(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<シリコン芯線のエッチング装置>
図1に示すように、シリコン芯線C1のエッチング装置1は、第1エッチング液槽11と、第2エッチング液槽12と、洗浄槽13と、カセット台20と、芯線ホルダ30と、クレーン(位置変化機構)40と、を備える。
【0013】
本明細書では、
図1に示すエッチング装置1の初期状態において、芯線ホルダ30に対する第1エッチング液槽11の位置を前側と称し、第1エッチング液槽11に対する芯線ホルダ30の位置を後側と称する。また、芯線ホルダ30に対するクレーン40の昇降機構43の位置を上側と称し、昇降機構43に対する芯線ホルダ30の位置を下側と称する。
【0014】
図2および
図3で示すように、シリコン芯線C1は、芯線ホルダ30の芯線支持板(芯線支持部材)31の貫通孔31Aを貫通して、芯線支持板31に支持される。
図2等に示すように、本明細書において、前側に向かって右手側を右側、左手側を左側と称する。芯線支持板31に支持されたシリコン芯線C1は左右方向に延びるため、
図1では、シリコン芯線C1は紙面に垂直な方向に延びている。
【0015】
シリコン芯線C1は、例えばシーメンス法により多結晶シリコンを製造するときに、シリコン芯線C1の表面上に多結晶シリコンを析出させるために使用される。シリコン芯線C1は、限定するものではないが、例えばロッド状の多結晶シリコンまたは単結晶シリコンを切り出すことにより製造される。
【0016】
このように製造されるシリコン芯線C1の形状は、例えば円柱、楕円柱、略方形の角柱または多角形の角柱である。角柱形状のシリコン芯線C1は、大きなロッド状の多結晶シリコンを直線的に切り分けることにより、容易に製造することができる。また、シリコン芯線C1の寸法は、例えば断面積が0.1cm
2以上6cm
2以下であり、長さが200mm以上である。シリコン芯線C1の長さの上限値は特に制限されるものではないが、通常、2000mm程度であり、好ましくは1500mm程度である。
【0017】
第1エッチング液槽11および第2エッチング液槽12は、シリコン芯線C1の表面をエッチングする第1エッチング液L1および第2エッチング液L2をそれぞれ収容する。第1エッチング液槽11の前側には、第2エッチング液槽12および洗浄槽13が順番に並んでいる。後述するように、本実施形態では、シリコン芯線C1は第1エッチング液槽11の第1エッチング液L1に浸漬され、エッチングされた後、第2エッチング液槽12の第2エッチング液L2に浸漬され、エッチングされる。
【0018】
第1エッチング液L1および第2エッチング液L2としては、限定するものではないが、例えば、フッ化水素(HF)水溶液(弗酸とも称される)、硝酸(HNO
3)水溶液またはこれらの混合物を使用することができる。エッチング後のシリコン芯線C1について、表面の平坦性を向上させる観点から、第2エッチング液L2は、第1エッチング液L1よりも、HNO
3に対するHFの質量比率が高い方が好ましい。例えば、第1エッチング液L1におけるHF:HNO
3の質量比率は、1:50〜1:30であることが好ましく、第2エッチング液L2におけるHF:HNO
3の質量比率は、1:30〜1:5であることが好ましい。
【0019】
また、第1エッチング液L1および第2エッチング液L2に含まれるHNO
3の濃度は、エッチングの対象となるシリコン芯線C1の汚染状態およびエッチング後のシリコン芯線C1の目標清浄度に応じて適宜決定してもよい。例えば、第1エッチング液L1に含まれるHNO
3の濃度は、64質量%よりも大きく69質量%以下であることが好ましい。また、第2エッチング液L2に含まれるHNO
3の濃度は、60質量%以上67質量%以下であることが好ましい。HNO
3の濃度は、第2エッチング液L2よりも第1エッチング液L1の方が高いことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本実施形態では、エッチング液槽として、第1エッチング液槽11および第2エッチング液槽12の2つの槽が設けられている。しかし、エッチング液槽の数はこれに限定されず、1つのエッチング液槽が設けられていてもよく、3つ以上のエッチング液槽が設けられていてもよい。当然のことながら、エッチング液槽の数が1つであったとしても、本発明は十分にその効果を発揮する。
【0021】
3つ以上のエッチング液槽が設けられる場合、エッチング後のシリコン芯線C1について、表面の平坦性を向上させる観点から、エッチング液槽に収容されるエッチング液は、後工程に相当する程、HNO
3に対するHFの質量比率が高い方が好ましい。これにより、エッチング液の必要以上の温度上昇を抑制できる。これは、いきなりHF質量比率が高いエッチング液によりシリコン芯線C1をエッチングすると、エッチングが急速に進行してしまうためである。なお、この場合、第3エッチング液に含まれるHNO
3の濃度は、55質量%以上64質量%以下となることが好ましい。また、HNO
3の濃度は、第3エッチング液よりも第2エッチング液L2の方が高いことが好ましい。
【0022】
第1エッチング液槽11および第2エッチング液槽12はそれぞれ、少なくとも表面が第1エッチング液L1および第2エッチング液L2に対して耐食性のある材料で形成されていることが好ましい。また、第1エッチング液槽11および第2エッチング液槽12の表面は、シリコン芯線C1の汚染の原因となる物質を生成しない材料で形成されていることが好ましい。
【0023】
洗浄槽13は、シリコン芯線C1が浸漬される洗浄水L3を収容する。洗浄水L3としては、例えば、純度の高い水を使用することが好ましい。シリコン芯線C1の不純物汚染を防ぐ観点から、洗浄水L3は比抵抗が1MΩcm(メガオームセンチ)以上の純水であることが好ましい。洗浄槽13は、複数槽設けられていてもよく、芯線ホルダ30に支持されたシリコン芯線C1が、各洗浄槽内の洗浄水に順番に浸漬されてもよい。この場合、最後の洗浄槽内の洗浄水の純度が最も高くなるように配置することが好ましい。
【0024】
図2に示すように、カセット台20は、フレーム21と、8個の挿入部22と、を備える。なお、挿入部22の数は8個に限定されず、エッチングの効率およびエッチング装置1の大きさ等に応じて適宜変更することができる。フレーム21が備える棒状部はそれぞれ、略直方体の各辺に相当するように構成されており、この各辺は、それぞれ上下、前後または左右方向に延びている。
【0025】
フレーム21が備える左右方向に延びる棒状部に、8個の挿入部22が設けられている。8個の挿入部22はそれぞれ、左右方向に対向する突起が対となった形状である。カセット台20は、挿入部22の対となった突起の間に後述する芯線ホルダ30の芯線支持板31が挿入されることにより、芯線ホルダ30がカセット台20に取り付けられるように構成されている。また、カセット台20は、芯線ホルダ30をカセット台20に固定するための固定具(図示せず)を備える。
【0026】
芯線ホルダ30は、2枚の芯線支持板31と、フック32と、連結部33と、を備える。芯線支持板31は、上下および前後方向に延びるように配置される。芯線支持板31には、シリコン芯線C1が貫通する貫通孔(孔)31Aが複数形成されている。
【0027】
なお、本発明に係るエッチング装置において、シリコン芯線C1が複数の芯線支持板31を貫通した状態で、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させることができるのであれば、カセット台20は必須のものではない。本実施形態では、芯線ホルダ30がフック32を備えるので、フック32をクレーン40に取り付け、クレーン40が芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させることにより、本発明を達成することができる。
【0028】
図3に示すように、芯線支持板31は、シリコン芯線C1が貫通孔31Aを貫通した状態で、芯線支持板31がシリコン芯線C1を支持するように構成されている。芯線支持板31に複数形成された貫通孔31Aにはそれぞれ、複数のシリコン芯線C1が貫通し得るため、芯線支持板31は複数のシリコン芯線C1を支持し得るように構成されている。
【0029】
芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、連続した曲線状となるように形成されている。また、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、角がなく滑らかな形状であることが好ましい。例えば、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、円形状または楕円形状であってもよい。あるいは、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、例えば正方形、長方形、その他の四角形および六角形を含む多角形の形状であってもよい。
【0030】
なお、エッチング対象であるシリコン芯線C1が角柱形状である場合、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部を円形状または楕円形状とすることにより、シリコン芯線C1と芯線支持板31との接触面積を減少させることができる。この場合、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させるときに、シリコン芯線C1と芯線支持板31とが離れ易くなるため、シリコン芯線が貫通する相対位置を変化させ易くなり、かつ、均一なエッチングを行うことが容易となる。
【0031】
また、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、シリコン芯線C1との接触面積を減少させるために、連続した凹凸状であってもよい。この場合、シリコン芯線C1は、前記縁部における凸部の先端に当接することにより、前記縁部における凹部に当接し難くなるため、前記縁部とシリコン芯線C1との接触面積を減少させ易くすることができる。
【0032】
貫通孔31Aが円形状である場合、貫通孔31Aの直径は、シリコン芯線C1の断面の最小包含円の直径の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。また、貫通孔31Aの直径は、限定するものではないが、シリコン芯線C1の断面の最小包含円の直径の2.0倍以下であることが好ましい。この場合、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させるときに、シリコン芯線C1が芯線支持板31から脱落し難くなる。
【0033】
また、貫通孔31Aが円形状以外の形状である場合、貫通孔31Aの短径は、シリコン芯線C1の断面の最小包含円の直径の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。この場合も、シリコン芯線C1が芯線支持板31から脱落することを防ぐ観点から、貫通孔31Aの短径は、シリコン芯線C1の断面の最小包含円の直径の2.0倍以下であることが好ましい。
【0034】
芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、その一部が、シリコン芯線の断面の最小包含円の直径よりも短い長さで開放されていてもよい。ただし、エッチング中および/または洗浄中に、シリコン芯線C1が芯線支持板31から脱落することを防ぐために、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、連続した形状とすることが好ましい。また、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部が連続した形状である場合、芯線支持板31に多数の貫通孔を容易に配置できるため、多数のシリコン芯線C1を一度にエッチングし易くすることができる。
【0035】
図4および
図5で示すように、フック32は、芯線支持板31の上面から左右方向外側へ延出しており、クレーン40のアーム41に取り付けられる。なお、
図4および
図5では、芯線ホルダ30が支持するべきシリコン芯線C1を省略して示す。フック32がアーム41に取り付けられることにより、クレーン40が芯線ホルダ30を支持する。これにより、芯線ホルダ30が上下または前後方向に移動可能となる。芯線ホルダ30が固定具によってカセット台20に取り付けられている場合には、カセット台20および芯線ホルダ30を一体として、上下方向または前後方向に移動させることが可能である。
図2に示す連結部33は、2枚の芯線支持板31を互いに連結するように、左右方向に延びている。
【0036】
第1エッチング液L1もしくは第2エッチング液L2または洗浄水L3中で、芯線ホルダ30を上下または前後方向に移動させることにより、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させることができる。なお、本明細書において、「貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させる」ことは、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部と接触していたシリコン芯線C1の位置を変化させることを含む。
【0037】
また、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させるときには、シリコン芯線C1の表面全体を均一にエッチングするために、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部とシリコン芯線C1とが一時的に離れることが好ましい。ここで、後述するように、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させることにより、芯線支持板31が上下方向に往復移動するため、芯線支持板31が上昇した後、下降を始めるときに、シリコン芯線C1が芯線支持板31から離れやすくなる。したがって、シリコン芯線C1をエッチングまたは洗浄するときは、シリコン芯線C1を支持する芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させることが好ましい。
【0038】
フック32は、本実施形態において、2枚の芯線支持板31上に配置されている。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、カセット台20の中央部付近に相当する1か所にフックを配置してもよく、または3か所以上に配置してもよい。ただし、フック32は、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30をクレーン40によって移動させる際に、連結部33が略水平状態を維持できるように取り付けられることが好ましい。したがって、フック32は、
図2に示すように、2枚の芯線支持板31上に、それぞれ配置されることが好ましい。
【0039】
図1に示すように、クレーン40は、アーム41と、ワイヤロープ42と、昇降機構43と、台車44と、レール45と、を備える。アーム41は左右方向に伸縮可能に構成されている。アーム41にフック32を取り付けるときには、まず、
図4に示すように、アーム41をカセット台20の上方に配置した状態で、アーム41を左右方向に伸長させる。そして、
図5に示すように、昇降機構43(
図1に示す)によってアーム41を下降させ、アーム41を左右方向に収縮させることにより、アーム41にフック32を取り付けることができる。
【0040】
図1に示すように、ワイヤロープ42は、アーム41と昇降機構43とを接続する。昇降機構43は、例えばワイヤロープを巻き取りまたは繰り出すことにより、アーム41を昇降させる。台車44は、昇降機構43をレール45に対して移動可能に接続する。レール45は、台車44を前後方向に案内する。レール45は、第1エッチング液槽11、第2エッチング液槽12および洗浄槽13の上方に、前後方向に延びている。アーム41、昇降機構43および台車44は、制御部(図示せず)に接続されており、アーム41の伸縮および昇降ならびに台車44の移動は、この制御部によって制御される。
【0041】
<シリコン芯線のエッチング方法>
シリコン芯線C1のエッチング方法について、
図1および
図6〜
図8を用いて説明する。
【0042】
図6に示すように、まず、2枚の芯線支持板31の貫通孔31Aにシリコン芯線C1を貫通させ、シリコン芯線C1を2枚の芯線支持板31によって支持する(S1:貫通工程)。S1では、シリコン芯線C1がエッチング中に芯線支持板31から脱落することを防ぐため、シリコン芯線C1の両端は、2枚の芯線支持板31よりも左右方向外側にそれぞれ配置されることが好ましい。2枚の芯線支持板31よりも左右方向外側に突出するシリコン芯線C1の長さは、シリコン芯線C1の脱落を防ぐことができれば、特に制限されない。2枚の芯線支持板31よりも左右方向外側に突出するシリコン芯線C1の長さは、例えば、シリコン芯線C1の長さの1%以上15%以下であることが好ましく、3%以上10%以下であることがより好ましい。
【0043】
そして、芯線支持板31を挿入部22に挿入することにより、芯線ホルダ30をカセット台20に取り付ける(S2)。この状態で、カセット台20の固定具(図示せず)により、芯線ホルダ30をカセット台20に固定する。
【0044】
次に、アーム41にフック32を取り付け、
図1に示すエッチング装置1の初期状態から、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を昇降機構43によって上昇させる。その後、台車44をレール45に沿って前方に移動させ、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を第1エッチング液槽11の上方に配置する。この状態から、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を昇降機構43によって下降させることにより、
図7に示すように、芯線支持板31に支持されたシリコン芯線C1を第1エッチング液L1に浸漬する(S3:第1浸漬工程)。
【0045】
このように、シリコン芯線C1が第1エッチング液L1に浸漬された状態で、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させることにより、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させる(S4:第1位置変化工程)。なお、芯線ホルダ30を往復移動させる速度は、エッチング装置1およびシリコン芯線C1の形状および大きさ等に応じて適宜決定すればよいが、シリコン芯線C1が芯線支持板31との接触により損傷しない程度の速度であることが好ましい。貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させる速度は、例えば、1分間当たり、30回以上90回以下であることが好ましい。特に、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させる速度は、1分間当たり、30回以上90回以下であることが好ましい。
【0046】
S4において、シリコン芯線C1の表面の、芯線支持板31との接触箇所が芯線ホルダ30の往復移動に伴って変化するので、シリコン芯線C1の表面全体が第1エッチング液L1と接触することができる。したがって、シリコン芯線C1の表面全体を均一にエッチングすることができる。また、シリコン芯線C1は、芯線支持板31に形成された貫通孔31Aを貫通した状態で芯線支持板31に支持されるので、シリコン芯線C1が芯線支持板31から落下することを防ぐことができる。
【0047】
また、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させることにより、芯線支持板31が上下方向に往復移動するため、芯線支持板31が上昇した後、下降を始めるときに、シリコン芯線C1が芯線支持板31から離れやすくなる。したがって、エッチングの間に、シリコン芯線C1の表面全体が第1エッチング液L1とより接触しやすくなるので、シリコン芯線C1の表面全体をより均一にエッチングすることができる。また、芯線ホルダ30は水平方向に移動する必要がないことから、エッチング装置1の水平方向の寸法を小さくすることができるので、エッチング装置1を小型化することができる。
【0048】
また、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部は、連続した曲線状となるように形成されることが好ましい。この場合、シリコン芯線C1と芯線支持板31との接触面積が減少しやすくなるので、シリコン芯線C1が芯線支持板31から離れやすくなる。また、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部が連続しているので、シリコン芯線C1が芯線支持板31から防ぐことができる。その結果、シリコン芯線C1が安定して芯線支持板31に支持された状態で、シリコン芯線C1の表面全体をより均一にエッチングすることができる。
【0049】
また、芯線支持板31に貫通孔31Aが複数形成されているので、芯線支持板31が複数のシリコン芯線C1を支持することができる。したがって、複数のシリコン芯線C1を効率的にエッチングすることができる。
【0050】
次に、シリコン芯線C1を第1エッチング液L1によりエッチングした後、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を昇降機構43によって上昇させることにより、シリコン芯線C1を第1エッチング液L1から取り出す(S5)。次いで、台車44をレール45に沿って前方に移動させ、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を第2エッチング液槽12の上方に配置する。
【0051】
そして、S3〜S5と同様にして、シリコン芯線C1を第2エッチング液L2に浸漬し(S6:第1浸漬工程)、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させ(S7:第1位置変化工程)、シリコン芯線C1を第2エッチング液L2から取り出す(S8)。
【0052】
次いで、台車44をレール45に沿って前方に移動させ、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を洗浄槽13の上方に配置する。そして、S3〜S5と同様にして、シリコン芯線C1を洗浄水L3に浸漬し(S9:第2浸漬工程)、芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させ(S10:第2位置変化工程)、シリコン芯線C1を洗浄水L3から取り出す(S11)。
【0053】
S10において、シリコン芯線C1の表面の、芯線支持板31との接触箇所が芯線ホルダ30の往復移動に伴って変化するので、シリコン芯線C1の表面全体が洗浄水L3と接触することができ、シリコン芯線C1の表面全体を均一に洗浄することができる。
【0054】
そして、台車44をレール45に沿って洗浄槽13よりも前方に移動させた後、
図8に示すように、カセット台20に取り付けられた芯線ホルダ30を昇降機構43により下降させる。アーム41からフック32を取り外し、芯線ホルダ30をカセット台20から取り外した後、シリコン芯線C1を2枚の芯線支持板31から抜き取ることにより、エッチングされたシリコン芯線C1を得ることができる。
【0055】
<変形例>
本実施形態において、カセット台20は対になった突起の形状の挿入部22を備え、挿入部22の対となった突起の間に、芯線支持板31が挿入される。しかし、本発明はこれに限定されず、カセット台20には、突起形状の挿入部22の代わりに、芯線支持板31を挿入するための溝が形成されていてもよい。
【0056】
また、本実施形態において、芯線支持板31の貫通孔31Aにシリコン芯線C1を貫通させた後、芯線ホルダ30をカセット台20に取り付けている。しかし、本発明はこれに限定されず、芯線ホルダ30をカセット台20に取り付けた後、芯線支持板31の貫通孔31Aにシリコン芯線C1を貫通させてもよい。
【0057】
また、本実施形態において、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させることにより、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させている。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば第1エッチング液槽11、第2エッチング液槽12または洗浄槽13を上下方向に往復移動させることにより、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させてもよい。
【0058】
あるいは、第1エッチング液L1、第2エッチング液L2または洗浄水L3に強制循環流を形成させ、強制循環流をシリコン芯線C1に向けることにより、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置を変化させてもよい。該強制循環流は、第1エッチング液槽11、第2エッチング液槽12または洗浄槽13にジェットノズルを設け、該ジェットノズルより循環液を噴流させることにより形成してもよい。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図9に示すように、実施形態2は、カセット台60に、短尺芯線ホルダ70および中尺芯線ホルダ80が取り付けられる点で、実施形態1と相違している。
【0060】
短尺芯線ホルダ70は、2枚の芯線支持板31と、フック32と、連結部73と、を備える。連結部73の左右方向の長さは、
図2に示す連結部33の左右方向の長さよりも短い。したがって、短尺芯線ホルダ70は、シリコン芯線C1よりも左右方向の長さの短い短尺シリコン芯線C2の支持に適している。
【0061】
また、
図9に示す中尺芯線ホルダ80は、2枚の芯線支持板31と、フック32と、連結部83と、を備える。連結部83の左右方向の長さは、連結部73の左右方向の長さよりも長く、かつ
図2に示す連結部33の左右方向の長さよりも短い。したがって、中尺芯線ホルダ80は、短尺シリコン芯線C2よりも左右方向の長さが長く、かつシリコン芯線C1よりも左右方向の長さが短い中尺シリコン芯線C3の支持に適している。なお、
図9において、短尺芯線ホルダ70および中尺芯線ホルダ80は、短尺シリコン芯線C2および中尺シリコン芯線C3をそれぞれ1本支持しているが、複数本支持してもよい。
【0062】
図9に示すように、カセット台60は、フレーム21と、8個の短尺用挿入部62と、8個の中尺用挿入部63と、を備える。フレーム21が備える左右方向に延びる棒状部に、8個の短尺用挿入部62および8個の中尺用挿入部63が設けられている。8個の短尺用挿入部62および8個の中尺用挿入部63はそれぞれ、左右方向に対向する突起が対となった形状である。
【0063】
8個の短尺用挿入部62の左右方向の位置は、短尺芯線ホルダ70の2枚の芯線支持板31を配置する位置に対応している。また、8個の中尺用挿入部63の左右方向の位置は、中尺芯線ホルダ80の2枚の芯線支持板31を配置する位置に対応している。
【0064】
図9において、エッチング装置1は、短尺芯線ホルダ70および中尺芯線ホルダ80を備えるので、それぞれが有するフック32は、合計で4つである。カセット台60に短尺芯線ホルダ70および中尺芯線ホルダ80の両方を固定した場合、略水平状態が保てるのであれば、短尺芯線ホルダ70および中尺芯線ホルダ80のそれぞれ一方のフック32をクレーン40のアーム41(
図4に示す)に取り付けてもよい。あるいは、4本のアーム41を有するクレーン40を準備して、4つのフック32の全てにアーム41を取り付けてもよい。
【0065】
シーメンス法により多結晶シリコンを製造する場合、略鉛直方向に立てた2本の長い長尺シリコン芯線の上部を短尺シリコン芯線C2により接続し、2本の長尺シリコン芯線および短尺シリコン芯線C2を一体として通電加熱することがある。また、長尺シリコン芯線は、それよりも長さの短い短尺シリコン芯線C2および中尺シリコン芯線C3を、例えば溶接することにより製造されることがある。
【0066】
前記の構成によると、短尺シリコン芯線C2または中尺シリコン芯線C3の長さに応じて、短尺芯線ホルダ70または中尺芯線ホルダ80を選択することができる。したがって、シリコン芯線C2、C3の長さを問わず、芯線支持板31がシリコン芯線C2、C3を確実に支持することができる。
【0067】
<変形例>
本実施形態において、カセット台20は、8個の短尺用挿入部62と、8個の中尺用挿入部63と、を備える。しかし、本発明はこれに限定されず、カセット台20には、合計で16個を超える数の挿入部が、左右方向に異なる位置に設けられていてもよい。この場合、芯線支持板31が挿入される挿入部の位置を変更することにより、2枚の芯線支持板31の間の距離がより細かく変更可能である。したがって、シリコン芯線C1の長さに応じて、2枚の芯線支持板31の間の距離がより細かく変更可能であるので、シリコン芯線C2、C3の長さを問わず、芯線支持板31がシリコン芯線C2、C3をより確実に支持することができる。
【0068】
〔実施形態3〕
図10に示すように、実施形態3は、芯線ホルダ30ではなく、カセット台20が着脱可能なフック233を備える点で、実施形態1と相違している。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、
図10では、芯線ホルダ30が支持するべきシリコン芯線C1を省略して示す。
【0069】
カセット台20は、芯線ホルダ30をカセット台20に固定するための固定具23を2つ備える。2つの固定具23は、左右方向に離れている。2つの固定具23はそれぞれ、2つの取り付け部231と、連結部232と、フック233と、を備える。2つの取り付け部231は、前後方向に対向するように設けられており、フレーム21が備える左右方向に延びる棒状部の上側に、着脱可能に取り付けられるように構成されている。取り付け部231をフレーム21に取り付ける、またはフレーム21から取り外すことにより、固定具23をフレーム21に取り付ける、またはフレーム21から取り外すことがそれぞれ可能である。この場合には、シリコン芯線C1のエッチングおよび洗浄は、芯線ホルダ30がカセット台20に固定された状態で行われる。
【0070】
連結部232は、前後方向に対向する2つの取り付け部231を連結する板状の部材である。フック233は、連結部232の上面から左右方向外側へ延出しており、クレーン40のアーム41に取り付けられるように構成されている。
【0071】
シリコン芯線C1をエッチングするときは、まず、固定具23をフレーム21から取り外した状態で、シリコン芯線C1を支持している2枚の芯線支持板31を挿入部22に挿入する。次いで、固定具23をフレーム21に取り付け、芯線ホルダ30をカセット台20に固定する。そして、アーム41にカセット台20のフック233を取り付ける。この後の流れは実施形態1と同様である。
【0072】
このように、カセット台20が着脱可能なフック233を備える構造とした場合には、例えば、固定具23の位置を変更することにより、フック233の位置調整を容易に行うことができる。したがって、クレーン40によりカセット台20を上下に移動させるときにも、カセット台40が備える前後方向および左右方向に延びる棒状部を略水平に保つことが容易となる。
【0073】
<変形例>
実施形態3についても、実施形態2と同様に、カセット台60に、短尺芯線ホルダ70および中尺芯線ホルダ80を取り付け、固定具23で固定する構成としてもよい。この場合であっても、固定具23の位置を変更することにより、フック233の位置調整を容易に行うことができる。そのため、クレーン40によりカセット台20を上下に移動させるときにも、カセット台40が備える前後方向および左右方向に延びる棒状部を略水平に保つことが容易となる。また、1つのカセット台20は2つのフック233を備えるので、クレーン40は2本のアーム41を備えればよく、エッチング装置1を複雑な構成とする必要がない。
【0074】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング装置は、シリコン芯線が浸漬されるエッチング液を収容するエッチング液槽と、前記シリコン芯線が貫通する孔が少なくとも1つ形成されており、前記シリコン芯線を支持する複数の芯線支持部材と、前記シリコン芯線が、前記複数の芯線支持部材を貫通し前記エッチング液に浸漬された状態で、前記孔に対して前記シリコン芯線が貫通する相対位置を変化させる位置変化機構と、を備えている。
【0075】
なお、本明細書において、「孔」は、孔を形成する縁部が連続した形状、すなわち閉じた形状のものだけでなく、孔を形成する縁部の一部が、シリコン芯線の断面における最小包含円の直径よりも短い長さで開放された形状のものを含むものとする。したがって、芯線支持部材における孔を形成する縁部は、その一部が、シリコン芯線の断面の最小包含円の直径よりも短い長さで開放されていてもよい。
【0076】
前記の構成によれば、シリコン芯線が、複数の芯線支持部材を貫通しエッチング液に浸漬された状態で、位置変化機構が孔に対してシリコン芯線が貫通する相対位置を変化させることにより、シリコン芯線の表面における芯線支持部材との接触箇所が変化する。したがって、エッチングの間に、シリコン芯線の表面全体がエッチング液と接触することができ、シリコン芯線の表面全体を均一にエッチングすることができる。また、シリコン芯線は、芯線支持部材に形成された孔を貫通した状態で芯線支持部材に支持されるので、シリコン芯線が芯線支持部材から落下することを防ぐことができる。
【0077】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング装置は、前記位置変化機構は、前記芯線支持部材を上下方向に往復移動させてもよい。前記の構成によれば、芯線支持部材が上下方向に往復移動するため、芯線支持部材が上昇した後、下降を始めるときに、シリコン芯線が芯線支持部材から離れやすくなる。したがって、エッチングの間に、シリコン芯線の表面全体がエッチング液とより接触しやすくなるので、シリコン芯線の表面全体をより均一にエッチングすることができる。また、芯線支持部材は水平方向に移動する必要がないことから、エッチング装置の水平方向の寸法を小さくすることができるので、エッチング装置を小型化することができる。
【0078】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング装置は、前記孔を形成する縁部は、連続した曲線状となるように形成されていてもよい。前記の構成によれば、シリコン芯線と芯線支持部材との接触面積が減少しやすくなるので、シリコン芯線が芯線支持部材から離れやすくなる。また、孔を形成する縁部が連続している、すなわち閉じているので、シリコン芯線が芯線支持部材から脱落することを防ぐことができる。その結果、シリコン芯線が安定して芯線支持部材に支持された状態で、シリコン芯線の表面全体をより均一にエッチングすることができる。
【0079】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング装置は、前記シリコン芯線は、前記複数の芯線支持部材に含まれる少なくとも2つの前記芯線支持部材に形成された前記孔をそれぞれ貫通するものであり、前記2つの芯線支持部材の間の距離は、前記シリコン芯線の長さに応じて変更可能であってもよい。前記の構成によれば、シリコン芯線の長さを問わず、芯線支持部材がシリコン芯線を確実に支持することができる。
【0080】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング装置は、前記芯線支持部材には前記孔が複数形成されていてもよい。前記の構成によれば、芯線支持部材が複数のシリコン芯線を支持できるので、複数のシリコン芯線を効率的にエッチングすることができる。
【0081】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング装置は、前記シリコン芯線が浸漬される洗浄水を収容する洗浄槽をさらに備え、前記位置変化機構は、前記エッチング液に浸漬された前記シリコン芯線が、前記複数の芯線支持部材を貫通し前記洗浄水に浸漬された状態で、前記孔に対して前記シリコン芯線が貫通する相対位置を変化させてもよい。
【0082】
前記の構成によれば、シリコン芯線が、複数の芯線支持部材を貫通し洗浄水に浸漬された状態で、位置変化機構が孔に対してシリコン芯線が貫通する相対位置を変化させることにより、シリコン芯線の表面における芯線支持部材との接触箇所が変化する。したがって、洗浄の間に、シリコン芯線の表面全体が洗浄水と接触することができ、シリコン芯線の表面全体を均一に洗浄することができる。
【0083】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング方法は、シリコン芯線を支持する複数の芯線支持部材に形成された孔に、前記シリコン芯線を貫通させる貫通工程と、前記芯線支持部材に支持された前記シリコン芯線をエッチング液に浸漬する第1浸漬工程と、前記孔に対して前記シリコン芯線が貫通する相対位置を変化させる第1位置変化工程と、を備える。
【0084】
本発明の一態様に係るシリコン芯線のエッチング方法は、前記第1位置変化工程の後に、前記芯線支持部材に支持された前記シリコン芯線を洗浄水に浸漬する第2浸漬工程と、前記孔に対して、前記洗浄水に浸漬された状態の前記シリコン芯線が貫通する相対位置を変化させる第2位置変化工程と、をさらに備えてもよい。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0086】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0087】
〔実施例1〕
<シリコン芯線C1の準備>
本実施例の対象となるシリコン芯線C1として、延伸方向に直交する断面形状が一辺10mmの正方形であり、延伸方向の長さが1200mmの角柱状のシリコン芯線C1を9本準備した。
【0088】
<芯線ホルダ30の準備>
図2に示す芯線支持板31として、直径20mmの円形状の貫通孔31Aが均等な配置となるように9個形成された、厚みが10mmの芯線支持板31を2枚準備した。この芯線支持板31を、それぞれ9個の貫通孔31Aの位置が、上下方向および前後方向にそれぞれ同じ位置に配置されるように、左右方向に1m離して配置した。そして、
図2に示すように、芯線支持板31に連結部33およびフック32を取り付けることで、芯線ホルダ30を準備した。
【0089】
<シリコン芯線C1の芯線ホルダ30への配置:貫通工程>
次に、2枚の芯線支持板31において、上下方向および前後方向に同じ位置に配置された2つの貫通孔31Aを1組として、9組の貫通孔31Aそれぞれにシリコン芯線C1を1本ずつ挿入した。このとき、各シリコン芯線C1は、その両端が芯線支持板31から左右方向外側に約100mm突出した状態となるように、芯線ホルダ30に配置した。
【0090】
<芯線ホルダ30のカセット台20への取り付け>
芯線支持板31をカセット台20の挿入部22に挿入することにより、前記シリコン芯線C1を支持する芯線ホルダ30を、
図2に示すカセット台20に取り付けた。この状態で、カセット台20の固定具(図示せず)により、芯線ホルダ30をカセット台20に固定し、芯線ホルダ30およびカセット台20を一体化させた。
【0091】
<エッチング:第1浸漬工程および第1位置変化工程>
図4および
図5に示すように、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、クレーン40で上下方向および前後方向へ移動可能とするため、芯線ホルダ30のフック32をクレーン40のアーム41に取り付けた。
【0092】
次に、
図7に示すように、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30をクレーン40により移動させ、第1エッチング液槽11に収容された第1エッチング液L1に、芯線ホルダ30およびカセット台20の全体を浸漬した(第1浸漬工程)。なお、第1エッチング液L1は、HNO
3を67質量%、HFを2質量%含む水溶液とした。そして、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり40回の速度で5分間、上下方向に往復移動させた。このとき、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置が変化していることを目視により確認した(第1位置変化工程)。
【0093】
次いで、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30をクレーン40で上昇させることにより、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を第1エッチング液L1から取り出した。その後、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30をクレーン40で移動させることにより、第2エッチング液槽12に収容された第2エッチング液L2に、シリコン芯線C1を支持する芯線ホルダ30およびカセット台20の全体を浸漬した(第1浸漬工程)。なお、第2エッチング液L2は、HNO
3を64質量%、HFを4質量%含む水溶液とした。そして、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり40回の速度で10分間、上下方向に往復移動させた。このとき、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置が変化していることを目視により確認した(第1位置変化工程)。
【0094】
<洗浄:第2浸漬工程および第2位置変化工程>
次に、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30をクレーン40で上昇させることにより、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を第2エッチング液L2から取り出した。その後、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30をクレーン40で移動させることにより、洗浄槽13に収容された洗浄水L3に、シリコン芯線C1を支持する芯線ホルダ30およびカセット台20の全体を浸漬した(第2浸漬工程)。なお、洗浄水L3は、比抵抗が2MΩcmの純水とした。そして、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり40回の速度で2分間、上下方向に往復移動させた。このとき、貫通孔31Aに対してシリコン芯線C1が貫通する相対位置が変化していることを目視により確認した(第2位置変化工程)。
【0095】
<乾燥>
その後、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を洗浄槽13から取り出し、芯線ホルダ30およびカセット台20に付着した余分な洗浄水L3を除去した。そして、シリコン芯線C1を芯線ホルダ30およびカセット台20ごと乾燥させた。
【0096】
<評価・観察>
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。9本のシリコン芯線C1は全て、表面全体が均一で金属光沢を有しており、エッチングムラがないことがわかった。また、9本のシリコン芯線C1は全て、エッチング工程および洗浄工程を通して、芯線ホルダ30から脱落することはなかった。
【0097】
〔比較例1〕
実施例1の<エッチング>および<洗浄>において、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させず、静止させた状態で浸漬したことを除き、実施例1と同様の処理を行った。浸漬時間はそれぞれ、第1エッチング液L1で5分間、第2エッチング液L2で10分間、洗浄水L3で2分間とした。
【0098】
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。9本のシリコン芯線C1は全て、シリコン芯線C1が、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部と接触していた箇所およびその近傍が、その他の箇所と異なる光沢を有しており、明らかにエッチングムラが生じていることが分かった。なお、本明細書において、シリコン芯線C1が、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部と接触していた箇所を、シリコン芯線C1における芯線支持板31との接触箇所と称する。
【0099】
〔比較例2〕
実施例1の<エッチング>において、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を上下方向に往復移動させず、静止させた状態で浸漬したことを除き、実施例1と同様の処理を行った。なお、比較例1とは、<洗浄:第2浸漬工程および第2位置変化工程>において、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり40回の速度で2分間、上下方向に往復移動させた点で異なる。
【0100】
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。9本のシリコン芯線C1は全て、シリコン芯線C1における芯線支持板31との接触箇所およびその近傍が、その他の箇所と異なる光沢を有しており、明らかにエッチングムラが生じていることが分かった。したがって、エッチング工程においてカセット台20および芯線ホルダ30を往復移動させなかった場合には、洗浄工程においてシリコン芯線C1の相対位置を変化させたとしても、エッチングムラを解消できないことが示された。
【0101】
〔実施例2〕
芯線ホルダ30に、一辺が20mmの正方形の貫通孔31Aが均等な配置となるように9個形成された、厚みが10mmの芯線支持板31を2枚使用したことを除き、実施例1と同様の処理を行った。
【0102】
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。このうち5本のシリコン芯線C1は、表面全体が均一で金属光沢を有しており、エッチングムラがないことがわかった。また、残りの4本のシリコン芯線C1は、シリコン芯線C1における芯線支持板31との接触箇所およびその近傍が、その他の箇所と若干異なる光沢を有しており、わずかにエッチングムラが生じていることが分かった。ただし、実施例2で観察されたエッチングムラは、比較例1および2のエッチングムラよりも薄く、判別し難く大きな問題とはなりにくいムラであった。
【0103】
〔実施例3〕
<エッチング>における一体化したカセット台20および芯線ホルダ30の往復移動の速度を、1分当たり80回としたことを除き、実施例2と同様の処理を行った。具体的には、シリコン芯線C1を第1エッチング液L1に浸漬した状態で、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり80回の速度で5分間、上下方向に往復移動させた。また、シリコン芯線C1を第2エッチング液L2に浸漬した状態で、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり80回の速度で10分間、上下方向に往復移動させた。
【0104】
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。9本のシリコン芯線C1は全て、表面全体が均一で金属光沢を有しており、エッチングムラがないことがわかった。
【0105】
〔実施例4〕
芯線ホルダ30に、直径20mmの円に内接する正六角形の貫通孔31Aが均等な配置となるように9個形成された、厚みが10mmの芯線支持板31を2枚使用したことを除き、実施例1と同様の処理を行った。
【0106】
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。このうち7本のシリコン芯線C1は、表面全体が均一で金属光沢を有しており、エッチングムラがないことがわかった。また、残りの2本のシリコン芯線C1は、シリコン芯線C1における芯線支持板31との接触箇所およびその近傍が、その他の箇所と若干異なる光沢を有しており、わずかにエッチングムラが生じていることが分かった。ただし、実施例4で観察されたエッチングムラは、比較例1および2のエッチングムラよりも薄く、判別し難く大きな問題とはなりにくいムラであった。
【0107】
〔実施例5〕
<エッチング>における一体化したカセット台20および芯線ホルダ30の往復移動の速度を、1分当たり60回としたことを除き、実施例4と同様の処理を行った。具体的には、シリコン芯線C1を第1エッチング液L1に浸漬した状態で、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり60回の速度で5分間、上下方向に往復移動させた。また、シリコン芯線C1を第2エッチング液L2に浸漬した状態で、一体化したカセット台20および芯線ホルダ30を、1分当たり60回の速度で10分間、上下方向に往復移動させた。
【0108】
乾燥後、得られた9本のシリコン芯線C1を目視により観察した。9本のシリコン芯線C1は全て、表面全体が均一で金属光沢を有しており、エッチングムラがないことがわかった。
【0109】
実施例1、2および4の比較により、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部の形状は、実施例1で示した円形状のように、角がなく滑らかな曲線状であることが好ましいことが示された。また、実施例2および4の比較により、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部の形状が円に近いほど、上下方向の移動速度が小さくても、シリコン芯線C1の表面全体を均一にエッチングできることが分かった。
【0110】
実施例2および3の比較ならびに実施例4および5の比較により、芯線支持板31における貫通孔31Aを形成する縁部が曲線状でない場合であっても、芯線ホルダ30の往復移動の速度を上げることにより、エッチングの均一性を向上できることが示された。
シリコン芯線の表面全体を均一にエッチングできる装置を提供する。シリコン芯線(C1、C2、C3)のエッチング装置(1)は、エッチング液(L1、L2)を収容するエッチング液槽(11、12)と、シリコン芯線(C1、C2、C3)が貫通する孔(31A)が形成され、シリコン芯線(C1、C2、C3)を支持する複数の芯線支持部材(31)と、孔(31A)に対してシリコン芯線(C1、C2、C3)が貫通する相対位置を変化させる位置変化機構(40)と、を備える。