特許第6863878号(P6863878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863878付加硬化型シリコーン組成物、硬化物、及び光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863878
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物、硬化物、及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20210412BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20210412BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20210412BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210412BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210412BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20210412BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K5/5419
   H01L23/30 F
   H01L33/56
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-213104(P2017-213104)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-85465(P2019-85465A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
(72)【発明者】
【氏名】茂木 勝成
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129478(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/186324(WO,A1)
【文献】 特開2012−052035(JP,A)
【文献】 特開2014−088513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
H01L 23/28− 23/30
C09J 9/00−201/10
C09D 101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物、
【化1】
(式中、R及びRは同種又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Rはフェニル基又はナフチル基であり、aは0〜50の整数であり、bは0〜100の整数であり、かつ、a+bは1以上の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
(B)下記式(3)〜(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物から選ばれる1種以上の化合物であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物、
【化3】
(式(4)中、lは1〜5の整数であり、mは1〜5の整数である。l及びmが付された括弧内のシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
及び、
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含むものであることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、R及びRがメチル基又はフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、Rがメチル基であり、Rがフェニル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーン組成物が硬化したものであることを特徴とする硬化物。
【請求項5】
請求項に記載の硬化物で封止されたものであることを特徴とする光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物、硬化物、及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
付加硬化性シリコーン組成物は、アルケニル基等の脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサンを含み、ヒドロシリル化反応によって硬化して硬化物を与える。このようにして得られる硬化物は、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れ、また、透明であるため、各種の光学用途に用いられている。
【0003】
光学用途に使用するシリコーンゴムは、高い透明性及び高屈折率が要求され、これを達成するために主骨格にジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体又はポリメチルフェニルシロキサンを使用する方法が一般に行われている(特許文献1〜9)。
【0004】
しかし、硬化物を高強度にするために、分岐状のオルガノポリシロキサンと直鎖状のオルガノポリシロキサンを組み合わせた従来の組成物を用いた場合、機械特性を十分満足するものが得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−307015号公報
【特許文献2】特開2004−143361号公報
【特許文献3】特開2004−186168号公報
【特許文献4】特開2004−292807号公報
【特許文献5】特開2004−359756号公報
【特許文献6】特開2005−076003号公報
【特許文献7】特開2005−105217号公報
【特許文献8】特開2010−132795号公報
【特許文献9】特開2014−205823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い透明性及び屈折率を有し、強度特性(機械特性)が良好であり、光学素子封止材として用いることができる硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明では、(A)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物、
【化1】
(式中、R及びRは同種又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Rはフェニル基又はナフチル基であり、aは0〜50の整数であり、bは0〜100の整数であり、かつ、a+bは1以上の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
(B)下記式(2)で表されるシロキサン単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物、
【化2】
及び、(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒を含む付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【0008】
このような付加硬化型シリコーン組成物であれば、高い透明性及び屈折率を有し、強度特性が良好な硬化物を与えることができるものとなる。
【0009】
また、前記式(1)において、R及びRがメチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0010】
このようなものであれば、(A)成分として好適に用いることができる。
【0011】
また、前記式(1)において、Rがメチル基であり、Rがフェニル基であることが好ましい。
【0012】
このようなものであれば、特に高い透明性、屈折率、及び強度特性を有し、(A)成分として好適に用いることができる。
【0013】
また、前記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物が、下記式(3)〜(6)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【化3】
(式(4)中、lは1〜5の整数であり、mは1〜5の整数である。l及びmが付された括弧内のシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
【0014】
このようなものであれば、(B)成分として好適に用いることができる。
【0015】
また、本発明は、前記付加硬化型シリコーン組成物が硬化した硬化物を提供する。
【0016】
このような硬化物であれば、光学素子封止材として好適に用いることができる。
【0017】
さらに、本発明は、前記付加硬化型シリコーン組成物の硬化物で封止された光学素子を提供する。
【0018】
本発明の硬化物は、高い透明性及び屈折率を有し、強度特性が良好であるため、このような硬化物で封止された光学素子は、信頼性の高いものとなる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、硬化させることにより、高透明、高屈折率、かつ強度特性が良好であり、光学素子封止材に好適に使用することができる硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、高い透明性及び屈折率を有し、強度特性が良好であり、光学素子封止材として用いることができる硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0021】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、後述する(A)、(B)、及び(C)成分を含む付加硬化型シリコーン組成物であれば、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
即ち、本発明は、(A)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物、
【化4】
(式中、R及びRは同種又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Rはフェニル基又はナフチル基であり、aは0〜50の整数であり、bは0〜100の整数であり、かつ、a+bは1以上の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
(B)下記式(2)で表されるシロキサン単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物、
【化5】
及び、(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒、
を含む付加硬化型シリコーン組成物である。
【0023】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
[付加硬化型シリコーン組成物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、下記の(A)、(B)、及び(C)成分を含有するものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0025】
<(A)成分>
(A)成分は、側鎖にフェニル基を持つシロキサン単位及び/又は側鎖にフェニル基又はナフチル基を持つシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端にケイ素原子に結合したビニル基を含有するトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであり、式(1)で表される。
【化6】
(式中、R及びRは同種又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Rはフェニル基又はナフチル基であり、aは0〜50の整数であり、bは0〜100の整数であり、かつ、a+bは1以上の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
【0026】
上記式(1)中のR及びRで表される非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜4のハロアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素原子数6〜10のアリール基;ビニル基、アリル基等の炭素原子数1〜6のアルケニル基が挙げられる。中でも、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基、ビニル基が好ましく、その中でも、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基、ビニル基が好ましく、より好ましくはメチル基、フェニル基であり、特に好ましくはRがメチル基であり、Rがフェニル基である。
【0027】
はフェニル基又はナフチル基であり、好ましくはフェニル基である。
【0028】
(A)成分において、ジフェニルシロキサン単位の重合度aは0〜50の整数であり、1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。メチルアリールシロキサン単位の重合度bは0〜100の整数であり、0〜50であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
a+bは1以上の整数であり、少なくともジフェニルシロキサン単位とメチルアリールシロキサン単位のいずれかを必ず含む。これらジフェニルシロキサン単位とメチルアリールシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。
【0029】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いてもよく、分子量、ケイ素原子に結合した有機基の種類等が相違する二種以上を併用してもよい。
【0030】
(A)成分は、例えばジクロロジフェニルシランやジアルコキシジフェニルシラン等の二官能性シランを加水分解・縮合させた後、又は加水分解・縮合と同時に、脂肪族不飽和基含有の末端封止剤で末端を封止することにより得ることができる。
【0031】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、下記式(2)で表されるシロキサン単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物である。
【化7】
【0032】
(B)成分の具体例としては、下記式(3)〜(6)で表される化合物などが挙げられる。
【化8】
(式中、lは1〜5の整数であり、mは1〜5の整数である。l及びmが付された括弧内のシロキサン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。)
【化9】
【0033】
また、(B)成分は単一でも2種類以上の(B)成分を併用しても良い。
【0034】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のビニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.2〜5となる量が好ましく、より好ましくは0.5〜2となる量である。
【0035】
<(C)成分>
(C)成分の白金族金属を含むヒドロシリル化触媒は、(A)成分中のケイ素原子に結合したビニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するものであればいかなる触媒を使用してもよい。(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(C)成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属や、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金化合物である。
【0036】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化触媒としての有効量でよく、好ましくは(A)成分及び(B)成分の合計質量に対して白金族金属元素の質量換算で0.1〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppmの範囲である。
【0037】
<その他の成分>
本発明の組成物には、前記(A)〜(C)成分以外にも、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0038】
((A)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物)
本発明の組成物には、(A)成分以外にも、(B)成分と付加反応する脂肪族不飽和基含有化合物を配合してもよい。(A)成分以外のこのような脂肪族不飽和基含有化合物としては、硬化物の形成に関与するものが好ましく、1分子あたり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する(A)成分以外のポリオルガノシロキサンが挙げられる。その分子構造は、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等、いずれでもよい。
【0039】
((B)成分以外のオルガノハイドロジェンシロキサン)
また、本発明の組成物には、(B)成分以外の、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有し、かつ脂肪族不飽和基を有さない有機ケイ素化合物を併用しても良い。
【0040】
(付加反応制御剤)
ポットライフを確保するために、付加反応制御剤を本発明の組成物に配合することができる。付加反応制御剤は、上記(C)成分のヒドロシリル化触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、従来から公知のものを用いることもできる。その具体例としては、1,3,5,7−メチルビニルシクロテトラシロキサン,下記の単位構造式(RSiO2/2(R(CH=CH)SiO2/2(RSiO1/2
{式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基(但し、Rの10モル%以上はアリール基である)である。cは0又は正数、dは正数である。}などのシロキサン化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類(例えば、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール)等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。この付加反応抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.0001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。付加反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その付加反応制御剤の化学構造によって異なる。よって、使用する付加反応制御剤の各々について、その添加量を最適な量に調整することが好ましい。最適な量の付加反応制御剤を添加することにより、組成物は室温での長期貯蔵安定性及び加熱硬化性に優れたものとなる。
【0041】
(接着付与剤)
また、本組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有していても良い。この接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基であることが好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、R等として例示した、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アラルキル基、前記ハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。具体的にはエポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤やその部分加水分解縮合物(シランカップリング剤のオリゴマー)等が例示される。
【0042】
より具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、及びケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物又はシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。
【0043】
この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0044】
また、上記組成物において、この接着付与剤の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。
【0045】
(その他の任意成分)
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、一層の強度を向上させるためにヒュームドシリカ、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤を配合してもよい。また、必要に応じて、ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤;染料;顔料;難燃性付与剤;溶剤等を配合してもよい。
【0046】
さらに、硬化物の着色、白濁、酸化劣化等の発生を抑えるために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の従来公知の酸化防止剤を本発明の組成物に配合することができる。
【0047】
また、硬化後の硬さを調整するために、下記単位構造式で表されるオルガノポリシロキサン、
(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(XO1/2
{式中、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基(但し、Rの0.1〜50モル%はアルケニル基であり、Rの10モル%以上はアリール基である)であり、Xは水素原子又はアルキル基である。eは正数、fは0又は正数、gは0又は正数、hは0又は正数であり、(f+g+h)/eは0〜3である。}を添加しても良い。
【0048】
また、光劣化に対する抵抗性を付与するために、ヒンダードアミン系安定剤等の光安定剤を本発明の組成物に配合することもできる。
【0049】
[硬化物]
本発明のシリコーン組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜160℃で加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分〜5時間程度、特に1分〜3時間程度でよいが、LED封止用等精度が要求される場合は、硬化時間を長めにすることが好ましい。得られる硬化物の形態は特に制限されず、例えば、ゲル硬化物、エラストマー硬化物及び樹脂硬化物のいずれであってもよい。該硬化物は、無色透明かつ高屈折率(屈折率1.52以上、特に1.53〜1.65)であることが好ましい。また、該硬化物は、JISに規定の硬さがデュロメータAで30以上の硬化物を形成するものであることが好ましく、該硬化物の引張強さは1.0MPa以上、切断伸びは70%以上であることが好ましい。
【0050】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させて得られる上記硬化物は、高透明、高屈折率、かつ強度特性が良好である。また、上記硬化物は、通常の付加硬化性シリコーン組成物の硬化物と同様に耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れる。よって、本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させて得られる上記硬化物は、光学素子封止材として好適に用いることができる。
【0051】
[光学素子]
本発明の組成物から成る封止材によって封止される光学素子としては、例えば、LED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等が挙げられる。このような光学素子は、該光学素子に本発明の組成物から成る封止材を塗布し、塗布された封止剤を公知の硬化条件下で公知の硬化方法により、具体的には上記したとおりに硬化させることによって封止することができる。こうして信頼性の高い、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物で封止された光学素子とすることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。
【0053】
尚、実施例中の粘度は25℃において回転粘度計を用いて測定した値である。屈折率はATAGO製デジタル屈折計RX−5000を用いて波長589nmの屈折率を25℃で測定し、ビニル価はハヌス液による滴定法、水素ガス発生量はアルカリ水溶液によるクラッキング法に準じて測定した。
【0054】
[実施例1〜2、比較例1〜3]
表1に示す配合量で下記の各成分を混合し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。なお、表1における各成分の数値は質量部を表す。
【0055】
(A)成分:
(A−1)
【化10】
粘度:2,000(mPa・s),ビニル価:0.22(mol/100g),屈折率:1.586
(A−2)
【化11】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列はランダム又はブロックである。)
粘度:20,000(mPa・s),ビニル価:0.09(mol/100g),屈折率:1.581
(A−3)
【化12】

(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列はランダム又はブロックである。)
粘度:700(mPa・s),ビニル価:0.055(mol/100g),屈折率:1.512
【0056】
(B)成分:
(B−1)
【化13】
粘度:10(mPa・s),水素ガス発生量:139(ml/g):,屈折率:1.541
(B−2)
【化14】
粘度:2(mPa・s),水素ガス発生量:210(ml/g),屈折率:1.441
【0057】
(C)成分:白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)
【0058】
その他の成分:
(D)付加反応制御剤:エチニルシクロヘキサノール
【0059】
実施例1〜2、比較例1〜3で得られた付加硬化型シリコーン組成物及びその硬化物の特性は次のようにして測定し、結果を表1に示した。
【0060】
[硬化物の光透過率]
付加硬化型シリコーン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで3時間加熱することにより硬化して作製した硬化物(光路長2.0mm)の25℃における400nmの波長の光透過率を測定した。
【0061】
[硬化物の強度特性]
付加硬化型シリコーン組成物を150℃の熱風循環式オーブンで4時間加熱することにより硬化物を作製した。この硬化物の硬さ・切断時伸び・引張強さを、JIS−K−6249に準じて測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、屈折率が高く、硬化後の強度特性に優れた硬化物を与えた。これにより本組成物は光学素子封止材料として優れた特性を持つ事が分かった。
【0064】
本発明の(B)成分に替えて、(CHSiH−単位を有する架橋成分を用いた場合(比較例1、2)は、硬化物の透明性及び引張り強さに劣り、本発明の(A)成分に替えてジメチルシロキサン単位を主骨格とする成分を用いた場合(比較例3)は、硬化物の屈折率、引張り強さ、切断時伸びに劣る結果となった。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。