく、直鎖アルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は特に限定されず、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が特に好ましい。なお、アルキレン基の炭素原子数には、アルキレン基に結合する置換基の炭素原子を含まない。
【0037】
アルキレン基に結合する置換基としてのアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であっても、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されず、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
【0038】
アルキレン基に結合する置換基としてのアミノ基は、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
【0039】
として好適なアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、n−プロパン−1,3−ジイル基、n−プロパン−2,2−ジイル基、n−ブタン−1,4−ジイル基、n−ペンタン−1,5−ジイル基、n−ヘキサン−1,6−ジイル基、n−ヘプタン−1,7−ジイル基、n−オクタン−1,8−ジイル基、n−ノナン−1,9−ジイル基、n−デカン−1,10−ジイル基、n−ウンデカン−1,11−ジイル基、n−ドデカン−1,12−ジイル基、n−トリデカン−1,13−ジイル基、n−テトラデカン−1,14−ジイル基、n−ペンタデカン−1,15−ジイル基、n−ヘキサデカン−1,16−ジイル基、n−ヘプタデカン−1,17−ジイル基、n−オクタデカン−1,18−ジイル基、n−ノナデカン−1,19−ジイル基、及びn−イコサン−1,20−ジイル基が挙げられる。
【0040】
は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基であり、nは0〜3の整数である。nが2〜3の整数である場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
が有機基である場合、当該有機基は、Rについて、芳香族基が置換基として有していてもよい有機基と同様である。
【0042】
が有機基である場合、有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましく、フリル基、及びチエニル基がより好ましい。
【0043】
がアルキル基である場合、アルキル基のイミダゾール環上での結合位置は、2位、4位、5位のいずれも好ましく、2位がより好ましい。Rが芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基である場合、これらの基のイミダゾール上での結合位置は、2位が好ましい。
【0044】
上記式(1)で表されるイミダゾール化合物の中では、安価且つ容易に合成可能である点から、下記式(1−1a)で表される化合物が好ましい。
【0045】
【化4】
(式(1−1a)中、R、R及びnは、式(1)と同じであり、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基である。ただし、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0046】
、R、R、R、及びR10は、後述の式(1−1)と同じである。式(1−1a)中、RはRと結合して環状構造を形成していてもよく、例えば、Rが置換基を有してもよいアルキル基である場合、RはRと結合して環状構造を形成していてもよい。
【0047】
上記式(1a)又は式(1−1a)で表されるイミダゾール化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、水や有機溶剤に対する溶解性に優れる点から、下記式(1−1)で表される化合物が好ましく、式(1−1)で表され、Rがメチレン基である化合物がより好ましい。
【0048】
【化5】
(式(1−1)中、R、R、R、及びnは、式(1a)と同様であり、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基である。ただし、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0049】
、R、R、R、及びR10が有機基である場合、当該有機基は、式(1a)におけるRが置換基として有する有機基と同様である。R、R、R、及びRは、イミダゾール化合物の溶媒に対する溶解性の点から水素原子であるのが好ましい。
【0050】
中でも、R、R、R、R、及びR10のうち少なくとも1つは、下記置換基であることが好ましく、R10が下記置換基であるのが特に好ましい。R10が下記置換基である場合、R、R67、R、及びRは水素原子であるのが好ましい。
−O−R11
(R11は水素原子又は有機基である。)
【0051】
11が有機基である場合、当該有機基は、式(1a)におけるRが置換基として有する有機基と同様である。R11としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0052】
上記式(1−1)で表される化合物の中では、下記式(1−1−1)で表される化合物が好ましい。
【化6】
(式(1−1−1)において、R、R、及びnは、式(1a)と同様であり、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基である。ただし、R12、R13、R14、R15、及びR16のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。)
【0053】
式(1−1−1)で表される化合物の中でも、R12、R13、R14、R15、及びR16のうち少なくとも1つが、前述の−O−R11で表される基であることが好ましく、R16が−O−R11で表される基であるのが特に好ましい。R16が−O−R11で表される基である場合、R12、R13、R14、及びR15は水素原子であるのが好ましい。
【0054】
上記式(1)で表されるイミダゾール化合物の合成方法は特に限定されない。例えば、RCR(Hal)R(R及びRは、式(1)と同じであり、Halはハロゲン原子である。)で表されるハロゲン化物と、後述の式(II)で表されるイミダゾール化合物とを、常法に従って反応させてイミダゾリル化を行うことによって、上記式(1)で表されるイミダゾール化合物を合成することができる。
【0055】
上記式(1a)で表されるイミダゾール化合物の合成方法は特に限定されない。例えば、下記式(I)で表されるハロゲン含有カルボン酸誘導体と、下記式(II)で表されるイミダゾール化合物とを、常法に従って反応させてイミダゾリル化を行うことによって、上記式(1a)で表されるイミダゾール化合物を合成することができる。
【0056】
【化7】
(式(I)及び式(II)中、R、R、R、R及びnは、式(1a)と同様である。式(I)において、Halはハロゲン原子である。)
【0057】
また、イミダゾール化合物が、式(1a)で表され、且つRがメチレン基である化合物である場合、すなわち、イミダゾール化合物が下記式(1−2)で表される化合物である場合、以下に説明するMichael付加反応による方法によっても、イミダゾール化合物を合成することができる。
【0058】
【化8】
(式(1−2)中、R、R、R及びnは、式(1a)と同様である。)
【0059】
具体的には、例えば、下記式(III)で表される3−置換アクリル酸誘導体と、上記式(II)で表されるイミダゾール化合物とを溶媒中で混合してMichael付加反応を生じさせることによって、上記式(1−2)で表されるイミダゾール化合物が得られる。
【0060】
【化9】
(式(III)中、R、及びRは、式(1a)と同様である。)
【0061】
また、下記式(IV)で表される、イミダゾリル基を含む3−置換アクリル酸誘導体を、水を含む溶媒中に加えることによって、下記式(1−3)で表されるイミダゾール化合物が得られる。
【0062】
【化10】
(式(IV)及び式(1−3)中、R、R及びnは、式(1)と同様である。)
【0063】
この場合、上記式(IV)で表される3−置換アクリル酸誘導体の加水分解により、上記式(II)で表されるイミダゾール化合物と、下記式(V)で表される3−置換アクリル酸とが生成する。そして、下記式(V)で表される3−置換アクリル酸と、上記式(II)で表されるイミダゾール化合物との間でMichael付加反応が生じ、上記式(1−3)で表されるイミダゾール化合物が生成する。
【0064】
【化11】
(式(V)中、Rは、式(1a)と同様である。)
【0065】
式(1)又は式(1a)で表されるイミダゾール化合物の好適な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化12】
【0066】
組成物における(A)成分の好適な含有量は、(B)微粒子100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。組成物がかかる範囲内の量の(A)成分を含有することにより、組成物中の(B)微粒子の継時的な凝集が良好に抑制される。
【0067】
<(B)微粒子>
(B)微粒子(以下、(B)成分とも記す。)の種類は、体積平均粒子径が3000nm以下である限り特に限定されない。(B)微粒子の体積平均粒子径は(B)微粒子の使用目的に応じて適宜選択される。例えば、(B)微粒子の体積平均粒子径は、1〜800nmであってもよく、5〜500nmであってもよく、10〜300nmであってもよく、10〜100nmであってもよい。
【0068】
(B)微粒子の材質は、1種には限定されず、2種以上の材質が複合化されていてもよい。微粒子が2種以上の材質を含む粒子である場合、微粒子の構造は、マトリックス(海成分)中に、マトリックス材料以外の材料(島成分)が分散した海島構造であってもよく、コア粒子が1層以上のシェル層で被覆されたコア−シェル構造であってもよい。
【0069】
微粒子は、無機微粒子でもよく、有機微粒子でもよく、無機材料と有機材料とが複合化された複合粒子であってもよい。
【0070】
一般的に微粒子として認識される形状である限りにおいて、(B)微粒子の形状は特に限定されない。典型的な(B)微粒子の形状としては、これらの形状に限定されないが、球状、円柱や多角柱のような柱状、多角柱以外の多面体形状、板状等が挙げられる。微粒子は、内部に空隙を有する、多孔質粒子や中空粒子であってもよい。微粒子が中空粒子である場合、内部に液体が充填されていてもよい。
(B)微粒子について長径/短径の比率は特に限定されないが、1〜50が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0071】
(B)微粒子としては、入手や分散が容易であること等から、無機微粒子、及び有機微粒子が好ましい。無機微粒子と有機微粒子とは、組み合わせて使用されてもよい。
【0072】
(B)粒子の好適な具体例としては、
酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、及びクレー等の白色着色剤微粒子;
ペリレン系顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7、銀錫合金、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、及び金属炭酸塩等の黒色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様であり、番号のみを記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73,74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、及び185等の黄色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様であり、番号のみを記載する。)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、及び73等の橙色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様であり、番号のみを記載する。)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、及び50等の紫色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様であり、番号のみを記載する。)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、及び265等の赤色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、及び66等の青色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、及びC.I.ピグメントグリーン37等の緑色着色剤微粒子;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、及びC.I.ピグメントブラウン28等の茶色着色剤微粒子;
La、CeO、Nd、Gd、Ho、Lu、HfO、及びTa等の絶縁性の無機酸化物微粒子;
金、銀、銅、ニッケル、白金、及びアルミニウム、並びにこれらの金属の合金からなる金属微粒子;
ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体等からなる樹脂微粒子;
が挙げられる。
【0073】
組成物中の(B)微粒子の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(B)微粒子の含有量は、下記の(C)を含まない場合、組成物の固形分の質量に対して、50〜質量%が好ましく、60〜99質量%がより好ましく、70〜98質量%が特に好ましい。下記の(C)を含む場合、1〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0074】
<(C)基材成分>
本発明にかかる組成物は、賦形性や成膜性の観点から、(C)基材成分(以下、(C)成分とも記す。)を含んでいてもよい。(C)基材成分としては、典型的には高分子化合物からなる樹脂材料や、加熱又は露光により架橋して高分子化合物を生じる反応性の低分子化合物が用いられる。また、(C)基材成分として使用される樹脂材料は、加熱又は露光により架橋する官能基を有してもよい。つまり、熱硬化性又は光硬化性の樹脂も(C)基材成分として使用できる。
【0075】
上記の(C)基材成分としては、硬度や引張伸度等の物理的特性に優れる成形体を形成しやすいことから、熱硬化性又は光硬化性の基材成分が好ましい。
組成物が(C)成分として熱硬化性又は光硬化性の基材成分を含有する場合、所望の形状に成形された硬化物に対して加熱又は露光を行うことにより、例えば硬化膜のような、所望する形状の硬化物を得ることができる。
以下、(C)成分の具体例について、順に説明する。
【0076】
〔樹脂材料〕
(C)基材成分として使用される非硬化性の樹脂材料について説明する。非硬化性の樹脂材料は、組成物に成膜性等の賦形性を与える非硬化性の樹脂材料であれば特に限定されない。かかる樹脂材料の具体例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等)、FR−AS樹脂、FR−ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、シリコーン樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR−ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、及びポリスチレン等が挙げられる。
これらの樹脂材料は、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0077】
〔熱硬化性の低分子化合物〕
(C)成分のうち、加熱により架橋して高分子化合物を生じる、熱硬化性の低分子化合物としては、2官能以上の多官能エポキシ化合物、又は2官能以上の多官能オキセタン化合物が挙げられる。多官能エポキシ化合物や多官能オキセタン化合物を(C)基材成分として含む組成物が所定の温度以上に加熱されると、前述の(A)成分の作用によって、多官能エポキシ化合物や多官能オキセタン化合物が有するエポキシ基やオキセタニル基同士が架橋され、耐熱性や機械的特性に優れる成形体が得られる。
【0078】
なお、多官能エポキシ化合物や多官能オキセタン化合物は基本的に熱硬化性の(C)基材成分として使用されるが、多官能エポキシ化合物や多官能オキセタン化合物を、後述する光の作用により酸を発生する(D2)酸発生剤とともに用いる場合、光硬化が可能である。
【0079】
多官能エポキシ化合物は、2官能以上のエポキシ化合物であれば特に限定されない。多官能エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0080】
脂環式エポキシ化合物も、高硬度の硬化物を与える点で多官能エポキシ化合物として好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂や、下記式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
エポキシ基含有フルオレン化合物も多官能エポキシ化合物として好適に使用できる。エポキシ基含有フルオレン化合物の例としては、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−[2−(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−[2−(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)−3−メチルフェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)−3,5−ジメチルフェニル]−9H−フルオレン、及び9,9−ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン−2−イル)−9H−フルオレン等が挙げられる。
【0082】
これらのエポキシ化合物の具体例の中では、高硬度の硬化物を与える点からは、下記式(c1)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【化13】
(式(c1)中、Zは単結合、−O−、−O−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−CH−、−C(CH−、−CBr−、−C(CBr−、−C(CF−、及び−Rc19−O−CO−からなる群より選択される2価の基であり、Rc19は炭素原子数1〜8のアルキレン基であり、Rc1〜Rc18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0083】
式(c1)中、Rc19は、炭素原子数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0084】
c1〜Rc18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該有機基は、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0085】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0086】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0087】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0088】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロピルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロピルオキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロピルオキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロピルオキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロピルオキシ基、3−エトキシ−n−プロピルオキシ基、3−n−プロピルオキシ−n−プロピルオキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロピルオキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0089】
c1〜Rc18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、及び炭素原子数1〜5のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましい。特に組成物を用いて形成される成形体の硬度の観点からRc1〜Rc18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0090】
式(c1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては以下の化合物1及び2が挙げられる。
【化14】
【0091】
2官能以上の多官能オキセタン化合物としては、例えば、3,3’−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)、4,4‐ビス[(3‐エチル−3−オキセタニル)メチル]ビフェニル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン、3,3’−〔1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン)〕ビス(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕プロパン、エチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジシクロペンテニルビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、トリエチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、テトラエチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、トリメチロールプロパントリス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ブタン、1,6−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ポリエチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル等が挙げられる。
【0092】
ジペンタエリスリトールヘキサキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとカプロラクトンとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとカプロラクトンとの反応生成物、ジトリメチロールプロパンテトラキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物、ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとプロピレンオキサイドとの反応生成物、水添ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物、水添ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとプロピレンオキサイドとの反応生成物、ビスフェノールFビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物等も、多官能オキセタン化合物として使用できる。
【0093】
〔熱硬化性の高分子化合物〕
(C)成分として使用できる熱硬化性の高分子化合物としては、加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂が挙げられる。本発明にかかる組成物は前述の(A)イミダゾール化合物を含む。このため、本発明にかかる組成物では、(C)成分における、加熱による、分子内での芳香環形成反応及び/又は分子間での架橋反応が生じやすい。
【0094】
分子内での芳香環形成反応によれば、樹脂を構成する分子鎖の構造が剛直化し、組成物を用いて耐熱性及び機械的特性に優れる成形体を得やすい。分子内での芳香環形成反応のうち好ましい反応としては、例えば、下式(I)〜(VI)で示される反応が挙げられる。なお、下式中の反応は芳香環形成反応の一例にすぎず、(A)基材成分として使用される、加熱により分子内での芳香環形成反応を生じさせる樹脂の構造は、下式中に示される前駆体ポリマーの構造に限定されない。
【0095】
【化15】
【0096】
分子間での架橋反応によれば、樹脂を構成する分子鎖が相互に架橋され、三次元架橋構造が形成される。このため、加熱により架橋反応を生じさせる樹脂を(C)成分として含む組成物を用いると、耐熱性及び機械的特性に優れる成形体を得やすい。
【0097】
加熱により分子間の架橋反応を生じさせる樹脂としては、分子中に、水酸基、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、及びエポキシ基から選択される基を有する樹脂が好ましい。水酸基を有する樹脂を用いる場合、(A)成分の作用によって、樹脂に含まれる分子間に水酸基間の脱水縮合による架橋が生じる。カルボン酸無水物基を有する樹脂を用いる場合、酸無水物基の加水分解により生じるカルボキシル基同士が、(A)成分の作用によって脱水縮合して架橋する。カルボキシル基を有する樹脂を用いる場合、(A)成分の作用によって、樹脂に含まれる分子間にカルボキシル基間の脱水縮合による架橋が生じる。エポキシ基を有する樹脂を用いる場合、(A)成分の作用によって、樹脂に含まれる分子間にエポキシ基間の重付加反応による架橋が生じる。
【0098】
このような加熱により分子内での芳香環形成反応や、分子間での架橋反応を生じさせる化合物の中では、耐熱性に優れる成形体を形成しやすいことから、ポリアミック酸、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾチアゾール前駆体、ポリベンゾイミダゾール前駆体、スチレン−マレイン酸共重合体、及びエポキシ基含有樹脂が好ましい。
以下、熱硬化性の高分子化合物の好適な具体例について説明する。
【0099】
(水酸基含有樹脂)
分子中に水酸基を有する樹脂としては、例えばノボラック樹脂が挙げられる。ノボラック樹脂としては、特に限定されないが、フェノール類1モルに対して、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド等の縮合剤を0.5〜1.0モルの割合で、酸性触媒下で縮合反応させることにより得られるものが好ましい。
【0100】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール類、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(前記いずれのアルキル基も炭素数1〜4である)、α−ナフトール、β−ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0101】
フェノール類の中でも、m−クレゾール及びp−クレゾールが好ましく、m−クレゾールとp−クレゾールとを併用することがより好ましい。両者の配合比率を調整することによって、ホトレジストとしての感度、耐熱性等の諸特性を調節することができる。m−クレゾールとp−クレゾールの配合比率は特に限定されないが、m−クレゾール/p−クレゾール=3/7〜8/2(質量比)が好ましい。m−クレゾールの比率が上記下限値未満になると感度が低下する場合があり、上記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。
【0102】
ノボラック樹脂の製造に使用される酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類、蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸性触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算によるノボラック樹脂の質量平均分子量は、1000〜50000が好ましい。
【0104】
(カルボン酸無水物基含有樹脂)
分子中にカルボン酸無水物基を有する樹脂としては、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、及びイタコン酸無水物から選択される1種以上の単量体を含む、不飽和二重結合を有する単量体の混合物を重合させて得られる共重合体が好ましい。このような重合体としては、スチレン−マレイン酸共重合体が好ましい。
【0105】
分子中にカルボキシル基を有する樹脂としては、前述の分子中にカルボン酸無水物基を有する樹脂中の酸無水物基を加水分解して得られる樹脂や、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びイタコン酸から選択される1種以上の単量体を含む、不飽和二重結合を有する単量体の混合物を重合させて得られる共重合体が好ましい。
【0106】
(ポリアミック酸)
ポリアミック酸は、ポリイミド樹脂の前駆体となる基材成分である。組成物を所望の形状に成形した後、成形された組成物を適切な温度に加熱すると、(A)成分の作用によって、ポリアミック酸からポリイミド樹脂が生成する閉環反応が促進され、耐熱性に優れるポリイミド樹脂をマトリックスとして含有する、成形体が形成される。
【0107】
ポリアミック酸の分子量は、質量平均分子量として、5,000〜30,000であるのが好ましく、10,000〜20,000であるのがより好ましい。かかる範囲内の質量平均分子量のポリアミック酸を用いる場合、耐熱性に優れる成形体を形成しやすい。
【0108】
好適なポリアミック酸としては、例えば、下式(C1)で表される構成単位からなるポリアミック酸が挙げられる。
【0109】
【化16】
(式(C1)中、Rc20は4価の有機基であり、Rc21は2価の有機基であり、aは式(C1)で表される構成単位の繰り返し数である。)
【0110】
式(C1)中、Rc20及びRc21の炭素原子数は2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。Rc20及びRc21は、それぞれ、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組み合わせた基であってもよい。Rc20及びRc21は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Rc20及びRc21が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Rc20及びRc21に含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Rc20及びRc21に含まれるのがより好ましい。
【0111】
ポリアミック酸は、通常、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させることにより調製される。以下、ポリアミック酸の調製に用いられる、テトラカルボン酸二無水物成分、ジアミン成分、及びポリアミック酸の製造方法について説明する。
【0112】
・テトラカルボン酸二無水物成分
ポリアミック酸の合成原料となるテトラカルボン酸二無水物成分は、ジアミン成分と反応することによりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物成分は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよく、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0114】
・ジアミン成分
ポリアミック酸の合成原料となるジアミン成分は、テトラカルボン酸二無水物成分と反応することによりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。ジアミン成分は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミン成分は、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、芳香族ジアミンが好ましい。ジアミン成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
芳香族ジアミンの好適な具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−9H−フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)−9H−フルオレン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエタン−1,1−ジイル)]ジアニリン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0116】
・ポリアミック酸の製造方法
以上説明した、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを、両者を溶解させることができる溶媒中で反応させることにより、ポリアミック酸が得られる。ポリアミック酸を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分の使用量は特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物成分1モルに対して、ジアミン成分を0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
【0117】
ポリアミック酸の合成に用いることができる溶媒としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びγ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶媒や、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアを用いるのが好ましい。
【0118】
ポリアミック酸を合成する際の溶媒の使用量は、所望の分子量のポリアミック酸を合成できれば特に限定されない。典型的には、溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物成分の量とジアミン成分の量との合計100質量部に対して、100〜4000質量部が好ましく、150〜2000質量部がより好ましい。
【0119】
テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させる際の温度は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分との反応温度は、−5〜150℃が好ましく、0〜120℃がより好ましく、0〜70℃が特に好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物成分と、ジアミン成分とを反応させる時間は、反応温度によっても異なるが、典型的には、1〜50時間が好ましく、2〜40時間がより好ましく、5〜30時間が特に好ましい。
【0120】
以上の方法によれば、ポリアミック酸の溶液又はペーストが得られる。かかる溶液又はペーストをそのまま組成物の調製に用いてもよい。また、ポリアミック酸の溶液又はペーストから溶媒除去して得られる固体状のポリアミック酸を組成物の調製に用いてもよい。
【0121】
(ポリベンゾオキサゾール前駆体)
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、典型的には、芳香族ジアミンジオールと、特定の構造のジカルボニル化合物とを反応させて製造される。以下、芳香族ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物と、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に用いられる溶剤と、ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法とについて説明する。
【0122】
・芳香族ジアミンジオール
芳香族ジアミンジオールとしては、従来よりポリベンゾオキサゾールの合成に使用されているものを特に制限なく使用することができる。芳香族ジアミンジオールとしては、下式(c2)で表される化合物を用いるのが好ましい。芳香族ジアミンジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化17】
(式(c2)中、Rc22は1以上の芳香環を含む4価の有機基であり、式(c2)で表される芳香族ジアミンジオールに含まれる2組のアミノ基と水酸基との組み合わせに関して、それぞれの組み合わせでは、アミノ基と水酸基とは、Rc22に含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合している。)
【0123】
式(c2)中、Rc22は、1以上の芳香環を含む4価の有機基であり、その炭素原子数は6〜50が好ましく、6〜30がより好ましい。Rc22は、芳香族基であってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。Rc22に含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−等が挙げられ、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−が好ましい。
【0124】
c22に含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。Rc22中のアミノ基及び水酸基と結合する芳香環はベンゼン環であるのが好ましい。Rc22中のアミノ基及び水酸基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基及び水酸基と結合する環はベンゼン環であるのが好ましい。
【0125】
c22の好適な例としては、下記式(c1−1)〜(c1−9)で表される基が挙げられる。
【化18】
(式(c1−1)中、Xは、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。式(c1−2)〜(c1−5)中、Yは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。)
【0126】
上記式(c1−1)〜(c1−9)で表される基は、芳香環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0127】
上記式(c2)で表される化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3−フルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジフルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,6−ジアミノ−1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジアミノ−2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルケトン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルフィド、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、ジ[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、ジ[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシジベンゾフラン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシフルオレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシキサンテン、9,9−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0128】
これらの中では、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0129】
・ジカルボニル化合物
ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成原料としては、以上説明した芳香族ジアミンジオールとともに、下式(c3)で表されるジカルボニル化合物を用いる。前述の芳香族ジアミンジオールと、下式(c3)で表されるジカルボニル化合物とを縮合させることにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体が得られる。
【0130】
【化19】
(式(c3)中、Rc23は2価の有機基であり、Aは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0131】
式(c3)中のRc23は、芳香族基であってもよく、脂肪族基であってもよく、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基であってもよい。得られるポリベンゾオキサゾール樹脂の耐熱性、機械的特性、耐薬品性等が良好である点から、Rc23は、芳香族基及び/又は脂環式基を含む基であるのが好ましい。Rc23に含まれる芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。
【0132】
c23は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Rc23が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Rc23に含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Rc23に含まれるのがより好ましい。
【0133】
式(c3)中、2つのAの一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子であってもよいが、2つのAがともに水素原子であるか、2つのAがともにハロゲン原子であるのが好ましい。Aがハロゲン原子である場合、Aとして塩素、臭素、及びヨウ素が好ましく、塩素がより好ましい。
【0134】
式(c3)で表されるジカルボニル化合物として、2つのAがともに水素原子であるジアルデヒド化合物を用いる場合、下式(C2)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体が製造される。
【化20】
(式(C2)中、Rc22及びRc23は、式(c2)及び式(c3)と同様であり、aは式(C2)で表される単位の繰り返し数である。)
【0135】
式(c3)で表されるジカルボニル化合物として、2つのAがともにハロゲン原子であるジカルボン酸ジハライドを用いる場合、下式(C3)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体が製造される。
【化21】
(式(C3)中、Rc22及びRc23は、式(c2)及び式(c3)と同様であり、aは式(C3)で表される単位の繰り返し数である。)
【0136】
以下、ジカルボニル化合物として好適な化合物である、ジアルデヒド化合物と、ジカルボン酸ジハライドとについて説明する。
【0137】
・ジアルデヒド化合物
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いるジアルデヒド化合物は、下式(c2−1)で表される化合物である。ジアルデヒド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化22】
(式(c2−1)中、Rc23は、式(c3)と同様である。)
【0138】
式(c2−1)中のRc23として好適な芳香族基又は芳香環含有基としては、以下の基が挙げられる。
【化23】
(上記式中、Xは、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Xが複数である場合、複数のXは同一でも異なっていてもよい。Yは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。p及びqは、それぞれ0〜3の整数である。)
【0139】
式(c2−1)中のRc23として好適な脂環式基又は脂環含有基としては、以下の基が挙げられる。
【化24】
(上記式中、Xは、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Xが複数である場合、複数のXは同一でも異なっていてもよい。Yは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Zは、−CH−、−CHCH−、及び−CH=CH−からなる群より選択される1種である。pは、それぞれ0〜3の整数である。)
【0140】
上記のRc23として好適な基に含まれる芳香環又は脂環は、その環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素原子数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0141】
式(c2−1)で表されるジアルデヒド化合物が芳香族ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、ベンゼンジアルデヒド類、ピリジンジアルデヒド類、ピラジンジアルデヒド類、ピリミジンジアルデヒド類、ナフタレンジアルデヒド類、ビフェニルジアルデヒド類、ジフェニルエーテルジアルデヒド類、ジフェニルスルホンジアルデヒド類、ジフェニルスルフィドジアルデヒド類、ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類、[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類、2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類、及び含フルオレンジアルデヒドが挙げられる。
【0142】
ベンゼンジアルデヒド類の具体例としては、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、3−フルオロフタルアルデヒド、4−フルオロフタルアルデヒド、2−フルオロイソフタルアルデヒド、4−フルオロイソフタルアルデヒド、5−フルオロイソフタルアルデヒド、2−フルオロテレフタルアルデヒド、3−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、5−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルテレフタルアルデヒド、3,4,5,6−テトラフルオロフタルアルデヒド、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタルアルデヒド、及び2,3,5,6−テトラフルオロテレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0143】
ピリジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリジン−2,3−ジアルデヒド、ピリジン−3,4−ジアルデヒド、及びピリジン−3,5−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピラジンジアルデヒド類の具体例としては、ピラジン−2,3−ジアルデヒド、ピラジン−2,5−ジアルデヒド、及びピラジン−2,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピリミジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリミジン−2,4−ジアルデヒド、ピリミジン−4,5−ジアルデヒド、及びピリミジン−4,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0144】
ナフタレンジアルデヒド類の具体例としては、ナフタレン−1,5−ジアルデヒド、ナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、2,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,5−ジアルデヒド、2,3,4,5,6,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチル−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−ビス(トリフルオロメチル)メトキシ−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、及び1,5−ビス[ビス(トリフルオロメチル)メトキシ]−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0145】
ビフェニルジアルデヒド類の具体例としては、ビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、ビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、ビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、ビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、及び6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0146】
ジフェニルエーテルジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルエーテル−2,4’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルエーテル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0147】
ジフェニルスルホンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルホン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0148】
ジフェニルスルフィドジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0149】
ジフェニルケトンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルケトン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルケトン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0150】
ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類の具体例としては、ベンゼン1,3−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−ホルミルフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0151】
[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類の具体例としては、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0152】
2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類の具体例としては、2,2−ビス[4−(2−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、及び2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0153】
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド等が挙げられる。
【0154】
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
【0155】
含フルオレンジアルデヒドの具体例としては、フルオレン−2,6−ジアルデヒド、フルオレン−2,7−ジアルデヒド、ジベンゾフラン−3,7−ジアルデヒド、9,9−ビス(4−ホルミルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ホルミルフェニル)フルオレン、及び9−(3−ホルミルフェニル)−9−(4’−ホルミルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0156】
また、下式で表される、ジフェニルアルカンジアルデヒド又はジフェニルフルオロアルカンジアルデヒドも、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用できる。
【化25】
【0157】
さらに、下記式で表されるイミド結合を有する化合物も、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用することができる。
【化26】
【0158】
式(c2−1)で表されるジカルボニル化合物が脂環式基を含む脂環式ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、シクロヘキサン−1,4−ジアルデヒド、シクロヘキサン−1,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,4−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−エン−8,9−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,4−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−7,8−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロヘキシル−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−4,4’−ジアルデヒド、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、3,3’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、3,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、4,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6’−ジアルデヒド、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−6,6’−ジアルデヒド、及び1,3−ジホルミルアダマンタン等が挙げられる。
【0159】
以上説明したジアルデヒド化合物の中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を与えるポリベンゾオキサゾール前駆体を得やすいことから、イソフタルアルデヒドが好ましい。
【0160】
・ジカルボン酸ジハライド
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いるジカルボン酸ジハライドは、下式(c2−2)で表される化合物である。ジカルボン酸ジハライドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化27】
(式(c2−2)中、Rc23は、式(c3)と同様であり、Halはハロゲン原子である。)
【0161】
式(c2−2)中、Halとしては、塩素、臭素、及びヨウ素が好ましく、塩素がより好ましい。
【0162】
式(c2−2)で表される化合物として好適な化合物としては、ジアルデヒド化合物の好適な例として前述した化合物が有する2つのアルデヒド基を、ハロカルボニル基、好ましくはクロロカルボニル基に置換した化合物が挙げられる。
【0163】
以上説明したジカルボン酸ジハライドの中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を与えるポリベンゾオキサゾール前駆体を得やすいことから、テレフタル酸二クロライドが好ましい。
【0164】
・溶剤
ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に用いる溶剤は特に限定されず、従来からポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に使用されていた溶剤から適宜選択できる。ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に用いる溶剤としては、下式(c4)で表される化合物を含む溶剤を用いるのが好ましい。
【化28】
(式(c4)中、Rc24及びRc25は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基であり、Rc26は下式(c4−1)又は下式(c4−2):
【化29】
で表される基である。式(c4−1)中、Rc27は、水素原子又は水酸基であり、Rc28及びRc29は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。式(c4−2)中、Rc30及びRc31は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)
【0165】
上記式(c4)で表される化合物を含む溶剤を用いてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する場合、ポリベンゾオキサゾール前駆体を低温で熱処理する場合でも、ポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱する際の樹脂の着色による透明性の低下を抑制しつつ、引張伸度のような機械的特性や耐薬品性に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を製造できる。
【0166】
また、上記式(c4)で表される化合物を含む溶剤を用いて合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱してポリベンゾオキサゾール樹脂を製造する場合、ポリベンゾオキサゾール樹脂の表面での、膨れ、割れ、発泡等の欠陥の発生を抑制できる。このため、上記式(c4)で表される化合物を含む溶剤を用いて合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体を含む膜を加熱してポリベンゾオキサゾール樹脂のフィルムを製造する場合、割れ、ブリスター、ピンホール等の欠陥がなく外観に優れるフィルムを製造しやすい。
【0167】
式(c4)で表される化合物のうち、Rc26が式(c4−1)で表される基である場合の具体例としては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−エチル,N,2−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチル−2−メチルプロピオンアミド、N,N,2−トリメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、N−エチル−N,2−ジメチル−2−ヒドロキシプロピオンアミド、及びN,N−ジエチル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアミド等が挙げられる。
【0168】
式(c4)で表される化合物のうち、Rc26が式(c4−2)で表される基である場合の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N,N,N’,N’−テトラエチルウレア等が挙げられる。
【0169】
式(c4)で表される化合物のうち、特に好ましいものとしては、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアが好ましい。N,N,2−トリメチルプロピオンアミドの大気圧下での沸点は175℃であって、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアの大気圧下での沸点は177℃である。このように、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、芳香族ジアミンジオール、ジカルボニル化合物、及び生成するポリベンゾオキサゾール前駆体を溶解可能な溶媒の中では比較的沸点が低い。このため、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアから選択される少なくとも1種を含む溶剤を用いて合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体を用いてポリベンゾオキサゾール樹脂を形成すると、ポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱する際に、生成するポリベンゾオキサゾール樹脂中に溶剤が残存しにくく、得られるポリベンゾオキサゾール樹脂の引張伸度の低下等を招きにくい。
【0170】
さらに、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、EU(欧州連合)でのREACH規則において、有害性が懸念される物質であるSVHC(Substance of Very High Concern、高懸念物質)に指定されていないように、有害性が低い物質である点でも有用である。
【0171】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製に用いる溶剤が式(c4)で表される化合物を含む場合、溶剤中の式(c4)で表される化合物の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
【0172】
溶剤が式(c4)で表される化合物を含む場合に、式(c4)で表される化合物とともに使用することができる有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素極性溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸−n−ブチル等のエステル類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等の環状エステル類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0173】
・ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、前述の芳香族ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物とを、溶剤中で、周知の方法に従って反応させることによって製造される。以下ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法の代表的な例として、ジカルボニル化合物がジアルデヒド化合物である場合の製造方法と、ジカルボニル化合物がジカルボン酸ハライドである場合の製造方法とについて説明する。
【0174】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応はシッフ塩基の形成反応であり、周知の方法に従って行うことができる。反応温度は特に限定されないが、通常、20〜200℃が好ましく、20〜160℃がより好ましく、100〜160℃が特に好ましい。
【0175】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、溶剤にエントレーナーを添加し、還流脱水しながら行われてもよい。エントレーナーとしては、特に限定されず、水と共沸混合物を形成し、室温にて水と二相系を形成する有機溶剤から適宜選択される。エントレーナーの好適な例としては、酢酸イソブチル、酢酸アリル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、及びプロピオン酸イソブチル等のエステル;ジクロロメチルエーテル、及びエチルイソアミルエーテル等のエーテル類;エチルプロピルケトン等のケトン類;トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0176】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
【0177】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際の、ジアルデヒド化合物の使用量は、芳香族ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
【0178】
溶剤の使用量は、芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、芳香族ジアミンジオールの質量と、ジアルデヒド化合物の質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
【0179】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
【0180】
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとを反応させる反応温度は特に限定されないが、通常、−20〜150℃が好ましく、−10〜150℃がより好ましく、−5〜70℃が特に好ましい。芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応ではハロゲン化水素が副生する。かかるハロゲン化水素を中和するために、トリエチルアミン、ピリジン、及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の有機塩基や、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を、反応液中に少量加えてもよい。
【0181】
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
【0182】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際の、ジカルボン酸ジハライドの使用量は、芳香族ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
【0183】
溶剤の使用量は、芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、芳香族ジアミンジオールの質量と、ジカルボン酸ジハライドの質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
【0184】
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応は、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
【0185】
以上説明した方法により、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液が得られる。本発明にかかる組成物にポリベンゾオキサゾール前駆体を配合する際には、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液をそのまま用いてもよい。また、減圧下に、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリベンゾオキサゾール樹脂への変換が生じない程度の低温で、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液から溶剤の少なくとも一部を除去して得られる、ポリベンゾオキサゾール前駆体のペースト又は固体を、組成物の調製に用いることもできる。
【0186】
(ポリベンゾチアゾール前駆体)
ポリベンゾチアゾール前駆体は、典型的には、芳香族ジアミンジチオールと、特定の構造のジカルボニル化合物とを反応させて製造される。芳香族ジアミンジチオールとしては、ポリベンゾオキサール前駆体の合成に使用される芳香族ジアミンジオールの水酸基がメルカプト基に置換された化合物を用いることができる。ジカルボニル化合物としては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に使用されるものと同様のものを使用することができる。
【0187】
芳香族ジアミンジチオールとジカルボニル化合物とを反応させてポリベンゾチアゾール前駆体を合成する際の、反応方法、反応条件等は、芳香族ジアミンジオールとジカルボニル化合物とを反応させてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する場合と同様である。
【0188】
(ポリベンゾイミダゾール前駆体)
ポリベンゾイミダゾール前駆体は、典型的には、芳香族テトラアミンと、ジカルボン酸ジハライドとを反応させて製造される。芳香族テトラアミンとしては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に使用される芳香族ジアミンジオールの水酸基がアミノ基に置換された化合物を用いることができる。ジカルボン酸ジハライドとしては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成に使用されるものと同様のものを使用することができる。
【0189】
芳香族テトラアミンとジカルボン酸ジハライドとを反応させてポリベンゾイミダゾール前駆体を合成する際の、反応方法、反応条件等は、芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとを反応させてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成する場合と同様である。
【0190】
(スチレン−マレイン酸共重合体)
スチレン−マレイン酸共重合体の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。スチレン−マレイン酸共重合体における、スチレン/マレイン酸の共重合比率(質量比)は、1/9〜9/1が好ましく、2/8〜8/1がより好ましく、1/1〜8/1が特に好ましい。スチレン−マレイン酸共重合体の分子量は特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、1000〜100000であるのが好ましく、5000〜12000であるのがより好ましい。
【0191】
(エポキシ基含有樹脂)
エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよい。エポキシ基含有樹脂は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入したものであってもよい。入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体が好ましい。
【0192】
エポキシ基含有樹脂の好ましい一例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0193】
また、エポキシ基含有樹脂の中では、調製が容易であること等から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
【0194】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0195】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0196】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(−O−CO−)中のオキシ基(−O−)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(−O−)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3〜20が好ましく、3〜15がより好ましく、3〜10が特に好ましい。
【0197】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、5−グリシジルオキシ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、6−グリシジルオキシ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0198】
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(c5−1)〜(c5−15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(c5−1)〜(c5−5)で表される化合物が好ましく、下記式(c5−1)〜(c5−3)で表される化合物がより好ましい。
【0199】
【化30】
【0200】
【化31】
【0201】
【化32】
【0202】
上記式中、Rc32は水素原子又はメチル基を示し、Rc33は炭素原子数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rc34は炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基を示し、tは0〜10の整数を示す。Rc33としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Rc34としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0203】
エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体のいずれも用いることができるが、エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
【0204】
エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、不飽和カルボン酸、エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。組成物の保存安定性や、組成物を用いて形成される成形体のアルカリ等に対する耐薬品性の点からは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体は、不飽和カルボン酸に由来する単位を含まないのが好ましい。
【0205】
不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0206】
エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの中では、脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0207】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0208】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば下記式(c6−1)〜(c6−8)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(c6−3)〜(c6−8)で表される化合物が好ましく、下記式(c6−3)又は(c6−4)で表される化合物がより好ましい。
【0209】
【化33】
【0210】
【化34】
【0211】
上記式中、Rc35は水素原子又はメチル基を示し、Rc36は単結合又は炭素原子数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rc37は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示す。Rc36としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Rc37としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0212】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0213】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0214】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0215】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0216】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0217】
エポキシ基含有樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、3,000〜30,000が好ましく、5,000〜15,000がより好ましい。
【0218】
〔光硬化性の低分子化合物〕
組成物は、基材成分として光重合性の低分子化合物(光重合性モノマー)を含んでいてもよい。多官能の光重合性の低分子化合物を含む場合は後述の(D)光重合開始剤等を含むことが好ましい。光重合性の低分子化合物には、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。以下、単官能モノマー、及び多官能モノマーについて順に説明する。
【0219】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチ(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0220】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0221】
〔光重合性の高分子化合物〕
組成物は、基材成分として光重合性の高分子化合物を含んでいてもよい。光重合性の高分子化合物としては、エチレン性不飽和基を含む樹脂が好適に使用される。
エチレン性不飽和基を含む樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を好適に用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0222】
また、エチレン性不飽和基を含む樹脂としては、エポキシ化合物と不飽和基含有カルボン酸化合物との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂や、不飽和カルボン酸に由来する単位を含む重合体に含まれるカルボキシ基の少なくとも一部と、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステルとを反応させることにより得られる樹脂(以下、まとめて「エチレン性不飽和基を有する構成単位を含む樹脂」という)を好適に用いることができる。エチレン性不飽和基を有する構成単位におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0223】
その中でも、エチレン性不飽和基を有する構成単位を含む樹脂又は下記式(c7)で表される化合物が好ましい。この式(c7)で表される化合物は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【化35】
【0224】
上記式(c7)中、Xは、下記一般式(c8)で表される基を表す。
【化36】
【0225】
上記式(c8)中、Rc38は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、Rc39は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、Wは、単結合、又は下記構造式(c9)で表される基を表す。なお、式(c8)、及び式(c9)において「*」は、2価の基の結合手の末端を意味する。
【化37】
【0226】
上記式(c7)中、Yはジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を表す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0227】
また、上記式(c7)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。さらに、上記式(c7)中、aは、0〜20の整数を表す。
【0228】
エチレン性不飽和基を含む樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜110mgKOH/gであることがより好ましい。酸価を10mgKOH/g以上とすることにより、現像液に対する十分な溶解性が得られるので好ましい。また、酸価を150mgKOH/g以下とすることにより、十分な硬化性を得ることができ、表面性を良好にすることができるので好ましい。
【0229】
また、エチレン性不飽和基を含む樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。質量平均分子量を1000以上とすることにより、良好な耐熱性、膜強度を得ることができるので好ましい。また、質量平均分子量を40000以下とすることにより、良好な現像性を得ることができるので好ましい。
【0230】
組成物が(C)基材成分を含有する場合、(C)基材成分の組成物中の含有量は、組成物の固形分の質量に対して、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、65〜80質量%が特に好ましい。
【0231】
<(D)光重合開始剤、酸発生剤、又は硬化剤>
組成物が、エポキシ化合物やオキセタン化合物等の熱硬化性の(C)基材成分や、光硬化性の(C)基材成分を含む場合、組成物は、(C)基材成分を硬化させるための成分として、光重合開始剤、酸発生剤、又は硬化剤を含んでいてもよい。なお、組成物に含まれる(C)基材成分が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基や、アミノ基のようなエポキシ基やオキセタニル基との反応性を有する官能基を有するエポキシ化合物又はオキセタン化合物である場合、組成物は、必ずしも、酸発生剤や硬化剤を含有する必要はない。
本出願の明細書では、不飽和二重結合を有する化合物の光重合を開始させる化合物を「光重合開始剤」と記し、光又は熱の作用により酸を発生させ、発生した当該酸によりエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物を硬化させる化合物を「酸発生剤」と記し、従来からエポキシ化合物やオキセタン化合物用の硬化剤として使用されている酸発生剤の他の化合物を「硬化剤」と記す。
【0232】
〔(D1)光重合開始剤〕
(D1)光重合開始剤は、光硬化性の(C)基材成分とともに使用され、露光により、光硬化性の(C)基材成分を硬化させる。(D1)光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0233】
光重合開始剤として具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)、(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)[4−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−2−メチルフェニル]メタノンO−アセチルオキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等が挙げられる。これらの(D1)光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0234】
これらの中でも、オキシム系の光重合開始剤を用いることが、感度の面で特に好ましい。オキシム系の光重合開始剤の中で、特に好ましいものとしては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(ピロール−2−イルカルボニル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)、及び1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0235】
(D1)光重合開始剤の含有量は、組成物の固形分100質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
【0236】
また、この(D1)光重合開始剤に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0237】
〔(D2)酸発生剤〕
(D2)酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤、又は加熱により酸を発生する熱酸発生剤が好適に使用される。(D2)酸発生剤は、エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物、又はオキセタン化合物等とともに使用することができ、光又は熱の作用により酸を発生させることで、硬化に寄与する。
【0238】
光酸発生剤としては、以下に説明する、第一〜第五の態様の酸発生剤が好ましい。以下、光酸発生剤のうち好適なものについて、第一から第五の態様として説明する。
【0239】
光酸発生剤における第一の態様としては、下記式(d1)で表される化合物が挙げられる。
【0240】
【化38】
【0241】
上記式(d1)中、X1dは、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R1dは、X1dに結合している有機基であり、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、又は炭素数2〜30のアルキニル基を表し、R1dは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R1dの個数はg+h(g−1)+1であり、R1dはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR1dが互いに直接、又は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR2d−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、もしくはフェニレン基を介して結合し、X1dを含む環構造を形成してもよい。R2dは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。
【0242】
2dは下記式(d2)で表される構造である。
【化39】
【0243】
上記式(d2)中、X4dは炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又は炭素数8〜20の複素環化合物の2価の基を表し、X4dは炭素数1〜8のアルキル、炭素数1〜8のアルコキシ、炭素数6〜10のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X5dは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR2d−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。h+1個のX4d及びh個のX5dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2dは前述の定義と同じである。
【0244】
3d−はオニウムの対イオンであり、下記式(d17)で表されるアルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(d18)で表されるボレートアニオンが挙げられる。
【0245】
【化40】
【0246】
上記式(d17)中、R3dは、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基を表す。R3dがフッ素原子で置換されたアルキル基である場合、アルキル基中の水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましい。jはその個数を示し、1〜5の整数である。j個のR3dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0247】
【化41】
【0248】
上記式(d18)中、R4d〜R7dは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0249】
上記式(d1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]4−ビフェニルルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]3−ビフェニルスルホニウム、[4−(4−アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、又は4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
【0250】
上記式(d1)で表される化合物中のオニウムイオンのうち、好ましいオニウムイオンとしては下記式(d19)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
【0251】
【化42】
【0252】
上記式(d19)中、R8dはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール、アリールカルボニル、からなる群より選ばれる基を表す。X2dは、上記式(d1)中のX2dと同じ意味を表す。
【0253】
上記式(d19)で表されるスルホニウムイオンの具体例としては、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]4−ビフェニルスルホニウム、フェニル[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]3−ビフェニルスルホニウム、[4−(4−アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ジフェニル[4−(p−ターフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムが挙げられる。
【0254】
上記式(d17)で表されるアルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R3dはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜8、さらに好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記式(d1)で表されるオニウムアルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0255】
特に好ましいR3dは、炭素数が1〜4、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFCが挙げられる。R3dの個数jは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4、特に好ましくは2又は3である。
【0256】
好ましいアルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CHCHPF、[(CHCHPF、[((CHCH)PF、[((CHCH)PF、[(CHCHCHPF、[(CHCHCHPF、[((CHCHCHPF、[((CHCHCHPF、[(CHCHCHCHPF、又は[(CHCHCHPF、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF、又は[(CFCFCFPFが挙げられ、これらのうち、[(CHCHPF、[(CHCHCHPF、[((CHCH)PF、[((CHCH)PF、[((CHCHCHPF、又は[((CHCHCHPF、[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、又は[((CFCFCFPFが特に好ましい。
【0257】
上記式(d18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C)が特に好ましい。
【0258】
光酸発生剤における第二の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記式(d3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0259】
【化43】
【0260】
上記式(d3)中、R9d、R10d、R11dは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0261】
また、光酸発生剤における第三の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記式(d4)で表される化合物が挙げられる。
【0262】
【化44】
【0263】
上記式(d4)中、R12dは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13dは、置換もしくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0264】
上記式(d4)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13dは、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12dが芳香族性化合物基であり、R13dが炭素数1〜4のアルキル基である化合物が好ましい。
【0265】
上記式(d4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R12dがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13dがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記式(d4)で表される光酸発生剤としては、具体的には下記式で表される光酸発生剤が挙げられる。
【0266】
【化45】
【0267】
また、光酸発生剤における第四の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1〜3が好ましい。
【0268】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記式(d5)で表される構造が好ましい。
【化46】
【0269】
上記式(d5)中、R14d、R15d、R16dのうち少なくとも1つは下記式(d6)で表される基を表し、残りは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R14d、R15d、R16dのうちの1つが下記式(d6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0270】
【化47】
【0271】
上記式(d6)中、R17d、R18dは、それぞれ独立に水酸基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基を表し、R19dは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表す。l及びmは、それぞれ独立に0〜2の整数を表し、l+mは3以下である。ただし、R17dが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R18dが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0272】
上記R14d、R15d、R16dのうち上記式(d6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3〜9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5〜6である。
【0273】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
【0274】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0275】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記式(d7)、(d8)で表されるもの等を挙げることができ、特に下記式(d8)で表される構造が好ましい。
【化48】
【0276】
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
【0277】
従って、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0278】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
【0279】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
【0280】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
【0281】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0282】
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記式(d9)で表されるものが挙げられる。
【化49】
【0283】
上記式(d9)において、R20dは、下記式(d10)、(d11)で表される基や、下記式(d12)で表される基である。
【化50】
【0284】
上記式(d10)中、xは1〜4の整数を表す。また、上記式(d11)中、R21dは、水素原子、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1〜3の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0285】
また、アニオン部としては、下記式(d13)、(d14)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0286】
【化51】
【0287】
上記式(d13)、(d14)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Y、Zは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
【0288】
のアルキレン基の炭素数、又はY、Zのアルキル基の炭素数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0289】
また、Xのアルキレン基又はY、Zのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0290】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記式(d15)、(d16)で表される化合物が挙げられる。
【0291】
【化52】
【0292】
また、光酸発生剤における第五の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシラート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシラート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0293】
熱酸発生剤の好適な例としては、有機スルホン酸のオキシムエステル化合物、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2−ニトロベンジルトシラート、その他の有機スルホン酸のアルキルエステル等が挙げられる。また、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩等も熱酸発生剤として適宜使用することが可能である。これらの中では、加熱されない状態での安定性に優れることから、有機スルホン酸のオキシムエステル化合物が好ましい。
【0294】
硬化性成物中の酸発生剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。組成物中の酸発生剤の含有量は、組成物中のエポキシ化合物の量と、オキセタニル化合物の量との合計100質量に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
【0295】
〔(D3)硬化剤〕
(D3)硬化剤は、上記の(D2)酸発生剤以外のものであって、従来公知のものを適宜選択することができる。(D3)硬化剤は、エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物又はオキセタン化合物とともに使用してもよく、加熱により硬化に寄与する。
【0296】
(D3)硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、多価アミン系硬化剤、触媒型硬化剤が挙げられる。以下、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、及び触媒型硬化剤について順に説明する。
【0297】
フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。フェノール系硬化剤の使用量は、組成物中の基材の量(特にエポキシ化合物の量、及びオキセタニル化合物(エポキシ基及び/又はオキセタニル基含有樹脂を含む)の合計量)100質量に対して、1〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましく、80〜120質量部が特に好ましい。これらのフェノール系硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0298】
酸無水物系硬化剤としては、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。酸無水物系硬化剤の使用量は、組成物中の基材の量(特にエポキシ化合物、及びオキセタニル化合物(エポキシ基及び/又はオキセタニル基含有樹脂を含む)の合計量)100質量に対して、1〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましく、80〜120質量部が特に好ましい。これらの酸無水物系硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0299】
多価アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のポリアミン系硬化剤;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等の芳香族ジアミン;後述の置換グアニジン;後述の置換ビグアニジン;後述の置換尿素;後述のグアナミン誘導体;が挙げられる。
【0300】
置換グアニジンは、グアニジンに含まれる窒素原子に結合する水素原子が有機基で置換された化合物である。有機基は、N、O、S、P、及びハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。置換グアニジンが有する窒素原子に結合する有機基としては、炭化水素基又はシアノ基が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0301】
置換グアニジンの好適な具体例としては、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、及びジシアンジアミドが挙げられる。これらの中では、ジシアンジアミドが好ましい。
【0302】
置換ビグアニジンは、ビグアニジンに含まれる窒素原子に結合する水素原子が有機基で置換された化合物である。有機基は、N、O、S、P、及びハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。置換ビグアニジンが有する窒素原子に結合する有機基としては、炭化水素基又はシアノ基が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0303】
置換ビグアニジンの好適な具体例としては、メチルビグアニジン、ジメチルビグアニジン、テトラメチルビグアニジン、ヘキサメチルビグアニジン、及びヘプタメチルビグアニジンが挙げられる。
【0304】
置換尿素は、尿素に含まれる窒素原子に結合する水素原子が有機基で置換された化合物である。有機基は、N、O、S、P、及びハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。置換尿素は、下式(B1)で表される尿素二量体であってもよい。
N−CO−NX−X−NX−CO−NX・・・(B1)
(式(B1)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、Xは2価の有機基である。)
【0305】
置換尿素の好適な具体例としては、N,N−ジメチル−N’−(3−クロロ−4−メチルフェニル)尿素、N,N−ジメチル−N’−(4−クロロフェニル)尿素、N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N,N−ジメチル−N’−フェニル尿素、2,4−ビス(N’,N’−ジメチルウレイド)トルエン、1,4−ビス(N’,N’−ジメチルウレイド)ベンゼン、ジメチルプロピレン尿素、及び1,3−ヒドロキシメチル尿素が挙げられる。
【0306】
グアナミン誘導体の好適な具体例としては、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及びメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミン樹脂が挙げられる。これらの中でも、組成物の低温硬化の点で、芳香族ジアミン又は置換グアニジン(特にジシアンジアミド)が好ましい。
【0307】
多価アミン系硬化剤の使用量は、組成物中の基材の量(特にエポキシ化合物、及びオキセタニル化合物(エポキシ基及び/又はオキセタニル基含有樹脂を含む)の合計量)100質量に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましく、1〜15質量部が特に好ましい。これらの多価アミン系硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0308】
触媒型硬化剤は特に限定されないが、(A)成分以外のイミダゾール化合物が挙げられる。イミダゾール化合物としては、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(2MA−OK、四国化成工業株式会社製)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(2MZ−A、四国化成工業株式会社製)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ、四国化成工業株式会社製)2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ、四国化成工業株式会社製)等が挙げられる。触媒型硬化剤の使用量は、組成物中の基材の量(特にエポキシ化合物、及びオキセタニル化合物(エポキシ基及び/又はオキセタニル基含有樹脂を含む)の合計100質量に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜80質量部がより好ましく、1〜50質量部が特に好ましい。これらの触媒型硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0309】
<(E)有機溶剤>
組成物は、塗布性の改善や、粘度調整のため、(E)有機溶剤(以下、「(E)成分」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0310】
有機溶剤として具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等の窒素含有有機溶媒;;等が挙げられる。これらの中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、乳酸アルキルエステル類、上述した他のエステル類、又は窒素含有有機溶媒が好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、上述した他のエステル類、又は窒素含有有機溶媒がより好ましい。また、これらの溶剤のうち、低沸点及び/又は揮発性の高い溶剤を好適に選択してもよい。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0311】
組成物中の(E)有機溶剤の含有量は、特に限定されない。例えば、組成物を塗布して塗布膜を形成する場合、組成物中の(E)有機溶剤の含有量は、組成物を基材に塗布可能な範囲内の量で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。
【0312】
<(F)その他の成分>
組成物は、以上説明した成分の他に、種々の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤の例としては、シリカ、有機ベントナイト、及びモンモリロナイト等の増粘剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤、分散剤、硬化助剤、カルボキシル基含有樹脂、並びにホスフィン酸金属塩等が挙げられる。以下、これらの添加剤のうち、カルボキシル基含有樹脂と、ホスフィン酸金属塩について説明する。
【0313】
(カルボキシル基含有樹脂)
組成物が熱硬化性又は光硬化性の(C)基材成分を含有する場合、組成物がカルボキシル基含有樹脂を含むのが好ましい。カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂であって、組成物に均一に混合可能なものであれば特に限定されない。組成物にカルボキシル基含有樹脂を配合することにより、組成物を位置選択的に硬化させた場合に、アルカリ性の現像液による現像が可能になる。また、組成物にカルボキシル基含有樹脂を配合することで、組成物を用いて形成される硬化物の基材への密着性を向上させることができる。
【0314】
カルボキシル基含有樹脂の好適な例としては、前述の不飽和カルボン酸と、エポキシ基を持たない脂環式基含有不飽和化合物、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、及びスチレン類等のエポキシ基及びカルボキシル基を持たない単量体との共重合体が挙げられる。
【0315】
また、脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物、並びにポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、及びビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール等のジオール化合物とを、重付加させて得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂も、カルボキシル基含有樹脂として好適に使用される。
【0316】
ウレタン樹脂は一般的に柔軟な材料であるため、カルボキシル基含有ウレタン樹脂を組成物に配合することで、組成物の硬化物に柔軟性を付与することができる。
【0317】
(ホスフィン酸金属塩)
組成物が熱硬化性又は光硬化性の(C)基材成分を含有する場合、組成物は、硬化物の難燃性を高めるために、ホスフィン酸金属塩を含んでいてもよい。ホスフィン酸金属塩としては、リン原子に2つの有機基が結合する有機ホスフィン酸塩が好ましい。リン原子に結合する有機基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、及び炭素原子数6〜12のアリール基が好ましい。ホスフィン酸金属塩としては、ホスフィン酸カルシウム塩、ホスフィン酸アルミニウム塩、及びホスフィン酸カルシウム塩が好ましい。
【0318】
ホスフィン酸金属塩の市販品としては、例えば、クラリアント社製のEXOLIT OP 1230、EXOLIT OP 930、及びEXOLIT OP 935等が挙げられる。
【0319】
以上説明した成分を、所定の比率で均一に混合することで、組成物が得られる。
【0320】
≪硬化物の形成方法≫
組成物が、熱硬化性又は光硬化性の(C)基材成分を含む場合、組成物を所定の形状に成形した後に、成形された組成物を加熱又は露光することで、硬化物を形成できる。
【0321】
典型的には、組成物は基材の表面に塗布され膜状に成形される。組成物を基材の表面に塗布する方法の好適な例としては、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、及びカーテンコート法等が挙げられる。このような方法で、基材の表面に組成物が塗布された後、(S)成分を含んでいる場合は、必要に応じて、塗布膜は、60〜100℃(好ましくは60〜95℃)の温度で加熱される。
【0322】
基材は特に限定されず、組成物に含まれる(B)微粒子や(C)基材成分の種類や、組成物の使用目的に応じて、適宜選択される。基材の例としては、予め回路が形成されたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、紙フェノール、紙/フェノール樹脂、紙/エポキシ樹脂、ガラス布/エポキシ樹脂、ガラス不織布/エポキシ樹脂、合成繊維/エポキシ樹脂、ガラス布/ポリイミド樹脂、ガラス布/エポキシ変性ポリイミド樹脂、ガラス布/ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂、ガラス布/フッ素系樹脂、ガラス布/PPO(ポリフェニレンオキサイド)、ガラス布/PPE(ポリフェニレンエーテル)、銅張積層版、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、及び各種ウエハ等が挙げられる。
【0323】
組成物が、光硬化性の(C)基材成分のような不飽和二重結合を有する重合性化合物と、(D1)光重合開始剤とを組み合わせて含む組成物や、エポキシ化合物又はオキセタン化合物と、光の作用により酸を発生する(D2)酸発生剤とを組わせて含む組成物である場合、硬化性組成物を硬化させるために露光が行われる。露光は、例えば、活性エネルギー線を照射するコンベア式の光硬化装置を用いて行われる。また、フォトマスクを介して露光する方法や、レーザーダイレクト露光機を用いる方法等により、組成物の塗布膜に対して位置選択的に露光を行ってもよい。露光量は、組成物の組成を勘案して、適宜選択される。
【0324】
組成物に対する活性エネルギー線の照射に用いられる露光機としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲の波長の紫外線を照射できる装置を用いることができる。露光量は、組成物の厚さによってもことなるが、典型的には、20〜2000mJcmが好ましく、20〜1500mJ/cmが好ましい。
【0325】
組成物が、エポキシ化合物やオキセタン化合物と(D3)硬化剤とを組み合わせて含む組成物や、カルボキシル基とエポキシ基とを有する自己硬化性の硬化性重合体を含む組成物や、ポリアミック酸のようなポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂等の前駆体樹脂を含む場合、組成物を硬化させるために加熱が行われる。その際の加熱温度は、硬化性組成物が十分に硬化し、硬化性組成物の熱劣化等が生じない温度であれば特に限定されないが、100〜180℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。組成物が硬化剤を含む場合、100〜180℃の温度範囲で組成物を硬化させやすい。
なお、硬化温度の上限は180℃には限定されない。硬化時の加熱により消費されるエネルギー量が少ない点や、硬化物が熱劣化しにくい点等から、硬化温度は180℃以下であるのが好ましい。
【0326】
組成物が、熱硬化性の(C)基材成分と、光硬化性の(C)基材成分とを組み合わせて含む場合、硬化性組成物に対する、露光と、加熱とが組み合わせて行われてもよい。
【0327】
組成物が、カルボキシル基含有樹脂のようなアルカリ可溶性成分を含む組成物であり、組成物に対する露光が位置選択的に行われた場合、露光された硬化性組成物は、濃度、0.3〜3質量%の炭酸ナトリウム水溶液のような周知のアルカリ性現像液で現像される。この他、アルカリ性現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、及びアンモニア等の塩基性含窒素化合物等の水溶液を用いることができる。現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、及びブラシ法等が挙げられる。
【0328】
以上説明した硬化物は、(A)成分の作用により凝集することなく分散された(B)微粒子を含む組成物を用いて形成されるため、均質である。かかる硬化物は、(B)微粒子の種類や(C)基材成分の種類に応じて、種々の目的で好適に使用される。
【実施例】
【0329】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記において、実施例1〜10、14、及び19〜25はそれぞれ、参考例1〜10、14、及び19〜25と読み替えるものとする。
【0330】
〔実施例1〜25、及び比較例1〜9〕
実施例では、(A)イミダゾール化合物((A)成分)として、下記調製例1及び2で得た、A1及びA2を用いた。比較例では、(A)イミダゾール化合物に類似する含窒素化合物((A’)成分)として、以下のA’1及びA’2を用いた。
A’1:1−メチルイミダゾール
A’2:N,N−ジメチル−N’−フェニルウレア
【0331】
(調製例1)
調製例1において、下記構造のイミダゾール化合物(A1)を合成した。
【化53】
【0332】
まず、下記式の構造の桂皮酸誘導体30gをメタノール200gに溶解させた後、メタノール中に水酸化カリウム7gを添加した。次いで、メタノール溶液を40℃で撹拌した。メタノールを留去し、残渣を水200gに懸濁させた。得られた懸濁液にテトラヒドロフラン200gを混合、撹拌し、水相を分液した。氷冷下、塩酸4gを添加、撹拌した後に酢酸エチル100gを混合、撹拌した。混合液を静置した後、油相を分取した。油相から目的物を晶析させ、析出物を回収して、上記構造のイミダゾール化合物(A1)を得た。
【化54】
【0333】
上記構造のイミダゾール化合物(A1)のH−NMRの測定結果は以下の通りである。
H−NMR(DMSO):11.724(s,1H),7.838(s,1H),7.340(d,2H,J=4.3Hz),7.321(d,1H,J=7.2Hz),6.893(d,2H,J=4.3Hz),6.876(d,1H,J=6.1Hz),5.695(dd,1H,J=4.3J,3.2J),3.720(s,3H),3.250(m,2H)
【0334】
(調製例2)
調製例2において、下記構造のイミダゾール化合物(A2)を合成した。
【化55】
【0335】
具体的には、原料化合物を下記式の構造の桂皮酸誘導体に変更することの他は、調製例1と同様にして上記構造のイミダゾール化合物(A2)を得た。
【化56】
【0336】
実施例及び比較例において、(B)微粒子((B)成分)として、下記のB1〜B10を用いた。
B1:酸化チタン(ルチル型、体積平均粒子径50nm)
B2:酸化チタン(ルチル型、体積平均粒子径700nm)
B3:酸化チタン(ルチル型、体積平均粒子径3500nm)
B4:酸化チタン(アナターゼ型、体積平均粒子径50nm)
B5:硫酸バリウム(体積平均粒子径50nm)
B6:無機黒色顔料(体積平均粒子径50nm)
B7:CeO:(体積平均粒子径50nm)
B8:La2O3:(体積平均粒子径50nm)
B9:カーボンブラック:(体積平均粒子径50nm)
B10:カーボンブラック:(体積平均粒子径700nm)
B11:カーボンブラック:(体積平均粒子径3500nm)
B12:スチレン−メチルメタクリレート共重合体微粒子:(体積平均粒子径50nm)
B13:スチレン−メチルメタクリレート共重合体微粒子:(体積平均粒子径700nm)
B14:スチレン−メチルメタクリレート共重合体微粒子:(体積平均粒子径3500nm)
【0337】
実施例及び比較例において、(C)基材成分((C)成分)として、熱硬化性の基材成分である下記構造のC1〜C9と、下記のC10及びC11とを用いた。
なお、下式C1〜C4において、構成単位の右下の数値は、樹脂中の各構成単位の含有量(質量%)を表す。
C10:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、フェニレンジアミンとをモル比1:1で反応させて得たポリアミック酸
C11:テレフタル酸二クロリドと、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニルとをモル比1:1で反応させて得たポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体
【0338】
【化57】
【0339】
実施例及び比較例において、硬化剤として、下記D1:ジシアンジアミドを用いた。
【0340】
それぞれ表1に記載の種類及び量の(A)成分又は(A’)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とを、混合(溶解・分散)して各実施例及び比較例の組成物を得た。なお、(C)基材成分としてC1〜C4の樹脂を用いた場合は溶剤(E)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い固形分濃度が25質量%となるように調整した。
得られた組成物について、下記方法に従って、保管安定性と、硬化性とを評価した。また、実施例6、11〜13、15、及び16と、比較例4及び5とについては、硬化物の引張伸度を評価した。
【0341】
<保管安定性評価>
各実施例及び比較例の組成物を、室温にて7日間静置した後、組成物を目視観察した。組成物に沈殿が観察された場合を○と判定した。組成物に沈殿が観察されなかった場合を×と判定した。
【0342】
<低温硬化性>
2枚の金型を用意し、一方の金型に硬化性組成物を注入し、反対側の金型で挟んだ。ここで、(C)基材成分としてC1〜C4の樹脂を用いた各例については、90℃2分間のプリベーク処理を行ってから、反対側の金型で挟んだ。その後、金型に注入された硬化性組成物を、5分間、表1に記載の温度で加熱した後、金型を剥離して、厚さ2mmの板状の試験片を得た。試験片の表面がべたつきのないタックフリーの状態となっていることを硬化の目安(硬化したものは○、硬化していないものは×)として確認を行った。
【0343】
<引張伸度>
実施例6、11〜13、15、及び16と、比較例4及び5との組成物をウエハ基板上に、アプリケーター(YOSHIMITSU SEIKI製、TBA−7型)により塗布した。ウエハ基板上の塗布膜を160℃で5分間加熱して、膜厚約10μmの硬化膜を形成した。得られた硬化膜から、IEC450規格に従った形状のダンベル型試験片を打ち抜いて、引張伸度測定用の試験片を得た。得られた試験片を用いて、チャック間距離20mm、引張速度2mm/分の条件で、万能材料試験機(TENSILON、株式会社オリエンテック製)によって、硬化物の破断伸度を測定した。破断伸度の値を表1に記す。
【0344】
【表1】
【0345】
表1によれば、実施例から、組成物が所定の構造の(A)成分と、体積平均粒子径が3000nm以下である(B)微粒子とを組み合わせて含む場合、(B)微粒子の凝集が抑制されることが分かる。
【0346】
また、実施例によれば、組成物が所定の構造の(A)成分と、体積平均粒子径が3000nm以下である(B)微粒子と、熱硬化性の(C)基材成分とを組み合わせて含む場合、(B)微粒子の凝集を抑制しつつ、低温で組成物が硬化されることが分かる。
他方、実施例によれば、組成物が含窒素化合物を含んでいても、含窒素化合物が(A)成分と異なる構造の化合物である場合、(B)微粒子の凝集を抑制できず、(C)成分の熱硬化にもやや高い温度が必要であることが分かる。
【0347】
比較例4〜7によれば、組成物が含窒素化合物を含有しない場合、(B)微粒子の凝集を抑制できず、(C)成分の熱硬化にも高い温度が必要であることが分かる。
【0348】
比較例3、8及び9によれば、(B)成分の体積平均粒子径が3000nmを超える場合、(A)成分の作用によっても(B)微粒子の凝集を抑制しにくいことが分かる。
【0349】
実施例6、11〜13、15、及び16と、比較例4及び5との比較によれば、組成物が(A)成分と、熱硬化性の(C)基材成分とを含む場合、組成物を熱硬化させることにより引張伸度に優れる硬化物が得られることが分かる。