(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳化装置の流路内で、モノマを含むモノマ液を水を含む水性液と混合して、分散相としての前記モノマ液の液滴と連続相としての前記水性液とを含有する乳化液を形成させる工程と、
前記乳化液中で前記モノマを重合させて、前記モノマの重合体を含むポリマ粒子を形成させる工程と、
を含み、
前記流路の表面が、両性ポリマを含むコーティング膜で覆われている、
ポリマ粒子を製造する方法。
前記両性ポリマが、ホスホベタイン基、スルホキシベタイン基、及びカルボキシベタイン基からなる群より選ばれる少なくとも一種のベタイン基を有する、請求項1に記載の方法。
前記流路に前記水性液を流し込みながら、前記水性液の内部で前記モノマ液を供給することにより、前記モノマ液を前記水性液に分散させる、請求項1又は2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
ポリマ粒子を製造する方法の一実施形態は、乳化装置の流路内で、モノマを含むモノマ液を水を含む水性液に分散させて、分散相としてのモノマ液の液滴と連続相としての水性液とを含有する乳化液を形成させる工程と、乳化液中でモノマを重合させて、モノマの重合体を含むポリマ粒子を形成させる工程と、を含む。
(乳化装置)
【0012】
乳化装置として、乳化液を形成するための流路を有する一般的な乳化装置を使用することができる。流路は特に、マイクロ流路であることができる。マイクロ流路の幅は、例えば10〜1000μmであってもよい。乳化装置の市販品として、例えば、マイクロプロセスサーバー(株式会社日立製作所製)、マイクロ流路(株式会社化繊ノズル製作所製)、マイクロチャネル乳化装置(株式会社イーピーテック製)、SPG膜乳化装置(SPGテクノ株式会社製)が挙げられる。均一な液滴形成が容易であり、多数の液滴形成用流路を密着状に設けることが出来る二重管式のマイクロ流路が好ましい。
【0013】
乳化装置にモノマ液及び水性液を供給する方法としては、通常の方法を用いることができる。例えば、ポンプで供給する方法、重力を利用して水圧をもって供給する方法が挙げられる。ポンプとしては、例えばシリンジポンプ、モーノポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ロータリーポンプ、チューブポンプ、及びギヤーポンプが挙げられる。重力を利用して水圧をもって供給する方法としては、例えばマイクロスフィア製造装置と、モノマ液、水性液それぞれを供給するタンクとの高低差を調節して、モノマ液と水性液の水圧差から、それぞれの流量バランスを調節する方法が挙げられる。
【0014】
分散相と連続相とのそれぞれの流れに脈流が発生すると、得られるポリマ粒子の単分散性が影響を受けるため、できるだけ脈流を抑えた方法を取ることが好ましい。
【0015】
乳化装置は金属製、ガラス製、又は樹脂製であることができる。流路の表面は、例えば、ポリエステルなどの樹脂、ステンレス鋼など金属、又はガラスによって形成されていてもよい。流路の表面は、錆にくく、モノマによって腐食又は劣化しにくい点で、ステンレス製又はガラス製であることが好ましい。流路の表面上に水酸基が存在していてもよいし、流路の表面にシリカが蒸着されていてもよい。例えばガラスから形成された表面には、通常、水酸基が存在している。
【0016】
流路の表面を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンに代表されるポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、尿素樹脂、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスルホン、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これら樹脂から形成された表面は、通常、疎水性であるため、その表面にシリカを蒸着させることで、コーティング膜をより強固に固定することができる。
【0017】
表面にシリカを蒸着させる方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法などが挙げられる。例えば、真空蒸着法によって流路の表面にシリカを蒸着させる場合、流路を有する乳化装置を真空容器内に入れ、加熱下で脱気した後、テトラメトキシシランなどのアルコキシシランの蒸気を当該真空容器内に導入することによって流路の表面にシリカを蒸着させることができる。
【0018】
図1は、乳化装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示す乳化装置1は、対向する第1の部材13及び第2の部材14を有しており、第1の部材13と第2の部材14との間には、水性液25が充填される連続相供給路15が設けられている。第1の部材13に、モノマ液を供給する複数のノズル12が装着されている。第2の部材14は、筒状の内周面を表面として有する複数の流路10を形成しており、ノズル12が、流路10の入り口近傍にノズル12の先端が位置するように配置されている。流路10の表面10Sは、両性ポリマを含むコーティング膜で覆われている。
【0019】
連続相供給路15から、連続相としての水性液25を流路10内に流し込みながら、ノズル12の水性液25の内部に配置された先端から、流路10に向けてモノマ液20が供給される。これにより、モノマ液20が、水性液25に囲まれた状態で供給される。流路10内でモノマ液20が水性液25と混合され、それによって水性液25中に分散するモノマ液の液滴21が形成される。その結果、流路10の出口から、分散相としての液滴21及び連続相としての水性液25からなる乳化液30が排出される。
【0020】
得られた乳化液30中でモノマを重合することにより、高い単分散性を有するポリマ粒子が形成される。
【0021】
(両性ポリマ)
コーティング膜を形成する両性ポリマは、カチオン性基及びアニオン性基を含むベタイン基を有するポリマである。両性ポリマは、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基等)を更に有していてもよい。係る両性ポリマは、例えば、ベタイン基を有するベタインモノマに由来するモノマ単位及びアルコキシシシリル基を有するモノマ単位を有する共重合体であることができる。
【0022】
ベタインモノマは、例えば、ホスホベタイン基、スルホキシベタイン基、及びカルボキシベタイン基からなる群より選ばれるベタイン基を有するモノマであってもよい。これらのベタインモノマは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのベタインモノマのなかでは、親水性の保持に優れていることから、スルホキシベタイン基を有するモノマが好ましい。
【0023】
スルホキシベタイン基を有するモノマ(スルホキシベタインモノマ)としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するスルホキシベタインモノマが挙げられる。好適なスルホキシベタインモノマとしては、例えば、式(I):
【化1】
で表わされ、式中、R
1が、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリロイルアミノアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を示し、R
2及びR
3が、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を示し、R
4は炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数1〜4のオキシアルキレン基を示す、スルホキシベタインモノマが挙げられる。式(I)で表わされるスルホキシベタインモノマは、両性ポリマの保持性を向上させる観点から好ましい。
【0024】
式(I)中のR
1としての(メタ)アクリロイルアミノアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリロイルアミノメチル基、(メタ)アクリロイルアミノエチル基、(メタ)アクリロイルアミノプロピル基、及び(メタ)アクリロイルアミノブチル基が挙げられる。R
1としての(メタ)アクリロイルオキシアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、及び(メタ)アクリロイルオキシブチル基が挙げられる。
【0025】
式(I)中のR
2又はR
3としての炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。R
2又はR
3としての炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基が挙げられる。R
2又はR
3としての(メタ)アクリロイルオキシアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリロイルアミノメチル基、(メタ)アクリロイルアミノエチル基、(メタ)アクリロイルアミノプロピル基、及び(メタ)アクリロイルアミノブチル基が挙げられる。
【0026】
式(I)中のR
4としての炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が挙げられる。R
4としての炭素数1〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロプレン基、及びオキシブチレン基が挙げられる。
【0027】
式(I)中のR
1は、下記式(Ia):
【化2】
で表され、式中、R
5が炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数1〜4のオキシアルキレン基を示し、R
6が酸素原子又は−NH−を示し、R
7が水素原子又はメチル基を示す、基であることが、親水性、防曇性及び防曇効果の保持性、並びに耐水性が総合的に優れたコーティング膜を形成できる観点から好ましい。
【0028】
式(I)で表わされるスルホキシベタインモノマの具体例としては、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインなどのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジメチルアンモニウムアルキル−α−スルホベタイン;
N−アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシメトキシメトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシプロポキシプロポキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N−アクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N−メタクリロイルオキシブトキシブトキシ−N,N−ジメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインなどのN−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアネルコキシ−N,N−ジメチルアンモニウムアルキル−α−スルホベタイン;
N,N−ジアクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキプロピル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウムブチル−α−スルホベタインなどのN,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N−メチルアンモニウムアルキル−α−スルホベタイン;
N,N,N−トリアクリロイルオキシメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシメチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシメチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシメチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシメチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシエチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシエチルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシエチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシエチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシエチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリタクリロイルオキシエチルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシエチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシエチルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシプロピルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシプロピルアンモニウムメチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシプロピルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシエチルアンモニウムエチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキプロピルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシプロピルアンモニウムプロピル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシプロピルアンモニウムブチル−α−スルホベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシプロピルアンモニウムブチル−α−スルホベタインなどのN,N,N−トリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウムアルキル−α−スルホベタインなどが挙げられる。ただし、スルホキシベタインモノマは、これら例示された化合物のみに限定されない。これらのスルホキシベタインモノマは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
カルボキシベタイン基を有するモノマ(カルボキシベタインモノマ)としては、例えば、下記式(II):
【化3】
で表され、式中、R
8及びR
9が、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
10が炭素数が1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を示し、R
11が炭素数1〜4のアルキレン基を示す、カルボキシベタインモノマが挙げられる。
【0030】
式(II)中のR
8又はR
9としての炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。
【0031】
式(II)中のR
10としての(メタ)アクリロイルオキシアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、及び(メタ)アクリロイルオキシブチル基が挙げられる。
【0032】
式(II)中のR
11としての炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が挙げられる。
【0033】
式(II)で表わされるカルボキシベタインモノマの具体例としては、N−アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−メタクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−アクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N−メタクリロイルオキシブチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタインなどのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン;N,N−ジアクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシメチル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシプロピル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジアクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N−ジメタクリロイルオキシブチル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタインなどのN,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N−メチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン;N,N,N−トリアクリロイルオキシメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシメチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシエチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシエチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシプロピルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシプロピルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリアクリロイルオキシブチルアンモニウム−α−カルボキシルベタイン、N,N,N−トリメタクリロイルオキシブチルアンモニウム−α−カルボキシルベタインなどのN,N,N−トリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウム−α−カルボキシルベタインが挙げられる。ただし、カルボキシベタインモノマは、これら例示された化合物のみに限定されるものではない。これらのカルボキシベタインモノマは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
ホスホリルベタイン基を有するモノマ(ホスホリルベタインモノマ)としては、例えば、下記式(III):
【化4】
で表され、式中、R
12が炭素数が1〜4アルキル基を有する(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を示し、R
13が炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R
14、R
15及びR
16が、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す、ホスホリルベタインモノマが挙げられる。
【0035】
式(III)中のR
12としての(メタ)アクリロイルオキシアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、及び(メタ)アクリロイルオキシブチル基が挙げられる。
【0036】
式(III)中のR
13としての炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が挙げられる。
【0037】
式(III)中のR
14、R
15又はR
16としての炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。
【0038】
式(III)で表わされるホスホリルベタインモノマの具体例としては、2−アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシメチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、及び2−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリンが挙げられる。
【0039】
両性ポリマは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ベタインモノマ以外のその他のモノマに由来するモノマ単位を更に含んでいてもよい。
【0040】
その他のモノマとしては、例えば、スチレン、α−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、スチレン、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラクタムが挙げられる。ただし、その他のモノマは、これら例示された化合物のみに限定されるものではない。その他のモノマは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
両性ポリマに含まれていてもよいその他のモノマに由来するモノマ単位の量は、モノマの種類などによって異なることから一概には決定することができないが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜調整することができる。
【0042】
両性ポリマは、アルコキシシリル基含有化合物に由来するアルコキシシリル基を有していてもよい。アルコキシシリル基含有化合物としては、例えば、式(IV):
【化5】
で表され、式中、R
17、R
18及びR
19が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R
17、R
18及びR
19のうちの少なくとも1つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R
20が炭素数1〜12のアルキレン基を示す、化合物、式(V):
【化6】
で表され、式中、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26及びR
27が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26及びR
27のうちの少なくとも1つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R
28及びR
29が、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、又は、炭素数1〜12のアルキレン基の1個又は2個のメチレン基が−O−、−C(O)O−、−O(O)C−、−NH−、−CO−、アリーレン基、ウレタン基又は1,2−イミダゾリン基に置き換えられた基を示す、アゾビス(トリアルコキシシリル)化合物、2,2’−アゾビス[2−(1−(トリエトキシシリルプロピルカルバモイル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、及び、2,2’−アゾビス[N−[2−(トリエトキシシリルプロピルカルバモイル)エチル]イソブチルアミド]が挙げられる。アルコキシシリル基含有化合物は、これら例示された化合物のみに限定されるものではない。これらのアルコキシシリル基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
式(IV)で表わされるアルコキシシリル基含有化合物の具体例としては、2−メルカプトメチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロルトリメトキシシラン、2−メルカプトブチルトリメトキシシラン、2−メルカプトメチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトプロルトリエトキシシラン、2−メルカプトブチルトリエトキシシラン、2−メルカプトメチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトプロルトリプロポキシシラン、2−メルカプトブチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトメチルトリブトキシシラン、2−メルカプトエチルトリブトキシシラン、2−メルカプトプロルトリブトキシシラン、及び2−メルカプトブチルトリブトキシシランが挙げられる。これらのアルコキシシリル基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
式(V)で表わされるアルコキシシリル基含有化合物の具体例としては、2,2’−アゾビス[2−(1−(トリメトキシシリルプロピルカルバモイル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(1−(トリエトキシシリルプロピルカルバモイル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(1−(トリプロポキシシリルプロピルカルバモイル)−2−イミダゾリン−2‐イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[N−[2−(トリメトキシシリルプロピルカルバモイル)エチル]イソブチルアミド]、2,2’−アゾビス[N−[2−(トリエトキシシリルプロピルカルバモイル)エチル]イソブチルアミド]、及び2,2’−アゾビス[N−[2−(トリプロポキシリルプロピルカルバモイル)エチル]イソブチルアミド]が挙げられる。これらのアルコキシシリル基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
両性ポリマを含むコーティング膜の耐摩耗性を向上させる観点から、式(V)で表わされるアルコキシシリル基含有化合物が好ましい。
【0046】
両性ポリマの重量平均分子量は、乳化の継続性、繰返し性を向上させる観点から、好ましくは5,000以上、10,000以上、15,000以上、又は20,000以上である。大粒径の液滴の乳化、単分散性を高める観点から、両性ポリマの重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下、100,000以下、又は50,000以下である。ここで、両性ポリマの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーなどによって測定することができる、標準ポリスチレン換算値であってもよい。
【0047】
重合に供されるモノマ100質量部あたりのアルコキシシリル基含有化合物の量は、耐水性および耐摩耗性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、防曇性を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0048】
モノマを重合させる際には、モノマ成分の重合反応を促進させる観点から、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体が挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、重合に供されるモノマ全量100質量部あたり0.01〜5質量部程度であることが好ましい。
【0050】
モノマを重合させる方法は、特に限定されないが、例えば、溶液重合法が挙げられる。溶液重合法の場合、例えば、モノマを溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら重合開始剤を添加することにより、モノマを重合させることができる。
【0051】
溶媒としては、例えば、純水などの水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルが挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
溶媒の量は、通常、モノマを溶媒に溶解させることによって得られる溶液におけるモノマの濃度が10〜80質量%程度となるように調整することが好ましい。
【0053】
モノマを重合させる際の重合温度、重合時間などの重合条件は、モノマの種類及びその使用量、重合開始剤の種類およびその使用量などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0054】
モノマを重合させるときの雰囲気は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
【0055】
重合反応の終了及び反応系内における未反応モノマの有無は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析方法で確認することができる。
【0056】
(コーティング膜)
乳化装置の流路の表面を覆うコーティング膜は、両性ポリマのみで構成されていてもよいし、両性ポリマ以外のポリマを、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で含んでいてもよい。コーティング膜における両性ポリマの含有量は、コーティング膜の質量を基準として、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。コーティング膜は、両性ポリマをフィルム状に成形することによって得ることができる。
【0057】
流路の表面の全面がコーティング膜に覆われていてもよいが、流路の表面が、コーティング膜で覆われていない部分を有していてもよい。流路の表面のうち、90〜100面積%が、コーティング膜で覆われていてもよい。
【0058】
コーティング膜の表面における水の接触角は、0〜10°であってもよい。コーティング膜の表面における水の接触角が、アセトンに24時間接触した後に0〜20°であってもよい。
【0059】
コーティング膜は、例えば、両性ポリマ及び溶媒を含むポリマ溶液を流路の表面に塗布し、塗膜から溶媒を除去することにより、形成することができる。ポリマ溶液に含まれる溶媒としては、例えば、純水などの水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルが挙げられる。溶媒は、これら例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
溶媒の量は、特に限定されないが、通常、塗工液における両性ポリマの濃度が10〜80質量%程度となるように調整することが好ましい。
【0061】
両性ポリマを含むポリマ溶液を流路の表面に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ドクターブレード法、浸漬法、刷毛塗法が挙げられる。
【0062】
両性ポリマを含むポリマ溶液を流路の表面に塗布する際の雰囲気は、通常、大気であればよい。ポリマ溶液を流路の表面に塗布する際の温度は、通常、常温であってもよく、加温であってもよい。
【0063】
塗膜から溶媒を除去する際には、必要により、形成された塗膜を加熱してもよい。加熱温度は、形成された塗膜に含まれている溶媒が蒸発する温度であればよいが、例えば、30〜300℃、40〜250℃、50〜230℃、又は50〜150℃であってもよい。加熱時間は、加熱温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10分間〜5時間程度である。加熱は、1段階または2段階以上の多段階で行なうことができる。その一例として、例えば、30〜80℃の温度で10分間〜2時間乾燥した後、100〜250℃の温度でさらに10分間〜2時間加熱する方法などが挙げられる。塗膜を加熱する際の雰囲気は、大気であってもよく、あるいは窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気であってもよい。塗膜を加熱する際の雰囲気は、大気圧であってもよく、あるいは減圧であってもよい。
【0064】
乾燥後のコーティング膜の厚さは、特に限定されないが、コーティング膜の強度を高めるとともにコーティング膜に可撓性を付与する観点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは3〜200μm、さらに一層好ましくは5〜150μmである。
【0065】
(ポリマ粒子)
乳化装置によって形成された乳化液中でモノマを重合させることにより、モノマの重合体を含む球状のポリマ粒子が形成される。モノマは、特に限定されないが、例えば、スチレン系のビニルモノマを含むことができる。モノマとしては、以下のような多官能性モノマ、単官能性モノマ等が挙げられる。
【0066】
多官能性モノマは、例えば、芳香族基と芳香族基に結合した2以上のビニル基とを有する架橋性モノマであってもよい。その具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、及びジビニルフェナントレンが挙げられる。これらの多官能性モノマは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも耐久性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れることから、ジビニルベンゼンを使用することが好ましい。
【0067】
モノマがジビニルベンゼンを含む場合、その含有量は、モノマ全質量基準で50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であることが好ましい。ジビニルベンゼンを多く含むことにより、耐久性、耐酸性及び耐アルカリ性により優れる傾向にある。
【0068】
単官能性モノマとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。これらの単官能性モノマは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、耐酸性及び耐アルカリ性に優れるという観点から、スチレンを使用することが好ましい。カルボキシ基、アミノ基、水酸基、アルデヒド基等の官能基を有するスチレン誘導体も使用することができる。
【0069】
モノマ液は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、モノマ100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用することができる。
【0070】
本実施形態のポリマ粒子は多孔質粒子であっても良い。多孔質粒子は、多孔質化剤を含むモノマ液から形成される粒子であり、通常の懸濁重合、乳化重合等によって合成される。
【0071】
多孔質化剤としては、重合時に相分離を促し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒である脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類等が挙げられる。具体的には、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。これら多孔質化剤は、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
多孔質化剤の量は、モノマ全質量に対して0〜200質量%であってもよい。多孔質化剤の量によって、多孔質粒子の空隙率をコントロールできる。さらに、多孔質化剤の種類によって、多孔質粒子の細孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
【0073】
多孔質粒子の細孔容積は、多孔質粒子の全体積基準で30体積%以上70体積%以下であることが好ましく、40体積%以上70体積%以下であることがより好ましい。多孔質粒子は、平均細孔径が0.1μm以上0.6μm未満である細孔、すなわちマクロポアー(マクロ孔)を有することが好ましい。多孔質粒子の平均細孔径は、0.2μm以上0.6μm未満であることがより好ましい。平均細孔径が0.1μm以上であると、細孔内に物質が入りやすくなる傾向にあり、平均細孔径が0.6μm未満であると、比表面積が充分なものになる。これらは上述の多孔質化剤により調整可能である。
【0074】
多孔質粒子の比表面積は、30m2/g以上であることが好ましい。より高い実用性の観点から、比表面積は35m2/g以上であることがより好ましく、40m2/g以上であることがさらに好ましい。
【0075】
乳化液の連続相として使用する水を多孔質化剤とすることもできる。水を多孔質化剤とする場合は、モノマに油溶性界面活性剤を溶解させ、水を吸収することによって、多孔質化することが可能となる。
【0076】
多孔質化剤として使用される油溶性界面活性剤としては、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のソルビタンモノエステル、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノミリステート又はヤシ脂肪酸から誘導されるソルビタンモノエステル;分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のジグリセロールモノエステル、例えば、ジグリセロールモノオレエート(例えば、C18:1(炭素数18個、二重結合数1個)脂肪酸のジグリセロールモノエステル)、ジグリセロールモノミリステート、ジグリセロールモノイソステアレート又はヤシ脂肪酸のジグリセロールモノエステル;分岐C16〜C24アルコール(例えば、ゲルベアルコール)、鎖状不飽和C16〜C22アルコール又は鎖状飽和C12〜C14アルコール(例えば、ヤシ脂肪アルコール)のジグリセロールモノ脂肪族エーテル;及びこれらの混合物が挙げられる
【0077】
これらのうち、ソルビタンモノラウレート(例えば、SPAN(スパン、登録商標)20、好ましくは純度が約40%超、より好ましくは純度が約50%超、さらに好ましくは純度が約70%超のソルビタンモノラウレート);ソルビタンモノオレエート(例えば、SPAN(スパン、登録商標)80、好ましくは純度が約40%超、より好ましくは純度が約50%超、さらに好ましくは純度が約70%超のソルビタンモノオレエート);ジグリセロールモノオレエート(好ましくは純度が約40%超、より好ましくは純度が約50%超、さらに好ましくは純度が約70%超のジグリセロールモノオレエート);ジグリセロールモノイソステアレート(好ましくは純度が約40%超、より好ましくは純度が約50%超、さらに好ましくは純度が約70%超のジグリセロールモノイソステアレート);ジグリセロールモノミリステート(好ましくは純度が約40%超、より好ましくは純度が約50%超、さらに好ましくは純度が約70%超のソルビタンモノミリステート);ジグリセロールのココイル(例えば、ラウリル基、ミリストイル基等)エーテル;及びこれらの混合物が好ましい。
【0078】
これらの油溶性界面活性剤は、モノマ全質量に対して、5〜80質量%の範囲で用いることが好ましい。油溶性界面活性剤の含有量が5質量%以上であると、水滴の安定性が充分となることから、大きな単一孔を形成しやすくなる。また、油溶性界面活性剤の含有量が80質量%以下であると、重合後にーポリマ粒子が形状をより保持しやすくなる。
【0079】
乳化液の連続相としての水性液は、水、及び水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合溶媒のような水性媒体を含む。水性液は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
【0080】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。
【0081】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0082】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0083】
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0084】
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマ重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0085】
重合温度は、モノマ及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
ポリマ粒子の合成において、粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を用いてもよい。
【0086】
乳化液は、高分子分散安定剤を含んでいてもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等)、ポリビニルピロリドンが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の量は、モノマ100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0087】
モノマが単独で重合することを抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
【0088】
ポリマ粒子及び重合前の液滴の平均粒径は、好ましくは300μm以下、150μm以下、又は100μm以下である。ポリマ粒子の平均粒径は、ポリマ粒子をカラム充填剤として用いたときの通液性の向上の観点から、好ましくは1μm以上、10μm以上、30μm以上、又は50μm以上である。ここでの粒径は、粒子の最大幅を意味する。
【0089】
ポリマ粒子の粒径の変動係数(C.V.)は、通液性の向上の観点から、好ましくは、15%以下、3〜15%、5〜15%、又は5〜10%である。
【0090】
重合前のモノマ液の液滴の平均粒径及び粒径の変動係数も、上記と同様の範囲であってもよい
【0091】
ポリマ粒子の平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)は、以下の測定法により求めることができる。
1)粒子を、超音波分散装置を使用して水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%のポリマ粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)を測定する。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
(両性ポリマの合成)
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、品番:473160−5G)49g、シランカップリング剤として3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−803)0.35gおよび純水115.15gを入れた。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0094】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した。その後、コルベンに2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、品番:VA−086、分子量:288.35)0.99gを加え、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、さらにコルベンに2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]0.49gを加え、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させることにより、スルホキシベタイン基及びアルコキシシリル基を有する両性ポリマを含有する濃度5質量%のポリマ溶液を得た。
【0095】
得られたポリマ溶液を水浴にて30℃に冷却し、水329.0gで希釈することにより、透明なポリマ溶液を得た。ポリマ溶液に含まれている両性ポリマの重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、品番:HLC−8320GPC)で測定したところ、3,2000であった。
【0096】
(両性ポリマによる乳化装置のコーティング)
ポリマ溶液に、幅130μmのマイクロ流路を有する乳化装置(株式会社化繊ノズル製作所製)を5分間浸漬し、取り出した乳化装置を自然乾燥させた。その後、乳化装置を80℃で1時間かけてエージングさせ、さらに純水で洗浄して、乳化装置のマイクロ流路を覆う両性ポリマのコーティング膜を形成した。
【0097】
(接触角測定)
形成されたコーティング膜の表面の大気中における水の接触角を測定した。さらに、乳化装置をアセトンに浸漬し、その後、コーティング膜の大気中における水の接触角を測定した。接触角は、水をコーティング膜の表面に滴下した後、接触角測定装置を用いた画像解析においてθ/2法により算出した。接触角が小さ過ぎて測定できない場合は「−」とした。
【0098】
(乳化試験)
両性ポリマのコーティング膜を有する乳化装置を用いて、連続相としてのラウリル硫酸ナトリウムの濃度50ppmの水溶液と、分散相としてのジビニルベンゼン(含有量96%)及びこれに濃度0.05質量%で溶解した過酸化ベンゾイル(25%含水)を含むモノマ液とからなる乳化液を調製した。乳化装置のマイクロ流路に連続相を流速70mL/hで供給しながら、そこに、分散相としてのモノマ液を流路入口近傍に設けられたノズルから流速30mL/hで注入することでマイクロ流路内で乳化を行い、マイクロ流路出口から乳化液を回収した。得られた乳化液中に分散しているモノマ液の液滴200個を光学顕微鏡で観察し、平均粒径と粒径の変動係数(C.V.)を算出した。
【0099】
継続性評価
乳化装置で、15%以下の粒径の変動係数を維持しながら、均一かつ安定に乳化液を形成できる時間を計測した。計測された時間が3時間以上を「A」、3時間未満を「C」と判定した。
【0100】
繰返し性評価
乳化装置の流路内を洗浄せず、同様の乳化液の形成を繰り返して行い、乳化装置で、15%以下の粒径の変動係数を維持しながら、均一かつ安定に乳化液を何回繰り返して形成できるか評価した。均一かつ安定な乳化液を形成できた繰返しの回数が10回以上を「A」、10回未満を「C」と判定した。
【0101】
(重合と精製)
回収した乳化液中で窒素バブリングを1時間行った。その後、乳化液を80℃に昇温し、その温度を6時間保つことで、ジビニルベンゼンの重合反応を進行させた。生成したポリマ粒子を、超純水、及びアセトンで洗浄してから、アセトン中に分散させた。得られた分散液を200μmメッシュ及び60μmメッシュの篩で濾過し、60μmメッシュの篩上に残ったポリマ粒子を減圧乾燥して、ポリマ粒子の粉末を得た。
【0102】
(実施例2)
両性ポリマの合成において、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタインの代りに、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(東京化成工業株式会社製、品番:M2005)を使用して、ホスホリルベタイン基及びアルコキシシリル基を有する両性ポリマを得たこと以外は同様にして実施例1と同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0103】
(実施例3)
両性ポリマの合成において、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタインの代りに、N−アクリロイルアミノエチル−N,N−ジメチルアンモニウムメチル−α−カルボキシベタイン(大阪有機化学工業株式会社製、品番:CMBAm)を使用して、カルボキシベタイン基及びアルコキシシリル基を有する両性ポリマを得たこと以外は同様にして実施例1と同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0104】
(実施例4)
(両性ポリマの合成)
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン49g、シランカップリング剤としての3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.35gおよび純水197.40gを入れた。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0105】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した。その後、コルベンに2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]2.47gを入れ、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、コルベンに2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]0.49gをさらに加え、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させることにより、スルホキシベタイン基及びアルコキシシリル基を有する両性ポリマを含有する濃度5質量%のポリマ溶液を得た。
【0106】
得られたポリマ溶液を水浴にて30℃に冷却し、水246.7gで希釈することにより、透明なポリマ溶液を得た。ポリマ溶液に含まれている両性ポリマの重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定したところ、1,4000であった。
【0107】
得られた両性ポリマを使用したこと以外は同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0108】
(実施例5)
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン49g、シランカップリング剤として3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.35gおよび純水49.35gを入れた。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0109】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した。その後、コルベンに2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]0.10gを添加し、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、コルベンに2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]0.49gを更に加え、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させることにより、スルホキシベタイン基及びアルコキシシリル基を有する両性ポリマを含有する濃度5質量%のポリマ溶液を得た。
【0110】
ポリマ溶液を水浴にて30℃に冷却し、水394.8gで希釈することにより、透明なポリマ溶液を得た。ポリマ溶液に含まれている両性ポリマの重量平均分子量(標準ポリスチレン換算値)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定したところ、10,5000であった。
【0111】
得られた両性ポリマを使用したこと以外は実施例1と同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0112】
(比較例1)
両性ポリマのコーティング膜を形成することなく、ステンレス鋼(SUS)製のマイクロ流路を有する乳化装置を使用し、実施例1と同様に乳化の継続性及び繰返し性を評価した。
【0113】
(比較例2)
両性ポリマのコーティング膜を形成することなく、ガラス製のマイクロ流路を有する乳化装置を使用し、実施例1と同様に乳化の継続性及び繰返し性を評価した。
【0114】
(比較例3)
N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタインの代りに、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(大阪有機化学工業株式会社製、品番:DMAMC)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、アンモニウム基及びアルコキシシリル基を有するカチオン性ポリマを得た。
【0115】
得られたカチオン性ポリマを使用したこと以外は実施例1と同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0116】
(比較例4)
N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタインの代りに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬工業株式会社製、品番:017-15722)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、スルホ基及びアルコキシシリル基を有する濃度5質量%のアニオン性のポリマを得た。
【0117】
得られたポリマを使用したこと以外は実施例1と同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0118】
(比較例5)
N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタインの代りに、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、品番:V♯MTG)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、オキシエチレン基及びアルコキシシリル基を有する非イオン性のポリマを得た。
【0119】
得られたポリマを使用したこと以外は実施例1と同様にして、コーティング膜で覆われたマイクロ流路を有する乳化装置を準備した。この乳化装置を用いて、実施例1と同様に、乳化の継続性及び繰返し性を評価し、さらに重合反応も行った。
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示されるように、両性ポリマのコーティング膜で覆われた流路を用いた実施例によれば、継続的に繰返して高い単分散性でポリマ粒子が得られることが確認された。