(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程a)において、金属チューブの内径が、モノリシックな吸着剤の外径より0.1〜0.25mm大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
工程a)において、1cm〜30cmの長さおよび1mm〜5cmの直径を有するモノリシックな吸着剤が提供されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
追加の工程d)において、金属チューブで覆われたモノリシックな吸着剤が、溶媒供給および放出のための連結とともに提供されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
粒状の吸着剤を含有している従来のクロマトグラフィーカラムの生産のために、充填物が、正確にフィットする末端を有するステンレス鋼またはプラスチックのチューブ内へ加圧下で導入される。この結果、吸着剤の土台がカラムのおおいと密接に接触し、そして、粒子は、カラムの断面全体に渡って均一に分布する。
【0003】
たとえば、WO94/19 687とWO95/03 256中に開示されるように、粒状の吸着剤が、モノリシックな吸着剤によって置き換えられる場合、液密で圧力の安定したやり方で吸着剤の被覆を密封する上で問題が生じる。無機または有機の成形体は、それらの生産の間に収縮する可能性があり、それはそれらがしばしば原形を留めないことを意味する。それらは、それ故、典型的に新たな液密で圧力の安定な被覆を供される。この方法でのみ、サンプルおよび溶出剤が吸着剤だけを通って運搬されることが保証される。
【0004】
それ故、現在は、シリカゲルベースの商業的に入手可能なモノリシックHPLCカラムは、HPLC用カラムを通る移動相を注ぎ込むことを可能とするために、通常、機械的に安定であり耐溶媒性であるポリマーで覆われている多孔質シリカケルロッドからなる。
【0005】
この方法で生産されるモノリシックHPLCカラムの不利な点は、その圧力安定性に関する制限である。有機ポリマー被覆は極端に高い圧力に負けるため、カラムは、対応する溶離システムおよび流速によって、200バールの最大カラム背圧まででのみ操作することができる。
【0006】
HPLC用のモノリシックカラムの質は、たとえば、一方では分離効率(N/m)によって、そして他方では、ピークの対称性によって記述され得る。良好な分析カラムは、約70,000−100,000N/mの分離効率を有する。理想的な場合、ピーク形状は、ガウス曲線に対応する。この対称形状からの逸脱は、「フロンティング」または「テーリング」の結果となる。カラム本体の固有の分離効率およびピーク対称性は、クロマトグラフィー使用試験における、溶媒緊密化(すなわち、最小のデッドスペースとなる)のための被覆終了後は、それ以上変化するべきではない。
【0007】
不適切な被覆の場合、該被覆は、カラム本体に最低限のデッドスペースで密接に接触しない。カラムは、カラム本体/被覆界面でのサンプルのより速い通過の結果として、最初から前ピークまたは少なくとも「ピークフロンティング」を呈する。
不適切なポリマーでの被覆はまた、最初のクロマトグラフィーの試験においては良好な分離効率およびピーク対称性を与え得ても、さらなる使用において2つの品質パラメータの変化/悪化の結果となり得る。カラム背圧があまりに高い場合、原則として適切であるポリマーでの被覆も、これらの効果を呈し得る。
【0008】
対照的に、粒状の吸着剤を含有している従来のHPLCカラムは、顕著により圧力安定的である。それらは通常ステンレス鋼チューブから成り、高圧(>500バール)を使用して、その中にシリカゲル粒子の懸濁液導入する。これらのカラムは、通常約400バールまで圧力安定的である。UHPLC(超高速液体クロマトグラフィ)のためのより最近のHPLCカラムは、同様に適切なステンレス鋼チューブから成り、シリカゲル懸濁液はさらにより高い圧力でその中に導入される。粒状カラムの高圧安定性の理由は、特にステンレス鋼カラムチューブである。
【0009】
それ故、モノリシックな吸着剤の被覆として、ステンレス鋼チューブを用いることが可能であることも望ましい。
S. Miyazaki et al, J.Chromatogr. 2011, 1218, pp. 1988-1994において、シリカゲルを含むモノリシックなカラムが、ステンレス鋼チューブに導入されている。このために、モノリスを最初にポリマーチューブ(たとえばテフロン(登録商標)収縮チューブ)で囲んでいる。続いて、この方法で被覆されたモノリスをステンレス鋼チューブに導入し、そして、ポリマーで覆われたモノリスとステンレス鋼チューブとの間の空間を液状プラスチック(エポキシ樹脂)で満たし、続けてその後硬化させる。
【0010】
これらのカラムの生産のためのプロセスは、きわめて複雑である。加えて、両方のプラスチック中間層は可撓性で、圧力の適用に負けるので、これらのカラムが、圧力安定性の増加という結果にならないことが見出された。
【0011】
モノリシックな吸着剤がステンレス鋼チューブの中で直接重合される、ステンレス鋼被覆を有するモノリシックなカラムもまた公知である(たとえば、J. Zhong et al. J.Chromatogr. 2014, 1333, pp. 79-86またはF. Yang et al, Anal. Bioanal. Chem. 2013, 405, pp. 6639-6648中に記載されている)。これらのカラムの不利な点は、ステンレス鋼チューブ中のポリマーネットワークが、吸着剤の生産の間、収縮するということである。これは、モノリス/ステンレス鋼チューブ界面のデッドスペースという結果となり、それは分離効率を低減させる結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に従ってステンレス鋼チューブで直接被覆されたモノリシックなシリカゲル吸着剤を示す。吸着剤と被覆との間には、ポリマー中間層および空洞がない。
【
図2】
図2は、金属チューブに直接覆われ、寸法100×3mmの、RP18でin situで誘導体化されたモノリシックなシリカゲル吸着剤でのクロマトグラフィーによって生産されたクロマトグラムを示す。更なる詳細は、例1に見いだすことができる。
【0021】
【
図3】
図3は、金属チューブに直接覆われ、寸法150×3mmの、C18e修飾を有するモノリシックなシリカゲル吸着剤でのクロマトグラフィーによって生産されたクロマトグラムを示す。更なる詳細は、例2に見いだすことができる。
【
図4】
図4は、金属チューブによって直接覆われ、寸法150×3mmの、C18e修飾を有するモノリシックなシリカゲル吸着剤でのクロマトグラフィーによって生産されたさらなるクロマトグラムを示す。更なる詳細は、例3に見いだすことができる。
【0022】
【
図5】
図5は、寸法100×3mmの、RP18修飾を有するシリカゲルモノリスで、圧力安定性の検査を実行するためのフローチャートを示す。
【
図6】
図6A〜Eは、関連するクロマトグラムを示す。更なる詳細は、例4に見いだすことができる。
【0023】
本発明の最低限のデッドスペースを有する被覆は、それがクロマトグラフィーカラムの分離効率に対する悪影響を引き起こさないほど、吸着剤としてのモノリシックな成形体と被覆との間のデッドスペースまたは空洞が小さいことを意味する。
【0024】
本発明のクロマトグラフィーカラムは、少なくとも吸着剤および被覆からなる。一般に、クロマトグラフィーカラムは、追加として、シールおよび/またはフィルターならびにサンプルおよび溶出剤の供給のための連結を有する。クロマトグラフィーカラムは、対応する連結によって直接提供されるか、またはカートリッジシステムに挿入されることができる。
クロマトグラフィーカラムおよびそれらの使用は、当業者に公知である。
【0025】
冷間成形(低温加工とも)は、金属加工の当業者に公知である。それは、金属チューブを高温の作用なしで形づくるプロセスに関与する。これらのプロセスにおける形成の間の温度は、一般に100℃未満、典型的には室温である。冷間成形の例は、引抜、ピルガー圧延(pilgering)、および回転式スエージングである。すべての冷間成形プロセスに共通する特徴は、少なくともチューブの内径を変化させる、特に減少させることができるということである。典型的には、外径および場合により金属チューブの壁厚も同時に変化する。
【0026】
引抜(冷間引抜とも呼ばれる)は、金属チューブを、該チューブより小さい金型を通して、引き抜くプロセスである。これを促進するために、チューブを、一方をわずかに先細りさせるか、または、金型にフィットするように機械加工する。続いて、引抜台の上で、金型を通して引き抜く。マンドレルなしで働く、および、チューブの内径を定義するマンドレルまたは心棒ありで働く冷間引抜プロセスは公知である。本発明のプロセスは、マンドレルなしで実行される。
【0027】
ピルガー圧延またはチューブ狭小化は、外径、内径、および壁厚を典型的に収縮する。ピルガー圧延は、ピルガー式ローラー(pilgering roll)を用いて実行される。適切な器具は、例えば、ほぼ円錐形に先細りの間隙を有する2つのローラージョー付きの枠を有する。ローラージョーは、チューブを転がって延ばすことができ、よって通り抜けるチューブの外径、壁厚および内径も収縮することできる。加えて、チューブまたはロールは、通過の間たびたび回転し、その結果、正確な円形のチューブ断面が生産される。
【0028】
回転式スエージング(回転式ハンマリングとも呼ばれる)は、チューブ、ロッド、および他の回転対称なワークピースの非切断成形のための正確なプロセスである。
【0029】
回転式スエージングプロセスは、固体ロッドまたはチューブの断面が力の作用によって収縮される冷間成形プロセスである。
それは、ネットシェイプ成形プロセスの領域に帰属し、成形されたワークピースの最終的な輪郭が、切断によらず、または、ほんのわずかの切断によって達成されるという事実により区別される。回転式スエージングにおいて、成形金型(スウェージングジョー)は、ワークピースの周りに同心円状に配置される。
成形金型は、短いストロークで高頻度で振動し、よって取り巻いているワークピース上に放射状の圧力を発揮し、よって、処理されたワークピースに小さい断面を与える。ほとんどの場合、金型セットは、2または4つのスエージングジョーからなる。適用に応じて、2〜8つのジョーを用いることも可能である。
【0030】
本発明の意味におけるモノリシックな吸着剤は、柱状または円柱状の成形体の形の、無機、有機、または無機/有機ハイブリッド材料である。それらは、単一の、好ましくは均一な成形体からなる。好適な材料の例は、任意に対相応に官能化されたポリマー(たとえばポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ビニルポリマーまたはポリスチレン/ジビニルベンゼンコポリマー)または、シリカゲル、シリケート、金属酸化物(たとえば酸化アルミニウム)、水酸化鉄、ヒドロキシルアパタイトまたはガラスあるいはまた、他の酸化物(たとえば、ZrO
2)を含有する二酸化ケイ素を含む複合材料である。
【0031】
さらにその上、無機/有機ハイブリッド材料が、好適である。これらは、たとえば、一方では調製するためのモノマーゾルが、アルコキシシランだけでなく、オルガノアルコキシシラン(すなわち典型的には少なくとも10%、好ましくは20〜100%のオルガノアルコキシシラン)も含む有機/無機のコポリマーまたはシリカハイブリッド材料であり得る。特に好適なのは、シリカゲルまたはシリカハイブリッド材料である。これらは好ましくは、ゾル−ゲルプロセスによってアルコキシシランから調製される。
【0032】
好適なアルコキシシランは、テトラアルコキシシラン(RO)
4Siであり、Rが、典型的にはアルキル、アルケニル、またはアリール基(C1〜C20のアルキル、C2〜C20のアルケニル、またはC5〜C20のアリール、好ましくはC1〜C8のアルキル基など)である。特に好適なのは、テトラエトキシ−および特にテトラメトキシシランである。テトラアルコキシシランは、異なるアルキル基を等量含有してもよい。アルコキシシランは、それらのモノマー型のかわりに予備重合型、たとえばオリゴマーで用いられ得る。
【0033】
別の態様において、オルガノアルコキシシランまたはオルガノアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの混合物を、アルコキシシランまたは2つ以上のアルコキシシランの混合物の代わりに用いることができる。好適なオルガノアルコキシシランは、テトラアルコキシシランの1〜3つ、好ましくは1つのアルコキシ基が、有機基(好ましくはC1〜C20のアルキル、C2〜C20のアルケニル、またはC5〜C20のアリール)と置き換えられたものである。更なるオルガノアルコキシシランは、たとえば、WO03/014450またはUS4,017,528中に開示されている。アルコキシシランおよびオルガノアルコキシシランは、モノマー型のかわりに予備重合型、たとえばオリゴマーで用いられ得る。
【0034】
テトラアルコキシシランおよびオルガノアルコキシシランは、典型的には有機溶媒(たとえばトルエンまたはエタノールなど)中の2〜25%、好ましくは5〜10%(重量%)溶液の形で用いられる。WO95/03256およびとくにWO98/29350は、ゾル−ゲルプロセスによる、無機のモノリシックな成形体の生産のための発明に従って、好ましいプロセスを開示する。
【0035】
さらにその上、本発明の意味におけるモノリシックな吸着剤は、3Dプリンティング(特に圧力および溶媒に安定な熱可塑性プラスチックを含むもの)によって生産されるモノリシックな吸着剤である。
好ましい態様において、熱可塑性プラスチックポリマーは、ポリエーテルイミド、ポリアリラート、ポリエーテルケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンソイミダゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルスルホン、またはポリオキシメチレン、ならびにこれらの材料の2つ以上の混合物の群から選択される。
【0036】
好ましい態様において、熱可塑性プラスチックポリマーは、150℃より上に融点を有する。
特に好ましい態様において、熱可塑性プラスチックポリマーは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)またはPPS(ポリフェニレンスルフィド)である。
【0037】
更なる好ましい態様において、熱可塑性ポリマーは、添加剤、たとえば、繊維材料、無機の材料または顔料(たとえばチョーク、タルク、マイカなど)、または無機の酸化物(二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)、シリコンカーバイド、グラスまたはカーボンファイバー、好ましくは二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはシリコンカーバイド、またはそれらの混合物、とくに好ましくは二酸化ケイ素などを含む。
【0038】
モノリシックな吸着剤(多孔性成形体または成形体とも呼ばれる)は、柱状、すなわち円柱状である。典型的な直径は、0.5mmと10cmの間、好ましくは1mmと5cmとの間である。典型的な長さは、1cmと50cmとの間、好ましくは2.5cmと25cmとの間である。
【0039】
本発明によれば、モノリシックな吸着剤は、モノモーダル、バイモーダル、またはオリゴモーダルの孔構造を有する。それらは好ましくは、通過流孔として働く少なくとも0.1μm超の直径を有するマクロ孔を有する。マクロ孔は典型的には、0.1と10,000μmとの間、好ましくは0.5と1000μmとの間の直径を有する。好ましい態様において、成形体は、バイモーダルまたはオリゴモーダルの孔分布を有し、マクロ孔に加えて、たとえば2と500nmとの間、好ましくは5と100nmとの間の孔直径を有するメソ孔が存在する。特に好ましい態様において、メソ孔は、マクロ孔の壁の中に存在し、これにより成形体の表面積を増大させる。
【0040】
好ましいモノリシックな吸着剤は、約0.2〜5μmのマクロ孔直径を有するスルーフロー孔としてのマクロ孔およびマクロ孔の壁の中の約4〜50nmの直径を有するメソ孔による、バイモーダルの孔システムを有する。
【0041】
スルーフロー孔は、たとえば液体または気体が成形体を通してスルーフロー可能な孔または流路である。液体はあるところから成形体に入ることができ、他のところから再び出ることができる。柱状成形体の場合、液体は、好ましくはカラムの一端から入り、他端から出る。したがって、成形体の表面に切り込みの形でのみ存在する孔は、通過流孔ではない。
【0042】
マクロ孔の直径は、水銀多孔度によって典型的には測定され、一方で、メソ孔の直径は、BET法による窒素の吸着/脱着によって決定される。
【0043】
本発明で用いられる成形体の総孔容積は、典型的には0.1ml/gと10ml/gとの間、好ましくは1ml/gと8ml/gとの間である。本発明で用いられる成形体の表面積は、典型的に1m
2/gと1000m
2/gとの間、好ましくは5m
2/gと500m
2/gとの間である。
【0044】
モノリシックな吸着剤のための被覆は、以下の特性をすべて、理想的には満たすべきである:
−クロマトグラフィーで慣習的な溶媒、たとえば、アセトニトリル、MeOH、水、ジオキサン、ヘプタンなどの
溶媒に安定である(移動相は、1以上のこれらの成分からなるため)
。
−比較的高い流速で、問題なくより速くクロマトグラフィー可能なように、
機械的に安定である。比較的高い流速では、カラムの中で背圧が高まる。被覆は、400バールまでの背圧で、その外形も変化してはならない。
【0045】
−金属/カラム本体界面の無制御溶出剤流による分離効率の損失および物質ピークのフロンティングまたは前ピークを防止するために、
最低限のデッドスペースでのモノリシックなカラム本体との接触。
−被覆のミクロ孔での無制御拡散プロセスにより、物質ピークの不利なテーリングを防ぐために、
孔フリーである。
【0046】
予想外に、金属加工(冷間成形)から公知のプロセスが、金属チューブでのモノリシックな吸着剤の被覆のために適切であることが見いだされた。シリカゲルを含むきわめて強固でもろい成形体でさえ、冷間成形によって被覆可能であることが見いだされた。モノリシックな吸着剤は、冷間成形の間、破損しない。それどころか、均一でまっすぐな被覆形成体は、最低限のデッドスペースで吸着剤と接触する。公知のプロセスとは対照的に、本発明のプロセスでは、中間層は吸着剤と金属被覆の間に存在しない。
【0047】
本発明のプロセスのために、柱状のモノリシックな吸着剤および金属チューブが提供される。吸着剤を金属チューブに押し込むことができるために、チューブは吸着剤の直径より大きい内径を有しなければならない。金属チューブは、典型的には、モノリシックな吸着剤の外径より0.05〜2mm大きい内径を有する。押し込んだ後に吸着剤と金属チューブの間に大きい間隙が形成されないために、金属チューブの内径およびモノリシックな吸着剤の直径は、好ましくは可能な限り類似している。金属チューブの内径は、好ましくは0.05と1mmとの間、とくに好ましくは0.1と0.25mmとの間だけ、モノリシックな吸着剤の直径より大きい。
【0048】
金属チューブは、モノリシックな吸着剤より、長く、等しく、または短くあり得る。
より長い場合、切り離されるか、または、典型的には接続、シーリング、またはフリットシステムが両側の突出部に後から導入され得る。より短い場合、突出した吸着剤は、被覆の後に両側を切り離され、その結果、それは金属チューブと平坦な末端となる。
【0049】
吸着剤は、好ましくは被覆と平坦な末端となる。それにより、この方法で生産されるカラムは、カートリッジとして直接使用されることができる。たとえば、この目的のために提供されたチューブに配置され、そしてフィットする末端ピースを有するチューブに固定されることができる。標準末端ピースにねじ込むことができるように、適切なスレッドカッターを使用するスレッドの設定も可能である。さらにその上、HPLCシステムへの接続のために、ねじ接続、たとえばManuCART(登録商標)ねじ接続を使用するために、チューブの中にねじ溝を設定することもまた可能である。当業者は、クロマトグラフィーカラム用の様々な接続システムに精通している。
【0050】
好適な金属チューブ,好ましくはステンレス鋼チューブは、好ましくは1mm〜7.5mmの壁厚を有する。2mmと3mmとの間、特に2.5mmの壁厚が、とくに好ましい。
金属チューブは、たとえば、ステンレス鋼、鋼、またはチタンからなることができる。ステンレス鋼チューブが好ましい。適切なステンレス鋼のグレードは、1.4435、1.4441、および1.4401である。
【0051】
モノリシックな吸着剤は、金属チューブの中へ導入される。
金属チューブへのモノリシックな吸着剤の導入の後、モノリシックな吸着剤上で金属チューブの冷間成形が実行される。
適切な冷間成形プロセスは、ピルガー圧延、引抜加工、または回転式スエージングである。冷間成形は、好ましくは回転式スエージングによって実行される。
【0052】
回転式スエージングは、好ましくは、多数のパスで実行され、スエージングは、典型的には、連続的にそしてチューブの一方から他方まで実行される。この目的で、好ましくは、2つのハンマリングジョーおよび10〜16のロール、とくに好ましくは12のロールを有するハンマリングツールが用いられる。このハンマリングヘッドの寸法は、好ましくは2mmと20mmとの間、とくに好ましくは約10mmである。回転の速度は、好ましくは500min
−1と1500min
−1との間、とくに好ましくは1000min
−1である。
【0053】
金属チューブが、最低限のデッドスペースを有する十分に密着したやり方で、吸着剤と接触しているかどうかをチェックすることが望ましい場合、これは、たとえば、クロマトグラフィーでの分離を参照してなされることができる。得られたクロマトグラムを参照すると、当業者は、分離の質が充分かどうか、または、欠陥が、吸着剤と被覆との間のデッドスペースによって引き起こされて発生するかどうかを決定することが可能である。
【0054】
前記方法ほど正確でない代わりの試験は、耐圧試験である。この目的で、カラムの背圧は、溶媒の適用について測定される。当業者は、対応する吸着剤に関して予想されるべき背圧に精通している。これらが予想通りの高さでない場合、これは吸着剤と被覆との間のデッドスペースの徴候である。冷間成形は、提案された使用のために、十分に小さいデッドスペースを有する被覆が得られるまで実行される。
【0055】
本発明のプロセスは、クロマトグラフィーの目的のための吸着剤として用いられるように、有機および無機の成形体、または無機/有機ハイブリッドの成形体をも被覆するために使用されることができる。該プロセスは、室温で実行されることができるので、とくに穏やかである。有機のポリマーによる被覆は、比較的高い温度でしばしば実行され、ゆえにたとえば、温度感受性分離エフェクターが破壊される可能性がある一方で、この危険が本発明に従うプロセスの場合は存在しない。後述するように、モノリシックな吸着剤は、被覆の間に分離エフェクターが破壊される危険を伴わず、被覆の前でさえ分離エフェクターによって官能化されてもよい。
【0056】
少なくとも2つの物質のクロマトグラフィーによる分離に関する使用のために、本発明の被覆されたモノリシックな吸着剤を、好ましくは、溶媒供給および放出のための、および任意にフィルター、シールなどのための接続システムとともに提供される。
この目的で、被覆された吸着剤は、対応する接続を有するカートリッジシステムに配置するか、または直接接続されることができる。このタイプの構造は、粒状であるかモノリシックな吸着剤を含有しているクロマトグラフィーカラムに関する当業者に、公知である。
【0057】
クロマトグラフィーによる分離のために、成形体は、通常は被覆の前または被覆の後に、分離エフェクターで官能化される。吸着剤の官能化は、一定の官能基の導入によって、一定の分離特性の調整のために役に立つ。更なる官能基の導入のために役に立つこともできる官能基は、OH基である。分離特性に影響する好適な官能基(分離エフェクターと呼ばれる)は、当業者に公知である。
【0058】
例としては、イオン交換クロマトグラフィーのためのイオン基、または逆相クロマトグラフィーのための疎水基である。適切な誘導体化プロセスおよび適切な分離エフェクターは、当業者に公知であり、Packings and Stationary Phases in Chromatographic Techniques(K.K: Unger ed.; Marcel Dekker, New York and Basle (1990))またはPorous Silica (K.K. Unger ed.; Elsevier, Amsterdam, Oxford, New York (1979))などのマニュアル中に記載されている。
【0059】
好ましい分離エフェクターは、以下である;
−アミノ基
−アミノ官能基
−アルキル基、特にC8およびC18の基
−ジオール
−シアノ
−フェニル
−陽イオン交換体、たとえばSO
32−など
−アニオン交換体
【0060】
分離エフェクターは、本発明の被覆の前か後に適用され得る。分離エフェクターは、好ましくは、被覆の前に適用される。金属チューブによる被覆は室温で行われるため、たとえば有機ポリマーによる被覆の場合には、高温で適用されるのでよくあるが、分離エフェクターが被覆との界面で燃えつくされることがないので、これは問題なく可能である、
【0061】
本発明により覆われたモノリシックな吸着剤は、優れた分離特性を呈する。溶媒中での貯蔵および様々な圧力での頻繁な使用の後でさえ、分離効率の悪化は明らかでない。本発明により覆われる吸着剤は、500バールまでまたはそれを超えてさえ、好ましくは50と400バールとの間の溶媒圧で用いられることができる。このように、本発明による被覆は、機械的に、そして、化学的にとくに安定で、更に最低限のデッドスペースでモノリシックな成形体と接触している被覆を有するモノリシックなクロマトグラフィーカラムの生産を初めて保証する。
【0062】
吸着剤と被覆との間のポリマー中間層は要求されない。被覆が、結果として生産のあとにモノリシックな吸着剤に適用されるという事実は、生産の間の吸着剤の収縮が、役割を果たさないことを意味する。本発明によって生産されるクロマトグラフィーカラムは、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)およびUHPLC(超圧液体クロマトグラフィー)プロセスのために用いることができる。
【0063】
更なるコメントがなくても、当業者は、最も幅広い範囲で、上記の記載を利用することが可能であろうと仮定される。好ましい態様および例は、したがって、どんな形であれ、まったく限定しない単なる描写的な開示としてみなされなければならない。
上記および下記に引用されるすべての出願、特許、および公開、および対応する2015年11月25日に出願されたEP 15196322.0出願の完全に開示された内容は、参照として本出願に組み込まれる。
【0064】
例
例1
寸法150×3mmのシリカゲルモノリスは、WO98/29350およびEP 1843155に開示されるように、ゾル−ゲルプロセスによって生産された。得られたモノリスは、約1−2μmのマクロ孔寸法および13−15nmのメソ孔を有するバイモーダル孔システムを有する。モノリスは、続いて、中間層の更なる適用または金属チューブの前処理なく、正確にフィットする金属チューブに配置され、「回転式スエージング」用の適切な装置に締着される。
【0065】
ステンレス鋼チューブは、続いて金属チューブが界面でデッドスペースなくモノリスと直接接触するまで、同時の回転を伴う複数の作業ステップのなかで、シリカゲルモノリス上で、放射状に「スエージング加工される」。この方法で覆われるモノリスは、末端で短かくされ、スレッドと末端のフィッティングがない寸法100×3mmのカートリッジの形となる(
図1を参照)。
【0066】
この方法で覆われるモノリスは、続いて適切なホルダーに固定される。該金属ホルダーは、それぞれの末端で、スレッドによって提供される金属チューブからなる。金属被覆されたモノリスカートリッジは、チューブの中に設置され、2つのスレッド上で回転する2つの末端ピースによって外側から固定される。最終的なシーリングのために、溶出剤がポンピング通過の間に逃げることができないように、ホルダーチューブ上にねじ込まれるときにカートリッジをシールする金属リングを有する金属フリットが、末端のフィットに配置される。
【0067】
表面修飾のために、金属被覆されたカートリッジは、金属ホルダーの中に固定され、J.Chromatogr.1130(2006) 175-181に記載されているように、C18シランによってその位置で誘導体化される。この目的で、シリカゲルモノリスは、最初に1ml/分で2時間、スルーフロー中のACNおよび乾燥トルエンによって洗浄される。ACNのオクタデシルジメチル−N、N−ジエチルアミノシランの20%(v/v)溶液は、その後遅い流速(約0.1ml/分)で5時間、カラムをポンプ通過される。この手順の間、カラムは60℃のオーブン中に置かれ、そして、シラン溶液の予備加熱のために、60cmの長さのキャピラリー(オーブン中に同様に置かれる)が、カラムの最上部に接続している。
【0068】
この方法で生産されるカラムは、適切なHPLCシステムに固定され、ACN/水(60/40;v/v)によるクロマトグラフィーによって、分離効率およびピーク対称性を試験される。
HPLC条件:
溶出剤:ACN/水60/40
流速:0.85ml/分
検出:UV 254nm
温度:室温
注入容量:1.0μl
サンプル:チオ尿素 2.1mg
ビフェニル−2−オール 5.4mg
プロゲステロン 11.6mg
ヘキサノフェノン 12.3mg
アントラセン 100ml中に1.8mg溶解
【0069】
得られたクロマトグラムは、
図2に示される。
カラムは、ベースラインの5つの物質の分離を示す;アントラセン(5番のピーク)は、1N/m:96.110およびTusp:1.3のピーク対称性(わずかなテーリング)を示す。二重ピークまたはフロンティング(モノリスと金属チューブとの間のデッドスペースの徴候を与えうる)は、観察されない。
【0070】
例2
寸法150×3mmのシリカゲルモノリスは、1)に記載されるゾル−ゲルプロセスによって生産された。その後5時間、還流下で、トルエン中オクタデシルジメチル−N,N−ジエチルアミノシランの20%溶液中で、誘導体化する。モノリスを、続いてn−ヘプタン中で洗浄され、乾燥する。モノリスを、その後60℃で2.5時間、ACN中トリメチルシリルイミダゾール(TMSI)の20%溶液中で末端にふたをされ、ACN中で洗浄される。
【0071】
C18eとして誘導体化されたモノリスは、続いて1)のように、金属チューブで直接覆われ、そして、HPLCユニットによってホルダー中でクロマトグラフィー試験のために試験される。
HPLC条件:
溶出剤:ACN/水60/40
流速:0.85ml/分
検出 UV 254nm
温度 室温
注入容量:1.0μl
サンプル:チオ尿素 2.1mg
ビフェニル−2−オール 5.4mg
プロゲステロン 11.6mg
ヘキサノフェノン 12.3mg
アントラセン 100ml中に1.8mg溶解
【0072】
得られたクロマトグラムは、
図3に示される。以下の表は、追加として数値的に結果を再現する:
【表1】
【0073】
アントラセンは、62.630N/mの分離効率および1.28Tuspのピーク対称性で、クロマトグラフィーで分離される。被覆が冷却状態で実行されるので、モノリスのエッジ領域のC18−シランの燃え尽き(高温、たとえば、約400℃などでモノリスに適用されるプラスチック被覆の場合に通常観察されるように)は、生じない。本発明によるプロセスは、それ故更なる後処理もなく、モノリスが、C18e誘導体としての金属チューブによって覆われることを可能にする。
【0074】
例3
2)で記載されるように、更なる寸法150×3mmのシリカゲルモノリスは、ゾル−ゲルプロセスおよびC18e誘導体化によって生産され、そして、金属チューブで被覆された。
1)で記載されるように、C18eとして誘導体化されたモノリスは、続いてクロマトグラフィーによって試験される。
HPLC条件:
溶出剤:ACN/水60/40
流速:0.85ml/分
検出 UV 254nm
温度 室温
注入容量:1.0μl
資料:チオ尿素 2.1mg
ビフェニル−2−オール 5.4mg
プロゲステロン 11.6mg
ヘキサノフェノン 12.3mg
アントラセン 100ml中に1.8mg溶解
【0075】
得られたクロマトグラムは、
図4に示される。以下の表は、追加として数値的に結果を再現する:
【表2】
アントラセンは、72.010N/mの分離効率および1.50Tuspのピーク対称性で、クロマトグラフで分離される。
二重ピークまたはフロンティング(金属チューブとモノリスとの間のデッドスペースを指す)は、観察されない。
【0076】
例4
1)で記載されるように、寸法100×3mmのシリカゲルモノリスが生産され、そして、圧力安定性に関して試験される。
この目的で、金属カートリッジは金属ホルダーに置かれ、HPLCシステムに接続している。クロマトグラフィーは、続いて0.85ml/分の流速および結果として生じた50バールのカラム背圧によって実行され、そして、実績データは記録される。
【0077】
流速は、その後1.7ml/分までと2倍になり、それは、カラム背圧を2倍にする(100バール)結果となる。流速は、続いてそれぞれの場合において3.4ml/分および6.8ml/分と、さらに二度2倍になる。これらの条件の下で、結果として生じたカラム背圧は、それぞれ195バールおよび326バールである。後の条件の下で、背圧は、約400バールであるべきだった。金属ホルダーのネジジョイントでの小さいリークが、おそらく圧力降下につながった。0.85ml/分の流速を伴う開始条件の下でのその後の再試験は、最初と同等の実績値を与え、それは、カラムが、これらの条件の下で安定であるという結論を許す。
【0078】
上記のクロマトグラフィースキームは、
図5中のフローチャートとして、再び示される。
図6A〜Eは、それぞれの工程において得られたクロマトグラムを示す。このAは、50バールで得られたクロマトグラムを示し、Bは、100バールその他で得られたクロマトグラムを示す。クロマトグラムEは、50バールで再び実行される再試験を示す。