(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板は矩形状をなし、前記基板載置台はその載置面が前記基板に対応した矩形状をなし、前記気流ガイド部材は額縁状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
前記長辺側部分に形成された前記スリット、および、前記短辺側部分に形成された前記スリットは、それらの端部が、前記長辺側部分と前記短辺側部分との合わせ部に達しない状態で形成されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
前記スリットの幅は、前記スリットを介しての排気と、前記気流ガイド部材と前記基板載置台との間との間を介しての排気との排気バランスを、前記基板の周縁部のエッチングレート抑制の程度が最適化されるように調整できる値とすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造過程においては、真空下でガラス基板に形成された所定の膜をプラズマを用いてエッチングするプラズマエッチング処理が存在する。
【0003】
このようなガラス基板に所定の膜が形成された被処理基板に対してプラズマエッチング処理を行う基板処理装置としては、真空に保持可能なチャンバー内に、下部電極として機能する基板載置台、およびこの載置台に対向して上部電極として機能するガス導入用のシャワーヘッドを配置し、下部電極に高周波電力を印加する高周波電源を接続し、チャンバー内を真空排気し、チャンバー内にシャワーヘッドを介して処理ガスを導入するとともに、載置台に高周波電力を印加し、それによって形成された処理ガスのプラズマにより被処理基板に存在する所定の膜をエッチングするものが知られている。
【0004】
ところで、このような基板処理装置においては、例えば、アルミニウム(Al)膜やTi/Al/Ti積層膜のようなAl含有膜等の金属膜を、処理ガスとして例えば塩素(Cl
2)ガスのようなハロゲン含有ガスによりエッチングする工程が存在するが、この際に、処理ガスの供給量とエッチング量とが比例するため、ローディング効果により基板の外周部のエッチングレートが中央部のエッチングレートよりも極端に高くなってしまうという現象が発生する。つまり、プラズマ中のエッチング種(例えば塩素ラジカル)からみると、基板の最外周領域では単位量のエッチング種がエッチングすべき基板面積は、中央領域の約半分であり、中央領域に供給される流量と同じ流量で最外周領域に処理ガスが供給されると、計算上、最外周領域のエッチングレートは中央領域のエッチングレートの約2倍となってしまう。
【0005】
このため、載置台上の基板の周囲を囲繞するように整流ウォールを設け、それにより被処理基板の外周領域近傍から基板外周に向かう処理ガスの流れを遮ることにより、基板の最外周領域に供給されるエッチング種の量を減らし、基板面内における処理の均一性を高める技術が提案されている(特許文献1、2)。
【0006】
一方、載置台の周縁部の上方に当該載置台の周方向に沿って設けられ、当該周縁部との間において気流を外方へガイドする気流ガイド部材を設けて気流を制御することにより、ローディング効果を抑制して基板面内における処理の均一性を高める技術も提案されている(特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された整流ウォールは、基板の搬入出の妨げとなるため、ガラス基板の搬入出の際に搬入出の妨げにならないように、上方に退避させる必要があり、その際に整流部材に付着した堆積物等が剥がれてパーティクルとなって被処理基板に落下して被処理基板を汚染させてしまうおそれがある。
【0009】
また、特許文献3に記載された気流ガイド部材は、その上にエッチングにともなう生成物やエッチングガスの反応副生成物の堆積物(以下デポと記載する)が付着されやすく、やはり被処理基板にパーティクルが付着するおそれがある。また、特許文献3の気流ガイド部材により、ある程度はローディング効果による外周部の処理の不均一を低減することができるが、最近ではさらなる処理の面内均一性が求められている。
【0010】
したがって、本発明は、基板の金属膜をプラズマエッチング処理する際に、さらなる処理の面内均一性が得られ、かつ被処理基板へのパーティクル付着を抑制することができる基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、表面に金属膜が形成された基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に設けられ、基板が載置される基板載置台と、前記処理容器内の前記基板載置台の上方に前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理容器内に前記基板載置台に向けてハロゲン含有ガスを含む処理ガスを導入する処理ガス導入機構と、前記基板載置台の周囲から前記処理容器内を排気する排気機構と、前記処理容器内に設けられ、内周部分に、前記基板載置台の周縁の上方に当該基板載置台の周方向に沿って配置された、前記処理ガス導入機構から導入された処理ガスを外方に導くガイド部を有し、外周部分が前記処理容器の内壁に取り付けられた、環状をなす気流ガイド部材と、前記処理容器内に、前記基板の前記金属膜に対してプラズマエッチングを行うための処理ガスのプラズマを生成するプラズマ生成機構とを具備し、前記気流ガイド部材は、
前記ガイド部となる内側部と、前記基板載置台よりも外側の外側部とを有し、前記内側部と前記外側部との間には、前記内側部よりも前記外側部が低い位置になる段差が形成されるように前記内側部と前記外側部を連結する連結部を有し、前記外側部にその周方向に沿って設けられたスリットを有することを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0012】
本発明において、前記基板は矩形状をなし、前記基板載置台はその載置面が前記基板に対応した矩形状をなし、前記気流ガイド部材は額縁状をなしているものとすることができる。
【0014】
前記気流ガイド部材は、前記基板の長辺に対応する一対の長辺側部分と、前記基板の短辺に対応する一対の短辺側部分を組み立てて形成することができる。この場合に、前記長辺側部分および前記短辺側部分は、いずれも1枚の板を折り曲げて、前記内側部に対応する部分、前記外側部に対応する部分、および前記
連結部に対応する部分を形成することができる。また、前記長辺側部分および前記短辺側部分は、これらの合わせ部が45°となる台形状をなし、それぞれの前記内側部に対応する部分、前記外側部に対応する部分、および前記
連結部に対応する部分が合わされた状態で組み立てることができる。
【0015】
前記長辺側部分に形成された前記スリット、および、前記短辺側部分に形成された前記スリットは、それらの端部が、前記長辺側部分と前記短辺側部分との合わせ部に達しない状態で形成することができる。
【0016】
前記スリットの幅は、前記スリットを介しての排気と、前記気流ガイド部材と前記基板載置台との間との間を介しての排気との排気バランスを、前記基板の周縁部のエッチングレート抑制の程度が最適化されるように調整できる値とすることが好ましい。
【0017】
前記金属膜はAl含有膜であり、前記処理ガスは塩素ガスを含むものとすることができる。この場合に、前記Al含有膜として、Ti/Al/Ti積層膜を用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内周部分に、基板載置台の周縁の上方に当該基板載置台の周方向に沿って配置された、処理ガス導入機構から導入された処理ガスを外方に導くガイド部を有し、外周部分が前記処理容器の内壁に取り付けられた、環状をなす気流ガイド部材を設け、気流ガイド部材の基板載置台よりも外側の部分にスリットを形成したので、気流ガイド部材と基板載置台との間を通って外方に排気されるガス流の他に、ガス導入機構からスリットを介して排気されるガス流を形成することができる。このため、気流ガイド部材と基板載置台との間の処理ガスの流量を少なくすることができ、基板周縁部でのエッチングを抑制してエッチングの面内分布を均一にすることができる。また、スリットを設けることにより、処理ガスが気流ガイド部材上に滞留せず、スリットを介して排気される。このため、気流ガイド部材の表面や処理容器内壁へのデポの付着量を低減することができ、基板へのパーティクルの付着を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
<基板処理装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置を示す垂直断面図、
図2は
図1のII−II′線による水平断面図である。
図1に示すように、この基板処理装置1は、矩形状をなすFPD用のガラス基板上に所定の金属膜、例えばAl膜やTi/Al/Ti積層膜のようなAl含有膜等の金属膜が形成された被処理基板(以下、単に「基板」と記す)Gに対してプラズマエッチング処理を行う容量結合型プラズマ処理装置として構成されている。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0022】
この基板処理装置1は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形されたチャンバー2を有している。
【0023】
チャンバー2内の底部には、額縁状をなす絶縁体からなるスペーサ部材4を介して基板Gを載置するための基板載置台3が設けられている。基板載置台3の表面(基板載置面)は、基板Gよりも少し大きい矩形状をなしている。基板載置台3は下部電極として機能する。基板載置台3は、金属、例えばアルミニウムからなり、載置台本体を構成する基材5と、基材5の上部の周囲に設けられた絶縁性のシールドリング6と、基材5の側面の周囲に設けられた絶縁リング7と、基板Gを昇降するための複数の昇降ピン8とを備えている。昇降ピン8は、基材5に設けられた挿通孔5aに挿通され、昇降機構(図示せず)により昇降される。スペーサ部材4と基材5との間、およびスペーサ部材4とチャンバー2の底壁2aとの間は気密にシールされており、基材5と底壁2aとの間に大気雰囲気の空間9が形成され、この空間9により基材5と底壁2aとの間の大気絶縁が図られている。
【0024】
基材5には、給電線23aおよび23bが接続されており、給電線23aには整合器24aおよびプラズマ生成用の高周波電源25aが接続され、給電線23bには整合器24bおよびバイアス生成用の高周波電源25bが接続されている。プラズマ生成用の高周波電源25aの周波数は1〜100MHzの範囲であり、例えば13.56MHzである。バイアス生成用の高周波電源25bは基材5上の基板Gにイオンを引き込んで異方性のエッチングを行うためのものであり、50kHz〜10MHzの範囲の周波数が用いられ、例えば3.2MHzである。
【0025】
なお、基板載置台3の基材5の表面には基板Gを静電吸着する静電チャック(図示せず)が設けられている。また、基材5内には、基板Gの温度を制御するための温調機構および温度センサー(いずれも図示せず)が設けられている。さらに、基板載置台3の基材5とチャンバー2の底壁2aとの間は、これらの間の絶縁を確保しつつチャンバー2内の真空排気により基板載置台3が撓むことを防止するために、複数の締結具(図示せず)により締結されている。さらにまた、基板載置台3に基板Gが載置された状態で、基板Gと基板載置台3との間に熱伝達のための伝熱ガス、例えばHeガスを供給する伝熱ガス供給機構(図示せず)が設けられている。
【0026】
チャンバー2の上部には、チャンバー2内に処理ガスを供給するとともに上部電極として機能するシャワーヘッド10が、基板載置台3と対向するように設けられている。シャワーヘッド10は、内部に処理ガスを拡散させるガス拡散空間11が形成されているとともに、基板載置台3との対向面に処理ガスを吐出する複数の吐出孔12が形成されている。
【0027】
シャワーヘッド10の上面にはガス導入口14が設けられ、このガス導入口14には、処理ガス供給管15が接続されており、この処理ガス供給管15は処理ガス供給源18に接続されている。また、処理ガス供給管15には、開閉バルブ16およびマスフローコントローラ17が介在されている。実際には処理ガス供給源18は処理ガスの数に応じて複数設けられており、各処理ガス供給源18からそれぞれ処理ガス供給管15が延びている。処理ガス供給源18からは、プラズマエッチングのための処理ガスが供給される。処理ガスとしては、ハロゲン含有ガス、例えばCl
2ガスや、Cl
2ガスにArガス等の不活性ガスを加えたものを用いることができる。三塩化ホウ素(BCl
3)ガス、四塩化炭素(CCl
4)ガス、四フッ化炭素(CF
4)ガスや、これらに不活性ガスを加えたもの、Cl
2ガス、BCl
3ガス、CCl
4ガス、CF
4ガスの2つ以上を混合した混合ガス、さらにはこのような混合ガスに不活性ガスを加えたものも用いることができる。
【0028】
チャンバー2の底壁の4つの隅部には、それぞれ排気口29(
図2参照)が形成されており、各排気口29には排気部30が設けられている。排気部30は、排気口29に接続された排気配管31と、排気配管31の開度を調整することによりチャンバー2内の圧力を制御する自動圧力制御バルブ(APC)32と、チャンバー2内を排気配管31を介して排気するための真空ポンプ33とを有している。そして、真空ポンプ33によりチャンバー2内が排気され、プラズマエッチング処理中、自動圧力制御バルブ(APC)32の開度を調整することによりチャンバー2内を所定の真空雰囲気に設定、維持する。
【0029】
チャンバー2の一つの側壁には、基板Gを搬入出するための搬入出口35およびそれを開閉するゲートバルブ36が設けられている。
【0030】
基板載置台3の周縁部の上方位置には、ガス流を外方へガイドするガイド部を有する気流ガイド部材40が設けられている。気流ガイド部材40については後述する。
【0031】
なお、気流ガイド部材40の下方の、基板載置台3とチャンバー2の内壁の間の空間にはガス流路の圧力損失を調節するためのバッフル板(図示せず)が設けられている。
【0032】
また、基板処理装置1は、さらに制御部50を有している。制御部50は、CPUおよび記憶部を備えたコンピュータで構成されており、基板処理装置1の各構成部、例えばガス供給系、排気系、高周波電力を供給する機構、昇降ピン8の駆動機構、ゲートバルブ36の駆動機構等は、記憶部に記憶された処理レシピ(プログラム)に基づいて所定の処理が行われるように制御される。処理レシピは、ハードディスク、コンパクトディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に格納されている。
【0033】
<気流ガイド部材>
次に、気流ガイド部材40について説明する。
図3は本実施形態に係る基板処理装置1の気流ガイド部材40が設けられた部分を拡大して示す部分断面図である。
【0034】
気流ガイド部材40は、アルミニウム等の金属、またはセラミックスからなり、チャンバー2の内壁位置と基板載置台3の周縁部上方位置との間に環状、すなわち額縁状に設けられており、シャワーヘッド10からの処理ガスの気流を基板Gの外方へガイドする機能を有する。
図3に示すように、気流ガイド部材40は、基板載置台3の周縁の上方に当該基板載置台の周方向に沿って配置された、シャワーヘッド10から導入された処理ガスを外方に導くガイド部を構成する内側部40−1と、基板載置台3の外側に配置され、チャンバー2の内壁に取り付けられた外側部40−2とを有しており、内側部40−1と外側部40−2との間には、内側部40−1よりも外側部40−2が低い位置となる段差42が形成されている。
【0035】
段差42は、
図4に示すように、昇降ピン8により基板Gを基板載置台3の上方へ上昇させた状態で、搬入出口35から搬送装置60の搬送アーム62をチャンバー2内に挿入して基板Gの受け渡しを行う際に、搬送アーム62のベース61から逃げるために形成されている。ただし、搬送装置63のベースから逃げる必要がない場合は、段差42を設けなくてもよい。
【0036】
図2に示すように、気流ガイド部材40は、基板G(基板載置台3)の長辺に対応する2つの長辺側部材40aと短辺に対応する2つの短辺側部材40bを組み立てて構成されている。長辺側部材40aおよび短辺側部材40bは、いずれも、一枚の板を折り曲げることにより、内側部40−1を構成する部分、外側部40−2を構成する部分、および段差42の部分を形成することができる。長辺側部材40aおよび短辺側部材40bの端部は、45°に切断された台形状をなしており、これらの内側部40−1を構成する部分、外側部40−2を構成する部分、および段差42の部分の端部が、それぞれ突き合わされた状態で組み立てられるようになっている。
【0037】
気流ガイド部材40の基板載置台3よりも外側部分には周方向に沿ってスリット41が形成されている。本例の場合には、外側部40−2にスリット41が形成されている。スリット41は、2つの長辺側部材40aのそれぞれにその長さ方向に沿って形成された2つの長辺スリット41aと、短辺側部材40bのそれぞれにその長さ方向に沿って形成された短辺スリット41bとを有している。長辺スリット41aと短辺スリット41bは、それらの端部が長辺側部材40aと短辺側部材40bとの合わせ面に達しない状態で非連続で設けられており、それぞれ基板Gの長辺および短辺よりも少し短い長さを有している。これにより排気口29の上方にはスリットが存在しないようにすることができる。スリット41は、基板G周縁部のガス流量をコントロールする機能および気流ガイド部材40へのデポを低減する機能を有する。なお、スリット41は内側部40−1に形成してもよい。
【0038】
内側部40−1の基板載置台3(シールドリング6)の上面からの高さa、および、スリット41(長辺スリット41aおよび短辺スリット41b)の幅bは、基板周縁部のエッチングレートが適切に制御されるように適宜設定される。内側部40−1の内端は、基板Gの昇降を妨げることがなく、かつパーティクルを極力防止する観点から、基板Gの端部よりも外側に位置している。
【0039】
また、
図2および
図3に示すように、気流ガイド部材40の長辺側部材40aおよび短辺側部材40bは、基板載置台3に取り付けられた複数(図では6個)の支持ロッド43に支持されている。支持ロッド43は、内側部40−1に取り付けられている。支持ロッド43の他端はチャンバー2やスペーサ部材4に取り付けられている。これら支持ロッド43により、気流ガイド部材40のガイド部である内側部40−1の高さ位置が一定に保持される。
【0040】
<基板処理装置の処理動作>
次に、このように構成される基板処理装置1の処理動作について説明する。
まず、ゲートバルブ36を開け、図示しない真空搬送室から搬送装置60の搬送アーム62(
図4参照)により搬入出口35を介して基板Gをチャンバー2内へ搬入し、昇降ピン8を上昇させて昇降ピン8を基板載置台3の基板載置面から突出させた状態とし、昇降ピン8上に基板Gを載せる。搬送アーム62を真空搬送室へ退避させた後、昇降ピン8を下降させ、基板Gを基板載置台3の基板載置面に載置し、ゲートバルブ36を閉じる。
【0041】
基板載置台3の基材5を温調機構(図示せず)により温調して基板Gの温度制御を行い、さらに、真空ポンプ33でチャンバー2内を排気しつつ、自動圧力制御バルブ(APC)32によりチャンバー2内の圧力を所定の真空度に調整し、処理ガス供給源18から、マスフローコントローラ17により流量調節して処理ガス供給管15およびシャワーヘッド10を介してハロゲン含有ガス、例えばCl
2ガスを含む処理ガスをチャンバー2内に導入する。
【0042】
この状態で高周波電源25aから整合器24aを介してプラズマ生成用の高周波電力を基板載置台3の基材5に印加し、下部電極としての基板載置台3と上部電極としてのシャワーヘッド10との間に高周波電界を生じさせて、処理ガスのプラズマを生成し、このプラズマにより生成された塩素ラジカル(Cl
*)等のエッチャントにより基板GのAl含有膜等の金属膜にエッチング処理を施す。これにより、Al含有膜はCl
*等と反応し、生成された反応生成物は気体となって除去される。このとき、高周波電源25bからは整合器24bを介してバイアス生成用の高周波電力を基材5に印加して、プラズマ中のイオンを基板Gに引き込みエッチングの異方性を高める。
【0043】
ハロゲン含有ガスによる金属膜のエッチング処理に際して、気流ガイド部材40を設けることにより、処理ガスの気流を基板Gの外方にガイドするので、チャンバー2の内壁部から基板Gへ向けてのエッチャントの拡散を抑えて、基板G周縁部のエッチングを抑制することができる。
【0044】
ところで、特許文献3では、気流ガイド部材としてスリットが形成されていない無垢の板材を額縁状に配置しているが、この場合には、
図5に示すように、広い空間から基板載置台3の周縁部と気流ガイド部材40′との間の狭い空間に処理ガスが流れることから、基板G周縁部を通過する処理ガスの流量が多くなり、これにより基板G周縁部のエッチングが促進されるため、基板G周縁部のエッチング抑制効果が十分ではないことが判明した。
【0045】
そこで、本実施形態では、基板載置台3よりも外側の部分にスリット41を設けた気流ガイド部材40を配置することにより、
図6に示すように、スリット41を介して排気されるガス流を形成する。これにより、気流ガイド部材40と基板載置台3との間の処理ガスの流量を少なくすることができ、基板G周縁部でのエッチングを抑制してエッチングの面内分布を均一にすることができる。
【0046】
このとき、スリット41の幅を調整することにより、スリット41を介しての排気と、気流ガイド部材40と基板載置台3との間を介しての排気との排気バランスを調整して、基板G周縁部のガス流量をコントロールすることができ、その排気バランスを、基板G周縁部のエッチング抑制の程度を最適化できる理想的なものとすることにより、エッチングの面内分布をより均一にすることができる。
【0047】
このときのスリット41の幅bは、エッチング条件や気流ガイド部材40の高さa等によって最適な値になるように決定される。また、気流ガイド部材40の高さaは、外方に向かう気流が最適化されるように適宜設定される。例えば、基板G周縁部のエッチング量を減らすためには気流ガイド部材40の高さaに対するスリット41の幅bの割合を多くするために、気流ガイド部材40の高さaを低くしたり、スリット41の幅bを広くすることができる。また、基板G周縁部のエッチング量を増やすためには気流ガイド部材40の高さaに対するスリット41の幅bの割合を小さくするために、気流ガイド部材40の高さaを高くしたり、スリット41の幅bを狭くすることができる。
【0048】
図7は、気流ガイド部材40のスリット41の幅を0〜40mmの間で変化させて、処理ガスとしてCl
2ガスを用いてTi/Al/Ti積層膜をエッチングした場合の、基板端からの距離とエッチングレートとの関係を示す図である。このときのエッチング条件は、以下の通りとした。
【0049】
エッチング条件
Cl
2ガス流量:3700sccm
圧力:15mTorr(2Pa)
プラズマ生成用高周波パワー:12kW
バイアス生成用高周波パワー:6kW
時間:60sec
【0050】
図7に示すように、スリットを形成しない場合は、ローディング効果により基板周縁部のエッチングレートが高いのに対し、スリットを形成することにより基板周縁部のエッチングレートが低下することがわかる。また、エッチング条件や気流ガイド部材40の高さa等に応じてスリットの幅bの最適値が存在し、本例の場合は、スリット幅が5mmのときに、基板周縁部のエッチングを適度に抑制することができ、エッチング分布が最適になることがわかる。一方、スリット幅が20mm、40mmの場合は、基板周縁部のエッチングレートがむしろ低下することがわかった。
【0051】
このように、スリット41の幅bを、エッチング条件や気流ガイド部材40の高さa等に応じて最適化することにより、基板G周縁部のエッチング量を低減して面内均一性の高いエッチングを行えることが確認された。
【0052】
また、気流ガイド部材40にスリット41が形成されているので、処理ガスが気流ガイド部材40上に滞留せず、スリット41を介して排気される。このため、気流ガイド部材40の表面やチャンバー2の内壁へのデポの付着量を低減することができ、基板Gへのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0053】
図8は、
図9に示すポイント、すなわち気流ガイド部材40の表面(
図9のポイント1)とチャンバー2の内壁の気流ガイド部材40よりも上の部分(
図9のポイント2)において、気流ガイド部材の「スリットあり」の場合と「スリット」なしの場合のエッチング後のデポの付着量を示した図である。ここでは、
図1および
図2に示す基板処理装置を用い、スリットの幅を15mmとして、以下の条件の2段階のエッチング処理を200セット繰り返した後のデポ量を測定した。なお、デポ量は、気流ガイド部材40とチャンバー2の内壁のデポ量を直接測定するのではなく、当該位置にガラス基板の小片を設置し、ガラス基板表面に成膜された量をデポ量として測定した。その際、デポ量の測定には段差計を用いた。
【0054】
エッチング条件
第1段階
Cl
2ガス流量:3700sccm
時間:60sec
第2段階
Cl
2ガス流量:1500sccm
時間:30sec
共通条件
圧力:15mTorr(2Pa)
プラズマ生成用高周波パワー:12kW
バイアス生成用高周波パワー:6kW
【0055】
図8に示すように、ポイント1、2の双方とも、スリットを設けることによりデポが低減することが確認された。
【0056】
さらに、気流ガイド部材40は、基板載置台3側の内側部40−1とチャンバー2の内壁側の外側部40−2とを有し、内側部40−1と外側部40−2との間には、内側部40−1よりも外側部40−2が低い位置となる段差42が形成されている。これにより、
図4に示すように、昇降ピン8により基板Gを基板載置台3の上方へ上昇させた状態で、搬入出口35から搬送装置60の搬送アーム62をチャンバー2内に挿入して基板Gの受け渡しを行う際に、搬送アーム62のベース61との干渉を防止することができる。また、このように外側部40−2が低く形成されることにより、たとえその部分にデポが付着しても、基板Gにパーティクルとなって付着し難くすることができる。基板Gの受け渡しに際しては、
図4に示すように、基板Gを気流ガイド部材40の上方まで上昇させた状態となるので、基板Gの上方には部材が存在せず、基板Gへのパーティクル付着の危険性を小さくすることができる。
【0057】
さらにまた、気流ガイド部材40は、長辺側部材40aおよび短辺側部材40bを組み立てて構成されるので、大型基板用の大型の処理装置においても容易に装着することができる。また、長辺側部材40aおよび短辺側部材40bは、いずれも、一枚の板を折り曲げることにより、内側部40−1を構成する部分、外側部40−2を構成する部分、および段差部分を簡易に形成することができ、また、長辺側部材40aおよび短辺側部材40bの端部は、45°に切断された台形状をなし、これらの内側部40−1を構成する部分、外側部40−2を構成する部分、および段差部分の端部が、それぞれ突き合わされた状態で組み立てられるので、段差が存在しても容易に組み立てることができる。
【0058】
さらにまた、気流ガイド部材40の外側部40−2に形成されたスリット41は、2つの長辺側部材40aのそれぞれにその長さ方向に沿って形成された2つの長辺スリット41aと、短辺側部材40bのそれぞれにその長さ方向に沿って形成された短辺スリット41bとを有し、長辺スリット41aと短辺スリット41bは、連続していないので、長辺スリット41aと短辺側部材40bとを容易に合わせることができる。また、長辺スリット41aと短辺側部材40bの長さを調整して排気口29の上方にスリットが存在しないようにすることで、スリット41を介して排気口29へ直接排気されることがなくなり、排気流によるパーティクルの巻上げ等を抑制することができる。
【0059】
<他の適用>
以上、本発明の一つの実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく本発明の思想の範囲内で種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、容量結合プラズマ処理装置に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、誘導結合型のプラズマ処理装置や、マイクロ波プラズマ処理装置等の他のプラズマ処理装置にも適用することができる。
【0060】
さらに、上記実施形態では、基板としてガラス基板を用いた例を説明したが、セラミックス基板等の他の絶縁性基板であってもよい。また、半導体基板等であってもよい。