(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有する使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材と、前記フィルタ部材の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤が配された不織布と、
を有する。
【0010】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤が着用者の湿った息に接触して吸熱反応を起こし、マスク内の空間温度が下がるため、マスク内の蒸れを改善できる。また、フィルタ部材によって、着用者の息及び吸熱剤がマスク内の空間に留まりやすい。そのため、着用者の息と吸熱剤の接触時間が増えて冷感効果が高まり、また、冷感効果の持続性が高まる。よって、着用者がマスクの冷感を実感しやすくなる。
【0011】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、糖アルコール類、及び、糖類のうちの何れか1つを含む。
【0012】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤が着用者の口元に触れた際にも安全である。
【0013】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材の非肌側面は、前記マスク本体部の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、前記不織布の肌側面は、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成している。
【0014】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部において厚さ方向に積層される資材の数が少なくなるため、マスク内の蒸れを改善できる。
【0015】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極されたシートであり、前記吸熱剤は、アルコールを含まない。
【0016】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤のアルコール成分によって、フィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0017】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、不揮発性である。
【0018】
このような使い捨てマスクによれば、マスクの使用前から吸熱剤が揮発してフィルタ部材に付着し、フィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0019】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材の外周端と、前記不織布の外周端とが一致している。
【0020】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部の平面の広範囲に亘り、不織布(吸熱剤)を配することができ、マスク内の広範囲の空間温度を下げることができる。マスク本体部の平面の広範囲に亘り、フィルタ部材を配することができ、フィルタ部材の捕集効果が高まる。
【0021】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材は、前記不織布に比べて、前記吸熱剤の坪量が低い。
【0022】
このような使い捨てマスクによれば、着用者に近い不織布に多くの吸熱剤が配されることで、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、フィルタ部材に吸熱剤が付着していることによりフィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0023】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材には前記吸熱剤が配されていない。
【0024】
このような使い捨てマスクによれば、フィルタ部材に吸熱剤が付着していることによりフィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0025】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、上下方向及び左右方向を有し、前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、かつ、前記上下方向の端部に比べて、前記上下方向の中央部の方が、前記吸熱剤の坪量が高い。
【0026】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近い上下方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触でき、冷感効果が高まる。また、マスク本体部の左右方向両側部は着用者の頬に接触するため、その部分において吸熱剤の坪量が高い部分を設けることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0027】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有し、前記マスク本体部の上端部及び下端部の少なくとも一方は、前記フィルタ部材及び前記不織布が非肌面側に折り返された折返し部を有し、前記厚さ方向に前記折返し部と重なる前記マスク本体部の非折返し部において、前記不織布の肌側面に前記吸熱剤が配されている。
【0028】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部の上下端部において、吸熱剤が配された不織布がフィルタ部材で肌側から覆われてしまうことを防止できる。よって、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0029】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部の前記上端部は、前記折返し部を有し、当該折返し部における前記不織布の非肌側面に前記吸熱剤が配されている。
【0030】
このような使い捨てマスクによれば、マスクの外に排出された息が上昇する際に、折り返し部の非肌側面(外側面)の吸熱剤に接触しやすく、マスク本体部の上端部付近の温度を下げることができる。また、息の温度も下がるため、着用者の眼鏡が曇り難くなる。
【0031】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部と、前記一対のシート部を接合する接合部を有し、前記使い捨てマスクの着用状態において、前記マスク本体部は、上下方向、及び、左右方向を有し、前記マスク本体部の前記左右方向の中央部は、前記左右方向の両端部に比べて前記吸熱剤の坪量が高い高坪量部を有する。
【0032】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近いマスク本体部の左右方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触することができ、冷感効果が高まる。
【0033】
かかる使い捨てマスクであって、前記高坪量部は、前記マスク本体部の上端から下端まで前記上下方向に連続して配されている。
【0034】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近いマスク本体部の左右方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触することができ、冷感効果が高まる。
【0035】
かかる使い捨てマスクであって、前記耳掛け部は、前記マスク本体部の肌側面に接合されている。
【0036】
このような使い捨てマスクによれば、耳掛け部が接合されたマスク本体部の部分(着用者の肌に密着しやすい部分)において、不織布よりも肌側に耳掛け部が設けられるため、吸熱剤が着用者の肌に直接に強く密着してしまうことを防止できる。
【0037】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、前記不織布を構成する繊維の少なくとも一部に練りこまれている。
【0038】
このような使い捨てマスクによれば、不織布から吸熱剤が脱落し難く、吸熱剤による冷感効果の持続性が高まる。
【0039】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、前記不織布の肌側面に塗布されている。
【0040】
このような使い捨てマスクによれば、着用者に近い位置に吸熱剤が配され、吸熱剤が着用者の息と接触しやすくなるため、冷感効果が高まる。
【0041】
かかる使い捨てマスクであって、前記不織布は、親水性繊維を含む。
【0042】
このような使い捨てマスクによれば、不織布の親水性繊維によって不織布内に水分が保持されやすくなり、吸熱剤の吸熱反応が起こりやすくなるため、冷感効果が高まる。
【0043】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材の通気抵抗値は、0.45kPa・s/m以下である。
【0044】
このような使い捨てマスクによれば、フィルタ部材の通気性が良いため、マスク内が蒸れ難くなる。
【0045】
==第1実施形態===
図1は、第1実施形態の使い捨てマスク1(以下「マスク」とも呼ぶ)の平面図である。
図2は、
図1のI−I線におけるマスク1の断面図である。
図3は、マスク1の着用状態を示す図である。
【0046】
(マスク1の基本構成)
マスク1は、少なくとも着用者の口元と鼻孔を覆うことができるマスク本体部10と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部20を有する。マスク本体部10は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有する。厚さ方向において、着用者の顔面と対向する内側を肌側又は肌面側とも呼び、その反対側である外側を非肌側又は非肌面側とも呼ぶ。
【0047】
使用前のマスク本体部10は、厚さ方向から見た平面視(
図1)において、左右方向に長い矩形形状を成している。マスク本体部10は、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材11と、フィルタ部材11の肌面側に設けられた肌側不織布(不織布)12と、サイドシート13と、を有する。
【0048】
フィルタ部材11は、ウィルス飛沫や細菌飛沫や花粉等の微粒子の捕集効果が高い部材である。具体的には、フィルタ部材11は、BFE(バクテリアろ過効率試験:試験粒子約3μm)が95%以上であることと、VFE(ウィルスろ過効率試験:試験粒子約1.7μm)が95%以上であることと、の少なくとも一方を満たす部材であることが好ましい。
【0049】
フィルタ部材11としては、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極された(エレクトレット処理された)シートを例示できる。エレクトレット処理によって、ポリオレフィン系繊維表面に所定量の正電荷或いは負電荷を与えて分極させた誘電状態が形成され、捕集機能が得られる。
【0050】
具体的には、フィルタ部材11として、ポリオレフィン系繊維であるポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたメルトブロー不織布と、ポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたスパンボンド不織布とが、一体状に形成された、継ぎ目等のない1枚の不織布シートを例示できる。肌側に配されるメルトブロー不織布の平均繊維径が0.5〜3μm、坪量が1.5〜5g/m
2であるとよい。非肌側に配されるスパンボンド不織布の平均繊維径が15〜30μm、坪量が18〜50g/m
2であるとよい。また、上記不織布は、ポリプロピレン繊維のみによって構成されてもよいし、ポリプロピレン繊維に例えばポリエチレン繊維が付加されたものであってもよい。また、非肌側の不織布は、スパンボンド不織布に限らず、スパンレース不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布であってもよい。ただし、上記に限定されず、フィルタ部材11はエレクトレット処理されていないものであってもよい。例えば、繊維間隙の小さい部材であり、繊維間隙にウィルス飛沫等を付着させて捕集する部材(ナノフィルタ等)をフィルタ部材11としてもよい。
【0051】
肌側不織布12には、吸熱剤30が配されている。肌側不織布12は、吸熱剤30を配することが可能な不織布であればよい。好ましくは、肌触りの良い不織布であるとよく、ポロプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布等を例示できる。
【0052】
第1実施形態のマスク1は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11及び肌側不織布12が、左右方向に沿う折り目Fによってプリーツ状に折り畳まれて、襞が形成されたプリーツタイプである。
図2に示すマスク本体部10は、非肌側から視認可能な4つの折り目F1〜F4と、肌側から視認可能な4つの折り目F5〜F8とを有する。折り目F1〜F3,F8は上側に凸となる山折り部であり、折り目F4,F5〜F7は下側に凸となる谷折り部である。ただし、折り目Fの数や向きは
図2に例示する構成に限定されない。
【0053】
使用前のマスク1では、プリーツ状の折り畳み形状が維持されており、マスク本体部10はほぼ平坦な状態である。プリーツ状の折り目Fによって、マスク本体部10は上下方向に広がることが可能となり、また、非肌側にΩ形状に隆起可能となる。よって、
図3に示すように、マスク1の着用者は、鼻から顎までの長さに応じてマスク本体部10を上下方向に広げ、マスク本体部10で口元と鼻孔を覆うことができる。
【0054】
また、マスク本体部10の上端部及び下端部は、それぞれフィルタ部材11及び肌側不織布12が非肌面側に折り返された折返し部101を有する。なお、以下の説明では、厚さ方向に折返し部101と重なるマスク本体部10の部位を非折返し部102と呼ぶ。折返し部101によって、マスク本体部10の上下端部の強度が高まる。また、フィルタ部材11及び肌側不織布12の開きを抑制できる。
【0055】
サイドシート13は、左右方向におけるマスク本体部10の両側部に設けられている。プリーツ状の折り目Fと上下の折返し部101とが維持されたフィルタ部材11及び肌側不織布12の左右方向の両側部を、肌側及び非肌側から挟むように、サイドシート13が設けられている。サイドシート13は、通気性や肌触りが良好なシートであることが好ましく、例えば、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を例示できる。
【0056】
マスク本体部10は、重なり合うシート同士を接合一体化する溶着部14、例えば熱溶着や超音波溶着等による溶着部14を有する。
図1に示すように、マスク本体部10の横方向の両側部では、フィルタ部材11、肌側不織布12、及びサイドシート13を接合する複数の溶着部14が上下方向に沿って設けられている。マスク本体部10の上下端部及び上下方向の中央部では、フィルタ部材11及び肌側不織布12を接合する複数の溶着部14が左右方向に沿って設けられている。ただし、溶着部14のパターンは
図1に例示するものに限定されない。また、重なり合うシート同士は接着剤等(例えばホットメルト接着剤)で接合されていてもよい。
【0057】
また、
図2に示すように、マスク本体部10の上端部では、折り返し部101におけるフィルタ部材11と非折返し部102におけるフィルタ部材11の間に、形状保持部材15が配されている。形状保持部材15は、薄板矩形の部材であり、着用者が容易に曲げることができると共に、再び外力が掛からない限り、その形状が保持される部材である。形状保持部材15として、可撓性の熱可塑性樹脂や金属片で形成されたもの等を例示できる。マスク1の着用者は、鼻の形に合わせて形状保持部材15を変形させることができ、マスク本体部10の上端部と着用者の顔面との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。また、形状保持部材15の上下方向の両側に溶着部14が設けられ、形状保持部材15の位置ずれが抑制されている。
【0058】
耳掛け部20は、マスク本体部10の左右方向の両側部からそれぞれ延出したリング状の部材である。耳掛け部20は、伸縮性を有する部材であることが好ましく、例えば、ゴム紐、伸縮性不織布、伸縮性フィルム等を例示できる。
図1に例示する耳掛け部20は、ゴム紐であり、マスク本体部10の非肌側面に、接合部16によって接合されている。ゴム紐(20)の一端は、マスク本体部10の上端部の接合部16にて接合され、ゴム紐(20)の他端は、マスク本体部10の下端部の接合部16にて接合されている。接合部16の接合としては、溶着や接着剤による接合を例示できる。
【0059】
(吸熱剤30を有するマスク1について)
本実施形態のマスク1は、洗濯しながら繰り返し使用されるガーゼ等で形成されたマスクとは異なり、ウィルス飛沫や細菌飛沫を捕集するフィルタ部材11を備える。そのため、洗濯によってフィルタ部材11の捕集効果が軽減してしまうことを防止するために、本実施形態のマスク1は使い捨て用として使用されることを想定したマスクである。
【0060】
マスクの着用により、ウィルス飛沫等の微粒子の侵入を抑制できる一方で、着用者の湿った息でマスク内の空間が蒸れやすいという問題が生じる。特に夏の暑い時期等には、マスク内の蒸れで熱中症が発生する恐れがある。
【0061】
そこで、本実施形態のマスク1では、フィルタ部材11の肌面側に、吸熱剤30が配された肌側不織布12が設けられている。吸熱剤30とは、水と反応して吸熱反応を起こす剤である。
【0062】
そのため、着用者の湿った息が肌側不織布12の吸熱剤30に接触し、吸熱剤30が吸熱反応を起こし、マスク1内の空間温度が低下するため、マスク1内の蒸れが改善される。その結果、マスク1の着用による息苦しさを軽減でき、熱中症の発生を抑制できる。
【0063】
特に、ウィルス飛沫等を捕集するフィルタ部材11は、肌側不織布12に比べて通気性が低い(通気抵抗値が高い)。そのため、フィルタ部材11を有さないガーゼ等のマスクに比べて、本実施形態のマスク1では、着用者の息がマスク1の外に排出され難く、マスク1内の空間の密閉度が高い。つまり、着用者の吐いた息や吸熱剤30がフィルタ部材11を通過し難く、マスク1内の空間に留まりやすい。よって、着用者の息と吸熱剤30の接触時間が増え、マスク1内の空間温度が低下しやすく、マスク1内の蒸れが改善されやすい。そのため、着用者はマスク1内の冷感を実感しやすくなる。また、着用者の呼吸によって、吸熱剤30を含んだ息がフィルタ部材11の内側において循環しやすいため、冷感効果の持続性も高まる。これによっても、着用者はマスク1内の冷感を実感しやすくなる。
【0064】
また、マスク1は形状保持部材15を有することが好ましい。そうすることで、マスク1と着用者(顔面)との間に隙間が生じ難く、マスク1内の空間の密閉度が高まる。そのため、着用者の息と吸熱剤30の接触時間や循環が増えて、冷感効果やその持続性が高まる。ただし上記に限らず、マスク1は形状保持部材15を有していなくてもよい。
【0065】
また、本実施形態のマスク1とは異なり、例えばマスクに配された保湿剤等を着用者の肌に接触させることで、ひんやり感(接触冷感)を着用者に付与する場合、保湿剤の温度と着用者の体温との温度差による冷感となる。そのため、外気温が高く、外気温と同程度となる保湿剤の温度が高い場合には、冷感効果が低く、マスク内の蒸れを改善するには不十分であり、着用者は冷感を実感し難い。また、通常、マスクの外周端は着用者の肌に密着しやすいが、マスクの中央部では着用者との間に空間が生じやすい。そのため、接触冷感を付与するマスクでは、着用者の息により蒸れやすいマスクの中央部(鼻孔や口元部分)において、着用者の肌は保湿剤と接触し難く、着用者は冷感を実感し難い。
【0066】
これに対して、本実施形態のマスク1では、吸熱剤30の吸熱反応を利用する。そのため、外気温に影響され難く、夏の暑い時期にもマスク1内の空間温度を下げることができ、マスク1内の蒸れを改善できる。また、本実施形態のマスク1では、マスク1内の空間温度を下げるため、マスク1と着用者の肌が接触していない部分でも、着用者は冷感を実感できる。特に、着用者の息により蒸れやすいが、着用者の肌と空間が生じやすいマスク1の中央部(鼻孔や口元部分)においても、着用者は冷感を実感できる。
【0067】
吸熱剤30(吸熱成分)としては、糖アルコール類、及び、糖類のうちの何れか1つを含むことが好ましい。糖アルコール類としては、キシリトール、エリスリトール、デキストロース、ソルビトール等を例示できる。糖類としては、トレハロース、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)等を例示できる。これらの吸熱剤30であれば、マスク1の着用者の口元に触れた際にも安全である。
【0068】
また、吸熱剤30は、肌側不織布12を構成する繊維の少なくとも一部に練り込まれているとよい。つまり、肌側不織布12を形成する前段階で吸熱剤30が配されるように、例えば、肌側不織布12を形成する前の繊維ウェブを吸熱剤30(溶液)に含浸させたり、樹脂に吸熱剤30を混ぜてから繊維を形成したりするとよい。また、吸熱剤30が混ざったバインダーを繊維ウェブに塗布してもよい。
【0069】
そうすることで、肌側不織布12から吸熱剤30が脱落し難く、徐々に吸熱剤30の機能が発揮され、吸熱剤30による冷感効果の持続性が高まる。また、マスク1の使用前から吸熱剤30がフィルタ部材11に付着して、フィルタ部材11の捕集機能が低下してしまうことを抑制できる。
【0070】
しかし、上記に限定されず、肌側不織布12を構成する繊維の表面に吸熱剤30を配してもよい。例えば、噴霧法やローラーコート法、刷毛塗り法等の各種公知の塗布方法で、肌側不織布12に吸熱剤30を塗布したり、吸熱剤30(溶液)に肌側不織布12を浸漬したりするとよい。この場合、吸熱剤30が着用者の息と接触しやすく、吸熱反応が起こりやすいため、冷感効果が高まる。
【0071】
より好ましくは、吸熱剤30は、肌側不織布12の肌側面に塗布されているとよい。そうして、吸熱剤30を着用者に近い位置に配することで、吸熱剤30は着用者の息とより接触しやすくなり、冷感効果が高まる。また、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こるため、マスク1内の空間温度が下がりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。ただし、上記に限定されず、肌側不織布12の非肌側面又は両面に吸熱剤30が塗布されていてもよい。
【0072】
なお、吸熱剤30は、液体状であっても、固体状(ジェル状、粉体状等も含む)であってもよい。また、吸熱剤30を内包したマイクロカプセルを肌側不織布12に配し、物理的又は化学的な刺激(例えば熱、圧力、衝撃、光、液体等)により吸熱剤30を放出させるようにしてもよい。また、吸熱剤30には、吸熱作用を有する吸熱成分を溶解、分散させる溶媒も含まれるものとする。
【0073】
また、吸熱剤30は、肌側不織布12の平面全域に配されていてもよいし、肌側不織布12の平面の一部に配されていてもよい。また、吸熱剤30は、肌側不織布12に一定の坪量(単位面積当たりの量:g/m
2)で配されていてもよいし、肌側不織布12の領域に応じて異なる坪量で配されていてもよい。
【0074】
また、肌側不織布12は、親水性繊維を含むことが好ましい。より好ましくは、肌側不織布12に親水性繊維が50%以上含まれているとよい。そうすることで、肌側不織布12では、着用者の息に含まれる水分が保持されやすく、肌側不織布12の吸熱剤30が水分と接触しやすくなり、接触時間も長くなる。よって、吸熱剤30による吸熱反応が起こりやすく、冷感効果が高まる。
【0075】
親水性繊維としては、例えば、レーヨン等の再生セルロース繊維、コットンや粉砕パルプ等の天然セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロール繊維等が挙げられる。また、疎水性繊維(例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等)に、親水性処理を施して、親水性に変性させた繊維であってもよい。親水性繊維の判断は、例えば、繊維の接触角が90度未満であれば、親水性が高い繊維と判断できる。ただし上記に限定されず、肌側不織布12が親水性繊維を含まなくてもよいとする。
【0076】
また、フィルタ部材11の非肌側面は、マスク本体部10の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、肌側不織布12の肌側面は、マスク本体部10の肌側面の少なくとも一部を形成していることが好ましい。そうすることで、マスク本体部10において厚さ方向に積層されるシートの数が少なくなり、マスク1内の空間を蒸れ難くすることができる。本実施形態のマスク本体部10では、サイドシート13が配された左右方向の両側部以外の領域は、2枚の不織布(フィルタ部材11及び肌側不織布12)で構成されている。
【0077】
また、上記の場合、吸熱剤30が配された肌側不織布12がマスク本体部10の最も肌側に位置する。そのため、吸熱剤30は着用者の息と接触しやすくなり、冷感効果が高まる。また、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こるため、マスク1内の空間温度が下がりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0078】
また、マスク本体部10の左右方向及び上下方向の中央部には、サイドシート13が位置せず、2枚の不織布で構成されることに加えて、上下の折返し部101も位置しない(プリーツ状の折り目Fは位置するが、この折り目Fは着用状態において上下方向に広げられる)。つまり、着用者の鼻孔や口元が位置して蒸れやすいマスク1の部分において、厚さ方向に積層されるシート数がほぼ2枚となるため、マスク1内の空間を蒸れ難くすることができる。
【0079】
ただし、マスク本体部10の構成は上記に限定されず、例えば、フィルタ部材11よりも非肌側や、肌側不織布12よりも肌側、フィルタ部材11と肌側不織布12の間に、別のシートが配されていてもよい。
【0080】
また、フィルタ部材11の通気抵抗値は、0.45kPa・s/m以下であるとよく、好ましくは、0.3kPa・s/m以下であるとよい。フィルタ部材11の通気抵抗値が0.45kPa・s/mよりも高い場合、マスク1が吸熱剤30を有していても、着用者がマスク1内の蒸れを感じやすくなる恐れがある。そのため、吸熱剤30の冷感効果に加えて、フィルタ部材11の通気性を適度に保つことで、夏の暑い時期等にも、マスク1内の蒸れを改善できる。
【0081】
ただし、フィルタ部材11の通気抵抗値は、肌側不織布12の通気抵抗値よりも高いことが好ましい。そうすることで、着用者の息や吸熱剤30がマスク1内の空間において適度に留まり、着用者の息と吸熱剤30の接触時間が増えるため、吸熱効果及びその持続性も高まる。
【0082】
フィルタ部材11の通気抵抗値の測定は、周知の方法で行うことができる。例えば、コールドスプレー等を用いてマスク1からフィルタ部材11を分離し、フィルタ部材11を所定の大きさ(例えば直径100mmの円形)に切り出してサンプルとする。そして、カトーテック社製通気性試験機(KES−F8)又はそれと同等の通気性試験機を用いて、標準通気速度を2cm/sに設定し、サンプルの通気抵抗値を測定する。かかる測定を複数回(例えば5回)行い、その平均値を、フィルタ部材11の通気抵抗値とすることができる。
【0083】
また、前述したように、本実施形態のフィルタ部材11は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極された(エレクトレット処理された)シートである。このように、電荷により捕集機能を有するフィルタ部材11は、アルコールの付着により捕集機能が軽減してしまう。
【0084】
そのため、上記のフィルタ部材11を採用する場合、吸熱剤30は、アルコールを含まないことが好ましい。そうすることで、フィルタ部材11の捕集効果が軽減してしまうことを防止できる。例えば、吸熱剤30に含まれる溶媒は、水系溶媒であることが好ましい。また、例えば、アルコール系溶媒に吸熱成分を溶解,分散した溶液を肌側不織布12に塗布する場合、マスク1の製造ラインにおいて、アルコール系溶媒が気化した後に、肌側不織布12をフィルタ部材11に合流させるとよい。そうして、マスク1における吸熱剤30にはアルコールが含まれないようにするとよい。
【0085】
また、吸熱剤30は、不揮発性であることが好ましい。そうすることで、マスク1の使用前からフィルタ部材11側に吸熱剤30が揮発して、フィルタ部材11に吸熱剤30が付着し、フィルタ部材11の捕集機能が軽減してしまうことを抑制できる。不揮発性の吸熱剤30とは、一般生活環境化で気体とならず、沸点が100℃以上である物質とする。
【0086】
また、フィルタ部材11は、肌側不織布12に比べて、吸熱剤30の坪量が低いことが好ましく、より好ましくは、フィルタ部材11には吸熱剤30が配されていないとよい。そうすることで、着用者に近い肌側不織布12に多くの吸熱剤30が配されることになる。そのため、吸熱剤30は着用者の息と接触しやすく、冷感効果が高まる。また、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こるため、マスク1内の空間温度が下がりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、フィルタ部材11に吸熱剤30が付着していることによりフィルタ部材11の捕集機能が軽減してしまうことを抑制できる。
【0087】
フィルタ部材11と肌側不織布12に配される吸熱剤30の坪量の比較は、周知の方法で行うことができる。例えば、コールドスプレー等を用いてマスク1からフィルタ部材11と肌側不織布12を分離し、それぞれに竹炭やココアパウダーなどの有色の細かい粒子を撒いた後に、粒子を払う方法がある。吸熱剤30が配置された部分には粒子が多く付着する。そのため、フィルタ部材11と肌側不織布12に付着した粒子の量を比較することで、吸熱剤30の坪量を比較することができる。
【0088】
その他、フィルタ部材11と肌側不織布12それぞれに蒸気を当てて、それぞれの表面温度を比較してもよい。具体的には、フィルタ部材11及び肌側不織布12をそれぞれ所定のサイズに切り出してサンプルを作成し、ビーカーのような2つの容器に水を入れ、各サンプルで容器に蓋をする。サンプル上に温度センサーを取り付け、その上からラップフィルム等で覆った2つの容器を、40度に温めたウォーターバスに入れ、各サンプルの温度を比較する。吸熱剤30の坪量が多いサンプルの方が、時間経過に伴って、吸熱剤30の吸熱反応によりサンプルの温度が下がる。
【0089】
また、上記の方法を利用して、肌側不織布12の肌側面に吸熱剤30が塗布されていることを確認してもよい。例えば、粒子を撒く方法においては、肌側不織布12の肌側面に粒子が付着していれば、肌側不織布12の肌側面に吸熱剤30が塗布されていることを確認できる。また、蒸気を当てて温度を測定する方法においては、肌側不織布12と同じ構成の不織布であり、吸熱剤30が配されていない不織布を準備する。その不織布の温度よりも、肌側不織布12の肌側面の温度が低い場合には、肌側不織布12の肌側面に吸熱剤30が塗布されていることを確認できる。
【0090】
また、マスク本体部10において、フィルタ部材11の外周端と、肌側不織布12の外周端とが一致していることが好ましい。本実施形態のマスク1では、
図1に示すように、フィルタ部材11の左端11cと肌側不織布12の左端12cとが一致し、フィルタ部材11の右端11dと肌側不織布12の右端12dとが一致している。また、
図2に示すように、フィルタ部材11の上端11aと肌側不織布12の上端12aとが一致し、フィルタ部材11の下端11bと肌側不織布12の下端12bとが一致している。なお、上下の折り返し部101のシートの厚み分の位置ずれは含まないとする。また、折り返し部101における上下方向中央側の端101a,101bでは、フィルタ部材11の端と肌側不織布12の端とがずれていてもよい。
【0091】
上記によれば、マスク本体部10の平面の広範囲に亘り、肌側不織布12及び吸熱剤30を配することができる。よって、マスク1内の空間の広範囲の温度を、吸熱剤30により低下させることができる。また、マスク本体部10の平面の広い範囲に亘り、フィルタ部材11を配することができ、捕集効果が得られる。ただし上記に限定されず、フィルタ部材11の外周端と肌側不織布12の外周端とがずれていてもよい。
【0092】
また、第1実施形態のマスク1は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11及び肌側不織布12がプリーツ状に折り畳まれている。マスク1の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられる。しかし、マスク本体部10の左右方向の両側部では、フィルタ部材11及び肌側不織布12がプリーツ状に折り畳まれた状態で溶着部14により接合されている。また、マスク本体部10の左右方向の両側部では、フィルタ部材11及び肌側不織布12の上下端部が折り返された状態で溶着部14により接合されている。
【0093】
つまり、マスク本体部10の左右方向の両側部では、マスク1の着用時にも、
図2に示す断面の状態が維持される。具体的には、上下端部では、折り返し部101によって、肌側不織布12が厚さ方向に2層に重なっている。上下方向の中央部は、プリーツによって、肌側不織布12が厚さ方向に3層に重なっている部分を有する。
【0094】
そのため、肌側不織布12に一定に吸熱剤30を配することで、肌側不織布12が2層に重なる上下端部に比べて、肌側不織布12が3層に重なる上下方向の中央部において、吸熱剤30の坪量(g/m
2)を高くすることができる。
【0095】
マスク本体部10の左右方向の両側部のうちの上下端部には、耳掛け部20が接合されている。そのため、上下端部は、上下方向の中央部に比べて、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌に密着しやすく、着用者は吸熱剤30の冷感効果を実感しやすい。一方、上下方向の中央部は、着用者の鼻孔や口元に近いため、蒸れ易いが、吸熱剤30が着用者の湿った息と接触しやすい。そこで、吸熱剤30の坪量を上記のようにするとよい。そうすることで、マスク本体部10の左右方向の両側部において、上下方向の中央部は、着用者の肌への密着度が低いが、着用者の息がより多くの吸熱剤30と接触するため、冷感効果が高まり、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、マスク本体部10の左右方向の両側部のうちの上下方向の中央部は、上下端部に比べると密着度は低いが、着用者の頬に接触する。そのため、その部分において吸熱剤30の坪量を高くすることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0096】
また、マスク1の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられるが、完全に広げられることはなく、一部では肌側不織布12が3層に重なる。そのため、マスク本体部10の左右方向の中央部においても、上下端部に比べて、上下方向の中央部の方が、吸熱剤30の坪量(g/m
2)が高くなる。よって、着用者の息がより多くの吸熱剤30と接触するため、冷感効果が高まる。
【0097】
換言すると、プリーツ状の折り目Fを有するマスク1では、マスク本体部10の上下方向の中央部において、肌側不織布12を厚さ方向に3層に積層できる。そのため、肌側不織布12に一定に吸熱剤30を配していても、マスク本体部10の上下端部に比べて、上下方向の中央部の吸熱剤30の坪量を高くすることができる。その結果、マスク1の上下方向の中央部の冷感効果を高めることができる。
【0098】
また、
図2に示すように、マスク本体部10の上端部及び下端部は、フィルタ部材11及び肌側不織布12が非肌面側に折り返された折返し部101を有することが好ましい。そして、厚さ方向に折返し部101と重なる非折返し部102の肌側面102A、すなわち、肌側不織布12の肌側面に、吸熱剤30が配されていることが好ましい。
【0099】
マスク本体部10の上下端部が非肌面側に折り返されることで、マスク本体部10の上下端部においてフィルタ部材11が肌側不織布12を肌側から覆ってしまうことを防止できる。つまり、マスク本体部10の上下端部において、吸熱剤30が配された肌側不織布12を肌側に露出させることができる。よって、着用者に近い位置にて吸熱剤30の吸熱反応が起こるため、着用者は冷感を実感しやすくなる。特に、マスク本体部10の上下端部は、上下方向の中央部に比べて着用者の肌に密着しやすいので、着用者は冷感をより実感しやすくなる。
【0100】
また、上記のように、マスク本体部10の上端部が非肌面側に折り返される場合、上端部の折返し部101の非肌側面(外側面)101A、すなわち肌側不織布12の非肌側面にも吸熱剤30が配されていることが好ましい。
【0101】
着用者の吐いた息は温かいため、マスク本体部10の外に排出された着用者の息は上昇しやすい。そのため、マスク本体部10の外に排出された息が、マスク本体部10の上端部の非肌側面101Aに配された吸熱剤30と接触ができる。よって、マスク本体部10の上端部付近の温度を下げることができ、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、マスク本体部10の外に排出された息の温度も下がるため、着用者の眼鏡が曇り難くなる。
【0102】
ただし、上記の構成に限定されない。例えば、マスク本体部10の上端部及び下端部が肌面側に折り返されていてもよいし、マスク本体部10の上端部及び下端部の一方のみが非肌面側に折り返されていてもよい。また、上側の折り返し部101の非肌側面に吸熱剤30が配されていなくてもよい。
【0103】
また、第1実施形態のマスク1の耳掛け部20(ゴム紐)は、マスク本体部10の非肌側面に、接合部16によって接合されている。この場合、耳掛け部20が肌側不織布12を肌側から覆ってしまうことを防止できる。よって、吸熱剤30が配された肌側不織布12を着用者に近い位置に配することができる(肌側に露出させることができる)。よって、耳掛け部20の接合部16においても、着用者に近い位置にて吸熱剤30の吸熱反応が起こるため、着用者は冷感を実感しやすくなる。特に、耳掛け部20の接合部16に対応する肌側不織布12の部分は、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌に密着しやすいので、着用者は冷感をより実感しやすくなる。
【0104】
==第2実施形態==
図4Aは、第2実施形態の使い捨てマスク2(以下「マスク」とも呼ぶ)の折り畳み状態を示す平面図であり、
図4Bは、展開状態のマスク2の正面図である。
図5は、着用状態のマスク2の正面図である。
図6は、着用状態のマスク2を上から見た概略図である。以下、第2実施形態のマスク2のうち第1実施形態のマスク1と異なる部分について主に説明する。
【0105】
第2実施形態のマスク2は、マスク本体部40と、耳掛け部50を有する。マスク本体部40は、マスク2の展開状態及びマスク2の着用状態において、上下方向、及び、左右方向を有し、着用者の対向する側を肌側(肌面側)とし、その反対側を非肌側(非肌面側)とする。また、マスク本体部40は、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部43,44と、一対のシート部43,44を互いに接合する接合部45と、形状保持部材46と、一対のシート部43,44に耳掛け部50を接合する接合部47を有する。接合部45,47は、溶着、圧搾、接着剤等の周知の方法で接合できる。
【0106】
図4Aに示すように、一対のシート部43,44は、互いの肌側面が対向するように重ね合わされた状態で、一対のシート部43,44の端縁43a,44aに沿った接合部45により接合されている。その端縁43a,44aは外側に向かって凸な曲線形状である。そのため、折り畳み状態(平面状)のマスク2を、一対のシート部43,44が離間するように展開すると(
図4B)、マスク本体部40は、その肌側面が凹んだ立体形状(カップ形状)となる。
【0107】
また、第2実施形態のマスク2は、第1実施形態のマスク1と同様に、使い捨て用として使用されることを想定したマスクである。そして、マスク本体部40(一対のシート部43,44)は、
図6に示すように、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材41と、フィルタ部材41の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤30が配された肌側不織布(不織布)42を有する。
【0108】
そのため、着用者の湿った息が肌側不織布42の吸熱剤30に接触すると、吸熱剤30が吸熱反応を起こし、マスク2内の空間温度が下がるため、マスク2内の蒸れを改善できる。特に、第2実施形態のマスク2は着用時に立体形状となり、マスク2と着用者との間に空間が生じやすい。そのため、吸熱剤30によりマスク2内の空間温度を下げることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0109】
また、一対のフィルタ部材43,44は、それぞれの上端部であって、フィルタ部材41と肌側不織布42の間に形状保持部材46を有する。そのため、マスク2内の空間の密閉度が高まり、冷感効果やその持続性が高まる。ただし、マスク2は形状保持部材46を有していなくてもよい。
【0110】
また、一対のフィルタ部材43,44は、平面上に重ね合わされた状態(
図4A)で接合部45にて接合されている。そのため、
図6に示すように、マスク2の着用状態において、接合部45からフィルタ部材43,44の端縁43a,44aまでの領域(すなわちフィルタ部材43,44のつなぎ目部分)において、肌側不織布42が2層に重ねられた状態が維持される。そのため、肌側不織布42に一定に吸熱剤30を配することで、接合部45からフィルタ部材43,44の端縁43a,44aまでの領域を、それ以外の領域に比べて、吸熱剤30の坪量が高い高坪量部48にすることができる。なお、吸熱剤30の坪量の比較方法は前述の比較方法と同様に行うことができる。
【0111】
このように、マスク1の着用状態(
図5)において、マスク本体部40の左右方向の中央部401が、左右方向の両端部402に比べて吸熱剤30の坪量が高い高坪量部48を有することが好ましい。そうすることで、着用者の息により蒸れやすいマスク2の左右方向の中央部(鼻孔や口元部分)において、より多くの吸熱剤30が着用者の息と接触でき、冷感効果が高まる。よって、マスク2内の空間温度がより低下して、マスク2内の蒸れを改善でき、着用者が冷感を実感しやすくなる。
【0112】
さらに、肌側不織布12が2層に重ねられている吸熱剤30の高坪量部48(すなわちフィルタ部材43,44のつなぎ目部分)は、マスク本体部40の上端40aから下端40bまで上下方向に連続して配されているとよい。
【0113】
着用時に立体形状(カップ状)となる第2実施形態のマスク2では、マスク本体部40の左右方向の中央部において、着用者との間に空間が生じやすい。そのため、マスク本体部40の左右方向の中央部において、吸熱剤30の高坪量部48を上下方向に長く設けるとよい。そうすることで、マスク2内の空間に溜まった着用者の息がより多くの吸熱剤30と接触でき、冷感効果が高まる。
【0114】
また、第2実施形態のマスク2の耳掛け部50は、耳を掛けるための開口部51が形成された伸縮性シートである。耳掛け部50は、
図6に示すように、接合部47によって、マスク本体部40の肌側面に接合されている。この場合、吸熱剤30が配された肌側不織布12の肌側面が耳掛け部50に覆われてしまう。ただし、耳掛け部50が接合されている肌側不織布12の部分は、耳掛け部50の伸長力によって着用者の肌への密着度が高い。そのため、耳掛け部50で吸熱剤30が覆われていても、着用者は冷感を実感できる。また、着用者の肌への密着度が高い部分において、吸熱剤30が着用者の肌に直接に触れないことで、着用者の肌への刺激も軽減できる。
【0115】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【解決手段】マスク本体部(10、40)と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部(20、50)と、を有し、前記マスク本体部(10、20)は、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材(11、41)と、前記フィルタ部材(11、41)の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤(30)が配された不織布(12、42)と、を有することを特徴とする使い捨てマスク(1、2)。