(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する顔料は、公知慣用の有機顔料の中から選ばれる少なくとも一種の顔料である。また、本発明は未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。具体的には、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などを使用することができる。
【0014】
具体的なピグメントナンバーとしては、イエロー水性顔料分散体に使用される有機顔料の具体例として、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0015】
またマゼンタ水性顔料分散体に使用される有機顔料の具体例として、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、等が挙げられる。
【0016】
またシアン水性顔料分散体に使用される有機顔料の具体例として、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0017】
前記処理顔料としては、いわゆる自己分散型顔料も含まれる。自己分散型顔料は、例えば、顔料に物理的処理または化学的処理を施すことで、親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記自己分散型顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散あるいは溶解することが可能な顔料を意味する。ここで「分散剤なしに水性媒体中に分散あるいは溶解」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態を意味する。ここで、「水性媒体中に安定に存在」とは、分散剤なしに水中(25℃、固形分10質量%)で、90日間安定(顔料の粒径変化幅が+/−30質量%以内)であることを意味する。
前記親水基は、−OM、−COOM、−SO
3M、−SO
2M、−SO
2NH
2、−RSO
2M、−PO
3HM、−PO
3M
2、−SO
2NHCOR、−NH
3、及び−NR
3からなる群から選択される一以上の親水基、すなわちアニオン性親水性官能基であることが好ましい。なお、これらの式中のMは互いに独立して、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、又は有機アンモニウムを表す。また、これらの式中のRは互いに独立して、炭素原子数1〜12のアルキル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
【0018】
前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「CAB−O−JET250C」、「CAB−O−JET260M」、「CAB−O−JET270Y」、「CAB−O−JET450C」、「CAB−O−JET465M」及び「CAB−O−JET470Y」;等があげられる。また、市販品として、自己分散型顔料を水性媒体に分散させた顔料分散液を用いることもできる。例えば、米国センシエントカラーズ社製の「Sensijet Ultra Yellow PY74」、「Sensijet Ultra Magenta PR122」、「Sensijet Ultra Cyan PB15:4」;等があげられる。
これらの自己分散型顔料は1種単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
前記顔料は、市販品をそのまま使用してもよいし、合成して使用してもよい。また、必要に応じてアシッドペースティングやソルベントソルトミリング、ドライミリング等の方法により顔料化を行い、所望の粒子径に調整してから使用してもよい。また、使用する顔料の状態は、乾燥状態で使用しても、水性媒体や添加剤、湿潤剤を含んだウェット状態で使用してもよいが、本発明の水性顔料分散体製造時において、より十分な分散性を得るためには、ウェット状態の顔料を使用するのがより好ましい(以下ウエット顔料と称する場合がある。また乾燥状態の顔料をドライ顔料と称する場合がある。)。ウェット顔料の固形分比率は、ドライ顔料分に換算して20〜60質量%の範囲が好ましく、30〜50質量%の範囲がより好ましい。20質量%以上であれば、本発明で得た水性顔料分散体を使用してインクを製造する際、インク原料となる水溶性溶媒や湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤の添加量が制限される恐れがなく、また60質量%以下であれば、本発明の水性顔料分散体の製造方法において十分な分散性を得ることができる。
【0020】
顔料の粒経は1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm〜200nmの粒子からなる顔料を、さらに好ましくは50nm〜150nmの粒子からなる顔料が好ましい。 粒子径がこの範囲にあれば、顔料の沈降が発生しにくく、顔料分散性が良好となる。粒子径の測定は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定した値を採用することができる。
【0021】
(アニオン性基を含有する樹脂)
本発明で使用するアニオン性基を含有する樹脂は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基または燐酸基を含有する、有機高分子化合物が挙げられる。この様なアニオン性基含有有機高分子化合物としては、例えばアニオン性基を有するポリビニル系樹脂、アニオン性基を有するポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するアミノ系樹脂、アニオン性基を有するアクリル系樹脂、アニオン性基を有するエポキシ系樹脂、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂、アニオン性基を有するポリエーテル系樹脂、アニオン性基を有するポリアミド系樹脂、アニオン性基を有する不飽和ポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するフェノール系樹脂、アニオン性基を有するシリコーン系樹脂、アニオン性基を有するフッ素系高分子化合物、アニオン性基を有する多糖類誘導体等が挙げられる。
中でもアニオン性基を有するアクリル系樹脂やアニオン性基を有するポリウレタン樹脂は、原料が豊富であり設計が容易であること、顔料分散機能に優れることから好ましく、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂は、耐擦過性能に優れることからより好ましい。
【0022】
(アニオン性基を含有するポリウレタン樹脂)
本発明で使用するアニオン性基を含有するポリウレタン樹脂は、主鎖単独でポリウレタン構造をとるものと、主鎖としてのポリウレタン構造の側鎖にビニル重合体構造がグラフトしたものに大別することが出来る。主鎖単独でポリウレタン構造をとるポリウレタン樹脂は(以下リニア型ポリウレタン樹脂と略記する)、具体的には、カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性基を含有するポリオールとポリイソシアネート、さらに必要に応じて汎用のアニオン性基を含有しないポリオールや鎖伸長剤を反応させて得たポリウレタン樹脂があげられる。主鎖としてのポリウレタン構造の側鎖にビニル重合体構造がグラフトしたポリウレタン樹脂は(以下グラフト型ポリウレタン樹脂と略記する)、具体的には、片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールとを含有するポリオール、ポリイソシアネート、ならびに、必要に応じて鎖伸長剤を反応させて得たポリウレタン樹脂があげられる。
【0023】
(リニア型ポリウレタン樹脂の製造)
本発明で使用するリニア型ポリウレタン樹脂の製造におけるカルボキシ基を含有するポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多塩基酸無水物との反応によって得られるエステル、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。好ましい化合物としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が挙げられる。中でも、ジメチロールプロピオン酸、又はジメチロールブタン酸の入手が容易であり好ましい。
また、スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0024】
本発明で使用するリニア型ポリウレタン樹脂の製造におけるジイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネー卜化合物、イソホロンジイソシアネー卜、水添キシリレンジイソシアネート、4,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネー卜化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネー卜等の芳香脂肪族ジイソシアネー卜化合物、トルイレンジイソシアネー卜、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネー卜が挙げられる。
中でも、印字画像の耐光変色が起こり難い点では、脂肪族ジイソシアネート化合物または脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0025】
また、汎用のアニオン性基を有さないポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミドおよびポリヒドロキシポリチオエーテルが挙げられる。中でも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリヒドロキシポリカーボネートが好ましい。これらのポリオールは1種のみを反応させてもよく、数種を混合して反応させてもよい。
また前記ポリオールのほか、印字物における皮膜硬度の調整等を目的として、低分子量のジオールを適宜併用しても良い。例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0026】
本発明で使用するリニア型ポリウレタン樹脂の製造における鎖伸長剤は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、キシリレングリコール等のジオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等のジアミン類の1種または2種以上を使用することができる。
【0027】
前記リニア型ポリウレタン樹脂は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させることでウレタン樹脂を製造する。次いで、前記塩基性化合物等を用いて中和することにより形成されたアニオン性基を有するウレタン樹脂を、水性媒体中に混合し水性化する際に、必要に応じて鎖伸長剤と混合し、反応させることによって製造することができる。
【0028】
前記ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、例えば、前記ポリオールが有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0029】
(グラフト型ポリウレタン樹脂の製造)
前記グラフト型ポリウレタン樹脂の製造に使用するポリイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂環式構造を有するポリイソシアネートを使用することができる。なかでも、黄変色を防止する観点では脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、前記変色防止とともに、耐擦過性や耐アルカリ性のより一層の向上を図る観点では、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0030】
前記グラフト型ポリウレタン樹脂の製造に使用する片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体としては、例えば2個の水酸基を有する連鎖移動剤の存在下で各種ビニル単量体を重合することによって得られるものを使用することができる。具体的には、2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤の存在下でビニル単量体のラジカル重合を行い、前記メルカプト基を起点として前記ビニル単量体が重合したものが挙げられる。
【0031】
また、前記片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体としては、例えばカルボキシル基及びメルカプト基を有する連鎖移動剤の存在下でビニル単量体のラジカル重合を行い、前記メルカプト基を起点として前記ビニル単量体が重合したものと、水酸基及びグリシジル基を有する化合物とを反応させることによって得られたものを使用することもできる。
【0032】
得られたビニル重合体は、前記連鎖移動剤由来の2個の水酸基を片末端に有するため、この2個の水酸基と後述するポリイソシアネートの有するイソシアネート基とを反応することによってウレタン結合を形成することができる。
【0033】
前記片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体としては、前記ポリイソシアネートと反応させる際の粘度制御を容易にし、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーの生産効率の向上やインクの吐出安定性の向上を図る観点から、500〜10000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
また、前記ビニル重合体としては、得られるグラフト型ポリウレタンに親水性基を付与し、保存安定性を付与する観点から親水性基含有ビニル重合体を使用することもできる。
【0034】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、前記ビニル重合体中に存在しうる親水性基としては、アニオン性基及びカチオン性基のいずれか一方または両方の組み合わせであることが好ましく、カチオン性基であることがより好ましい。
【0035】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、前記カルボキシル基やスルホン酸基の一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を付与するうえで好ましい。また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができ、前記ノニオン性基としては、例えばポリエチレンオキサイド鎖等を使用することができる。
【0036】
また、前記ビニル重合体は、前記ビニル重合体由来のビニル重合体構造を、主鎖としてのポリウレタンの側鎖に存在させる観点から、前記片末端の2個の水酸基以外の、他の水酸基を有さないものであることが好ましい。具体的には、前記ビニル重合体の製造に使用可能なビニル単量体として、水酸基含有ビニル単量体を使用しないことが好ましい。
【0037】
前記片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体の製造に使用可能な連鎖移動剤としては、例えば2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤や、カルボキシル基とメルカプト基とを有する連鎖移動剤等を使用することができる。なかでも、2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤を使用することが、製造が簡便であるため好ましい。
【0038】
前記2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤としては、例えば3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等を使用することができる。なかでも3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを使用することが、臭気が少なく作業性や安全性の点で優れ、かつ汎用であるため好ましい。
【0039】
また、前記ビニル重合体の製造に使用するビニル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸基または酸無水基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン等の窒素原子含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン;ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有ビニル重合体等を使用することができる。
【0040】
ビニル単量体としては、前記(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる1種以上を含むものを使用することが、前記連鎖移動剤との反応を制御しやすく、生産効率を向上できるため好ましい。
【0041】
前記2個の水酸基とメルカプト基を有する連鎖移動剤(E)と前記ビニル単量体(F)との重合反応は、例えば50℃〜100℃程度の温度に調整したトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤下、前記連鎖移動剤(E)と前記ビニル単量体(F)を一括または逐次供給し、ラジカル重合させることで進行することができる。これにより、連鎖移動剤(E)のメルカプト基等を起点として前記ビニル単量体(F)のラジカル重合が進行し、片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1)を製造することができる。前記方法で片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1)を製造する際には、必要に応じて従来知られる重合開始剤を使用しても良い。
【0042】
前記方法で得られる片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体は、前記グラフト型ポリウレタン樹脂の製造に使用する原料の合計質量に対して1質量%〜70質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%〜50質量%の範囲で使用することが、耐アルカリ性、耐水性に優れた印刷物を形成するうえで好ましい。なお、前記グラフト型ポリウレタン樹脂の製造に使用する原料とは、前記ビニル重合体や前記ポリオールや必要に応じて使用可能なその他のポリオールを含むポリオールと前記ポリイソシアネートの合計質量であり、更に鎖伸長剤を使用した場合には、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと鎖伸長剤との合計質量を示す。以下、同様である。
【0043】
前記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上を使用する。なかでも、インクの保存安定性や得られる印刷物の耐水性等を向上する観点から、ポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0044】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0045】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0046】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0047】
前記ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールを使用することが、インクの吐出安定性を向上するうえで好ましい。また、前記ポリエーテルポリオールとしては、1000〜3000の数平均分子量のものを使用することが、印刷表面のタック感を抑制し耐水性に優れた印刷物をえるうえでより好ましい。
【0048】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0049】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
【0050】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0051】
また、前記ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば前記開始剤に前記アルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールと、ポリカルボン酸とが反応したものを使用することができる。前記開始剤や前記アルキレンオキサイドとしては、前記ポリエーテルポリオールを製造する際に使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。また、前記ポリカルボン酸としては、前記ポリエステルポリオールを製造する際に使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。
【0052】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0053】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0054】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0055】
また、前記グラフト型ポリウレタン樹脂の製造に使用するポリオールとしては、前記したものの他に、必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0056】
前記その他のポリオールとしては、例えば親水性基含有ポリオールを使用することができる。とりわけ、前記ビニル重合体として親水性基を有さないものを使用する場合には、得られるグラフト型ポリウレタン樹脂に水分散性を付与し、保存安定性を得る観点から、前記親水性基含有ポリオールを使用することが好ましい。
【0057】
前記親水性基含有ポリオールとしては、親水性基を有するものを使用することができ、例えば、アニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができ、なかでもアニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましい。
【0058】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
【0059】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することもできる。
【0060】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
【0061】
前記グラフト型ポリウレタン樹脂は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下、前記片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールと、必要に応じて親水性基含有ポリオール等のその他のポリオールとを含有するポリオール、及び、前記ポリイソシアネートを反応させることでグラフト型ポリウレタン樹脂を製造することができる。具体的には、前記反応は、好ましくは20℃〜120℃の範囲で30分〜24時間程度の範囲で行う。
【0062】
前記ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、例えば、前記ポリオールが有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0063】
また、前記グラフト型ポリウレタン樹脂を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0064】
本発明で使用するグラフト型ポリウレタン樹脂を製造する際には、その分子量を比較的高分子量化し、耐擦過性等の更なる向上を図ることを目的として、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。
【0065】
前記鎖伸長剤を使用して得られたグラフト型ポリウレタン樹脂は、分子中にウレア結合を有するため、耐擦過性に優れた印刷画像を形成するうえで好適に使用できる。一方、前記グラフト型ポリウレタン樹脂は、ウレア結合の影響によって耐アルコール性を低下させる傾向にあるため、前記耐擦過性や耐アルカリ性とともに耐アルコール性に優れた印刷画像を形成する場合には、前記グラフト型ポリウレタン樹脂として、鎖伸長剤を使用せずに得られたポリウレタンや、その使用量を最小限に制限して得られたポリウレタン、具体的には、前記ポリウレタン中に含まれるウレア結合の割合が10質量%以下であるものを使用することが好ましい。
【0066】
前記グラフト型ポリウレタン樹脂を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0067】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0068】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を、本発明のコーティング剤の保存安定性が低下しない範囲内で単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0069】
前記グラフト型ポリウレタン樹脂の製造では、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用しても良い。
【0070】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。なかでも本発明のコーティング剤の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にアニオン性又はノニオン性の乳化剤を使用することが好ましい。また、本発明のコーティング剤の混和安定性を維持可能な範囲であれば、例えばカチオン性の乳化剤と両性の乳化剤とを併用してもよい。
【0071】
また、本発明で使用するグラフト型ポリウレタン樹脂を製造する際には、ポリウレタン樹脂の水分散性を助ける助剤として、親水基含有化合物を使用してもよい。
【0072】
かかる親水基含有化合物としては、アニオン性基含有化合物、カチオン性基含有化合物、両性基含有化合物、又はノニオン性基含有化合物を用いることができるが、本発明のコーティング剤の優れた保存安定性を維持する観点から、ノニオン性基含有化合物を使用することが好ましい。
【0073】
前記ノニオン性基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、及びエチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物を使用することができる。
【0074】
例えば、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素原子を含有する数平均分子量300〜20,000のポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールなどの化合物を使用することが可能である。
【0075】
また、本発明で使用するグラフト型ポリウレタン樹脂には、保存安定性やインク吐出性を低下させない範囲で、必要に応じて硬化剤や硬化触媒を併用しても良い。
【0076】
前記硬化剤としては、例えばシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等を使用することができ、前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム等を使用することができる。
【0077】
また、本発明で使用するグラフト型ポリウレタン樹脂で使用する水性媒体は、前記グラフト型ポリウレタン樹脂が分散しうる溶媒である。前記水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0078】
(アニオン性基を有するポリウレタン樹脂の中和剤)
本発明においてアニオン性基を有するポリウレタン樹脂は、塩基性化合物により中和して使用することが好ましい。塩基性化合物としては公知のものを使用でき、例えばカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属などの炭酸塩;水酸化アンモニウム等の無機系塩基性化合物や、トリエタノールアミン、N,N−ジメタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−N−ブチルジエタノールアミンなどのアミノアルコール類、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのモルホリン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ピペラジンヘキサハイドレートなどのピペラジン等の有機系塩基性化合物が挙げられる。中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムに代表されるアルカリ金属水酸化物は、水性顔料分散体の低粘度化に寄与し、水性インクジェット記録用インクとした場合に吐出安定性の面から好ましく、特に水酸化カリウムが好ましい。
【0079】
これらを使用した前記アニオン性基の中和率は特に限定はないが、一般に80〜120質量%となる範囲で行うことが多い。なお本発明において、中和率とは塩基性化合物の配合量が前記アニオン性基含有有機高分子化合物中の全てのカルボキシル基の中和に必要な量に対して何質量%かを示す数値であり、以下の式で計算される。
【0080】
【数1】
【0081】
本発明において、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂の重量平均分子量は5,000〜500,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜200,000のものを使用することがより好ましく、15,000〜100,000のものを使用することが特に好ましい。
【0082】
ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法で測定される値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。
【0083】
また、前記ポリウレタン樹脂としては、2〜200(mgKOH/g)の範囲の酸価を有するものを使用することが好ましく、2〜100(mgKOH/g)の範囲であることが、ポリウレタン樹脂の良好な水分散安定性等を向上するうえで好ましい。
【0084】
ここでいう酸価とは、日本工業規格「 K 0070:1992. 化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定された数値であり、樹脂1gを完全に中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
酸価が低すぎる場合には顔料分散や保存安定性が低下するおそれがあり、酸価が高すぎる場合には形成画像の耐水性が低下するおそれがある。共重合体を該酸価の範囲内とするには、カルボキシ基を有するポリオールを、前記酸価の範囲内となる様に含めて共重合すれば良い。
【0085】
(水性媒体)
本発明における水性顔料分散体において、溶媒としては水溶性溶媒及び/または水等の水性媒体を使用する。これらは水単独で使用してもよいし、水と水溶性溶媒からなる混合溶媒でもよい。水溶性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素原子数が3〜6のケトン及び炭素原子数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。
また、その他、水性に溶解しうる水溶性有機溶剤も使用することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンベンジルアルコールエーテルなど、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
中でも、高沸点、低揮発性で、高表面張力のグリコール類やジオール類等多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
【0086】
本発明で使用する水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより得られた水性顔料分散体やそれを使用したインク等を長期保存する場合にカビまたはバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0087】
(水性顔料分散体の製造方法)
本発明の水性顔料分散体の製造方法は、高圧ホモジナイザーで分散させることが特徴である。
高圧ホモジナイザーの前には顔料と水性媒体を混合・攪拌・分散し、顔料分散ペーストを調整しておくことが、流動性を高めるため或いは顔料の沈降を防ぐために好ましいが、必須ではなく、混合・攪拌・分散装置も特に限定されない。予め顔料ペーストを作成する方法は、特に限定はなく、公知の分散方法を使用することができ、例えば(i)〜(iii)を例示することができる。
(i)顔料分散剤及び水を含有する水性媒体に、顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を該水性媒体中に分散させることにより、顔料ペーストを調製する方法。
(ii)顔料、及び顔料分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水を含む水性媒体中に添加し、攪拌・分散装置を用いて顔料ペーストを調製する方法。
(iii)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水との相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し顔料ペーストを調製する方法。
【0088】
(i)や(iii)で使用する攪拌・分散装置としては特に限定されることなく、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
また(ii)で使用する混練機としても特に限定されることなく、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどがあげられる。
【0089】
前記顔料ペーストに占める顔料量は5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。顔料量が5質量%より少ない場合は、前記顔料ペーストから調製した水性顔料分散体並びに水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に60質量%よりも多い場合は、顔料ペーストにおいて顔料の分散安定性が低下する傾向がある。
【0090】
前記顔料ペーストに占めるアニオン性基を有するポリウレタン樹脂量は0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜25質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜20質量%が更に好ましい。
【0091】
前記顔料ペースト中の、顔料量に対するアニオン性基を有するポリウレタン樹脂量は1質量%〜50質量%が好ましく、2質量%〜40質量%が更に好ましく、5質量%〜35質量%が更に好ましい。本発明では、顔料量に対するアニオン性基を有する樹脂の比率をResin/Pigment(以下、R/Pと略記する)と記載する。
【0092】
また、この時の粘度範囲は流動性を確保する観点から、0.1〜100mPa・sが好ましく、0.5〜50mPa・sがさらには好ましく、0.5〜30mPa・sがさらにより好ましく、1.0〜20mPa・sが最も好ましい。また、この時の顔料濃度は、1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がさらには好ましく、3〜20質量%がさらにより好ましく、5〜20質量%が最も好ましい。
【0093】
高圧ホモジナイザーの条件は、特に制限されないが、10〜300MPaの処理圧力で行うことが好ましく、さらに好ましくは50〜250MPaの処理圧力で行うことが出来る。
【0094】
処理圧力を前記範囲に設定することにより、キャビテーションや衝突による分散工程を効果的に実施でき、水性顔料分散体中の粗大粒子数が減少し、水性顔料分散体自身から得られる着色被膜の彩度(質感)が改良され、当該水性顔料分散体を用いた水性インクをインクジェット印刷する際にスムーズな吐出が得られる(良好な吐出安定性)こと、顔料粒子の沈降等による製品の品質の低下がなくなること等の理由により、大変好ましい。
【0095】
高圧ホモジナイザー処理を行う時間やパス回数は、実質的に水性顔料分散体中に顔料粒子やアニオン性基を含有するポリウレタン樹脂等が事実上均一分散するのに必要にして十分な時間やパス回数を確保すれば良い。高圧ホモジナイザーによる分散処理を、より長時間の処理で行うことも、短時間で処理をとりやめることもできるのは当然である。顔料種に応じて、分散粒子径、粘度、画像鮮明度などのパフォーマンスに支障を生じない範囲で、高圧ホモジナイザー処理時間やパス回数を選択し、時間的な生産性の低下が生じないように工夫することが好ましい。
【0096】
水性顔料分散体に高圧ホモジナイザーを終えた後に、必要であれば更に分散を更に行うこともできる。また分散と高圧ホモジナイザー処理を繰り返し行うこともできる。
この分散工程において用いることのできる分散装置として、既に公知の種々の方式による装置が使用でき、特に限定されるものではない。例えばサンドミル、ビーズミル、ペブルミル、ボールミル、パールミル、バスケットミル、アトライター、ダイノーミル、ボアミル、ビスコミル、モーターミル、SCミル、ドライスミル、ペイントコンディショナー等のメディア分散や、高速ディスクインペラー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザー等のメディアレス分散機が上げられる。ただし、メディア分散は、顔料表面に不必要な物理的損傷を与える場合もあることに留意すべきである。
【0097】
高圧ホモジナイザーに供する水性顔料分散体の温度は、特に制限されるものではないが、この水性顔料分散体を凝固点〜70℃となる様に制御しながら、高圧ホモジナイザーで処理する様にすることが好ましい。凝固点以下だと高圧ホモジナイザー処理が不可能になり、70℃以上であると水分の蒸発が生じ、顔料濃度の増加などの不確定条件が生じるからである。
【0098】
高圧ホモジナイザー処理時に水性顔料分散体を冷却する手段は、公知のもの、氷冷、風冷、水冷などをごく一般的に使うことが出来る。具体的には、水性顔料分散体を保持する容器の外套(ジャケット)中に冷媒を流す方法、水性顔料分散体の入っている容器を冷媒の中に浸漬する方法、気体の風を吹き付ける方法、水などの冷媒と風とを使って蒸発熱で冷却する方法などを例示できる。
例えば、冷媒として、予め0℃を越えて20℃以下、好ましくは0℃を越えて10℃以下に冷却された冷却水を使用する方法は、比較的に経済的であり、しかも冷却効率も優れているため望ましい方法の一つである。この際、冷却水を循環装置で循環すると同時に、冷却装置で冷却も行うことが出来る。この際、冷却水中に、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの凍結温度を下げるものを加えたり、塩化ナトリウムなどを加えて凝固点降下を起こさせるのも大変望ましい。その結果、0℃を越える冷却水では十分な冷却効果が得られない時でも、それ以下の温度の冷却水とすることが出来、より水性顔料分散体を前記温度範囲内でもより低温となる様に保持して高圧ホモジナイザー処理することが可能になる。風冷する場合も、単に雰囲気温度の風を吹き付けるのではなく、予め冷やした冷風を用いることが好ましい。
【0099】
上記高圧ホモジナイザー処理に用いる装置は、出来るだけ少ない台数で行うことがコストの関係から望ましいが、必要ならば最低限の複数の装置を、直列または並列に連結させて処理を行うことも出来る。
【0100】
なお、高圧ホモジナイザー処理の終点は、粒ゲージや市販の粒径測定装置で顔料粒子や前記複合粒子の粒径を測定して決める他、粘度、接触角、各種の方法で調製した塗膜の反射光度、色彩等の物性測定で決定しても良い。また顕微鏡などを使った直接観察を行って決定しても良い。
【0101】
(処理後及び分散後の後処理工程)
また、粗大粒子の残存は、各種画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製前後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により、適宜、粗大粒子を除去することが好ましい。
【0102】
分散工程の後に、イオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(顔料合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機顔料に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用い、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0103】
本発明における水性顔料分散体は、インクジェット向けとする場合、有機顔料の含有量(質量基準)は、水性インク全量に対して0.5〜30質量%が好ましく、さらには1.0〜12質量%が好ましい。普通紙において十分な光学濃度を得るためには3質量%以上で12質量%以下が最も好ましい含有量である。3質量%未満の含有量では、普通紙における印字濃度が確保できないおそれがあり、また12質量%を超えた含有量では、インクの粘度増加等により、インクジェットヘッドからの当該水性インクの吐出安定性が悪化するおそれがある。
【0104】
(インクジェット記録用水性インク)
前記水性顔料分散体は、必要に応じて、任意のタイミングで、水溶性溶媒で希釈する、あるいは湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤、いわゆる公知慣用の添加剤を添加することもできる。当該添加により、自動車や建材用の塗料分野や、オフセットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ等の印刷インキ分野、あるいはインキジェット記録用インク分野等様々な用途に使用することができる。インクの調製後に、遠心分離あるいは濾過処理工程を追加して、粗大粒子除去を行うこともできる。ここでは、インクジェット記録用水性インクについて、詳述する。
【0105】
(湿潤剤)
前記湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3〜50質量%であることが好ましい。
本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0106】
(浸透剤)
前記浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0107】
(界面活性剤)
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0108】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0109】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0110】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0111】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0112】
また、必要に応じて、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0113】
(記録部材)
本発明の水性顔料分散体は、特に普通紙に対しても高い光学濃度及び耐擦過性を発現する。その他の吸収性の記録部材に使用してももちろん構わない。吸水性の記録媒体の例には、普通紙、(微)塗工紙、布帛、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙、ダンボール、木材、などが含まれる。
【0114】
(実施例)
以下、本発明の実施例を示して詳しく説明する。
なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0115】
(アニオン性基を含有するポリウレタン樹脂)
<製造例1:アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂の溶液(UR−1)>
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌機を備えた窒素置換された容器中にメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する)64.2質量部を加え、該MEK中で、2,2−ジメチロールプロピオン酸18.4質量部及びイソホロンジイソシアネート33.9質量部を混合し、80℃で4時間反応させた。4時間後、MEKを更に38.2質量部を供給し、60℃以下に冷却した後、ポリエーテルポリオール(「PTMG1000」三菱化学株式会社製のポリテトラメチレングリコール、数平均分子量1000)140.1質量部及びジブチル錫ジラウリレート(以下DBTDL)0.01質量部を追加し、80℃で反応を継続させた。
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達したことを確認した後、メタノール1.3質量部を投入することによって反応を終了した。次いで、MEK41.6質量部を追加することによって、重量平均分子量が45000のウレタン樹脂のMEK溶液を得た。この樹脂の酸価は55mgKOH/gであった。
【0116】
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に50質量%水酸化カリウム水溶液15.1質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水848.5質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂とMEKと水とを含み、前記ウレタン樹脂が前記水中に分散又は溶解した混合物を得た。
次いで、前記混合物を約2時間エージングした後、前記混合物中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、不揮発分100質量%)0.07質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物を得、該混合物を約1〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物中に含まれるメチルエチルケトンの144質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。次いで、前記混合物中に含まれる水の147質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整し、樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するポリウレタン樹脂溶液(UR−1)とした。
【0117】
<製造例2:アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂の溶液(UR−2)>
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌機を備えた窒素置換された容器中にメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する)85.4質量部を加え、該MEK中で、2,2−ジメチロールプロピオン酸19.0質量部及びイソホロンジイソシアネート56.2質量部を混合し、80℃で4時間反応させた。4時間後、MEKを更に25.8質量部を供給し、60℃以下に冷却した後、ポリエーテルポリオール(「PPG1000」三菱化学株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量1000)117.2質量部及びジブチル錫ジラウリレート(以下DBTDL)0.01質量部を追加し、80℃で反応を継続させた。
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達したことを確認した後、メタノール1.3質量部を投入することによって反応を終了した。次いで、MEK57.0質量部を追加することによって、重量平均分子量が44000のウレタン樹脂のMEK溶液を得た。この樹脂の酸価は41mgKOH/gであった。
【0118】
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に34質量%水酸化カリウム水溶液22.4質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水935.6質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂とMEKと水とを含み、前記ウレタン樹脂が前記水中に分散又は溶解した混合物を得た。
次いで、前記混合物を約2時間エージングした後、前記混合物中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、不揮発分100質量%)0.07質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物を得、該混合物を約1〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物中に含まれるメチルエチルケトンの168.2質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。次いで、前記混合物中に含まれる水の170.5質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整し、樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂溶液(UR−2)とした。
【0119】
<製造例3:アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂の溶液(UR−3)>
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌機を備えた窒素置換された容器中にメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する)81.2質量部を加え、該MEK中で、2,2−ジメチロールプロピオン酸15.0質量部及びイソホロンジイソシアネート56.6質量部を混合し、80℃で4時間反応させた。4時間後、MEKを更に24.5質量部を供給し、60℃以下に冷却した後、ポリエーテルポリオール(「PPG1000」三菱化学株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量1000)118.0質量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール4.6質量部及びジブチル錫ジラウリレート(以下DBTDL)0.01質量部を追加し、80℃で反応を継続させた。
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達したことを確認した後、メタノール1.3質量部を投入することによって反応を終了した。次いで、MEK63.9質量部を追加することによって、重量平均分子量が36000のウレタン樹脂のMEK溶液を得た。この樹脂の酸価は32mgKOH/gであった。
【0120】
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に34質量%水酸化カリウム水溶液17.6質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水935.6質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂とMEKと水とを含み、前記ウレタン樹脂が前記水中に分散又は溶解した混合物を得た。
次いで、前記混合物を約2時間エージングした後、前記混合物中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、不揮発分100質量%)0.07質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物を得、該混合物を約1〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物中に含まれるメチルエチルケトンの169.6質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。次いで、前記混合物中に含まれる水の173質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整し、樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂溶液(UR−3)とした。
【0121】
<製造例4:アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂の溶液(UR−4)>
温度計、窒素ガス導入管及び攪拌機を備えた窒素置換された容器中にメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する)112.1質量部を加え、該MEK中で、2,2−ジメチロールプロピオン酸26.6質量部及びイソホロンジイソシアネート52.0質量部を混合し、80℃で4時間反応させた。4時間後、MEKを更に33.8質量部を供給し、60℃以下に冷却した後、ポリエーテルポリオール(「PPG1000」三菱化学株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量1000)83.6質量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール7.6質量部及びジブチル錫ジラウリレート(以下DBTDL)0.01質量部を追加し、80℃で反応を継続させた。
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達したことを確認した後、メタノール1.3質量部を投入することによって反応を終了した。次いで、MEK20.0質量部を追加することによって、重量平均分子量が44000のウレタン樹脂のMEK溶液を得た。この樹脂の酸価は60mgKOH/gであった。
【0122】
前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に34質量%水酸化カリウム水溶液31.2質量部を加えることによって、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、次いで水943.1質量部を加え十分に攪拌することによって、ウレタン樹脂とMEKと水とを含み、前記ウレタン樹脂が前記水中に分散又は溶解した混合物を得た。
次いで、前記混合物を約2時間エージングした後、前記混合物中にサーフィノール440(エアープロダクツ社製、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、不揮発分100質量%)0.07質量部を加え、約20分攪拌することにより混合物を得、該混合物を約1〜50kPaの減圧条件下で蒸留した。
前記混合物中に含まれるメチルエチルケトンの165.9質量部を除去したことを確認した後、減圧下でサーフィノール440(エアープロダクツ社製)0.03質量部を追加し、減圧蒸留を継続した。次いで、前記混合物中に含まれる水の169.2質量部を脱水したことを確認し、前記減圧蒸留を終了した。
次いで、水を加えることによって不揮発分を調整し、樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するリニア型ポリウレタン樹脂溶液(UR−4)とした。
【0123】
<製造例5:アニオン性基を含有するグラフト型ポリウレタン樹脂の溶液(UR−5)>
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、メチルエチルケトン 700質量部を仕込み、次いで前記反応容器中に、メタクリル酸シクロヘキシル(シクロヘキシル(メタ)アクリレート)115.4質量部と、メチル(メタ)アクリレート 16.3質量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)60.4質量部と、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 0.15質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量3000の分子鎖中に2個の水酸基を有するビニル重合体の溶剤溶液を得た。
【0124】
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記で得たビニル重合体の溶剤溶液446.1質量部と、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000)32.6質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸18.6質量部及びイソホロンジイソシアネート45質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン34質量部の存在下、80℃で10時間反応させることによって、重量平均分子量が20000、樹脂の酸価は40mgKOH/gのウレタン樹脂のMEK溶液を得た。
【0125】
次いで、前記ウレタン樹脂のMEK溶液に34質量%水酸化カリウム水溶液を22.4質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水868質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
【0126】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体を脱溶剤し、水を加えることによって不揮発分を調整し、樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するグラフト型ポリウレタン樹脂溶液(UR−5)とした。
【0127】
(アニオン性基を含有するアクリル系樹脂)
<製造例6:アニオン性基を含有するアクリル樹脂溶液(SA−1)>
モノマー組成比において、スチレン/メタアクリル酸/アクリル酸=83/9.5/7.5(質量比)であり、重量平均分子量11000、酸価120mgKOH/g、ガラス転移点105℃であるアクリル系樹脂Aを作製した。MEK50部、前記樹脂A50部、これにイオン交換水82.4部、34質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液17.6gを加え、良く撹拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液について、ウォーターバス温度45℃、40hPaの減圧条件でMEKを除去し、純水で調整して樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するアクリル樹脂溶液(SA−1)とした。
【0128】
<製造例7:アニオン性基を含有するアクリル樹脂溶液(SA−2)>
モノマー組成比において、スチレン/メタアクリル酸/アクリル酸=83/9.5/7.5(質量比)であり、重量平均分子量11000、酸価180mgKOH/g、ガラス転移点108℃であるアクリル系樹脂Bを作製した。MEK50部、前記樹脂A50部、これにイオン交換水73.5部、34質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液26.5gを加え、良く撹拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液について、ウォーターバス温度45℃、40hPaの減圧条件でMEKを除去し、純水で調整して樹脂固形分20質量%としたものを、アニオン性基を含有するアクリル樹脂溶液(SA−2)とした。
【0129】
(顔料等)
顔料等としては、以下を使用した。
FASTOGEN Blue TGR(DIC株式会社製):C.I.Pigment Blue 15:3(以下、TGRと略記)
FASTOGEN Blue TGR(DIC株式会社製)W(ウェット品)(ドライ顔料分:30質量%):C.I.Pigment Blue 15:3(以下、TGR―Wと略記)
【0130】
(分散樹脂等)
分散樹脂等としては、以下の市販品を使用した。
DISPERBYK−2010(ビック・ケミー株式会社製)不揮発分40質量%
【0131】
(バインダーWAX等)
バインダーWAX等としては、以下の市販品を使用した。
AQUACER−515(ビック・ケミー株式会社製):酸化ポリエチレンワックスエマルション
【0132】
<実施例1:シアン水性顔料分散体の製造方法>
金属製ビーカーに、シアン顔料「TGR―W」100部、アニオン性基を含有するポリウレタン樹脂溶液(UR−1)30部、トリエチレングリコール24部、純水を全量200部となるように加え、攪拌機(シルバーソン社製ローターステーター式攪拌機「L4R−T」、3000RPM、20分間)で攪拌し、顔料ペーストを得た。この顔料ペーストを、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製スターバーストミニ、処理圧力200MPa)(以下、HPHと略記する)により12パス分散処理し、水性シアン顔料分散体(CJD−1)を得た。水性顔料分散体の仕込み量と物性等は後述の表1に記載した。
【0133】
次いで、水性シアン顔料分散体(CJD−1)を、遠心分離機(株式会社コクサン製、10000RPM、10分間)で遠心分離し、純水で顔料濃度12質量%に調整した。顔料濃度12質量%に調整した水性シアン顔料分散体50部に、別途調製したビヒクル25部(質量基準配合比:2−ピロリドン/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/グリセリン/サーフィノール440/純水=32/32/12/2/22)、純水を全量100部となるように加え、マグネチックスターラーで攪拌してから、1.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、水性シアンインク(CJI−1)を得た。調製したインクの組成は後述の表2に記載した。
【0134】
<
参考例1、実施例
3〜8:シアン水性顔料分散体(CJD−2〜CJD−8)の製造方法>
使用する顔料の種類、アニオン性基含有ポリウレタン樹脂溶液の種類を、表1の配合に変更した以外は、上述の製造方法に従って、水性シアン顔料分散体等(CJD−2〜CJD−8)を調製した。表1に、水性顔料シアン分散体の仕込み量と物性を例示した。次いで、表2の配合で水性シアンインク(CJI−2〜CJI−8)を調整した。調製したインクの組成は後述の表2に記載した。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
<比較例1:シアン水性顔料分散体(CHD−1)の製造方法>
金属製ビーカーに、シアン顔料「TGR―W」100部、アニオン性基を含有するアクリル樹脂溶液(SA−1)30部、トリエチレングリコール24部、純水を全量200部となるように加え、攪拌機(シルバーソン社製ローターステーター式攪拌機「L4R−T」、3000RPM、20分間)で攪拌し、顔料ペーストを得た。この顔料ペーストを、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製スターバーストミニ、処理圧力200MPa)(以下、HPHと略記する)により12パス分散処理し、水性シアン顔料分散体(CHD−1)を得た。調製した水性顔料分散体の仕込み量と物性等は後述の表3に記載した。
【0138】
次いで、水性シアン顔料分散体(CHD−1)を、遠心分離機(株式会社コクサン製、10000RPM、10分間)で遠心分離し、純水で顔料濃度12質量%に調整した。12質量%に調整した水性シアン顔料分散体50部に、ポリウレタン樹脂溶液(UR−1)6部、別途調製したビヒクル25部(質量基準配合比:2−ピロリドン/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/グリセリン/サーフィノール440/純水=32/32/12/2/22)、純水を全量100部となるように加え、マグネチックスターラーで攪拌してから、1.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、水性シアンインク(CHI−1)を得た。調製したインクの組成と物性等は後述の表4に記載した。
【0139】
<比較例2、3、5>:水性シアン顔料分散体(CHD−2、3、CHD−5)の製造方法>
使用する顔料の種類、分散樹脂及びアニオン性基含有ポリウレタン樹脂溶液の種類を、表3の配合に変更した以外は、上述の製造方法に従って、水性シアン顔料分散体等(CHD−2、3、CHD−5)を調製した。表3に、水性シアン顔料分散体の仕込み量を例示した。次いで、表4の配合で水性シアンインク(CHI−2、3、CHI−5)を調整した。調製したインクの組成は後述の表4に記載した。
【0140】
<比較例4>:水性シアン顔料分散体(CHD−4)の製造方法>
金属製ビーカーに、シアン顔料「TGR―W」100部、分散樹脂「DISPERBYK−2010」15部、トリエチレングリコール24部、バインダーWAX「AQUACER−515」6部、純水を全量200部となるように加え、攪拌機(シルバーソン社製ローターステーター式攪拌機「L4R−T」、3000RPM、20分間)で攪拌し、顔料ペーストを得た。この顔料ペーストを、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製スターバーストミニ、処理圧力200MPa)(以下、HPHと略記する)により12パス分散処理し、水性シアン顔料分散体(CHD−4)を得た。調製した水性顔料分散体の仕込み量と物性等は後述の表3に記載した。次いで、表4の配合で水性シアンインク(CHI−4)を調整した。調製したインクの組成は後述の表4に記載した。
【0141】
<比較例6:水性シアン顔料分散体(CHD−6)の製造方法>
金属製ビーカーに、シアン顔料「TGR―W」100部、アニオン性基を含有するウレタン樹脂溶液(UR−1)15部、トリエチレングリコール24部、純水を全量200部となるように加え、攪拌機(シルバーソン社製ローターステーター式攪拌機「L4R−T」、3000RPM、20分間)で攪拌し、顔料ペーストを得た。500mlポリボトルに、この顔料ペースト100部と、Φ0.5mmのジルコニアビーズ200部を入れて、ペイントシェイカー(以下PSと略記する)にて4時間分散処理し、水性シアン顔料分散体(CHD−6)を得た。調製した水性顔料分散体の仕込み量と物性等は後述の表3に記載した。
【0142】
次いで、水性シアン顔料分散体(CHD−6)を、遠心分離機(株式会社コクサン製、10000RPM、10分間)で遠心分離した所、顔料濃度が12質量%以下に低下したため、その後のインク化は実施しなかった。
【0143】
<比較例7:水性シアン顔料分散体(CHD−7)の製造方法>
金属製ビーカーに、シアン顔料「TGR―W」100部、アニオン性基を含有するウレタン樹脂溶液(UR−5)15部、トリエチレングリコール24部、純水を全量200部となるように加え、攪拌機(シルバーソン社製ローターステーター式攪拌機「L4R−T」、3000RPM、20分間)で攪拌し、顔料ペーストを得た。500mlポリボトルに、この顔料ペースト100部と、Φ0.5mmジルコニアビーズ200部を入れて、ペイントシェイカーにて4時間分散処理し、水性シアン顔料分散体(CHD−7)を得た。調製した水性顔料分散体の仕込み量と物性等は後述の表3に記載した。
【0144】
次いで、水性シアン顔料分散体(CHD−7)を、遠心分離機(株式会社コクサン製、10000RPM、10分間)で遠心分離した所、顔料濃度が12質量%以下に低下したため、その後のインク化は実施しなかった。
【0145】
<比較例8:水性シアンインク(CHI−8)の製造方法>
水性シアン顔料分散体(CHD−1)を、遠心分離機(株式会社コクサン製、10000RPM、10分間)で遠心分離し、純水で顔料濃度12質量%に調整した。12質量%に調整した水性シアン顔料分散体50部に、別途調製したビヒクル25部(質量基準配合比:2−ピロリドン/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/グリセリン/サーフィノール440/純水=32/32/12/2/22)、純水を全量100部となるように加え、マグネチックスターラーで攪拌してから、1.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、水性シアンインク(CHI−8)を得た。調製したインクの組成と物性等は後述の表4に記載した。
【0146】
<比較例9:水性シアンインク(CHI−9)の製造方法>
比較例8の水性シアン顔料分散体(CHD−1)を、水性シアン顔料分散体(CHD−4)に変えた以外は、比較例8の製造方法に従って、水性シアンインク(CHI−9)を得た。調製したインクの組成と物性等は後述の表4に記載した。
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
表3,4中、DISPERBYK−2010は、ビック・ケミー株式会社製の分散樹脂を表し、AQUACER−515は、ビック・ケミー株式会社製のバインダーWAXを表す。
【0150】
(物性の測定)
(pH測定方法)
MM−60R(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定(インク温度25℃)した。
【0151】
(平均粒子径測定方法)
動的光散乱式ナノトラック粒度分析計UPA−150EX(日機装株式会社製)用いて、測定(インク温度25℃)した。平均粒子径の値として、体積基準(Mv)のメジアン径(D
50)を用いた。
【0152】
(粘度測定方法)
ViscometerTV−20(東機産業株式会社製)を用いて、測定(インク温度25℃)した。
【0153】
(耐擦過性試験)
調製した前記インクを、ワイヤーバー#3にて光沢紙に塗布した。24時間自然乾燥後、塗布した面を、学振型摩擦試験機(株式会社大栄科学精機製作所製)を用いて、加重200g、摩擦回数10回の条件で、摩擦用PPC用紙を巻き付けた45R摩擦子で擦った。その後、塗布面の状態をパネラー3名により目視評価し、以下の基準に従って評価した。
G:評価者3名とも「キズ無し」。
M:評価者1名が「キズ有り」。
N:評価者2名以上が「キズ有り」
【0154】
<インクジェット(IJ)印刷試験>
恒温恒湿室(室温25℃、湿度50質量%)において、サーマル型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置(ヒューレットパッカード社製ENVY4500)に、水性インクを装填した。その後、被記録材としてPPC用紙上へ、テスト印刷用パターン(100質量%ベタ部)を用いて印刷を行い、印刷物を得た。
【0155】
<印刷物の評価>
(光学濃度(O.D.)値の測定)
前記印刷試験で得られた印刷物の光学濃度(O.D.)を測定した。測定には「eXact」(米X−Rite社)を使用し、塗布物の光学濃度(O.D.)値として、縦3点×横3点の合計9点測定の平均値を採用した。
【0156】
<インクジェット(IJ)用適性試験>
恒温恒湿室(室温25℃、湿度50質量%)において、サーマル型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置(ヒューレットパッカード社製ENVY4500)に、水性インクを装填した。その後、被記録材としてPPC用紙上へ、テスト印刷用パターン(文字部、罫線部、ベタ部あり)を用いて10分連続して印刷を行った。10分連続印刷後の紙面をパネラー3名により目視観察し、印刷パターンの欠けや滲みに関し、以下の基準に従って評価した。
G:パネラー3名が、印刷パターンの欠けや滲みを認めない。
M:パネラー1名のみが、印刷パターンの欠けや滲みを認めた(他のパネラー2名は、印刷パターンの欠けや滲みを認めない。)。
N:パネラー2名以上が、印刷パターンの欠けや滲みを認めた。
【0157】
各インク組成、及びインク評価結果を表5に示した。
【0158】
【表5】
【0159】
【表6】
【0160】
この結果、本発明の水性顔料分散体の製造方法で得た水性シアンインクは、光学濃度、耐擦過性、及びインクジェット適性の全てにおいて優れていた。一方比較例では、光学濃度、耐擦過性とインクジェット適性の全てを満たすものは得られなかった。