【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0040】
まず、酸化膜の形成及び除去がウェーハ表面のラフネス(Haze)に及ぼす影響について実験を行った。
図3に、実験例のウェーハ処理フローを示す。
【0041】
(実験例1)
本実験例1のウェーハ処理フローは、
図3の上段に示すフローである。
まず、表面に1nmの酸化膜を有する、表面形状が均一なPWを準備した。このウェーハに対してHF濃度が0.5wt%(wt%:質量パーセント濃度を表す)であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。次に、オゾン濃度が24ppm(ppm:parts per million、10
−6)、液温が35℃であるオゾン水を用いて、酸化膜を完全に除去したウェーハの表面に、厚さ1.05nmの酸化膜を形成した。次に、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。このように、酸化膜の完全除去と均一酸化膜形成を複数回繰り返し、最後に酸化膜を完全に除去した。このようにして、表面のSiを2.32nmエッチングした。
【0042】
(実験例2)
本実験例2のウェーハ処理フローは、
図3の中段に示すフローである。
まず、表面に1nmの酸化膜を有する、表面形状が均一なPWを準備した。このウェーハに対してHF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を5秒として酸化膜を不完全に除去した。このとき、ウェーハ上には厚さ0.64nmの酸化膜が残存していた。次に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用いて、酸化膜が残った状態のウェーハの表面に、厚さ1.05nmの酸化膜を形成した。このように、酸化膜の不完全除去と均一酸化膜形成を複数回繰り返し、最後に、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去した。このようにして、表面のSiを2.13nmエッチングした。
【0043】
(実験例3)
本実験例3のウェーハ処理フローは、
図3の下段に示すフローである。
まず、表面に1nmの酸化膜を有する、表面形状が均一なPWを準備した。このウェーハをSC1洗浄槽に浸漬して表面のSiを2.14nmエッチングした。SC1洗浄条件は、NH
4OH(28wt%)/H
2O
2(30wt%)/H
2O=1:1.5:25、温度を70℃、処理時間を300秒とした。
【0044】
処理前後のウェーハの表面のHazeレベルを測定し、Hazeレベルの悪化量を算出した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、酸化膜を完全に除去するエッチングを行った実験例1では、Hazeレベルの悪化量は0.004ppmであった。また、酸化膜を不完全に除去するエッチングを行った実験例2では、Hazeレベルの悪化量は0.227ppmであった。また、SC1洗浄により酸化膜形成とエッチングを同時進行した実験例3では、Hazeレベルの悪化量は0.044ppmであった。
このように、酸化膜を完全に除去するエッチングを行えばHazeレベルの悪化量を大幅に改善することができることが分かった。
【0047】
(実施例1)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円の凸形状(断面視)であり、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.2nm、面内膜厚Rangeは4.0nm、Hazeレベルは0.440ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0048】
このSOIウェーハのSOI層に対して
図1に示した処理フローを行った。まず、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。次に、酸化膜を完全に除去したウェーハ上に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用い、酸化膜を形成した。このとき、
図1の(b)のように、オゾン水をウェーハの中心の凸部に相当する場所に供給し、酸化抑制液として純水をウェーハの外周の凹部に相当する場所に供給して、ウェーハの中心部の膜厚が外周部に比べて厚い膜厚分布を有する酸化膜を形成した。次に、
図1の(c)のように、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。そして、
図1の(d)に示すように、酸化膜の形成(
図1(b))とHF含有水溶液による酸化膜の完全除去(
図1(c))を繰り返し、酸化膜の形成と酸化膜の完全除去とを合計12回行った。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示したように、全ての工程を終えた後のSOI層の膜厚は79.0nm、面内膜厚Rangeは0.5nm、Hazeレベルは0.444ppmであった。処理前後のHazeレベルの悪化量は0.004ppmであった。
【0051】
(実施例2)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円のM形状(断面視)であり、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.4nm、面内膜厚Rangeは3.0nm、Hazeレベルは0.442ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0052】
このSOIウェーハのSOI層に対して
図2に示した処理フローを行った。まず、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。次に、酸化膜を完全に除去したウェーハ上に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用い、酸化膜を形成した。このとき、
図2の(b)のように、オゾン水をウェーハの外周の凸部に相当する場所に供給し、酸化抑制液として純水をウェーハの中心と外縁の凹部に相当する場所に供給して、ウェーハの外周部の膜厚が中心部に比べて厚い膜厚分布を有する、ドーナツ状に厚い部分を有する酸化膜を形成した。次に、
図2の(c)のように、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。そして、
図2の(d)に示すように、酸化膜の形成(
図2(b))とHF含有水溶液による酸化膜の完全除去(
図2(c))を繰り返し、酸化膜の形成と酸化膜の完全除去とを合計9回行った。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示したように、全ての工程を終えた後のSOI層の膜厚は79.0nm、面内膜厚Rangeは0.5nm、Hazeレベルは0.446ppmであった。処理前後のHazeレベルの悪化量は0.004ppmであった。
【0055】
(比較例1)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円の凸形状(断面視)を有し、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.5nm、面内膜厚Rangeは4.2nm、Hazeレベルは0.439ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0056】
このSOIウェーハのSOI層に対して、酸化膜を完全に除去しない(不完全除去)点以外は
図1に示した処理フローと同様の処理を行った。まず、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を5秒として酸化膜を不完全に除去するエッチングを行った。次に、酸化膜が残った状態のウェーハ上に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用い、酸化膜を形成した。このとき、
図1の(b)のように、オゾン水をウェーハの中心の凸部に相当する場所に供給し、酸化抑制液として純水をウェーハの外周の凹部に相当する場所に供給して、ウェーハの中心部の膜厚が外周部に比べて厚い膜厚分布を有する酸化膜を形成した。次に、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を5秒として酸化膜を不完全に除去するエッチングを行った。このように、酸化膜の形成とHF含有水溶液による酸化膜の不完全除去を14回繰り返し行った。
【0057】
【表4】
【0058】
表4に示したように、全ての工程を終えた後のSOI層の膜厚は79.1nm、面内膜厚Rangeは0.6nm、Hazeレベルは0.665ppmであった。処理前後のHazeレベルの悪化量は0.226ppmであった。
【0059】
(比較例2)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円の凸形状(断面視)を有し、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.1nm、面内膜厚Rangeは4.1nm、Hazeレベルは0.440ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0060】
このウェーハをSC1洗浄槽に浸漬して、表面Si層をエッチングした。SC1洗浄条件は、NH
4OH(28wt%)/H
2O
2(30wt%)/H
2O=1:1.5:25、温度を70℃、処理時間を300秒とした。
【0061】
【表5】
【0062】
表5に示したように、SC1洗浄後のSOI層の膜厚は78.8nm、面内膜厚Rangeは5.5nm、Hazeレベルは0.461ppmであった。処理後のHazeレベルの悪化量は0.021ppmであった。
【0063】
比較例1の結果、面内膜厚Rangeは改善したもののHazeレベルが大きく悪化した。また、比較例2の結果、面内膜厚Range、Hazeレベルともに悪化した。一方、実施例1、2の結果、面内膜厚Rangeが改善し、Hazeレベルの悪化量が抑制された。以上から、本発明に係るウェーハの表面形状調整方法によれば、ウェーハ表面のラフネスの悪化を抑制と、ウェーハ膜厚分布の均一性改善の両立が可能になることが分かった。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。