特許第6862295号(P6862295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862295
(24)【登録日】2021年4月2日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】惣菜パン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/32 20170101AFI20210412BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20210412BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20210412BHJP
   A21D 2/10 20060101ALI20210412BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20210412BHJP
【FI】
   A21D13/32
   A21D2/36
   A21D2/26
   A21D2/10
   A23L7/109 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-123693(P2017-123693)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-4775(P2019-4775A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】大久保 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】森崎 敬子
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−070836(JP,A)
【文献】 特開平10−215756(JP,A)
【文献】 特開2014−054190(JP,A)
【文献】 特開平10−262586(JP,A)
【文献】 特開2008−125492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 13/32
A21D 2/10
A21D 2/26
A21D 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.パン類用穀粉原料100質量部中、小麦粉を主体とする穀粉90〜40質量部及び小麦ふすま10〜30質量部を配合してパン類用生地を調製し、得られたパン類用生地を常法に従ってパン類を製造するパン類の製造工程、
B.麺類用穀粉原料100質量部中、小麦粉を主体とする穀粉0〜50質量部、加工澱粉0〜20質量部、及び小麦ふすまを20〜60質量部を配合して麺類を製造し、得られた麺類を蒸煮した後、常法に従って調理する、麺類を主体とする惣菜の製造工程、及び
C.工程Aのパン類と、工程Bの惣菜とを、パン類と惣菜中の麺類を質量比1:0.8〜1.7で合わせて惣菜パン類とする工程、を含むことを特徴とする惣菜パン類の製造方法。
【請求項2】
惣菜パン類において、パン類中の小麦ふすまと惣菜中の小麦ふすまの質量比を1:1〜3とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程Aにおいて、穀粉原料100質量部に対してグルテンを外割りで0.5〜10質量部添加する、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程Bにおいて、穀粉原料100質量部中において、グルテンを内割りで5〜30質量部添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
工程Bにおける惣菜が、焼きそば、焼うどん、パスタ、そば飯、コットゥロティから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程Cにおいて、惣菜をパン類用生地又はパン類で挟む、パン類用生地又はパン類に上乗せする、又はフィリングとしてパン類に包含させる、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
惣菜パン類において、1喫食あたりのパン類の質量を60〜80g、惣菜中の麺類の質量を70〜100gとし、当該1喫食あたりの惣菜パン類に、5g以上の小麦ふすまを含有させる、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦由来食物繊維を高含有させることにより、内臓脂肪を低減させ得る惣菜パン類の製造方法に関する。詳細には、小麦由来食物繊維として小麦ふすまをパン類とこれに合わせる惣菜に特定量及び特定比で高含有させることにより、内臓脂肪を低減させ得る量の小麦ふすまを含有しながら、ふすま特有のエグミや臭いを感じることなく、風味・食味に優れ、日々継続して摂取することができる惣菜パン類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトの体内で消化・分解されない食物繊維は、消化吸収を穏やかにし、食後の血糖や中性脂肪の上昇を抑えたり、血中のコレステロールを下げたり、腸内細菌叢を改善する作用があることが明らかとなっている(非特許文献1)。厚生労働省から発表されている「日本人の食事摂取基準 2010年版」によると、食物繊維の摂取目標量は、18歳以上の成人において、男性で19g以上、女性では17g以上となっている。これに対し、日本人が実際に摂取している食物繊維摂取量は年齢、男女問わず不足しており、特に若年層でかなり不足している。
【0003】
従来、小麦ふすまを含有するパン類の製造方法については数多く提案されている。例えば、小麦粉を用いず、小麦ふすまと小麦たんぱく(グルテン)とゲル化物(寒天、カラギナン、ゼラチン等)を用いるパン様食品素材(特許文献1)や、ふすまを多く含むにもかかわらず風味、食感、外観などに優れた美味なパンを製造することができる小麦粉組成物を使用したパンの製造法(特許文献2及び3)や、低糖質でありながらも、ボリュームに優れた小麦ふすま含有パン類の製造方法(特許文献4)や、低糖質食品原料として難消化性澱粉、ふすまに、活性グルテン、還元処理グルテン、糖類を用いてイースト発酵したのち、焼成するイースト発酵食品の製造方法(特許文献5)などが知られている。
【0004】
また、小麦ふすまを含有する麺類の製造方法についても数多く提案されている。例えば、平均粒度50ミクロン以下で、粒径が10ミクロン〜50ミクロンのふすまが40重量%以上で構成されたふすまを、穀粉原料に対し5〜20重量%含む、低カロリーで食物繊維を豊富に含有するふすま入りそばの製造方法(特許文献6)や、小麦ふすまを含む原料粉から調製された比重1.0〜1.25g/cm3の麺帯のみを用いて製麺する、低カロリーで、かつ見た目および喫食時のボリューム感に優れた麺類の製造方法(特許文献7)や、小麦全粒粉又は小麦ふすまが配合されることで栄養的に優れた特長を有しつつも、滑らかな麺線表面と良好な粘弾性とを有していて食感に優れ、且つ喫食時の麺のほぐれが良好な麺類の製造方法(特許文献8)や、食感、食味、栄養等の食品としての質の向上と、包み皮としての機能性の向上とを、高いレベルで両立し得る麺皮類及び麺皮食品の製造方法(特許文献9)や、蒸煮処理小麦ふすまを含有する麺生地を圧延して麺帯を得、該麺帯を麺線に切り出し、得られた麺線を切断することを含む小麦ふすま含有麺類の製造方法であって、前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で7〜47質量%である、小麦ふすま含有麺類の製造方法(特許文献10)などが知られている。
【0005】
しかし、内臓脂肪を低減させ得る量の小麦由来食物繊維として小麦ふすまをパン類とこれに合わせる惣菜に特定量及び特定比で高含有させ、風味・食味に優れ、日々継続して摂取することができる惣菜パン類を製造する方法については知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−306986号公報
【特許文献2】特開2009−254240号公報
【特許文献3】特開2014−054190号公報
【特許文献4】特開2015−097500号公報
【特許文献5】特開2016−028554号公報
【特許文献6】特開平7−00132号公報
【特許文献7】特開2014−212713号公報
【特許文献8】特開2015−195759号公報
【特許文献9】特開2017−012088号公報
【特許文献10】特開2017−029145号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本食物繊維研究会誌第4巻第2号、第59〜65頁、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、小麦由来食物繊維として内臓脂肪を低減させ得る量の小麦ふすまを含有しながら、ふすま特有のエグミや臭いを感じることなく、風味・食味に優れ、日々継続して摂取することができる惣菜パン類を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため検討した結果、小麦由来食物繊維として小麦ふすまをパン類とこれに合わせる惣菜に特定量及び特定比で高含有させることにより、前記課題を解決できることを知見した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(6)の惣菜パン類の製造方法に関する。
(1)A.パン類用穀粉原料100質量部中、小麦粉を主体とする穀粉90〜40質量部及び小麦ふすま10〜60質量部を配合してパン類用生地を調製し、得られたパン類用生地を常法に従ってパン類を製造するパン類の製造工程、B.麺類用穀粉原料100質量部中、小麦粉を主体とする穀粉0〜50質量部、加工澱粉0〜20質量部及び小麦ふすまを20〜70質量部を配合して麺類を製造し、得られた麺類を蒸煮した後、常法に従って調理する、麺類を主体とする惣菜の製造工程、及びC.工程Aのパン類と、工程Bの惣菜とを、パン類と惣菜中の麺類を質量比1:0.8〜1.7で合わせて惣菜パン類とする工程、を含むことを特徴とする惣菜パン類の製造方法。
(2)惣菜パン類において、パン類中の小麦ふすまと惣菜中の小麦ふすまの質量比を1:1〜3とする、前記(1)記載の製造方法。
(3)工程Aにおいて、穀粉原料100質量部に対してグルテンを外割りで0.5〜10質量部添加する、前記(1)又は(2)記載の製造方法。
(4)工程Bにおいて、穀粉原料100質量部中において、グルテンを内割りで5〜30質量部添加する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)工程Bにおける惣菜が、焼きそば、焼うどん、パスタ、そば飯、コットゥロティから選択される、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)工程Cにおいて、惣菜をパン類用生地又はパン類で挟む、パン類用生地又はパン類に上乗せする、又はフィリングとしてパン類に包含させる、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)惣菜パン類において、1喫食あたりのパン類の質量を60〜80g、惣菜中の麺類の質量を70〜100gとし、当該1喫食あたりの惣菜パン類に、5g以上の小麦ふすまを含有させる、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、小麦由来食物繊維として小麦ふすまをパン類とこれに合わせる惣菜に特定量及び特定比で高含有させることにより、内臓脂肪を低減させ得る量の小麦ふすまを含有しながら、小麦ふすま特有のエグミや臭いを感じることなく、風味・食味に優れ、日々継続して摂取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、小麦粉を主体とする穀粉とは、強力粉、準強力粉、中力粉、デュラム小麦粉等の小麦粉を主として含有するものであり、これら各種小麦粉を組み合わせたものでもよい。また、小麦粉として全粒粉を用いてもよいが、この場合、全粒粉に含まれる小麦ふすま部分は、ふすまとして換算する。当該穀粉は、小麦粉の他に、大麦粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、そば粉、米粉、オーツ麦粉を含んでいてもよい。
【0013】
本発明において、小麦ふすまとは、一般的な小麦粉の製造過程において、小麦粒から胚乳部を除去した残部、又はそこから、付着した胚乳又は胚芽をさらに除去したものをいう。本発明で用いる小麦ふすま(以下、単にふすまということもある)は、脱脂されていても、未脱脂(全脂)であってもよく、又は焙煎ふすまであっても、未焙煎(生)のふすまであってもよい。また、本発明で用いるふすまは、その粒度は特に限定されないが、好ましくは粉末ふすまである。本発明で用いるふすまとしては、例えば、通常の小麦粉の製粉工程で得られるフレーク状の小麦ふすま、それをさらに微粉砕工程に供した粉末ふすま、それらの混合物、それらを脱脂処理したもの、それらを焙煎処理したもの、などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。あるいは、本発明で用いる小麦ふすまには、各種市販品を用いてもよい。
【0014】
本発明で用いるグルテンとしては、小麦グルテン、コーングルテンなどが挙げられるが、小麦グルテンが好ましい。また、小麦グルテンとしては生グルテン、活性グルテンのいずれも用いることができるが、入手の容易性などからは活性グルテンが好ましい。
【0015】
また、加工澱粉としては、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉に架橋化、リン酸化、アセチル化等のアセチル化、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化、酸化、α化及びこれらの組合せ等の加工処理を施した澱粉が挙げられるが、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチの加工澱粉がより好ましい。
【0016】
本発明の惣菜パン類の製造方法における工程Aのパン類の製造工程(パン類の製造工程という)において、穀粉原料(パン類用穀粉原料という)は100質量部中、小麦粉を主体とする穀粉90〜40質量部、好ましくは90〜70質量部、及び小麦ふすま10〜60質量部、好ましくは10〜30質量部を含有する。また、パン生地100gあたりの小麦ふすまの含量としては、1〜30g、好ましくは3〜20g、より好ましくは4.5〜15gである。
【0017】
パン類用穀粉原料100質量部中において、小麦粉を主体とする穀粉が90質量部を超えると、小麦ふすまを十分に摂取するのが困難となりやすく、40質量部未満であると得られるパン類の食味や風味、食感が劣るようになりやすく、これにより長期間摂食させ難くなる可能性がある。また、パン類用穀粉原料100質量部中において、小麦ふすまが10質量部未満であると小麦ふすまを十分に摂取するのが困難となりやすく、60質量部を超えると得られるパン類の食味や風味、食感が劣るようになりやすく、これにより長期間摂食させ難くなる可能性がある。
【0018】
また、パン類のボリュームや食感の向上の目的のため、パン類用穀粉原料100質量部に対してグルテンを外割りで0.5〜10質量部添加・含有させるのが好ましく、1〜5質量部がより好ましい。グルテンの量が0.5質量部未満であると配合させる効果が得られず、10質量部を超えるとパン類の食感が硬くなってしまう可能性がある。
【0019】
本発明の工程Aにおけるパン類の製造方法においては、前述の原料穀粉において、水、パン酵母、油脂、所望により前述の増粘多糖類及びその他の製パン原料を混合・混捏する工程を含むが、その他の製パン原料として、通常、パン類の製造に用いられるもの、例えばサワー種、ルバン種等の各種発酵種;イーストフード;砂糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、麦芽糖、乳糖等の糖類;卵又は卵粉;脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズ粉末、ヨーグルト粉末、ホエー粉末などの乳製品;ショートニングやバター、マーガリンやその他の動植物油等の油脂類;乳化剤;膨張剤;増粘剤;甘味料;香料;着色料;アスコルビン酸;食塩等の無機塩類;グルコシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素類;食物繊維を適宜使用することができる。
【0020】
本発明の工程Aにおけるパン類の製造方法としては、ストレート法、中種法、冷凍又は冷蔵生地製パン法等、常法を適宜採用することができる。また、本発明におけるパン類としては、特に制限や限定はなく、例えば、食パン、ロールパン、クロワッサン、デニッシュ、ブリオッシュ、フランスパン、ドイツパン(カイザーゼンメル、ライ麦パン等)、フォカッチャ、パネトーネなどが挙げられる。
【0021】
本発明の惣菜パン類の製造方法における工程Bの麺類を主体とする惣菜の製造工程(惣菜の製造工程という)において、穀粉原料(麺類用穀粉原料という)は100質量部中、小麦粉を主体とする穀粉0〜50質量部、好ましくは5〜35質量部、加工澱粉0〜20質量部、好ましくは5〜15質量部、及び小麦ふすまを20〜70質量部、好ましくは30〜60質量部を含有する。また、麺100gあたりの小麦ふすまの含量としては、5〜30g、好ましくは8〜25g、より好ましくは10〜20gである。
【0022】
麺類用穀粉原料100質量部中において、小麦ふすまが30質量部未満であると小麦ふすまを十分に摂取するのが困難となりやすく、70質量部を超えると麺類を主体とする惣菜の食味や風味、食感が劣るようになりやすく、これにより長期間摂食させ難くなる可能性がある。また、小麦粉を主体とする穀粉が50質量部を超えると、小麦ふすまを十分に摂取するのが困難となりやすく、含まれていないと麺類を主体とする惣菜の食味や食感が劣るようになりやすく、これにより長期間摂食させ難くなる可能性がある。同様に、加工澱粉が20質量部を超えると、小麦ふすまを十分に摂取するのが困難となりやすく、含まれていないと麺類を主体とする惣菜の食味や食感が劣るようになりやすく、これにより長期間摂食させ難くなる可能性がある。
【0023】
さらに、工程Bにおいて、穀粉原料100質量部中において、グルテンを内割りで5〜30質量部添加・含有させるのが好ましく、10〜15質量部がより好ましい。この範囲でグルテンを添加することにより、得られる惣菜中の麺類の食感が向上し、結果として嗜好性がより良好な惣菜パン類となる。
【0024】
工程Bにおける麺類の製造にあたり、通常用いられる他の材料、例えば大豆蛋白質、大豆多糖類、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、卵蛋白酵素分解物、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、焼成カルシウム、食物繊維、膨張剤、食塩、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン、難消化性デキストリン、難消化性でん粉、増粘剤(例えばグァーガム、アルギン酸エステル、キサンタンガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン、これらの部分分解物等)、アルコール、保存剤、pH調整剤、酵素剤などを適宜用いることができる。
【0025】
また、工程Bにおける麺類は、上記麺類用穀粉原料を用いる以外は、従来の麺類の製法と同様にして製造することができる。例えば、常法に従って、圧延、複合及び切出し等の工程を含むロール製麺、押出し、それらの組み合わせなど特に限定されない。
また、麺類の種類としては、うどん、中華麺、ソバ、パスタ(スパゲティ・マカロニ)が挙げられ、特に限定されない。
【0026】
得られた生麺類(麺皮を含む)は常法に従って、蒸煮(茹で、蒸し等)処理して麺類をα化する。α化した麺類は、そのまま調理に供してもよいが、冷蔵ないし冷凍後に調理に供してもよい。またα化した麺類は、そのままあるいは、短冊状、粒状、顆粒状に裁断してもよい。また、裁断処理は、蒸煮処理の前でも後でもよい。次いで、常法に従って調理して惣菜を製造する。惣菜の種類としては、上記麺類を主原料として用いるものであれば特に限定されないが、例えば焼きそば、焼うどん、パスタ料理(スパゲティ、グラタン等)、そば飯、コットゥロティが挙げられる。
【0027】
工程Bで製造した惣菜は、工程Aで製造したパン類と合わせる。合わせる手段としては、焼きそばパンやサンドイッチ等のようにパン類に挟んでもよいし、パン類に上乗せしてもよい。また、工程Aのパン類の製造工程において、パン生地にフィリングとして内包させてもよいし、パン生地で挟んだり、パン生地に上乗せし、次いで常法に従って惣菜パン類を製造してもよい。
【0028】
工程Cにおいて、通常は工程Aのパン類又はパン生地と、工程Bの惣菜とを、パン類と惣菜中の麺類の質量比が1:0.8〜1.7の範囲で合わせて惣菜パン類とすることが好ましく、1:1〜1.3の範囲がより好ましい。パン類と惣菜中の麺類の質量比をこの範囲とすることで、小麦ふすまを十分に摂取することが可能になり、パン類と具材である惣菜のバランスが良好で、結果として嗜好性が良好な惣菜パン類となる。さらに、惣菜パン類において、パン類中の小麦ふすまと惣菜中の小麦ふすまの質量比を1:1〜3にすることが好ましく、1:1.3〜2.5の範囲がより好ましい。パン類中の小麦ふすまと惣菜中の小麦ふすまの質量比をこの範囲とすることで、小麦ふすまを十分に摂取することが可能になると同時に、小麦ふすまに起因する好ましくない食味・食感(例えばエグミや臭い、ぼそつき感)を感じにくくなり、結果として嗜好性が良好な惣菜パン類となる。
【0029】
また、惣菜パン類において、通常は1喫食あたりのパン類の質量を60〜80g、惣菜中の麺類の質量を70〜100gとし、当該1喫食あたりの惣菜パン類に、小麦ふすまを5g以上含有させるが、10〜30gが好ましく、18〜30gがより好ましい。このように惣菜パン類を構成させることにより、小麦ふすまによる小麦由来食物繊維として内臓脂肪を低減させ得る量の小麦ふすまを含有しながら、ふすま特有のエグミや臭いを感じることなく、風味・食味に優れ嗜好性が良好で、日々継続して摂取することができる惣菜パン類となる。
【実施例】
【0030】
[製造例1]工程A パン(ホットドック)の製造
・配合
パン類用穀粉原料 100質量部
生イースト 4質量部
グルテン 1〜10質量部
パン生地改良剤 0.5〜1質量部
食塩 1.5質量部
砂糖 15質量部
脱脂粉乳 3質量部
マーガリン 10質量部
全卵 5質量部
水 66〜80質量部
【0031】
・工程
ミキシング 低速5分、中速1〜2分、(油脂添加)、
低速3分、中速3〜4分
捏ね上げ温度 27℃
発酵時間(27℃湿度75%) 60分
分割重量 70g
ベンチタイム 15分
成形(モルダー使用) ドック型
ホイロ(38℃、湿度85%) 50〜60分
焼成(220℃) 8分
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すパン類用穀粉原料及び上記の配合・工程によりホットドックパンを製造した。
【0034】
[製造例2]工程B 焼きそばの製造
・配合
麺類用穀粉原料 100質量部
卵白粉末 1質量部
食塩 1質量部
かんすい 0.4質量部
水 〜70質量部
【0035】
【表2】
【0036】
麺類用原料穀粉100質量部と粉末卵白1質量部にあらかじめ添加する水の一部に食塩1質量部とかんすい0.4質量部を溶解した液と残余の水(加水量68質量部)を添加した後、麺類用ミキサーで真空条件下(700mmHg)にてミキシングした(高速5分→低速7分)。得られた麺生地を圧延・複合して厚さ1.6mmの麺帯とした後、#20丸の切刃を使用し、麺線に切り出した。得られた麺線を6分間蒸し処理して生焼きそばを製造し、サラダ油2質量部と和えた。この焼そば100質量部にサラダ油3質量部、ソース20質量部を炒めて焼きそばを製造した。
【0037】
[試験例1]焼きそばパンの製造(パン類)
上記の製造例1で製造したパン1〜5(パン質量60g:生地重量70g)と製造例2で製造した麺3の惣菜(焼きそば)(調理後麺90g:麺の質量75g)を用いて焼きそばパンを調製した。具体的にはホットドックパンに縦に切り込みを入れ、これに焼きそば90gを挟んで焼きそばパンとした。得られた焼きそばパンについて、下記の評価基準により食味、食感を評価した。その結果を下記の表3に示す。また、表3には1喫食あたりの小麦ふすまの質量も記入した。
【0038】
【表3】
【0039】
評価基準:惣菜パンの食味・風味
○:パンと惣菜の風味・食味のバランスが良好で、ふすま臭を感じない
△:パンと惣菜の風味・食味のバランスがやや劣り、ふすま臭を感じる
×:パンと惣菜の風味・食味のバランスが劣り、ふすま臭を強く感じる
惣菜パンの食感
○:パンと惣菜の食感のバランスが良好であり、食感に違和感がない
△:パンと惣菜の食感のバランスがやや劣り、食感に違和感がややある
×:パンと惣菜の食感のバランスが劣り、食感に違和感がある
【0040】
本発明は、小麦由来食物繊維として内臓脂肪を低減させ得る量の小麦ふすまを含有しながら、ふすま特有のエグミや臭いを感じることなく、風味・食味に優れ、日々継続して摂取することができる惣菜パン類を製造する方法を提供すること目的とする。
【0041】
[試験例2]焼きそばパン(麺類)
上記の製造例1のパン2と製造例2の麺1〜5の焼きそば(麺の質量75g)を用いて、試験例1と同様にして焼きそばパンを調製した。これらの焼きそばパンについて、試験例1と同様に評価した。その結果を下記の表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
[試験例3]焼きそばパン(パンと具材のバランス)
製造例1のパン2(生地重量70g)に対して製造例2の麺3の焼きそばの量を調製した。これらの焼きそばパンのパンと具材である焼きそばのバランスについて下記の評価基準により評価した。
【0044】
【表5】
【0045】
評価基準:惣菜パンの食べやすさ
○:パンと惣菜の量のバランスが良好で食べやすい
△:パンと惣菜の量のバランスがやや劣り、やや食べにくい
×:パンと惣菜の量のバランスが劣り、食べにくい
【0046】
[製造例3]工程 パン(食パン:70%中種法)の製造
・配合 中種 本捏
パン用小麦粉 70質量部 10質量部
小麦ふすま 20質量部
生イースト 2質量部 0.5質量部
グルテン 5質量部
パン生地改良剤 0.3質量部
乳化剤 0.2質量部
食塩 1.8質量部
砂糖 10質量部
脱脂粉乳 3質量部
マーガリン 6質量部
水 40質量部 31質量部
【0047】
・工程
中種ミキシング 低速2分、中速2分
捏上温度 24℃
発酵時間(27℃湿度75%) 4時間
ミキシング 低速5分、中速1分、(油脂添加)、
低速3分、中速2〜3分
捏ね上げ温度 27℃
フロアタイム 25分
分割重量 250g×6
ベンチタイム 20分
成形(モルダー使用) 食パン型
ホイロ(38℃、湿度85%) 50〜60分
焼成(220℃) 40分
【0048】
[試験例4]ホットサンドの調整
上記の製造例3のパンを9mm厚にスライスし、製造例2の麺3の焼きそば(麺質量90g)を細かく裁断し、そば飯様のフィリングとして、そば飯サンドイッチを作成し、ホットサンドを調製した。9mm厚にスライスしたパンには8.3gのふすま、そば飯フィリング90g(麺質量75g)には13.5gのふすまが含有され、1食当たりのふすま量は約21.8gである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、食品工業、とりわけ内臓脂肪を低減させ得る惣菜パンの分野で有用である。