【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
(電流値変動に対する脱塩水水質の挙動確認試験)
試験装置
図8に示す電気脱イオン装置の制御用の試験装置を用意した。この試験装置51は、超純水(UPW)流路52と、電気脱イオン装置53と、脱塩水(一次純水)流路54と、濃縮水流路55とを有する。そして、超純水(UPW)流路52には、炭酸イオン(HCO
3−)源である炭酸ナトリウム溶液タンク56を薬液ポンプ56Aを介して接続するとともに、導電率計57Aが設けられている。また、脱塩水流路54には、流量計58Aが設けられているとともに比抵抗計59が接続されている。さらに、濃縮水流路55には、流量計58Bが設けられているとともに導電率計57Bが接続されている。なお、電気脱イオン装置53としては、
図3及び
図4に示す構成のものを採用した。
【0035】
上述したような試験装置において、超純水(UPW)に炭酸ナトリウム溶液タンク56から炭酸ナトリウ溶液を炭酸濃度1mg/Lとなるように添加したものを給水W1として、電気脱イオン装置53による回収率80%(脱塩水W2が5.0L/分、濃縮水W5が1.2L/分)となるように処理した。この際、電気脱イオン装置53に供給する電流量を0.1A、0.2A、0.4A、1A、2A及び4Aの順に100〜200時間ごとに連続的に変化させ、最終的に4Aで継続して運転した。この際、脱塩水W2の比抵抗値及び濃縮水W5の電気伝導率の経時変化を測定した。結果を給水W1の電気伝導率とともに表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、給水W1の水質(電気伝導率)は、ほぼ一定(約0.16mS/m)であり、電流値が高くなるほど脱塩水W2の水質が向上するだけでなく、運転電流0.4A以上であれば電流値を変動させても約18MΩcmの安定した水質を維持できることがわかる。一方、濃縮水は、電流値を上げると迅速に水質が悪化(電気伝導率が上昇)し、運転電流が高いほど大きく上昇する傾向を示した。これは電流値が大きくなると水のスプリットによるラジカルの発生量が増大し、濃縮室からの炭酸イオン(HCO
3−)の吐出量が増大するためであると考えられる。なお、電流値4Aで運転を継続すると、最終的に濃縮水の電気伝導率は、給水W1の五倍濃縮値である0.8mS/mに収束する傾向が認められた。
【0038】
〔実施例2〕
(給水の水量変動に対する脱塩水水質の挙動確認試験)
試験装置
図9に示す電気脱イオン装置の制御用の試験装置を用意した。この試験装置61は
図8に示す装置において、炭酸ナトリウム溶液タンク56と薬液ポンプ56Aの代わりに、シリカ(SiO
2)源としてケイ酸ナトリウム(NaSiO
3)溶液タンク62を、薬液ポンプ62Aを介して超純水流路52に接続するとともに、ホウ素源として水酸化ホウ素(B(OH)
3)と炭酸ナトリウムの混合液タンク63を薬液ポンプ63Aを介して超純水流路52に接続した構成を有する。
【0039】
給水W1
超純水(UPW)にケイ酸ナトリウム溶液タンク62及び混合液タンク63からケイ酸ナトリウム溶液と水酸化ホウ素及び炭酸ナトリウムの混合溶液とを、それぞれシリカ濃度1000μg/L、ホウ素濃度100μg/L、炭酸濃度10mg/Lとなるように添加したものを給水W1とした。
【0040】
上述したような試験装置及び給水W1を用いて、以下の3条件で連続して電気脱イオン装置を運転した。
【0041】
運転条件1
給水W1を電気脱イオン装置53に通水量0.3m
3/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.2μg/Lでホウ素濃度0.13μg/Lであり、いずれも99.8%以上の高い除去率であった。
【0042】
運転条件2
続いて給水W1を電気脱イオン装置53に通水量0.24m
3/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は0.79μg/Lでホウ素濃度0.11μg/Lであり、いずれも約99.9%の高い除去率であった。
【0043】
運転条件3
さらに運転条件1と同じ条件で電気脱イオン装置53を約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.6μg/Lでホウ素濃度0.15μg/Lであり、いずれも約99.8%以上の高い除去率であった。
【0044】
これら運転条件1〜3の間の脱塩水W2の比抵抗値及び濃縮水W5の電気伝導率の経時変化を測定した。結果を給水W1の電気伝導率とともに
図10に示す。
【0045】
図10から明らかなように、給水W1の水量を変動させることにより、濃縮水の電気伝導率は変動するが、脱塩水W2は約18MΩcmの安定した比抵抗値を維持できることがわかる。
【0046】
〔実施例3〕
(給水の負荷変動に対する脱塩水水質の挙動確認試験)
実施例2と同じ試験装置を用いて以下の試験を行った。
【0047】
給水W1
超純水にケイ酸ナトリウム溶液タンク62及び混合液タンク63からケイ酸ナトリウム溶液と水酸化ホウ素と炭酸ナトリウムの混合溶液を、それぞれシリカ濃度1000μg/L、ホウ素濃度100μg/L、炭酸濃度10mg/Lとなるように添加したものを1倍の給水W1とした。
【0048】
上述の試験装置及び給水W1を用いて、以下の3条件で連続して電気脱イオン装置を運転した。
【0049】
運転条件1
給水W1を電気脱イオン装置53に通水量0.3m
3/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.6μg/Lでホウ素濃度0.15μg/Lであり、いずれも99.8%以上の高い除去率であった。
【0050】
運転条件2
続いて給水W1を20倍(0.05倍の濃度)に希釈して、電気脱イオン装置53に通水量0.3m
3/hで供給し、電流値4.0A、回収率80%で約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は0.38μg/Lでホウ素濃度0.12μg/Lであり、いずれも約99.9%の高い除去率であった。
【0051】
運転条件3
さらに運転条件1と同じ条件で電気脱イオン装置53を約20時間運転した。この電気脱イオン装置53の脱塩水(脱塩水W2)のシリカ濃度は1.8μg/Lでホウ素濃度0.17μg/Lであり、いずれも約99.8%以上の高い除去率であった。
【0052】
これら運転条件1〜3の間の脱塩水W2の比抵抗値及び濃縮水W5の電気伝導率の経時変化を測定した。結果を給水W1の電気伝導率とともに
図11に示す。
【0053】
図11から明らかなように、給水のイオン濃度を変動させることにより、濃縮水の電気伝導率は変動するが、脱塩水W2は約18MΩcmの安定した比抵抗値を維持できることがわかる。
【0054】
これら実施例1〜3から本発明の超純水製造装置の制御方法によれば、電気脱イオン装置への給水量、給水の水質、運転電流値などを変動させても、安定した水質で脱塩水(一次純水)を供給することが可能となることがわかる。