【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置として、400V、600V、1200V、1700V、3300V、6500Vあるいはそれ以上の耐圧を有するトレンチゲート型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)等が公知である。例えば、炭化珪素(SiC)を用いたトレンチゲート型MOSFET(以下、SiC−MOSFETとする)は、コンバーター・インバーター等の電力変換装置に用いられている。この電力用半導体装置は、低損失・高効率と同時に要求耐圧を有することが求められる。また、電力用半導体装置は、オフ時にリーク電流を抑制することが求められる。
【0003】
従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETとして、隣り合うゲートトレンチ間にコンタクトトレンチを備えた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1および下記非特許文献1参照。)。ゲートトレンチとは、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチとは、金属電極(ソース電極)が埋め込まれ、内壁に露出する半導体領域と当該金属電極とのコンタクト(電気的接触部)を形成したトレンチである。コンタクトトレンチ内に半導体領域と金属電極とのコンタクトを形成することで、ゲートトレンチの底面においてゲート絶縁膜にかかる電界が緩和される。従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETの構造について説明する。
図12は、従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETの活性領域の構造を示す断面図である。
【0004】
図12に示す従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETは、電流駆動を担う活性領域において、炭化珪素からなる半導体基体(以下、炭化珪素基体とする)110のおもて面側に、トレンチゲート型のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造と、コンタクトトレンチ108と、を備える。具体的には、炭化珪素基体110は、n
+型ドレイン層101である炭化珪素からなるn型支持基板(以下、n
+型炭化珪素基板とする)上にn
-型ドリフト層102(102a,102b)となるn
-型炭化珪素層をエピタキシャル成長させてなる。炭化珪素基体110のおもて面(n
-型ドリフト層102側の面)側に、p型ベース領域103、n
+型ソース領域104、ゲートトレンチ105、ゲート絶縁膜106およびゲート電極107からなるMOSゲート構造が設けられている。
【0005】
ゲートトレンチ105の底面105aにおいてゲート絶縁膜106にかかる電界を緩和するため、隣り合うゲートトレンチ105間(メサ部)に、少なくとも一部をゲートトレンチ105の深さよりも深くしたp型ベース領域103が設けられている。p型ベース領域103の一部の深さをゲートトレンチ105の深さよりも深くするために、メサ部には、ゲートトレンチ105よりも深いコンタクトトレンチ108が設けられている。p型ベース領域103は、コンタクトトレンチ108の内壁(底面108aおよび側壁108b)の全面に露出するように設けられ、コンタクトトレンチ108の内壁の全面で後述するソース電極111に接する。p型ベース領域103は、不純物濃度のばらつきを抑制可能で、かつ既存の製造装置を用いて形成可能なイオン注入法により形成される。
【0006】
n
+型ソース領域104は、隣り合うゲートトレンチ105とコンタクトトレンチ108との間においてp型ベース領域103の内部に選択的に設けられ、基体おもて面およびコンタクトトレンチ108の側壁108bに露出している。n
+型ソース領域104と、コンタクトトレンチ108の内壁に露出するp型ベース領域103とは、層間絶縁膜109を深さ方向に貫通するコンタクトホール109aに露出されている。ソース電極111は、コンタクトホール109aおよびコンタクトトレンチ108に埋め込まれ、p型ベース領域103およびn
+型ソース領域104に接する。炭化珪素基体110の裏面(n
+型ドレイン層101側の面)には、ドレイン電極112が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、炭化珪素(SiC)を用いたトレンチゲート型MOSFET(SiC−MOSFET)を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図1には、隣り合う単位セル(素子の機能単位)間の構造を示し、これらの単位セルに隣接するように繰り返し配置された他の単位セルや、活性領域の周囲を囲むエッジ終端領域を図示省略する(
図9においても同様)。
図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、電流駆動を担う活性領域において、炭化珪素からなる半導体基体(炭化珪素基体)10のおもて面側に、トレンチゲート型のMOSゲート構造と、コンタクトトレンチ8と、を備える。
【0024】
具体的には、炭化珪素基体10は、炭化珪素からなるn
+型支持基板(n
+型炭化珪素基板)上にn
-型ドリフト層2(2a,2b)およびn
+型ソース層4となる各炭化珪素層を順にエピタキシャル成長させてなる。炭化珪素基体10のおもて面(n
-型ドリフト層2側の面)側に、p型ベース領域3、n
+型ソース層4、ゲートトレンチ5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造が設けられている。n
-型ドリフト層2の不純物濃度は、基体裏面側の部分(以下、n
-型低濃度ドリフト層2aとする)に比べて基体おもて面側の部分(以下、n型高濃度ドリフト層2bとする)で高くてもよい。
【0025】
ゲートトレンチ5は、基体おもて面からn
+型ソース層4を貫通して例えばn
-型低濃度ドリフト層2aに達しない深さで設けられている。ゲートトレンチ5の内部には、ゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が埋め込まれている。隣り合うゲートトレンチ5間(メサ部)に、コンタクトトレンチ8が設けられている。コンタクトトレンチ8とは、隣り合うゲートトレンチ5間(メサ部)に設けられ、金属電極(後述するソース電極(第1電極)11)が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチ8の内壁(底面8aおよび側壁8b)に露出する半導体領域と金属電極とでコンタクト(電気的接触部)が形成される。コンタクトトレンチ8の深さは、ゲートトレンチ5の深さよりも深くてもよい。ここでは、コンタクトトレンチ8の深さがゲートトレンチ5の深さよりも深い場合を例に説明する。また、コンタクトトレンチ8は、n
-型低濃度ドリフト層2aとn型高濃度ドリフト層2bとの界面に達しない深さで設けられている。
【0026】
p型ベース領域3は、隣り合うゲートトレンチ5間にわたってゲートトレンチ5よりも浅い深さで設けられている。また、p型ベース領域3の一部は、コンタクトトレンチ8の内壁に露出するようにコンタクトトレンチ8の内壁に沿って設けられ、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分でゲートトレンチ5の深さよりも深くなっている。これにより、SiC−MOSFETのオフ時、p型ベース領域3の、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分での電界負担により、ゲートトレンチ5の底面5aにおけるゲート絶縁膜6への電界集中が緩和される。
【0027】
p型ベース領域3は、不純物濃度のばらつきを抑制可能で、かつ既存の製造装置を用いて形成可能なイオン注入法により形成される。具体的には、p型ベース領域3は、複数に区分され、注入角度およびドーズ量の異なる複数回のイオン注入で形成される。すなわち、p型ベース領域3は、不純物濃度の異なる複数区分(例えば5つに区分。以下、第1〜5p型ベース領域21〜25とする)で形成された所定の不純物濃度プロファイルを有する。
【0028】
第1p型ベース領域21は、隣り合うゲートトレンチ5間にわたって、ゲートトレンチ5よりも浅い深さで設けられている。第1p型ベース領域21は、n
+型ソース層4および後述するp
+型コンタクト領域(不図示)に接する。第1p型ベース領域21の、ゲートトレンチ5の側壁5bに沿った部分3bは、SiC−MOSFETのオン時にチャネル(形成されるn型の反転層)の形成領域となる。第1p型ベース領域21の不純物濃度は、第2,4p
+型ベース領域22,24の不純物濃度と略同じであってもよい。
【0029】
第2p
+型ベース領域22は、コンタクトトレンチ8の側壁8bに露出するようにコンタクトトレンチ8の側壁8bに沿って設けられている。かつ第2p
+型ベース領域22は、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部(コンタクトトレンチ8の底面8aと側壁8bとの境界)8cを覆うように配置されている。また、第2p
+型ベース領域22は、第1p型ベース領域21、n
+型ソース層4および後述するp
+型コンタクト領域に接する。
【0030】
第3p
++型ベース領域23は、p型ベース領域3の、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部8cに沿った部分(角部)3aに選択的に設けられている。第3p
++型ベース領域23は、第5p型ベース領域25に周囲をすべて覆われた状態で第5p型ベース領域25の内部に島状に配置されている。第3p
++型ベース領域23は、p型ベース領域3の角部3aの電界を緩和し、p型ベース領域3の角部3aでのパンチスルーを防止する機能を有する。第3p
++型ベース領域23の不純物濃度は、第4p
+型ベース領域24の不純物濃度よりも高くてもよい。
【0031】
第4p
+型ベース領域24は、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿って設けられ、コンタクトトレンチ8の底面8aの少なくとも一部に露出されている。また、第4p
+型ベース領域24は、ドレイン側が第5p型ベース領域25に覆われている。また、第4p
+型ベース領域24は、第3p
++型ベース領域23と離して配置されている。第4p
+型ベース領域24は、ソース電極11とのコンタクト抵抗を低減させる機能を有する。また、第4p
+型ベース領域24は、n
-型低濃度ドリフト層2aとn型高濃度ドリフト層2bとの界面に達しない深さで設けられている。
【0032】
第5p型ベース領域25は、第2,4p
+型ベース領域22、24に接し、かつコンタクトトレンチ8の底面8aに沿って設けられている。コンタクトトレンチ8の底面8aからの第5p型ベース領域25の深さは、第4p
+型ベース領域24よりも深い。第5p型ベース領域25の内部には、第3p
++型ベース領域23が少なくとも1つ以上配置されている。第5p型ベース領域25は、n
-型低濃度ドリフト層2aとn型高濃度ドリフト層2bとの界面よりもドレイン側に位置していてもよい。第5p型ベース領域25の不純物濃度は、第3p
++型ベース領域23および第4p
+型ベース領域24の不純物濃度よりも低い。
【0033】
炭化珪素基体10のおもて面の表面領域に、第1p型ベース領域21に接するようにp
+型コンタクト領域(不図示)が選択的に設けられていてもよい。層間絶縁膜9を深さ方向に貫通するコンタクトホール9aは、コンタクトトレンチ8につながるように形成されている。ソース電極11は、コンタクトホール9aおよびコンタクトトレンチ8に埋め込まれるように設けられ、第2,4p
+型ベース領域22,24、第3p
++型ベース領域23、第5p型ベース領域25、n
+型ソース層4およびp
+型コンタクト領域に接する。炭化珪素基体10の裏面(n
+型ドレイン層であるn
+型炭化珪素基板1側の面)には、裏面電極としてドレイン電極12が設けられている。
【0034】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について3300V耐圧クラスのトレンチゲート型SiC−MOSFETを作製(製造)する場合を例に説明する。
図2〜8は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0035】
まず、例えば、例えば1×10
18/cm
3以上1×10
20/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn
+型炭化珪素基板1を用意する。n
+型炭化珪素基板1のおもて面は、例えば0.1°以上8°以下程度のオフ角を有していてもよい。次に、エピタキシャル成長により、n
+型炭化珪素基板1のおもて面に、例えば2×10
15/cm
3以上4×10
15/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn
-型低濃度ドリフト層2aとなるn
-型炭化珪素層を例えば25μm以上30μm以下程度の厚さで成膜(形成)する。ここまでの状態が
図2に示されている。
【0036】
次に、エピタキシャル成長により、n
-型低濃度ドリフト層2a上に、例えば1×10
16/cm
3以上1×10
18/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn型高濃度ドリフト層2bとなるn型炭化珪素層を例えば0.5μm以上3.0μm以下程度の厚さで成膜する。次に、エピタキシャル成長により、n型高濃度ドリフト層2b上に、例えば1×10
18/cm
3以上3×10
20/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn
+型ソース層4となるn
+型炭化珪素層を例えば0.05μm以上1.0μm以下程度の厚さで成膜する。ここまでの工程により、n
+型炭化珪素基板1上にn
-型ドリフト層2(2a,2b)およびn
+型炭化珪素層を順に積層した炭化珪素基体(半導体ウエハ)10が形成される。ここまでの状態が
図3に示されている。
【0037】
次に、炭化珪素基体10のおもて面(n
+型ソース層4側の面)に例えば1.5μm以上2.5μm以下程度の厚さで酸化膜31を堆積する。次に、この酸化膜31をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、コンタクトトレンチ8の形成領域に対応する部分を露出させる。次に、酸化膜31のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、酸化膜31の残部をマスクとしてエッチングを行い、コンタクトトレンチ8を形成する。コンタクトトレンチ8の深さは、例えば0.5μm以上5.0μm以下程度であってもよい。コンタクトトレンチ8の幅は、例えば0.1μm以上3.0μm以下程度であってもよい。ここまでの状態が
図4に示されている。
【0038】
次に、コンタクトトレンチ8の形成に用いた同一の酸化膜31をマスクとして、基板おもて面に垂直な方向に対して斜め方向から、コンタクトトレンチ8の両側壁8bに同じ条件でそれぞれp型不純物をイオン注入(以下、第1斜めイオン注入とする)32する。この第1斜めイオン注入32により、コンタクトトレンチ8の側壁8bに沿った部分に第2p
+型ベース領域22が形成される。このとき、コンタクトトレンチ8の底面8aに第2p
+型ベース領域22が形成されてもよい。
【0039】
この第1斜めイオン注入32においては、ドーパントは例えばアルミニウム(Al)であってもよい。注入角度θ1は、基板おもて面に垂直な方向に対して例えば25°程度であってもよい。加速エネルギーは、例えば860keV程度であってもよい。ドーズ量は、例えば4.0×10
13/cm
2程度であってもよい。第2p
+型ベース領域22の、コンタクトトレンチ8の側壁8bに対する深さd1は例えば0.5μmであってもよい。
【0040】
このようにコンタクトトレンチ8の側壁8bに対して浅い深さd1で第1斜めイオン注入32を行うことで、この第1斜めイオン注入32がチャネルの形成領域に達することを防止することができる。チャネルの形成領域とは、ゲートトレンチ5の側壁5bに沿った部分である。ここまでの状態が
図5に示されている。
【0041】
図5には、コンタクトトレンチ8の一方の側壁8bに第1斜めイオン注入32を行った後、コンタクトトレンチ8の他方の側壁8bに第1斜めイオン注入32を行っている状態を示している。例えば、コンタクトトレンチ8が多角形状の平面形状を有する場合、コンタクトトレンチ8のすべての側壁8bにそれぞれ同様に第1斜めイオン注入32を行えばよい。
【0042】
次に、コンタクトトレンチ8の形成に用いた同一の酸化膜31をマスクとして、基板おもて面に垂直な方向に対して斜め方向から、コンタクトトレンチ8の両底面コーナー部8cに同じ条件でそれぞれp型不純物をイオン注入(以下、第2斜めイオン注入とする)33する。第2斜めイオン注入33は、第1斜めイオン注入32よりも基板おもて面に垂直な方向に対して浅い注入角度θ2で行う。また、第2斜めイオン注入33は、異なる条件で多段(複数段)に行う。
【0043】
この複数段の第2斜めイオン注入33により、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部8c付近に、第2p
+型ベース領域22に接するように第5p型ベース領域25となるp型領域34が形成される。かつp型領域34の内部に島状に第3p
++型ベース領域23が形成される。このように基板おもて面に垂直な方向に対して浅い注入角度θ2で第2斜めイオン注入33を行うことで、この第2斜めイオン注入33がチャネルの形成領域に達することを防止することができる。
【0044】
この第2斜めイオン注入33においては、ドーパントは例えばアルミニウムであってもよい。注入角度θ2は、基板おもて面に垂直な方向に対して例えば15°程度であってもよい。そして、第2斜めイオン注入33を例えば3段(3回)行う場合、1段目は、例えば、加速エネルギーを800keV程度とし、ドーズ量を4.0×10
13/cm
2程度としてもよい。2段目は、加速エネルギーを400keV程度とし、ドーズ量を4.0×10
13/cm
2程度としてもよい。3段目は、加速エネルギーを100keV程度とし、ドーズ量を4.0×10
13/cm
2程度としてもよい。ここまでの状態が
図6に示されている。
【0045】
例えば、コンタクトトレンチ8が多角形状の平面形状を有する場合、コンタクトトレンチ8のすべての底面コーナー部8cに同じ条件でそれぞれ第2斜めイオン注入33を行えばよい。
【0046】
次に、コンタクトトレンチ8の形成に用いた同一の酸化膜31をマスクとして、基板おもて面に垂直な方向に対して0°となる垂直方向から、コンタクトトレンチ8の底面8aにp型不純物をイオン注入(以下、第3イオン注入とする)35する。第3イオン注入35は、異なる条件で多段に行う。この複数段の第3イオン注入35により、コンタクトトレンチ8の底面8aに露出されるように、第4p
+型ベース領域24が形成される。かつ、第4p
+型ベース領域24のドレイン側を覆うように、第5p型ベース領域25となるp型領域36が形成される。このように基板おもて面に垂直な方向に対して0°の角度で第3イオン注入35を行うことで、この第3イオン注入35がチャネルの形成領域に達することを防止することができる。
【0047】
この第3イオン注入35においては、ドーパントは例えばアルミニウムであってもよい。そして、第3イオン注入35を例えば4段(4回)行う場合、1段目は、例えば、加速エネルギーを200keV程度とし、ドーズ量を5.0×10
15/cm
2程度としてもよい。2段目は、加速エネルギーを130keV程度とし、ドーズ量を3.0×10
15/cm
2程度としてもよい。3段目は、例えば、加速エネルギーを80keV程度とし、ドーズ量を2.0×10
15/cm
2程度としてもよい。4段目は、加速エネルギーを30keV程度とし、ドーズ量を1.5×10
15/cm
2程度としてもよい。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0048】
第1,2斜めイオン注入32,33および第3イオン注入35は順序を入れ替えて行ってもよい。
【0049】
次に、酸化膜31の残部を例えばフッ化水素(HF)で除去する。次に、基板おもて面に垂直な方向に対して0°となる垂直方向から、基体おもて面にp型不純物をイオン注入(以下、第4イオン注入とする)37する。第4イオン注入37は、異なる条件で多段に行う。また、第4イオン注入37は、n
+型ソース層4をp型に反転させない条件で行う。この複数段の第4イオン注入37により、n
-型低濃度ドリフト層2aの表面領域に第1p型ベース領域21が形成される。かつ、n
-型ドリフト層2の、コンタクトトレンチ8の底面8a付近のp型領域36よりも深い部分に第5p型ベース領域25となるp型領域38が形成される。これによって、所定の断面形状を有する第5p型ベース領域25が形成され、第1〜5p型ベース領域21〜25からなるp型ベース領域3が形成される。
【0050】
この第4イオン注入37においては、ドーパントは例えばアルミニウムであってもよい。そして、第4イオン注入37を例えば10段(10回)行う場合、1段目は、例えば、加速エネルギーを800keV程度とし、ドーズ量を5.0×10
12/cm
2程度としてもよい。2段目は、加速エネルギーを700keV程度とし、ドーズ量を5.0×10
12/cm
2程度としてもよい。3段目は、例えば、加速エネルギーを600keV程度とし、ドーズ量を2.5×10
12/cm
2程度としてもよい。4段目は、加速エネルギーを500keV程度とし、ドーズ量を4.5×10
12/cm
2程度としてもよい。
【0051】
5段目は、加速エネルギーを400keV程度とし、ドーズ量を4.5×10
12/cm
2程度としてもよい。6段目は、加速エネルギーを300keV程度とし、ドーズ量を4.5×10
12/cm
2程度としてもよい。7段目は、加速エネルギーを200keV程度とし、ドーズ量を4.0×10
12/cm
2程度としてもよい。8段目は、加速エネルギーを130keV程度とし、ドーズ量を2.5×10
12/cm
2程度としてもよい。9段目は、加速エネルギーを80keV程度とし、ドーズ量を2.0×10
12/cm
2程度としてもよい。10段目は、加速エネルギーを30keV程度とし、ドーズ量を1.5×10
12/cm
2程度としてもよい。ここまでの状態が
図8に示されている。
【0052】
次に、炭化珪素基体10のおもて面に、例えば1.5μm以上2.5μm以下程度の厚さで酸化膜(不図示)を堆積する。次に、この酸化膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、ゲートトレンチ5の形成領域に対応する部分を露出させる。次に、酸化膜のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、酸化膜の残部をマスクとしてエッチングを行い、ゲートトレンチ5を形成する。ゲートトレンチ5の深さは、例えば0.5μm以上2.5μm以下程度であってもよい。ゲートトレンチ5の幅は、例えば0.5μm以上2.0μm以下程度であってもよい。そして、ゲートトレンチ5の形成に用いた酸化膜の残部を除去する。
【0053】
次に、炭化珪素基体10のおもて面に、ゲートトレンチ5の内壁に沿うように、例えば10nm以上500nm以下の厚さで酸化膜(例えばSiO
2膜)を堆積してゲート絶縁膜6を形成する。次に、例えば800℃以上1200℃以下程度の温度で窒素(N
2)雰囲気での熱処理を行う。次に、炭化珪素基体10のおもて面に、ゲートトレンチ5の内部に埋め込むように例えば0.3μm以上1.5μm以下程度の厚さでポリシリコン層を堆積する。そして、このポリシリコン層をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、ゲートトレンチ5の内部にゲート電極7となるポリシリコン層を残す。次に、炭化珪素基体10のおもて面に、例えば0.5μm以上1.5μm以下程度の厚さで層間絶縁膜9を堆積する。
【0054】
次に、層間絶縁膜9をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、コンタクトホール9aを形成する。次に、層間絶縁膜9のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を残した状態で、炭化珪素基体10のおもて面側にニッケル(Ni)膜(不図示)を堆積する。次に、炭化珪素基体10を例えばアセトンに浸し、レジストマスクごとレジストマスク上のニッケル膜をリフトオフにより除去する。次に、コンタクトホール9aに埋め込むように基体おもて面側に例えばアルミニウム膜を堆積してソース電極11を形成するとともに、炭化珪素基体10の裏面にドレイン電極12を形成する。その後、半導体ウエハをチップ状にダイシング(切断)して個片化することで、
図1に示すトレンチゲート型SiC−MOSFETが完成する。
【0055】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、コンタクトトレンチの底面コーナー部付近に不純物濃度の高い第3p型ベース領域を選択的に配置することで、p型ベース領域の角部での電界を緩和することができ、パンチスルーを防止することができる。これにより、耐圧の低下やリーク電流の増大を防止することができる。また、実施の形態1によれば、p型ベース領域を複数に区分し、コンタクトトレンチの側壁に対して浅い深さでイオン注入を行い、第2p型ベース領域を形成する。かつ、基板おもて面に垂直な方向に対して浅い角度または0°でイオン注入を行い、第3,4p型ベース領域を形成する。このため、相対的に不純物濃度の高い第2〜4p型ベース領域を形成するためのイオン注入がチャネルの形成領域にまで達しない。このため、ゲート閾値電圧の増加やチャネル抵抗の増大を防止することができる。さらに、コンタクトトレンチの底面に露出するように不純物濃度の高い第4p型ベース領域が配置されるため、コンタクト抵抗を低減させることができる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。
図9は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、次の2点である。1つ目の相違点は、第5p型ベース領域25の内部に第3p
++型ベース領域(
図1の符号23に相当)が設けられていない点である。2つ目の相違点は、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿って設けられた第4p
+型ベース領域44がコンタクトトレンチ8の底面コーナー部8cまで延在し、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部8cを覆っている点である。すなわち、第4p
+型ベース領域44の幅は、コンタクトトレンチ8の幅よりも広い。そして、第4p
+型ベース領域44は、p型ベース領域3の角部3aの電界を緩和してパンチスルーを防止するとともに、ソース電極11とのコンタクト抵抗を低減させる機能を有する。
【0057】
実施の形態2にかかる半導体装置は、例えば、次のように作製される。
図10,11は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、実施の形態1と同様に、n
-型低濃度ドリフト層2aの形成(エピタキシャル成長)工程から第2p
+型ベース領域22の形成工程までを順に行う(
図2〜5参照)。次に、コンタクトトレンチ8の形成に用いた同一の酸化膜31をマスクとして、基板おもて面に垂直な方向に対して斜め方向から、コンタクトトレンチ8の両底面コーナー部8cに同じ条件でそれぞれp型不純物をイオン注入(第2斜めイオン注入)51する。
【0058】
この第2斜めイオン注入51は、第1斜めイオン注入32よりも基板おもて面に垂直な方向に対して浅い注入角度θ2で行う。また、第2斜めイオン注入51は、異なる条件で多段に行う。複数段の第2斜めイオン注入51により、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部8cを覆うように、第4p
+型ベース領域44となるp
+型領域52が形成される。かつ、p
+型領域52のドレイン側を覆うように、第5p型ベース領域25となるp型領域34が形成される。このとき、実施の形態1と同様に、第2斜めイオン注入51がチャネルの形成領域に達することを防止することができる。
【0059】
この第2斜めイオン注入51においては、ドーパントは例えばアルミニウムであってもよい。注入角度θ2は、基板おもて面に垂直な方向に対して例えば15°程度であってもよい。そして、第2斜めイオン注入51を例えば4段行う場合、1段目は、例えば、加速エネルギーを200keV程度とし、ドーズ量を5.0×10
15/cm
2程度としてもよい。2段目は、加速エネルギーを130keV程度とし、ドーズ量を3.0×10
15/cm
2程度としてもよい。3段目は、加速エネルギーを80keV程度とし、ドーズ量を2.0×10
15/cm
2程度としてもよい。4段目は、加速エネルギーを30keV程度とし、ドーズ量を1.5×10
15/cm
2程度としてもよい。ここまでの状態が
図10に示されている。
【0060】
図10には、コンタクトトレンチ8の一方の底面コーナー部8cに多段に第2斜めイオン注入51を行った後、コンタクトトレンチ8の他方の底面コーナー部8cに多段に第2斜めイオン注入51を行っている状態を示している。例えば、コンタクトトレンチ8が多角形状の平面形状を有する場合、コンタクトトレンチ8のすべての底面コーナー部8cに同じ条件でそれぞれ第2斜めイオン注入51を行えばよい。
【0061】
次に、コンタクトトレンチ8の形成に用いた同一の酸化膜31をマスクとして、基板おもて面に垂直な方向に対して0°となる垂直方向から、コンタクトトレンチ8の底面8aにp型不純物をイオン注入(第3イオン注入とする)53する。この第3イオン注入53は、異なる条件で多段(例えば4段)に行う。この複数段の第3イオン注入53により、実施の形態1と同様に、コンタクトトレンチ8の底面8aに露出されるように、第4p
+型ベース領域44となるp
+型領域54が形成される。かつ、p
+型領域54のドレイン側を覆うように、第5p型ベース領域25となるp型領域36が形成される。これによって、所定の断面形状を有する第4p
+型ベース領域44が形成される。このとき、実施の形態1と同様に、第3イオン注入53がチャネルの形成領域に達することを防止することができる。ここまでの状態が
図11に示されている。
【0062】
その後、実施の形態1と同様に、第4イオン注入工程以降を行うことで、
図9に示すトレンチゲート型SiC−MOSFETが完成する。
【0063】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
以上において本発明は種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した実施の形態では、n
+型ソース層をエピタキシャル成長により形成しているが、イオン注入による拡散領域としてもよい。また、上述した実施の形態では、MOSFETを例に説明しているが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)など、電極を埋め込んだトレンチ(溝)を活性領域に備えた半導体装置にも適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。