特許第6862890号(P6862890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6862890石膏の製造方法およびセメント組成物の製造方法
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  • 特許6862890-石膏の製造方法およびセメント組成物の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6862890
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】石膏の製造方法およびセメント組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/46 20060101AFI20210412BHJP
   C01F 11/22 20060101ALI20210412BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20210412BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C01F11/46 Z
   C01F11/22
   C02F1/58 M
   C04B7/38
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-25926(P2017-25926)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-131355(P2018-131355A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】門野 壮
(72)【発明者】
【氏名】森川 卓子
(72)【発明者】
【氏名】小西 正芳
【審査官】 中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−193190(JP,A)
【文献】 特開昭57−007812(JP,A)
【文献】 特開2014−050841(JP,A)
【文献】 特開2014−200743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/22;11/46
C02F 1/58−1/64
C04B 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃硫酸中のフッ素含有量を4Xmol、前記廃硫酸に添加するホウ素化合物中のホウ素含有量をYmolとしたときに、Y/X=0.6〜1.2となるように、前記フッ素を含有する前記廃硫酸に前記ホウ素化合物を添加する工程(A)、
前記ホウ素化合物を添加した廃硫酸にカルシウム源を添加して、pH1.0〜7.0の範囲で石膏を析出させる工程(B)、
前記析出させた石膏を除去した後に残る溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程(C)、
前記テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させる工程(D)、および
前記工程(D)における析出させたフッ化カルシウムを除去した溶液を、工程(A)におけるフッ素を含有する廃硫酸に添加する工程(E)を含む石膏の製造方法。
【請求項2】
前記工程(E)は、前記フッ素を含有する廃硫酸に前記ホウ素化合物を添加する前、前記フッ素を含有する廃硫酸に前記ホウ素化合物を添加した後、および、前記ホウ素化合物と一緒の少なくともいずれかのタイミングで前記析出させたフッ化カルシウムを除去した溶液を、前記フッ素を含有する廃硫酸に添加する工程である請求項1に記載の石膏の製造方法。
【請求項3】
前記工程(C)は、前記析出させた石膏を除去した後に残る溶液にアルミニウム塩を添加することにより、前記テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程である請求項1または2に記載の石膏の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム塩が硫酸アルミニウムである請求項3に記載の石膏の製造方法。
【請求項5】
前記ホウ素化合物は、酸化ホウ素、ホウ酸およびホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の石膏の製造方法。
【請求項6】
前記工程(D)は、pH5.0〜6.5で前記フッ化カルシウムを析出させる工程である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の石膏の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および
前記石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含むセメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏の製造方法およびセメント組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な工業生産の工程で発生する廃硫酸をカルシウム化合物によって中和処理し、その副産物として石膏を製造する方法が広く知られている。しかし、フッ素を多く含む廃硫酸を、単に中和処理しただけでは、石膏中のフッ素含有量が高くなってしまうため、石膏としての利用は限定的となってしまう。そこで、従来は、フッ素を含有する廃硫酸からフッ素の含有量が低い石膏を得るために、pHを2.5±0.3の範囲に維持しながら、カルシウム化合物と硫酸とを反応させることによって廃硫酸から石膏を製造していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−67118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の廃硫酸からの石膏の製造方法では、フッ素濃度が低い石膏を析出させるときのpHの範囲が狭いため、石膏を製造するために処理した後の廃硫酸にも石膏の原料となるSO2−が多く残るという問題があった。そこで、本発明は、フッ素濃度が低い石膏の析出量を増やすために、フッ素濃度が低い石膏を析出させるときのpHの範囲を広げられ、さらに廃液の利用効率も高められる石膏の製造方法およびその石膏の製造方法により製造された石膏を用いてセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、廃硫酸にホウ素化合物を添加することによって廃硫酸中のフッ素はテトラフルオロホウ酸イオンとなり、これにより、フッ素濃度が低い石膏を析出させるときのpHの範囲を広げられることを見出し、さらに、石膏を析出させた後に残る溶液に対して所定の処理をすることによって、石膏を析出させた後に残る溶液を再利用できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]フッ素を含有する廃硫酸にホウ素化合物を添加する工程(A)、ホウ素化合物を添加した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(B)、析出させた石膏を除去した後に残る溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程(C)、テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させる工程(D)、および工程(D)における析出させたフッ化カルシウムを除去した溶液を、工程(A)におけるフッ素を含有する廃硫酸に添加する工程(E)を含む石膏の製造方法。
[2]工程(E)は、フッ素を含有する廃硫酸にホウ素化合物を添加する前、フッ素を含有する廃硫酸にホウ素化合物を添加した後、および、ホウ素化合物と一緒の少なくともいずれかのタイミングで析出させたフッ化カルシウムを除去した溶液を、フッ素を含有する廃硫酸に添加する上記[1]に記載の石膏の製造方法。
[3]工程(C)は、析出させた石膏を除去した後に残る溶液にアルミニウム塩を添加することにより、テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程である上記[1]または[2]に記載の石膏の製造方法。
[4]アルミニウム塩が硫酸アルミニウムである上記[3]に記載の石膏の製造方法。
[5]ホウ素化合物は、酸化ホウ素、ホウ酸およびホウ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の石膏の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含むセメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フッ素濃度が低い石膏を析出させるときのpHの範囲を広げられるとともに、石膏を析出させるときのpHの範囲を広げるために用いるホウ素化合物の添加量を低減できる石膏の製造方法、およびその石膏の製造方法により製造された石膏を用いてセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態における石膏の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[石膏の製造方法]
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と称する)における石膏の製造方法を説明する。図1は、本実施形態の石膏の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態の石膏の製造方法は、フッ素を含有する廃硫酸1にホウ素化合物2を添加する工程(A)、ホウ素化合物2を添加した廃硫酸3にカルシウム源4を添加して石膏6を析出させる工程(B)、析出させた石膏6を除去した後に残る溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程(C)、テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源10を添加してフッ化カルシウム12を析出させる工程(D)、および工程(D)における析出させたフッ化カルシウム12を除去した溶液13を、工程(A)におけるフッ素を含有する廃硫酸1に添加する工程(E)を含む。
【0009】
工程(A)
工程(A)では、フッ素を含有する廃硫酸1にホウ素化合物2を添加する。
【0010】
(廃硫酸)
工程(A)で使用される廃硫酸1はフッ素を含有するものであれば、とくに限定されない。フッ素を含有する廃硫酸1は、例えば、硫化精鉱を原料とする非鉄金属精錬炉の排ガス中のSOを回収して製造された廃硫酸である。この排ガスはフッ素を含有するので廃硫酸もフッ素を含有する。
【0011】
(ホウ素化合物)
工程(A)で使用されるホウ素化合物2は、廃硫酸中のフッ素と反応してテトラフルオロホウ酸イオン(BF)を生成するものであり、かつ、後述のフッ化カルシウムを除去した溶液以外のものおよびフッ化ホウ素化合物以外のものであれば、とくに限定されない。ホウ素化合物2には、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸およびテトラオキソニホウ酸などのホウ酸、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウムおよびホウ酸バリウムなどのホウ酸塩、ならびに酸化ホウ素などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。廃硫酸中のフッ素と反応しやすいことから、好ましいホウ素化合物2はホウ酸である。
【0012】
(ホウ素化合物の添加量)
廃硫酸1中のフッ素含有量を4Xmolとし、廃硫酸1に添加するホウ素化合物2中のホウ素含有量をYmolとした場合、好ましくは、Y/X=0.6〜1.2になるような量のホウ素化合物2を、より好ましくはY/X=0.8〜1.1になるような量のホウ素化合物2を、さらに好ましくはY/X=0.9〜1.0になるような量のホウ素化合物2を、廃硫酸1に添加してもよい。Y/X=0.6〜1.2になるような量のホウ素化合物2を廃硫酸1に添加することによって、フッ化カルシウムの析出の原因となる廃硫酸1中のフッ化物イオン(F)の濃度を低減させることができる。この場合、廃硫酸1中のフッ素含有量を調べるために、フッ素を含有する廃硫酸1にホウ素化合物2を添加する前に、廃硫酸中のフッ素濃度を測定する必要がある。そして、測定したフッ素濃度に基づいてホウ素化合物2の添加量を決定することができる。廃硫酸1中のフッ素濃度を測定する方法には、例えば、ランタンアリザリンコンプレキソン法およびイオンクロマト法などが挙げられる。
【0013】
工程(A)では、さらに、フッ素を含有する廃硫酸1にホウ素化合物2を添加する前、フッ素を含有する廃硫酸1にホウ素化合物2を添加した後、および、ホウ素化合物2と一緒の少なくともいずれかのタイミングで析出させたフッ化カルシウム12を除去した溶液(CaF除去溶液)13を、フッ素を含有する廃硫酸に添加することが好ましい。この点については、工程(E)で説明する。
【0014】
工程(B)
工程(B)では、ホウ素化合物2を添加した廃硫酸3にカルシウム源4を添加して石膏6を析出させる。
【0015】
(カルシウム源)
工程(B)で使用されるカルシウム源4は、カルシウムを含む化合物およびそれらを主成分とする各種材料であり、石膏以外のものであれば、とくに限定されない。カルシウム源4には、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウムおよびリン酸カルシウムなどが挙げられる。また、貝殻や生コンスラッジなどのカルシウムの含有量の大きな廃棄物をカルシウム源4として使用してもよい。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、好ましいカルシウム源4は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である。なお、粉末の状態のカルシウム源4を廃硫酸3に添加してもよいし、スラリーの状態のカルシウム源4を廃硫酸3に添加してもよい。
【0016】
(石膏)
廃硫酸3中のフッ素は、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の形態で存在する。このため、廃硫酸3中のフッ素は、廃硫酸3のpHが高くなっても析出せず、イオンの状態で廃硫酸3中に存在することになる。これにより、廃硫酸3のpHが高くなっても、フッ化カルシウムの析出は抑制され、工程(B)で析出させる石膏6中のフッ素の含有量を低減させることができる。
【0017】
(石膏が析出させるときの廃硫酸のpH)
従来は、廃硫酸のpHが高くなると石膏と一緒に析出させるフッ化カルシウムの析出量が増えるため、廃硫酸に添加できるカルシウム源の量は限られていた。このため、石膏を析出させた後の廃硫酸に残存するSO2−の量が大きかった。しかし、本実施形態によれば、上述したように、廃硫酸3中のフッ素はテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の形態で存在するため、フッ化カルシウムの析出が抑制させる。その結果、従来よりも廃硫酸のpHが高くなるまでカルシウム源4を添加することができ、カルシウム源4の添加量をかなり増やすことができる。そして、石膏6が析出させるときの廃硫酸のpHの範囲を従来よりも広くすることができる。析出させる石膏6中のフッ素の濃度の観点から、石膏6が析出させるときの廃硫酸5のpHは、好ましくは1.0〜7.0であり、より好ましくは1.5〜7.0であり、さらに好ましくは2.0〜7.0であり、さらに好ましくは4.0〜7.0であり、さらに好ましくは5.0〜7.0である。なお、石膏6が析出させるときの廃硫酸5のpHとは、廃硫酸3にカルシウム源4を添加して石膏6が析出させた後のpHである。
【0018】
(カルシウム源の添加量)
石膏6が析出させるときの廃硫酸5のpHの範囲が、好ましくは1.0〜7.0、より好ましくは1.5〜7.0、さらに好ましくは2.0〜7.0、さらに好ましくは4.0〜7.0、さらに好ましくは5.0〜7.0になれば、カルシウム源4の廃硫酸3への添加量はとくに限定されない。
【0019】
(析出させた石膏中のフッ素の含有量)
析出させた石膏6中のフッ素の含有量は、析出させた石膏6の用途によって変わるが、例えば、好ましくは3500mg/kg以下であり、より好ましくは3000mg/kg以下であり、さらに好ましくは2500mg/kg以下である。
【0020】
工程(C)
工程(C)では、析出させた石膏6を除去した後に残る溶液(石膏除去溶液)7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する。例えば、工程(C)では、析出させた石膏6を除去した後に残る溶液(石膏除去溶液)7中のテトラフルオロホウ酸イオンはフッ化物イオンおよびホウ酸イオンに分解される。
【0021】
(石膏の除去)
工程(C)では、まず、析出させた石膏6を廃硫酸5から除去する。例えば、石膏6を沈降させることによって、廃硫酸5から石膏6を除去してもよいし、石膏6を含有する廃硫酸5をろ過することによって廃硫酸5から石膏6を除去してもよい。また、液体サイクロン、デカンター、遠心分離機、フィルタープレスなどの固液分離装置を用いる分離方法を採用して廃硫酸5から石膏6を除去してもよい。これらの除去方法は、単独で実施してもよいし、2種以上を組み合わせて実施してもよい。また、石膏6の除去をより速やかにするために廃硫酸5に高分子凝集剤を添加してもよい。
【0022】
(テトラフルオロホウ酸イオンの分解)
析出させた石膏6を除去した後に残る溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する。これにより、テトラフルオロホウ酸イオンを構成していたホウ素を、フッ素と再び反応させることができる。溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する方法は、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解することができれば、とくに限定されない。例えば、アルミニウム、鉄、チタニウムなどの多価金属またはその金属塩を、石膏を除去した後に残る溶液7に添加するとともに、その溶液7のpHを4以下に保持し、紫外線を照射して、溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解してもよい。また、カルシウム塩、アルミニウム塩、第二鉄塩などの多価金属塩を、石膏を除去した後に残る溶液7に添加するとともに、その溶液7に超音波を照射することによって、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解してもよい。さらに、石膏を除去した後に残る溶液7を酸性条件下に調整し、常温および常圧下でフッ化ホウ素分解材(水酸化ジルコニウムや水酸化チタニウム等)と接触させて、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解してもよい。また、石膏を除去した後に残る溶液7に、多価金属またはその金属塩を添加するとともに、溶液7のpHを4以下に保持し、紫外線を照射して溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解してもよい。なお、多価金属またはその金属塩を構成する金属元素は、アルミニウム、鉄及びチタニウムから選択される少なくとも1種である。また、石膏を除去した後に残る溶液7を加熱して溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解してもよい。
【0023】
さらに、図1に示すように、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩8を、石膏を除去した後に残る溶液7に添加することによって、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解してもよい。紫外線や超音波を照射するために設備が必要ないことから、析出させた石膏6を除去した後に残る溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する好ましい方法は、石膏6を除去した後に残る溶液7にアルミニウム塩を添加することによって、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する方法である。また、この場合、好ましいアルミニウム塩は硫酸アルミニウムである。
【0024】
(アルミニウム塩の添加量)
石膏6を除去した後に残る溶液7にアルミニウム塩8を添加することによって、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する場合、石膏6を除去した後に残る溶液7におけるアルミニウム塩の添加量は、アルミニウム元素換算で、好ましくは500〜2000質量ppmであり、より好ましくは1000〜2000質量ppmであり、さらに好ましくは1000〜1500質量ppmである。アルミニウム塩の添加量が1000〜2000質量ppmであると、溶液7中のテトラフルオロホウ酸イオンの大部分を分解することができる。
【0025】
工程(D)
工程(D)では、テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液9にカルシウム源10を添加してフッ化カルシウム12を析出させる。これにより、テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液9からフッ素を除去することができる。これにより、テトラフルオロホウ酸イオンの分解により生成したホウ酸イオンが、溶液9中のフッ素と再び反応してテトラフルオロホウ酸イオンとなることを抑制することができる。そして、石膏6を除去した後に残る溶液を、フッ素を含有する廃硫酸1に添加することにより、石膏6を除去した後に残る溶液中のホウ素の有効活用を図ることができる。なお、フッ化カルシウム12を溶液11から除去する際、テトラフルオロホウ酸イオンを分解するために添加したアルミニウム塩も一緒に溶液11から除去される。
【0026】
(カルシウム源)
工程(D)で使用されるカルシウム源10は、カルシウムを含む化合物およびそれらを主成分とする各種材料であれば、とくに限定されない。カルシウム源10には、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウムおよびリン酸カルシウムなどが挙げられる。また、貝殻や生コンスラッジなどのカルシウムの含有量の大きな廃棄物をカルシウム源10として使用してもよい。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、好ましいカルシウム源10は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である。なお、粉末の状態のカルシウム源10を溶液9に添加してもよいし、スラリーの状態のカルシウム源10を溶液9に添加してもよい。
【0027】
(カルシウム源の添加量)
フッ化カルシウム12が析出させるときの溶液11のpHの範囲が、好ましくは5.0〜7.0、より好ましくは5.5〜7.0、さらに好ましくは5.5〜6.5になるような添加量であれば、カルシウム源10の溶液9への添加量はとくに限定されない。フッ化カルシウム12が析出させるときの溶液11のpHの範囲が5.0〜7.0であると、溶液11中のフッ化物イオンの大部分をフッ化カルシウムとして析出させることができる。
【0028】
工程(E)
工程(E)では、工程(D)における析出させたフッ化カルシウム12を除去した溶液13を、工程(A)におけるフッ素を含有する廃硫酸1に添加する。これにより、廃硫酸1のフッ素をテトラフルオロホウ酸イオン(BF)に転化させるために必要なホウ素化合物2の添加量を小さくすることができ、廃硫酸からフッ素濃度が低い石膏を製造するためのコストを低減できるとともに、ホウ素を含有した溶液を処理して廃棄してしまうことを抑制できる。
【0029】
工程(D)における析出させたフッ化カルシウム12を除去した溶液13を、工程(A)におけるフッ素を含有する廃硫酸1に添加するタイミングとしては、例えば、図1に示すようにホウ素化合物2を添加する前、フッ素を含有する廃硫酸1にホウ素化合物2を添加した後、および、ホウ素化合物2と一緒の少なくともいずれかのタイミングでフッ化カルシウム12を除去した溶液(CaF除去溶液)13を、フッ素を含有する廃硫酸1に添加することが挙げられる。
【0030】
ホウ素化合物2を添加する前に、CaF除去溶液13を、フッ素を含有する廃硫酸1に添加する例としては、フッ素を含有する廃硫酸の希釈剤として、CaF除去溶液13を用いる例が挙げられる。また、ホウ素化合物2を添加する後に、CaF除去溶液13を、フッ素を含有する廃硫酸1に添加する例としては、カルシウム源4を添加した後の廃硫酸5の粘度を調節するための媒質として、CaF除去溶液13を用いる例が挙げられる。さらに、ホウ素化合物2と一緒に、CaF除去溶液13を、フッ素を含有する廃硫酸1に添加する例としては、ホウ素化合物2のスラリーを作製するときの媒質として、CaF除去溶液13を用いる例が挙げられる。
【0031】
以上の本実施形態の石膏の製造方法は、本発明の石膏の製造方法の一実施形態にすぎず、本発明の石膏方法を限定するものではない。
【0032】
[セメント組成物の製造方法]
本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏を用いてセメント組成物を製造する。例えば、セメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。また、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏をクリンカ原料の1つとして用いて製造したセメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏またはその他の石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。これにより、本発明の石膏の製造方法によって製造された石膏をセメント組成物の原料として有効利用できる。なお、少量混合成分は、例えば、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュおよび石灰石からなる群から選択される少なくとも1種である。なお、セメント組成物中の石膏の含有量は、SO換算で、例えば、1.0〜3.0質量%である。また、セメント組成物中の少量混合成分の含有量は、例えば、セメントクリンカ、石膏および少量混合成分の合計100質量部に対して5質量部以下である。
【0033】
[セメント組成物の製造方法]
本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏を用いてセメント組成物を製造する。例えば、セメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。また、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏をクリンカ原料の1つとして用いて製造したセメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法で製造した石膏またはその他の石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。これにより、本発明の石膏の製造方法によって製造された石膏をセメント組成物の原料として有効利用できる。なお、少量混合成分は、例えば、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュおよび石灰石からなる群から選択される少なくとも1種である。なお、セメント組成物中の石膏の含有量は、SO換算で、例えば、1.0〜3.0質量%である。また、セメント組成物中の少量混合成分の含有量は、例えば、セメントクリンカ、石膏および少量混合成分の合計100質量部に対して5質量部以下である。
【0034】
[テトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液の処理方法]
本発明の石膏の製造方法における、析出させた石膏を除去した後に残る溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程(C)、およびテトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させる工程(D)は、テトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液の処理方法に適用することができる。すなわち、析出させた石膏を除去した後に残る溶液以外のテトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液についても、テトラフルオロホウ酸イオンを分解するとともに、分解により生じたフッ化物イオンを除去することができる。これにより、テトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液を、ホウ酸を含む溶液を必要とする用途に利用することができる。
【0035】
本発明の石膏の製造方法を応用した、テトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液の処理方法は、例えば、溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程、およびテトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させる工程を含む。このテトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液の処理方法における溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、本発明の石膏の製造方法における工程(C)と同様であり、このテトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液の処理方法におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させる工程は、本発明の石膏の製造方法における工程(D)と同様であるので、テトラフルオロホウ酸イオンを含む溶液の処理方法における上記工程の説明は省略する。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0037】
[測定および評価]
フッ素を含有する硫酸および実施例の石膏の製造方法により製造された石膏を以下のように測定および評価した。
(1)溶液のpH
pH計((株)堀場製作所 製、商品名:pHメータ D−51)、pH電極((株)堀場製作所 製、商品名:スリーブTough電極 9681−10D)を使用して、溶液のpHを測定した。
(2)析出物の同定
X線回折装置を使用して、廃硫酸にカルシウム源を添加して廃硫酸から析出させた析出物の同定を行った。その結果、析出物は石膏であった。
(3)析出させた石膏中のフッ素の含有量
燃焼式イオンクロマトグラフ装置を使用して、フッ素を含有する硫酸にカルシウム源を添加して析出させた石膏中のフッ素含有量を測定した。
(4)溶液中のフッ化物イオン(F)およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度
イオンクロマトグラフ装置を使用して、溶液中のフッ化物イオン(F)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を測定した。
(5)溶液中のホウ素換算のホウ酸の濃度
ICP発光分光分析装置を使用して、溶液中のホウ素(B)の濃度を測定した。
【0038】
[フッ素含有硫酸およびフッ素−ホウ素含有硫酸の製造]
(フッ素含有硫酸)
40%硫酸のフッ素の濃度が0.5質量%になるようにフッ化水素酸(関東化学(株)製、グレード:特級)を40%硫酸に添加して、フッ素含有硫酸(図1の符号1に相当)を製造した。なお、フッ素含有硫酸中のフッ化物イオン(F)の濃度は6500mg/Lであった。
【0039】
(フッ素−ホウ素含有硫酸)
フッ素含有硫酸のホウ素の濃度が0.07質量%になるような量のホウ酸(和光純薬工業(株)製、グレード:試薬特級)をフッ素含有硫酸に添加して、フッ素−ホウ素含有硫酸(図1の符号3に相当)を製造した。なお、フッ素−ホウ素含有硫酸中のフッ化物イオン(F)の濃度は2,450mg/Lであり、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度は4,810mg/Lであった。
【0040】
[石膏の製造方法]
(実施例1の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
フッ素−ホウ素含有硫酸に同重量の純水を加えた。そして、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが5.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウム(関東化学(株)製、グレード:鹿1級)を添加し、石膏を析出させた。
【0041】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
石膏を析出させたフッ素−ホウ素含有硫酸を吸引ろ過にて固液分離を行い、フッ素−ホウ素含有硫酸から石膏を除去した。除去した石膏を水洗した。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。水洗した後の水洗水は、析出させた石膏を除去した後に残る溶液と混合した。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。
【0042】
上記混合溶液に、硫酸アルミニウム溶液(硫酸アルミニウムの濃度:Al換算で8質量%)を、アルミニウム元素換算で混合溶液中の硫酸アルミニウムの濃度が1000質量ppmになるように添加した。そして、硫酸アルミニウム溶液を添加した溶液を40℃の液温を維持した状態で2日間放置した。2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0043】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
2日間放置後の溶液のpHが6.0になるまで2日間放置後の溶液に炭酸カルシウム(関東化学(株)製、グレード:鹿1級)を添加し、フッ化カルシウムを析出させた。フッ化カルシウムを析出させた溶液を吸引ろ過にて固液分離を行い、溶液からフッ化カルシウムを除去した。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0044】
(実施例2の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
実施例2におけるカルシウム源を添加する工程は、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0045】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
実施例2におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、混合溶液に、硫酸アルミニウム溶液を、アルミニウム元素換算で混合溶液中の硫酸アルミニウムの濃度が2000質量ppmになるように添加した点を除いて、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0046】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
実施例2におけるフッ化カルシウムを析出させる工程は、実施例1におけるフッ化カルシウムを析出させる工程と同じであった。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0047】
(実施例3の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
実施例3におけるカルシウム源を添加する工程は、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが6.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0048】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
実施例3におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0049】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
実施例3におけるフッ化カルシウムを析出させる工程は、実施例1におけるフッ化カルシウムを析出させる工程と同じであった。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0050】
(実施例4の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
実施例4におけるカルシウム源を添加する工程は、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが6.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0051】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
実施例4におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、混合溶液に、硫酸アルミニウム溶液を、アルミニウム元素換算で混合溶液中の硫酸アルミニウムの濃度が2000質量ppmになるように添加した点を除いて、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0052】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
実施例4におけるフッ化カルシウムを析出させる工程は、実施例1におけるフッ化カルシウムを析出させる工程と同じであった。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0053】
(実施例5の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
実施例5におけるカルシウム源を添加する工程は、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが7.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0054】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
実施例5におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0055】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
実施例5におけるフッ化カルシウムを析出させる工程は、実施例1におけるフッ化カルシウムを析出させる工程と同じであった。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0056】
(実施例6の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
実施例6におけるカルシウム源を添加する工程は、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが7.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0057】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
実施例6におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、混合溶液に、硫酸アルミニウム溶液を、アルミニウム元素換算で混合溶液中の硫酸アルミニウムの濃度が2000質量ppmになるように添加した点を除いて、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0058】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
実施例6におけるフッ化カルシウムを析出させる工程は、実施例1におけるフッ化カルシウムを析出させる工程と同じであった。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0059】
(実施例8の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
実施例8におけるカルシウム源を添加する工程は、ホウ酸をフッ素含有硫酸に添加して製造したフッ素−ホウ素含有硫酸の代わりに、実施例1の石膏の製造方法で作製された、析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液と、ホウ酸をフッ素含有硫酸に添加してフッ素−ホウ素含有硫酸を製造したときのホウ酸の添加量に対して、17%の量のホウ酸とを添加して製造したフッ素−ホウ素含有硫酸を用いた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。なお、フッ素−ホウ素含有硫酸中のフッ化物イオン(F)の濃度は2600mg/Lであり、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度は4600mg/Lであった。石膏を析出させたフッ素含有硫酸を吸引ろ過にて固液分離を行い、フッ素含有硫6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。
【0060】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
実施例8におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、2日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0061】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
実施例8におけるフッ化カルシウムを析出させる工程は、実施例1におけるフッ化カルシウムを析出させる工程と同じであった。析出させたフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液(図1の符号13に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度およびホウ素換算のホウ酸イオンの濃度を後述の表4に示す。
【0062】
(比較例1の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
比較例1におけるカルシウム源を添加する工程は、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0063】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
比較例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液に硫酸アルミニウム溶液を添加しなかった点、および混合溶液を40℃の液温を維持した状態で5日間放置した点を除いて、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、5日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0064】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程でテトラフルオロホウ酸イオンはほとんど分解しなかったので、比較例1では、フッ化カルシウムを析出させる工程を実施しなかった。
【0065】
(比較例2の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
比較例2におけるカルシウム源を添加する工程は、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが6.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0066】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
比較例2におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液に硫酸アルミニウム溶液を添加しなかった点、および混合溶液を40℃の液温を維持した状態で5日間放置した点を除いて、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、5日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0067】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程でテトラフルオロホウ酸イオンはほとんど分解しなかったので、比較例2では、フッ化カルシウムを析出させる工程を実施しなかった。
【0068】
(比較例3の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
比較例3におけるカルシウム源を添加する工程は、純水を加えたフッ素−ホウ素含有硫酸のpHが7.0になるまでフッ素−ホウ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。
【0069】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
比較例3におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程は、析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液に硫酸アルミニウム溶液を添加しなかった点、および混合溶液を40℃の液温を維持した状態で5日間放置した点を除いて、実施例1におけるテトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程と同じであった。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。析出させた石膏を除去した後に残る溶液および水洗水を混合した混合溶液(図1の符号7に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表2に示す。さらに、5日間放置後の溶液(図1の符号9に相当)中のフッ化物イオン(F)の濃度およびテトラフルオロホウ酸イオン(BF)の濃度を後述の表3に示す。
【0070】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程でテトラフルオロホウ酸イオンはほとんど分解しなかったので、比較例3では、フッ化カルシウムを析出させる工程を実施しなかった。
【0071】
(比較例4の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
比較例4におけるカルシウム源を添加する工程は、フッ素−ホウ素含有硫酸の代わりにフッ素含有硫酸を用いた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。石膏を析出させたフッ素含有硫酸を吸引ろ過にて固液分離を行い、フッ素含有硫6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。
【0072】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
カルシウム源を添加する工程で析出させた石膏中のフッ素の含有量が高かったため、比較例4では、テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程を実施しなかった。
【0073】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
カルシウム源を添加する工程で析出させた石膏中のフッ素の含有量が高かったため、比較例4では、フッ化カルシウムを析出させる工程を実施しなかった。
【0074】
(比較例5の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
比較例5におけるカルシウム源を添加する工程は、フッ素−ホウ素含有硫酸の代わりにフッ素含有硫酸を用いた点および純水を加えたフッ素含有硫酸のpHが6.0になるまでフッ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。石膏を析出させたフッ素含有硫酸を吸引ろ過にて固液分離を行い、フッ素含有硫酸から石膏を除去した。除去した石膏を水洗した。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。
【0075】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
カルシウム源を添加する工程で析出させた石膏中のフッ素の含有量が高かったため、比較例5では、テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程を実施しなかった。
【0076】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
カルシウム源を添加する工程で析出させた石膏中のフッ素の含有量が高かったため、比較例5では、フッ化カルシウムを析出させる工程を実施しなかった。
【0077】
(比較例6の石膏の製造方法)
<カルシウム源を添加する工程>
比較例6におけるカルシウム源を添加する工程は、フッ素−ホウ素含有硫酸の代わりにフッ素含有硫酸を用いた点および純水を加えたフッ素含有硫酸のpHが7.0になるまでフッ素含有硫酸に炭酸カルシウムを添加して、石膏を析出させた点を除いて、実施例1におけるカルシウム源を添加する工程と同じであった。石膏を析出させたフッ素含有硫酸を吸引ろ過にて固液分離を行い、フッ素含有硫酸から石膏を除去した。除去した石膏を水洗した。水洗した後の石膏(図1の符号6に相当)中のフッ素の含有量を後述の表1に示す。
【0078】
<テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程>
カルシウム源を添加する工程で析出させた石膏中のフッ素の含有量が高かったため、比較例6では、テトラフルオロホウ酸イオンを分解する工程を実施しなかった。
【0079】
<フッ化カルシウムを析出させる工程>
カルシウム源を添加する工程で析出させた石膏中のフッ素の含有量が高かったため、比較例6では、フッ化カルシウムを析出させる工程を実施しなかった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
(結果)
実施例1〜6では、フッ素を含有する廃硫酸にホウ素化合物を添加し、ホウ素化合物を添加した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させ、析出させた石膏を除去した後に残る溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解し、テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させ、析出させたフッ化カルシウムを除去することによって得られた溶液中のフッ素の濃度が低いことがわかった。これより、その溶液を、廃硫酸中のフッ素をテトラフルオロホウ酸イオンに変化させるためのホウ素化合物として使用できることがわかる。
一方、比較例1〜3では、溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンの大部分は分解されないため、溶液中のホウ素の多くは、テトラフルオロホウ酸イオンの状態で残り、溶液中のホウ酸の多くは、廃硫酸中のフッ素と反応しない。このため、比較例1〜3で得られた溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させ、析出させたフッ化カルシウムを除去することによって得られた溶液を、廃硫酸中のフッ素をテトラフルオロホウ酸イオンに変化させるためのホウ素化合物として使用しても、廃硫酸中のフッ素をテトラフルオロホウ酸イオンに変化させる効果が低いことがわかる。
実施例1〜6と比較例4〜6とを比較することにより、廃硫酸中にホウ素化合物を添加することにより、廃硫酸にカルシウム源を添加することによってフッ素の濃度が低い石膏を得ることのできるpHの範囲を広げられることがわかった。これにより、廃硫酸から得られる石膏の量を増やすことができる。
実施例8より、フッ素を含有する廃硫酸にホウ素化合物を添加し、ホウ素化合物を添加した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させ、析出させた石膏を除去した後に残る溶液中のテトラフルオロホウ酸イオンを分解し、テトラフルオロホウ酸イオンを分解した溶液にカルシウム源を添加してフッ化カルシウムを析出させ、析出させたフッ化カルシウムを除去することによって得られた溶液を用いて、フッ素を含有する廃硫酸へのホウ素化合物の添加量を低減できること、およびフッ素の含有量の低い石膏を製造できることがわかった。また、実施例8で得られた、析出したフッ化カルシウムを除去した後に残る溶液も、フッ素の濃度が低いので、廃硫酸中のフッ素をテトラフルオロホウ酸イオンに変えるために用いることができることがわかった。
図1