特許第6863510号(P6863510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6863510
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】超純水製造装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20210412BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20210412BHJP
   B01D 61/54 20060101ALI20210412BHJP
   B01D 61/48 20060101ALI20210412BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   C02F1/469
   B01D61/02
   B01D61/54 500
   B01D61/54 510
   B01D61/48
   B01D61/58
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-114072(P2020-114072)
(22)【出願日】2020年7月1日
【審査請求日】2020年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2019-234518(P2019-234518)
(32)【優先日】2019年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃久
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸也
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−058012(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/235366(WO,A1)
【文献】 特開2014−184380(JP,A)
【文献】 特開2013−000725(JP,A)
【文献】 特開2014−184407(JP,A)
【文献】 特開2014−188398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
C02F 1/46− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜と電気脱イオン装置と前記電気脱イオン装置の前段に設けられた給水ポンプとを有する一次純水システムと、前記電気脱イオン装置の後段に配置された水位計測手段が付設された貯水タンクと、前記一次純水システムで製造された一次純水をさらに処理するサブシステムとを備えた超純水製造装置の制御方法であって、
前記水位計測手段で計測される貯水タンクの水位を略一定に保持するように前記電気脱イオン装置に供給する給水の水量を制御し、
前記電気脱イオン装置に供給される給水の水量及び比抵抗値から前記給水の負荷を算出し、
前記給水の負荷と、前記一次純水の流量と、から前記電気脱イオン装置の運転電流値を設定する、
超純水製造装置の制御方法。
【請求項2】
前記電気脱イオン装置が、陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換体が充填されていて、前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と前記脱塩室に給水を通水して脱塩水を取り出す手段とを有するものであり、 前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室の脱塩水取り出し口に近い側から該濃縮室内に被濃縮水を導入すると共に、脱塩室の給水入口に近い側から濃縮水を流出するものである、請求項1に記載の超純水製造装置の制御方法。
【請求項3】
記濃縮水通水手段が、前記脱塩室を通水した脱塩水を被濃縮水として前記脱塩室の脱塩水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、脱塩室の給水入口に近い側から流出するものである、請求項に記載の超純水製造装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体、液晶等の電子産業分野で利用される超純水を製造する超純水製造装置の制御方法に関する。特に、サブシステムでの使用量に応じて、一次純水を製造可能な超純水製造装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水装置及び一次純水を処理するサブシステムで構成される超純水製造装置で原水を処理することにより製造されている。
【0003】
例えば、図1に示すように、超純水製造装置1は、前処理装置2、一次純水製造装置3、及び二次純水製造装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造装置1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水製造装置3は、前処理水W1を処理する逆浸透膜装置5と、脱気膜装置6と、紫外線酸化装置7と、電気脱イオン装置9と、この電気脱イオン装置9に給水を供給する給水ポンプ8とを有する。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解する。
【0005】
サブシステム4は、一次純水製造装置3で製造された一次純水W2を貯留する、上記電気脱イオン装置の後段に配置された貯水タンクとしてのサブタンク11とこのサブタンク11から図示しないポンプを介して送給される一次純水W2を処理する紫外線酸化装置12と非再生型混床式イオン交換装置13と膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜14とで構成され、さらに必要に応じRO膜分離装置等が設けられている場合もある。このサブシステム4では、紫外線酸化装置12により一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、続いて非再生型混床式イオン交換装置13で処理することで残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質をイオン交換によって除去する。そして、限外濾過(UF)膜14で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント15に供給して、未使用の超純水はサブタンク11に還流する。
【0006】
上述したような超純水製造装置1では、所定の水質の一次純水を安定して供給するために、あらかじめ過剰量の一次純水W2を製造して、サブタンク11に必要量のみ供給し、余剰分は循環利用するなどの制御を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような超純水製造装置1の従来の制御方法では、電気脱イオン装置9などに必要量以上の給水を供給して処理することになるので、エネルギー効率の点で改善の余地があった。そこで、一次純水製造装置3の処理量をユースポイント15の使用量に応じて電気脱イオン装置9の処理量を変動させることが考えられるが、ユースポイント15での使用量の変動に追従するのが困難であるばかりか、電気脱イオンでの脱塩水の水質の低下をきたす、という問題点があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サブシステムでの使用量に応じて、一次純水を製造可能な超純水製造装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明は、逆浸透膜と電気脱イオン装置と前記電気脱イオン装置の前段に設けられた給水ポンプとを有する一次純水システムと、前記電気脱イオン装置の後段に配置された水位計測手段が付設された貯水タンクと、前記一次純水システムで製造された一次純水をさらに処理するサブシステムとを備えた超純水製造装置の制御方法であって、前記水位計測手段で計測される貯水タンクの水位を略一定に保持するように前記電気脱イオン装置に供給する給水の水量を制御する、超純水製造装置の制御方法を提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、電気脱イオン装置の後段に配置された貯水タンクの水位を測定して、この水位がほぼ一定となるように電気脱イオン装置に供給する給水の水量を制御することにより、サブシステムの稼働状況にあわせて一次純水の製造量を調整することができるので、超純水製造装置における一次純水の運転効率を向上させることができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記電気脱イオン装置に供給される給水の水量と、該給水の水質とから、所定の一次純水の水質となるように、前記電気脱イオン装置の運転電流を制御するのが好ましい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、電気脱イオン装置に給水を供給する給水の水量を制御すると、得られる一次純水の水質が変動するので、一次純水の要求水質と水量とに応じて電気脱イオン装置の運転電流を制御することにより、所定の水質の一次純水をサブタンクに供給することができる。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、前記電気脱イオン装置が、陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換体が充填されていて、前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と前記脱塩室に給水を通水して脱塩水を取り出す手段とを有するものであり、 前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室の脱塩水取り出し口に近い側から該濃縮室内に被濃縮水を導入すると共に、脱塩室の給水入口に近い側から濃縮水を流出するものであるのが好ましい。特に上記発明(発明3)においては、前記前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室を通水した脱塩水を被濃縮水として前記脱塩室の脱塩水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、脱塩室の給水入口に近い側から流出するものであるのが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明3,4)によれば、電気脱イオン装置の給水の水量を増加させる際には処理水量が増加するので供給電流を増加させる必要があるが、これにより電気脱イオン装置の脱塩水(一次純水に相当)の水質が一次的に低下することがあり、発明3で規定するような電気脱イオン装置であれば、水質の低下が少ないことが、本発明者らの検討の結果わかった。これは、以下のような理由による。すなわち、電気脱イオン装置において、濃縮水を脱塩室の通水方向と同じ方向に通水すると、濃縮室の出口側(脱塩室の出口側)で炭酸イオン(HCO)などのイオン濃度が最も高くなるので、濃縮室の下部にこれらのイオンが蓄積されやすく、電気脱イオン装置への供給電流を増加させると、蓄積した炭酸イオンなどが電気脱イオン装置の濃縮室から脱塩室側に炭酸イオンなどのイオンが逆拡散し、脱塩水の水質の低下をきたすことがわかった。これに対し、発明3で規定する電気脱イオン装置では、濃縮水を脱塩室の通水方向と逆方向に通水することで、濃縮室の入口側(脱塩室の出口側)で炭酸イオンなどのイオン濃度が最も低くなるので、このような逆拡散が抑制されるため、サブシステムに供給する一次純水の流量を変動させる場合には、このような構成の電気脱イオン装置が特に好適である。特に発明4で規定する電気脱イオン装置では、脱煙室を通水した脱塩水を被濃縮水としているので、逆拡散をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気脱イオン装置の後段に配置された貯水タンクの水位を測定して、この水位がほぼ一定となるように電気脱イオン装置に供給する給水の水量を制御することにより、サブシステムの状況にあわせて一次純水の製造量を調整することができるので、超純水製造装置における一次純水の運転効率を向上させることができる。特に電気脱イオン装置に給水を供給する給水の水量を制御すると、得られる一次純水の水質が変動するので、一次純水の要求水質と水量とに応じて電気脱イオン装置の運転電流を制御することにより、所定の水質の一次純水を貯水タンクに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施形態に係る超純水製造装置の制御方法を適用可能な超純水製造装置を示すフロー図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る超純水製造装置の制御方法における電気脱イオン装置の制御構造を示す概略図である。
図3】同実施形態に係る電気脱イオン装置を示す概略図である。
図4】同実施形態に係る電気脱イオン装置の通水状態を示す概略図である。
図5】同実施形態に係る超純水製造装置に用いる電気脱イオン装置の他の構成を示す模式的な断面図である。
図6】同実施形態に係る超純水製造装置に用いる電気脱イオン装置の好適な構成を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の第二の実施形態に係る超純水製造装置の制御方法における電気脱イオン装置の制御構造を示す概略図である。
図8】実施例1の電気脱イオン装置の制御構造を示す概略図である。
図9】実施例2及び実施例3の電気脱イオン装置の制御構造を示す概略図である。
図10】実施例2における電気脱イオン装置の通水量の変化と、水質の変動情況を示すグラフである。
図11】実施例3における電気脱イオン装置の給水負荷の変化と、水質の変動情況を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の超純水製造装置の制御方法について添付図面を参照して説明する。
【0018】
〔第一の実施形態〕
(超純水製造装置)
本発明は、電気脱イオン装置を備えた一次純水装置を有する超純水製造装置において、この電気脱イオン装置の制御に特徴を有するものである。したがって、本実施形態の超純水製造装置の制御方法を適用可能な超純水製造装置としては、一次純水装置に電気脱イオン装置を備えていればよく、例えば、図1に示す超純水製造装置を好適に適用することができる。以下、図1に示す超純水製造装置に基づいて、同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0019】
本実施形態では図2に示すように一次純水装置3において、給水ポンプ8に連通した電気脱イオン装置9には直流電源器9Aが付設されていて、電気脱イオン装置9の脱塩水W2(本実施形態においては電気脱イオン装置9が一次純水装置3の末端にあるので一次純水に相当する、以下同じ)を電気脱イオン装置9の後段に配置された貯水タンクとしてのサブタンク11に供給可能となっている。このサブタンク11には、水位計測手段としてのレベルスイッチ21が設けられている。また、電気脱イオン装置9の脱塩水W2の流路22には、コントロール弁23と流量計24が設けられている一方、電気脱イオン装置9の濃縮水W5の流路25にもコントロール弁26と流量計27が設けられている。そして、パーソナルコンピュータなどを備えた制御装置28に、レベルスイッチ21、流量計24及び流量計27の計測データがそれぞれ送信可能となっているととともに、給水ポンプ8、コントロール弁23及びコントロール弁26をそれぞれ制御可能となっている。
【0020】
ここで、電気脱イオン装置9としては、図3及び図4に示すような構成を有するものを好適に用いることができる。
【0021】
図3において、電気脱イオン装置9は、電極(陽極31、陰極32)の間に複数のアニオン交換膜33及びカチオン交換膜34を交互に配列して濃縮室35と脱塩室36とを交互に形成したものであり、脱塩室36には、イオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるイオン交換体(アニオン交換体及びカチオン交換体)が混合もしくは複層状に充填されている。また、濃縮室35と、陽極室37及び陰極室38にも、イオン交換体が充填されている。
【0022】
この電気脱イオン装置9には、脱塩室36に給水W1を通水して脱塩水W2取り出す通水手段(図示せず)と、濃縮室35に被濃縮水W4を通水する濃縮水通水手段(図示せず)とが設けられていて、本実施形態においては被濃縮水W4を、脱塩室36の脱塩水W2の取り出し口に近い側から濃縮室35内に導入すると共に、脱塩室36の給水W1の入口に近い側から流出する。すなわち脱塩室36における給水W1の流通方向と反対方向から被濃縮水W4を濃縮室35に導入して濃縮水W5を吐出する構成となっている。なお、本明細書中においては、前処理水W1を逆浸透膜装置5、脱気膜装置6及び紫外線酸化装置7で処理した電気脱イオン装置9の給水も説明の便宜上、給水W1として記載する。
【0023】
この濃縮室35に導入する被濃縮水W4としては、脱塩室36に供給する給水W1を用いることができるが、図4に示すように被濃縮水W4として脱塩室36から得られる脱塩水W2を用いることが好ましい。
【0024】
このような脱イオン装置9を用いることにより、以下のような効果を得ることができる。すなわち、図5に模式的に示すように電気脱イオン装置9において、被濃縮水W4と脱塩室の通水方向と同じ方向に通水すると、濃縮室35の出口側(脱塩室36の出口側)で炭酸イオン(HCO)などのイオンが最も高くなるので、濃縮室35の出口側にこれらのイオンが蓄積されやすく、電気脱イオン装置9への供給電流を増加させると、蓄積した炭酸イオンなどが電気脱イオン装置9の濃縮室35から脱塩室36側に逆拡散し、脱塩水の水質の低下をきたしやすい。そこで、上述したような構成の電気脱イオン装置9を用いることにより、図6に模式的に示すように濃縮室35の入口側(脱塩室36の出口側)で炭酸イオンなどのイオン濃度が最も低くなるので、逆拡散が抑制される。これにより、電気脱イオン装置9の脱塩水の水量を変動させても、一次純水W2の水質の変動を抑制することができるので、サブシステム4に供給する一次純水W2の流量を変動させる場合に好適であるといえる。
【0025】
(超純水製造装置の制御方法)
上述の超純水製造装置の制御方法について以下説明する。
図2に示すように給水W1を、給水ポンプ8を介して電気脱イオン装置9に供給する。このとき、レベルスイッチ21によりサブタンク11の水位を計測し、この水位データに基づき制御装置28は、この水位がほぼ一定の値(あらかじめ定めておいた基準値に対して所定の範囲であってもよい)より少なければ、給水W1の電気脱イオン装置9の送り流量を増やす一方、多ければ送り流量を減らすように給水ポンプ8をインバータ制御する。そして、この給水W1の水量に応じて、制御装置28により、コントロール弁23及びコントロール弁26を制御して、電気脱イオン装置9の脱塩水(一次純水)W2と濃縮水W5の流量を制御すればよい。例えば、濃縮水W5の水量を一定として、回収率が変動するように脱塩水(一次純水)W2の量を調整すればよい。
【0026】
このように電気脱イオン装置9の後段に配置された貯水タンクとしてのサブタンク11の水位に応じて、給水ポンプ8による電気脱イオン装置9への給水Wの送り水量を制御することにより、給水ポンプ8の駆動電力を削減することができるだけでなく、電気脱イオン装置9の運転効率を最適化することができ、これらにより超純水製造装置1の運転に要する電力量を削減することができる。
【0027】
〔第二の実施形態〕
(超純水製造装置)
第二の実施形態は、基本的には前述した第一の実施形態と同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0028】
本実施形態においては、図7に示すように給水W1の水質を計測する水質計測手段としての比抵抗計29が設けられていて、この比抵抗計29の水質情報、流量計24の電気脱イオン装置9の脱塩水(一次純水)W2の流量情報及びレベルスイッチ21によるサブタンク11の水位を制御装置28に送信可能となっていて、これらに基づいて、電気脱イオン装置9に供給する電流量を直流電源器9Aにより制御可能となっている。ここで、電気脱イオン装置9としては、第一の実施形態と同様に図3及び図4に示すような構成を有するものを好適に用いることができる。
【0029】
(超純水製造装置の制御方法)
上述の超純水製造装置の制御方法について以下説明する。
図7に示すように給水W1を、給水ポンプ8を介して電気脱イオン装置9に供給する。このとき、レベルスイッチ21によりサブタンク11の水位を計測し、この水位データの基づき制御装置28は、この水位があらかじめ定めて置いた基準値(所定の範囲であってもよい)より少なければ、給水W1の電気脱イオン装置9の送り流量を増やす一方、多ければ送り流量を減らすように給水ポンプ8をインバータ制御する。このとき、比抵抗計28の水質情報と給水ポンプ8の給水量とから、給水W1の負荷(水質×流量)を計算し、この給水W1の負荷と電気脱イオン装置9の脱塩水(一次純水)W2の流量に応じて、制御装置28により電気脱イオン装置9の運転電流値を設定し。これに基づき直流電源器9Aを制御することにより、所定の水質の脱塩水(一次純水)W2を得ることができる。なお、第二の実施形態においては、第一の実施形態の制御を複合させてもよい。
【0030】
このようにサブタンク11の水位に応じて、給水ポンプ8による電気脱イオン装置9への給水W1の送り水量を制御するとともに、給水W1の水質に応じて直流電源器9Aから電気脱イオン装置9に供給する電流量を制御することにより、給水ポンプ8及び電気脱イオン装置9の運転効率を最適化して、超純水製造装置1の運転に要する電力量を削減することができ、さらに脱塩水(一次純水)W2を維持することができる。
【0031】
上述したような第一の実施形態及び第二の実施形態において、例えば、ユースポイント15の使用量が少なく、サブタンク11の水位が高すぎる場合など給水ポンプ8をインバータ制御するだけでは制御しきれない場合には、一次純水装置3を停止するなどの制御を行ってもよい。特に、一次純水装置3が複数系列存在する場合には、一次純水装置3の運転する系列数の増減と、第一の実施形態又は第二の実施形態の制御とを組み合わせることにより、より効率的な運転制御を行うことができる。
【0032】
以上、本発明について、上記の各実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能であり、例えば、適用可能な超純水製造装置1としては、一次純水装置3に電気脱イオン装置を備えていれば、種々の構成のものに適用可能である。また、電気脱イオン装置9としては、脱塩水と濃縮水とを同じ方向に有するタイプのものであってもよい。さらに、上記の各実施形態では、電気脱イオン装置9の後段に配置された貯水タンクとしてサブタンク11を用いたが、電気脱イオン装置9の後段にある貯水タンクであれば、同様に水位を計測して制御することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
(電流値変動に対する脱塩水水質の挙動確認試験)
試験装置
図8に示す電気脱イオン装置の制御用の試験装置を用意した。この試験装置51は、超純水(UPW)流路52と、電気脱イオン装置53と、脱塩水(一次純水)流路54と、濃縮水流路55とを有する。そして、超純水(UPW)流路52には、炭酸イオン(HCO)源である炭酸ナトリウム溶液タンク56を薬液ポンプ56Aを介して接続するとともに、導電率計57Aが設けられている。また、脱塩水流路54には、流量計58Aが設けられているとともに比抵抗計59が接続されている。さらに、濃縮水流路55には、流量計58Bが設けられているとともに導電率計57Bが接続されている。なお、電気脱イオン装置53としては、図3及び図4に示す構成のものを採用した。
【0035】
上述したような試験装置において、超純水(UPW)に炭酸ナトリウム溶液タンク56から炭酸ナトリウ溶液を炭酸濃度1mg/Lとなるように添加したものを給水W1として、電気脱イオン装置53による回収率80%(脱塩水W2が5.0L/分、濃縮水W5が1.2L/分)となるように処理した。この際、電気脱イオン装置53に供給する電流量を0.1A、0.2A、0.4A、1A、2A及び4Aの順に100〜200時間ごとに連続的に変化させ、最終的に4Aで継続して運転した。この際、脱塩水W2の比抵抗値及び濃縮水W5の電気伝導率の経時変化を測定した。結果を給水W1の電気伝導率とともに表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、給水W1の水質(電気伝導率)は、ほぼ一定(約0.16mS/m)であり、電流値が高くなるほど脱塩水W2の水質が向上するだけでなく、運転電流0.4A以上であれば電流値を変動させても約18MΩcmの安定した水質を維持できることがわかる。一方、濃縮水は、電流値を上げると迅速に水質が悪化(電気伝導率が上昇)し、運転電流が高いほど大きく上昇する傾向を示した。これは電流値が大きくなると水のスプリットによるラジカルの発生量が増大し、濃縮室からの炭酸イオン(HCO)の吐出量が増大するためであると考えられる。なお、電流値4Aで運転を継続すると、最終的に濃縮水の電気伝導率は、給水W1の五倍濃縮値である0.8mS/mに収束する傾向が認められた。
【0038】
〔実施例2〕
(給水の水量変動に対する脱塩水水質の挙動確認試験)
試験装置
図9に示す電気脱イオン装置の制御用の試験装置を用意した。この試験装置61は図8に示す装置において、炭酸ナトリウム溶液タンク56と薬液ポンプ56Aの代わりに、シリカ(SiO)源としてケイ酸ナトリウム(NaSiO)溶液タンク62を、薬液ポンプ62Aを介して超純水流路52に接続するとともに、ホウ素源として水酸化ホウ素(B(OH))と炭酸ナトリウムの混合液タンク63を薬液ポンプ63Aを介して超純水流路52に接続した構成を有する。
【0039】
給水W1
超純水(UPW)にケイ酸ナトリウム溶液タンク62及び混合液タンク63からケイ酸ナトリウム溶液と水酸化ホウ素及び炭酸ナトリウムの混合溶液とを、それぞれシリカ濃度1000μg/L、ホウ素濃度100μg/L、炭酸濃度10mg/Lとなるように添加したものを給水W1とした。
【0040】
上述したような試験装置及び給水W1を用いて、以下の3条件で連続して電気脱イオン装置を運転した。
【0041】
運転条件1
給水W1を電気脱イオン装置53に通水量0.3m/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.2μg/Lでホウ素濃度0.13μg/Lであり、いずれも99.8%以上の高い除去率であった。
【0042】
運転条件2
続いて給水W1を電気脱イオン装置53に通水量0.24m/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は0.79μg/Lでホウ素濃度0.11μg/Lであり、いずれも約99.9%の高い除去率であった。
【0043】
運転条件3
さらに運転条件1と同じ条件で電気脱イオン装置53を約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.6μg/Lでホウ素濃度0.15μg/Lであり、いずれも約99.8%以上の高い除去率であった。
【0044】
これら運転条件1〜3の間の脱塩水W2の比抵抗値及び濃縮水W5の電気伝導率の経時変化を測定した。結果を給水W1の電気伝導率とともに図10に示す。
【0045】
図10から明らかなように、給水W1の水量を変動させることにより、濃縮水の電気伝導率は変動するが、脱塩水W2は約18MΩcmの安定した比抵抗値を維持できることがわかる。
【0046】
〔実施例3〕
(給水の負荷変動に対する脱塩水水質の挙動確認試験)
実施例2と同じ試験装置を用いて以下の試験を行った。
【0047】
給水W1
超純水にケイ酸ナトリウム溶液タンク62及び混合液タンク63からケイ酸ナトリウム溶液と水酸化ホウ素と炭酸ナトリウムの混合溶液を、それぞれシリカ濃度1000μg/L、ホウ素濃度100μg/L、炭酸濃度10mg/Lとなるように添加したものを1倍の給水W1とした。
【0048】
上述の試験装置及び給水W1を用いて、以下の3条件で連続して電気脱イオン装置を運転した。
【0049】
運転条件1
給水W1を電気脱イオン装置53に通水量0.3m/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.6μg/Lでホウ素濃度0.15μg/Lであり、いずれも99.8%以上の高い除去率であった。
【0050】
運転条件2
続いて給水W1を20倍(0.05倍の濃度)に希釈して、電気脱イオン装置53に通水量0.3m/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は0.38μg/Lでホウ素濃度0.12μg/Lであり、いずれも約99.9%の高い除去率であった。
【0051】
運転条件3
さらに運転条件1と同じ条件で電気脱イオン装置53を約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.8μg/Lでホウ素濃度0.17μg/Lであり、いずれも約99.8%以上の高い除去率であった。
【0052】
これら運転条件1〜3の間の脱塩水W2の比抵抗値及び濃縮水W5の電気伝導率の経時変化を測定した。結果を給水W1の電気伝導率とともに図11に示す。
【0053】
図11から明らかなように、給水のイオン濃度を変動させることにより、濃縮水の電気伝導率は変動するが、脱塩水W2は約18MΩcmの安定した比抵抗値を維持できることがわかる。
【0054】
これら実施例1〜3から本発明の超純水製造装置の制御方法によれば、電気脱イオン装置への給水量、給水の水質、運転電流値などを変動させても、安定した水質で脱塩水(一次純水)を供給することが可能となることがわかる。
【符号の説明】
【0055】
1 超純水製造装置
2 前処理装置
3 一次純水製造装置
4 二次純水製造装置(サブシステム)
5 逆浸透膜装置
6 脱気膜装置
7 紫外線酸化装置
8 給水ポンプ
9 電気脱イオン装置
9A 直流電源器
11 サブタンク
12 紫外線酸化装置
13 非再生型混床式イオン交換装置
14 限外濾過(UF)膜
15 ユースポイント
21 レベルスイッチ(水位計測手段)
29 比抵抗計(水質計測手段)
31 陽極(電極)
32 陰極(電極)
33 アニオン交換膜
34 カチオン交換膜
35 濃縮室
36 脱塩室
W 原水
W1 前処理水(給水)
W2 一次純水(脱塩水)
W3 超純水(二次純水)
W4 被濃縮水
W5 濃縮水
【要約】
【課題】 サブシステムでの使用量に応じて、一次純水を製造可能な超純水製造装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 一次純水装置3において、給水ポンプ8に連通した電気脱イオン装置9には、直流電源器9Aが付設されていて、電気脱イオン装置9の脱塩水W2をサブタンク11に供給可能となっている。このサブタンク11には、レベルスイッチ21が設けられている。また、電気脱イオン装置9の脱塩水W2の流路22には、コントロール弁23と流量計24が設けられている一方、電気脱イオン装置9の濃縮水W5の流路25にもコントロール弁26と流量計27が設けられている。そして、制御装置28に、レベルスイッチ21、流量計24、27の計測データを送信可能となっているととともに、給水ポンプ8、コントロール弁23、26を制御可能となっている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11