特許第6864541号(P6864541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864541
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】貯蔵物の発熱監視システムおよびサイロ
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20210101AFI20210419BHJP
   B65D 90/48 20060101ALI20210419BHJP
   A01F 25/00 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   G01K11/32 A
   B65D90/48 G
   A01F25/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-88235(P2017-88235)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-185266(P2018-185266A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕晶
(72)【発明者】
【氏名】日置 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 守彦
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 大介
(72)【発明者】
【氏名】桑野 理
(72)【発明者】
【氏名】糸川 敦
(72)【発明者】
【氏名】西浦 秀成
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−270255(JP,A)
【文献】 特開2004−35783(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103994831(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
B65D 90/48
A01F 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイロの底部に配索された光ファイバと、
前記光ファイバに光パルスを入射するとともに前記光ファイバからの該光パルスの後方散乱光を検出して、前記光ファイバに沿った温度分布を測定する測定装置と、
を備え
前記光ファイバは、前記サイロの側壁の略全周にわたって前記側壁の近傍を通るようにループ状に配索されることを特徴とする貯蔵物の発熱監視システム。
【請求項2】
前記光ファイバを内部に挿通する保護配管をさらに備え、
前記保護配管は前記サイロの底部の構成要素および/または側壁に、前記サイロの内部空間に面するように固定されることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵物の発熱監視システム。
【請求項3】
前記光ファイバの温度分布状態を監視者に提示するための表示装置をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の貯蔵物の発熱監視システム。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の貯蔵物の発熱監視システムを備えることを特徴とするサイロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイロ内に貯蔵された貯蔵物の発熱監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所等に設置される石炭サイロでは、石炭の貯蔵期間が長くなると石炭サイロ内で石炭が酸化発熱して自然発火が生じる場合がある。そこで、石炭サイロ内に貯蔵された石炭の発熱を監視し、発熱が発生した場合には石炭の払い出しや放水を行って発熱箇所の冷却を行っている。
【0003】
従来、石炭サイロ内に貯蔵された石炭の発熱を監視するために、貯蔵石炭中に熱電対を埋め込み、該熱電対からの信号を検出することにより、石炭の発熱を監視する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−68954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような熱電対を用いた発熱監視方法の場合、熱電対から離れた箇所で生じた発熱の検知に時間がかかる可能性や検知ができない可能性がある。
【0006】
本発明は、こうした状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、サイロ内に貯蔵された貯蔵物の発熱を迅速に検知できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の貯蔵物の発熱監視システムは、サイロの底部に配索された光ファイバと、光ファイバに光パルスを入射するとともに光ファイバからの該光パルスの後方散乱光を検出して、光ファイバに沿った温度分布を測定する測定装置とを備える。
【0008】
光ファイバは、少なくとも一部がサイロの側壁の近傍を通るように配索されてもよい。
【0009】
光ファイバを内部に挿通する保護配管をさらに備えてもよい。保護配管はサイロの底部の構成要素および/または側壁に固定されてもよい。
【0010】
光ファイバの温度分布状態を監視者に提示するための表示装置をさらに備えてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、上記の貯蔵物の発熱監視システムを備えるサイロである。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サイロ内に貯蔵された貯蔵物の発熱を迅速に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る石炭の発熱監視システムが適用される石炭サイロの構成を説明するための図である。
図2】石炭サイロの底部を上面視した概略図である。
図3】石炭サイロ内に石炭を長期間貯蔵したときの石炭温度分布の一例を示す図である。
図4】光ファイバを挿通した保護配管を仕切板に固定した様子を示す図である。
図5】光ファイバを挿通した保護配管を側壁に固定した様子を示す図である。
図6図6(a)および(b)は、表示装置に提示される測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る石炭の発熱監視システム10が適用される石炭サイロ100の構成を説明するための図である。
【0016】
石炭サイロ100は、例えば、内径60m、高さ75m、石炭容量10万トンの大型のものであってよい。
【0017】
図1に示すように、石炭サイロ100は、基礎102と、基礎102上に立設された側壁104と、側壁104の上に形成された屋根106とを備える。石炭サイロ100内には石炭120が貯蔵される。側壁104は、略円筒形状の下部側壁104aと、下部側壁104aの上に形成された略円錐台形状の上部側壁104bとから成る。下部側壁104aの底部付近は、下方に向かって縮径した傾斜壁104cとされている。
【0018】
石炭サイロ100の上部には積付所ステージ108が設けられている。積付所ステージ108には、石炭を搬入するための搬入コンベヤ110が設けられている。搬入コンベヤ110によって運ばれた石炭は、積付所ステージ108から落下されて石炭サイロ100内に貯蔵される。
【0019】
石炭サイロ100の底部には、複数の小コーン(小仕切板、小仕切壁)112と、複数の大コーン(大仕切板、大仕切壁)114が設けられている。小コーン112の下方には、搬出コンベヤ116が設けられている。石炭サイロ100内に貯蔵された石炭120は、底部に設けられた開口部から搬出コンベヤ116に払い出され、搬出コンベヤ116によって石炭サイロ100の外に搬出される。
【0020】
図2は、石炭サイロ100の底部を上面視した概略図である。図2に示すように、石炭サイロ100の底部には、Y軸方向に延びる複数の小コーン112および大コーン114と、Y軸方向と垂直なX軸方向に延びる複数の仕切板115とが格子状に配置されている。
【0021】
図2には、石炭サイロ100に貯蔵された石炭の発熱を検出するための発熱監視システム10の概略構成が図示されている。本実施形態に係る石炭の発熱監視システム10は光ファイバ温度分布センサを利用したものである。
【0022】
発熱監視システム10は、石炭サイロ100の底部に配索された光ファイバ12と、光ファイバ12を内部に挿通する保護配管13と、光ファイバ12に接続された測定装置14と、測定結果を監視者に提示するための表示装置16とを備える。
【0023】
測定装置14は、光ファイバ12に光パルスを入力するとともに光ファイバ12からの該光パルスの後方散乱光を検出して、光ファイバ12に沿った温度分布を測定する。測定装置14は、一本の光ファイバに入力した光パルスのラマン散乱光を利用したラマン散乱型であってもよい。あるいは、測定装置14は、一本の光ファイバに入力した光パルスのレイリー散乱光を利用したレイリー散乱型であってもよい。レイリー散乱型は、ラマン散乱型よりも空間分解能が高いという特徴がある。
【0024】
従来のように熱電対を貯蔵石炭中に埋め込む方法の場合、発熱箇所が熱電対から離れていると発熱の検知に時間がかかる。一方、本実施形態に係る発熱監視システム10では、石炭サイロ100の底部に配索した光ファイバ12により広範囲の温度分布を監視することができるので、迅速に石炭の発熱を検知できる。
【0025】
図3は、石炭サイロ100内に石炭を長期間貯蔵したときの石炭温度分布の一例を示す。図3ではハッチングにより石炭の温度を表している。
【0026】
図3から、石炭サイロ100の側壁104の近傍に位置する石炭に発熱が生じやすいことが分かる。石炭サイロ100では、石炭を搬出コンベヤ116に払い出すために底部に設けられた開口部から空気が上方に流れ、この空気により石炭が酸化されて発熱が生じる(図3において矢印は空気の流れを表す)。石炭サイロ100で上方から石炭を落下させて貯蔵する場合、側壁104の近傍には大きな石炭塊が偏って位置しやすいため、側壁104の近傍は空隙が多く空気の流れが速くなる。その結果、側壁104の近傍に位置する石炭は酸化反応が促進されやすく、発熱が生じやすい。
【0027】
従って、側壁104の近傍に位置する石炭の温度をより迅速に検出するために、光ファイバ12は、石炭サイロ100の側壁104(より詳細には傾斜壁104c)の近傍を通るように配索されることが望ましい。図2は、光ファイバ12の配索パターンの一例を示している。図2に示す配索パターンでは、光ファイバ12が側壁104のほぼ全周にわたって近傍を通るように配索されているが、光ファイバ12の少なくとも一部が石炭サイロ100の側壁104の近傍を通るように配索されてもよい。勿論、光ファイバ12は、側壁104の近傍に加えて底部の内側の領域に配索されてもよい。また、光ファイバ12は、図2に示すように、ループ状に配索されることが好ましい。この場合、より高い精度での温度検出が可能となる。
【0028】
次に、光ファイバ12の固定方法について説明する。光ファイバ12は、石炭から保護するために金属製(例えばステンレス)の保護配管13内に挿通される。本実施形態において、この保護配管13は、石炭サイロ100の底部の構成要素(小コーン112、大コーン114、仕切板115等)および/または側壁104に固定される。
【0029】
図4は、光ファイバ12を挿通した保護配管13を仕切板115に固定した様子を示す。図4に示すように、保護配管13は、断面略U字状の支持部材40を介してボルト42で仕切板115の頂部に固定される。
【0030】
図5は、光ファイバ12を挿通した保護配管13を側壁104(より正確には傾斜壁104c)に固定した様子を示す。図5に示すように、保護配管13は、断面略U字状の支持部材50を介してボルト52で側壁104に固定される。
【0031】
図6(a)および(b)は、表示装置16に提示される測定結果の一例を示す。光ファイバ温度分布センサは、その方式にもよるが、数十cmから数mの距離分解能で光ファイバ12に沿って温度分布を測定することが可能である。
【0032】
図6(a)および(b)では、図2に示すようにほぼ側壁104に沿って光ファイバ12を配索したときに、光ファイバ12の配索パターンを四角形状に模式化して測定結果を表示している。四角形状の配索パターンの各辺は10点の温度測定ポイントを有しているため、全体では温度測定ポイントは40点である。
【0033】
図6(a)は、絶対温度T(℃)の分布を表す。図6(a)のように、絶対温度Tに応じて温度測定ポイントの模様や色を変えることにより、監視者は石炭サイロ100の底部において温度が高くなっている箇所を即座に把握することができる。
【0034】
また、図6(b)は、温度の時間変化率ΔT(℃/min)の分布を表す。光ファイバ温度分布センサは、その方式にもよるが、数十秒から数分毎に温度計測が可能であるため、詳細な温度の時間変化率ΔTの分布を測定することができる。図6(b)に示すように、温度の時間変化率ΔTに応じて温度測定ポイントの模様や色を変えることにより、監視者は石炭サイロ100の底部において温度の時間変化率が高い箇所を即座に把握できる。これにより、異常温度になる前の僅かな温度上昇を検出して石炭の発熱を未然に防ぐことができる。
【0035】
上記では、絶対温度Tや温度の時間変化率ΔTを可視化して監視者に提示する例を説明したが、絶対温度Tや温度の時間変化率ΔTに所定の閾値を設定し、該閾値を超えた場合に異常アラームを発生するようにしてもよい。この場合、測定された絶対温度Tが閾値(例えば数十℃)以上である条件と、測定された温度の時間変化率ΔTが閾値(例えば数℃/min)以上である条件とのうち、少なくともいずれか一方が成立したときに、測定装置により異常が発生していると判定するものとしてもよい。
【0036】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0037】
上述の実施形態の石炭サイロ100は、側壁104が略円筒形状の下部側壁104aと略円錐台形状の上部側壁104bとから成るものとしたが、本発明の石炭サイロはいかなる形状としてもよい。例えば、搬入コンベヤや搬出コンベヤによる石炭の搬入出方向を長手方向とする略直方体形状の石炭サイロとしてもよい。また、搬出コンベヤ116は、並列に4本設けられているものとしたが、1本や2本設けられているものとしても構わない。
【0038】
上述の実施形態では、石炭サイロに貯蔵された石炭の発熱監視システムを例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は石炭の発熱監視システムに限定されず、例えば、穀物、バイオマス、リサイクル固形燃料等の他のサイロの貯蔵物の発熱監視システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 発熱監視システム、 12 光ファイバ、 13 保護配管、 14 測定装置、 16 表示装置、 100 石炭サイロ、 102 基礎、 104 側壁、 106 屋根、 108 積付所ステージ、 110 搬入コンベヤ、 112 小コーン、 114 大コーン、 115 仕切板、 116 搬出コンベヤ、 120 石炭。
図1
図2
図3
図4
図5
図6