(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池の電極用スラリー組成物を調製する際に用いることができる。また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池の電極用スラリー組成物は、非水系二次電池が備える電極を作製する際に用いることができる。
【0022】
(非水系二次電池電極用バインダー組成物)
本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、所定量の(メタ)アクリルアミド単量体単位を含有する水溶性重合体、および所定量のアミン化合物を含むことを特徴とする。そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は上記所定の組成で構成されるため、当該バインダー組成物を、例えば常温で一定期間保管した場合であっても、経時による(メタ)アクリルアミド重合体の粘度変化を抑制することができる。換言すれば、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は貯蔵安定性に優れている。
【0023】
<水溶性重合体>
ここで、本発明で用いる水溶性重合体は、(メタ)アクリルアミド単量体単位を所定の割合で含有することを特徴とする。また、水溶性重合体は、上記(メタ)アクリルアミド単量体単位に加え、(メタ)アクリルアミド単量体単位以外のその他の単量体単位を更に含有してもよい。
【0024】
<<(メタ)アクリルアミド単量体単位>>
[含有割合M0]
そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物が含む水溶性重合体は、(メタ)アクリルアミド単量体単位を、当該水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して40質量%以上100質量%以下含有する必要がある。つまり、水溶性重合体は、(メタ)アクリルアミド単量体単位のみから構成されていても良い。また、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合が40質量%以上であれば、当該(メタ)アクリルアミド単量体単位を含有する水溶性重合体を含むバインダー組成物を用いて電極用スラリー組成物を調製した際に、当該スラリー組成物中における電極活物質の分散性が高まり、経時で沈降物が生じ難い、保管安定性に優れたスラリー組成物を調製することができる。また、上記の優れた分散性が寄与して、重合体成分が電極活物質表面を良好に被覆するため、製造される二次電池に優れたサイクル特性を発揮させるとともに、繰り返しサイクル後においても電極の形状変化を抑制することができる。また、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合が上記上限以下であれば、(メタ)アクリルアミド単量体単位を含む水溶性重合体の粘度が経時で変化することを良好に抑制し得る。
【0025】
[種類]
ここで、(メタ)アクリルアミド単量体単位を形成し得る(メタ)アクリルアミド単量体としては、特に制限されることなく、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等が挙げられる。中でも、バインダー組成物およびスラリー組成物における良好な分散性および粘度などを確保する観点からは、(メタ)アクリルアミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドを用いることが好ましく、アクリルアミドを用いることがより好ましい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<<その他の単量体単位>>
水溶性重合体が任意に含有し得る(メタ)アクリルアミド単量体単位以外のその他の単量体単位としては、(メタ)アクリルアミド単量体単位と併用し得る単量体単位であれば特に制限されない。その他の単量体単位としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、シアン化ビニル系単量体単位、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位、ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位が好ましい。これらのその他の単量体単位は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
【0027】
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を形成し得るエチレン性不飽和カルボン酸単量体の例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)などが挙げられる。中でも、アクリル酸が好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
【0028】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートなどのブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートおよびt−ブチルメタクリレートなどのブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのオクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
シアン化ビニル系単量体単位を形成し得るシアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体単位を形成し得るヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得るジ(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、特に限定されることなく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。なお、芳香族ビニル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
そして、脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体としては、特に限定されることなく、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられる。なお、脂肪族共役ジエン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
<<アミン化合物>>
[含有量M1]
本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、アミン化合物を、水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.01質量部以上0.5質量部以下含有する必要がある。また、アミン化合物の含有量は、0.03質量部以上であることが好ましく、0.07質量部以上であることがより好ましく、0.4質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.15質量部以下であることが更に好ましい。アミン化合物の含有量が0.01質量部以上であれば、水溶性重合体中に含まれる(メタ)アクリルアミド単量体単位のうち、経時により部分的架橋が生じ易い部位に当該アミン化合物が反応して架橋の進行を抑制することができる。その結果、当該水溶性重合体を一定期間保管(例えば、温度20℃±10℃程度の常温に放置)した場合においても、当該水溶性重合体の粘度が変化、とりわけ粘度が低下することを抑制し、水溶性重合体に優れた貯蔵安定性を発揮させることができる。加えて、当該水溶性重合体を用いて作製した電極の密着性、および製造した二次電池のサイクル特性を良好にし、かつ、繰り返しサイクル後の電極の形状変化を抑制することができる。つまり、寿命特性などに優れた二次電池を提供することが可能となる。また、アミン化合物の含有量が0.5質量部以下であれば、当該アミン化合物が、製造された二次電池の内部において電解液を分解することを防ぎ、二次電池に良好なサイクル特性を発揮させることができる。
【0035】
[質量比M=M1/M0]
また、上述した(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合M0とアミン化合物の含有量M1とから算出される質量比M=M1/M0は、0.10×10
-3以上であることが好ましく、0.50×10
-3以上であることがより好ましく、1.00×10
-3以上であることが更に好ましく、12.5×10
-3以下であることが好ましく、3.00×10
-3以下であることがより好ましく、2.00×10
-3以下であることがより好ましい。(メタ)アクリルアミド単量体単位およびアミン化合物の質量比が上記下限以上であれば、(メタ)アクリルアミド単量体単位のうち経時により部分的架橋が生じ易い部位にアミン化合物が反応して架橋の進行をより抑制することができる。その結果、当該水溶性重合体を一定期間保管した場合においても、当該水溶性重合体の粘度が変化、とりわけ粘度が低下することを抑制し、水溶性重合体により優れた貯蔵安定性を発揮させることができるからである。加えて、当該水溶性重合体を用いて作製した電極の密着性、および製造した二次電池のサイクル特性をより良好にし、かつ、繰り返しサイクル後の電極の形状変化をより抑制することができるからである。また、(メタ)アクリルアミド単量体単位およびアミン化合物の質量比が上記上限以下であれば、アミン化合物が、製造された二次電池の内部において電解液を分解することを防ぎ、二次電池により良好なサイクル特性を発揮させることができるからである。
なお、水溶性重合体に含有される(メタ)アクリルアミド単量体単位に対してアミン化合物が作用する点に鑑みれば、上記M値の範囲内においても、通常、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合M0が増加するにつれて、アミン化合物の含有量M1も増加することが望ましい。
なお、M値の算出においては、「水溶性重合体の全単量体単位100質量%」の質量、および「水溶性重合体の固形分100質量部」の質量は、同じ質量とみなす。
【0036】
[構造]
ここで、アミン化合物は、一酸化窒素ラジカルを生成する構造を有することが好ましい。理由は明らかではないが、アミン化合物が一酸化窒素ラジカルを生成する構造を有すれば、例えば、保管中の水溶性重合体中に生じた一酸化窒素ラジカルの反応により、経時に対する(メタ)アクリルアミド単量体単位の部分架橋の進行をより抑制することができるからと考えられる。その結果、水溶性重合体を一定期間保管した場合においても、当該水溶性重合体の粘度が変化することを抑制し、水溶性重合体により優れた貯蔵安定性を発揮させることができるからである。そして、一酸化窒素ラジカルを生成する構造を有するアミン化合物としては、ヒドロキシルアミノ基(>NOH)を有するアミン化合物が好ましく、ヒドロキシルアミノ基を有し、かつ分子中に分岐鎖を有しないアミン化合物がより好ましい。
【0037】
[種類]
アミン化合物としては、特に限定されることなく、例えば、硫酸ヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、ジプロピルヒドロキシルアミン、イソプロピルヒドロキシアミン、イソチアゾリン系化合物等を挙げることができる。中でも、(メタ)アクリルアミド単量体単位を含有する水溶性重合体の粘度を良好に維持する観点からは、硫酸ヒドロキシルアミンおよびジエチルヒドロキシルアミンを用いることが好ましい。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<<溶媒>>
ここで、水溶性重合体を含む水溶液の調製に用いられる溶媒としては、例えば、イオン交換水などの水が挙げられる。なお、当該水溶液を構成する溶媒は、水や、水と少量の有機溶媒との混合溶液であってもよい。
【0039】
<<水溶性重合体の調製方法>>
水溶性重合体を構成する重合体の重合方法は、特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。そして、重合に使用される重合開始剤、重合促進剤、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、その使用量も、一般に使用される量とすることができる。
【0040】
ここで、水溶性重合体の調製に用い得る重合開始剤としては、特に制限されることなく、既知の重合開始剤、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。中でも、過硫酸カリウムを用いることが好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0041】
重合促進剤としては、特に制限されることなく、既知の還元性の重合促進剤、例えば、テトラメチルエチレンジアミンを使用することができる。
【0042】
乳化剤としては、特に制限されることなく、既知の乳化剤、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウムといったドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムといったドデシル硫酸アンモニウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウムなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムといったドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウムといったドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられ、不飽和結合を有するいわゆる反応性乳化剤であってもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
分散剤としては、特に制限されることなく、既知の分散剤、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用することができる。分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
連鎖移動剤としては、特に制限されることなく、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
<<重量平均分子量>>
ここで、水溶性重合体は、重量平均分子量が0.01×10
6以上であることが好ましく、1.00×10
6以上であることがより好ましく、5.00×10
6以上であることが更に好ましく、20.0×10
6以下であることが好ましく、13.0×10
6以下であることがより好ましく、10.0×10
6以下であることが更に好ましい。水溶性重合体の重量平均分子量が0.01×10
6以上であれば、当該水溶性重合体を用いて作製した電極の密着性、および製造した二次電池のサイクル特性が更に向上し、かつ、充放電を繰り返しても電極の膨らみなどの形状変化を更に抑制することができるからである。また、水溶性重合体の重量平均分子量が20.0×10
6以下であれば、適度な粘度を有する水溶性重合体を容易に製造できるからである。加えて、水溶性重合体の粘度を過度に高めることなく、当該水溶性重合体を用いて調製したスラリー組成物の全固形物量Tsの低下、および当該Tsの低下に伴う組成物成分のマイグレーションを抑制できるため、作製された電極における電極合材層と集電体との密着性(ピール強度)および二次電池のサイクル特性を更に向上させ、繰り返しサイクル後の電極の膨らみを更に抑制することができるからである。
【0046】
<バインダー組成物の調製方法>
バインダー組成物の調製方法としては、上述した(メタ)アクリルアミド単量体単位を所定の割合で含有する水溶性重合体および所定量のアミン化合物を含むこと以外は特に制限されない。また、バインダー組成物は、上記水溶性重合体およびアミン化合物以外のその他の成分を更に含んで調製されてもよい。そして、バインダー組成物は、通常、これらの成分を溶媒などに任意の方法により添加、混合することにより得られ、任意にpH調整してもよい。なお、バインダー組成物に用いられる分散媒は、上述したいずれかの水溶性重合体に用いられた溶媒をそのまま使用してもよい。
【0047】
<<その他の成分>>
その他の成分としては、例えば、補強材、レベリング剤、粘度調整剤、電解液添加剤等の成分が挙げられる。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(非水系二次電池電極用スラリー組成物)
本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、電極活物質と、上述したいずれかの非水系二次電池電極用バインダー組成物とを含むことを特徴とする。また、非水系二次電池電極用スラリー組成物は、当該電極活物質およびバインダー組成物に加え、任意のその他の成分を更に含むことができる。スラリー組成物が更に含み得るその他の成分としては、バインダー組成物の調製方法にて記載したものと同様の成分とすることができる。
そして、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、上述した(メタ)アクリルアミド単量体単位を含有する水溶性重合体およびアミン化合物を所定量含むため、当該スラリー組成物を用いて作製した電極の密着性、および当該電極を備える二次電池のサイクル特性が良好であり、かつ、繰り返しサイクル後における電極の形状変化が小さい。
なお、以下では、一例として非水系二次電池電極用スラリー組成物がリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0049】
<電極活物質>
電極活物質は、二次電池の電極において電子の受け渡しをする物質である。そして、リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。
【0050】
<<負極活物質>>
負極活物質としては、具体的には、特に限定されることなく、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、およびこれらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
【0051】
そして、炭素系負極活物質を構成する炭素質材料としては、例えば、易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
【0052】
更に、炭素系負極活物質を構成する黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
【0053】
また、金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。金属系活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびその合金、並びに、それらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが用いられる。これらの中でも、金属系負極活物質としては、ケイ素を含む活物質(シリコン系負極活物質)が好ましい。シリコン系負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池を高容量化することができるからである。
【0054】
シリコン系負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiO
x、Si含有材料を導電性カーボンで被覆または複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。なお、これらのシリコン系負極活物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上述した中でも、負極活物質としては、炭素系負極活物質が好ましく、天然黒鉛がより好ましく、天然黒鉛を低結晶性の炭素材料で被覆(以下、これを「非晶質コート」を称することがある。)してなる炭素系負極活物質が更に好ましい。なお、非晶質コートの方法としては、特開2013−45714号公報に開示される方法などを挙げることができる。
【0056】
<<正極活物質>>
正極活物質としては、特に限定されることなく、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO
2)、Co−Ni−Mnのリチウム含有複合酸化物(Li(Co Mn Ni)O
2)、Ni−Mn−Alのリチウム含有複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、Li
2MnO
3−LiNiO
2系固溶体、Li
1+xMn
2-xO
4(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni
0.17Li
0.2Co
0.07Mn
0.56]O
2、LiNi
0.5Mn
1.5O
4等の既知の正極活物質が挙げられる。
なお、正極活物質の配合量や粒子径は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質と同様とすることができる。
【0057】
<スラリー組成物の調製方法>
スラリー組成物は、例えば、上述した電極活物質、バインダー組成物、並びに任意の溶媒およびその他の成分を、混合することにより調製される。これらの成分の混合方法は特に制限されず、既知の方法により混合することができる。既知の混合方法とは、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と溶媒などとを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。また、水溶性重合体を含む分散液を用いてスラリー組成物を調製する場合には、分散液が含有している液分をそのままスラリー組成物の分散媒として利用してもよい。
【0058】
(非水系二次電池用電極)
本発明の非水系二次電池用電極は、上述した本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて作製したことを特徴とする。ここで、本発明では、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて正極のみを作製しても良く、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて負極のみを作製しても良く、正極および負極の両方を本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて作製しても良い。中でも、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて負極を作製することが好ましい。ここで、正極は、通常、集電体上に正極合材層が形成されており、負極は、集電体上に負極合材層が形成されている。
そして、本発明の非水系二次電池用電極は、上述した本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて作製されるため、例えば、集電体上に形成された電極合材層と集電体との間の密着性が高い。また、当該スラリー組成物を用いて作製した電極は、二次電池を繰り返し充放電した後にも膨張などの形状変化を抑制するとともに、当該電極を備える二次電池はサイクル特性に優れる。
【0059】
<集電体>
集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料からなる集電体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、正極の作製に用いる集電体としてはアルミニウムからなる薄膜が好ましく、また、負極の作製に用いる集電体としては、銅からなる薄膜が好ましい。
【0060】
<電極合材層の形成方法>
そして、電極は、例えば、上述した電極用スラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布された電極用スラリー組成物を乾燥して集電体上に電極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
【0061】
<<塗布工程>>
上記電極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、電極用スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
【0062】
<<乾燥工程>>
集電体上の電極用スラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上の電極用スラリー組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備える電極を得ることができる。
【0063】
なお、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、電極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、電極合材層と集電体との密着性を向上させることができる。また、電極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、電極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
【0064】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液を備え、正極または負極のいずれか一方が、上述した本発明の非水系二次電池用電極であることを特徴とする。つまり、本発明の非水系二次電池は、正極が本発明の非水系二次電池用電極であり負極が他の既知の負極であってもよく、負極が本発明の非水系二次電池用電極であり正極が他の既知の正極であってもよく、正極および負極の両方が本発明の非水系二次電池用電極であってもよい。中でも、二次電池の負極が本発明の非水系二次電池用電極であることが好ましい。
そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用電極を備えているため、サイクル特性が良好であり、かつ、繰り返し充放電を行った場合であっても、電極の膨張等を抑制することができ、寿命特性に優れている。
なお、以下では、一例として非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0065】
<既知の電極>
本発明の非水系二次電池において、負極のみを本発明の非水系二次電池用電極とする場合は、正極を既知の正極とすることができ、正極のみを本発明の非水系二次電池用電極とする場合は、負極を既知の負極とすることができる。
ここで、既知の正極/負極としては、特に限定されることなく、金属の薄板よりなる正極/負極、或いは、集電体と、集電体上に形成された正極/負極合材層とを有する正極/負極を用いることができる。そして、正極合材層は、通常、正極活物質、導電材、および結着材を含有する。また、負極合材層は、通常、負極活物質および結着材を含有し、任意に導電材を更に含有することもできる。そして、集電体、正極/負極活物質、および集電体上への正極/負極合材層の形成方法としては、例えば上述した集電体、正極/負極活物質、および形成方法を用いることができ、結着材、導電材、分散媒などは、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
【0066】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましく、LiPF
6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導性が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導性を調節することができる。
【0067】
また、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。
また、電解液には、既知の添加剤、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)やエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
【0068】
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂を用いた微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を用いた微多孔膜、ポリオレフィン系の繊維を用いた織布または不織布、絶縁性物質よりなる粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、非水系二次電池内の電極合材層の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂を用いた微多孔膜が好ましい。中でも、ポリプロピレンの樹脂からなる微多孔膜がより好ましい。
【0069】
<組立工程>
ここで、二次電池が備える正極、負極、セパレータ等の電池部材は、通常、セパレータの片側に正極が、セパレータの他方の片側に負極が接するように配置される。より具体的には、セパレータの片側に正極合材層側が、セパレータの他方の片側に負極合材層側が、それぞれセパレータと接するように配置される。そして、例えば、これらの電池部材に電解液を注入することにより、二次電池が製造される。
また、本発明の非水系二次電池は、特に制限されることなく、既知の組立方法を用いて非水系二次電池を製造することができる。具体的には、本発明の非水系二次電池は、例えば、上述で得られた負極と、正極と、セパレータとを必要に応じて電池形状に巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。非水系二次電池の内部圧力の上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【0070】
<後処理>
ここで、二次電池の製造においては、例えば、上述の通り組み立てた二次電池を所定の充電深度まで充電(初期充電処理)し、当該初期充電された非水系二次電池を加温した状態で所定時間保存(エージング処理)するなどの後処理を施してもよい。
なお、二次電池にエージング処理を施す場合の加熱温度は、例えば、温度25℃以上とすることができ、40℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、85℃以下とすることができ、70℃以下が好ましい。更に、加熱した二次電池の加熱保持時間は、例えば、1時間以上とすることができ、5時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、50時間以下とすることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、水溶性重合体の重量平均分子量、および粘度変化;電極における電極合材層および集電体間の密着性;二次電池におけるサイクル特性;およびサイクル後の電極の形状変化;は、下記の方法で算出、測定および評価した。
【0072】
<重量平均分子量>
水溶性重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。具体的には、上述で得られた水溶性重合体を含む水溶液を固形分0.05質量%に希釈調整したものを測定サンプルとした。そして、標準物質で検量線を作成することにより、標準物質換算値としての重量平均分子量を算出した。なお、測定条件は以下の通りである。結果を表1に示す。
装置 :ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製、ポンプ:製品名「DP−8020」、オートサンプラー:製品名「AS−8020」、検出器:製品名「RI−8020」)
カラム :昭和電工社製、製品名「Shodex OHpak(SB−G,SB−807HQ,SB−806MHQ)」
移動相 :0.1M トリス緩衝液(pH9.0)+0.1M 塩化カリウム
流速 :0.5mL/分
注入量 :0.2mL
温度 :40℃
検出器 :示差屈折率検出器(RI)
標準物質 :単分散プルラン
【0073】
<水溶性重合体の粘度変化>
水溶性重合体の粘度変化は、水溶性重合体を含む水溶液の貯蔵試験を行った際の粘度変化率を求めることにより評価した。具体的には、得られた水溶性重合体を含む水溶液(固形分濃度5.0%)の粘度A1を測定した。次に、当該水溶性重合体を含む水溶液を温度25℃の環境下で1か月間保管し、保管後の水溶性重合体の粘度A2を測定した。なお、各粘度A1およびA2は、B型粘度計(東機産業社製、製品名「TVB-10」、回転数:60rpm)を用いて、温度25℃の環境下における粘度として測定した。
そして、粘度変化率={(A1−A2)/A1}×100(%)に従って、粘度変化率を算出した。同様の測定を3回行い、粘度変化率の平均値を用いて、以下の基準により評価した。粘度変化率の平均値が小さいほど、保管による水溶性重合体の粘度変化率が低く、水溶性重合体の貯蔵安定性が高いことを示す。結果を表1に示す。
A:粘度変化率の平均値が5.0%未満
B:粘度変化率の平均値が5.0%以上10.0%未満
C:粘度変化率の平均値が10.0%以上
【0074】
<電極の密着性>
電極の密着性は、以下の通り、実施例1〜8および比較例1〜3については、負極合材層と集電体との間の剥離ピール強度として評価した。また、実施例9については、正極合材層と集電体との間の剥離ピール強度として評価した。
<<負極合材層と集電体との密着性>>
具体的には、作製した負極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とした。次に、試験片のうち負極合材層を有する面を下にして負極合材層表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。なお、セロハンテープは試験台に固定されていた。同様の測定を3回行い、測定された応力の平均値を剥離ピール強度(N/m)とし、以下の基準により評価した。剥離ピール強度の値が大きいほど、負極合材層と集電体との間の密着性に優れることを示す。結果を表1に示す。
A:剥離ピール強度が15.0N/m以上
B:剥離ピール強度が10.0N/m以上15.0N/m未満
C:剥離ピール強度が10.0N/m未満
【0075】
<<正極合材層と集電体との密着性>>
作製した正極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とした。次に、試験片のうち正極合材層を有する面を下にして正極合材層表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。なお、セロハンテープは試験台に固定されていた。同様の測定を3回行い、測定された応力の平均値を剥離ピール強度(N/m)とし、以下の基準により評価した。剥離ピール強度の値が大きいほど、正極合材層と集電体との間の密着性に優れることを示す。結果を表1に示す。
A:剥離ピール強度が40.0N/m以上
B:剥離ピール強度が30.0N/m以上40.0N/m未満
C:剥離ピール強度が30.0N/m未満
【0076】
<サイクル特性>
作製したリチウムイオン二次電池を、電極が電解液に浸漬されている状態で、温度25℃の環境下で5時間静置した。次に、静置した二次電池を、温度25℃の環境下、レート0.2Cの定電流法にてセル電圧3.65Vまで充電した。その後、充電した二次電池に対して、温度60℃の環境下、12時間エージング処理を行った。そして、エージング処理を行った二次電池を、温度25℃の環境下、レート0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00Vまで放電した。その後、放電した二次電池に対して、レート0.2Cの定電流法にて、定電流定電圧充電(上限セル電圧:4.20V)を行い、レート0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00Vまで定電流放電し、このときの容量を初期放電容量X1として測定した。
続けて、初期放電を行った二次電池に対し、温度45℃の環境下、セル電圧4.20V〜3.00V、充放電レート1.0Cの条件にて第一の充放電操作を50サイクル行った。引き続き、第一の充放電を50サイクル行った二次電池に対し、温度0℃の環境下、セル電圧4.20V〜3.00V、充放電レート0.5Cの条件にて、第二の充放電操作を50サイクル行った。さらにその後、第二の充放電を50サイクル行った二次電池に対し、温度25℃の環境下、レート0.2Cの定電流法にて、定電流定電圧充電(上限セル電圧:4.20V)を行い、レート0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00Vまで放電し、このときの容量を放電容量X2として測定した。
そして、測定された初期放電容量X1および放電容量X2を用いて、容量維持率ΔC=(X2/X1)×100(%)に従って容量維持率を求め、以下の基準により評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほどサイクル特性が優れており、二次電池が長寿命であることを示す。結果を表1に示す。
A:容量維持率ΔCが80%以上
B:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
C:容量維持率ΔCが70%以上75%未満
D:容量維持率ΔCが70%未満
【0077】
<サイクル後の電極の形状変化>
製造した二次電池の繰り返しサイクル後の電極の形状変化については、実施例1〜8および比較例1〜3については、サイクル後の負極における厚みの変化を評価した。また、実施例9については、サイクル後の正極における厚みの変化を評価した。
<<負極の形状変化>>
具体的には、まず、製造したリチウムイオン二次電池を、電極が電解液に浸漬されている状態で、温度25℃の環境下で5時間静置した。次に、静置した二次電池を、温度25℃の環境下、レート0.2Cの定電流法にてセル電圧3.65Vまで充電した。その後、充電した二次電池に対して、温度60℃の環境下、12時間エージング処理を行った。そして、エージング処理を行った二次電池を、温度25℃の環境下、レート0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00Vまで放電した。
続いて、エージング処理および放電処理を行ったリチウムイオン二次電池を解体し、負極全体の厚みから集電体の厚みを除いた値を、サイクル前の負極の厚み(d0)として測定した。次に、再度リチウムイオン二次電池を組み立て、前記サイクル特性の項目において記載したうち、第一の充放電操作を50サイクル行った後の二次電池に対し、温度25℃の環境下、レート1Cにて充電を行った。そして、充電された状態の二次電池を解体して負極を取り出し、負極全体の厚みから集電体の厚みを除いた値を、サイクル後の負極の厚み(d2)として測定した。そして、サイクル前の負極の厚みd0に対する、サイクル後の負極の厚みd2の変化率を、サイクル後の電極の形状変化率={(d2−d0)/d0}×100(%)として求め、以下の基準により判定した。サイクル後の電極の形状変化率が小さいほど、充放電サイクルを繰り返しても負極の膨らみが小さく、二次電池が長寿命であることを示す。結果を表1に示す。
A:サイクル後の電極の形状変化率が25%未満
B:サイクル後の電極の形状変化率が25%以上30%未満
C:サイクル後の電極の形状変化率が30%以上35%未満
D:サイクル後の電極の形状変化率が35%以上
【0078】
<<正極の形状変化>>
上記負極の形状変化の場合と同様にエージング処理および放電処理を行ったリチウムイオン二次電池を解体し、正極全体の厚みから集電体の厚みを除いた値を、サイクル前の正極の厚み(d0´)として測定した。次に、再度リチウムイオン二次電池を組み立て、前記サイクル特性の項目において記載したうち、第一の充放電操作を50サイクル行った後の二次電池に対し、温度25℃の環境下、レート1Cにて充電を行った。そして、充電された状態の二次電池を解体して正極を取り出し、正極全体の厚みから集電体の厚みを除いた値を、サイクル後の正極の厚み(d2´)として測定した。そして、サイクル前の正極の厚みd0´に対する、サイクル後の正極の厚みd2´の変化率を、サイクル後の電極の形状変化率={(d2´−d0´)/d0´}×100(%)として求め、以下の基準により判定した。サイクル後の電極の形状変化率が小さいほど、充放電サイクルを繰り返しても正極の膨らみが小さく、二次電池が長寿命であることを示す。結果を表1に示す。
A:サイクル後の電極の形状変化率が3%未満
B:サイクル後の電極の形状変化率が3%以上5%未満
C:サイクル後の電極の形状変化率が5%以上7%未満
D:サイクル後の電極の形状変化率が7%以上
【0079】
(実施例1)
<水溶性重合体を含む水溶液の調製>
セプタム付き1Lフラスコに、イオン交換水712gを投入して、温度40℃に加熱し、流量100mL/分の窒素ガスでフラスコ内を置換した。次に、(メタ)アクリルアミド単量体としてのアクリルアミド28.5g(最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して75.0質量%相当)と、その他の単量体としてのアクリル酸9.5g(最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して25.0質量%相当)とを混合して、シリンジでフラスコ内に注入した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウムの2.5%水溶液8.0gをシリンジでフラスコ内に追加した。更に、その15分後に、重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンの2.0%水溶液40gをシリンジで追加した。4時間後、重合開始剤としての過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0gをフラスコ内に追加し、更に重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンの2.0%水溶液20gを追加して、温度を60℃に昇温し、重合反応を進めた。3時間後、フラスコを空気中に開放して重合反応を停止させ、得られた生成物を温度80℃の環境下で脱臭し、当該生成物から残留単量体を除去することにより、水溶性重合体を含む水溶液を得た。
そして、得られた水溶性重合体を含む水溶液を用いて、上述の方法により、水溶性重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
<非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製>
上述で得られた水溶性重合体を含む水溶液を、水酸化リチウムの10%水溶液を用いて、pH8に調整した。そして、pHを調整した水溶性重合体を含む水溶液に、アミン化合物としての硫酸ヒドロキシルアミンを、最終的に得られる水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.1質量部添加し、撹拌することにより、バインダー組成物を調製した。さらに、得られた水溶性重合体を温度25℃の環境下、1か月間保管した。
そして、得られたバインダー組成物を用いて、バインダー組成物に含まれる水溶性重合体の粘度変化を、上述の方法により測定、評価した。結果を表1に示す。
【0081】
<非水系二次電池電極用スラリー組成物の調製>
<<非水系二次電池負極用スラリー組成物の調製>>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての非晶質コート天然黒鉛(理論容量:350mAh/g)100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業製、製品名「HS−100」)1部と、バインダー組成物としての上述の通り保管した水溶性重合体を含む水溶液(固形分濃度:5.0質量%)を固形分相当で1.50部とを投入し、イオン交換水にて固形分濃度が60質量%となるように希釈した。次に、当該希釈物を、回転速度45rpmで60分間混練して混合物を得た。そして、得られた混合物の、上記同様のB型粘度計(回転数:12rpm)で測定した粘度が1100±100mPa・sとなるようにイオン交換水を加えることにより、非水系二次電池負極用スラリー組成物を調製した。
【0082】
<非水系二次電池用負極の作製>
上述で得られた負極用スラリー組成物を、集電体としての銅箔(厚さ15μm)の上にコンマコーターで塗付量が9mg/cm
2〜10mg/cm
2となるように塗布し、乾燥させることにより、集電体上に負極合材層を形成した。なお、乾燥は、温度70℃のオーブン内に、当該負極用スラリー組成物が塗布された銅箔を0.5m/分の速度で2分間かけて搬送することにより行った。その後、負極合材層が形成された集電体を更に温度120℃にて2分間加熱処理することにより、負極原反を得た。次に、得られた負極原反を、ロールプレス機にて密度が1.50g/cm
3〜1.60g/cm
3となるようプレスすることにより、片面に負極合材層が形成された負極を得た。
そして、作製された負極について、負極合材層および集電体の密着性を、上述の方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0083】
<<非水系二次電池正極用スラリー組成物の調製>>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてLiCoO
2を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業製、製品名「HS−100」)を2部、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、クレハ化学製、製品名「KF−1100」)2部を投入し、さらに全固形分濃度が67質量%となるようにN−メチルピロリドンを加えて混合することにより、正極用スラリー組成物を得た。
【0084】
<非水系二次電池用正極の作製>
上述で得られた正極用スラリー組成物を、集電体としてのアルミ箔(厚さ20μm)の上にコンマコーターで塗布し、乾燥させることにより、集電体上に正極合材層を形成した。なお、乾燥は、温度60℃のオーブン内に、当該正極用スラリー組成物が塗布されたアルミ箔を0.5m/分の速度で2分間かけて搬送することにより行った。その後、正極合材層が形成された集電体を更に温度120℃にて2分間加熱処理することにより、正極原反を得た。
そして、得られた正極原反をロールプレス機にて密度が3.10g/cm
3〜3.20g/cm
3となるようにプレスすることにより、片面に正極合材層が形成された正極を得た。
【0085】
<非水系二次電池の組立て>
単層のポリプロピレン製セパレータ(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm;乾式法により製造;気孔率55%)を用意し、5cm×5cmの正方形に切り抜いた。また、電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。
そして、上述の通り作製した正極を、4cm×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。次に、正極の正極合材層側の表面上に、前記正方形のセパレータを配置した。更に、上述の通り作製した負極を、4.2cm×4.2cmの正方形に切り出し、セパレータの正極合材層と接していない方の表面上に、負極合材層側の表面が向かい合うように配置した。その後、電解液として濃度1.0MのLiPF
6溶液(溶媒:エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7(体積比)、添加剤:ビニレンカーボネート2質量%(溶媒比))を充填した。次に、アルミ包材外装に対して150℃のヒートシールをして当該アルミ包材外装の開口を密封閉口することにより、非水系二次電池としてのリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、製造したリチウムイオン二次電池について、上述の方法により、サイクル特性、および、サイクル後の負極の形状変化を評価した。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例2)
非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物としての硫酸ヒドロキシルアミンの含有量を、水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.05質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例3)
水非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物としての硫酸ヒドロキシルアミンの含有量を、水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.3質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例4)
水溶性重合体を含む水溶液の調製において、(メタ)アクリルアミド単量体としてのアクリルアミドの含有量を24.7g(最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して65.0質量%相当)に、アクリル酸の含有量を9.5g(最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して35.0質量%相当)に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例5)
水溶性重合体を含む水溶液の調製において、(メタ)アクリルアミド単量体としてのアクリルアミドの含有量を19.0g(最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して50.0%質量%相当)に、アクリル酸の含有量を19.0g(最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して50.0%相当)に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例6)
水溶性重合体を含む水溶液の調製において、アクリルアミドとアクリル酸とを混合した後に最初に追加する過硫酸カリウムの2.5%水溶液の投入量を12.0gに変更し、水溶性重合体の重量平均分子量を表1に示す値に調節した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例7)
非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物としてジエチルヒドロキシルアミンを用いた以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例8)
非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物としてN−イソプロピルヒドロキシルアミンを用いた以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例9)
非水系二次電池電極用スラリー組成物の調製において、正極用スラリー組成物および負極用スラリー組成物を以下の通り調製した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
<非水系二次電池正極用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてのコバルト酸リチウム(理論容量:150mAh/g)100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)3部と、バインダー組成物としての上述の通り保管した水溶性重合体を含む水溶液(固形分濃度:5.0%)を固形分相当で4.00部とを投入し、イオン交換水にて固形分濃度が60質量%となるように希釈した。次に、当該希釈物を、回転速度45rpmで60分間混練して混合物を得た。そして、得られた混合物の、上記同様のB型粘度計(回転数:60rpm)で測定した粘度が4000±300mPa・sとなるようにイオン交換水を加えることにより、非水系二次電池正極用スラリー組成物を調製した。
<非水系二次電池負極用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての非晶質コート天然黒鉛(理論容量:350mAh/g)100部と、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業製、製品名「HS−100」)1部と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬社製、製品名「BSH−12」)を固形分換算で1部とを加え、固形分濃度が60%となるようにイオン交換水で希釈し、その後、回転速度45rpmで60分混練した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整し、回転速度45rpmで30分混合して混合液を得た。
次に、上述のようにして得た混合液に、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体の40%水分散液を固形分換算で1.0部を入れ、回転速度45rpmで30分混合して混合液を得た。そして、上記同様のB型粘度計(回転数:12rpm)で測定した粘度が1100±100mPa・sとなるようにイオン交換水を加え、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を調製した。
なお、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散液は、以下の通り調製した。
<<スチレン−ブタジエン共重合体の水分散液の調製>>
撹拌機付き5MPa耐圧容器に、重合性単量体として1,3−ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、およびスチレン63.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部、並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に撹拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、スチレン−ブタジエン共重合体を含む混合物を得た。そして、得られた混合物に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却することにより、スチレン−ブタジエン共重合体の水分散液を得た。
【0094】
(比較例1)
非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物を用いなかった以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例2)
非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物としての硫酸ヒドロキシルアミンの含有量を、水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.005質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例3)
非水系二次電池電極用バインダー組成物の調製において、アミン化合物としての硫酸ヒドロキシルアミンの含有量を、水溶性重合体の固形分100質量部あたり1.0質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例4)
水溶性重合体を含む水溶液の調製において、アクリルアミド単量体としてのアクリルアミドの含有量を、最終的に得られる水溶性重合体の全単量体単位100質量%に対して30.0質量%相当に変更した以外は実施例1と同様にして、水溶性重合体、非水系二次電池電極用バインダー組成物、非水系二次電池負極用スラリー組成物、非水系二次電池正極用スラリー組成物、負極、正極、および非水系二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1より、アミン化合物を含有しない、またはアミン化合物の含有量が水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.01質量部未満である比較例1〜2では、当該アミン化合物の含有量が0.01質量部以上0.5質量部以下である実施例1〜9に対し、水溶性重合体の粘度変化が大きく、電極の密着性および二次電池のサイクル特性に劣り、かつ、サイクル後における電極の膨らみが大きくなることが分かった。
また、アミン化合物の含有量が水溶性重合体の固形分100質量部あたり0.5質量部超である比較例3では、当該アミン化合物の含有量が0.01質量部以上0.5質量部以下である実施例1〜9に対し、二次電池のサイクル特性に劣ることが分かった。
更に、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合が40質量%未満である比較例4では、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合が40質量%以上100質量%以下である実施例1〜9に対し、電極の密着性および二次電池のサイクル特性に劣り、かつ、サイクル後における電極の膨らみが大きくなることが分かった。