(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チャンバー内に被処理体を配置し、前記チャンバー内に成膜ガスを供給するとともに、前記チャンバー内にプラズマを生成させ、前記プラズマにより前記成膜ガスを励起させて被処理体上に所定の膜を成膜するプラズマ成膜方法であって、
前記成膜ガスとして、シリコン原料ガスおよび窒素含有ガスを用い、前記プラズマはマイクロ波プラズマであり、前記チャンバー内に、前記成膜ガスとともにプラズマ生成ガスとしてヘリウムガスを、前記成膜ガスと前記ヘリウムガスとの分圧比率が0.15〜2.5の範囲となるように供給し、前記チャンバー内に前記マイクロ波プラズマとしてヘリウムガスを含むプラズマを生成させ、これにより、プラズマを安定化しつつ、前記所定の膜として、所望の膜厚均一性および膜質均一性を有する窒化珪素膜を成膜することを特徴とするプラズマ成膜方法。
前記プラズマ生成手段は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、マイクロ波を放射するスロットを有する平面アンテナと、前記チャンバーの天壁を構成する誘電体からなるマイクロ波透過板とを有し、前記平面アンテナの前記スロットおよび前記マイクロ波透過板を介してマイクロ波を前記チャンバー内に放射させ、前記チャンバー内にマイクロ波プラズマを供給し、前記チャンバー内にマイクロ波プラズマを生成させることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ成膜装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近時、半導体素子の微細化が進んでおり、成膜処理において、膜厚均一性や膜質均一性への要求が高まっている。しかし、プラズマ生成ガスとしてアルゴンガスを用いた場合には、十分な膜厚均一性や膜質均一性が得られず、むしろ悪化する場合もあることが判明した。一方、このようなことを回避するため、アルゴンガスを用いずにプラズマ成膜処理を行うと、プラズマ安定性が不十分になる可能性がある。
【0007】
したがって、本発明は、安定性が高く均一なプラズマを生成することができ、均一性の高い膜を得ることができるプラズマ成膜方法およびプラズマ成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、チャンバー内に被処理体を配置し、前記チャンバー内に成膜ガスを供給するとともに、前記チャンバー内にプラズマを生成させ、前記プラズマにより前記成膜ガスを励起させて被処理体上に所定の膜を成膜するプラズマ成膜方法であって、前記成膜ガスとして、シリコン原料ガスおよび窒素含有ガスを用い、前記プラズマはマイクロ波プラズマであり、前記チャンバー内に、前記成膜ガスとともにプラズマ生成ガスとしてヘリウムガスを、
前記成膜ガスと前記ヘリウムガスとの分圧比率が0.15〜2.5の範囲となるように供給し、前記チャンバー内に前記マイクロ波プラズマとしてヘリウムガスを含むプラズマを生成させ、これにより、プラズマを安定化しつつ、前記所定の膜として、所望の膜厚均一性および膜質均一性を有する窒化珪素膜を成膜することを特徴とするプラズマ成膜方法
を提供する。
【0009】
本発明の第2の観点は、被処理体が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内で被処理体が保持される基板保持部材と、前記チャンバー内にガスを供給するガス供給機構と、前記チャンバー内を排気する排気機構と、前記チャンバー内にマイクロ波プラズマを生成させるプラズマ生成手段とを有し、前記ガス供給機構は、前記被処理体上にシリコン原料ガスおよび窒素含有ガスを含む成膜ガスと、プラズマ生成ガスとしてのヘリウムガスとを、
前記成膜ガスと前記ヘリウムガスとの分圧比率が0.15〜2.5の範囲となるように前記チャンバー内に供給し、前記プラズマ生成手段により、前記チャンバー内に前記マイクロ波プラズマとしてヘリウムガスを含むプラズマを生成させ、該プラズマにより、プラズマを安定化しつつ、前記成膜ガスを励起させて前記被処理体上に所望の膜厚均一性および膜質均一性を有する窒化珪素膜を成膜することを特徴とするプラズマ成膜装置を提供する。
【0010】
本発明におい
て、前記マイクロ波プラズマとしては、RLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ処理装置により生成されたものを用いることができる。
【0012】
前記被処理体の処理温度は、250〜550℃の範囲とすることができ、前記チャンバー内の処理圧力は、6.5〜100Paの範囲とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プラズマにより成膜ガスを励起させて被処理基板上に所定の膜を成膜するにあたり、チャンバー内に、成膜ガスとともにプラズマ生成ガスとしてヘリウムガスを供給し、チャンバー内にヘリウムガスを含むプラズマを生成させるので、安定性が高く均一なプラズマを生成することができ、膜厚や膜質の均一性が高い膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<プラズマ成膜装置>
図1は本発明の一実施形態に係るプラズマ成膜方法が適用可能なプラズマ成膜装置の一例を示す断面図である。
図1のプラズマ処理装置は、RLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ成膜装置として構成されており、被処理体である半導体ウエハ(以下単に「ウエハ」と記す)にプラズマCVDにより窒化珪素(SiN)膜を成膜するようになっている。
【0017】
図1に示すように、プラズマ成膜装置100は、気密に構成され、接地された略円筒状のチャンバー1を有している。チャンバー1の底壁1aの略中央部には円形の開口部10が形成されており、底壁1aにはこの開口部10と連通し、下方に向けて突出する排気室11が設けられている。
【0018】
チャンバー1内には被処理体、例えばウエハWを水平に支持するためのAlN等のセラミックスからなるサセプタ2が設けられている。このサセプタ2は、排気室11の底部中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材3により支持されている。また、サセプタ2には抵抗加熱型のヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5はヒーター電源6から給電されることによりサセプタ2を加熱しウエハWを加熱する。また、サセプタ2は電極7が埋め込まれており、電極7には整合器8を介してバイアス印加用の高周波電源9が接続されている。
【0019】
サセプタ2には、ウエハWを支持して昇降させるためのウエハ支持ピン(図示せず)がサセプタ2の表面に対して突没可能に設けられている。
【0020】
チャンバー1の側壁には環状をなすガス導入部15が設けられており、このガス導入部15には均等にガス放射孔15aが形成されている。このガス導入部15にはガス供給機構16が接続されている。
【0021】
ガス供給機構16は、Si原料ガス、窒素含有ガス、およびプラズマ生成ガスであるヘリウム(He)ガスを供給するようになっている。Si原料ガスとしてはモノシラン(SiH
4)やジシラン(Si
2H
6)、窒素含有ガスとしてはN
2ガスやアンモニア(NH
3)が例示される。これらのガスは、それぞれのガス供給源から、別個の配管によりマスフローコントローラ等の流量制御器により独立に流量制御され、ガス導入部15へ供給される。
図1では、Si原料ガスとしてSiH
4ガス、窒素含有ガスとしてN
2ガスを用いた例を示す。
【0022】
なお、ガス導入部15よりも下方に、例えばシャワープレート等の別のガス導入部を設け、シリコン原料ガス等のプラズマにより完全に解離されないほうが好ましいガスを別のガス導入部から、よりウエハWに近い電子温度がより低い領域に供給してもよい。
【0023】
上記排気室11の側面には排気管23が接続されており、この排気管23には真空ポンプや自動圧力制御バルブ等を含む排気機構24が接続されている。排気機構24の真空ポンプを作動させることによりチャンバー1内のガスが、排気室11の空間11a内へ均一に排出され、排気管23を介して排気され、自動圧力制御バルブによりチャンバー1内を所定の真空度に制御可能となっている。
【0024】
チャンバー1の側壁には、プラズマ成膜装置100に隣接する搬送室(図示せず)との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口25と、この搬入出口25を開閉するゲートバルブ26とが設けられている。
【0025】
チャンバー1の上部は開口部となっており、その開口部の周縁部がリング状の支持部27となっている。この支持部27に誘電体、例えば石英やAl
2O
3等のセラミックスからなる円板状のマイクロ波透過板28がシール部材29を介して気密に設けられている。したがって、チャンバー1内は気密に保持される。
【0026】
マイクロ波透過板28の上方には、マイクロ波透過板28に対応する円板状をなす平面アンテナ31がマイクロ波透過板28に密着するように設けられている。この平面アンテナ31はチャンバー1の側壁上端に係止されている。平面アンテナ31は導電性材料からなる円板で構成されている。
【0027】
平面アンテナ31は、例えば表面が銀または金メッキされた銅板またはアルミニウム板からなり、マイクロ波を放射するための複数のスロット32が貫通するように形成された構成となっている。スロット32のパターンの例としては、T字状に配置された2つのスロット32を一対として複数対のスロット32が同心円状に配置されているものを挙げることができる。スロット32の長さや配列間隔は、マイクロ波の波長(λg)に応じて決定され、例えばスロット32は、それらの間隔がλg/4、λg/2またはλgとなるように配置される。なお、スロット32は、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、スロット32の配置形態は特に限定されず、同心円状のほか、例えば、螺旋状、放射状に配置することもできる。
【0028】
この平面アンテナ31の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する誘電体、例えば石英、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの樹脂からなる遅波材33が密着して設けられている。遅波材33はマイクロ波の波長を真空中より短くして平面アンテナ31を小さくする機能を有している。
【0029】
平面アンテナ31とマイクロ波透過板28との間が密着した状態となっており、また、遅波板33と平面アンテナ31との間も密着されている。また、遅波板33、平面アンテナ31、マイクロ波透過板28、およびプラズマで形成される等価回路が共振条件を満たすようにマイクロ波透過板28、遅波材33の厚さが調整されている。遅波材33の厚さを調整することにより、マイクロ波の位相を調整することができ、平面アンテナ31の接合部が定在波の「はら」になるように厚さを調整することにより、マイクロ波の反射が極小化され、マイクロ波の放射エネルギーが最大となる。また、遅波板33とマイクロ波透過板28を同じ材質とすることにより、マイクロ波の界面反射を防止することができる。
【0030】
なお、平面アンテナ31とマイクロ波透過板28との間、また、遅波材33と平面アンテナ31との間は、離間していてもよい。
【0031】
チャンバー1の上面には、これら平面アンテナ31および遅波材33を覆うように、例えばアルミニウムやステンレス鋼、銅等の金属材からなるシールド蓋体34が設けられている。チャンバー1の上面とシールド蓋体34とはシール部材35によりシールされている。シールド蓋体34には、冷却水流路34aが形成されており、そこに冷却水を通流させることにより、シールド蓋体34、遅波材33、平面アンテナ31、マイクロ波透過板28を冷却するようになっている。なお、シールド蓋体34は接地されている。
【0032】
シールド蓋体34の上壁の中央には開口部36が形成されており、この開口部には導波管37が接続されている。この導波管37の端部には、マッチング回路38を介してマイクロ波発生装置39が接続されている。これにより、マイクロ波発生装置39で発生した例えば周波数2.45GHzのマイクロ波が導波管37を介して上記平面アンテナ31へ伝播されるようになっている。なお、マイクロ波の周波数としては、8.35GHz、1.98GHz、860MHz、915MHz等、種々の周波数を用いることができる。
【0033】
導波管37は、上記シールド蓋体34の開口部36から上方へ延出する断面円形状の同軸導波管37aと、この同軸導波管37aの上端部にモード変換器40を介して接続された水平方向に延びる矩形導波管37bとを有している。矩形導波管37bと同軸導波管37aとの間のモード変換器40は、矩形導波管37b内をTEモードで伝播するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。同軸導波管37aの中心には内導体41が延在しており、この内導体41の下端部は、平面アンテナ31の中心に接続固定されている。これにより、マイクロ波は、同軸導波管37aの内導体41を介して平面アンテナ31へ均一に効率よく伝播される。
【0034】
プラズマ成膜装置100は制御部50を有している。制御部50は、プラズマ成膜装置100の各構成部、例えばマイクロ波発生装置39、ヒーター電源6、高周波電源9、排気機構24、ガス供給機構16のバルブや流量制御器等を制御するCPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。制御部50の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、プラズマ成膜装置100に、所定の動作を実行させる。
【0035】
<プラズマ成膜方法>
次に、このように構成されるプラズマ成膜装置100を用いたプラズマ成膜方法の一実施形態について
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
まず、ゲートバルブ26を開にして搬入出口25から被処理体であるウエハWをチャンバー1内に搬入し、サセプタ2上に載置する(ステップ1)。
【0037】
次いで、チャンバー1内を所定圧力に調整し、ガス供給機構16からガス導入部15を介して、チャンバー1内に、Si原料ガスとして例えばSiH
4ガス、窒素含有ガスとして例えばN
2ガス、プラズマ生成ガスであるHeガスを導入する(ステップ2)。そして、マイクロ波発生装置39から所定パワーのマイクロ波をチャンバー1内に導入してプラズマを生成し、プラズマCVDによりウエハW上にSiN膜を成膜する(ステップ3)。
【0038】
ステップ3について具体的に説明する。
マイクロ波発生装置39からの所定のパワーのマイクロ波を、マッチング回路38を経て導波管37に導く。導波管37に導かれたマイクロ波は、矩形導波管37bをTEモードで伝播される。TEモードのマイクロ波はモード変換器40でTEMモードにモード変換され、TEMモードのマイクロ波が同軸導波管37aをTEMモードで伝播される。そして、TEMモードのマイクロ波は、遅波材33、平面アンテナ31のスロット32、およびマイクロ波透過板28を透過し、チャンバー1内に放射される。
【0039】
マイクロ波は表面波としてマイクロ波透過板28の直下領域にのみ広がり、これにより表面波プラズマが生成される。そして、プラズマは下方に拡散し、ウエハWの配置領域では、高電子密度かつ低電子温度のプラズマとなる。
【0040】
Si原料ガスおよび窒素含有ガスは、プラズマにより励起され、例えばSiHやNH等の活性種に解離され、これらがウエハW上で反応してSiN膜が成膜される。
【0041】
ところで、このようなプラズマを安定的に生成するために、従来からプラズマ生成ガスが用いられ、従来、プラズマ生成ガスとして、コスト的および工業的に有利なArガスが多用されてきた。上述した特許文献2等に、Arガス以外の他の希ガスの使用可能性が示されているものの、これらはArガスと同様の機能を有するとみなされており、Arガス以外の希ガスはほとんど用いられていなかった。
【0042】
しかし、プラズマ生成ガスとしてArガスを用いた場合には、最近の半導体素子の微細化に対応して要求される膜厚均一性や膜質均一性への要求を満たすことが困難となりつつあることが判明した。
【0043】
すなわち、Arガスは原子量が大きい元素であり、均一に広がり難く、かつイオン化してウエハW上の膜に衝突した場合に膜にダメージを与えやすいため、十分な膜厚均一性や膜質均一性が得られず、むしろ悪化してしまう。
【0044】
このようなことを回避するために、Arガスを用いずにプラズマ成膜処理を行うと、プラズマ安定性が不十分になることがあった。
【0045】
そこで、他のプラズマ生成ガスを検討した結果、Heガスを用いることにより、プラズマを安定化する機能を保持した上で、所望の膜厚均一性や膜質均一性が得られることが新たに見出された。
【0046】
すなわち、Heガスは、イオン化しやすくプラズマ生成ガスとしての機能を果たすのみならず、原子量が小さい軽い元素であるため、広がりやすく、プラズマを広げて均一化する効果があり、さらに、原子量が小さいゆえにウエハW上の膜に対してArガスのようなプラズマダメージを与え難い。このため、プラズマ生成ガスとしてHeガスを供給することにより、プラズマを安定化しつつ、所望の膜厚均一性や膜質均一性が得られるのである。
【0047】
このとき、成膜ガスであるSi原料ガスおよび窒素含有ガス(SiH
4ガス+N
2ガス)とHeガスとの分圧比(流量比)は、0.15〜2.5(すなわち、成膜ガスとHeガスとの分圧比が0.15:1〜2.5:1)の範囲であることが好ましい。
【0048】
Si原料ガスとしてSiH
4ガスを用い、窒素含有ガスとしてN
2ガスを用いたときの他の条件の好ましい範囲は、以下のとおりである。
処理温度(サセプタ2表面の温度):250〜550℃
処理圧力:6.5〜100Pa(50〜750mTorr)
Heガス流量:100〜400mL/min(sccm)
SiH
4ガス流量:10〜200mL/min(sccm)
N
2ガス流量:10〜200mL/min(sccm)
マイクロ波パワー密度:0.01〜0.04W/cm
2
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、プラズマ生成ガスとしてHeガスを用いることにより、安定性が高く均一なプラズマを生成することができ、かつ膜厚均一性および膜質均一性等の均一性の高いSiN膜を得ることができる。
【0050】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
ここでは、
図1に示すプラズマ成膜装置を用いてプラズマCVDによりSiN膜を成膜するにあたり、プラズマ生成ガスとしてHeガスを添加しない場合とHeガスを添加した場合について膜厚均一性を比較した。
【0051】
図3はその結果を示すものであり、(a)はHeガスを添加しなかった場合、(b)はHeガスを流量200sccmで添加した場合のウエハ径方向の膜厚分布を示す図である。なお、膜厚分布はウエハの4つの径方向について求めた。また、ウエハの周方向の膜厚分布も求めた。
【0052】
Heガスの供給条件以外の条件は両者で共通であり、以下のとおりとした。
SiH
4ガス流量:90sccm
N
2ガス流量:70sccm
マイクロ波パワー密度:2.78W/cm
2
処理時間:80sec
【0053】
図3(a)に示すように、Heガス添加なしの場合には、ウエハの中心から周縁方向に向けて膜厚が上昇し、周縁部分において膜厚が低下するといった膜厚の不均一性が見られ、膜厚レンジ(1σ)が6.9%であった。これに対し、
図3(b)に示すように、Heガス添加ありの場合には、膜厚はほぼフラットであり、膜厚レンジが3.0%となった。また、半径147mmの位置における周方向の膜厚レンジは、Heガス添加なしの場合が6.0%であったのに対し、Heガス添加ありの場合では1.1%であった。これらの結果から、Heガスを添加することにより、膜厚均一性が著しく向上することが確認された。
【0054】
次に、種々の条件でSiN膜を成膜した際の、Heガス添加の有無による膜厚均一性と膜質均一性について調査した。
【0055】
ここでは、処理条件を以下の範囲で調整し、一部ハードの調整も行って、Heガス添加なしの場合と、Heガス添加あり(100〜400sccm)の場合について、膜厚の均一性と膜質の均一性を調査した。
【0056】
・成膜条件
SiH
4ガス流量:10〜200sccm
N
2ガス流量:5〜200sccm
マイクロ波パワー密度:2.43〜3.34W/cm
2
処理時間:10〜200sec
【0057】
膜厚の均一性は、膜厚レンジの平均値(%)により求めた。また、膜質の指標としては膜の屈折率(RI)を用い、膜質の均一性は屈折率レンジにより求めた。
図4は、Heガス添加なしおよびHeガス添加ありの場合における、各ケースでの膜厚レンジの平均値(%)と屈折率(RI)レンジをプロットした図である。
【0058】
図4に示すように、Heガスを添加した場合には、Heガス添加なしの場合に比較して、膜厚レンジの平均値および屈折率レンジともに小さくなる傾向にあり、Heガスを添加することにより、膜厚の均一性および膜質の均一性ともに向上することが確認された。
【0059】
<他の適用>
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、本発明の思想の範囲内において種々変形可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、RLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ処理装置を用いてプラズマCVDによりSiN膜を成膜する場合を例にとって説明したが、プラズマとしては、他の方式のマイクロ波プラズマであっても、誘導結合プラズマ等のマイクロ波プラズマ以外のプラズマであってもよく、成膜される膜としてはSiN膜に限らず、他の膜の成膜に適用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、被処理体として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限るものではなく、ガラス基板やセラミックス基板等の他の被処理体であってもよい。