(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、研磨ヘッドに孔を開けなければならず、この孔から重金属を含んだ流体が逆流し、ウェーハが汚染する問題があった。また、異物が入出する可能性もある。
また、前記特許文献2に記載の技術では、治具等を用いて研磨ヘッドの下面にウェーハを押さえつけなければならず、押さえつけの際、ウェーハの表面に接触痕が残ることや、パッド上の異物などでウェーハの表面が傷つけられることがある。
この場合、その後の研磨処理により接触痕、傷を除去することも考えられるが、研磨取代が少ない場合は、接触痕、傷を除去することができないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、ウェーハ表面に接触痕や傷が入らず、表面品質が悪化することのない片面研磨装置へのウェーハ貼付装置、および片面研磨装置へのウェーハ貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の片面研磨装置へのウェーハ貼付装置は、片面研磨装置にウェーハを水の表面張力により貼り付ける片面研磨装置へのウェーハ貼付装置であって、前記ウェーハの外周縁で当接し、前記ウェーハを支持する仮受台と、前記仮受台上に設けられ、前記ウェーハに水を吐出する水吐出槽とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、仮受台にウェーハを支持させた状態で片面研磨装置のウェーハの貼付面に接近させ、水吐出槽から水を吐出することにより、ウェーハを貼付面に貼り付けることができる。ウェーハを貼付面に貼り付けるに際して、水圧を利用して貼り付けることができるため、ウェーハに貼り付け時の接触痕や、貼り付け時の傷を生じさせることがなく、ウェーハの表面品質が悪化することがない。
【0008】
本発明では、前記水吐出槽は、前記仮受台に支持されたウェーハの中央下方に位置する凹部と、前記凹部の底部に形成され、前記ウェーハの中央に水を吐出する吐出部とを備えているのが好ましい。
この発明によれば、吐出部が凹部の中央に水を吐出し、ウェーハを凹部全体の水圧で押すようになっているので、ウェーハを片面研磨装置の貼付面に押しつける力を、ウェーハの中央部において、面で作用させることができる。片面研磨装置の貼付面では、貼付面とウェーハとの間に供給される水を、作用する水圧の小さいウェーハの外周から排出できるため、片面研磨装置の貼付面にウェーハを確実に貼り付けることができる。
【0009】
本発明では、前記仮受台を前記片面研磨装置の貼付面に接近、離間させる第1昇降装置と、前記水吐出槽を、前記仮受台に支持されたウェーハに接近、離間させる第2昇降装置とを備えているのが好ましい。
この発明によれば、第1昇降装置を利用して仮受台を片面研磨装置の貼付面に接近させ、貼付面とウェーハの間に所定の隙間を有して維持することができる。そして、第2昇降装置を利用して、凹部に水を吐出させながら水吐出槽をウェーハに所望の状態に接近させることにより、ウェーハを片面研磨装置の貼付面に貼り付けることができる。
【0010】
本発明の片面研磨装置へのウェーハ貼付方法は、片面研磨装置にウェーハを水の表面張力により貼り付ける片面研磨装置へのウェーハ貼付方法であって、仮受台に前記ウェーハの外周縁を支持させる工程と、前記仮受台を前記片面研磨装置の貼付面に、前記ウェーハと所定の隙間を持たせて接近させる工程と、前記ウェーハの中央下方から水を吐出しながら、前記ウェーハを前記片面研磨装置の貼付面に押しつける工程とを実施することを特徴とする。
この発明によっても、前述した作用および効果と同様の作用および効果を享受できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、本発明の実施形態に係る片面研磨装置1およびウェーハ貼付装置2が示されている。
[1]片面研磨装置1の構造
片面研磨装置1は、ヘッド回転軸11、研磨ヘッド12、バックパッド13、リテーナー14、および図示しない定盤を備える。
ヘッド回転軸11は、図示を略したが、軸状部材から構成され、モータ等の回転駆動源の回転軸に接続され、研磨ヘッド12を回転させる。
研磨ヘッド12は、ヘッド回転軸11の下端に設けられ、ヘッド回転軸11の回転中心を中心とする円形の厚肉板状体から構成される。この研磨ヘッド12は、水の表面張力によりウェーハWを保持する。
【0013】
バックパッド13は、研磨ヘッド12の下面に設けられ、研磨ヘッド12と同径の円形板状体である。このバックパッド13は、多孔質樹脂材により構成され、水を含むことができるようになっている。
リテーナー14は、バックパッド13の下面に設けられるリング状部材から形成され、ウェーハWがバックパッド13と研磨パッドの隙間から外れないように保持している。また、リテーナー14のリング内周径は、ウェーハWの外周径よりも若干大きく形成され、研磨パッドにウェーハWを押さえつけて研磨する際、リテーナー14の部分で研磨パッドを押さえつけ、ウェーハWの沈み込みによる研磨時のウェーハWの縁だれの発生を防止することもできる。
定盤は、回転自在に支持され、研磨ヘッド12の回転方向と同方向または逆方向に回転する。定盤上には、研磨パッドが貼り付けられ、ウェーハWの下面が所定の力で押圧されることにより、ウェーハWの研磨が行われる。
【0014】
[2]ウェーハ貼付装置2の構造
ウェーハ貼付装置2は、ウェーハWを片面研磨装置1の研磨ヘッド12の下面に貼り付ける装置であり、
図1および
図2に示すように、基台2A上に設けられる仮受台21、水吐出槽22、第1昇降装置23、および第2昇降装置24を備える。
仮受台21は、板状部21Aと、板状部21Aの外周縁から起立する起立部21Bを備える。
【0015】
板状部21Aは、所定厚さの円形板状体から構成される。円形板状体の径方向中間には、エアブロー211が、円形板状体の中心周りに複数箇所(本実施形態では4箇所)に設けられている。エアブロー211は、ウェーハWを貼り付ける前に、貼り付け面の余分な水分を飛ばす機能を有する。
【0016】
起立部21Bは、板状部21Aの外周に、複数本設置される(本実施形態では、ウェーハWの円周上に4本均等に設置されている)。起立部21Bは、板状部21Aの外周端面に、複数のボルト212によって固定される。なお、図示を略したが、起立部21Bの内周面の中間部分には、シャワーノズルが起立部21Bのリング周りに複数箇所設けられ、シャワーノズルから水を研磨ヘッド12のバックパッド13に吐出することにより、バックパッド13を保水する。
【0017】
また、起立部21Bの上端には、仮受部213が設けられている。
仮受部213の上面は、内側に向かって下方に傾斜したテーパ面とされている。ウェーハWを受ける際には、仮受部213のテーパ面が、ウェーハWの外周縁のR面取り部と当接し、ウェーハWの外周縁を支持する。
【0018】
水吐出槽22は、ウェーハWに水を吐出する円柱状部材であり、凹部22Aおよび吐出部22Bを備える。なお、水吐出槽22の外周径は、ウェーハWの
外径よりも小さければよい。
凹部22Aは、水吐出槽22の外周よりも小径の円形状に形成され、凹部22Aの中心は、水吐出槽22の円形中心と同じとされ、漏斗状または球面状の傾斜面を有し、ウェーハWが仮受台21に支持された際、ウェーハWの中央下方に位置する。
吐出部22Bは、凹部22Aの底部に形成される複数箇所の孔221を備え、これらの孔221からウェーハWと凹部22Aの空間に水を吐出する。孔221は、水吐出槽22の内部に形成される十字状の配管222に連通し(
図2参照)、配管222には、水吐出槽22の外周に接続される水供給管223から水が供給される。
【0019】
第1昇降装置23は、仮受台21を上下に昇降させる装置であり、昇降装置本体23Aおよびカバー部23Bを備える。
昇降装置本体23Aは、仮受台21を上下に昇降させる本体部分であり、軸受部231および軸部232を備える。
軸受部231は、ボールスプライン軸受から構成され、基台2A上に固定される。
軸部232は、外周面にスプライン溝が形成された軸状部材から構成され、軸受部231内に挿入される。軸部232の上端は、仮受台21の下面中心に取り付けられている。軸部232の下端は、第1昇降装置23の下方に設けられるエアシリンダ2Bに接続されている。
エアシリンダ2Bが伸縮すると、軸部232は上下に昇降し、これに伴い、仮受台21も上下に昇降する。
【0020】
カバー部23Bは、昇降装置本体23Aを囲む筒状体から構成され、昇降装置本体23Aが、ウェーハWの貼り付け時に使用する水によって濡れるのを防止する。カバー部23Bは、固定筒部233および稼働筒部234を備える。
固定筒部233は、円形状の筒状体から構成され、軸受部231を囲むように設けられ、下端が基台2Aに固定されている。
稼働筒部234は、固定筒部233よりも径の小さな円筒状体から構成され、下部は固定筒部233の内部に収容される。稼働筒部234は、軸部232の上下動に伴い、上下に昇降し、軸部232が外部に露出することを防止する。
【0021】
第2昇降装置24は、水吐出槽22を上下に昇降させる装置であり、昇降装置本体24Aおよびカバー部24Bを備える。
昇降装置本体24Aは、水吐出槽22を昇降させる本体部分であり、シリンダ本体241および昇降部242を備える。
シリンダ本体241は、仮受台21の板状部21Aの中央に設けられ、ボルト等により板状部21Aに固定されている。
昇降部242は、上端が水吐出槽22の下面に取り付けられている。昇降部242は、図示しないエアの供給源からシリンダ本体241にエアが供給され、昇降部242の上部が上下方向に伸縮し、昇降部242の伸縮に伴い、水吐出槽22が上下に昇降する。
【0022】
カバー部24Bは、昇降装置本体24Aを囲む筒状体から構成され、昇降装置本体24Aが、ウェーハWの貼り付け時に使用する水によって濡れるのを防止する。カバー部24Bは、固定筒部243および稼働筒部244を備える。
固定筒部243は、昇降装置本体24Aを囲む円筒状体から構成され、下端が仮受台21の板状部21Aに固定されている。
稼働筒部244は、固定筒部243よりも径の小さな円筒状体から構成され、下部は固定筒部243の内部に収容される。稼働筒部244は、昇降部242の伸縮に伴い、上下に昇降し、シリンダ本体241が外部に露出することを防止する。
【0023】
[3]ウェーハWの位置決め装置3の構造
図3および
図4には、ウェーハWの位置決め装置3が示されている。位置決め装置3は、ウェーハWを水平方向に移動させ、ウェーハWの水平方向位置を位置決めする装置である。位置決め装置3は、駆動部3A、一対の支持部3B、および一対の腕部3Cを備える。また、位置決め装置3は図示されないエアシリンダで昇降できるようになっている。
駆動部3Aは、エアシリンダ等のアクチュエータから構成され、アクチュエータを伸縮させることにより、両端に設けられた把持部31が水平方向に伸縮する。
それぞれの把持部31には、支持部3Bが設けられている。
支持部3Bは、上下に延びる角形柱状部材から構成されている。それぞれの支持部3Bの下端には、腕部3Cが設けられている。
【0024】
腕部3Cは、支持部3Bの下端に設けられ、
図4に示すように、平面視円弧状の板状体から構成され、ウェーハWの端面を把持する。腕部3Cは、固定腕部33および稼働腕部34を備える。
固定腕部33は、支持部3Bの下端に固定される1/4円弧状の板状体である。固定腕部33の先端には、取付部材35が設けられている。
稼働腕部34は、固定腕部33の下部に取り付けられる1/4円弧状の板状体から構成される。稼働腕部34は、固定腕部33に対して、円弧の中心が取付部材35によって取り付けられ、稼働腕部34の円弧中心に向かって移動可能とされる。
稼働腕部34の円弧内周面には、シリコン等の可撓性のクッション36が設けられている。クッション36は、ウェーハWの側面に当接し、互いに対向する4つのクッション36によってウェーハWを把持する。
【0025】
[4]実施形態の作用および効果
次に、前述したウェーハ貼付装置2の作用について、
図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、片面研磨装置1の研磨ヘッド12を、研磨ヘッド12の回転中心が、ウェーハ貼付装置2の仮受台21の中心上方となるように移動する(工程S1)。
図示を略したが、ロボットハンドを用いて、ウェーハWを仮受台21の上に設置する(工程S2)。
ウェーハWの位置決め装置3により、対向する稼働腕部34を互いに接近させてウェーハWを、仮受台21の中心上にセンタリングする(工程S3)。
次に、第1昇降装置23の昇降装置本体23Aにより、仮受台21を上昇させ、ウェーハWを研磨ヘッド12のバックパッド13が設けられた下面に接近させる(工程S4)。
【0026】
仮受台21を上昇させた後、水吐出槽22の吐出部22Bの4箇所の孔221から水を吐出する(工程S5)。さらに、
図6に示すように、第2昇降装置24の昇降装置本体23Aにより、水吐出槽22を上昇させる(工程S6)。
【0027】
ウェーハWは、
図7に示すように、水の吐出圧(凹部22Aの内圧)により、下面中央から研磨ヘッド12のバックパッド13の面に押しつけられ、研磨ヘッド12の下面に貼り付けられる(工程S7)
ここで、仮受台21の上昇時、ウェーハWと水吐出槽22の距離D1は、100μm〜150μmとされるが、可能な限り接近させた方が、水吐出槽22から吐出された水による押しつけ力が大きくなるので、好ましい。
本実施形態において、このような距離D1をとったのは、ウェーハWの厚さのばらつき、バックパッド13の厚さのばらつき、バックパッド13へのウェーハWの沈み込み量、第1昇降装置23の昇降量の精度、水吐出槽22の上面の面精度のばらつき等によって、ウェーハWが研磨ヘッド12と干渉することを防止するためである。
【0028】
ここで、ウェーハWを研磨ヘッド12の下面に押しつける水の吐出圧目標値は、以下のように計算することができる。
ウェーハWに伝える力の目標値をF(N)とした場合、水吐出槽22の凹部22Aの内径をr(m)とすると、吐出圧P(Pa)は、以下の式(1)によって求められる。
P=F/π(r/2)
2・・・(1)
目標値F=9.8N、内径r=0.08mとすると、吐出圧Pは、P=9.8/π/0.04
2≒1.95kPaとなる。
【0029】
一方、ウェーハWの質量M(g)は、ウェーハWの直径をR(cm)、厚さt(cm)、シリコンの密度ρ(g/cm
3)とすると下記式(2)によって求められる。
M=π×(R/2)
2×t×ρ・・・(2)
直径300mm、厚さ780μmのウェーハWの場合、シリコンの密度が2.3(g/cm
3)であるから、ウェーハWの重量は、M=π×15
2×0.078×2.3=126.8(g)となる。
【0030】
126.8gのウェーハWを、凹部22Aの内径がr=0.08mの水吐出槽22によって上昇させる吐出圧P1は、式(1)から、P1=0.1268/9.8/π/0.04
2≒0.25kPaとなる。
同様に、126.8gのウェーハWを凹部22Aの内径がr=0.2mの水吐出槽22によって上昇させる吐出圧P2は、式(1)から、P2=0.1268/9.8/π/0.1
2≒0.041kPaとなる。この計算値はウェーハWを貼り付けるために最低限必要な吐出圧であって、実際にウェーハWを上昇させるためにはこの値以上の力が必要となる。
【0031】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
仮受台21にウェーハWを支持させた状態で片面研磨装置1のウェーハWの貼付面に接近させ、水吐出槽22から水を吐出することにより、ウェーハWを貼付面に貼り付けることができる。ウェーハWを貼付面に貼り付けるに際して、水圧を利用して貼り付けることができるため、ウェーハWに貼り付け時の接触痕や、貼り付け時の傷を生じさせることがなく、ウェーハWの表面品質が悪化することがない。
【0032】
吐出部22Bが凹部22Aの中央に水を吐出し、ウェーハWを凹部22A全体で押すようになっているので、ウェーハWを片面研磨装置1の貼付面に押しつける力を、ウェーハWの中央部において、面で作用させることができる。片面研磨装置1の貼付面では、貼付面とウェーハWとの間に供給される水を、作用する水圧の小さいウェーハWの外周から排出できるため、片面研磨装置1の貼付面にウェーハWを確実に貼り付けることができる。
【0033】
第1昇降装置23を利用して仮受台21を片面研磨装置1の貼付面に接近させ、貼付面とウェーハWの間に所定の隙間を有して維持することができる。そして、第2昇降装置24を利用して、水を吐出させながら水吐出槽22をウェーハWに所望の状態に接近させることにより、ウェーハWを片面研磨装置1の貼付面に貼り付けることができる。