(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸およびメタクリル酸の総称である。
【0018】
「多孔質膜」
本発明の多孔質膜は、後述する膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)とを含む製膜原液を用いて製膜したものである。すなわち、本発明の多孔質膜は、膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)とを含む。
【0019】
<膜形成ポリマー(A)>
膜形成ポリマー(A)は、多孔質膜の構成成分の一つである。
膜形成ポリマー(A)は、多孔質膜の構造を維持させるためのものであり、多孔質膜に求められる特性に応じて膜形成ポリマー(A)の組成を選択することができる。
【0020】
例えば、多孔質膜に耐薬品性、耐酸化劣化性、耐熱性が要求される場合には、膜形成ポリマー(A)として、フッ素含有ポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテートなどを用いることが好ましい。これらの中でも、膜が純水へ溶解しにくく膜の構造維持が容易である点から、膜形成ポリマー(A)は疎水性であることがより好ましい。膜形成ポリマー(A)としては、これらの中でも、多孔質膜に耐薬品性および耐酸化劣化性を付与できる点で、フッ素含有ポリマーが特に好ましい。
【0021】
フッ素含有ポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDF−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)コポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの中でも、多孔質膜に耐酸化劣化性および機械的耐久性を付与できる点で、PVDFが好ましい。
【0022】
膜形成ポリマー(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
膜形成ポリマー(A)としては、後述する溶剤(S)に溶解可能であり、純水に溶解しにくいポリマーが好ましい。
【0023】
上述したポリマーの中でも、溶剤(S)への溶解性、耐薬品性および耐熱性が良好となる点で、PVDFが好ましい。
【0024】
膜形成ポリマー(A)の質量平均分子量(Mw)は、100,000〜2,000,000が好ましい。膜形成ポリマー(A)のMwが、100,000以上であれば多孔質膜の機械的強度が良好となる傾向にあり、2,000,000以下であれば溶剤(S)への溶解性が良好となる傾向にある。膜形成ポリマー(A)のMwの下限値は300,000以上がより好ましく、上限値は1,500,000以下がより好ましい。
【0025】
なお、膜形成ポリマー(A)として上記のMwを有するものを使用する場合、異なるMwを有するものを混合して所定のMwを有する膜形成ポリマー(A)とすることができる。
膜形成ポリマー(A)のMwは、ポリスチレンを標準試料として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求められる。
【0026】
<ポリマー(B)>
ポリマー(B)は、多孔質膜の構成成分の一つである。
ポリマー(B)は、メタクリル酸メチル単位およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する共重合体であり、メタクリル酸メチルおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)を含むモノマー組成物を共重合して得られる。
【0027】
ポリマー(B)は、メタクリル酸メチル単位およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位以外の単位(その他のモノマー(b2)単位)を含んでもよい。また、ポリマー(B)は、メタクリル酸メチル単位およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する共重合体に加えて、ポリメタクリル酸メチルおよび/またはヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)のホモポリマーを含んでもよい。
【0028】
なお、ポリメタクリル酸メチル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)のホモポリマーを含む場合、メタクリル酸メチル単位およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する共重合体100質量部に対して、ポリメタクリル酸メチルの含有量は0〜49質量部好ましくは0〜 30質量部より好ましくは0〜10質量部、 ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)のホモポリマーの含有量は0〜49質量部好ましくは0〜30質量部より好ましくは0〜10質量部である。
【0029】
(メタクリル酸メチル)
メタクリル酸メチルは、ポリマー(B)の構成成分の一つである。ポリマー(B)にメタクリル酸メチル単位を含有させることにより、膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)との相溶性が高まり、効率的に膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)を含む多孔質膜を得ることができる。
【0030】
ポリマー(B)を構成する全ての構成単位(単量体単位)の合計を100質量%としたときに、メタクリル酸メチル単位の含有量は10〜99質量%が好ましい。メタクリル酸メチル単位の含有量が、10質量%以上であれば膜形成ポリマー(A)との相溶性が高まる傾向にあり、99質量%以下であれば多孔質膜が得られやすくなる傾向にある。メタクリル酸メチル単位の含有量の下限値は15質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、メタクリル酸メチル単位の含有量の上限値は、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1))
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)は、ポリマー(B)の構成成分の一つである。ポリマー(B)にヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位を含有させることにより、高い親水性を有する多孔質膜を得ることができる。
【0032】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、などが挙げられる。
【0033】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ポリマー(B)を構成する全ての構成単位(単量体単位)の合計を100質量%としたときに、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位の含有量は1〜60質量%が好ましい。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)の含有量が、1質量%以上であれば多孔質膜の表面を親水化できる傾向にあり、60質量%以下であればポリマー(B)が水に溶けにくくなるため、得られる多孔質膜の親水性が維持されやすい傾向にある。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)の含有量の下限値は10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位の含有量の上限値は、58質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
(その他のモノマー(b2))
その他のモノマー(b2)は、ポリマー(B)に含有させることができる構成成分の一つである。
その他のモノマー(b2)としては、メタクリル酸メチルおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)と共重合可能であれば特に制限されないが、ポリマー(B)の溶剤(S)への溶解性の点から、例えば(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、プラクセルFM(商品名、株式会社ダイセル製;カプロラクトン付加モノマー)、メタクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、ブレンマーPME−100(商品名、日油株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの))、ブレンマーPME−200(商品名、日油株式会社製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの))、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルスルフェート、3−(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、メタクリル酸ジメチルアミノエチル4級塩などが挙げられる。
【0036】
その他のモノマー(b2)としては、窒素を含有する(メタ)アクリレート単位であることが好ましい。
その他のモノマー(b2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
なお、ポリマー(B)は、その他のモノマー(b2)単位として(メタ)アクリル酸単位を含まないことが好ましい。ポリマー(B)が(メタ)アクリル酸単位を含まなければ、得られる多孔質膜を水処理装置などに用いた際に金属部材と接触しても、金属部材が腐食しにくく、金属部材に使用する材料が限定されにくい。
【0038】
ポリマー(B)を構成する全ての構成単位(単量体単位)の合計を100質量%としたときに、その他のモノマー(b2)単位の含有量は60質量%以下が好ましい。その他のモノマー(b2)の含有量が60質量%以下であれば、得られる多孔質膜の表面を親水化できる傾向にある。その他のモノマー(b2)単位の含有量の下限値は、得られる多孔質膜の柔軟性の点から、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。一方、その他のモノマー(b2)単位の含有量の上限値は、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
また、その他のモノマー(b2)の数平均分子量(Mn)は30以上300以下であることが好ましい。その他のモノマー(b2)の分子量が300以下であれば、製膜原液が白濁しにくくなる。
【0040】
(ポリマー(B)の組成)
ポリマー(B)中のメタクリル酸メチル単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位及びその他のモノマー(b2)単位は、すべてメタクリレート単位であることが好ましい。
【0041】
ポリマー(B)中のメタクリル酸メチル単位が20〜60質量%、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位が20〜60質量%及びその他のモノマー(b2)単位が1〜60質量%であることが好ましい。
【0042】
なお、ポリマー(B)におけるメタクリル酸メチル単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位、その他のモノマー(b2)単位の含有量は、1H−NMRスペクトルのシグナルの強度から算出する。
【0043】
また、ポリマー(B)において、メタクリル酸メチル単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)単位、及びその他のモノマー(b2)単位の含有量の合計は100質量%である。
【0044】
(ポリマー(B)の物性)
ポリマー(B)のGPCにより求めたポリスチレン換算分子量は、少なくとも30万未満の低分子量領域(X)と、30万以上の高分子量領域(Y)を有しており、前記領域(X)と前記領域(Y)の比率(X)/(Y)が0.8〜2.0が好ましい。比率(X)/(Y)が0.8未満だとポリマーの洗浄に溶剤が必要になり、比率(X)/(Y)が2.0を超えると、マクロボイドが生成したり、開孔できなかったりする。
【0045】
ポリマー(B)は、1種を単独で用いてもよいし、異なる組成比、分子量分布または分子量のポリマーを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
なお、ポリマー(B)のポリスチレン換算分子量は、ポリスチレンを標準試料として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリマーの溶出時間と検量線から求められる。
【0047】
ポリマー(B)は、ランダム共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体やグラフト共重合体を用いた場合、ブロックまたはグラフト鎖に含まれる、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)の連鎖がMnで10,000を超えると製膜原液を調製した際に製膜原液が白濁してしまい、得られる多孔質膜が不均一なものとなる。
【0048】
(ポリマー(B)の製造方法)
ポリマー(B)の製造方法としては、溶液重合法が挙げられる。
ポリマー(B)を溶液重合法で製造する際に使用される溶剤(S)としては、得られるポリマー(B)が可溶であれば特に制限されないが、重合後の重合液(C)をそのまま製膜原液に用いる場合には、膜形成ポリマー(A)を溶解できるものが好ましい。このような溶剤(S)としては、例えばアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、テトラメチルウレア(TMU)、トリエチルフォスフェート(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、エタノールなどが挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすく、しかも膜形成ポリマー(A)およびポリマー(B)の溶解性に優れる点で、アセトン、DMF、DMAc、DMSO、NMPが好ましい。
【0049】
溶剤(S)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ポリマー(B)を製造する際には、連鎖移動剤やラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0051】
連鎖移動剤はポリマー(B)の分子量を調節するものであり、連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン、水素、αメチルスチレンダイマー、テルペノイドなどが挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては、例えば有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。
【0053】
有機過酸化物の具体例としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0054】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)などが挙げられる。
【0055】
ラジカル重合開始剤としては、入手しやすく、しかも重合条件に好適な半減期温度を有する点から、ベンゾイルパーオキサイド、AIBN、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。
【0056】
ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
ラジカル重合開始剤の添加量は、メタクリル酸メチルとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)とその他のモノマー(b2)の合計100質量部に対して、0.0001〜10質量部が好ましい。
【0058】
連鎖移動剤をやラジカル重合開始剤の添加量を変えることで、ポリマー(B)のポリスチレン換算分子量30万未満の低分子量領域(X)と、30万以上の高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)を変化させることができる。例えば、連鎖移動剤やラジカル重合開始剤の添加量を増やすことで、低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)は大きくなる。
【0059】
ポリマー(B)を製造する際の重合温度は、例えば使用する溶剤(S)の沸点やラジカル重合開始剤の使用温度範囲を考慮すると、−100〜250℃が好ましい。重合温度の下限値は0℃以上がより好ましく、上限値は200℃以下がより好ましい。
【0060】
重合温度を調節することで、ポリマー(B)のポリスチレン換算分子量30万未満の低分子量領域(X)と、30万以上の高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)を変化させることができる。例えば、低温での重合時間を長くすることで、低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)は小さくなる。
【0061】
ポリマー(B)を溶液重合法により製造した場合、重合後の重合液(C)をそのまま製膜原液に用いることができる。
【0062】
<多孔質膜の物性・構造>
本発明の多孔質膜は、上述した膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)を含む。多孔質膜がポリマー(B)を含むことで、多孔質膜の外表面が親水化されている。
【0063】
本発明の多孔質膜の純水透過流束は25(m
3/m
2/MPa/h)以上200(m
3/m
2/MPa/h)未満であることが好ましい。純水透過流束が25(m
3/m
2/MPa/h)以上であれば、一定時間内に多量の水を処理できることから水処理膜用途として好ましく、200(m
3/m
2/MPa/h)未満とすることで膜内における欠陥を少なくすることができるため、上水や下排水などの幅広い分野で利用できる。
【0064】
本発明において多孔質膜の純水透過流束は、多孔質膜に100kPaの空気圧をかけて純水(25℃)を流出させた際に1分間で流出した純水の量を3回測定した平均値を、多孔質膜の表面積で割り、1MPaの圧力に換算した値とする。
【0065】
多孔質膜中に含まれる膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)の合計に対するポリマー(B)の含有量は、0.1〜40質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。多孔質膜中に含まれる膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)の合計に対するポリマー(B)の含有量が0.1質量%以上であれば、多孔質膜表面を親水化できる傾向にあり、40質量%以下であれば、膜内がポリマー(B)により開塞されることが少なく水が通水できることから、純水透過流束が25(m
3/m
2/MPa/h)以上の多孔質膜を得られやすい傾向にある。
【0066】
多孔質膜中に含まれる膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)の合計に対するポリマー(B)の含有量は、 1H−NMRスペクトルのシグナルの強度から算出する。
【0067】
<多孔質膜の製造方法>
本発明の多孔質膜の製造方法の一例を以下に説明する。
まず、膜形成ポリマー(A)およびポリマー(B)を溶剤(S)に溶解させて製膜原液(多孔質膜調製用溶液)を調製する(調製工程)。ついで、得られた製膜原液を凝固液に浸漬して凝固させて多孔質膜前駆体を得る(凝固工程)。ついで、多孔質膜前駆体中に残存する溶剤(S)やポリマー(B)の一部を洗浄して取り除き(洗浄工程)、洗浄後の多孔質膜前駆体を乾燥して(乾燥工程)、多孔質膜を得る。
【0068】
(製膜原液)
製膜原液は、膜形成ポリマー(A)およびポリマー(B)を溶剤(S)に溶解させることで得られる。また、溶剤(S)を用い、溶液重合法によりポリマー(B)を製造した場合は、重合後の重合液(C)に、直接、膜形成ポリマー(A)を添加して溶解してもよい。このとき、さらに溶剤(S)を添加して重合液(C)を所望の濃度になるように希釈してもよい。
【0069】
なお、製膜原液は、膜形成ポリマー(A)またはポリマー(B)の一部が溶剤(S)中に溶解せずに分散していても均一であり、均一性を維持できているのであれば分散した状態のものでもよい。
【0070】
また、製膜原液を調製する際、溶剤(S)の沸点以下であれば溶剤(S)を加熱し
ながら膜形成ポリマー(A)およびポリマー(B)を溶解してもよい。さらに、重合液(C)を必要に応じて冷却してもよい。
【0071】
製膜原液100質量%中の膜形成ポリマー(A)の含有量は、5〜40質量%が好ましい。膜形成ポリマー(A)の含有量が、5質量%以上であれば容易に多孔質膜とすることができる傾向にあり、40質量%以下であれば溶剤(S)へ容易に溶解することができる傾向にある。膜形成ポリマー(A)の含有量の下限値は8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、膜形成ポリマー(A)の含有量の上限値は30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0072】
製膜原液100質量%中のポリマー(B)の含有量は、1〜30質量%が好ましい。ポリマー(B)の含有量が、1質量%以上であれば容易に多孔質膜とすることができる傾向にあり、30質量%以下であれば膜形成ポリマー(A)の溶剤(S)への溶解性が高まる傾向にある。ポリマー(B)含有量の下限値は2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。
【0073】
なお、製膜原液は、(メタ)アクリル酸の単独重合体および共重合体を含まないことが好ましい。製膜原液が(メタ)アクリル酸の単独重合体および共重合体を含まなければ、得られる多孔質膜を水処理装置などに用いた際に金属部材と接触しても、金属部材が腐食しにくく、金属部材に使用する材料が限定されにくい。
【0074】
(凝固液)
多孔質膜前駆体を得る際に使用される凝固液としては、膜の孔径制御の点から、溶剤(S)の0〜50質量%水溶液が好ましい。
【0075】
凝固液に含まれる溶剤(S)と、製膜原液に含まれる溶剤(S)とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。
【0076】
凝固液の温度は、10〜90℃が好ましい。凝固液の温度が、10℃以上であれば多孔質膜の透水性能が向上する傾向にあり、90℃以下であれば多孔質膜の機械強度を良好に維持できる傾向にある。
【0077】
(洗浄工程)
凝固工程により得られた多孔質膜前駆体は、40〜100℃の熱水中への浸漬により、多孔質膜前駆体中に残存する溶剤(S)やポリマー(B)の一部を洗浄して取り除くことが好ましい。
【0078】
熱水の温度が、40℃以上であれば多孔質膜前駆体に対する高い洗浄効果が得られる傾向にあり、100℃以下であれば多孔質膜前駆体が融着しにくい傾向にある。
【0079】
(乾燥工程)
洗浄工程後の多孔質膜前駆体は、60〜120℃で、1分間〜24時間乾燥させることが好ましい。
乾燥温度が60℃以上であれば、乾燥処理時間を短縮でき、生産コストを抑えることができ、工業生産上好ましい。一方、乾燥温度が120℃以下であれば、乾燥工程で多孔質膜前駆体が収縮しすぎることを抑制でき、多孔質膜の外表面に微小な亀裂が発生しにくくなる傾向にある。
【0080】
<作用効果>
以上説明した本発明の多孔質膜は、上述した膜形成ポリマー(A)とポリマー(B)とを含むので、高い親水性を有する。ポリマー(B)は、通常のラジカル重合法を用いて得られるので、多孔質膜を容易に製造できる。
【0081】
また、本発明においては、多孔質膜の原料に(メタ)アクリル酸を用いる必要がない。よって、本発明の多孔質膜は金属を腐食しにくいので、水処理装置などに用いた際に金属部材と接触しても金属部材が腐食しにくく、金属部材に使用する材料が限定されにくい。
【0082】
さらに、本発明においては、多孔質膜の洗浄に溶剤を用いる必要がない。よって、本発明の多孔質膜は、製造工程中に使用する材料が限定されにくく、工程を簡略化できる。
【0083】
<用途>
本発明の多孔質膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理等の水処理分野に用いられる多孔質膜として好適である。
【0084】
また、本発明の多孔質膜は、上述した以外にも、例えば電解液の支持体に用いられるような多孔質膜としても好適である。特に、リチウムイオン電池のリチウムイオン電解液で膨潤した支持体として好適である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下において「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
ポリマーの組成および構造は、以下の方法により解析した。また、ポリマーのMw、MnおよびMw/Mnは、以下の方法により測定した。
【0086】
「測定」
(1)ポリマー(B)、ポリマー(B’)の組成および構造の解析
ポリマー(B)、ポリマー(B’)の組成および構造を、1H−NMR(日本電子株式会社製、「JNM−EX270」(製品名))により解析した。なお、重水素化溶媒としては、TMS(テトラメチルシラン)が添加されたN,N−ジメチルアセトアミド−d9を用いた。
また、ポリマー(B)、ポリマー(B’)中の、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)およびその他のモノマー(b2)の組成は、独立行政法人産業技術総合研究所の提供する有機化合物のスペクトルデータベース(SDBS)を参考に算出した。
【0087】
(2)膜形成ポリマー(A)のMwの測定
膜形成ポリマー(A)のMwは、GPC(東ソー株式会社製、「HLC−8020」(製品名))を使用して以下の条件で求めた。
・カラム:TSK GUARD COLUMN α(7.8mm×40mm)と3本のTSK−GEL α―M(7.8×300mm)とを直列に接続
・溶離液:臭化リチウム(LiBr)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(LiBrの濃度:20mM)
・測定温度:40℃
・流速:0.1mL/分
【0088】
なお、膜形成ポリマー(A)のMwは、東ソー株式会社製のポリスチレンスタンダード(Mp(ピークトップ分子量)=76,969,900、2,110,000、1,260,000、775,000、355,000、186,000、19,500、1,050の8種類)、およびNSスチレンモノマー株式会社製のスチレンモノマー(M(分子量)=104)を用いて作成した検量線(1)を使用して求めた。
(3)ポリマー(B)、ポリマー(B’)のMnおよびMw/Mnの測定
【0089】
ポリマー(B)、ポリマー(B’)のMnおよびMw/Mnは、GPC(東ソー株式会社製、「HLC−8320」(製品名))を使用して以下の条件で求めた。
・カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ−H(4.6×35mm)と、2本のTSK−GEL SUPER HZM−H(6.0×150mm)とを直列に接続
・溶離液:塩化リチウム(LiCl)のDMF溶液(LiClの濃度:0.01M)
・測定温度:40℃
・流速:0.6mL/分
【0090】
なお、ポリマー(B)、ポリマー(B’)のMnおよびMw/Mnは、東ソー株式会社製のポリスチレンスタンダード(Mp(ピークトップ分子量)=6,770,000、2,110,000、1,090,000、710,000、355,000、190,000、96,400、37,900、9,100、5,970、340の11種)を用いて作成した検量線(2)を使用して求めた。
【0091】
また、ポリマー(B)、ポリマー(B’)の低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)は以下のようにして求めた。はじめに、前記GPCおよび前記測定条件を使用して求めた溶出時間とポリスチレン分子量の検量線(2)よりポリスチレン分子量が300,000となる溶出時間(t)を求めた。次に、ポリマー(B)の溶出時間と検出強度からなる溶出曲線において、溶出時間がtとなる時間を境にこれより溶出時間が長い領域を低分子領域(X)溶出時間が短い領域を高分子領域(Y)とし、低分子領域(X)および高分子領域(Y)の面積比を比率(X)/(Y)とした。
【0092】
「ポリマーの合成」
(ポリマー(B−1)の合成)
冷却管付フラスコに、メタクリル酸メチル40部、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)としてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン社製、「アクリエステルHO」(商品名))40部、その他のモノマー(b2)としてメタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン社製、「アクリエステルDM」(商品名))20部、および溶剤(S)としてN,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)150部を含有するモノマー組成物を投入し、窒素バブリングにより内部を窒素置換した。ついで、モノマー組成物を加温して内温を70℃に保った状態で、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部(和光純薬工業株式会社製、和光特級)をモノマー組成物に加えた後、3時間保持した。引き続き、90℃に昇温し、先に加えた量の1.5倍量の0.15部の2,2’−アゾビスイソブチロニトリルをモノマー組成物に追添加した後、3時間保持し重合を完結させた後、室温まで冷却し、ポリマー(B−1)を40%含有する重合液(C−1)を得た。
【0093】
重合液(C−1)に含まれるポリマー(B−1)の低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)を測定したところ、(X)/(Y)は1.1であった。結果を表1に示す。
【0094】
また、重合液(C−1)からポリマー(B−1)を取り出し、乾燥させた後にポリマー(B−1)の組成および構造を解析したところ、メタクリル酸メチルの割合が40%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が40%、メタクリル酸ジメチルアミノエチルの割合が20%であった。すなわち、ポリマー(B−1)は、メタクリル酸メチル単位40%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位40%及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル単位20%からなる共重合体である。結果を表1に示す。
(ポリマー(B−2)、(B−3)の合成)
【0095】
モノマー組成物の組成と反応時間を表1に示すように変更した以外は、ポリマー(B−1)と同様の方法でポリマー(B−2)を40%含有する重合液(C−2)、ポリマー(B−3)を40%含有する重合液(C−3)をそれぞれ得た。
【0096】
ポリマー(B−2)、(B−3)の低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)を測定し、組成および構造を解析した。結果を表1に示す。
【0097】
(ポリマー(B’−1)の合成)
冷却管付フラスコに、メタクリル酸メチル40部、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(b1)としてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン社製、「アクリエステルHO」(商品名))40部、その他のモノマー(b2)としてメタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン社製、「アクリエステルDM」(商品名))20部、および溶剤(S)としてN,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)150部を含有するモノマー組成物を投入し、窒素バブリングにより内部を窒素置換した。ついで、モノマー組成物を加温して内温を70℃に保った状態で、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部(和光純薬工業株式会社製、和光特級)をモノマー組成物に加えた後、5時間保持した。引き続き、90℃に昇温し、先に加えた量の1.5倍量の0.15部の2,2’−アゾビスイソブチロニトリルをモノマー組成物に追添加した後、2時間保持し重合を完結させた後、室温まで冷却し、ポリマー(B’−1)を40%含有する重合液(C’−1)を得た。
【0098】
重合液(C’−1)に含まれるポリマー(B’−1)の低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)を測定したところ、(X)/(Y)は0.70であった。結果を表1に示す。
【0099】
また、重合液(C’−1)からポリマー(B’−1)を取り出し、乾燥させた後にポリマー(B’−1)の組成および構造を解析したところ、メタクリル酸メチルの割合が40%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの割合が40%、メタクリル酸ジメチルアミノエチルの割合が20%であった。すなわち、ポリマー(B’−1)は、メタクリル酸メチル単位40%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位40%及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル単位20%からなる共重合体である。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
表1中の略号は、以下の化合物を示す。
・HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン株式会社製、「アクリエステルHO」(商品名))
・DMAEMA:メタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン株式会社性、「アクリエステルDM」(商品名))
・AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製、和光特級)
・DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)
【0101】
「平膜形状の多孔質膜の調製」
<実施例1>
膜形成ポリマー(A)としてポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製、「Kynar761A」(商品名)、Mw=550,000)5.1部、ポリマー(B)としてポリマー(B−1)を含む重合液(C−1)9.00部(固形分換算で3.60部)、および溶剤(S)としてN,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、和光特級)17.40部をガラス容器に配合し、50℃で、スターラーで10時間攪拌して製膜原液を調製した。なお、製膜原液100%中、ポリフッ化ビニリデンの含有量は16.2%であり、ポリマー(B−1)の含有量は11.4%である。
【0102】
得られた製膜原液を室温下で一日静置した後、バーコーターを用いてガラス基板上に125μmの厚みになるように塗工し、塗膜積層体を得た。
【0103】
得られた塗膜積層体を、脱イオン水60部および凝固浴溶剤としてN,N−ジメチルアセトアミド40部を含む室温の凝固浴に浸漬した。塗膜積層体を凝固浴中に5分間放置した後、塗膜の凝固物をガラス基板から剥がし、塗膜の凝固物を80℃の熱水で5分間洗浄してN,N−ジメチルアセトアミドを取り除き、平膜形状の多孔質膜を作製した。得られた平膜形状の多孔質膜を室温で20時間乾燥し、厚み100μmの多孔質膜試験片を得た。
【0104】
得られた多孔質膜試験片について、純水透過流束を表2に示す。
【0105】
<実施例2〜7>
製膜原液、凝固液、洗浄液として表2に示すものを使用した以外は、実施例1と同様にして多孔質膜試験片を得た。
【0106】
得られた多孔質膜試験片について、純水透過流束を測定した。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
表2中の略号は、以下の化合物を示す。
・Kynar761A:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製、「Kynar761A」(商品名)、Mw=550,000)
・DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)
【0108】
<比較例1〜5>
製膜原液および凝固液として表3に示すものを使用した以外は、実施例1と同様にして多孔質膜試験片を得た。
得られた多孔質膜試験片について、純水透過流束を測定した。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
表3中の略号は、以下の化合物を示す。
・Kynar761A:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製、「Kynar761A」(商品名)、Mw=550,000)
・DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)
【0110】
表2、表3の結果から明らかなように、各実施例で得られた多孔質膜試験片の純水透過流束は25(m
3/m
2/MPa/h)以上、200(m
3/m
2/MPa/h)未満であり、高い透水性を有していた。また、各実施例で得られた多孔質膜試験片は、(メタ)アクリル酸を含んでいないので、金属を腐食しにくい。さらに、各実施例で得られた多孔質膜試験片は、製造工程において溶剤洗浄を必要とせず、熱水で洗浄しただけで得られた。
【0111】
一方、比較例1の場合、低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)が0.7と低く、熱水で洗浄しただけでは、得られた多孔質膜試験片の純水透過流束は20(m
3/m
2/MPa/h)と低かった。
【0112】
比較例2の場合、比較例1と同一の多孔質膜試験片を溶媒を用いて洗浄すると純水透過流束は31(m
3/m
2/MPa/h)と高い値を示し、熱水だけの洗浄では不十分であった。
【0113】
比較例3の場合、低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)が0.4と低いため、純水透過流束は15(m
3/m
2/MPa/h)と低かった。
【0114】
比較例4の場合、低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)が3.3と高いため、透水しなかった。
【0115】
比較例5の場合、低分子量領域(X)と高分子量領域(Y)の比率(X)/(Y)が2.2と高いため、純水透過流束は19(m
3/m
2/MPa/h)と低かった。