(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム描画装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。ショットサイズが変更される描画装置であれば、荷電粒子ビーム描画装置は可変成形型に限るものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型(VSB型)の描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102、及び描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、電磁レンズ211、ブランキング偏向器212、照明レンズ202(電磁レンズ)、第1の成形アパーチャ基板203、投影レンズ204、成形偏向器205、第2の成形アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、及び検出器210が配置されている。描画室103内には、ステージ105が配置される。ステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。また、ステージ105上には、ビームスキャン用のマーク106が配置される。
【0017】
また、ブランキング偏向器212は、光軸方向に対して電磁レンズ211と照明レンズ202との間に配置される。そして、第1の成形アパーチャ基板203(成形アパーチャ部材)は、光軸方向に対して照明レンズ202よりも後側に配置される。そして、成形偏向器205は、光軸方向に対して照明レンズ202と投影レンズ204との間に配置される。対物レンズ207は、光軸方向に対して、ブランキング偏向器212及び成形偏向器205よりも後側に配置される。
【0018】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、レンズ制御回路120、アンプ122、偏向制御回路130、DAC(デジタル・アナログ変換)アンプ135,136,138、ステージ駆動機構139、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機110、メモリ112、レンズ制御回路120、アンプ122、偏向制御回路130、ステージ駆動機構139、及び記憶装置140,142,144は、図示しないバスで接続されている。
【0019】
制御計算機110内には、サイズ設定部50、ショットデータ生成部51、位置ずれ量演算部53、座標補正部55、描画制御部57、及び測定部58が配置される。サイズ設定部50、ショットデータ生成部51、位置ずれ量演算部53、座標補正部55、描画制御部57、及び測定部58といった各「〜部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。サイズ設定部50、ショットデータ生成部51、位置ずれ量演算部53、座標補正部55、描画制御部57、及び測定部58に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0020】
偏向制御回路130内には、偏向量演算部132が配置される。偏向量演算部132は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。偏向量演算部132に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
【0021】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。また、描画装置100には、マウスやキーボード等の入力装置、及びモニタ装置等が接続されていても構わない。
【0022】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10(チップ領域)は、主偏向器208のY方向偏向可能幅のサイズによって短冊状の複数のストライプ領域20に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、副偏向器209の偏向可能なサイズによって複数のサブフィールド(SF)30(小領域)に仮想分割される。そして、各SF30の各ショット位置にショット図形52,54,56が描画される。
【0023】
偏向制御回路130から図示しないDACアンプに対して、ブランキング制御用のデジタル信号が出力される。そして、ブランキング制御用のDACアンプでは、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、ブランキング偏向器212に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットの照射時間(照射量)が制御される。
【0024】
偏向制御回路130からDACアンプ135に対して、成形偏向制御用のデジタル信号が出力される。そして、成形偏向制御用のDACアンプ135では、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、成形偏向器205に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、所望のサイズのショット図形にビームが可変成形される。
【0025】
偏向制御回路130からDACアンプ138に対して、主偏向制御用のデジタル信号が出力される。そして、主偏向制御用のDACアンプ138では、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、主偏向器208に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットのビームがメッシュ状に仮想分割された、目標となるSF30の基準位置に偏向される。
【0026】
偏向制御回路130からDACアンプ136に対して、副偏向制御用のデジタル信号が出力される。そして、副偏向制御用のDACアンプ136では、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、副偏向器209に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットのビームが対象となるSF30内の各ショット位置に偏向される。
【0027】
描画装置100では、複数段の多段偏向器を用いて、ストライプ領域20毎に描画処理を進めていく。ここでは、一例として、主偏向器208、及び副偏向器209といった2段偏向器が用いられる。ステージ105が例えば−x方向に向かって連続移動しながら、1番目のストライプ領域20についてx方向に向かって描画を進めていく。そして、1番目のストライプ領域20の描画終了後、同様に、或いは逆方向に向かって2番目のストライプ領域20の描画を進めていく。以降、同様に、3番目以降のストライプ領域20の描画を進めていく。そして、主偏向器208が、ステージ105の移動に追従するように、SF30の基準位置に電子ビーム200を順に偏向する。また、副偏向器209が、各SF30の基準位置から当該SF30内に照射されるビームの各ショット位置に電子ビーム200を偏向する。このように、主偏向器208、及び副偏向器209は、サイズの異なる偏向領域をもつ。そして、SF30は、かかる複数段の偏向器の偏向領域のうち、最小偏向領域となる。
【0028】
図3は、実施の形態1におけるクロスオーバー系の電子ビームの外径軌道の一例を示す図である。電子銃201内では、図示しないカソードに負の加速電圧が印加され、図示しないウェネルト電極に負のバイアス電圧が印加された状態で、カソードを加熱すると、カソードから電子(電子群)が放出され、放出電子(電子群)は、収束点(クロスオーバー:C.O.)1を形成する。そして、クロスオーバーを形成した(カソードクロスオーバー)後に広がり、加速電圧によって加速されて電子ビームとなって図示しないアノード電極に向かって進む。そして、アノード電極に設けられた開口部を電子ビームが通過して、電子ビーム200が電子銃201から放出されることになる。
【0029】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ211により例えばブランキング偏向器212内の中心高さ位置(所定の位置の一例)に収束させられ、収束点(クロスオーバー:C.O.)2を形成する。そして、光軸方向に対して電磁レンズ211よりも後側に配置されたブランキング偏向器212内を通過した電子ビーム200は、照明レンズ202により第1の成形アパーチャ基板203上に照明される。その際、理想的には第1の成形アパーチャ基板203よりも光軸上後段側の成形偏向器205内の中心高さ位置(所定の位置の一例)に収束点(クロスオーバー:C.O.)3を形成するように電子ビームを収束する。
【0030】
ここで、ブランキング偏向器212内を通過する際に、ブランキング用の図示しないDACアンプからの偏向信号によって制御されるブランキング偏向器212によって、ビームのON/OFFが制御される。言い換えれば、ブランキング偏向器212は、ビームONとビームOFFとを切り替えるブランキング制御を行う場合に、電子ビームを偏向する。光軸方向に対してブランキング偏向器212よりも後側に配置された第1の成形アパーチャ基板203(ブランキングアパーチャ基板を兼ねる)によって、ビームOFFの状態になるように偏向された電子ビームは遮蔽される。すなわち、ビームONの状態では、照明レンズ202によりビーム全体が矩形の穴を持つ第1の成形アパーチャ基板203の成形開口全体を含む領域に照射される。言い換えれば、電子ビーム200を屈折させて、第1の成形アパーチャ基板203の開口部全体を含む領域を照明する。そして、成形開口部分に照射された電子ビームが第1の成形アパーチャ基板203を通過するように制御される。一方、ビームOFFの状態では、ビーム全体が第1の成形アパーチャ基板203で遮へいされるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、その後ビームOFFになるまでに第1の成形アパーチャ基板203を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。ブランキング偏向器212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態では電圧0Vを印加し(或いは電圧を印加せず)、ビームOFFの際にブランキング偏向器212に数Vの電圧を印加すればよい。かかる各ショットの照射時間tで試料101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0031】
ここで、ビームONの状態では、電子ビーム200の一部に第1の成形アパーチャ基板203を通過させることによって電子ビーム200をまず矩形に成形する。
【0032】
そして、第1の成形アパーチャ基板203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206上に投影される。その際、理想的には第2の成形アパーチャ206よりもさらに光軸上後段側の対物レンズ207内の高さ位置(所定の位置の一例)に収束点(クロスオーバー:C.O.)4を形成するように電子ビーム200を収束する。
【0033】
成形偏向器205によって、かかる第2の成形アパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。かかる可変成形はショット毎に行なわれ、通常ショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を試料面上に合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でSF30の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。かかる動作を繰り返し、各ショットのショット図形を繋ぎ合わせることで、描画データに定義された図形パターンを描画する。
【0034】
以上のように、
図1の例に示す電子ビーム光学系では、クロスオーバー1〜4の4つのクロスオーバーを形成しながら電子ビームが試料101面上に照射されることになる。ここで、実施の形態1では、まず、
図1に示す電子ビーム光学系を構成する、複数の電磁レンズ(電磁レンズ211、照明レンズ202、投影レンズ204、及び対物レンズ207)の励磁調整を行う。各電磁レンズは、複数段のレンズにより構成されてもかまわない。
【0035】
まずは、電子ビーム200の像の焦点(フォーカス)を試料101面高さに合わせる。焦点調整は対物レンズ207の励磁で行う。電磁レンズ211、照明レンズ202、及び投影レンズ204の励磁値は設計値で設定しておけばよい。また、ブランキング偏向器212はビームONの電圧(電極間に電位差が無い状態)に維持する。このときの対物レンズ207の励磁の値をAとする。描画時、試料101表面(描画面)と固定マーク106の表面との高さが一致するようにステージ105をZ方向にΔZ移動させる。例えば、図示しないZセンサで試料101面とマーク106表面の高さ位置を測定し、試料101面の高さ位置をマーク106表面の高さ位置に合わせるようにステージ105で移動させればよい。
【0036】
かかる状態で理論的には、試料101面と固定マーク105の高さが一致するので、対物レンズ207の励磁をAとすれば試料101面上でもジャストフォーカスとなるはずである。しかし、実際に対物レンズ207の励磁を変化させて描画を行い、描画されたパターンを測定すると、励磁=Aの時にはジャストフォーカスとならず、可変された励磁=A’の時にジャストフォーカスとなることが実験的に得られている。
【0037】
そのため、試料101を描画する際には、固定マーク106で得られた最適な対物レンズ調整値Aに、(A’−A)という固定値をプラスする。この(A’−A)をフォーカスオフセットと呼ぶ。フォーカスオフセットの値は、試料101の材質や厚みが同じであれば、同様に再現することが実験結果から判っている。
【0038】
焦点調整については、まず、マーク106位置を電子ビーム200の光軸上になるようにステージ105を移動させ、その上で、予め決めたショットサイズのビームを使って、マーク106上をスキャンする。そして、電子ビーム200の照射によって生じる、マーク106及びマーク106周辺から反射された反射電子を含む2次電子を検出器210で検出し、アンプ122でデジタルデータに変換した後、測定部58に出力する。測定部58は、得られたデータからマーク像を形成し、マークのパターン寸法CDを測定する。フォーカス高さを可変に変更しながらかかる動作を繰り返し、フォーカス高さ毎のパターン寸法CDを測定する。フォーカス位置は尤度(Dose Latitude)が最も小さくなる変曲点に合わせればよい。尤度は、パターン寸法CD(変化分)と電子ビームの照射量doseとの関係を示すパラメータ(係数)として定義されればよい。
【0039】
次に、クロスオーバー4の高さ位置を調整する。マーク106高さをあえてフォーカス位置からずらし、ずらした高さで合焦するように対物レンズ207の励磁を調整し、各フォーカス高さで得られるマーク像のパターン寸法CDが実質的に変化しない位置(変化量が閾値以内になる位置)に電磁レンズ211、及び照明レンズ202の励磁値を調整する。
【0040】
次に、クロスオーバー2の高さ位置を調整する。ブランキング偏向器212を構成する電極間に電位差が生じていない状態(ビームON)では、上述した予め決めたショットサイズのビームの位置ずれは生じない。しかし、ブランキング偏向器212に印加する偏向電圧が変動すると、電極間に電位差が生じ、ビームOFFまではいかない程度のビーム偏向が生じてしまう。その場合に、クロスオーバー2の高さ位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置に一致すれば、ブランキング偏向器212が電子ビーム200を偏向する偏向支点とクロスオーバー2の位置が一致するので、後段側のクロスオーバー3,4の位置に変化はない。しかし、クロスオーバー2の高さ位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置からずれている場合、見かけ上、クロスオーバー2の位置は、偏向後のビームの軌道と偏向支点との延長線上となる。このように、ブランキング偏向器212が電子ビーム200を偏向する偏向支点とクロスオーバー2の位置がずれるので、見かけ上、クロスオーバー2の位置が光軸上から水平方向に変化する。その結果、後段側のクロスオーバー3,4の位置も光軸上からずれてしまう。そのため、試料101上へのビームの照射位置がずれてしまう。そこで、ブランキング偏向器212にビームOFFまではいかない程度の電位を印加して、ビームONの状態であえて電子ビームを偏向し、かかる状態でマーク106上をスキャンする。そして、測定部58によりマーク像を取得する。そして、マーク像の位置ずれが無くなるように(位置ずれ量が閾値以下になるように)、電磁レンズ211、及び照明レンズ202の励磁値を再調整する。ここでのビーム偏向は、ブランキング偏向器212以外にアライメントコイル等を用いて行ってもかまわない。なお、マーク106の位置は、ステージ位置からの相対位置で求めればよい。ステージ105の位置は図示しないレーザ測長装置で測定すればよい。
【0041】
さらに、電子ビームの分解能は電子光学系収差に依存し、電子光学系収差は収束半角の累乗に比例する。そして、収束半角αは、電子ビームのクロスオーバー径(半径:r)に依存する。そのため、所望の分解能を得ることができる収束半角αになるように照明レンズ202の励磁を調整する。
【0042】
以上のように、クロスオーバー2,4の高さ調整と収束半角αの調整を行う。かかる調整が完了すれば、クロスオーバー3の高さ位置が、理想的には成形偏向器205の中心高さ位置になるように各構成機器が配置されている。
【0043】
図4は、実施の形態1におけるクロスオーバー高さ位置が設計位置になる場合の成形サイズに依存した照射位置の一例を示す図である。
図4に示すように、クロスオーバー3の高さ位置が、成形偏向器205の中心高さ位置(一点鎖線)にある場合、成形偏向器205が電子ビーム200を偏向する偏向支点とクロスオーバー3の位置が一致するので、成形サイズを変えても後段側のクロスオーバー4の位置に変化はない。そのため、試料101上に照射される照射パターン(ショット図形)の基準位置Aに変化はない。照射パターン(ショット図形)の基準位置Aは、第2の成形アパーチャ基板206の開口部の辺上の点であってショット図形の角部に設定される。
【0044】
しかしながら、実際には、製造不良や配置位置の精度不良等に起因して、クロスオーバー3の高さ位置が、成形偏向器205の中心高さ位置からずれてしまう場合がある。
【0045】
図5は、実施の形態1におけるクロスオーバー高さ位置が設計位置からずれる場合の成形サイズに依存した照射位置の一例を示す図である。
図5の例では、クロスオーバー3の高さ位置が、成形偏向器205の中心高さ位置(一点鎖線)よりも低い位置(−z方向)にある場合を示している。かかる状態で、ビーム成形のために電子ビーム200を偏向すると、見かけ上、クロスオーバー3の位置は、偏向後のビームの軌道と偏向支点との延長線上のクロスオーバー3’の位置となる。このように、成形偏向器205が電子ビーム200を偏向する偏向支点とクロスオーバー3の位置がずれるので、見かけ上、クロスオーバー3の位置が光軸上から水平方向(x,y方向)に変化する。その結果、後段側のクロスオーバー4の位置も光軸上からずれてクロスオーバー4’の位置になってしまう。そのため、試料101上に照射される照射パターン(ショット図形)の基準位置Aが位置A’にずれてしまう。
【0046】
成形偏向器205によるショットサイズ変更に起因する位置ずれを複数の電磁レンズ(電磁レンズ211、照明レンズ202、投影レンズ204、及び対物レンズ207)の励磁調整で解決しようとすると、クロスオーバー2,4の高さ位置や収束半角α等の他のパラメータの調整が崩れてしまう。そのため、各クロスオーバーの高さ位置のずれに起因する位置ずれを複数の電磁レンズの励磁調整ですべて解決することは難しい。仮に解決しようとすれば、調整の自由度を現状よりもさらに上げる必要がある。そのためには、調整用のレンズをさらに追加する必要がある。しかし、電子鏡筒102内にこれらの設置スペースをさらに確保することは難しい。そこで、実施の形態1では、偏向位置の補正により、ショットサイズ依存の位置ずれを解消する。
【0047】
図6は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図6において、実施の形態1における描画方法は、成形サイズ毎の位置ずれ量測定工程(S102)と、相関データ作成工程(S104)と、ショットデータ生成工程(S106)と、位置ずれ量演算工程(S108)と、座標補正工程(S110)と、偏向量演算工程(S112)と、描画工程(S120)と、いう一連の工程を実施する。
【0048】
成形サイズ毎の位置ずれ量測定工程(S102)として、電子ビーム200を成形する成形サイズを可変にしながら、所定の照射面高さ位置における成形サイズに依存した電子ビーム200の位置ずれ量を測定する。
【0049】
図7は、実施の形態1における評価パターンの一例を示す図である。
図7において、評価パターン11は、中央に、基準ショットサイズのショット図形13を繋げて形成する基準矩形パターン12と、基準矩形パターン12を取り囲むように形成する、ショットサイズを可変に設定するショット図形15を繋げて形成する外枠パターン14との組み合わせにより構成される。実施の形態1では、レジストが塗布された評価基板300をステージ105上に配置して、ショット図形15のショットサイズを可変にしながら、各サイズのショット図形15毎に、実際に、評価パターン11を描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0050】
まず、評価パターン11のチップデータ(評価チップデータ)が描画装置100の外部から入力され、記憶装置140に格納される。
【0051】
サイズ設定部50は、ショット図形13の基準ショットサイズと、ショット図形15のショットサイズとを設定する。基準ショットサイズとして、例えば、250nmを設定する。
図7の例では、250nm角の矩形を基準となるショット図形13に設定する。ショット図形15として、予め設定しておいた複数のショットサイズ、例えば、50nm、100nm、150nm、200nm,250nmの中から1つを選択し、ショット図形15のショットサイズとして設定する。ここでは、例えば、50nmを設定する。よって、
図7の例では、50nm角の矩形をショット図形15に設定する。
【0052】
ショットデータ生成部51は、記憶装置140から評価パターン11のチップデータを読み出し、基準矩形パターン12を、1回の電子ビーム200のショットで照射可能なサイズとなる複数のショット図形13に分割する。同様に、外枠パターン14を、1回の電子ビーム200のショットで照射可能なサイズとなる複数のショット図形15に分割する。そして、ショット図形13毎に、ショットデータを生成する。同様に、ショット図形15毎に、ショットデータを生成する。ショットデータには、図形種を識別する図形コード、基準位置Aの座標、及びショットサイズが定義される。生成されたショットデータは記憶装置144に格納される。
【0053】
偏向制御回路130は、ショット順にショットデータを読み出し、偏向量演算部132にて、成形偏向量、主偏向量、及び副偏向量等が演算される。
【0054】
そして、描画制御部57の制御のもと、描画機構150は、レジストが塗布された評価基板300に、評価パターン11を描画する。評価パターン11は、ショット図形15のショットサイズを可変にしながら、ショット図形15のショットサイズ毎に評価基板300上の描画領域位置をずらして描画される。言い換えれば、ショット図形15のショットサイズ毎に、ショット時の成形偏向器205のビーム偏向量が異なる。よって、クロスオーバー3の高さ位置が成形偏向器205の中心高さに無い場合には、ショット図形15のショットサイズ毎に、クロスオーバー3のずれ量が異なってくる。
【0055】
描画後、描画装置100から評価基板300を取り出し、現像処理を行うことで、評価基板300上に、ショット図形15のショットサイズ毎の評価パターン11のレジストパターンが形成される。
【0056】
次に、位置測定器を使って、基準矩形パターン12のx方向の両端のエッジ位置V,Wを測定する。同様に、位置測定器を使って、外枠パターン14のフレーム部分のx方向の両端のエッジ位置V’,W’を測定する。図示していないが、y方向についても同様に測定すると良い。
【0057】
また、ここでは、レジストパターンのエッジ位置を測定しているが、これに限るものではない。例えば、レジストの下層に遮光膜を形成しておいて、レジストパターンをマスクとして、遮光膜をエッチングしてもよい。そして、アッシング処理によりレジストを除去した後、位置測定器を使って、遮光膜パターンとして形成された基準矩形パターン12の両端のエッジ位置V,Wと、外枠パターン14の両端のエッジ位置V’,W’を測定してもよい。
【0058】
基準矩形パターン12の幅寸法、および外枠パターン14のフレーム部分の幅寸法は、位置測定器で測定可能なサイズに設定される。言い換えれば、位置測定器の測定限界、例えば、0.3μm以上のサイズに設定される。さらに、基準矩形パターン12の幅寸法は、ショット図形13のショットサイズの整数倍であると好適である。同様に、外枠パターン14のフレーム部分の幅寸法は、可変設定される各ショットサイズの公倍数であると好適である。これにより、基準矩形パターン12をショット図形13だけで描画できる。同様に、外枠パターン14をショット図形15だけで描画できる。
【0059】
そして、可変設定されるショットサイズ毎に、基準矩形パターン12のx方向の両端のエッジ位置V,Wの中心位置を演算する。同様に、外枠パターン14のフレーム部分のx方向の両端のエッジ位置V’,W’の中心位置を演算する。
【0060】
次に、可変設定されるショットサイズ毎に、基準矩形パターン12のx方向の両端のエッジ位置V,Wの中心位置の座標と外枠パターン14のフレーム部分のx方向の両端のエッジ位置V’,W’の中心位置の座標との間の距離を演算する。
【0061】
次に、基準矩形パターン12と同じ250nmのショット図形15で外枠パターン14を描画した場合の基準矩形パターン12と外枠パターン14の中心間距離を基準にして、他のショットサイズのショット図形15で外枠パターン14を描画した場合の中心間距離とのずれ量(差分値)を演算する。
【0062】
可変設定されるショットサイズ毎の差分値を得るまでの演算は、描画装置100内で行っても良いし、オフライン(外部)でおこなっても良い。
【0063】
相関データ作成工程(S104)として、成形サイズ(ショットサイズ)と電子ビームの位置ずれ量との相関データ(相関関係)を作成する。
【0064】
図8は、実施の形態1における位置誤差とショットサイズとの関係の一例を示す図である。
図8では、縦軸に位置誤差、横軸にショットサイズを示している。
図8の例では、250nmのショットサイズを基準ショットサイズにしているので、ショットサイズ0.25μmでは、位置誤差がゼロになっている。これに対して、ショット図形15のショットサイズを変えると、
図8に示すように、位置誤差が生じていることがわかる。
【0065】
そこで、各ショットサイズにおける位置誤差量をフィッティング処理して、近似式を求める。
図8の例では、一次比例に近似しているが、これに限るものではない。多項式で近似してもよい。かかる近似式の係数が決まれば、成形サイズと電子ビームの位置ずれ量の相関データ(相関関係)になる。得られた成形サイズと電子ビームの位置ずれ量の相関データは、記憶装置142に格納される。なお、相関データは、近似式に限るものではない。点列で対応関係を定義した相関テーブルとして作成してもよい。
【0066】
成形サイズと電子ビームの位置ずれ量の相関データが記憶装置142に格納されるまでの処理を描画前の前処理として行っておく。次に、実際の描画処理について説明する。まずは、ステージ105上に描画対象となる試料101を載置する。
【0067】
ショットデータ生成工程(S106)として、ショットデータ生成部51は、記憶装置140から描画データを読み出し、図形パターンが定義された描画データを用いて、図形パターンを電子ビームのショットで照射可能なサイズの複数のショット図形に分割した場合の各ショット図形のショット位置とショットサイズとが定義されるショットデータを生成する。各ショット図形のショットデータには、図形種を識別する図形コード、基準位置Aの座標、及びショットサイズが定義される。生成されたショットデータは記憶装置144に格納される。
【0068】
位置ずれ量演算工程(S108)として、位置ずれ量演算部53は、成形サイズに依存した電子ビームの位置ずれ量の情報を用いて、ショット図形毎に、ショットデータに定義されるショットサイズに応じた位置ずれ量を演算する。具体的には、位置ずれ量演算部53は、記憶装置144から例えば、描画順にショットデータを読み出し、同様に、記憶装置142から相関データを読み出し、ショット図形毎に、相関データを参照して、ショットデータに定義されるショットサイズに応じた位置ずれ量を演算する。
【0069】
座標補正工程(S110)として、座標補正部55(補正部)は、ショット図形毎に、ショットサイズに応じて演算された位置ずれ量を補正するようにショット位置を補正する。具体的には、ショットデータに定義されて座標について、位置ずれ量を補正するように補正する。補正の仕方は、位置ずれする方向とは逆方向に位置ずれ量分だけショットデータに定義されて座標をずらせばよい。例えば、x方向に20nm位置ずれする場合には、x座標に補正値として−20nmを加算すればよい。補正後のショットデータは、改めて記憶装置144に記憶される。実施の形態1では、ショット位置を補正する場合に、ショットデータを補正する。
【0070】
偏向量演算工程(S112)として、偏向量演算部132は、記憶装置144から補正後のショットデータを読み出し、成形偏向用の偏向量、位置偏向のための主偏向量、及び位置偏向のための副偏向量を演算する。例えば、成形サイズに依存したショット位置のずれ量の補正は副偏向量に影響する。
【0071】
描画工程(S120)として、描画機構150は、ショット図形毎に、電子ビーム200を当該ショットサイズに可変成形し、可変成形された電子ビーム200を用いて、試料101上の補正されたショット位置に、当該ショット図形を描画する。描画動作は、上述した通りである。
【0072】
なお、上述した例では、評価基板300に実際に評価パターンを描画して得られる位置ずれ量を用いて相関データを作成したがこれに限るものではない。
【0073】
図9は、実施の形態1の変形例におけるショットサイズに依存する位置ずれ量を測定する手法を説明するための図である。実施の形態1の変形例では、評価基板300を用いずれにマーク106を使って測定する。マーク106位置が光軸上にくるようにステージ105を移動させる。そして、マーク106の高さをフォーカス位置からあえてずらす。
図9の例では、上方に+zずらす。クロスオーバー3の高さ位置が成形偏向器205の中心高さ位置からずれていれば、上述したように、見かけ上、クロスオーバー3の位置は、偏向後のビームの軌道と偏向支点との延長線上のクロスオーバー3’の位置となる。その結果、後段側のクロスオーバー4の位置も光軸上からずれてクロスオーバー4’の位置になってしまう。そのため、試料101上に照射される照射パターン(ショット図形)の基準位置Aが位置A’にずれてしまう。ここで、マーク106の高さを上下に変化させると、各マーク106の高さで照射位置が変化する。そこで、基準となるショットサイズを決め(例えば250nm)、かかる基準サイズのショットの照射位置からのずれ量ΔX’をマーク106をスキャンして得られる画像から測定する。マーク106の高さを可変に変更しながら同様に基準サイズのショットの照射位置からのずれ量ΔX’を測定する。これにより、照射高さz毎の基準サイズのショットの照射位置からのずれ量ΔX’を測定できる。
【0074】
図10は、実施の形態1の変形例におけるショットサイズと位置ずれ量係数との関係を示すグラフである。
図10では、縦軸に位置ずれ量係数kを示し、横軸に照射高さzを示す。位置ずれ量係数kは、基準サイズのショットの照射位置からのずれ量ΔX’と、基準サイズのショットとのサイズ差ΔSとを用いて、以下の式(1)で定義できる。
(1) k=ΔX’/ΔS
【0075】
そして、照射高さz毎の位置ずれ量係数kを近似式でフィッティングして、
図10のグラフを得る。
図10の例では1次比例になっているが、これに限るものではない。多項式で近似すると好適である。かかる近似式から試料101面高さ(フォーカス高さ)z
0における位置ずれ量係数k
0を演算により求める。そして、得られた位置ずれ量係数k
0を相関データとして、記憶装置142に記憶する。
【0076】
そして、実施の形態1の変形例では、位置ずれ量演算部53が、位置ずれ量係数k
0を用いて、ショット図形毎に、ショットデータに定義されるショットサイズに応じた位置ずれ量を演算する。具体的には、位置ずれ量演算部53は、記憶装置144から例えば、描画順にショットデータを読み出し、同様に、記憶装置142から相関データとして位置ずれ量係数k
0を読み出し、ショット図形毎に、相関データを参照して、ショットデータに定義されるショットサイズに応じた位置ずれ量を演算する。実際の位置ずれ量ΔLは、基準ショットサイズS
0、対象となるショットサイズSとを使って、以下の式(2)で定義できる。
(2) ΔL=k
0・S−k
0・S
0
【0077】
るショットサイズに応じた位置ずれ量が得られた後の工程は上述した内容と同様である。このように、マーク106を使って相関データを取得しても良い。
【0078】
図11は、実施の形態1における補正後の位置ずれの一例を示す図である。
図11において、縦軸に位置誤差を示し、横軸にショットサイズを示している。実施の形態1の補正を行うことにより、
図11に示すように、電子ビーム200のショットサイズ変更に起因する位置ずれを解消、或いは低減できることがわかる。
【0079】
以上のように、実施の形態1によれば、調整用のレンズを追加することなく、電子ビーム200のショットサイズ変更に起因する位置ずれを補正できる。
【0080】
実施の形態2.
実施の形態1では、ショットデータの座標自体を補正する場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、他の補正方法について説明する。
【0081】
図12は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図12において、制御計算機110内から位置ずれ量演算部53及び座標補正部55が削除された点、偏向制御回路130内に、位置ずれ量演算部133、及び偏向量補正部134が追加された点、以外は
図1と同様である。実施の形態1では、座標補正部55により補正を行ったが、実施の形態2では、偏向量補正部134を用いて補正を行う。
【0082】
よって、制御計算機110内には、サイズ設定部50、ショットデータ生成部51、描画制御部57、及び測定部58が配置される。サイズ設定部50、ショットデータ生成部51、描画制御部57、及び測定部58といった各「〜部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。サイズ設定部50、ショットデータ生成部51、描画制御部57、及び測定部58に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0083】
そして、偏向制御回路130内には、偏向量演算部132、位置ずれ量演算部133、及び偏向量補正部134が配置される。偏向量演算部132、位置ずれ量演算部133、及び偏向量補正部134といった各「〜部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。偏向量演算部132、位置ずれ量演算部133、及び偏向量補正部134に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
【0084】
図13は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図13において、実施の形態2における描画方法は、成形サイズ毎の位置ずれ量測定工程(S102)と、相関データ作成工程(S105)と、ショットデータ生成工程(S106)と、偏向量演算工程(S113)と、位置ずれ量演算工程(S115)と、偏向量補正工程(S116)と、描画工程(S120)と、いう一連の工程を実施する。なお、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0085】
成形サイズ毎の位置ずれ量測定工程(S102)の内容は、実施の形態1と同様である。
【0086】
相関データ作成工程(S105)として、成形サイズ(ショットサイズ)と電子ビームの位置ずれ量との相関データ(相関関係)を作成する。実施の形態2では、電子ビームの位置ずれ量として、位置ずれ量に相当する位置偏向用の偏向量を用いる。具体的には、副偏向のずれ量を用いる。よって、相関データは、成形サイズと電子ビームの位置ずれ量分の偏向量との相関データとして作成する。相関データは、実施の形態1で示したように近似式で定義しても良いし、相関テーブルとして定義してもよい。得られた相関データは記憶装置142に格納される。
【0087】
ショットデータ生成工程(S106)の内容は実施の形態1と同様である。
【0088】
偏向量演算工程(S113)として、偏向量演算部132は、記憶装置144からショットデータ(実施の形態2では、補正されていないショットデータ)を読み出し、ショットデータに定義されるサイズ及びショット位置に応じて電子ビームを偏向する偏向量を演算する。具体的には、成形偏向用の偏向量、位置偏向のための主偏向量、及び位置偏向のための副偏向量を演算する。
【0089】
位置ずれ量演算工程(S115)として、位置ずれ量演算部133は、成形サイズに依存した電子ビームの位置ずれ量の情報を用いて、ショット図形毎に、ショットデータに定義されるショットサイズに応じた位置ずれ量を演算する。具体的には、位置ずれ量演算部133は、記憶装置144から例えば、描画順にショットデータを読み出し、同様に、記憶装置142から相関データを読み出し、ショット図形毎に、相関データを参照して、ショットデータに定義されるショットサイズに応じた位置ずれ量に相当する副偏向ずれ量(偏向ずれ量)を演算する。演算された副偏向ずれ量(偏向ずれ量)は、偏向制御回路130内の図示しないメモリにその都度格納される。
【0090】
偏向量補正工程(S116)として、偏向量補正部134は、ショット図形毎に、ショットサイズに応じて演算された位置ずれ量を補正するようにショット位置を補正する。具体的には、偏向量補正部134は、偏向制御回路130内の図示しないメモリから当該ショット図形の副偏向ずれ量(偏向ずれ量)を読み出し、演算された副偏向量に副偏向ずれ量(偏向ずれ量)分を逆方向に偏向する副偏向補正量を加算すればよい。このように、実施の形態2では、ショット位置を補正する場合に、演算された偏向量を補正する。偏向量を補正することで、実施の形態1と同様、ショットサイズに依存した位置ずれを解消できる。
【0091】
描画工程(S120)として、描画機構150は、ショット図形毎に、電子ビーム200を当該ショットサイズに可変成形し、可変成形された電子ビーム200を用いて、試料101上の補正されたショット位置に、当該ショット図形を描画する。描画動作は、実施の形態1と同様である。
【0092】
以上のように、実施の形態2によれば、ショットデータ自体ではなく偏向量を補正する手法を用いて、調整用のレンズを追加することなく、電子ビーム200のショットサイズ変更に起因する位置ずれを補正できる。
【0093】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0094】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0095】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置、及び荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。