(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱板を貫通し、当該加熱板の表面に対して突没自在に設けられた複数の昇降部材と、前記遮熱板の下方側に設けられ、前記複数の昇降部材を昇降させるための昇降機構と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の実施の形態に係る基板加熱装置である加熱装置1は、
図1、2に示すように、矩形の筐体10を備えている。筐体10は遮熱板である水冷板2により、内部が上下に区画されており、筐体10の長さ方向を前後方向とすると、例えば筐体10の前方側の端面における水冷板2よりも上方の位置には、ウエハWを搬入出するための搬入出口11が形成されている。搬入出口11には、搬入出口11を開閉するシャッタ12が設けられ、シャッタ12は、筐体10の内側であって、水冷板2の下方に設けられたシャッタ開閉機構13により、開閉するように構成されている。
【0011】
図3に示すように水冷板2は、矩形の金属板で形成され、その内部に例えば冷却水を通流させるための冷却流路22が引き回されている。冷却流路22は、冷却流路22に例えば冷却水を通流させるためのチラー23に接続されている。水冷板2における左右寄りの位置には、水冷板2を厚さ方向に貫通し、前後方向に伸びる切り欠き21が各々形成されている。また水冷板2の前方寄りの位置には、後述する加熱部4に設けられる昇降ピン44を昇降させるための孔部24が周方向に3カ所形成されている。また水冷板2の上面には、冷却流路22からの水漏れを検知するためのリークセンサー25が設けられている。
【0012】
図1に戻って水冷板2の上方には、搬入出口11から見て手前側(前方側)から奥側(後方側)に向かって、ウエハWを冷却する冷却板である冷却プレート3と、ウエハWを加熱する加熱部4と、がこの順で並べて設けられ、冷却プレート3及び加熱部4は、各々支持部材38、48を介して水冷板2の上面に固定されている。従って水冷板2は、冷却プレート3の下方側から加熱部4における後述する加熱板40の下方側に亘って設けられているということができる。
【0013】
冷却プレート3について、
図4、
図5も参照して説明する。
図4に示すように冷却プレート3は、円板状の金属板30を備え、金属板30の下面には、冷却流路31が下面全体を引き回されるように設けられている。なお図面が繁雑になることを避けるため
図1、
図5では、金属板30のみ記載している。冷却流路31には、チラー32が接続されており、冷却流路31に例えば冷却水を通流させることにより、金属板30上に載置されたウエハWを冷却する。
【0014】
また冷却プレート3の表面には、ウエハWと冷却プレート3との間を一定に保つための例えば15個のギャップピン33が分散して配置されると共に、冷却プレート3の中心を囲む円環状の凸状部34が形成されている。凸状部34は、反りが発生しているウエハWについても、ウエハWの中心部が確実に冷却プレート3に接するようするにために設けられている。また凸状部34は、ウエハWの中心部のみを局所的に冷却することを避けるため、円環状に構成されている。
【0015】
図4、
図5に示すように冷却プレート3には、厚さ方向に貫通する貫通孔35が、周方向に3か所形成されており各貫通孔35には各々昇降部材である昇降ピン36が配置されている。昇降ピン36は昇降機構37により昇降し、冷却プレート3の表面から突没するように構成されている。また昇降機構37は、水冷板2に固定され水冷板2により、冷却されるように構成されている。
【0016】
加熱部4について、
図1、
図2及び
図6を参照して説明すると、加熱部4は、ウエハWが載置される加熱板40と、加熱板40を収納する下部材41と、加熱板40に載置されたウエハWの左右及び上方を囲み、前後方向が開放されるように構成された天板部材42と、を備えている。
【0017】
加熱板40は、扁平な円柱形状に構成され、断熱板40cと、板状のヒータ40bと、炭化シリコンなどの表面部材40aと、が下層側からこの順で積層されて構成されている。加熱板40の上面には、ウエハWを加熱板の表面から一定の距離にて支持するための例えば図示しないギャップピンが分散して設けられている。下部材41は、例えば扁平な有底円筒形状に構成されている。また下部材41には、その上端部に窒素ガスを加熱板40の表面を流れるように規制するためのフランジ41aが形成されている。加熱板40及び下部材41には、厚さ方向に貫通する貫通孔43が、周方向に3か所形成されており各貫通孔43には各々昇降ピン44が配置されている。
【0018】
昇降ピン44は前述の水冷板2に形成された孔部24に各々挿入され、水冷板2の下方であって、筐体10の底板の上面に設けられた昇降機構45に接続されている。昇降ピン44は、昇降機構45により昇降し、加熱板40の上面から突没するように構成されている。また
図6に示すように、筐体10内における加熱部4の左右の側壁及び天板部材42の上方の天井面には、加熱部4の熱が筐体10の外へ放熱されるのを抑制するための断熱パネル46が各々設けられている。
【0019】
また
図1に示すように加熱装置1は、冷却プレート3と、加熱部4と、の間でウエハWを搬送するための基板搬送機構であるウエハ搬送機構5を備えている。ウエハ搬送機構5について
図1、
図2、
図5及び
図7を参照して説明する。なお
図7においては水冷板2の一部を簡略化して示している。
図5及び
図7に示すように冷却プレート3の左側及び右側の位置に各々上下に伸びる支持部51A、51Bが互いに対向するように設けられている。支持部51A、51Bの上方側端部は、
図1、
図2、
図5及び
図7に示すように、先端が夫々右側及び左側に向かって梁出すように形成されている。また支持部51A、51Bの先端の上面には、例えばセラミック、あるいは石英で構成され、冷却プレート3から見て加熱部4側に向かって(後方に向かって)伸び、ウエハWの下面における左側周縁部及び右側周縁部を夫々保持する板状の左側保持部材52A及び右側保持部材52Bが設けられている。
【0020】
図7に示すように左側保持部材52A及び右側保持部材52Bの上面には、保持したウエハWの飛出しを規制するためにウエハWの保持位置の前後に設けられた飛出し防止ピン56と、ウエハWが載置されるギャップピン57とが設けられている。この例では、各支持部51A、51Bと、左側保持部材52A及び右側保持部材52Bと、は基板保持部を構成する。
【0021】
図7に示すようにウエハ搬送機構5は各支持部51A、51Bが水冷板2に形成された切欠き21に各々挿入されており、
図1、
図5に示すように各支持部51A、51Bの基端側は、水冷板2の下方に設けられた共通の移動機構54に接続されている。移動機構54は、例えば図示しないベルト駆動機構などにより、水冷板2の下方にて、前後方向に伸びるガイドレール55に沿って移動するように構成されている。なお図中14はガイドレール55の高さを調整するための台部である。この移動機構54をガイドレール55に沿って移動させることにより、左側保持部材52A及び右側保持部材52Bが、
図1、
図2中実線で示す冷却プレート3の上方位置と、
図1、
図2中破線で示す加熱板40の上方位置との間を移動する。この時左側保持部材52A及び右側保持部材52Bが加熱板40の上方位置に位置したときには、
図6に示すように左側保持部材52A及び右側保持部材52Bが天板部材42と加熱板40との間に挿入され、昇降ピン44とウエハ搬送機構5との協働作用によりウエハWの受け渡しが行われる。
【0022】
図1に戻って、冷却プレート3の後方側(加熱部4側)の上方には加熱板40の表面に低酸素雰囲気を形成するための例えば不活性ガスである窒素(N
2)ガスの一方向流を形成するための第1のガス供給部7が設けられている。
第1のガス供給部7は、
図1、
図2に示すように左右方向に伸びるように配置された円筒形状の筒状部70を備え、筒状部70の側面には、加熱板40の表面に向かってガスを吐出する吐出孔70aが筒状部70の長さ方向に複数形成されている。また
図1に示すように筒状部70には、ガス供給路71の一端が接続され、ガス供給路71の他端には、例えばN
2ガスが貯留されたN
2ガス供給源72が接続されている。また
図1中のM71及びV71は流量調整部及びバルブである。
【0023】
また
図1に示すように冷却プレート3の上方には、冷却プレート3に向けて低酸素ガス、例えば不活性ガスであるN
2ガスを供給する第2のガス供給部8が設けられている。第2のガス供給部8は、扁平な角筒状に構成され、下面が複数の孔部80が形成されたパンチングプレートで構成されている。第2のガス供給部8には、ガス供給路81の一端が接続され、ガス供給路81の他端には、既述のN
2ガス供給源72が接続されている。また
図1中のM81、V81は流量調整部及びバルブである。
また
図1、
図2に示すように筐体10の奥側の側面における加熱板40の表面の高さの位置には、筐体10内の雰囲気を排気するための排気部15が設けられており、排気部15は、工場排気に接続されている。
【0024】
また
図1に示すように加熱装置1は、加熱装置1を制御する制御部9を備えている。制御部9には、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムは、加熱装置1の各部に制御信号を送信して後述の作用の説明に示す加熱装置1の動作を制御するように命令(各ステップ)が組み込まれている。
【0025】
続いて上述の加熱装置1が組み込まれる基板処理装置である塗布、現像装置の全体構成について簡単に述べておく。塗布、現像装置は
図8及び
図9に示すようにキャリアブロックB1と、処理ブロックB2と、インターフェイスブロックB3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックB3には、更に露光ステーションB4が接続されている。
【0026】
キャリアブロックB1は、製品用の基板である例えば直径300mmのウエハWを複数枚収納する搬送容器であるキャリアC(例えばFOUP)から装置内に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置ステージ101と、ドア102と、キャリアCからウエハWを搬送するための搬送アーム103と、を備えている。
処理ブロックB2はウエハWに液処理を行うための第1〜第6の単位ブロックD1〜D6が下から順に積層されて構成され、各単位ブロックD1〜D6は、例えば各々異なる塗布液あるいは現像液を塗布する塗布ユニットを備えることを除いて概ね同じ構成である。
【0027】
図9に代表して単位ブロックD3の構成を示すと、単位ブロックD3には、キャリアブロックB1側からインターフェイスブロックB3へ向かう直線状の搬送領域R3を移動する搬送アームA3と、カップモジュール111を備えた、例えばウエハWにSOC膜を塗布するための塗布ユニット110と、が設けられている。また棚ユニットU1〜U6には本発明の加熱装置1が積層されている。
搬送領域R3のキャリアブロックB1側には、互いに積層された複数のモジュールにより構成されている棚ユニットU7が設けられている。搬送アーム103と搬送アームA3との間のウエハWの受け渡しは、棚ユニットU7の受け渡しモジュールと搬送アーム104とを介して行なわれる。
【0028】
インターフェイスブロックB3は、処理ブロックB2と露光ステーションB4との間でウエハWの受け渡しを行うためのものであり複数の処理モジュールが互いに積層された棚ユニットU8、U9、U10を備えている。なお図中105、106は夫々棚ユニットU8、U9間、棚ユニットU9、U10間でウエハWの受け渡しをするための搬送アームであり、図中107は、棚ユニットU10と露光ステーションB4との間でウエハWの受け渡しをするための搬送アームである。
【0029】
塗布、現像装置及び露光ステーションB4からなるシステムのウエハWの搬送経路の概略について簡単に説明する。ウエハWは、キャリアC→搬送アーム103→棚ユニットU7の受け渡しモジュール→搬送アーム104→棚ユニットU7の受け渡しモジュール→単位ブロックD1(D2)→単位ブロックD3(D4)→インターフェイスブロックB3→露光ステーションB4→インターフェイスブロックB3→単位ブロックD5(D6)→棚ユニットU7の受け渡しモジュールTRS→搬送アーム103→キャリアCの順で流れていく。
【0030】
続いて本発明の実施の形態に係る加熱装置の作用について
図10〜
図24の模式図を用いて説明する。例えば塗布ユニット110にてSOC膜が塗布されたウエハWは、
図10に示すように搬送アームA3により、塗布ユニット110から取り出されて保持されている。この時加熱部4の加熱板40が例えば600℃に加熱され、冷却プレート3には、冷却水が通流されている。また
図10〜
図24においては、水冷板2には、冷却水が通流されているが、図示を省略した。またウエハ搬送機構5は、冷却プレート3の上方の位置にて待機している。
【0031】
次いで
図11に示すようにシャッタ12を開くと共に、ウエハ搬送機構5を加熱部4側に移動させる。さらに
図12に示すようにウエハWを保持した搬送アームA3を加熱装置1内に進入させた後、冷却プレート3側の昇降ピン36を上昇させて、昇降ピン36により搬送アームA3に保持されたウエハWを受け取る。その後搬送アームA3を加熱装置1の外に退避させ、シャッタ12を閉じる。
【0032】
続いて
図13に示すように、第1のガス供給部7及び第2のガス供給部8からN
2ガスの吐出を開始すると共に、排気部15から排気を開始する。なお以下
図14〜
図18においても第1のガス供給部7及び第2のガス供給部8からN
2ガスの吐出及び排気部15からの排気を継続しているが、第1のガス供給部7、第2のガス供給部8及び排気部15の記載を省略している。従って、この間筐体10内は、N
2ガスで満たされ、ウエハWの載置される雰囲気は、低酸素雰囲気となっている。次いで
図14に示すようにウエハ搬送機構5を冷却プレート3側に移動させると共に、冷却プレート3の昇降ピン36を下降させて、ウエハWをウエハ搬送機構5に受け渡す。
【0033】
その後
図15に示すようにウエハWの左右両縁部を保持したウエハ搬送機構5を加熱部4側に移動させる。さらに
図16に示すように加熱部4の昇降ピン44によりウエハWを突き上げて受け取り、ウエハ搬送機構5を冷却プレート3の上方に移動させる。続いて
図17に示すように昇降ピン44を下降させてウエハWを加熱板40に載置し、ウエハWを例えば60秒間加熱する。
次いでウエハWの加熱が終了すると、
図18に示すように加熱部4に設けた昇降ピン44によりウエハWを突き上げ、ウエハ搬送機構5を加熱部4側に移動させ、昇降ピン44と、ウエハ搬送機構5と、の協働作用によりウエハWをウエハ搬送機構5に受け渡す。
【0034】
続いて
図19に示すようにウエハWを保持したウエハ搬送機構5を冷却プレート3の上方に移動させる。次いで
図20に示すように冷却プレート3側の昇降ピン36によりウエハWを突き上げ、さらにウエハ搬送機構5を加熱部4側に移動させる。その後
図21に示すように昇降ピン36を下降させてウエハWを冷却プレート3に載置する。またウエハ搬送機構5は、加熱部4側に移動し、ウエハWが冷却プレート3に載置された後、速やかに冷却プレート3の上方に移動させておく。そしてウエハWを例えば70秒間冷却する。これによりウエハWは110℃まで冷却される。
【0035】
ウエハWの冷却が終了すると、
図22に示すように第1のガス供給部7、第2のガス供給部8からのN
2ガスの供給を停止して排気部15の排気を停止する。次いで
図23に示すようにウエハ搬送機構5を加熱部4側に移動させ、昇降ピン36を上昇させて冷却プレート3に載置されたウエハWを突き上げる。さらに
図24に示すようにシャッタ12を開き、搬送アームA3を加熱装置1内に進入させ、昇降ピン36と、搬送アームA3との協働作用により、ウエハWを搬送アームA3に受け渡す。
その後搬送アームA3によりウエハWを加熱装置1外に搬出し、昇降ピン36を下降させると共に、シャッタ12を閉じる。さらにウエハ搬送機構5を冷却プレート3側に移動させて待機する。
【0036】
上述の実施の形態においては、加熱板40により加熱処理されたウエハWをウエハ搬送機構5により冷却プレート3に搬送するように構成し、加熱板40の下方側から冷却プレート3の下方側に亘って配置された水冷板2の下方側にウエハWを搬送するための例えばベルト駆動機構からなる移動機構54を設けている。さらにウエハ搬送機構5の移動機構54及びガイドレール55を加熱部4の直下をできるだけ避けて配置している。そのため加熱板40の温度が600℃もの高温であっても、加熱板40の輻射熱が水冷板2により遮られるので移動機構54に対する耐熱性が大きくなる。
また加熱部4に設けた昇降ピン44の昇降機構45を水冷板2の下方に配置することで、加熱部4による輻射熱が昇降機構45へ及ぶことを抑制している。
【0037】
さらに冷却プレート3の左側及び右側から伸び出した支持部51A、51Bに各々前後方向に伸びる左側保持部材52A及び右側保持部材52BによりウエハWの左側周縁部と右側周縁部との下面を保持している。そのため左側保持部材52A及び右側保持部材52Bと冷却プレート3に設けた昇降ピン36及び加熱板に設けた昇降ピン44とが平面的に干渉しない。また冷却プレート3には、切り欠きを設けず昇降ピン36の貫通孔35を形成すればよいので、速やかに高い均一性をもってウエハWを冷却できる。
【0038】
またウエハWを片持ちで保持する場合には、ウエハWの重量により傾斜する場合があり、ウエハWの位置の変位量が大きくなることがある。そのため左側保持部材52A及び右側保持部材52BでウエハWの下面の左右の周縁を両もちで保持することで、ウエハWを安定した姿勢で保持することができる。
【0039】
またウエハ搬送機構5により、ウエハWを左右方向から保持するにあたって、2枚の板状の左側保持部材52A及び右側保持部材52Bを用いた構成としている。左側保持部材52A及び右側保持部材52Bは、温度が高い加熱板40の上方に進入するため、例えばセラミックスや石英などの部材を用いることが好ましいが、これらの部材は、加工が難しく、昇降ピン36、44とウエハ搬送機構5とが互いに干渉しないようにスリットを設けるなどの複雑な形状にすることが難しい。上述の実施の形態では、左側保持部材52A及び右側保持部材52Bを2枚の板状に構成するため、セラミックスや石英などの部材であっても簡単に加工することができる。
【0040】
また既述のように温度の高い加熱装置1ほど、駆動部における熱の負荷が大きくなることから、本発明は、高い温度で加熱を行う加熱装置、例えば450℃以上の温度で加熱を行う加熱装置に適用することでより大きな効果が得られる。
【0041】
また加熱装置1にウエハWを搬入していないとき、ウエハWを加熱するとき、さらにウエハWを冷却するときには、ウエハ搬送機構5を冷却プレート3側に移動させている。ウエハ搬送機構5が加熱部4側に位置していると、ウエハ搬送機構5が加熱部4の輻射する熱を蓄積してしまい、故障の原因となったり、メンテナンス周期が短くなることがある。そのため加熱装置1にウエハWを搬入していないとき、ウエハWを加熱するとき、さらにウエハWを冷却するときには、ウエハ搬送機構5を冷却プレート3側に移動させるようにすることが好ましい。
【0042】
また加熱部4はウエハWの表面に一方向流を形成する構成に限らず、加熱板40に載置されたウエハWの周囲から、気流を取り込み天板部の中央から排気する構成であってもよく、ウエハWの上方から処理雰囲気を構成するガスを供給し、ウエハW周囲の下方側から排気するように構成してもよい。
しかしウエハWの表面にN
2ガスの雰囲気を形成するにあたって、ウエハWの表面を一方から他方に向かって流れる一方向流を形成することで、ウエハWの温度の面内均一性、ウエハW表面の酸素濃度の抑制、昇華物の除去能の各々の低下を抑制することができる。また加熱板40と対向する天板部材42が一枚の板状で構成できるため、メンテナンス性が良く、さらに加工もしやすく、既述のセラミックや石英などの耐熱性の高い材料を用いやすい。
またウエハWの加熱は、大気雰囲気よりも酸素濃度が低い低酸素濃度雰囲気で行うことが必要であり、例えば酸素濃度が400ppm以下、好ましくは50ppm以下の雰囲気で行われる。低酸素濃度雰囲気は、一例として窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気が挙げられる。
[第2の実施の形態]
【0043】
また冷却プレート3を鉛直軸周りに回転させる回転機構を設け、ウエハWを加熱するときにウエハWが載置される角度を変えながら加熱するようにしてもよい。例えば
図25に示すように冷却プレート3、昇降ピン36及び昇降機構37を回転台300上に設置し、回転台300を回転軸301を介して水冷板2上に設けた回転機構302に接続する。これにより冷却プレート3、昇降ピン36及び昇降機構37が一体的に鉛直軸周りに回転する。また制御部9には後述の加熱装置1の作用に示した処理工程を実行するためのステップ群を含むプログラムが格納されたプログラム格納部が設けられている。
【0044】
なお冷却プレート3にはチラー32に接続された冷却流路31が設けられているため冷却プレート3の回転角度が制限されるが、冷却流路31に撓みを持たせ冷却プレート3を、例えば90度回転できるように構成すればよい。
第2の実施の形態に係る加熱装置1の作用について説明する。なお
図26〜
図29においては、ウエハWの載置角度が分かるようにノッチNを記載する。
【0045】
第2の実施の形態に係る加熱装置1においては、
図26に示したように、まず加熱装置1に搬入されたウエハWを第1の実施の形態と同様に、加熱部4に受け渡し、加熱板40に載置する。次いで例えば15秒加熱した後、ウエハWをウエハ搬送機構5に受け渡し、
図27に示すようにウエハ搬送機構5と冷却プレート3の昇降ピン36との協働作用により、ウエハWを冷却プレート3に載置する。次いで
図28に示すように冷却プレート3を例えば、時計回りに90度回転させ、その角度の状態で昇降ピン36によりウエハWを突き上げて、ウエハ搬送機構5に受け渡す。さらにウエハ搬送機構5によりウエハWを加熱部4に搬送して、ウエハ搬送機構5と昇降ピン44との協働作用により、ウエハWを加熱部4に載置する。なお冷却プレート3の回転角度が例えば90度に制限される場合には、ウエハWを冷却プレート3からウエハ搬送機構5に受け渡した後、冷却プレート3を反時計回りに90度回転させて最初の位置に戻しておくようにすればよい。
【0046】
この時ウエハWは、一旦加熱した後、冷却プレート3にて角度を90度回転させた後、改めて加熱板40に載置しているため、
図29に示すようにウエハWは、最初に加熱したときと比べて90度回転した状態で載置されて15秒加熱される。このようにウエハWを加熱板40に載置して15秒加熱する工程と、ウエハWを冷却プレート3に一旦載置し、角度を90度回転させる工程と、を繰り返して、ウエハWを加熱する。そして例えばウエハWを90度づつ回転させ、ウエハWの回転前を含む、計4種の角度にて加熱板40に載置して合わせて60秒間加熱処理を行う。その後第1の実施の形態と同様にウエハWを冷却プレート3に搬送し、ウエハWを例えば110℃まで降温して搬出する。なお冷却プレート3を回転させてウエハWの角度を変えるときには、ウエハWを冷却プレート3により冷却するようにしてもよく、冷却しなくてもよい。ここでは例えば各々10秒間冷却するものとする。
【0047】
ウエハWを加熱するときに、加熱板40は、その面内において、加熱温度に差が生じ、載置したウエハWが加熱されやすい部位と加熱されにくいとが生じることがある。そしてウエハWの面内で温度が不均一になるとウエハWの膜厚が不均一になることがある。
そのためウエハWを加熱部4に載置して、加熱するにあたって、ウエハWが載置される角度を変えながら加熱することで後述の実施例で示すようにウエハWの温度を面内で均一にすることができ、例えばウエハWの膜厚の面内均一性を改善することができる。
【0048】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係る加熱装置について説明する。この加熱装置は、加熱部4に代えて
図30に示す加熱部400が設けられたことを除いて第1の実施の形態に示す加熱装置1と同様に構成されている。
この加熱部400に設けられる天板部材401は、ウエハWの四方を囲む4枚のシャッタ402A〜402D(
図30では、ウエハWの左右に配置されたシャッタ402B、402Dのみ記載)を備え、各シャッタ402A〜402Dが各々個別に開閉するように構成されている。また天板部材401におけるウエハWの上方を覆う天井面の中央部に排気口403が形成され、工場排気に接続されている。また下部材401は、フランジ410aが上方から見て角型に形成されており、各シャッタ402A〜402Dを閉じることで、各シャッタ402A〜402Dの下面がフランジ410aの上方に位置し、ウエハWの側方が密閉される。また制御部9には後述の加熱装置1の作用に示した動作を実行するためのステップ群を含むプログラムが格納されたプログラム格納部が設けられている。
【0049】
第3の実施の形態に係る加熱装置1の作用について説明する。この加熱装置1においては、ウエハWを加熱板40に載置して加熱するにあたって、
図31に示すように冷却プレート3側のシャッタ402Aを開いてウエハWを加熱部400に搬送し、次いでシャッタ402Aを開いた状態で筐体10内にガスを供給すると共に排気口403から排気を開始する。さらに昇降ピン44を下降させて、ウエハWを加熱板40に載置して加熱する。これによりシャッタ402A側から取り込まれたガスがウエハWの表面を流れて排気口403から排気される気流が形成される。次いで
図32に示すようにウエハWを加熱した状態で、シャッタ402Aを閉じ、シャッタ402Bを開く。これによりウエハWの表面にシャッタ402BからウエハWの表面を流れる気流が形成される。
【0050】
このようにウエハWを加熱部400において加熱するときに、ウエハWの上方から排気すると共に、ウエハWの周囲を囲むシャッタ402A〜402Dの開閉を順番に切り替えて、ガスの取り込む方向を順番に切り替えている。そのためウエハWを加熱するときにウエハWの表面においてガスの流れる方向が順番に切り替わる。
【0051】
ウエハWの表面に一定方向の気流が形成されると。ウエハWの表面において、溶剤の揮発が促進されやすい部位とされにくい部位とができてしまう。そのため、ウエハWを加熱するときにウエハの表面においてガスの流れる方向が順番に切り替えることで、ウエハWの表面において、溶剤の揮発量の面内均一性が改善する。このような加熱部を用いることでウエハWの熱処理の面内均一性をより改善することができる。
【0052】
[実施例]
本発明の実施の形態の効果を検証するため第1の実施の形態に示した加熱装置を用い、第1の実施の形態に示した加熱方法を用いて塗布処理を行ったウエハWの加熱処理を行った例を実施例1とした。また塗布処理を行ったウエハWを第2の実施の形態に示した加熱装置を用い、第2の実施の形態に示すように、一旦加熱部4にて15秒間加熱したウエハWを冷却プレート3に搬送し、冷却プレートを90度回転させてウエハの角度を回転させた後、加熱部4に戻し、さらに15秒間加熱処理を行った。これをウエハWの回転する工程と、15秒間加熱する工程と、を3回繰り返し、ウエハWを最初の角度での15秒間加熱、ウエハWを90度回転させて15秒間加熱、ウエハWを180度回転させて15秒間加熱及びウエハWを270度回転させて15秒間加熱、の合わせて4回の加熱処理を行った例を実施例2とした。
実施例1、2の各々について膜厚分布の測定を行い膜厚の最大値と最少値との差、及び膜厚分布の3σについて測定した。
【0053】
図33は、実施例1、2の各々における膜厚分布を示す等高線図である。実施例1では、膜厚の最大値と最少値との差が8.07nm、3σが6.12nmであった。また実施例2では、膜厚の最大値と最少値との差が4.13nm、3σは3.08nmであった
【0054】
実施例1でもウエハWの膜厚の面内均一性は良好な値を示しているが、実施例2では、よりウエハWの膜厚の面内均一性が改善しており良好な値を示していた。
この結果によれば、本発明の加熱装置を用いることで膜厚の面内均一性は良好にすることができ、さらに第2の実施の形態に係る加熱装置を用いることで、ウエハWをより均一に加熱することができ、ウエハWの膜厚の面内均一性を良好にすることができると言える。