特許第6863178号(P6863178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863178
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】めっき液、めっき膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20210412BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20210412BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20210412BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20210412BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C25D3/38 101
   C25D7/00 J
   H05K3/18 G
   H05K3/42 610B
   H05K3/40 K
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-164653(P2017-164653)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-44199(P2019-44199A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 芳英
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−242151(JP,A)
【文献】 特開2008−088524(JP,A)
【文献】 特開2007−138265(JP,A)
【文献】 特開2010−265532(JP,A)
【文献】 特開2018−066054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D1/00−7/12
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性銅塩、硫酸、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、及び塩素成分を含み、前記レベラー成分が、ジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体を含むめっき液。
【請求項2】
前記レベラー成分の平均分子量が600以上である請求項1に記載のめっき液。
【請求項3】
前記レベラー成分を30mg/L以上100mg/L以下含有する請求項1または請求項2に記載のめっき液。
【請求項4】
前記ポリマー成分が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体から選択された1種類以上である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のめっき液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のめっき液を用い、電流密度を1A/dm以上3A/dm以下として、
非貫通孔を含む基材の、前記非貫通孔を充填し、めっき膜を形成するめっき膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき液、めっき膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅めっき膜は、例えば配線基板の配線材料等として、従来から広く用いられている。このため、基材上に銅めっき膜を形成するめっき液について各種検討がなされてきた。例えば特許文献1には、含リン銅を可溶性陽極として用いる湿式めっき法に用いる硫酸銅めっき液であって、前記硫酸銅めっき液に含まれる2価の鉄イオンの濃度が0.05g/L以上、且つ3価の鉄イオン濃度が0.30g/L以下であることを特徴とする硫酸銅めっき液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−25177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、用途によっては、複数の非貫通孔を有する基材上に銅めっき膜を形成することが求められる場合があった。この場合、めっきによる非貫通孔の充填と、基材の平坦部、及びめっきが充填された非貫通孔上へのめっき膜の形成を実施することが求められる。
【0005】
しかしながら、従来検討されてきためっき液では、複数の非貫通孔の配列間隔(ピッチ)によって充填性が変化してしまい、基材が配列間隔の異なる複数の非貫通孔を有する場合、同一基材内でも充填性にバラつきが生じる場合があった。
【0006】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔によらず、非貫通孔を均一に充填することができるめっき液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
水溶性銅塩、硫酸、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、及び塩素成分を含み、前記レベラー成分が、ジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体を含むめっき液を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔によらず、非貫通孔を均一に充填することができるめっき液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例、比較例で基材、及び基材上に形成しためっき膜の構造の説明図。
図2】非貫通孔の配列間隔の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のめっき液、めっき膜の製造方法の一実施形態について説明する。
(めっき液)
本実施形態のめっき液は、水溶性銅塩、硫酸、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、及び塩素成分を含むことができる。
【0011】
そして、レベラー成分は、ジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体を含むことができる。
【0012】
既述のように、例えば複数の非貫通孔を有する基材上にめっき膜を成膜する際に、従来検討されていためっき液では、非貫通孔の配列間隔(ピッチ)によって充填性が変化してしまい、同一基材内でも非貫通孔の充填性にバラつきが生じる場合があった。
【0013】
そこで、本発明の発明者は、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔の広狭に関わらず、非貫通孔をめっきにより均一に充填することができるめっき液について検討を行った。その結果、水溶性銅塩、硫酸、ポリマー成分、ブライトナー成分、及び塩素成分に加えて、所定のレベラー成分を含有するめっき液とすることで、非貫通孔の配列間隔の広狭に関わらず非貫通孔の均一な充填を行えることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
以下に、本実施形態のめっき液に含まれる成分について説明を行う。
【0015】
本実施形態のめっき液は、水溶性銅塩を含有することができる。水溶性銅塩を含有することで、銅めっき膜を形成することができる銅めっき液とすることができる。
【0016】
水溶性銅塩としては特に限定されるものではなく、通常のめっき液に用いられる水溶性の銅塩であれば、好適に使用することができる。水溶性銅塩としては例えば、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0017】
なお、無機銅塩としては、例えば硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅が挙げられる。アルカンスルホン酸銅塩としては、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅等が挙げられる。アルカノールスルホン酸銅塩としては、イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅等が挙げられる。有機酸銅塩としては、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅等が挙げられる。
【0018】
水溶性銅塩は、例えば無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩等から選択された1種類の水溶性銅塩を単独で用いたり、選択された2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩等から選択された2種類以上の水溶性銅塩を組み合わせて用いる場合に、硫酸銅と、塩化銅とのように、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩等から選択された1つのカテゴリー内の、異なる2種類以上の水溶性銅塩を用いても良い。
【0019】
ただし、めっき液の管理上、1種類の水溶性銅塩を単独で用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態のめっき液は硫酸を含有することができる。硫酸を含有することでめっき液のpHや、硫酸イオン濃度を調整することができる。
【0021】
本実施形態のめっき液は、さらにレベラー成分を含有することができる。
【0022】
レベラー成分としては、既述のようにジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体を含むことができる。また、レベラー成分はジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体から構成することもできる。
【0023】
レベラー成分の平均分子量は特に限定されないが、例えば600以上であることが好ましい。レベラー成分の平均分子量の上限についても特に限定されないが、レベラー成分の平均分子量は6000以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の発明者の検討によれば、ジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体は基材上の平坦部のめっき膜の膜厚方向の成長を抑制することができる。従って、レベラー成分として、ジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体を用いることで、非貫通孔を有する基材上にめっき膜を成膜する際、めっきによる非貫通孔の充填を促進し、非貫通孔以外の平坦部へのめっき膜の成膜を抑制できる。このため、めっきによる非貫通孔の充填を行うことができ、かつ非貫通孔の配列間隔の広狭に関わらず非貫通孔を均一に充填できる。さらには、基材上に表面が平坦なめっき膜を成膜できるめっき液とすることができる。
【0025】
ジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体としては、例えばジアリルメチルアミン塩酸塩重合体、ジアリルエチルアミン塩酸塩重合体等から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0026】
本実施形態のめっき液は、さらにポリマー成分を含有することができる。ポリマー成分としては特に限定されるものではないが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0027】
ポリマー成分として、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体を用いる場合、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体の分子量や重合比率は特に限定されないが平均分子量は1400以上2000以下であることが好ましい。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの重合比率は、例えば1:1とすることができる。
【0028】
本実施形態のめっき液は、さらにブライトナー成分を含有することができる。ブライトナー成分としては特に限定されるものではないが、例えばビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(略称SPS)、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸(略称MPS)等から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0029】
本実施形態のめっき液は、さらに塩素成分を含有することができる。塩素成分としては特に限定されるものではないが、例えば塩酸、塩化ナトリウム等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0030】
本実施形態のめっき液の各成分の含有量は特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。
【0031】
本実施形態のめっき液は、例えば水溶性銅塩を銅濃度換算で、55g/L以上80g/L以下含有することが好ましい。なお、水溶性銅塩が硫酸銅の場合、銅濃度換算で上記範囲となるように、硫酸銅5水和物を220g/L以上320g/L以下含有することが好ましい。
【0032】
これは、本実施形態のめっき液が、水溶性銅塩を銅濃度換算で55g/L以上含有することで、該めっき液を用いてめっき膜を成膜する際に、十分な速度で成膜することができるため好ましいからである。また、本実施形態のめっき液が水溶性銅塩を銅濃度換算で80g/L以下含有する場合、銅がめっき時以外に析出する等を確実に防ぐことができ、好ましいからである。
【0033】
また、本実施形態のめっき液は、硫酸を例えば10g/L以上200g/L以下含有することが好ましい。これは、本実施形態のめっき液の硫酸の含有量を10g/L以上200g/L以下とすることで、該めっき液を用いてめっき膜を成膜する際に、十分な速度で成膜することができ、まためっきによる非貫通孔の充填性が向上するため好ましいからである。
【0034】
本実施形態のめっき液は、レベラー成分を例えば30mg/L以上100mg/L以下含有することが好ましい。これは、本実施形態のめっき液のレベラー成分の含有量を30mg/L以上とすることで、基材の平坦部上に形成されるめっき膜の析出を適度に抑制し、めっきによる非貫通孔の充填を優先的に進めることができ、好ましいからである。また、本実施形態のめっき液のレベラー成分の含有量を100mg/L以下とすることで、非貫通孔の充填性を特に高めることができるため好ましいからである。
【0035】
また、本実施形態のめっき液は、ポリマー成分を例えば10mg/L以上50mg/L以下含有することが好ましい。これは、本実施形態のめっき液のポリマー成分の含有量を10mg/L以上とすることで、非貫通孔のエッジ部への電流集中を緩和し、特に均一なめっき膜を形成することができ、好ましいからである。また、本実施形態のめっき液のポリマー成分の含有量を50mg/L以下とすることで、めっきによる非貫通孔の充填性を特に高めることができるため好ましいからである。
【0036】
本実施形態のめっき液は、ブライトナー成分を0.2mg/L以上5mg/L以下含有することが好ましい。これは、本実施形態のめっき液のブライトナー成分の含有量を0.2mg/L以上とすることで、非貫通孔のめっき充填を促進し、まためっき膜の析出結晶を微細化し特に平滑な表面とすることができるからである。また、本実施形態のめっき液のブライトナー成分の含有量を5mg/L以下とすることで、めっきによる非貫通孔の充填性を特に高めることができるため好ましいからである。
【0037】
本実施形態のめっき液は、塩素成分を10mg/L以上50mg/L以下含有することが好ましい。これは、本実施形態のめっき液の塩素成分の含有量を10mg/L以上とすることで、非貫通孔近傍での異常析出を抑制でき、好ましいからである。また、本実施形態のめっき液の塩素成分の含有量を50mg/L以下とすることで、めっきによる非貫通孔の充填性を特に高めることができるため好ましいからである。
【0038】
以上に説明した本実施形態のめっき液によれば、所定の各成分を含有することで、めっきにより非貫通孔の充填を行うことができる。また、非貫通孔を有する基材上にめっき膜を形成する際に、めっきによる非貫通孔の充填と、基材の平坦部、及びめっきが充填された非貫通孔上へのめっき膜の形成を実施でき、基材の非貫通孔を有する面上に、表面が平坦なめっき膜を成膜できる。そして、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔によらず、非貫通孔を均一に充填することができる。
(めっき膜の製造方法)
次に本実施形態のめっき膜の製造方法の一実施形態について説明する。
【0039】
本実施形態のめっき膜の製造方法は、既述のめっき液を用い、電流密度を1A/dm以上3A/dm以下として、非貫通孔を含む基材の、非貫通孔を充填し、めっき膜を形成することができる。
【0040】
本実施形態のめっき膜の製造方法で用いる基材については特に限定されないが、非貫通孔を有する基材上にめっき膜を形成する場合に、既述のめっき液を用いることで、非貫通孔にめっきを充填し、基材の非貫通孔を有する面上に表面が平坦なめっき膜を形成できる。このため、本実施形態のめっき膜の製造方法に用いる基材としては非貫通孔を有する基材を好適に用いることができる。
【0041】
また、既述のめっき液を用いることで、非貫通孔の配列間隔によらず、非貫通孔を均一に充填することができる。このため、本実施形態のめっき膜の製造方法で用いる基材としては、複数の非貫通孔を有する基材を特に好適に用いることができる。
【0042】
本実施形態のめっき膜の製造方法で、非貫通孔を有する基材を用いる場合、その非貫通孔のサイズは特に限定されるものではないが、孔径(非貫通孔の直径)は30μm以上300μm以下であることが好ましい。なお、非貫通孔はその表面をテーパー面とするなどして、深さ方向でその直径が変化する場合があるが、この場合、非貫通孔のうち、最も径が大きくなる部分での直径を該非貫通孔の孔径とすることができる。また、孔の深さと孔径とのアスペクト比(孔の深さ/孔径)は0.3以上1.5以下であることが好ましい。
【0043】
本実施形態のめっき膜の製造方法で、複数の非貫通孔を有する基材を用いる場合、非貫通孔の配列間隔は特に限定されるものではなく、例えば隣接する非貫通孔の孔径等に応じて選択することができる。隣接する非貫通孔の孔径が例えば80μmの場合、隣接する非貫通孔の配列間隔は、隣接する非貫通孔の中心間距離で0.13mm以上とすることが好ましい。隣接する非貫通孔の孔径が例えば100μmの場合、隣接する非貫通孔の配列間隔は、隣接する非貫通孔の中心間距離で0.15mm以上とすることが好ましい。
【0044】
なお、隣接する非貫通孔の中心間距離の上限は特に限定されず、基材のサイズに応じて選択できる。
【0045】
基材についてはめっき膜を形成する面に導電処理を予め実施しておくことが好ましい。導電処理としては特に限定されないが、例えば基材のコアの表面に導電層となる銅薄膜層を無電解めっきや乾式法により形成することができる。銅薄膜層の厚さは特に限定さないが、例えば50nm以上500nm以下とすることができる。
【0046】
そして、既述のめっき液による酸性銅めっき浴を用いて基材(基板)を銅めっき処理し、基材上にある非貫通孔にめっきを充填する際には、通常の硫酸銅等の水溶性銅塩によるめっき液を用いた銅めっきの場合と同様に、直流で電解すればよい。
【0047】
具体的には、浴温としては、例えば室温近傍、具体的には20℃以上30℃以下とすることが好ましく、22℃以上28℃以下とすることがより好ましい。また、電流密度としては、1A/dm以上3A/dm以下とすることが好ましい。
【0048】
めっき膜を製造している間、めっき槽内のめっき液を撹拌していることが好ましい。この際、めっき液を撹拌する方法は特に限定されないが、撹拌する手段としては、例えば噴流を好適に用いることができる。なお、噴流とは、めっき液を、ノズルから基材に対して吹き付け、めっき槽内のめっき液を撹拌することをいう。
【0049】
アノードは特に限定されるものではないが、例えば不溶性アノードや銅ボール等の可溶性アノードを用いることができる。
【0050】
以上に説明した本実施形態のめっき膜の製造方法によれば、既述の本実施形態のめっき液を用いているため、めっきにより非貫通孔の充填を行うことができる。また、非貫通孔を有する基材上にめっき膜を形成する際に、めっきによる非貫通孔の充填と、基材の平坦部、及びめっきが充填された非貫通孔上へのめっき膜の形成を実施でき、基材の非貫通孔を有する面上に、表面が平坦なめっき膜を成膜、製造できる。そして、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔によらず、非貫通孔を均一に充填することができる。
【実施例】
【0051】
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)めっき液
以下の組成を有するめっき液を調製した。
【0052】
硫酸銅5水和物を260g/L、硫酸を20g/L、レベラー成分を70mg/L、ポリマー成分を30mg/L、ブライトナー成分を2mg/L、塩素成分を24mg/L含有するめっき液を調製した。
【0053】
レベラー成分としては以下の式(1)で示され、平均分子量が5000であるジアリルメチルアミン塩酸塩重合体(ニットーボーメディカル株式会社製 商品名:PAS−M−1L)を用いた。
【0054】
【化1】
硫酸としては、薄硫酸(住友化学株式会社製 70%硫酸)を用いた。
【0055】
ポリマー成分としては、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの重合比率が1:1であり、平均分子量が約1800であるポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体(日油株式会社製 商品名:ユニルーブ50MB−26)を用いた。
【0056】
ブライトナー成分としては、SPS(RASCHIG GmbH社製)を用いた。
【0057】
塩素成分としては、塩酸(和光純薬工業株式会社製 35%塩酸)を用いた。
(2)めっき膜の製造
(2−1)基材準備工程
本実施例では、非貫通孔の孔径、及び非貫通孔の配列間隔の異なる基材a〜基材dを準備した。
【0058】
基材準備工程、及び基材の構成について、図1図2を用いながら説明する。なお、図1は基材10の断面を示しており、基材10に設けた非貫通孔Aの深さ方向と平行な面での断面を示している。図1では1つの非貫通孔Aの周辺部を拡大して示している。また、図1には基材10上に形成しためっき膜14まで示してある。
【0059】
図2は、基材10を、該基材10の非貫通孔の開口部が配置された面と垂直な方向に沿った上方から見た図を示しており、2つの非貫通孔の配置が明らかになるように一部を拡大して示している。
【0060】
ここでは基材aを製造した場合を例に説明する。
【0061】
厚さ50μmのガラスエポキシ樹脂製のコア11を用意した。
【0062】
そして、ガラスエポキシ樹脂製のコア11の両面に、厚さ10μmの電解銅箔12A、12Bをラミネートした。
【0063】
次いで、ドライフィルムレジストによるフォトリソグラフィにより一方の電解銅箔12Aに直径80μmの穴を形成し電解銅箔のエッチングを行った。ドライフィルムレジストを剥離し、電解銅箔12Aに形成された直径80μmの穴に対し、炭酸ガスレーザーを照射し、ガラスエポキシ樹脂製の基材を除去してビアを形成した。
【0064】
その後、無電解銅めっきにより、電解銅箔12A上、及びビアの内面に厚さ0.1μmの銅薄膜層13を形成して導電処理を行い、非貫通孔Aが形成された。
【0065】
同様にして複数の非貫通孔Aを形成しており、非貫通孔Aの配列間隔Lは、0.13mmとした。
【0066】
なお、非貫通孔Aの孔径D、すなわち直径は、図1に示したように非貫通孔Aのうち最も径が大きくなる部分での直径となる。このため、上述のように銅薄膜層13を形成した場合には、非貫通孔Aの孔径Dは、銅薄膜層13の表面での最も径が大きくなる部分での直径を意味する。
【0067】
また、非貫通孔の配列間隔Lは、隣接する非貫通孔の中心間の距離、間隔を意味しており、例えば図2に示したように非貫通孔21、22を形成した場合、非貫通孔21の中心O21と、非貫通孔22の中心O22との間の距離を意味する。なお、非貫通孔は深さを有し、立体形状を有することから、隣接する非貫通孔の中心間の距離とは、隣接する非貫通孔の中心軸間の距離と言い換えることもできる。
【0068】
既述のように、本実施例では、非貫通孔の孔径Dと、配列間隔Lとが異なる4種類の基材を用意し、以下のめっき工程に供した。ここでは、基材aを製造した際を例に説明したが、基材b〜基材dについては、表1に示した孔径D、及び配列間隔Lとした点以外は上述の基材aと同様にして作製した。
【0069】
なお、各基材には5200個の非貫通孔が設けられており、同じ基材内では非貫通孔の孔径D、及び隣接する非貫通孔間の距離、すなわち配列間隔は同じになるように製造した。
(2−2)めっき工程
用意した基材を、既述のめっき液を入れためっき浴に供給し、浴温を25℃とし、電流密度を2A/dmとして60分間めっきを行い、めっき膜の成膜(製造)を行った。
【0070】
なお、めっきを行っている間、噴流により、めっき液の撹拌を行った。具体的にはめっき槽内に供給した基材の銅薄膜層の表面に対して、めっき液の流れが略垂直になるようにノズルからめっき液を供給して撹拌を行った。
【0071】
以上の工程により、図1に示した構成を有するめっき膜を有する基材を製造した。
【0072】
具体的には、既述のようにガラスエポキシ樹脂製のコア11の平坦部上に電解銅箔12A、12Bが配置され、コア11に形成されたビア、及び電解銅箔12Aの表面に銅薄膜層13が配置されている。そして、コア11、電解銅箔12A、12B、銅薄膜層13の積層体である基材10の、非貫通孔A、及び平坦部B上にめっき膜14が形成されている。なお、非貫通孔Aはめっきにより充填されることになる。
【0073】
そして、非貫通孔Aにおいて、めっきの充填の程度を評価するため、積層体の非貫通孔A部分でのめっき膜14の深さt1、及び積層体の平坦部B部分でのめっき膜14の厚さt2の評価を行った。
【0074】
なお、非貫通孔A部分でのめっき膜14の深さt1は、図1に示したように、平坦部B部分でのめっき膜14の表面を基準とした深さとなる。平坦部に対して凹み状態であればマイナス、平坦部に対して凸状態であればプラスで表記した。
既述のように、本実施例では、非貫通孔Aの孔径と、配列間隔の異なる4種類の基材をめっき工程に供した。
【0075】
そして、非貫通孔の孔径が同じで、配列間隔のみが異なる基材、例えば基材aと基材b、基材cと基材dとについて、非貫通孔部分でのめっき膜の深さの差Δt1を算出した。係るΔt1が小さいほど、配列間隔に関係なく非貫通孔をめっき膜で充填できていることを意味しており、配列間隔の広狭の影響を受けにくいことになる。
【0076】
そこで、Δt1が0.5μm未満を○、0.5μm以上1.0μm未満を△、1.0μm以上を×と評価した。
【0077】
評価が〇の場合には、用いためっき液とめっきの製造方法により、非貫通孔の配列間隔の広狭に関わらず、均一な充填を行うことができているといえる。一方、評価が△または×の場合には、用いためっき液では非貫通孔の配列間隔の広狭により均一な充填ができていないことになる。
【0078】
評価結果も併せて表1に示す。
[比較例1]
めっき液を調製する際に、レベラー成分としてジアリルメチルアミン塩酸塩重合体に代えて以下の式(2)で表される塩化ベンゼトニウムを用いた。
【0079】
【化2】
塩化ベンゼトニウムにて最良の充填性を得るための最適な浴組成として、硫酸銅5水和物を220g/L、硫酸を55g/L、レベラー成分を30mg/L、ポリマー成分を40mg/L、ブライトナー成分を3mg/L、塩素を45mg/Lとしてめっき液を調製した。
【0080】
なお、レベラー成分以外の各成分は、実施例1と同じ試薬を用いた。
【0081】
めっき液として上述のめっき液を用いた点以外は実施例1と同様にして、非貫通孔の孔径、配列間隔の異なる4種類の基材a〜基材dについて、めっきを行った。評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
表1に示した結果より、水溶性銅塩、硫酸、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、塩素成分を含み、レベラー成分がジアリルアルキルアミン塩酸塩重合体含むめっき液を用いた実施例1では、非貫通孔部分でのめっき膜の深さの差Δt1が小さいことが確認できた。従って、実施例1で用いためっき液によれば、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔によらず、非貫通孔を均一に充填できることが確認できた。
【0083】
一方、レベラー成分を塩化ベンゼトニウムに変えた比較例1では、非貫通孔部分でのめっき膜の深さの差Δt1が大きく変化していることが確認できた。すなわち、比較例1のめっき液では、複数の非貫通孔を有する基材について、非貫通孔の配列間隔によって、非貫通孔を均一に充填できなくなる場合があることが確認できた。
【符号の説明】
【0084】
10 基材
A、21、22 非貫通孔
14 めっき膜
図1
図2