特許第6862049号(P6862049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6862049環状シロキサン化合物、その製造方法、それを用いてなる電気絶縁膜の製造法及び膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862049
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】環状シロキサン化合物、その製造方法、それを用いてなる電気絶縁膜の製造法及び膜
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/21 20060101AFI20210412BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20210412BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20210412BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20210412BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20210412BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C07F7/21CSP
   H01L21/312 C
   C23C16/18
   H01L21/90 K
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-70925(P2017-70925)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172321(P2018-172321A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
(72)【発明者】
【氏名】布川 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】山本 有紀
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰志
(72)【発明者】
【氏名】千葉 洋一
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0132408(US,A1)
【文献】 特開2007−096237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0077778(US,A1)
【文献】 特開2005−336391(JP,A)
【文献】 特開2005−051192(JP,A)
【文献】 特開2015−111712(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/032261(WO,A1)
【文献】 米国特許第03719696(US,A)
【文献】 米国特許第02884434(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第104693231(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。R及びRは、各々独立にエチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びシクロプロピル基又は一体となって炭素数3〜6のアルカンジイル基を表す。n、m及びoは各々独立に1又は2であり、n+m+o=4を満たす。)で表される環状シロキサン化合物。
【請求項2】
がイソプロピル基であり、RとRが一体となってブタン−1,4−ジイル基である、請求項1に記載の環状シロキサン化合物。
【請求項3】
m及びnが1でありoが2である、請求項1又は2に記載の環状シロキサン化合物。
【請求項4】
m及びoが1でありnが2である、請求項1又は2に記載の環状シロキサン化合物。
【請求項5】
n及びoが1でありmが2である、請求項1又は2に記載の環状シロキサン化合物。
【請求項6】
一般式(2)
【化2】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。)で表されるジヒドロキシシランと、
一般式(3)
【化3】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるジハロシランとを反応させることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(4)
【化4】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるビニルシランと、一般式(5)
【化5】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジアルキルシランとを反応させることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
【請求項8】
ルイス酸存在下で、一般式(7)
【化6】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。二つのRは、同一又は相異なって、
水素原子又はメチル基である。)で表されるジアルコキシシランと、一般式(8)
【化7】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジヒドロジシロキサンとを反応させることを特徴とする、請求項1、2又は5に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(5)
【化8】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジアルキルシランと、一般式(9)
【化9】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるジビニルジシロキサンとを反応させることを特徴とする、請求項1、2又は4に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ促進化学気相蒸着(PECVD)法による成膜プロセスの前駆体として有用な環状シロキサン化合物、及びそれを用いることによって製造される、絶縁性及び機械強度に優れた半導体素子用電気絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積度の多層半導体集積回路は、その回路の配線間隔の最小限界が絶縁材料の比誘電率によって定まるため、層間絶縁膜は重要な構成要素である。これは、主に蒸着成膜によって製造される。一般には、層間絶縁膜は低分子量のシロキサン化合物を気化させ、成膜装置内に導き、プラズマ促進化学気相蒸着(PECVD)法により製造されることが多い。このシロキサン化合物の有する有機基を適宜変更することにより、製造される層間絶縁膜の比誘電率、膜硬度、弾性率及び成膜速度などを制御することが可能である。特許文献1では、2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン(化合物A)を前駆体として製造した層間絶縁膜について開示されている。しかし、このものの成膜速度は必ずしも十分ではなく、さらなる成膜速度の向上が望まれる。また、特許文献2では、環状アルカンジイル基及びアルケンジイル基をケイ素上に有する環状シロキサン化合物を前駆体として用いることによって製造される電気絶縁膜の製造法が開示されている。しかし、これらの前駆体はいずれも結晶性の固体物質であり、成膜装置に送液する際に融解させるための加熱が必要などの取り扱い上の問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−96237号公報
【特許文献2】米国特許6,572,923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気圧が高く気化特性に優れ、PECVD法による成膜速度が高く、室温で液体の環状シロキサン化合物を製造し、この環状シロキサン化合物を前駆体として用い、PECVDプロセスに供することによって得られる機械強度に優れた低誘電率の電気絶縁膜、およびそれを配してなる半導体電子デバイスを提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケイ素原子上に少なくとも1つのビニル基を持つ新規な環状シロキサン化合物が、上記課題を解決し得る性能を有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(1)
一般式(1)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。n、m及びoは各々独立に1又は2であり、n+m+o=4を満たす。)で表される環状シロキサン化合物。
(2)
がイソプロピル基であり、RとRが一体となってブタン−1,4−ジイル基である、(1)に記載の環状シロキサン化合物。
(3)
m及びnが1でありoが2である、(1)又は(2)に記載の環状シロキサン化合物。
(4)
m及びoが1でありnが2である、(1)又は(2)に記載の環状シロキサン化合物。
(5)
n及びoが1でありmが2である、(1)又は(2)に記載の環状シロキサン化合物。
(6)
一般式(2)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。)で表されるジヒドロキシシランと、一般式(3)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるジハロシランとを反応させることを特徴とする、(1)、(2)又は(3)に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
(7)
一般式(4)
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるビニルシランと、一般式(5)
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジアルキルシランとを反応させることを特徴とする、(1)、(2)又は(3)に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
(8)
一般式(4)
【0017】
【化6】
【0018】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるビニルシランと、一般式(6)
【0019】
【化7】
【0020】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジヒドロキシジシロキサンとを反応させることを特徴とする、(1)、(2)又は(5)に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
(9)
ルイス酸存在下で、一般式(7)
【0021】
【化8】
【0022】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。二つのRは、同一又は相異なって、水素原子又はメチル基である。)で表されるジアルコキシシランと、一般式(8)
【0023】
【化9】
【0024】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジヒドロジシロキサンとを反応させることを特徴とする、(1)、(2)又は(5)に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
(10)
一般式(5)
【0025】
【化10】
【0026】
(式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。RとRは、一体となって炭素数3〜6のアルキレン基を形成してもよい。)で表されるジアルキルシランと、一般式(9)
【0027】
【化11】
【0028】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるジビニルジシロキサンとを反応させることを特徴とする、(1)、(2)又は(4)に記載の環状シロキサン化合物の製造方法。
(11)
(1)から(5)いずれかに記載の環状シロキサン化合物を、プラズマ促進化学気相蒸着法の前駆体として用いることを特徴とする、電気絶縁膜の製造法。
(12)
(1)から(5)のいずれかに記載の環状シロキサン化合物を、プラズマ促進化学気相蒸着法の前駆体として用いることにより製造された電気絶縁膜。
(13)
(12)に記載の電気絶縁膜を用いた半導体電子デバイス。
【発明の効果】
【0029】
本発明の環状シロキサン化合物はいずれも粘度が低く取扱いに容易な室温で液体の物質であり、成膜装置に送液する際に加熱が不要である。また本発明の環状シロキサンを前駆体としてPECVDプロセスに供することにより、機械強度に優れた低誘電率絶縁膜を高い成膜速度で製造することが可能であり、半導体電子デバイスに好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体的に説明する。最初に、一般式(1)〜(9)中のR、R及びRの定義について説明する。Rは、炭素数3〜5のアルキル基であり、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。具体的には、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基を例示できる。R及びRは、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びシクロプロピル基を例示できる。又、R及びRは、一体となって炭素数3〜6のアルカンジイル基を形成しても良い。このようなアルカンジイル基としては、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−2,4−ジイル基、ヘキサン−1,3−ジイル基、ヘキサン−1,4−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基を例示できる。本発明の環状シロキサン化合物においては、PECVD成膜において良好な性能を有する膜を与えるという点において、Rはプロピル基もしくはイソプロピル基であることが好ましく、イソプロピル基が更に好ましい。R及びRはいずれもメチル基、エチル基又はプロピル基であることが好ましい。また、R及びRは、一体となってプロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基であることが好ましく、ブタン−1,4−ジイル基又はペンタン−1,5−ジイル基が更に好ましい。
【0031】
n、m及びoは各々独立に1又は2であり、n+m+o=4を満たし、その中でも、(m、n、o)が(1、1、2)、(1、2、1)又は(2、1、1)が好ましい。
【0032】
次に、一般式(1)で示される環状シロキサン化合物の製造方法について説明する。本発明の方法では、一般式(1)で示される環状シロキサン化合物のうち、m及びnが1でありoが2であるものは、一般式(2)
【0033】
【化12】
【0034】
(式中、Rは上記一般式(1)で表される基を示す。)で表されるジヒドロキシシラン(2)と、一般式(3)
【0035】
【化13】
【0036】
(式中、R及びRは、上記一般式(1)で表される基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるジハロシラン(3)から製造することができる(製造方法1)。
【0037】
一般式(2)で示されるジヒドロキシシランの入手は、多くの非特許文献に報告されている製造方法を適用し合成し、用いることが出来る。ジヒドロキシシラン(2)の製造法としては、ビニルアルキルジハロシランの加水分解反応、ビニルアルキルジアルコキシシランの加水分解反応、ビニルアルキルジヒドロシランの触媒を用いた加水分解反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。
【0038】
また、一般式(3)で示されるジハロシランのXはハロゲン原子であり、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。ハロゲン原子としては、塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。ジハロシラン(3)のうち、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、1,1−ジクロロ−1−シラシクロブタン等は市販品を用いて実施することが出来る。又、非特許文献に報告されている方法に準じて合成したジハロシラン(3)を用い実施することが出来る。ジハロシラン(3)の製造法としては、直接法による金属ケイ素と有機ハライドとの反応、四塩化ケイ素と有機アルキルマグネシウムハライドとの反応、四塩化ケイ素と有機リチウム試薬との反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。
【0039】
製造方法1は、有機アミンの共存が著しく反応速度を増大させるため、有機アミン存在下で実施することが望ましい。有機アミンとしては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、アニリン、ピリジン若しくはキノリンなどの公知の有機アミンを適宜選択して用いることが出来る。収率が良く精製が容易な点から、トリエチルアミン又はピリジン存在下で実施することが好ましい。有機アミンの使用量としては、ジハロシラン化合物(3)1モルに対し2〜2000倍モルの範囲から選ばれ、好ましくは2〜200倍モル、より好ましくは2〜10倍モルである。
【0040】
製造雰囲気は特に制限はないが、収率が良い点で、窒素、ヘリウム又はアルゴンを用いた不活性雰囲気で実施することが好ましい。
【0041】
反応温度には特に制限はなく、当業者が環状シロキサン化合物を製造するときの一般的な温度条件を用いることが出来る。具体例としては、−100℃〜200℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、本発明の環状シロキサン化合物を収率良く得ることが出来る。収率、安全性及び操作性の点から、−80〜50℃の範囲から選ばれる実施温度が好ましい。反応時間は適宜決定されるが、1分間〜200時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することが好ましい。
【0042】
製造方法1は、収率が良い点で有機溶媒中において実施するのが好ましい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば制限は無く、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を例示することが出来る。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いることも、複数種を任意の割合で混合して用いることも出来る。収率が良く反応時間が短い点で、有機溶媒としてはエーテル類が好ましく、ジエチルエーテル又はTHFが好ましく、THFが更に好ましい。また、過剰に有機アミンを用いれば、有機溶媒を用いずともよい。
また、一般式(1)で示される環状シロキサン化合物のうち、m及びnが1でありoが2であるものは、製造方法1の方法とは別の方法である製造方法2でも製造することができる。すなわち、製造方法2とは、一般式(4)
【0043】
【化14】
【0044】
(式中、Rは上記一般式(1)のRと同じ基を示す。Xはハロゲン原子である。)で表されるビニルシラン(4)と、一般式(5)
【0045】
【化15】
【0046】
(式中、R及びRは、上記一般式(1)のR及びRと同じ基を示す。)で表されるジアルキルシラン(5)とを反応させることによる製造方法である。
【0047】
一般式(4)で示されるビニルシランのXはハロゲン原子であり、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。ハロゲン原子としては、塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。ビニルシラン(4)は、非特許文献に報告されている方法に準じて合成し実施することが出来る。ビニルシラン(4)の製造法としては、アルキルジアルコキシビニルシランのハロゲン化アシルによる塩素化反応、トリクロロビニルシランと有機アルキルマグネシウムハライドとの反応、アルキルトリクロロシランとビニルマグネシウムハライドとの反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。また、一般式(5)で示されるジアルキルシランの製造は、多くの非特許文献に報告されている製造方法を適用し、使用出来る。これらの製造法としては、ジアルキルジハロシランの加水分解反応、ジアルキルジアルコキシシランの加水分解反応、ジアルキルジヒドロシランの触媒を用いた加水分解反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。
【0048】
製造方法2は、有機アミンの共存が著しく反応速度を増大させるため、有機アミン存在下で実施することが望ましい。有機アミンとしては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、アニリン、ピリジン若しくはキノリンなどの公知の有機アミンを適宜選択して用いることが出来る。収率及び精製が容易な点から、トリエチルアミン若しくはピリジン存在下で実施することが好ましい。有機アミンの使用量としては、ビニルシラン(4)1モルに対し2〜2000倍モルの範囲から選ばれ、好ましくは2〜200倍モル、より好ましくは2〜10倍モルである。
【0049】
製造雰囲気は特に制限はないが、収率が良い点から窒素、ヘリウム若しくはアルゴンを用いた不活性雰囲気で実施することが好ましい。
【0050】
反応温度には特に制限はなく、当業者が環状シロキサン化合物を製造するときの一般的な温度条件を用いることが出来る。具体例としては、−100℃〜200℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、本発明の環状シロキサン化合物(1)を収率良く得ることが出来る。収率、安全性及び操作性の点から、−80〜50℃の範囲から選ばれる実施温度が好ましい。反応時間は適宜決定されるが、1分間〜200時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することが好ましい。
【0051】
この製造方法は、収率が良い点で有機溶媒中において実施するのが好ましい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば制限は無く、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を例示することが出来る。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いることも、複数種を任意の割合で混合して用いることも出来る。収率が良く反応時間が短い点で、有機溶媒としてはエーテル類が好ましく、ジエチルエーテル及びTHFが好ましく、THFが更に好ましい。また、過剰に有機アミンを用いれば、有機溶媒を用いずともよい。
【0052】
本発明の環状シロキサン化合物の中でm及びnが1でありoが2である環状シロキサン化合物の具体例としては、4,4,8,8−ジ(プロパン−1,3−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(プロパン−1,3−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(プロパン−1,3−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,3−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,3−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,3−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,4−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,4−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,4−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,3−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,3−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,3−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−2,4−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−2,4−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−2,4−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ヘキサン−1,6−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ヘキサン−1,6−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ヘキサン−1,6−ジイル)−2,6−ジシクロプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサンを例示することが出来る。成膜速度が低く比誘電率の低い膜を与えるという点において、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン、4,4,8,8−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)−2,6−ジプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサンが好ましく、4,4,8,8−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
【0053】
次に、n及びoが1でありmが2の環状シロキサン化合物(1)の製造方法3について説明する。製造方法3では、一般式(4)
【0054】
【化16】
【0055】
(式中、Rは上記一般式(1)におけるRと同じである。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるビニルシラン(4)と、一般式(6)
【0056】
【化17】
【0057】
(式中、R及びRは、上記一般式(1)におけるR及びRと同じである。)で表されるジヒドロキシジシロキサンから製造することができる。
【0058】
一般式(4)で示されるビニルシランとしては、製造方法2における一般式(4)で示されるビニルシランと同義である。
【0059】
製造方法3では、有機アミンの共存が著しく反応速度を増大させるため、有機アミン存在下で実施することが望ましい。有機アミンとしては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、アニリン、ピリジン若しくはキノリンなどの公知の有機アミンを適宜選択して用いることが出来る。収率及び精製が容易な点から、トリエチルアミン若しくはピリジン存在下で実施することが好ましい。有機アミンの使用量としては、ビニルシラン(4)1モルに対し2〜2000倍モルの範囲から選ばれ、好ましくは2〜200倍モル、より好ましくは2〜10倍モルである。
【0060】
製造雰囲気は特に制限はないが、収率が良い点で、窒素、ヘリウム若しくはアルゴンを用いた不活性雰囲気で実施することが好ましい。
【0061】
反応温度には特に制限はなく、当業者が環状シロキサン化合物を製造するときの一般的な温度条件を用いることが出来る。具体例としては、−100℃〜200℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、本発明の環状シロキサン化合物を収率良く得ることが出来る。収率、安全性及び操作性の点から、−80〜50℃の範囲から選ばれる実施温度が好ましい。反応時間は適宜決定されるが、1分間〜200時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することが好ましい。
【0062】
製造方法3は、収率が良い点で有機溶媒中において実施するのが好ましい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば制限は無く、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を例示することが出来る。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いることも、複数種を任意の割合で混合して用いることも出来る。収率が良く反応時間が短い点で、有機溶媒としてはエーテル類が好ましく、ジエチルエーテル及びTHFが更に好ましく、THFが殊更好ましい。また、過剰に有機アミンを用いれば、有機溶媒を用いずともよい。
【0063】
また、一般式(1)で示される環状シロキサン化合物のうちn及びoが1でありmが2のものの製造は、製造方法3の他、下記製造方法4でも製造できる。すなわち、製造方法4では、ルイス酸触媒存在下で、一般式(7)
【0064】
【化18】
【0065】
(式中、Rは上記一般式(1)におけるRと同じである。Rは、水素原子又はメチル基である。)で表されるジアルコキシシランと、一般式(8)
【0066】
【化19】
【0067】
(式中、R及びRは、上記一般式(1)におけるR及びRと同じである。)で表されるジヒドロジシロキサンから製造することができる。
【0068】
一般式(7)で示されるジアルコキシシランの製造は、多くの非特許文献に報告されている方法を適用し、実施出来る。ジアルコキシシラン(7)の製造法としては、ビニルアルキルジハロシランのメタノールによるメトキシ化反応、ビニルアルキルジハロシランの金属メトキシドによるメトキシ化反応、ビニルトリメトキシシランとアルキルマグネシウムハライド試薬又はアルキルリチウムとの反応、アルキルトリメトキシシランとビニルマグネシウムハライド又はビニルリチウムとの反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。
【0069】
一般式(8)で示されるジヒドロジシロキサンの製造は、多くの非特許文献に報告されている方法を適用し、実施出来る。ジヒドロジシロキサン化合物の製造法としては、ジアルキルハロヒドロシランの加水分解による合成、ジアルキルジクロロジシロキサンの金属水素化物による還元反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。
【0070】
製造方法4による環状シロキサン化合物(1)の製造は、ルイス酸触媒存在下で実施することが必須である。ルイス酸触媒としては、塩化インジウム、臭化インジウム又はヨウ化インジウム等の無機インジウム塩、塩化ガリウム又は臭化ガリウムなどのガリウム塩、並びにトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物を用いることが出来る。収率が高く製造時間が短い点から、有機ホウ素化合物を触媒として使用することが好ましく、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素がより好ましい。ルイス酸触媒の使用量としては、ジアルコキシシラン(7)の1モル当量に対し0.0001〜1000当量の範囲から選ばれ、好ましくは0.001〜1当量、より好ましくは0.01−0.1当量である。製造雰囲気は特に制限はないが、収率が高い点で、窒素、ヘリウム又はアルゴンを用いた不活性雰囲気で実施することが好ましい。
【0071】
反応温度には特に制限はなく、当業者が環状シロキサン化合物を製造するときの一般的な温度条件を用いることが出来る。具体例としては、−100℃〜200℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、本発明の環状シロキサン化合物を収率良く得ることが出来る。収率、安全性及び操作性の点から、−80〜100℃の範囲から選ばれる実施温度が好ましい。反応時間は適宜決定されるが、1分間〜200時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することが好ましい。
【0072】
この製造方法は、収率が良い点で有機溶媒中において実施するのが好ましい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば制限は無く、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を例示することが出来る。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いることも、複数種を任意の割合で混合して用いることも出来る。収率が良く反応時間が短い点で、有機溶媒としてはベンゼン又はトルエンなどの芳香族炭化水素が好ましく、トルエンが更に好ましい。
【0073】
本発明の環状シロキサン化合物の中でn及びoが1でありmが2である環状シロキサン化合物を具体的に例示すると、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−テトラメチルシクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−テトラエチルシクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−テトラエチルシクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−テトラエチルシクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,6−ジメチル−4,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,6−ジメチル−4,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,6−ジメチル−4,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(プロパン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(プロパン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(プロパン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−2,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−2,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−2,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ヘキサン−1,6−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ヘキサン−1,6−ジイル)シクロトリシロキサン、2−シクロプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ヘキサン−1,6−ジイル)シクロトリシロキサンを例示することが出来る。成膜速度及び蒸気圧が良好な点から、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2−プロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサンが好ましく、2−イソプロピル−2−ビニル−4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサンが特に好ましい。
【0074】
次に、一般式(1)で示される環状シロキサン化合物のうち、m及びoが1でありnが2である環状シロキサン化合物の製造(製造方法5)について説明する。製造方法5では、一般式(5)
【0075】
【化20】
【0076】
(式中、R及びRは、上記一般式(1)でのR及びRと同じである。)で表されるジアルキルシランと、一般式(9)
【0077】
【化21】
【0078】
(式中、Rは炭素数3〜5のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるジビニルジシロキサンから製造することができる。
【0079】
一般式(5)で示されるジアルキルシランの製造は、多くの非特許文献に報告されている製造方法を適用し、使用出来る。これらの製造法としては、ジアルキルジハロシランの加水分解反応、ジアルキルジアルコキシシランの加水分解反応、ジアルキルジヒドロシランの触媒を用いた加水分解反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。また、一般式(9)で示されるジビニルジシロキサンは、多くの非特許文献に報告されている製造方法を適用し、使用出来る。これらの製造法としては、アルキルビニルジハロシランの部分加水分解、1,3−ジヒドロ−1,3−ジアルキル−1,3−ジビニルジシロキサンの塩素化反応等により、当業者であれば容易に製造することが出来る。一般式(9)で示されるジビニルジシロキサンのXはハロゲン原子であり、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。ハロゲン原子としては、塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。
【0080】
製造方法5は、有機アミンの共存が著しく反応速度を増大させるため、有機アミン存在下で実施することが望ましい。有機アミンとしては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、アニリン、ピリジン若しくはキノリンなどの公知の有機アミンを適宜選択して用いることが出来る。収率及び精製が容易な点から、トリエチルアミン若しくはピリジン存在下で実施することが好ましい。有機アミンの使用量としては、ジハロシラン(3)1モルに対し2〜2000倍モルの範囲から選ばれ、好ましくは2〜200倍モル、より好ましくは2〜10倍モルである。
【0081】
製造雰囲気は特に制限はないが、収率が良い点から、窒素、ヘリウム又はアルゴンを用いた不活性雰囲気で実施することが好ましい。
【0082】
反応温度には特に制限はなく、当業者が環状シロキサン化合物を製造するときの一般的な温度条件を用いることが出来る。具体例としては、−100℃〜200℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、本発明の環状シロキサン化合物を収率良く得ることが出来る。収率、安全性及び操作性の点から、−80〜50℃の範囲から選ばれる実施温度が好ましい。反応時間は適宜決定されるが、1分間〜200時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することが好ましい。
【0083】
この製造方法は、収率が良い点で有機溶媒中において実施するのが好ましい。使用可能な有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば制限は無く、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を例示することが出来る。これら有機溶媒は、一種類を単独で用いることも、複数種を任意の割合で混合して用いることも出来る。収率が良く反応時間が短い点で、有機溶媒としてはエーテル類が好ましく、ジエチルエーテル及びTHFが更に好ましく、THFが殊更好ましい。また、過剰に有機アミンを用いれば、有機溶媒を用いずともよい。
【0084】
製造方法5により製造が可能な環状シロキサン化合物を具体的に例示すると、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジメチルシクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジメチルシクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジメチルシクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6−メチル−6−エチルシクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6−メチル−6−エチルシクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6−メチル−6−エチルシクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(プロパン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(プロパン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(プロパン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,3−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,5−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−2,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−2,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−2,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ヘキサン−1,6−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ヘキサン−1,6−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジシクロプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ヘキサン−1,6−ジイル)シクロトリシロキサンを例示することが出来る。成膜速度及び蒸気圧が良好な点から、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジメチルシクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−ジエチルシクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサン、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ペンタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサンが好ましく、2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニル−6,6−(ブタン−1,4−ジイル)シクロトリシロキサンが特に好ましい。
【0085】
次に、本発明の環状シロキサン化合物(1)を、プラズマ促進化学気相蒸着法(PECVD法)の前駆体として用いる電気絶縁膜の製造法について説明する。
【0086】
PECVD法とは、有機シラン等の絶縁膜材料を気化器により気化させて、成膜チャンバー内に導入し、高周波電源により、成膜チャンバー内の電極に印加し、プラズマを発生させ、成膜チャンバー内のシリコン基板等にプラズマ重合膜を形成させる装置を言う。この際、プラズマを発生させる目的でアルゴン、ヘリウム等のガス、酸素、亜酸化窒素等の酸化剤を導入しても良い。PECVD装置によって本発明の絶環状シロキサン化合物(1)を用いて成膜した場合、半導体デバイス用の低誘電率材料(Low−k材)として好適な薄膜を形成できる。
【0087】
本発明の環状シロキサン化合物(1)を用いた成膜方法は限定されるものではないが、環状シロキサン化合物(1)の環状シロキサン構造を残存させるPECVD条件で絶縁膜を形成させることが好ましい。環状シロキサン構造を含んでなる絶縁膜では、有機環状シロキサン化合物の1nm以下の細孔径を主たる細孔径とした多孔質絶縁膜となり、低誘電率特性を有し、かつ高い機械的物性と高い伝熱性を有する半導体デバイス用低誘電率材料(Low−k材)として殊に好適な薄膜となる。この際のPECVD条件としては、環状シロキサン構造を破壊しないよう、例えば、比較的低いプラズマパワー(W:電圧×電流)でPECVD成膜を実施することが好ましい。具体的には、1.0W〜2000W、好ましくは、1.0W〜1000Wの範囲で行うことが好ましい。特にこの際に、同一ケイ素原子上にビニル基及びイソプロピル基が結合した有機環状シロキサンを用いることにより、より低誘電率特性を有する絶縁膜を高速で成膜することができる。
【0088】
これらの材料をCVDで成膜後に、二級炭素原子、アルケニル基、アリール基のいずれかとケイ素原子が切断される温度以上、すなわち350℃以上の温度で熱処理することで多孔質化した低誘電率絶縁材料を得ることもできる。好ましい熱処理温度は、多孔化が完結する350℃以上で、なおかつ半導体デバイスを劣化せしめない500℃以下の温度であることが好ましい。
【0089】
本発明の環状シロキサン化合物(1)を、プラズマ促進化学気相蒸着法(PECVD法)の前駆体として用いることにより製造された電気絶縁膜は、多層配線を用いたULSIの製造に好適であり、これを用いた半導体デバイスも本発明の範疇に含有されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】実施例10〜24、比較例1、2で用いたPECVD装置の概略図である。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
(参考例1)
【0092】
【化22】
【0093】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた300mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに塩化亜鉛12.4g(91.0mmol)及び塩化アセチル200g(2.55mol)を収めた。滴下ロートからジメトキシイソプロピルビニルシラン82.9g(51.7mmol)を1時間かけて滴下した。反応混合物を25℃で1時間撹拌し、減圧下で低沸点成分を留去した。これを常圧で蒸留(沸点140℃)することにより、ジクロロイソプロピルビニルシラン(化合物B)を無色液体として73.2g(収率:83.7%,GC純度:99%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度,%):168(M,2),140(15),125([M−Pr],100),113(14),101(15);H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.12(d,6H,J=7.2Hz),1.29〜1.36(m,1H),6.158(d,1H,J=8.0Hz),6.161(d,1H,J=9.6Hz),6.274(dd,1H,J=8.1,9.5Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ15.9,18.7,130.7,138.2;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−21.9;IR(neat,cm−1):3070,2954,2935,2871,1465,1403,995,971,881,717,667.
(参考例2)
【0094】
【化23】
【0095】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた1L3口フラスコに、アニリン33.8g(363mmol)、蒸留水6.43g(357mmol)、ジエチルエーテル600mL及びアセトン40mLを収めた。容器を0℃に冷却し、滴下ロートからジクロロイソプロピルビニルシラン(化合物B)30.1g(178mmol)の脱水ジエチルエーテル250mLを1.5時間かけて滴下した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮後、減圧下で乾燥することにより、イソプロピルビニルシラン−1,1−ジオール(化合物C)を白色結晶性固体として17.8g(収率:75.9%,GC純度:99%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度,%):132(M,32),105(22),104(100);H−NMR(400MHz,(CDCO):δ0.74〜0.83(m,1H),0.989(CH,d,6H,J=7.3Hz),5.035(OH,s,2H),5.887(dd,1H,J=5.8,19.0Hz),5.961(dd,1H,J=5.8,15.0Hz),6.045(dd,1H,J=15.1,19.0Hz);13C−NMR(100MHz,(CDCO):δ13.9,16.3,132.9,135.6;29Si−NMR(79MHz,(CDCO):δ−21.2;IR(固体,cm−1):3195,3055,2947,2868,2871,1464,1408,1007,960,874,831,706.
(実施例1)
【0096】
【化24】
【0097】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた500mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに1,1−ジクロロ−1−シラシクロペンタン11.8g(76.3mmol)、トリエチルアミン16.7g(165mmol)及び脱水ジエチルエーテル200mLを収めた。滴下ロートからイソプロピルビニルシランジオール(化合物C)10.0g(75.7mmol)の脱水ジエチルエーテル150mL溶液を2時間かけて滴下し、その後2時間加熱還流した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサンで抽出し、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。得られた油状物を、クーゲルローア蒸留装置を用いて減圧下で蒸留(蒸留温度135℃/40Pa)することにより、4,4,8,8−ジ(1,4−ブタンジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン(化合物D)を無色液体として9.84g(収率:60.8%,GC純度:93%)得た。得られた生成物は、イソプロピル基及びビニル基の立体配置に基づくcis異性体及びtrans異性体の混合物であった。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度,%):385([M−Pr],100),357(19),343(30),329(7),315(6);H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.48〜0.55(m,8H),0.81〜0.84(m,2H)0.94〜1.01(m,12H),1.57〜1.61(m,8H),5.81〜6.06(m,6H);13C−NMR(混合物、100MHz,CDCl):δ11.33(メチレン,cis異性体),11.41(メチレン,trans異性体)、11.49(メチレン,cis異性体),14.12(メチン、重複)、16.47(メチル、重複),24.87(メチレン,cis異性体),24.90(メチレン,trans異性体),24.92(メチレン,cis異性体)133.74,133.81,134.32,134.38;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−33.6(重複),−4.13,−4.11;IR(neat,cm−1):3054,3012,2943,2927, 2866,1596,1464,1406,1250,1076,1057,1009,881,854,708,681.
(参考例3)
【0098】
【化25】
【0099】
リービッヒ冷却器、温度計、撹拌子及び滴下ロートを備えた3口フラスコにアニリン12.1 g( 0.130 mol )、水2.33 g(0.129 mol)、ジエチルエーテル200mL及びアセトン30mL を収めた。反応容器を氷浴で2℃に冷やし、滴下ロートから1時間かけて1,1−ジクロロ−1−シラシクロペンタン10.1g(Organometallics、25巻、1188頁、2006年記載の方法に従って合成、0.651 mol)の脱水ジエチルエーテル 85mL 溶液を滴下した。析出した固体をろ別後、溶液を減圧下で濃縮乾燥させることにより、1−シラシクロペンタン−1,1−ジオール(化合物E)を無色結晶として6.84g(収率90%)得た。
H−NMR(400MHz,(CDCO):δ0.42〜0.46 (m, 4H),1.54〜1.58(m, 4H),5.07(s, 2H);13C−NMR(100MHz,(CDCO):δ11.0,25.0;29Si−NMR(79MHz,(CDCO):δ−9.16;IR(固体,cm−1)3143,2931,2854,1248,1159,1076,1012,891,862,781,692.
(実施例2)
【0100】
【化26】
【0101】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた500mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコにジクロロイソプロピルビニルシラン(化合物B)14.5g(85.5mmol)、トリエチルアミン17.1g(169mmol)及び脱水ジエチルエーテル200mLを収めた。滴下ロートから1−シラシクロペンタン−1,1−ジオール13.5g(化合物E、115mmol)の脱水ジエチルエーテル150mL溶液を2時間かけて滴下し、2時間還流攪拌した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサンで抽出し、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を留去した。得られた油状物を、クーゲルローア蒸留装置を用いて減圧下で蒸留(蒸留温度135℃/40Pa)することにより、2,2,6,6−ジ(1,4−ブタンジイル)−4,8−ジイソプロピル−4,8−ジビニルシクロテトラシロキサン(化合物D)を無色液体として8.90g(収率:48.6%)得た。得られた生成物は、イソプロピル基及びビニル基の立体配置に基づくcis−及びtrans−異性体の混合物であった。実施例3と同様に、EI−MS、H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR及びIRスペクトルを測定したところ、それらの結果はすべて実施例1と一致した。
(実施例3)
【0102】
【化27】
【0103】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた1L3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに1,1−ジクロロシラシクロブタン14.2g(アルドリッチ社製、100mmol)、トリエチルアミン22.1g(218mmol)及び脱水ジエチルエーテル280mLを収めた。滴下ロートからイソプロピルビニルシランジオール(化合物C)13.3g(101mmol)の脱水ジエチルエーテル200mL溶液を3時間かけて滴下し、2時間攪拌した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサンで抽出し、蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を留去した。得られた混合物を、クーゲルローア蒸留装置を用いて減圧下で蒸留(蒸留温度120℃/40Pa)することにより、4,4,8,8−ジ(1,3−プロパンジイル)−2,6−ジイソプロピル−2,6−ジビニルシクロテトラシロキサン(化合物E)を無色液体として16.5g(収率:82.6%,GC純度:92%)得た。得られた生成物は、イソプロピル基及びビニル基の立体配置に基づくcis及びtrans異性体の混合物であった。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):385([M−Me],2),357([M−Pr],100);H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.82〜0.89(m,2H)0.99(dd,12H,J=7.2,7.2Hz),1.39〜1.46(m,8H),1.60〜1.68(m,4H),5.85〜6.09(m,6H);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ10.62,10.84,14.06,14.21,16.37,16.44,23.43,23.69,133.33,133.38,133.67,134.53,134.66,134.72;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−36.3,−33.3,−33.2,−33.0;IR(neat,cm−1):3055,2976,2945,2867,1464,1406,1126,1057,1007,960,914,883,715,646.
(実施例4)
【0104】
【化28】
【0105】
撹拌子及びジムロート冷却管を備えた500mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに脱水ヘキサン300mL、ジメトキシイソプロピルビニルシラン9.80g(61.1mmol)及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン8.19g(61.0mmol)を収めた。シリンジよりトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素5.1mg(10.4μmol,17.1mmol%)の脱水トルエン2mL溶液を5分かけて滴下した。反応混合物を25℃で1時間攪拌し、アルミナ12gを加え5分間撹拌し、吸引ろ過でろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を留去し、減圧下で蒸留(沸点76℃/3.3kPa)することにより、4,4,6,6−テトラメチル−2−イソプロピル−2−ビニルシクロトリシロキサン(化合物F‘)を無色液体として6.58g(収率:41.2%,GC純度:99%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):247([M−CH,4)219([M−Pr],100),203(10),193(20),177(5);H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.17(s,6H),0.19(s,6H),0.81〜0.90(m,1H)1.00(d,6H,J=7.1Hz),5.87〜6.08(m,3H);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ0.79,0.86,14.1,16.1,133.8,134.5;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−8.02;IR(neat,cm−1):3057,2960,2948,2898,2867,1595,1465,1401,1259,1000.
(実施例5)
【0106】
【化29】
【0107】
撹拌子及びジムロート冷却管を備えた100mL3口フラスコをアルゴンで置換し、脱水ヘキサン50mL、ジメトキシイソプロピルビニルシラン2.56g(16.0mmol)及び1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン3.03g(Tetrahedron Letters、50巻、7166頁、2009年記載の方法に従って合成、15.9mmol)を収めた。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン40.2mg(79.5μmol,0.5mol%)の脱水トルエン1.5mL溶液をシリンジより5分かけて滴下した。25℃で1時間攪拌し、アルミナ2gを加え5分間撹拌し、吸引ろ過でろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で留去し、減圧下で蒸留(沸点70℃/40Pa)することにより、4,4,6,6−テトラエチル−2−イソプロピル−2−ビニルシクロトリシロキサン(化合物F)を無色液体として4.54g(収率:89.7%,GC純度:99%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):289([M−Et],35),275([M−Pr],100)261(18),247(86),233(17);H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.596(q,4H,J=7.8Hz),0.617(q,4H,J=7.8Hz),0.82〜0.93(m,1H),0.964(t,6H,J=7.8Hz),0.997(t,6H,J=7.8Hz),1.008(d,6H,J=7.0Hz),5.915(dd,1H,J=10.5,14.2Hz),6.049(d,1H,J=14.3Hz),6.054(d,1H,J=10.4Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ6.16,6.22,7.28,7.44,14.4,16.2,133.9,134.5;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−25.1,−8.62;IR(neat,cm−1):3054,2958,2916,2879,2870,1461,1408, 1241,999.
(参考例4)
【0108】
【化30】
【0109】
滴下ロート、撹拌子及びリービッヒ冷却管を備えた200mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコにTHF80mL、パラジウム活性炭素(エヌ・イー・ケムキャット社製)4.33g(5wt%Pd、乾燥品、2.04mmolPd)および蒸留水7.34g(407mmol)を収めた。反応容器を水浴で冷やしながら1,1,3,3−ジ(1,4−ブタンジイル)ジシロキサン7.59g(40.7mmol)をシリンジより10分かけて滴下し、2時間攪拌した。反応混合物中の不溶物をガラスフィルターを用いてろ別した。これを減圧下で濃縮することにより、1,1,3,3−ジ(1,4−ブタンジイル)ジシロキサン−1,3−ジオール(化合物G)を無色半固体として8.67g(収率:97.5%,GC純度:96%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):218(M,13),190([M−CHCH,32),162([M−CHCHCHCH,100),134(31),121(38);H−NMR(400MHz,(CDCO):δ0.46〜0.50(m,8H),1.56〜1.59(m,8H),5.32(s,2H);13C−NMR(100MHz,(CDCO):δ12.0,25.7;29Si−NMR(79MHz,(CDCO):δ1.71;IR(固体,cm−1):3276,2725,2857,1249,1076,1051,1014,868,854.
(実施例6)
【0110】
【化31】
【0111】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた300mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに脱水THF230mL、トリエチルアミン6.49g(64.0mmol)及びジクロロイソプロピルビニルシラン5.44g(化合物B、32.0mmol)を収めた。滴下ロートより1,1,3,3−ジ(1,4−ブタンジイル)ジシロキサン−1,3−ジオール7.00g(化合物G、32.0mmol)の脱水THF70mL溶液を5分かけて滴下し、その後25℃で1.5時間攪拌した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサン100mLで抽出し、蒸留水50mLで3回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。これをろ過後濃縮し、カラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル,移動相:ヘキサン)で精製し、画分をクーゲルロール蒸留装置を用いて減圧下で蒸留(蒸留温度110℃/50Pa)することにより、4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2−イソプロピル−2−ビニルシクロトリシロキサン(化合物H)を無色液体として1.23g(収率:12.2%,GC純度:98%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):314(M,0.4)385([M−Pr],100),259(2),243(2),215(13);H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.53〜0.59(m,8H),0.84〜0.92(m,1H)1.00(d,6H,J=6.7Hz),1.60〜1.64(m,8H),6.00(m,3H);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ11.1,11.2,14.0,16.0,24.6,24.7,133.2,134.9;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−23.6,7.73;IR(neat,cm−1):2941,2897,2866,1249,1076,1002.
(実施例7)
【0112】
【化32】
【0113】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた500mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに脱水ヘキサン300mL、ジメトキシイソプロピルビニルシラン11.3g(69.7mmol)及び1,1,3,3−ジ(1,4−ブタンジイル)ジシロキサン13.0g(69.7mmol)を収めた。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン106mg(0.209mmol,0.3mol%)の脱水トルエン5mL溶液をシリンジより5分かけて滴下した。25℃で1時間攪拌し、アルミナ13gを加え5分間撹拌し、吸引ろ過でろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、減圧下で蒸留(沸点85℃/75Pa)することにより、4,4,6,6−ジ(ブタン−1,4−ジイル)−2−イソプロピル−2−ビニルシクロトリシロキサン(化合物H)を無色液体として17.1g(収率:77.6%,GC純度:99%)得た。実施例10と同様に、EI−MS、H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR及びIRスペクトルを測定したところ、それらの結果はすべて実施例6と一致した。
(参考例5)
【0114】
【化33】
【0115】
撹拌子、滴下ロート及びリービッヒ冷却管を備えた500mL3口フラスコをアルゴンで置換し、脱水THF180mL及びジクロロイソプロピルビニルシラン20.0g(118mmol)を収めた。滴下ロートよりジエチルアミン8.49g(116mmol)及びトリエチルアミン12.2g(120mmol)の脱水THF120mL溶液を、−10℃で2時間かけて滴下し、次いで、25℃で1.5時間撹拌した。この反応混合物に0℃で水素化リチウムアルミニウム5.83g(153mmol)を加え、1時間攪拌した。この反応混合物を三角フラスコ中の1M塩酸1500mLに攪拌しながら注ぎ、1時間攪拌した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサン100mLで抽出し、蒸留水30mLで5回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。これをろ過して濃縮し、減圧下で蒸留(沸点65℃/5.3kPa)することにより、1,3−ジイソプロピル−1,3−ジビニルジシロキサン(化合物I)を無色液体として8.72g(収率:70.1%,GC純度:98%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):186([M−CH=CH,3),171([M−Pr],83),143(100),129(53),115(34);H−NMR(400MHz,CDCl:δ0.89〜0.97(m,14H),4.52〜4.54(m,2H),5.86〜7.26(m,6H);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ14.1,16.4,134.5,134.9;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−8.34;IR(neat,cm−1):3053,2945,2893,2866,2119,1592,1464,1402,1385,1365,1365,1240,1082,1056,1005,958,920,879.
(参考例6)
【0116】
【化34】
【0117】
撹拌子、滴下ロート及びジムロート冷却管を備えた100mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに脱水ジクロロメタン50mL及びトリクロロイソシアヌル酸3.97g(17.1mmol)を収めた。滴下ロートより1,3−ジイソプロピル−1,3−ジビニルジシロキサン4.99g(化合物I、23.3mmol)の脱水ジクロロメタン5mL溶液を25℃で15分かけて滴下した。反応の進行をガスクロマトグラフィで追跡し、反応が完結するまでトリクロロイソシアヌル酸を少量ずつ加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で焼結ガラスフィルターの付いたシュレンク管でろ過し、ろ液を濃縮後、減圧下で蒸留(沸点63℃/400Pa)することにより、1,3−ジクロロ−1,3−ジイソプロピル−1,3−ジビニルジシロキサン(化合物J)を無色液体として3.50g(収率:53.3%,GC純度:99%)得た。
EI−MS(70eV)m/z(相対強度、%):239([M−Pr],200),211(89),197(29),185(17),157(37);H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.04〜1.16(m,7H),6.05〜6.21(m,3H);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ16.00,16.03,16.47,131.57,131.58,136.87;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−7.19;IR(neat,cm−1):3064, 2951, 2870,1597,1464,1406,1387,1271,1248,1086,1061,1001,968,922.
(実施例8)
【0118】
【化35】
【0119】
撹拌子、滴下ロート及びリービッヒ冷却管を備えた100mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコに脱水THF40mL、トリエチルアミン2.51g(24.8mmol)及び1,3−ジクロロ−1,3−ジイソプロピル−1,3−ジビニルジシロキサン3.50g(化合物J、12.4mmol)を収めた。滴下ロートより1−シラシクロペンタン−1,1−ジオール1.47g(化合物E、12.4mmol)の脱水THF10mL溶液を、0℃で20分かけて滴下し、その後25℃で3時間攪拌した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサン50mLで抽出し、蒸留水30mLで4回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。これをろ過後濃縮し、クーゲルローア蒸留装置を用いて減圧下で蒸留(蒸留温度105℃/400Pa)することにより、6,6−(1,4−ブタンジイル)−2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニルシクロトリシロキサン(化合物K)を無色液体として2.89g(収率:70.9%,GC純度:98%)得た。得られた生成物は、イソプロピル基及びビニル基の立体配置に基づくcis及びtrans異性体の混合物であった。
EI−MS(70eV)m/z(%):328(M,0.7)285([M−Pr],100),257(43),243(28),229(11);H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.56〜0.60(m,4H),0.87〜1.04(m,14H)1.61〜1.65(m,4H),5.88〜6.10(m,6H);13C−NMR(100MHz,CDCl):δ11.12,11.24,14.11,14.17,16.12,16.14,16.17,24.61,24.64,133.22,133.29,134.89,134.97;29Si−NMR(79MHz,CDCl):δ−23.9,−23.8,7.70,7.78;IR(neat,cm−1):3057,2944,2894,2865,1594,1463,1403,1000.
(参考例7)
【0120】
【化36】
【0121】
撹拌子、滴下ロート及びリービッヒ冷却管を備えた500mL3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコにトリエチルアミン6.01g(59.3mmol)及びジクロロイソプロピルビニルシラン10.0g(化合物B、59.1mmol)及び脱水テトラヒドロフラン100mLを収めた。滴下ロートに1−シラシクロペンタン−1,1−ジオール3.49g(化合物E、29.6mmol)から脱水THF300mL溶液を3時間かけて滴下し、その後25℃で2.5時間攪拌した。次いで、フラスコ中にトリエチルアミン6.07g(60.0mmol)を加え、滴下ロートより蒸留水265mg(14.8mmol)の脱水THF20mL溶液を15分かけて滴下し、さらに15分間攪拌した。再度、滴下ロートに蒸留水5.00g(277mmol)の脱水THF20mL溶液を1時間かけて滴下し、その後1.5時間攪拌した。反応混合物を分液ロートに移し、ヘキサン100mLで抽出し、蒸留水30mLで4回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。これをろ過後濃縮し、カラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル,移動相:ヘキサン)で精製し、画分を減圧下で蒸留(蒸留温度85℃/40Pa)することにより、6,6−(1,4−ブタンジイル)−2,4−ジイソプロピル−2,4−ジビニルシクロトリシロキサン(化合物K)を無色液体として5.87g(収率:60.4%,GC純度:98%)得た。得られた生成物は、イソプロピル基及びビニル基の立体配置に基づくcis及びtrans異性体の混合物であった。実施例14と同様に、EI−MS、H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR及びIRスペクトルを測定したところ、それらの結果はすべて実施例8と一致した。
【0122】
成膜
実施例10〜24及び比較例1、2については、図1に示す対向電極を上(3)、下(4)に配した平行平板容量結合型PECVD装置を用い、下部電極上に基板(2)として用いたシリコンウェーハを設置し、系を真空ポンプ(7)で減圧し、恒温槽(5)に設置した原料容器(6)内に導入したヘリウムガスで原料をバブリングし、このガスをチャンバー(1)に供給する方法で原料を供給し、成膜を実施した。チャンバー内は150℃に保持して成膜を実施。電源周波数13.56MHzのRF電源(9)出力を所定の値にセットし、所定時間成膜を行った。
【0123】
膜厚および比誘電率測定
シリコン基板上に作成した絶縁膜の膜厚は日本分光株式会社製のエリプソメーター(型式:MEL−30S)を用いて測定した。比誘電率は絶縁膜上にアルミ電極を蒸着法によって作成したのち、KEYITHLEY社製のパラメータアナライザ(型式:4200−SCS型)およびソーラトロン社製のインピーダンスアナライザー(型式:SOLARTRON1260)を用いて常温、周波数2kHzの静電容量を測定し、比誘電率を計算した。
【0124】
弾性率および硬度測定
Agilent社製のナノインデンター(型式:NanoIndenterG200)を用いてナノインデンテ−ション法により弾性率および硬度を測定した。検量線はBerkovich型の圧子を用い、溶融石英を参照サンプルとして作成した。測定は膜厚に対して押し込み深さを10%として行った。
【0125】
上記方法に示した成膜条件、作製した膜の膜厚、成膜速度、硬度、弾性率および比誘電率を表1に示した。
【0126】
実施例17〜19の化合物8を用いて作成された膜は、比較例1および2の環状6員環である2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサンを用いて作成された膜よりも、より成膜速度が速くかつ高弾性率であり、層間絶縁膜として好適である。
【0127】
【表1】
【符号の説明】
【0128】
1.PECVDチャンバー
2.基板
3.上部電極
4.下部電極
5.恒温槽
6.原料容器
7.真空ポンプ
8.マッチング回路
9.RF電源
10.アース
11.ヒーター
12.マスフローコントローラー
13.ヘリウムガス
図1