【発明の効果】
【0009】
本発明の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物は加硫速度が速く、良好な物理物性を与えるシリコーンゴム成形品を与える。
【0010】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、重合度3,000以上を有し、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンである。該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、上記重合度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、下記平均組成式(1)で表されるものが挙げられる。
R
aSiO
(4−a)/2 (1)
(式中、Rは互いに独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の正数である。ただし、Rのうち2個以上はアルケニル基である)
【0011】
上記平均組成式(1)中、Rは互いに独立に、炭素数1〜12、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは炭素数5〜12、より好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキル基、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基またはシクロアルケニル基、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは6〜10のアリール基、及び、好ましくは炭素数7〜12、より好ましくは8〜10のアラルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基またはシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したトリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基、及び、トリフルオロプロピル基が好ましい。更に詳細には、オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位からなるもの、又はこのジメチルポリシロキサンの主鎖の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、及び、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したもの等が好適である。
【0012】
上記式(1)において、aは1.95〜2.05の正数である。オルガノポリシロキサンの形状は制限されるものでないが直鎖状であるのが好ましい。また、直鎖状であるがゴム弾性を損なわない範囲において分岐していてもよい。
【0013】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に二個以上有する。好ましくはケイ素原子に結合する基のうち、0.005〜10モル%、特に0.005〜8モル%がアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基としては、上述したビニル基、アリル基、及びプロペニル基等があげられ、中でも、ビニル基が好ましい。
【0014】
アルケニル基は、分子鎖末端にあるケイ素原子に結合していても、側鎖として分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよい。少なくとも1の分子鎖末端にあるケイ素原子に結合していることが好ましい。(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、好ましくは、分子鎖両末端にジメチルビニルシリル基、メチルジビニルシリル基、及びトリビニルシリル基等を有するのがよい。
【0015】
(A)オルガノポリシロキサンは重合度3,000以上を有し、好ましくは3,000〜100,000を有し、特に好ましくは4,000〜20,000を有する。重合度が3,000未満であると、得られるシリコーンゴムが十分なゴム強度を有さない。該(A)オルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用してもよいし、分子構造や重合度の異なる2種以上を併用してもよい。
【0016】
なお、本明細書において「重合度」とは平均重合度のことを指し、下記条件にて測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量から求めたものとする。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:1mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:KF−805L×2本(Shodex社製)
カラム温度:25℃
試料注入量:20μL(濃度0.1質量%のトルエン溶液)
【0017】
上記(A)オルガノポリシロキサンは公知の方法、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。
【0018】
[(B)補強性シリカ]
(B)成分は、BET法による比表面積50m
2/g以上を有する補強性シリカである。該補強性シリカとしては、例えば、煙霧質シリカ、焼成シリカ、及び沈降性シリカ等が例示されるが、これらに制限されるものでない。耐熱性の観点から煙霧質シリカが好ましい。
【0019】
(B)補強性シリカはBET法による比表面積50m
2/g以上を有し、好ましくは100m
2/g以上、特に好ましくは100〜400m
2/gを有する。該BET法による比表面積が上記下限値未満では、得られるシリコーンゴム成形品の機械的強度が不十分となる。
【0020】
該補強性シリカは、必要に応じて、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、及びメチルトリクロロシランなどのクロロシラン類、あるいはヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等のシラザン類等、公知の処理剤で、シリカ表面を疎水化処理したものであってもよい。
【0021】
本発明のシリコーンゴム組成物における該補強性シリカの配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、10〜100質量部、好ましくは20〜70質量部、特に好ましくは30〜60質量部である。上記下限値未満では添加量が少なすぎて、得られるシリコーンゴムに十分な補強効果を与えることができない。また、上記上限値を超えると、シリコーンゴム組成物の加工性が悪くなり、またシリコーンゴムの機械的強度が低下してしまう。
【0022】
[(C)アクリル酸亜鉛]
(C)成分は、アクリル酸亜鉛であり、シリコーンゴムの加硫特性を向上させるために機能する。該アクリル酸亜鉛を後述する(D)有機過酸化物硬化剤と併用することで、シロキサン鎖に新たにアクリル酸由来の架橋点を生成し、組成物全体の架橋点が増すため加硫速度が速くなる。
【0023】
シリコーン組成物中における(C)アクリル酸亜鉛の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜2質量部、好ましくは0.05〜1質量部である。上記下限値未満では、加硫速度を向上させる効果が不十分であり、上記上限値を超えると、シリコーンゴムの強度や伸び等の物理的特性が低下する。
【0024】
[(D)有機過酸化物硬化触媒]
(D)成分は、有機過酸化物硬化触媒である。有機過酸化物は硬化阻害要因が付加硬化系触媒に比べて少ないため、取扱いの面などで好ましい。また、前記(C)成分と併用することでシリコーンゴム組成物の加硫速度を向上する。
【0025】
有機過酸化物としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、及び、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び2,4−ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0026】
(D)有機過酸化物硬化触媒の量は、シリコーンゴム組成物を硬化させるのに十分な量であればよい。詳細には、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部である。
【0027】
[(E)オルガノシラン/シロキサン]
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記(A)〜(D)成分に加え、更に(E)成分として、下記一般式(2)で表されるオルガノシラン又はシロキサンを含有することが好ましい。(E)成分を配合することにより、本発明のシリコーンゴム組成物の作業性、押出特性等が向上する。
R
1O[(R
2)
2SiO
2/2]
mR
1 (2)
(式中、R
1は互いに独立に、アルキル基又は水素原子であり、R
2は、互いに独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、及びmは1〜50の正数である)
該オルガノシラン又はシロキサンは、分子鎖両末端にアルコキシ基又は水酸基を有している。
【0028】
上記式(2)において、R
1は、アルキル基又は水素原子である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。R
1は好ましくは、メチル基、エチル基、または水素原子であるのがよい。
【0029】
R
2としては、好ましくは炭素数1〜12の、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12、より好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは6〜10のアリール基、及び、好ましくは炭素数7〜12、より好ましくは8〜10のアラルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が特に好ましい。
【0030】
上記式(2)において、mは1〜50の正数であり、好ましくは1〜30の正数、特に好ましくは1〜20の正数である。mが上記範囲内であれば、(E)成分を大量に配合しなくとも十分な添加効果が得られる。(E)成分を大量配合することによるゴム物性の低下が発生する恐れがない。
【0031】
(E)成分の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であれば、添加効果が十分に得られ、50質量部以下であれば、得られるシリコーンゴム組成物に粘着性が発生する恐れがない。従って、加工性が低下したり、得られるゴム物性が低下したりする恐れがない。
【0032】
[その他の成分]
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記成分に加え、任意成分として、必要に応じ、白金化合物、酸化鉄やハロゲン化合物のような難燃性付与剤や耐油性向上剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤等のシリコーンゴム組成物における公知の添加剤を添加することができる。
【0033】
本発明のシリコーンゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等公知の混練機で混練することによって得ることができる。また必要により熱処理(加熱下での混練)をしてもよい。詳細には、(A)及び(B)成分を混練し、必要に応じて熱処理してから室温において(C)及び(D)成分を添加し混練する方法が好ましい。熱処理する場合、熱処理温度、時間は特に制限されないが、100〜250℃、特に140〜180℃で30分〜5時間程度行うことが好ましい。
【0034】
本発明のシリコーンゴム組成物を成形する際は、必要とされる用途(成形品)に応じて、適宜成形方法を選択すればよい。詳細には、コンプレッション成形、インジェクション成形、トランスファー成形、常圧熱気加硫、及びスチーム加硫等が挙げられる。硬化条件は特に限定されず、硬化方法や成形品に応じて適宜選択すればよい。一般的には、80〜600℃、特に100〜450℃で、数秒〜数日、特に5秒〜1時間程度で行うことができる。また、必要に応じて2次加硫してもよい。2次加硫は通常180〜250℃で1〜10時間程度で行うことができる。