(54)【発明の名称】α−フルオロアクリル酸エステルの製造方法、高純度なフルオロシクロプロパン誘導体を含む組成物、および、高純度なα−フルオロアクリル酸エステルを含む組成物
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書における用語を下記のとおり定義する。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を示す。
「1価の炭化水素基」とは、炭化水素の炭素原子から水素原子が1個外れた基を示す。1価の炭化水素基中の炭素原子−炭素原子結合間にはエーテル性酸素原子が含まれていてもよい。1価の炭化水素基の炭素原子−水素原子結合の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。1価の炭化水素基の炭素数は、1〜20個が好ましい。
【0019】
本発明は、α−フルオロアクリル酸エステルである下式(F)で表される化合物(以下、化合物(F)とも記す。)の製造方法と、フルオロシクロプロパン誘導体である下式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)とも記す。)を含む組成物と、化合物(F)を含む組成物とに関する。
【0021】
式中、それぞれのRは1価の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。式中に複数のRが存在する場合、Rは、同一であってもよく異なっていてもよく、入手容易性の観点から、同一であるのが好ましい。
Rは、アルキル基、アラルキル基またはアリール基であって炭素数1〜20の基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基またはtert−ブチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。化合物(A)中の2個のRがメチル基であれば、後述する蒸留における温度を調整しやすく、高純度な化合物(A)をより効率的に製造しやすい。
Xは、塩素原子またはフッ素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
化合物(A)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0023】
化合物(F)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0025】
本発明は、化合物(A)を含む組成物を、蒸留、アルカリ水溶液による洗浄の順に精製処理して、化合物(A)を含む精製物を得て、該精製物を熱分解反応させる化合物(F)の製造方法を提供する。
本発明における化合物(A)を含む組成物は、アルカリ金属水酸化物の存在下、式CH
2=C(OR)
2で表される化合物(以下、化合物(B)とも記す。)と式CHClFXで表される化合物(以下、ハロメタンとも記す。)と反応させて得られる組成物(式中のRとXの定義と好適な範囲は、それぞれ前記のとおりである。)が好ましい。以下、上記反応を反応(1)とも記し、反応(1)により得られる組成物を組成物(1)とも記す。
【0026】
化合物(B)の具体例としては、CH
2=C(OCH
3)
2、CH
2=C(OCH
2CH
3)
2、CH
2=C(OCH
2CH
2CH
3)
2、CH
2=C(OCH
2CH
2CH
2CH
3)
2、CH
2=C(OCH(CH
3)CH
2CH
3)
2、CH
2=C(OCH(CH
3)
2)
2、CH
2=C(OC(CH
3)
3)
2が挙げられる。
化合物(B)の製造方法としては、式CH
3−C(OR)
3で表わされる化合物(式中のRの定義と好ましい範囲は、前記のとおりである。)を、気相において、固体触媒と接触させて脱R−OH反応させる方法が挙げられる。
【0027】
ハロメタンの具体例としては、CHCl
2F、CHClF
2が挙げられる。
反応(1)における化合物(B)に対するハロメタンの使用量は、1倍モル以上が好ましく、1〜5倍モルがより好ましく、1〜2倍モルが特に好ましい。
反応(1)におけるアルカリ金属水酸化物は、ハロメタンからカルベンを生成させる反応を促進する化合物であり、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが特に好ましい。その使用量は、ハロメタンに対して1〜10倍モルが好ましく、1〜8倍モルが好ましく、1〜6倍モルがより好ましい。
【0028】
反応(1)は、さらに溶媒の存在下にするのが好ましい。
溶媒は、水、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、またはハロゲン化芳香族炭化水素が好ましい。溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素が挙げられ、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカンまたはテトラデカンが特に好ましい。溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒の量は、化合物(B)の100容積%に対して10〜1000容積%が好ましく、50〜800容積%がより好ましい。
【0029】
反応(1)は、さらに相間移動触媒の存在下にするのが好ましい。相間移動触媒は、4級アンモニウム塩が好ましく、テトラブチルアンモニウムブロミドまたはテトラブチルアンモニウムクロリドが好ましい。相間移動触媒は、相分離する2種の溶媒層間の触媒として使用されてもよい。
反応(1)は、通常、溶媒、アルカリ金属水酸化物および相間移動触媒を反応器に仕込み、次に化合物(B)とハロメタンを、逐次的または連続的に反応器に投入して行われる。
反応(1)における反応温度は、−20℃〜+50℃が好ましく、−10℃〜+40℃がより好ましく、0℃〜+30℃が特に好ましい。
反応(1)における反応圧力は、特に限定されない。
【0030】
反応(1)で直接得られる生成物は、アルカリ金属水酸化物とハロメタンの反応物を含む(たとえば、該反応物は、アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムでありハロメタンがCHCl
2Fである場合にはKClであり、前者が水酸化カリウムであり後者がCHClF
2である場合にはKFである。)。組成物(1)は、該反応物が除去された組成物であるのが好ましい。除去は、通常、該生成物をろ過や分液操作して行われる。
【0031】
通常、化合物(A)を含む組成物、たとえば、組成物(1)には、不純物として、下式(P)で表される化合物(以下、化合物(P)とも記す。)および下式(Q)で表される化合物(以下、化合物(Q)とも記す。)から選ばれる1種以上の化合物(式中のRの定義と好ましい範囲は前記のとおりであり、式中の波線はフッ素原子の二重結合に関する立体配置がEであってもZであってもよいことを示す。)が含まれる。
【0033】
化合物(P)と化合物(Q)は、後述する化合物(F)と近似した物性(沸点、極性)を有している。組成物(1)等の化合物(A)を含む組成物は、化合物(A)に対して、化合物(P)および化合物(Q)から選ばれる1種以上の化合物を、通常、0.01mol%以上含んでいる。また、組成物(1)は、化合物(A)に対して該1種以上の化合物を2mol%以下含んでいる。なお、本明細書において、「mol%」は、ガスクロマトグラフィー法(FID検出器)において検出される、それぞれの化合物の検出ピークの面積百分値(GCarea%)とみなされる。
【0034】
本明細書において、化合物(P)は、質量分析による分子量が104.1であり、かつガスクロマトグラフィー法による分析において化合物(A)の保持時間を1とした場合の相対保持時間が0.63である化合物ともみなされる。また、化合物(Q)は、質量分析による分子量が150.2であり、ガスクロマトグラフィー法による分析において化合物(A)の保持時間を1とした場合の相対保持時間が1.02である化合物ともみなされる。
【0035】
本発明における、蒸留とアルカリ水溶液による洗浄とに関して、以下、詳細を記載する。
蒸留における系内温度の保持範囲は、70℃以下が好ましく、50℃以下が特に好ましい。なお、系内温度とは、系全体の温度を意味し、通常、蒸留塔の釜(ボトム)の内温を意味する。系内温度の下限は、化合物(A)の沸点から適宜決定され、通常、20℃である。系内温度を、上記範囲に保持した場合、化合物(A)の分解による、化合物(P)、化合物(Q)等の不純物の副生が抑制され、後述する洗浄における不純物の除去も容易となる。
蒸留は、加圧蒸留、常圧蒸留、減圧蒸留のいずれであってもよく、化合物(A)の沸点から適宜決定され、還流量と還流比を確保できる観点から、減圧蒸留が好ましい。
蒸留により得られる、化合物(A)を含む組成物の蒸留物は、そのまま洗浄に供してもよく、他の操作を介して供されてもよい。
【0036】
洗浄は、アルカリ水溶液と蒸留物を撹拌接触させ、つぎに静置分液して、化合物(A)を含む精製物である有機層を得るのが好ましい。有機層は、さらに水洗または乾燥してもよい。乾燥の方法としては、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化アルミニウム、塩化カルシウム等の乾燥剤を使用する方法が挙げられる。
洗浄において、アルカリ水溶液のアルカリ濃度の保持範囲は、一貫して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。アルカリ濃度の保持範囲の下限は、1質量%が好ましく、5質量%が特に好ましい。濃度を、上記範囲に保持した場合、洗浄時間を短縮できる。また、洗浄において、蒸留物の容積に対する水溶液の容積の比率は、0.05〜50倍以下が好ましい。上記範囲に容積を保持した場合、化合物(A)の分解を抑制しながら、不純物を除去しやすい。
つまり、洗浄において、アルカリの量は、化合物(A)に対して、0.01倍mol以上1倍mol以下が好ましく、0.03〜0.5倍mol以下が特に好ましい。
アルカリ水溶液は、塩基性化合物の水溶液である。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ土類又はアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等の金属リン酸水素塩又は金属リン酸塩が挙げられる。
塩基性化合物は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが特に好ましい。塩基性化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄において、蒸留物とアルカリ水溶液の接触時間は、600分以下が好ましく、480分以下が好ましく、300分以下が特に好ましい。下限は、通常、10分である。この場合、化合物(A)の分解を抑制しつつ、不純物を効率的に除去しやすい。
【0037】
本発明における化合物(A)を含む精製物は、化合物(A)を含む組成物を、蒸留、アルカリ水溶液による洗浄の順に精製処理して得られる、高純度な化合物(A)である。本発明者らの検討によれば、アルカリ水溶液による洗浄、蒸留の順に精製処理すると、蒸留において化合物(P)と化合物(Q)が、特に化合物(P)が新たに副生する傾向があり、高純度な化合物(A)が得られなかった。
【0038】
つまり、本発明の製造方法によれば、化合物(A)と化合物(P)および化合物(Q)から選ばれる1種以上の化合物とを含み、化合物(A)の含有量が80.0mol%以上であり、該1種以上の化合物の合計含有量が化合物(A)に対して1.00mol%以下である、高純度な化合物(A)を含む組成物(以下、組成物(A)とも記す。)が得られる。
組成物(A)における、化合物(A)の含有量は、90.0mol%以上が好ましく、98.0mol%以上がより好ましく、99.0mol%以上が特に好ましい。その上限量は、100.0mol%未満である。
組成物(A)における、該1種以上の化合物の合計含有量は、化合物(A)に対して、0.75mol%以下が好ましく、0.50mol%以下が特に好ましい。その下限量は、通常は0mol%超であり、具体的には0.01mol%である。
【0039】
組成物(A)の別態様としては、化合物(A)と化合物(P)を含み、化合物(A)の含有量が80.0mol%以上であり、化合物(P)の含有量が化合物(A)に対して0.35mol%以下である組成物も挙げられる。
該組成物における、化合物(A)の含有量は、90.0mol%以上が好ましく、98.0mol%以上がより好ましく、99.0mol%以上が特に好ましい。その上限量は、100.0mol%未満である。
該組成物における、化合物(P)の含有量は、化合物(A)に対して、0.25mol%以下が好ましく、0.20mol%以下がより好ましく、0.10mol%以下が特に好ましい。その下限量は、通常は0mol%超であり、具体的には0.01mol%である。
【0040】
組成物(A)における、化合物(A)、化合物(P)および化合物(Q)の具体的な態様としては、下式(A1)で表される化合物(以下、化合物(A1)とも記す。)、下式(P1)で表される化合物(以下、化合物(P1)とも記す。)および下式(Q1)で表される化合物(以下、化合物(Q1)とも記す。)が、それぞれ挙げられる。式中のR
1は、同一であって、R
1はメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基またはtert−ブチル基であり、メチル基が好ましい。式中の波線は、フッ素原子の二重結合に関する立体配置がEであってもZであってもよいことを示す。
【0042】
本発明の製造方法においては、得られた化合物(A)を含む精製物を熱分解反応させて化合物(F)を得る。
熱分解反応は、加熱により実施できる。熱分解反応は、気相反応でもよく、液相反応でもよい。熱分解反応の温度は、80℃〜400℃が好ましく、100℃〜350℃がより好ましく、120℃〜300℃がさらに好ましい。熱分解反応の圧力は、特に限定されない。
熱分解反応を液相反応でする場合、溶媒の存在下にするのが好ましい。溶媒は、熱分解反応の条件において不活性な溶媒であればよく、炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒が挙げられ、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、または、後述する第一の保管方法における飽和脂肪族炭化水素が好ましい。溶媒量は、化合物(A)に対して0〜1000容積%が好ましい。
また、熱分解反応により生成する化合物(F)は重合性が高いため、熱分解反応は重合禁止剤の存在下にするのが好ましい。重合禁止剤の使用量は、生成する化合物(F)に対して10ppm以上が好ましく、20〜50000ppmが特に好ましい。
【0043】
本発明の製造方法は、化合物(F)と物性(沸点、極性)が近似して分離しにくい化合物(P)または化合物(Q)の含有量が少ない、高純度な化合物(A)の組成物を熱分解反応させるため、高純度な化合物(F)を含む組成物が直接得られる。
本発明によれば、化合物(F)と化合物(P)および化合物(Q)から選ばれる1種以上の化合物とを含み、化合物(F)の含有量が95.0mol%以上であり、該1種以上の化合物の合計含有量が化合物(F)に対して0.30mol%以下である、高純度な化合物(F)を含む組成物(以下、組成物(F)とも記す。)が提供される。
【0044】
本発明の組成物(F)は、化合物(F)の含有量と該1種以上の化合物の合計含有量とが、それぞれ前記範囲にあり、組成物の保管安定性が優れるだけでなく、組成物を重合させて得られる重合体の物性にも優れる。
一方、化合物(F)の含有量が95.0mol%未満であると組成物を重合させて得られる重合体の物性(撥水撥油性、低屈折率、透明性等の化合物(F)に由来する物性。)が低下しやすい。また、組成物が、該1種以上の化合物を含まないと組成物の保管安定性が低下しやすい。さらに、該1種以上の化合物の合計含有量が0.30mol%超であると、前述した重合体の物性の低下に加え、組成物の重合において重合が停止しやすくなり、重合物性(分子量、分子量分布等。)を制御しにくい。
組成物(F)における、化合物(F)の含有量は、98.5mol%超が好ましく、99.0mol%以上が特に好ましい。その上限量は、100.0mol%未満である。
組成物(F)における、該1種以上の化合物の合計含有量は、化合物(F)に対して、0.25mol%以下が好ましく、0.10mol%以下が特に好ましい。その下限量は、通常は0mol%超であり、具体的には0.01mol%である。
【0045】
組成物(F)の別態様としては、化合物(F)と化合物(P)を含み、化合物(F)の含有量が95.0mol%以上であり、化合物(P)の含有量が化合物(F)に対して0.20mol%以下である、高純度な化合物(F)を含む組成物が挙げられる。
該組成物における、化合物(F)の含有量は、98.5mol%超が好ましく、99.0mol%以上が特に好ましい。その上限量は、100.0mol%未満である。
該組成物における、化合物(P)の含有量は、化合物(F)に対して、0.10mol%以下が好ましく、0.05mol%以下が特に好ましい。その下限量は、通常は0mol%超であり、具体的には0.01mol%である。
【0046】
組成物(F)における、化合物(P)および化合物(Q)の具体的な態様としては、下式(F1)で表される化合物(式中のR
1の定義と好ましい範囲は、前記のとおりである。)、化合物(P1)、化合物(Q1)が、それぞれ挙げられる。
【0048】
本発明によれば、本発明の製造方法により得られる化合物(F)または本発明の組成物(F)を重合させて重合体を得る、重合体の製造方法も提供される。
重合は、本発明の製造方法により得られる化合物(F)または本発明の組成物(F)の単独重合であってもよく、あるいは他の単量体との共重合であってもよい。
重合形式や、温度、圧力等の重合条件は、特に限定されない。
重合の好適態様としては、特表2012−500806号公報、特表2013−522448号公報等に記載される態様が挙げられ、より具体的には、水中で、本発明の製造方法で得られる化合物(F)または本発明の組成物(F)とジビニルベンゼンとアルカジエンとを、ラジカル重合開始剤の作用により共重合させる態様が挙げられる。
前述したとおり、本発明の製造方法により得られる化合物(F)または本発明の組成物(F)は、重合性に優れるため、ジビニルベンゼン、アルカジエン等の架橋性単量体により重合体間の架橋も進行する共重合や、アルカジエン等の重合性に乏しい単量体との共重合に供しても、所望の物性に優れる重合体を容易に形成することができる。
【0049】
本発明の製造方法で得られる化合物(F)または本発明の組成物(F)は、使用に供されるまで、より安定した状態にて保管するのが好ましい。
化合物(F)の第一の保管方法としては、本発明の製造方法で得られる化合物(F)に対して0ppm超50000ppm以下の脂肪族炭化水素を含む状態に保持して、化合物(F)を保管する方法が挙げられる。つまり、化合物(F)と脂肪族炭化水素を含み、化合物(F)に対して0ppm超50000ppm以下の脂肪族炭化水素を含む組成物の状態では、化合物(F)を安定して長期間保管できる。かかる組成物の好適な態様としては、本発明の組成物(F)とハロゲン化水素を含み、化合物(F)に対して0ppm超50000ppm以下の脂肪族炭化水素を含む組成物が挙げられる。
【0050】
脂肪族炭化水素とは、鎖状または環状の非芳香族性の炭化水素を意味する。脂肪族炭化水素は、化合物(F)と相溶する脂肪族炭化水素であればよく、飽和脂肪族炭化水素であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素であってもよい。
飽和脂肪族炭化水素としては、鎖状構造を有するアルカン(例、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン)、環状構造を有するシクロアルカン(例、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン)が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素としては、二重結合を1つ持つ鎖状構造を有するアルケン(例、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン)、二重結合を1つ持つ環状構造を有するシクロアルケン(例、シクロブテン、シクロプロペン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン)、三重結合を1つ持つ鎖状構造を有するアルキン(例、アセチレン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、オクチン、ノニン、デシン)が挙げられる。
【0051】
脂肪族炭化水素の炭素数は、好ましくは4〜12、特に好ましくは5〜8である。
脂肪族炭化水素は、飽和脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数4〜12の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはシクロデカンが特に好ましく、ヘキサンが最も好ましい。なお、本発明において、脂肪族炭化水素は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
脂肪族炭化水素の量の下限値は、化合物(F)1gに対して、0超ppmであり、10ppmが好ましく、100ppmが特に好ましい。また、上限値は、50000ppmであり、30000ppmが好ましく、20000ppmが特に好ましい。上記範囲の脂肪族炭化水素量において、化合物(F)の純度を低下させることなく化合物(F)を安定化できる。より過剰量の脂肪族炭化水素の含有は、化合物(F)の純度を低下させる原因となりえ、化合物(F)を重合させて得られる重合体の物性を損ねる可能性がある。
【0053】
保管温度は、脂肪族炭化水素が化合物(F)と相溶する温度以下であり、通常は脂肪族炭化水素の沸点未満であり、具体的には−50℃以上50℃以下である。また、保管圧力は、大気圧または加圧であるのが好ましい。保管雰囲気は、空気雰囲気であってもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気であってもよい。保管は、密栓かつ遮光状態下の容器内にて通常は行われる。
【0054】
第一の保管方法の具体例としては、化合物(F)と0超〜50000ppm以下の脂肪族炭化水素とを含む状態になるように化合物(F)に脂肪族炭化水素を混合する態様や、本発明の製造方法における熱分解反応を、前述した飽和脂肪族炭化水素を含む状態にて、反応蒸留形式にて実施して、熱分解反応で発生する留分に化合物(F)と脂肪族炭化水素を含ませる態様が挙げられる。
【0055】
なお、第一の保管方法においては、さらに重合禁止剤を含有させてもよい。重合禁止剤の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、メトキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、4−tert−ブチルカテコール、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、ロイコキニザリン、クロラニル、フェノチアジン、Q−1300、Q−1301、テトラエチルチラウムジスルフィド、硫黄等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
化合物(F)の第二の保管方法としては、本発明の製造方法で得られる化合物(F)をpH6.5以下に保持する態様が挙げられる。つまり、化合物(F)をpH6.5以下に保持すれば、化合物(F)を安定して長期間保管できる。
化合物(F)をpH6.5以下の状態に保持するとは、25℃の空気雰囲気下にて、化合物(F)の10gとH
2Oの10gとを、30分間懸濁し、つぎに懸濁液を静置分液して水層を回収し、その水層のpHを測定した場合、pHが6.5以下であることを意味する。水層のpHは、pH計を用いて測定する。
pHは、1〜5.0が好ましく、1〜4.0が特に好ましい。pHが上記範囲においては、α−フルオロアクリル酸エステルである化合物(F)の経時に伴う、自然重合を抑制しやすい。
pHの保持手段としては、化合物(F)に無機酸を含有させる方法が挙げられる。無機酸は、pHを保持する程度に化合物(F)と相溶する無機酸であれば、特に限定されない。無機酸は、25℃において、液体の無機酸、固体の無機酸、気体の無機酸のいずれであってもよく、化合物(F)を均一に安定化させる観点から、液体の無機酸または気体の無機酸が好ましく、気体の無機酸がより好ましい。無機酸としては、ハロゲン化水素、硫酸または硝酸が好ましく、ハロゲン化水素がより好ましく、フッ化水素酸および塩化水素から選ばれる1種以上のハロゲン化水素が特に好ましい。
第二の保管方法の具体例としては、必要に応じて気体状の無機酸を化合物(F)に導入溶解させて化合物(F)をpH6.5以下に保持する態様や、本発明の製造方法における熱分解反応において副生しうる式HXで表される無機酸(ハロゲン化水素)(式中のXの定義と好ましい範囲は前記のとおりである。)を分離することなく化合物(F)に含ませる態様が挙げられる。
第二の保管方法における保管温度は、pHを保持する程度に無機酸が化合物(F)と相溶する温度以下であり、具体的には−50℃以上50℃以下である。また、保管圧力は、大気圧または加圧であるのが好ましい。保管雰囲気は、空気雰囲気であってもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気であってもよい。第二の保管方法は、密栓かつ遮光状態下の容器内にて通常は行われる。
化合物(F)の第二の保管方法の別の態様としては、化合物(F)を、化合物(F)に対して0ppm超10000ppm以下のハロゲン化水素を含む状態に保持する態様が挙げられる。つまり、化合物(F)とハロゲン化水素を含み、化合物(F)に対して0ppm超10000ppmのハロゲン化水素を含む組成物の状態では、化合物(F)を安定して長期間保管できる。かかる組成物の好適な態様としては、本発明の組成物(F)とハロゲン化水素を含み、化合物(F)に対して0ppm超10000ppmのハロゲン化水素を含む組成物が挙げられる。
該状態を保持するとは、25℃の空気雰囲気下にて、化合物(F)の10gとH
2Oの10gとを、30分間懸濁し、つぎに懸濁液を静置分液して水層を回収し、その水層のハロゲンイオンの含有量をハロゲン化水素の含有量として測定した場合、該ハロゲンイオンの含有量が0ppm超10000ppm以下であることを意味する。また、この場合、該水層のpHは6.5以下が好ましい。水層のハロゲンイオンの含有量はイオンメーターを、水層のpHはpH計を、それぞれ用いて測定される。
ハロゲン化水素の含有量は、好ましくは0超〜6000ppm、より好ましくは0超〜2000ppmである。
2種以上のハロゲン化水素を用いる場合にはそれらの合計が上記範囲になるように適宜調整される。ハロゲン化水素が塩化水素の場合、塩化水素の含有量は、好ましくは0超〜5000ppm、より好ましくは0超〜2000ppmである。ハロゲン化水素がフッ化水素酸の場合、フッ化水素酸の含有量は、好ましくは0超〜1000ppm、より好ましくは0超〜500ppmである。ハロゲン化水素の含有量が上記範囲の場合においては、α−フルオロアクリル酸エステルである化合物(F)の経時に伴う、自然重合を抑制しやすい。
ハロゲン化水素は、その含有量が保持される程度に化合物(F)と相溶すれば、特に限定されない。ハロゲン化水素は、塩化水素またはフッ化水素酸が好ましい。
第二の保管方法の別の態様の具体例としては、必要に応じて塩化水素およびフッ化水素酸から選ばれる1種以上のハロゲン化水素を化合物(F)に導入溶解させて、化合物(F)を化合物(A)に対して0ppm超10000ppm以下の該ハロゲン化水素を含む状態に保持する態様や、本発明の製造方法における熱分解反応において副生しうる式HXで表される無機酸(ハロゲン化水素)(式中のXの定義と好ましい範囲は前記のとおりである。)を分離することなく、化合物(F)に含ませる態様が挙げられる。
第二の保管方法の別の態様における保管温度は、該状態を保持する程度に、ハロゲン化水素が化合物(F)と相溶する温度であればよく、通常、−50℃以上50℃以下である。また、保管圧力は、大気圧または加圧であるのが好ましい。保管雰囲気は、空気雰囲気であってもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等。)雰囲気であってもよい。通常、第二の保管方法の別の態様は、密栓かつ遮光状態下の容器内にて行われる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。ガスクロマトグラフィー法による分析をGC分析とも、GC分析におけるそれぞれの化合物の検出ピークの面積百分値をmol%と記す。
化合物(A
1)、化合物(F
1)、化合物(P
1)、化合物(Q
1)は、それぞれ下式で表される化合物である。式中の波線は、フッ素原子の二重結合に関する立体配置がEであってもZであってもよいことを示す。
化合物(A
1)の含有量は、
1H−NMRを用いた内部標準法により定量した。
【0058】
【化12】
【0059】
化合物(F
1)の保管安定性の評価は、ガスクロマトグラフィー分析値(面積百分値)を用いて、内標物質の面積値を1とした場合の化合物(F
1)の相対面積値を算出し、化合物(F
1)に関して、(評価後の相対面積値)÷(評価前の相対面積値)を残存率として算出して評価した。
【0060】
また、化合物(F
1)の保管安定性の評価における化合物(F
1)のpHとイオン含有量は、以下の方法で測定した。
[pH測定方法]
25℃の空気雰囲気下にて、調製物の10gとH
2Oの10gとを混合し、30分間懸濁した。つぎに懸濁液を静置分液して水層を回収し、その水層のpHをpH計(株式会社佐藤計量器製作所製、型番SK−620PH。)により測定した。測定に際してはpH4のフタル酸塩を指示薬として使用し、pH計のセンサプローブは測定サンプルに3cm以上浸漬させて測定した。
[イオン含有量の測定方法]
イオンメーター(HORIBA製 型番F−53)を使用し、イオン選択性電極(8002形)を使用電極として、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、使用した。ポリ瓶に調製物を入れ、適量の蒸留水を加えた後に、フェノールフタレイン溶液を加え、内溶液が中性(pH=7〜8)を示すまで0.1規定水酸化ナトリウム水溶液を加えた後に、電極に標準液(塩化カリウム溶液)を入れて測定値を読み取り、その測定結果を濃度換算してサンプルのハロゲンイオン濃度を測定した。
【0061】
[例1]化合物(A
1)を含む組成物の製造例
フラスコ(内容積300mL)に、CH
2=C(OCH
3)
220g、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.1g、48%水酸化カリウム水溶液80g、ヘキサン40gを混合し、5℃に冷却して撹拌した。フラスコ内温を10℃未満に保持しつつ、CHCl
2F32gを連続的にフィードし、フィード終了後、フラスコ内溶液をGC分析して、CH
2=C(OCH
3)
2の消失を確認した。つぎに、フラスコに蒸留水40gを仕込み撹拌した後、静置して、化合物(A
1)を含む組成物である有機層を回収した。
有機層の化合物(A
1)の含量は29g(収率83.6%)であり、有機層は、化合物(A
1)を18mol%、化合物(P
1)を0.054mol%、および化合物(Q
1)を0.108mol%含んでいた。
【0062】
[例2]化合物(A
1)を含む精製物の製造例
<蒸留工程>
例1で得られた組成物を、理論段数20段の蒸留塔を用い、還流比15:1、圧力11.3Torr、釜内温35℃の条件にて減圧蒸留し、無色液体の蒸留物を得た。蒸留物の化合物(A
1)の含量は27gであり、蒸留物は、化合物(A
1)を95.4mol%、化合物(P
1)を0.36mol%、化合物(Q
1)を0.72mol%含んでいた。
<洗浄工程>
フラスコに10質量%の水酸化カリウムの水溶液5.4gを仕込み、撹拌しつつ内温を20℃に一貫して保持した。つぎにフラスコに、蒸留物28gを仕込み撹拌保持した。つぎに、フラスコを静置して内溶液を2層分離させた後に、化合物(A
1)を含む精製物として有機層(27g)を回収した。有機層の化合物(A
1)の含量は27gであり、有機層は、化合物(A
1)を99.3mol%、化合物(P
1)を0.01mol%、化合物(Q
1)を0.02mol%含んでいた。なお、有機層は、微量のヘキサンを含有していた。
【0063】
[例3〜5]化合物(A
1)を含む精製物の製造例
例1と同様にして得られた組成物を用い、例3では蒸留工程における釜温度を、例4では洗浄工程における水酸化カリウム水溶液の濃度を、それぞれ変更する以外は、例2と同様にして精製処理した。例5は、比較例として、工程順序を変え、洗浄工程、蒸留工程の順に精製処理をした例である。それぞれの条件と、得られた化合物(A
1)を含む精製物の組成をまとめて、下表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
蒸留工程、洗浄工程の順に精製処理した例2の精製物の組成と、洗浄工程、蒸留工程の順に精製処理した例5(比較例)の精製物の組成とから明らかであるように、前者の順に精製処理をすれば、高純度な化合物(A
1)の組成物が得られる。
【0066】
[例6]化合物(F
1)を含む組成物の製造例
0℃に冷却した受器(重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下、BHTとも記す。)0.5gを初期添加した。)を接続した三口フラスコ(内容積100mL)にBHT0.5g、1,2,4−トリクロロベンゼン100mLを仕込んだ。系内圧力を360Torrに、内温を145℃に保持しつつ、例2の精製物20gの滴下を開始して、化合物(A
1)の熱分解反応を実施し、生成する留分を受器に捕集して化合物(F
1)を得た。
留分の化合物(F
1)の含量は12.3gであり、留分(化合物(F
1)を含む組成物)は、化合物(F
1)を99.3mol%、化合物(P
1)を0.01mol%、化合物(Q
1)を0.02mol%を含んでいた。なお、留分は、微量のヘキサンを含有していた。
【0067】
[例7]化合物(F
1)を含む精製物の製造例(比較例)
滴下する精製物を例5で得られる精製物に変更する以外は、例6と同様にして、熱分解反応を実施して留分を得た。それぞれの留分組成をまとめて、下表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
例6(例2の精製物を使用)と例7(比較例である例5の精製物を使用)の結果から明らかであるように、蒸留工程と洗浄工程の順に精製処理して得られる化合物(A
1)を含む精製物を使用した場合に、高純度な化合物(F
1)の組成物が得られる。
【0070】
[例8]化合物(F
1)の保管評価例(第一の保管方法)
化合物(F
1)(和光純薬工業株式会社製の試薬)を単蒸留し、重合禁止剤の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルを含まない化合物(F
1)(以下、単蒸留物とも記す。)を得た。単蒸留物を分析した結果、脂肪族炭化水素は検出されなかった。
単蒸留物にヘキサンを加え、化合物(F
1)に対してヘキサンを、それぞれ100ppm、1000ppm、10000ppm含むサンプル1、2、3を、それぞれ調製した。また、例6で得られた化合物(F
1)を含む組成物は、化合物(F
1)に対してヘキサンを1000ppm含んでいた。
空気雰囲気下、各サンプルのそれぞれに、内標物質(トリフルオロエタノール100ppm)をいれ、0℃にて3日間密栓遮光下に保管して、化合物(F
1)の安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
[例9]化合物(F
1)の保管評価例(第二の保管方法)
単蒸留物のpHは、7.0であり、塩化水素とフッ化水素酸は検出されなかった。
単蒸留物に、塩化水素ガスを吹き込んで、塩化水素を含む化合物(F
1)であり化合物(F
1)に対して塩化物イオンを100ppm含むpH3のサンプル4を得た。同様にして、塩化水素を含む化合物(F
1)であり化合物(F
1)に対して塩化物イオンを1200ppm含むpH2のサンプル5を得た。
【0073】
つぎに、化合物(F
1)にフッ化水素酸ガスを吹き込んで、フッ化水素酸を含む化合物(F
1)であり化合物(F
1)に対してフッ化物イオンを20ppm含むpH3のサンプル6、フッ化水素酸を含む化合物(F
1)であり化合物(F
1)に対してフッ化物イオンを500ppm含むpH2のサンプル7を得た。さらに、化合物(F
1)に、塩化水素ガスとフッ化水素酸ガスを順に吹き込んで、塩化水素とフッ化水素酸とを含む化合物(F
1)であり化合物(F
1)に対して、塩化物イオンを1200ppm、フッ化物イオンを20ppm、それぞれ含むpH1のサンプル8を得た。
また、例6で得られた化合物(F
1)を含む組成物は、塩化水素とフッ化水素酸とを含み化合物(F
1)に対して、塩化物イオンを800ppm、フッ化物イオンを20ppm、それぞれ含み、pHは1であることを確認した。
【0074】
空気雰囲気下、各サンプルのそれぞれに、内標物質(トリフルオロエタノール100ppm)をいれ、25℃にて3日間密栓遮光下に保管し、化合物(F
1)の安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
[例10]重合体の製造例
例6の化合物(F
1)を含む組成物(21.6g)、1,7−オクタジエン(1.2g)およびジビニルベンゼン(1.2g)からなる組成物と、塩化ナトリウム(4.2g)、ポリビニルアルコール(1.2g)、リン酸水素2ナトリウム7水和物(1.0g)、リン酸水素2ナトリウム1水和物(0.08g)、亜硝酸ナトリウム(0.02g)、水(101.5g)および過酸化ラウロイルからなる水溶液を、反応器に投入して混合し、反応器内温を30℃に保持した。反応器内を撹拌しながら、内温を連続的に95℃まで上昇させて、該組成物を重合させた。重合後、反応器内溶液を冷却し、有機相を回収した。撹拌下、有機相に水を添加して発生する固体を回収し、さらに水洗して、化合物(F
1)、1,7−オクタジエンおよびジビニルベンゼンの共重合体である架橋重合体(15g)を得た。