特許第6863251号(P6863251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863251
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20210412BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20210412BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20210412BHJP
【FI】
   H01L21/304 621D
   H01L21/304 622P
   H01L21/304 622Q
   B24B37/24 B
   B24B37/00 H
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-232570(P2017-232570)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-102658(P2019-102658A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大関 正彬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健作
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−288941(JP,A)
【文献】 特開2013−258227(JP,A)
【文献】 特開2006−004983(JP,A)
【文献】 特開平09−266186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハに対し少なくとも研磨を行うシリコンウェーハの加工方法であって、
前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いて研磨を行い、
該研磨後の前記シリコンウェーハを、過酸化水素又はオゾンを含む薬液で洗浄し、
該洗浄後の前記シリコンウェーハに、400℃以上700℃以下の温度で熱処理を行って金属不純物を表面に誘起し
その後、前記熱処理後の前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用い、取り代を5nm以上100nm以下として最終仕上げ研磨を行うことによって、前記熱処理工程により前記表面に誘起した金属不純物を除去することを特徴とするシリコンウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも研磨を行うシリコンウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンを用いた半導体デバイスは微細化が進むにつれ、より微細なLLS(Localized light Scattering)欠陥の抑制が求められている。LLS欠陥の中には、洗浄で落としきれない異物や研磨中に導入されるスクラッチの他に、NiやCuなどの金属不純物が原因で発生する欠陥がある。これらの金属不純物が原因の欠陥は、突起状になっているものやピット状になっているものもあり、その凹凸自体がデバイス不良を引き起こす可能性があるだけでなく、その欠陥中に含まれる金属不純物が熱処理により拡散してデバイス不良を引き起こす可能性もあるため、厳重に発生を抑制しなければいけない。
【0003】
図2に、従来におけるウェーハの製造方法の工程フロー図を示す。上記LLS欠陥を形成する金属不純物は、結晶引き上げ工程(図2(a))やスライス工程(図2(b))、研削(ラップ)工程(図2(c))、研磨工程(図2(d))で導入されることが分かっている。特に、NiやCuなど比較的シリコンウェーハ内の移動度が高い金属不純物は拡散速度が高いため、研削や研磨工程等のウェーハ加工工程でも容易に侵入し、LLS欠陥を形成してしまう。図4に、代表的なLLS欠陥のSEM像を示す。
【0004】
金属不純物を除去するために、例えば特許文献1では、スライス工程後に熱処理を行うことで、金属不純物を表面に誘起させて除去する手法が開示されている。この手法であれば、結晶引き上げ工程やスライス工程で導入された金属不純物を除去することはできるが、スライス工程後の、研削、研磨工程等のウェーハ加工工程で導入される金属不純物の除去手段がないため、研削、研磨工程の状況によっては再び表面に金属不純物起因のLLS欠陥を形成してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6187689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ウェーハ表面に存在する金属不純物および金属不純物起因の欠陥を抑制することができるシリコンウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、シリコンウェーハに対し少なくとも研磨を行うシリコンウェーハの加工方法であって、前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いて研磨を行い、該研磨後の前記シリコンウェーハを、過酸化水素又はオゾンを含む薬液で洗浄し、該洗浄後の前記シリコンウェーハに、400℃以上700℃以下の温度で熱処理を行い、その後、前記熱処理後の前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用い、取り代を5nm以上100nm以下として最終仕上げ研磨を行うことを特徴とするシリコンウェーハの加工方法を提供する。
【0008】
このようなシリコンウェーハの加工方法であれば、ウェーハ表面に存在する金属不純物、及び金属不純物起因の欠陥を確実に抑制することができ、高品質のシリコンウェーハを得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコンウェーハの加工方法であれば、金属不純物及び金属不純物に起因する欠陥(LLS欠陥)を確実に低減することができ、高品質のシリコンウェーハを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のシリコンウェーハの加工方法の一実施形態を含んだシリコンウェーハ製造工程フロー図である。
図2】従来のシリコンウェーハの製造方法を示す工程フロー図である。
図3】実施例、比較例のLLS欠陥数の評価結果を示すグラフである。
図4】LLS欠陥のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したように、従来の、スライス工程後に熱処理を行うシリコンウェーハの製造方法では、スライス工程後の研削、研磨工程で導入される金属不純物の除去手段がないため、研削、研磨工程において再び表面に金属不純物起因のLLS欠陥が発生してしまうという問題があった。
【0012】
本発明者らは、ウェーハ加工プロセス中で低温熱処理を行うことで上記問題点の解決を図った。そして、なるべく加工プロセスの後半に低温熱処理を行い、低温熱処理後の工程は少なくする方が良いことを知見した。更に、低温熱処理後に、厳重に不純物管理された状態で、わずかな取り代で凹凸平坦化および表面金属除去工程を導入する必要があることを知見した。
【0013】
そして、本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いて研磨を行い、該研磨後の前記シリコンウェーハを、過酸化水素又はオゾンを含む薬液で洗浄し、該洗浄後の前記シリコンウェーハに、400℃以上700℃以下の温度で熱処理を行い、その後、前記熱処理後の前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用い、取り代を5nm以上100nm以下として最終仕上げ研磨を行うシリコンウェーハの加工方法であれば、ウェーハ表面に存在する金属不純物および金属不純物起因の欠陥を抑制することができることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、本発明は、シリコンウェーハに対し少なくとも研磨を行うシリコンウェーハの加工方法であって、前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いて研磨を行い、該研磨後の前記シリコンウェーハを、過酸化水素又はオゾンを含む薬液で洗浄し、該洗浄後の前記シリコンウェーハに、400℃以上700℃以下の温度で熱処理を行い、その後、前記熱処理後の前記シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用い、取り代を5nm以上100nm以下として最終仕上げ研磨を行うことを特徴とするシリコンウェーハの加工方法を提供する。
【0015】
以下、本発明のシリコンウェーハの加工方法を説明する。図1は、本発明のシリコンウェーハの加工方法の一実施形態を含んだシリコンウェーハ製造工程フロー図である。
【0016】
まず、本発明のシリコンウェーハの加工方法では、シリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いて研磨を行う(図1(d))。研磨を施すシリコンウェーハとしては、通常、結晶引き上げ工程(図1(a))、スライス工程(図1(b))、研削(ラップ)工程(図1(c))後のシリコンウェーハを用いることができる。
【0017】
このようなシリコンウェーハに対して、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いて研磨を行う(図1(d))。当該研磨は、硬質や軟質の樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用いる従来の研磨方法に従って行うことができ、例えば、研磨条件を変更して複数回行う多段研磨とすることができ、軟質パッドと砥粒を含む研磨剤を用いた研磨で終えることが好ましい。研磨剤は、砥粒としてのコロイダルシリカ、アルカリを含むものとすることができる。
【0018】
次いで、研磨後(好ましくは、軟質パッドと砥粒を含む研磨剤を用いた研磨後)のシリコンウェーハを、過酸化水素又はオゾンを含む薬液で洗浄する(図1(e))。当該洗浄により、シリコンウェーハに残存していた砥粒やパッドから脱落した樹脂等の異物を除去することができると共に、ケミカル酸化膜を形成することにより、例えば搬送時のパーティクル付着を抑制することができる。
【0019】
尚、過酸化水素又はオゾンを含む薬液としては、H濃度0.1〜5%の過酸化水素水や、オゾン濃度10〜30ppmのオゾン水等が挙げられる。
【0020】
このような研磨後の洗浄を行わない場合、上記異物(砥粒やパッドから脱落した樹脂等)がウェーハ表面に残存し、それらが後工程である熱処理により不純物としてウェーハ中に拡散してしまう。また、研磨直後にベアシリコンが露出している状態となるため、搬送時のパーティクル等の付着が顕著となってしまう。従って、熱処理後の研磨工程で多くの取り代(数ミクロン以上)が必要となってしまう。
【0021】
次いで、洗浄後のシリコンウェーハに、400℃以上700℃以下の温度で熱処理を行う(図1(f))。このような、400℃〜700℃の低温熱処理は、金属不純物の拡散係数を増大させ、表面に誘起することができる。700℃より高い温度での高温熱処理では、確かに金属不純物の拡散係数はより増大するものの、BMD(Bulk Micro Defect)等の酸素析出物の増大や、熱応力による転位の発生がみられる可能性もあり、また生産性、電力消費の面からも望ましくない。尚、低温熱処理は、窒素雰囲気下の常圧で行うことが好ましく、熱処理時間は30分〜3時間とすることができる。
【0022】
その後、熱処理後のシリコンウェーハに対し、樹脂パッドと砥粒を含む研磨剤とを用い、取り代を5nm以上100nm以下として最終仕上げ研磨を行う(図1(g))。樹脂パッドとしては、通常、仕上げ研磨で用いられている軟質樹脂パッドを用いることができ、研磨剤は、砥粒としてのコロイダルシリカ、アルカリを含むものとすることができる。
【0023】
このような最終仕上げ研磨により、低温熱処理(図1(f))により表面に誘起した金属不純物を除去することができる。そして、本発明においては、最終仕上げ研磨を5nm以上100nm以下の微少量の取り代とすることで、最終仕上げ研磨中に不純物が混入することを防ぐことができる。最終仕上げ研磨における取り代が5nmより少ないと、金属不純物により形成される凹凸を修正できない。また、本発明においては、洗浄(図1(e))により厳重に不純物の抑制管理がされているため、表面に誘起した金属不純物の除去には100nm以下の取り代で十分であり、100nmを超えるとかえってフラットネスの悪化が顕著となってしまう。
【0024】
このように、本発明においては、低温熱処理後に、取り代を5nm以上100nm以下とした最終仕上げ研磨を行うことにより、低温熱処理後の金属混入を抑制しつつ、低温熱処理により表面に誘起した金属不純物を除去することができる。
【0025】
一方、スライス工程後のウェーハ加工プロセスの早いうち(例えば、研磨工程前)に低温熱処理を行うと、その後の加工プロセス(例えば、研磨工程)で金属不純物を導入してしまう。また、全加工工程後(例えば、最終仕上げ研磨後)に低温熱処理を行うと、金属不純物を表面に誘起しただけで除去できておらず、また金属不純物が作る凹凸も平坦化できないため、LLS欠陥として認識されてしまう。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1〜8、比較例1〜12)
軟質樹脂パッドと、コロイダルシリカ、アルカリを含む研磨剤とを用いて、研磨ヘッドの回転数及び押圧を30rpm、20kPaで研磨した後のウェーハを、薬液で洗浄した後、窒素雰囲気下で表1に示す様々な温度で30分熱処理を行った。その後、取り代を0nm、5nm、15nmとして最終仕上げ研磨を行い、LLS欠陥数の評価を行った。尚、薬液はアンモニア水と過酸化水素水の混合液を用いた。最終仕上げ研磨は軟質樹脂パッドにコロイダルシリカ、アルカリを含む研磨剤で、30rpm、20kPaで行った。LLS欠陥数の評価はKLAテンコール社製表面欠陥検出器SP3を用いて行った。
【0028】
実施例、比較例の熱処理温度、熱処理後の研磨取り代(最終仕上げ研磨取り代)を表1に、LLS欠陥数の評価結果を図3に示す。低温熱処理を行っていない比較例1〜3、熱処理を200℃で行った比較例4〜6ではLLSが改善していないのに対し、熱処理温度を400℃〜700℃で行い、なおかつその後5nm以上研磨を行った実施例1〜8では良好なLLS欠陥数結果となり、図4のような金属汚染によるLLS欠陥は見られなかった。また、熱処理後に研磨を行わなかった比較例7〜9(即ち、取り代0nm)では、LLSが改善していなかった。また、1000℃で熱処理を行った比較例10〜12では逆に悪化してしまった。
【0029】
【表1】
【0030】
上記結果から、研磨後のウェーハを洗浄し、その後400〜700℃で熱処理を行い、更にその後5nm以上100nm以下の取り代で最終仕上げ研磨を行うことによって、金属不純物及び金属不純物起因の欠陥を抑制することができ、良好なLLSレベルを達成することができた。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4