特許第6864145号(P6864145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧 ▶ 長野電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6864145-ウェーハの表面形状調整方法 図000007
  • 特許6864145-ウェーハの表面形状調整方法 図000008
  • 特許6864145-ウェーハの表面形状調整方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6864145
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】ウェーハの表面形状調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20210419BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01L21/306 B
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-149629(P2020-149629)
(22)【出願日】2020年9月7日
【審査請求日】2020年9月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591037498
【氏名又は名称】長野電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恭剛
(72)【発明者】
【氏名】更級 晋
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2020/158210(WO,A1)
【文献】 特開2005−005674(JP,A)
【文献】 特開2010−040729(JP,A)
【文献】 特開2013−125909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304−21/3063、21/308、
21/465−21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの表面形状調整方法であって、
ウェーハとして表面が鏡面であるウェーハを使用し、
前記ウェーハの表面形状を測定する表面形状測定工程と、
該表面形状測定工程の後に、酸化液と、該酸化液による前記ウェーハの表面の酸化を抑制する酸化抑制液を同時に供給し、かつ前記ウェーハを回転させて前記ウェーハの表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
エッチング液を前記ウェーハの表面に供給し、かつ前記ウェーハを回転させることで、前記酸化膜形成工程で形成した前記ウェーハの表面の前記酸化膜のエッチングを行うエッチング工程とを有し、
前記酸化膜形成工程において、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面形状に基づいて、前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給を制御することで、前記ウェーハに形成する前記酸化膜の膜厚の面内分布を調節し、
前記エッチング工程において、前記酸化膜を完全に除去することを特徴とするウェーハの表面形状調整方法。
【請求項2】
前記ウェーハの表面形状が、前記ウェーハの中心部から同心円状に変化したウェーハの表面形状を調整することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの表面形状調整方法。
【請求項3】
前記酸化膜形成工程における前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給の制御は、前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給位置の制御であり、前記酸化液の供給位置を、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面における凸部とし、前記酸化抑制液の供給位置を、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面における凹部とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウェーハの表面形状調整方法。
【請求項4】
前記酸化膜形成工程と、その後に行う前記エッチング工程とを複数回繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハの表面形状調整方法。
【請求項5】
前記酸化液としてオゾン水を使用し、前記エッチング液としてHF含有水溶液を使用することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のウェーハの表面形状調整方法。
【請求項6】
前記ウェーハとしてSOIウェーハを使用し、前記表面形状測定工程、前記酸化膜形成工程及び前記エッチング工程を、前記SOIウェーハのSOI層に対して行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたウェーハの表面形状調整方法。
【請求項7】
前記ウェーハとして絶縁層上にGe層、SiGe層、又は、化合物半導体層が形成された積層ウェーハを使用し、前記表面形状測定工程、前記酸化膜形成工程及び前記エッチング工程を、前記積層ウェーハの前記Ge層、前記SiGe層、又は、前記化合物半導体層に対して行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたウェーハの表面形状調整方法。
【請求項8】
前記ウェーハとしてシリコン単結晶ウェーハを使用することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたウェーハの表面形状調整方法。
【請求項9】
前記ウェーハとしてGe、SiGe、又は、化合物半導体からなる半導体ウェーハを使用することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたウェーハの表面形状調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの表面形状調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転させたウェーハ上の中心部にオゾン水(O水溶液)を供給することによってウェーハ上に酸化膜を形成し、その後、HF(フッ酸)水溶液で酸化膜を除去する方法によってウェーハ表面を均一に、かつ微量ずつエッチングして洗浄する技術がある。特許文献1〜3には、エッチング液と同時にエッチングの抑制液を供給しながらスピンエッチングを行うことが記載されている。また、特許文献4に、オゾン水とフッ酸を用いてSOI層(SOI Layer:Silicon on insulator layer)の膜厚分布を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−335923号公報
【特許文献2】特開2003−318154号公報
【特許文献3】国際公開第2018/079494号
【特許文献4】特開2010−040729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SOI層の膜厚は、ウェーハ表面において面内均一であることが要求される。しかし、スマートカット法(登録商標)による貼り合わせウェーハ剥離後の表面粗さ改質のために行う研磨工程で、SOI層の膜厚は、面内で同心円状の厚さ分布を生じさせてしまう。また、PW(Polished Wafer)の枚葉研磨も同様に、研磨後のウェーハは、同心円状の表面フラットネス分布を有する。従って、このような同心円状の表面形状分布を相殺し、ウェーハの表面形状の均一性の改善を図ることが課題となっている。
【0005】
これらSOI層の膜厚分布や、PWなどのウェーハの表面フラットネス分布を改善する方法としては、レーザ又はプラズマによる局所エッチングが知られている。しかしながら、この方法には、SOI層や、PWなどのウェーハの表面にダメージ、金属汚染などを発生させるという問題がある。
【0006】
また、SC1洗浄(NHOHとHの混合水溶液による洗浄)のような一般的なエッチングを行うとウェーハ表面のラフネスは悪化する。特許文献1、3のような、エッチング液としてHF水溶液を用い、エッチング液と同時にエッチングの抑制液を供給しながらスピンエッチングを行う手法であればウェーハ形状や膜厚の均一性が改善される。一方で、この手法であっても表面ラフネスが悪化する。さらに、特許文献4のようにオゾン水とフッ酸を用いる技術の場合も、フッ酸によって酸化膜を不完全に除去した状態でオゾン水による酸化を行うと表面のヘイズレベルが悪化してしまう。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ウェーハ表面のラフネスの悪化の抑制と、ウェーハの表面形状の均一性改善の両立が可能になるウェーハの表面形状調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、ウェーハの表面形状調整方法であって、ウェーハとして表面が鏡面であるウェーハを使用し、前記ウェーハの表面形状を測定する表面形状測定工程と、該表面形状測定工程の後に、酸化液と、該酸化液による前記ウェーハの表面の酸化を抑制する酸化抑制液を同時に供給し、かつ前記ウェーハを回転させて前記ウェーハの表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、エッチング液を前記ウェーハの表面に供給し、かつ前記ウェーハを回転させることで、前記酸化膜形成工程で形成した前記ウェーハの表面の前記酸化膜のエッチングを行うエッチング工程とを有し、前記酸化膜形成工程において、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面形状に基づいて、前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給を制御することで、前記ウェーハに形成する前記酸化膜の膜厚の面内分布を調節し、前記エッチング工程において、前記酸化膜を完全に除去するウェーハの表面形状調整方法を提供する。
【0009】
このようなウェーハの表面形状調整方法によれば、例えば、スピン洗浄機等を使用して酸化液を供給する際に、それと同時に、別のノズルから酸化抑制液を供給することで、ウェーハ表面に形成される酸化膜の膜厚に所望の面内分布を形成することができる。また、ウェーハ表面に形成した酸化膜にエッチング液を供給して酸化膜を完全に除去することによって、露出した表面のヘイズレベルが悪化するのを防止する効果が得られる。
【0010】
このとき、前記ウェーハの表面形状が、前記ウェーハの中心部から同心円状に変化したウェーハの表面形状を調整することが好ましい。
【0011】
本発明は、特にこのような表面形状を有するウェーハの処理の場合に好適に作用し、同心円状の表面形状分布を確実に相殺することができる。
【0012】
このとき、前記酸化膜形成工程における前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給の制御は、前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給位置の制御であり、前記酸化液の供給位置を、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面における凸部とし、前記酸化抑制液の供給位置を、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面における凹部とすることが好ましい。
【0013】
これにより、様々な表面形状を有するウェーハに対して、ウェーハの表面形状の改善を図ることができる。
【0014】
このとき、前記酸化膜形成工程と、その後に行う前記エッチング工程とを複数回繰り返すことが好ましい。
【0015】
このように酸化膜形成工程とエッチング工程を繰り返し行うことで、ウェーハの表面形状の調整効果を高めることができる。
【0016】
このとき、前記酸化液としてオゾン水を使用し、前記エッチング液としてHF含有水溶液を使用することが好ましい。
【0017】
このように、ウェーハ表面に酸化膜を形成するための酸化液としてオゾン水を使用することが好適である。また、酸化膜を完全に除去するエッチング液としてはHF含有水溶液を使用することが好適である。
【0018】
このとき、前記ウェーハとしてSOIウェーハを使用し、前記表面形状測定工程、前記酸化膜形成工程及び前記エッチング工程を、前記SOIウェーハのSOI層に対して行うことが好ましい。
【0019】
また、このとき、前記ウェーハとして絶縁層上にGe層、SiGe層、又は、化合物半導体層が形成された積層ウェーハを使用し、前記表面形状測定工程、前記酸化膜形成工程及び前記エッチング工程を、前記積層ウェーハの前記Ge層、前記SiGe層、又は、前記化合物半導体層に対して行うことが好ましい。
【0020】
また、このとき、前記ウェーハとしてシリコン単結晶ウェーハを使用することが好ましい。
【0021】
また、このとき、前記ウェーハとしてGe、SiGe、又は、化合物半導体からなる半導体ウェーハを使用することが好ましい。
【0022】
本発明に係るウェーハの表面形状調整方法は、SOIウェーハのSOI層、積層ウェーハの絶縁層上に形成されたGe層、SiGe層、又は、化合物半導体層や、シリコン単結晶ウェーハ、Ge、SiGe、又は、化合物半導体からなる半導体ウェーハに対して好適である。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係るウェーハの表面形状調整方法によれば、ウェーハ表面のラフネスの悪化の抑制と、ウェーハの表面形状の均一性改善の両立が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】SOIウェーハのSOI層もしくはPWが凸形状(断面視)の場合におけるウェーハ処理フローの一例を示した図である。
図2】SOIウェーハのSOI層もしくはPWがM形状(断面視)の場合におけるウェーハ処理フローの一例を示した図である。
図3】実験例のウェーハ処理フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
上述のように、ウェーハ表面のラフネスの悪化の抑制と、ウェーハの表面形状の均一性改善の両立が可能になるウェーハの表面形状調整方法が求められていた。
【0027】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、SC1などの酸化と酸化膜除去を同時に行うような一般的な洗浄用の薬液で局所的なエッチングを行うと、表面ラフネスが悪化するが、酸化液によってウェーハ表面に酸化膜を形成し、その酸化膜をエッチング液によるエッチングで完全に除去すればラフネスの悪化を大幅に抑制できることを見出した。また、ウェーハの表面形状に応じた膜厚分布を有する酸化膜を形成し、その酸化膜を完全に除去することにより、どのような表面形状のウェーハであっても、ウェーハの表面形状の均一化ができることを見出した。
【0028】
すなわち、本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ウェーハの表面形状調整方法であって、ウェーハとして表面が鏡面であるウェーハを使用し、前記ウェーハの表面形状を測定する表面形状測定工程と、該表面形状測定工程の後に、酸化液と、該酸化液による前記ウェーハの表面の酸化を抑制する酸化抑制液を同時に供給し、かつ前記ウェーハを回転させて前記ウェーハの表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、エッチング液を前記ウェーハの表面に供給し、かつ前記ウェーハを回転させることで、前記酸化膜形成工程で形成した前記ウェーハの表面の前記酸化膜のエッチングを行うエッチング工程とを有し、前記酸化膜形成工程において、前記表面形状測定工程で測定した前記ウェーハの表面形状に基づいて、前記酸化液及び前記酸化抑制液の供給を制御することで、前記ウェーハに形成する前記酸化膜の膜厚の面内分布を調節し、前記エッチング工程において、前記酸化膜を完全に除去するウェーハの表面形状調整方法により、ウェーハ表面に形成される酸化膜厚に所望の面内分布を形成することができ、その結果、酸化膜を除去したときにウェーハの表面形状を均一なものとすることができ、同時に露出した表面のヘイズレベルが悪化するのを防止することができることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
以下、図面を参照して説明する。
【0030】
まず、表面が鏡面であるウェーハを準備する。シリコン単結晶ウェーハの表面、Ge、SiGe、又は、化合物半導体からなる半導体ウェーハの表面やSOIウェーハのSOI層、積層ウェーハの絶縁層上に形成されたGe層、SiGe層、又は、化合物半導体層に対して研磨等により鏡面加工を施したものであるのが好ましいが、表面が鏡面であればウェーハの種類に特に制限はない。
【0031】
次に、準備したウェーハの表面形状を測定する(表面形状測定工程)。
ウェーハの表面形状は、ウェーハ表面において面内均一であることが要求されるが、例えば、ウェーハの表面粗さ改質のために行う研磨工程で、ウェーハの表面形状は、面内で同心円状の分布を有するのが通常である。このように、ウェーハの表面形状が、ウェーハの中心部から同心円状に変化したウェーハに対して本発明に係るウェーハの表面形状調整方法は好適である。
【0032】
使用するウェーハが例えばSOIウェーハであるとき、SOIウェーハの表面形状は、SOI層の面内膜厚分布に対応する。SOI層の面内膜厚分布は、反射分光法を用いた膜厚測定装置(例えば、ADE社製Acumap)を用いてSOI層の全面を測定することによって得られる。また、使用するウェーハが例えばシリコン単結晶のPWであるとき、PWの表面形状は、ウェーハの表面のフラットネスに対応する。フラットネスは、静電容量測定によるウェーハの厚みの面内分布から求めることができるので、例えば、KLA社製静電容量式フラットネス測定機を用いて評価することができる。
【0033】
図1は、SOIウェーハのSOI層もしくはPWが凸形状(断面視)の場合におけるウェーハ処理フローの一例を示した図である。図2は、SOIウェーハのSOI層もしくはPWがM形状(断面視)の場合におけるウェーハ処理フローの一例を示した図である。図1図2の(a)に示したように、まず、表面形状を測定したウェーハの表面に形成された均一な膜厚の酸化膜を除去することが好ましい。酸化膜の除去は例えばHF含有水溶液を用いたスピンエッチングにより行う。このとき、酸化膜を完全に除去し、取り残しがないようにする。酸化膜を完全に除去することによって、露出した表面のヘイズレベルが悪化するのを防止する効果が得られる。
【0034】
次に、ウェーハの表面に酸化膜を形成する(酸化膜形成工程)。
表面形状を測定した後のウェーハに対し、その中心部を軸に回転させる。回転しているウェーハの表面に、酸化液と、酸化液によるウェーハの表面の酸化を抑制する酸化抑制液を同時に供給する。酸化液と同時に酸化反応の抑制液を供給することで、ウェーハ表面に形成される酸化膜厚に所望の面内分布を形成することができる。使用する酸化液は適切に酸化膜を形成することができれば特に限定されず、処理対象となるウェーハの材料に応じて選択できる。例えば、過酸化水素水や、特にオゾン水を使用することが好ましい。以下では酸化液としてオゾン水を使用した例で説明する。
【0035】
このとき、測定したウェーハの表面形状に基づいて、オゾン水及び酸化抑制液の供給を制御することで、ウェーハに形成する酸化膜の膜厚の面内分布を調節する。なお、オゾン水及び酸化抑制液の供給は、一定量、又は予め決められた一定期間だけ行うこととしてもよい。酸化抑制液は、酸化を抑制できるものであれば特に限定されず、例えば純水のような通常リンス液として用いられるものとすることができる。
【0036】
酸化膜形成工程におけるオゾン水及び酸化抑制液の供給の制御は、オゾン水及び酸化抑制液の供給位置の制御とすることができる。オゾン水の供給位置を、表面形状測定工程で測定したウェーハの表面における凸部とし、酸化抑制液の供給位置を、表面形状測定工程で測定したウェーハの表面における凹部とすることが好ましい。図1の(b)の例であれば、オゾン水をウェーハの中心の凸部、酸化抑制液をウェーハの外周の凹部に供給することが好ましい。また、図2の(b)の例であれば、オゾン水はウェーハの外周の凸部、酸化抑制液はウェーハの中心と外縁の凹部に供給することが好ましい。このようにすれば、ウェーハの形状に応じた膜厚分布を有する酸化膜を形成することができる。具体的には、例えばSOI層の厚さが厚いところには厚い酸化膜を、SOI層の厚さが薄いところには薄い酸化膜を形成することができる。また、外周側がハネ形状を有するウェーハにおいては、外周側がより厚い膜厚分布を有する酸化膜を形成することができる。
【0037】
次に、酸化膜形成工程で形成したウェーハの表面の酸化膜のエッチングを行う(エッチング工程)。
酸化膜を形成した後のウェーハに対し、その中心を軸に回転させ、エッチング液をウェーハの表面に供給する。このとき、図1図2の(c)に示したように、酸化膜を完全に除去する。酸化膜を完全に除去することによって、露出した表面のヘイズレベルが悪化するのを防止する効果が得られる。酸化膜が微量に残存したまま次の工程(酸化膜形成工程等)を行うと、ウェーハの表面のヘイズレベルが悪化してしまう。また、SC1のように酸化と酸化膜除去を同時に行うような洗浄用の薬液を用いても同様にヘイズレベルが悪化してしまう。このように完全に酸化膜を除去することができれば、使用するエッチング液は特に限定しない。例えば、HF含有水溶液を使用することが好ましい。なお、オゾン水などの酸化液及びHF含有水溶液などのエッチング液を供給する位置は、同じでもよいし、又は異なってもよい。但し、酸化膜が厚い部分をエッチングするために、これらの位置はできるだけ近接していることが好ましい。
【0038】
次に、図1図2の(d)に示したように、図1図2の(b)の酸化膜形成工程と、その後に行う図1図2の(c)のエッチング工程とを複数回繰り返すことが好ましい。複数回行うエッチング工程でウェーハ表面の酸化膜を完全に除去することによって、ヘイズレベルを悪化させずに、表面形状の調整(SOI層膜厚やウェーハ表面のフラットネス等のウェーハの表面形状の均一性の改善)効果をより高めることができる。以上のような本発明に係るウェーハの表面形状調整方法を行えば、図1図2の(e)に示したように、表面形状が平坦なウェーハとすることができ、最終的に、膜厚分布が均一な酸化膜をウェーハ上に形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0040】
まず、酸化膜の形成及び除去がウェーハ表面のラフネス(Haze)に及ぼす影響について実験を行った。図3に、実験例のウェーハ処理フローを示す。
【0041】
(実験例1)
本実験例1のウェーハ処理フローは、図3の上段に示すフローである。
まず、表面に1nmの酸化膜を有する、表面形状が均一なPWを準備した。このウェーハに対してHF濃度が0.5wt%(wt%:質量パーセント濃度を表す)であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。次に、オゾン濃度が24ppm(ppm:parts per million、10−6)、液温が35℃であるオゾン水を用いて、酸化膜を完全に除去したウェーハの表面に、厚さ1.05nmの酸化膜を形成した。次に、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。このように、酸化膜の完全除去と均一酸化膜形成を複数回繰り返し、最後に酸化膜を完全に除去した。このようにして、表面のSiを2.32nmエッチングした。
【0042】
(実験例2)
本実験例2のウェーハ処理フローは、図3の中段に示すフローである。
まず、表面に1nmの酸化膜を有する、表面形状が均一なPWを準備した。このウェーハに対してHF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を5秒として酸化膜を不完全に除去した。このとき、ウェーハ上には厚さ0.64nmの酸化膜が残存していた。次に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用いて、酸化膜が残った状態のウェーハの表面に、厚さ1.05nmの酸化膜を形成した。このように、酸化膜の不完全除去と均一酸化膜形成を複数回繰り返し、最後に、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去した。このようにして、表面のSiを2.13nmエッチングした。
【0043】
(実験例3)
本実験例3のウェーハ処理フローは、図3の下段に示すフローである。
まず、表面に1nmの酸化膜を有する、表面形状が均一なPWを準備した。このウェーハをSC1洗浄槽に浸漬して表面のSiを2.14nmエッチングした。SC1洗浄条件は、NHOH(28wt%)/H(30wt%)/HO=1:1.5:25、温度を70℃、処理時間を300秒とした。
【0044】
処理前後のウェーハの表面のHazeレベルを測定し、Hazeレベルの悪化量を算出した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、酸化膜を完全に除去するエッチングを行った実験例1では、Hazeレベルの悪化量は0.004ppmであった。また、酸化膜を不完全に除去するエッチングを行った実験例2では、Hazeレベルの悪化量は0.227ppmであった。また、SC1洗浄により酸化膜形成とエッチングを同時進行した実験例3では、Hazeレベルの悪化量は0.044ppmであった。
このように、酸化膜を完全に除去するエッチングを行えばHazeレベルの悪化量を大幅に改善することができることが分かった。
【0047】
(実施例1)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円の凸形状(断面視)であり、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.2nm、面内膜厚Rangeは4.0nm、Hazeレベルは0.440ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0048】
このSOIウェーハのSOI層に対して図1に示した処理フローを行った。まず、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。次に、酸化膜を完全に除去したウェーハ上に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用い、酸化膜を形成した。このとき、図1の(b)のように、オゾン水をウェーハの中心の凸部に相当する場所に供給し、酸化抑制液として純水をウェーハの外周の凹部に相当する場所に供給して、ウェーハの中心部の膜厚が外周部に比べて厚い膜厚分布を有する酸化膜を形成した。次に、図1の(c)のように、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。そして、図1の(d)に示すように、酸化膜の形成(図1(b))とHF含有水溶液による酸化膜の完全除去(図1(c))を繰り返し、酸化膜の形成と酸化膜の完全除去とを合計12回行った。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示したように、全ての工程を終えた後のSOI層の膜厚は79.0nm、面内膜厚Rangeは0.5nm、Hazeレベルは0.444ppmであった。処理前後のHazeレベルの悪化量は0.004ppmであった。
【0051】
(実施例2)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円のM形状(断面視)であり、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.4nm、面内膜厚Rangeは3.0nm、Hazeレベルは0.442ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0052】
このSOIウェーハのSOI層に対して図2に示した処理フローを行った。まず、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。次に、酸化膜を完全に除去したウェーハ上に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用い、酸化膜を形成した。このとき、図2の(b)のように、オゾン水をウェーハの外周の凸部に相当する場所に供給し、酸化抑制液として純水をウェーハの中心と外縁の凹部に相当する場所に供給して、ウェーハの外周部の膜厚が中心部に比べて厚い膜厚分布を有する、ドーナツ状に厚い部分を有する酸化膜を形成した。次に、図2の(c)のように、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を20秒として酸化膜を完全に除去するエッチングを行った。そして、図2の(d)に示すように、酸化膜の形成(図2(b))とHF含有水溶液による酸化膜の完全除去(図2(c))を繰り返し、酸化膜の形成と酸化膜の完全除去とを合計9回行った。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示したように、全ての工程を終えた後のSOI層の膜厚は79.0nm、面内膜厚Rangeは0.5nm、Hazeレベルは0.446ppmであった。処理前後のHazeレベルの悪化量は0.004ppmであった。
【0055】
(比較例1)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円の凸形状(断面視)を有し、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.5nm、面内膜厚Rangeは4.2nm、Hazeレベルは0.439ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0056】
このSOIウェーハのSOI層に対して、酸化膜を完全に除去しない(不完全除去)点以外は図1に示した処理フローと同様の処理を行った。まず、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を5秒として酸化膜を不完全に除去するエッチングを行った。次に、酸化膜が残った状態のウェーハ上に、オゾン濃度が24ppm、液温が35℃であるオゾン水を用い、酸化膜を形成した。このとき、図1の(b)のように、オゾン水をウェーハの中心の凸部に相当する場所に供給し、酸化抑制液として純水をウェーハの外周の凹部に相当する場所に供給して、ウェーハの中心部の膜厚が外周部に比べて厚い膜厚分布を有する酸化膜を形成した。次に、HF濃度が0.5wt%であるHF含有水溶液を用い、処理時間を5秒として酸化膜を不完全に除去するエッチングを行った。このように、酸化膜の形成とHF含有水溶液による酸化膜の不完全除去を14回繰り返し行った。
【0057】
【表4】
【0058】
表4に示したように、全ての工程を終えた後のSOI層の膜厚は79.1nm、面内膜厚Rangeは0.6nm、Hazeレベルは0.665ppmであった。処理前後のHazeレベルの悪化量は0.226ppmであった。
【0059】
(比較例2)
まず、SOI層の面内膜厚分布がほぼ同心円の凸形状(断面視)を有し、表面が鏡面であるSOIウェーハを準備した。処理する前のSOI層の膜厚は81.1nm、面内膜厚Rangeは4.1nm、Hazeレベルは0.440ppmであった。なお、SOI層の表面には、膜厚分布が均一な酸化膜が形成されているものを用いた。
【0060】
このウェーハをSC1洗浄槽に浸漬して、表面Si層をエッチングした。SC1洗浄条件は、NHOH(28wt%)/H(30wt%)/HO=1:1.5:25、温度を70℃、処理時間を300秒とした。
【0061】
【表5】
【0062】
表5に示したように、SC1洗浄後のSOI層の膜厚は78.8nm、面内膜厚Rangeは5.5nm、Hazeレベルは0.461ppmであった。処理後のHazeレベルの悪化量は0.021ppmであった。
【0063】
比較例1の結果、面内膜厚Rangeは改善したもののHazeレベルが大きく悪化した。また、比較例2の結果、面内膜厚Range、Hazeレベルともに悪化した。一方、実施例1、2の結果、面内膜厚Rangeが改善し、Hazeレベルの悪化量が抑制された。以上から、本発明に係るウェーハの表面形状調整方法によれば、ウェーハ表面のラフネスの悪化を抑制と、ウェーハ膜厚分布の均一性改善の両立が可能になることが分かった。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【要約】
【課題】
ウェーハ表面のラフネスの悪化の抑制と、ウェーハの表面形状の均一性改善の両立。
【解決手段】
表面が鏡面であるウェーハを使用し、ウェーハの表面形状を測定する表面形状測定工程と、表面形状測定工程の後に、酸化液と、酸化液によるウェーハの表面の酸化を抑制する酸化抑制液を同時に供給し、かつウェーハを回転させてウェーハの表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、エッチング液をウェーハの表面に供給し、かつウェーハを回転させることで、酸化膜形成工程で形成したウェーハの表面の酸化膜のエッチングを行うエッチング工程とを有し、酸化膜形成工程において、表面形状測定工程で測定したウェーハの表面形状に基づいて、酸化液及び酸化抑制液の供給を制御することで、ウェーハに形成する酸化膜の膜厚の面内分布を調節し、エッチング工程において、酸化膜を完全に除去するウェーハの表面形状調整方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3