特許第6863498号(P6863498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6863498
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】希薄溶液製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20060101AFI20210412BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210412BHJP
   F04B 23/00 20060101ALI20210412BHJP
   F04B 53/06 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C02F1/68 520B
   C02F1/68 510A
   C02F1/68 530A
   C02F1/68 530K
   C02F1/68 530L
   H01L21/304 648K
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 648G
   F04B23/00 Z
   F04B53/06
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-44474(P2020-44474)
(22)【出願日】2020年3月13日
【審査請求日】2020年9月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−025933(JP,A)
【文献】 特開2006−297267(JP,A)
【文献】 特開平07−227593(JP,A)
【文献】 特開2010−162476(JP,A)
【文献】 特開2000−126752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00− 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体に対してアンモニア又は過酸化水素を含む第2の液体を添加することで該第2の液体の希薄溶液を製造する希薄溶液の製造装置であって、
前記第1の液体を流す第1の配管と、
前記第1の配管内に第2の配管を通じて前記第2の液体を添加するポンプと、
該ポンプからのガス抜き機構と
を備えた希薄溶液製造装置において、
前記第1の配管のうち前記第2の配管の接続部よりも下流側に設けられた導電率計と
導電率の検出値が3〜7%の間から選択された所定値以上変動したときに前記ガス抜き機構を作動させるガス抜き機構制御手段と
前記第2の液体を貯留するタンクと
を備えており、
前記第2の配管は該タンクに接続されており、
前記ガス抜き機構は、前記ポンプからガスが混入した第2の液体を該タンクに導くためのガス抜き配管と、該ガス抜き配管に設けられた弁とを備えており、
前記制御手段は、該弁の開閉を制御するものであり、
該弁が開のときも前記第1の配管に第1の液体を流すことを特徴とする希薄溶液製造装置。
【請求項2】
第1の液体に対してアンモニア又は過酸化水素を含む第2の液体を添加することで該第2の液体の希薄溶液を製造する希薄溶液の製造装置であって、
前記第1の液体を流す第1の配管と、
前記第1の配管内に第2の配管を通じて前記第2の液体を添加するポンプと、
該ポンプからのガス抜き機構と
を備えた希薄溶液製造装置において、
前記第2の配管のうち前記ポンプよりも下流側に設けられた流量計と、
該流量計の検出値が所定値以上変動したときに前記ガス抜き機構を作動させるガス抜き機構制御手段と
前記第2の液体を貯留するタンクと
を備えており、
前記第2の配管は該タンクに接続されており、
前記ガス抜き機構は、前記ポンプからガスが混入した第2の液体を該タンクに導くためのガス抜き配管と、該ガス抜き配管に設けられた弁とを備えており、
前記制御手段は、該弁の開閉を制御するものであり、
該弁が開のときも前記第1の配管に第1の液体を流すことを特徴とする希薄溶液製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水等の第1の液体に、導電性付与物質又は酸化還元電位調整物質等を含む第2の液体を少量添加して該物質の希薄溶液を製造するための希薄溶液製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業分野のウエハ処理に使用される洗浄溶液として、超純水に導電性付与物質や酸化還元電位調整物質を添加した溶液が使用されている。
【0003】
その際に、導電性付与物質や酸化還元電位調整物質はポンプで超純水に添加される(特許文献1,2)。この導電性付与物質や酸化還元電位調整物質が気化しやすい物質の場合、物質の気泡がポンプ内に溜り易い。特に、極低流量のポンプは気泡による詰りに弱く、気泡が溜まるとポンプから定量吐出ができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−171610号公報
【特許文献2】特開2018−206998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、超純水等の第1の液体に、導電性付与物質又は酸化還元電位調整物質を含む第2の液体を微量添加して規定濃度の希薄溶液を安定して製造することができる希薄溶液製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の希薄溶液製造装置は、第1の液体に対して導電性付与物質及び酸化還元電位調整物質の少なくとも一つを含む第2の液体を添加することで該第2の液体の希薄溶液を製造する希薄溶液の製造装置であって、前記第1の液体を流す第1の配管と、前記第1の配管内に第2の配管を通じて前記第2の液体を添加するポンプと、該ポンプからのガス抜き機構とを備えた希薄溶液製造装置において、前記第1の配管のうち前記第2の配管の接続部よりも下流側に設けられた、導電率計、比抵抗計又は酸化還元電位計よりなる水質検出計と、該水質検出計の水質検出値が所定値以上変動したときに前記ガス抜き機構を作動させるガス抜き機構制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第2発明の希薄溶液製造装置は、第1の液体に対して導電性付与物質及び酸化還元電位調整物質の少なくとも一つを含む第2の液体を添加することで該第2の液体の希薄溶液を製造する希薄溶液の製造装置であって、前記第1の液体を流す第1の配管と、前記第1の配管内に第2の配管を通じて前記第2の液体を添加するポンプと、該ポンプからのガス抜き機構とを備えた希薄溶液製造装置において、前記第2の配管のうち前記ポンプよりも下流側に設けられた流量計と、該流量計の検出値が所定値以上変動したときに前記ガス抜き機構を作動させるガス抜き機構制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、前記第2の液体を貯留するタンクを備えており、前記第2の配管は該タンクに接続されており、前記ガス抜き機構は、前記ポンプからガスが混入した第2の液体を該タンクに導くためのガス抜き配管と、該ガス抜き配管に設けられた弁とを備えており、前記制御手段は、該弁の開閉を制御するものである。
【0009】
なお、本発明において、導電性付与物質、酸化還元電位調整物質としては、アンモニア、二酸化炭素、過酸化水素、オゾンなどが例示されるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の希薄溶液製造装置によると、超純水等の第1の液体に第2の液体を添加するためのポンプにガスが溜まって、ポンプの吐出量が低下したり、あるいはそれにより、希薄溶液の導電率、比抵抗又は酸化還元電位がそれまでの安定した値から所定以上変動した場合、ガス抜き機構が作動してポンプからガス抜きが行われ、ポンプ吐出量が回復する。これにより、規定濃度の希薄溶液を安定して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る希薄溶液製造装置の構成図である。
図2】別の実施の形態に係る希薄溶液製造装置の構成図である。
図3】比較例に係る希薄溶液製造装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0013】
図1は第1発明の実施の形態を示すものである。
【0014】
第1の液体としての超純水は、流量計2及びバルブ3を有した第1の配管1を介してユースポイントに送水され、その途中で、タンク4内の第2の液体が第2の配管5、ポンプ6及び流量調整弁7を介して添加される。ポンプ6で発生したガスを含む第2の液体をタンク4に戻すようにガス抜き配管8が設けられており、該ガス抜き配管8にガス抜き弁9が設けられている。該弁9は、該配管8の途中に設けられてもよく、上流端又は下流端に設けられてもよい。
【0015】
タンク4内には、前述の導電性付与物質又は酸化還元電位調整物質の溶液が貯留されている。
【0016】
第1の配管1のうち、第2の配管5の接続部(合流部)よりも下流側に導電率計、比抵抗計又は酸化還元電位計(ORP計)よりなる水質検出計としての水質センサ11が設けられている。該水質センサ11の検出信号が制御装置(この実施の形態では、PLC(プログラマブルロジックコントローラ))12に入力されており、該制御装置12によってポンプ6、流量調整弁7及びガス抜き弁9が制御される。
【0017】
このように構成された希薄溶液製造装置において、定常時にあっては、第1の配管1内を超純水が定流量にて流れ、第2の配管5内を第2の液体が定流量にて流れ、第2の液体が規定濃度となるように添加された希薄溶液がユースポイントに送水される。
【0018】
ポンプ6に、アンモニア、炭酸ガス、過酸化水素、オゾンなど、第2の液体から分離したガスやエアなどのガスが溜ってくると、ポンプ6の吐出量が減少し、センサ11の検出値がそれまでの安定した値(目標値通りの値)から所定以上(例えば5%以上)変動する。このような水質変動が検出された場合、制御装置12はガス抜き弁9を所定時間開とし、ガスが混ざった第2の液体をポンプ6からタンク4に戻し、該所定時間経過後、ガス抜き弁9を閉に戻す。これにより、ポンプ6の吐出量が定常量に戻り、規定濃度の第2の液体を含んだ超純水がユースポイントに送水される。
【0019】
なお、上記説明では、センサ検出値が5%以上変動した場合を例として挙げているが、これに限定されるものではなく、通常は1〜10%特に3〜7%の範囲から選択した値を採用すればよい。次に説明する第2発明の実施の形態の流量計13においても同様である。
【0020】
図2は第2発明の実施の形態を示している。この実施の形態では、第2の配管5のうち前記ポンプ6よりも下流側(この実施の形態では流量調整弁7の下流側)に流量計13が設置されており、この流量計13の検出信号が制御装置12に入力されている。
【0021】
制御装置12は、該流量計13の検出流量がそれまでの安定した値よりも5%以上変動した場合に、ガス抜き弁9を所定時間開とし、ガス抜きを行う。その他の構成及び作用は図1と同じであり、同一符号は同一部分を示している。
【0022】
この実施の形態によっても、規定濃度の第2の液体を含む超純水が安定してユースポイントに送水される。
【実施例】
【0023】
以下に実施例及び比較例について説明する。
【0024】
[実施例1]
図1に示す希薄溶液製造装置を用い、タンク4から29%NH溶液をポンプ6により送液し、60L/minで通水している配管1内の超純水に添加し、導電率3μS/cmとなる溶液を作製した。使用したセンサ11は導電率計であり、導電率が設定値から5%下がった時点でガス抜き弁9を5秒間開けてガスを抜き、その後ガス抜き弁9を閉めて通常状態に戻すようにした。本試験を30日間続けたが、導電率計11で検出される導電率が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0025】
[実施例2]
29%NH溶液を導電率1500μS/cmとなるように添加したこと以外は実施例1と同様にして運転を行った。本試験を30日間続けたが、導電率計11で検出される導電率が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0026】
[実施例3]
超純水の通水量を3L/minとしたこと以外は実施例1と同様にして運転を行った。本試験を30日間続けたが、導電率計11で検出される導電率が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0027】
[実施例4]
図2に示す希薄溶液製造装置を用い、実施例1と同一の超純水流量(60L/min)及び目標導電率(3μS/cm)にて29%NH溶液を添加した。
【0028】
この実施例4では、流量計13の検出流量が流量0を検知した時点でガス抜き弁9を5秒間開けてガスを抜き、その後ガス抜き弁9を閉めて通常状態に戻すように制御した。本試験を30日間続けたが、導電率計11で検出される導電率が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0029】
[実施例5]
図1の装置を用い、タンク4内の液体を60%H溶液とし、超純水流量を60L/minとし、センサ11として酸化還元電位計を用い、H濃度0.5ppbのH含有超純水をユースポイントに送水するようにした。酸化還元電位計11の検出酸化還元電位が設定値から5%下がった時点でガス抜き弁9を5秒間開けてガスを抜き、その後ガス抜き弁9を閉めて通常状態に戻すように制御した。
【0030】
本試験を30日間続けたが、酸化還元電位計11で検出される酸化還元電位が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0031】
[実施例6]
超純水中のH濃度が1000ppbとなるようにHを添加したこと以外は実施例5と同様にして運転を行った。本試験を30日間続けたが、酸化還元電位計11で検出される酸化還元電位が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0032】
[実施例7]
超純水流量を3L/minとしたこと以外は実施例5と同様にして運転した。本試験を30日間続けたが、酸化還元電位計11で検出される酸化還元電位が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0033】
[実施例8]
図2に示す希薄溶液製造装置を用い、実施例5と同一の超純水流量及び目標酸化還元電位にてH濃度0.5ppbの超純水を送水するよう運転した。この実施例8では、流量計13の検出流量が流量0を検知した時点でガス抜き弁9を5秒間開けてガスを抜き、その後ガス抜き弁9を閉めて通常状態に戻すように制御した。本試験を30日間続けたが、酸化還元電位計11で検出される酸化還元電位が設定値から10%以上低下することはなかった。
【0034】
[比較例1〜3]
図3の通り、ガス抜き配管8及び弁9を省略した装置を用いたこと以外はそれぞれ実施例1〜3と同じ条件で運転した。導電率が設定値の10%減となるまでの時間を計測した。結果を表1に示す。
【0035】
[比較例4〜6]
図3の通り、ガス抜き配管8及び弁9を省略した装置を用いたこと以外はそれぞれ実施例5〜7と同じ条件で運転した。H濃度が設定値の10%減となるまでの時間を計測した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかな通り、本発明によると、NH又はHを規定希薄濃度にて含む超純水を安定してユースポイントに送水することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 第1の配管
2 流量計
4 タンク
5 第2の配管
6 ポンプ
7 流量調整弁
8 ガス抜き配管
9 ガス抜き弁
11 水質センサ
12 制御装置
13 流量計
【要約】
【課題】超純水等の第1の液体に、導電性付与物質又は酸化還元電位調整物質を含む第2の液体を微量添加して規定濃度の希薄溶液を安定して製造することができる希薄溶液製造装置を提供する。
【解決手段】第1の液体に対して導電性付与物質及び酸化還元電位調整物質の少なくとも一つを含む第2の液体を添加することで該第2の液体の希薄溶液を製造する希薄溶液の製造装置であって、前記第1の液体を流す第1の配管1と、前記第1の配管1内に第2の配管5を通じて前記第2の液体を添加するポンプ6と、該ポンプ6からのガス抜き配管8と、導電率計、比抵抗計又は酸化還元電位計よりなる水質センサ11と、該水質センサ11の水質検出値が所定値以上変動したときにガス抜き弁9を開く制御装置12とを備えた希薄溶液製造装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3