特許第6864651号(P6864651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6864651シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6864651
(24)【登録日】2021年4月6日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20210419BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20210419BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08K3/36
   C08K5/098
   C08K5/14
   C08L83/06
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-99837(P2018-99837)
(22)【出願日】2018年5月24日
(65)【公開番号】特開2019-203090(P2019-203090A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】林田 修
(72)【発明者】
【氏名】明田 隆
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−359752(JP,A)
【文献】 特表2016−518461(JP,A)
【文献】 特開2016−079347(JP,A)
【文献】 特開平09−268257(JP,A)
【文献】 特開平06−057043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
C09J 9/00−201/10
C09D 101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合度3,000以上を有し、及び、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)BET法による比表面積50m/g以上を有する補強性シリカ:10〜100質量部、
(C)アクリル酸亜鉛:0.01〜2質量部、及び
(D)有機過酸化物硬化触媒:0.1〜10質量部、
を含有する、シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
さらに(E)成分として、下記式(2)
O[(RSiO2/2 (2)
(式中、Rは互いに独立に、アルキル基又は水素原子であり、Rは互いに独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、及び、mは1〜50の正数である)
で示されるオルガノシランまたはオルガノシロキサンを含む、請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリコーンゴム組成物を硬化して成る硬化物からなるシリコーンゴム部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム組成物及び該組成物の硬化物であるシリコーンゴム部品に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品等様々な分野で広く使用されている。例えば、リモートコントローラ、楽器等のゴム接点として使用されるラバーコンタクト、建築用ガスケット、定着ロール、現像ロール、転写ロール、帯電ロール、給紙ロール等の事務器用ロール、オーディオ装置等の防振ゴム、コンパクトディスク用パッキン、電線被覆材等に使用されている。
【0003】
熱加硫型とよばれるシリコーンゴムの硬化は通常有機過酸化物硬化或いはハイドロジェンシロキサンと白金触媒を用いたいわゆる付加硬化が用いられる。付加硬化型シリコーンゴムは、加硫時間が早い、酸素阻害を受けないなどの優れた特徴を有するが、保存安定性に劣り、さらに硫黄化合物・リン化合物などによる被毒作用を受けやすいので、その使用条件は制約を受ける。一方、有機過酸化物加硫型シリコーンゴムには、その目的や用途によって、それに適合した各種の有機過酸化物が使用されている。しかしながら、熱分解温度が高い有機過酸化物を用いる場合は、加硫時間が長くなってしまうために成形に時間が掛かり、生産性が低下するという問題があった。
【0004】
特許文献1には、有機過酸化物として、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリアルキルヘキサノアートを用い、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを併用することにより、加工成形時間が大幅に短縮され、しかも保存安定性に優れ、スコーチを起こさないという性質を兼ね備えたシリコーンゴム組成物が記載されている。しかし、この方法でも、加工成形時間をある程度短縮できるものの、その効果は十分でなく、金型脱形性を損ねるなどの問題があり実用面ではまだ不十分である。また、特許文献2には、パラメチルベンゾイルペルオキシドなどの比較的低温で分解する有機過酸化物を用いると加硫時間が短縮できることが記載されているが、成型物に過酸化物の分解残渣が酸として残り、耐熱性を損ねてしまう欠点があった。更に特許文献3には特定のリン酸エステルとパーオキシカーボネートの組み合わせで加硫速度を改善することが記載されているが、これも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−27382号公報
【特許文献2】特開平10−182972号公報
【特許文献3】特開2003−292631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加硫速度の改善された有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)重合度3,000以上を有し、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、(B)BET法による比表面積50m/g以上を有する補強性シリカ及び(D)有機過酸化物硬化触媒を含む有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物において(C)アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛を特定量で添加することにより、従来の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物に比較して加硫速度が速くなり、生産性に優れ、尚且つ、物理物性が良好なシリコーンゴム成型物を与えることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、
(A)重合度3,000以上を有し、及び、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)BET法による比表面積50m/g以上を有する補強性シリカ:10〜100質量部、
(C)アクリル酸亜鉛:0.01〜2質量部、及び
(D)有機過酸化物硬化触媒:0.1〜10質量部、
を含有する、シリコーンゴム組成物を提供する。
更に、本発明は、上記シリコーンゴム組成物を硬化して成る硬化物からなるシリコーンゴム部品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物は加硫速度が速く、良好な物理物性を与えるシリコーンゴム成形品を与える。
【0010】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、重合度3,000以上を有し、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンである。該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、上記重合度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、下記平均組成式(1)で表されるものが挙げられる。
SiO(4−a)/2 (1)
(式中、Rは互いに独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.95〜2.05の正数である。ただし、Rのうち2個以上はアルケニル基である)
【0011】
上記平均組成式(1)中、Rは互いに独立に、炭素数1〜12、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは炭素数5〜12、より好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキル基、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基またはシクロアルケニル基、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは6〜10のアリール基、及び、好ましくは炭素数7〜12、より好ましくは8〜10のアラルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基またはシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したトリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基、及び、トリフルオロプロピル基が好ましい。更に詳細には、オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位からなるもの、又はこのジメチルポリシロキサンの主鎖の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、及び、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したもの等が好適である。
【0012】
上記式(1)において、aは1.95〜2.05の正数である。オルガノポリシロキサンの形状は制限されるものでないが直鎖状であるのが好ましい。また、直鎖状であるがゴム弾性を損なわない範囲において分岐していてもよい。
【0013】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に二個以上有する。好ましくはケイ素原子に結合する基のうち、0.005〜10モル%、特に0.005〜8モル%がアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基としては、上述したビニル基、アリル基、及びプロペニル基等があげられ、中でも、ビニル基が好ましい。
【0014】
アルケニル基は、分子鎖末端にあるケイ素原子に結合していても、側鎖として分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよい。少なくとも1の分子鎖末端にあるケイ素原子に結合していることが好ましい。(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、好ましくは、分子鎖両末端にジメチルビニルシリル基、メチルジビニルシリル基、及びトリビニルシリル基等を有するのがよい。
【0015】
(A)オルガノポリシロキサンは重合度3,000以上を有し、好ましくは3,000〜100,000を有し、特に好ましくは4,000〜20,000を有する。重合度が3,000未満であると、得られるシリコーンゴムが十分なゴム強度を有さない。該(A)オルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用してもよいし、分子構造や重合度の異なる2種以上を併用してもよい。
【0016】
なお、本明細書において「重合度」とは平均重合度のことを指し、下記条件にて測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量から求めたものとする。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:1mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:KF−805L×2本(Shodex社製)
カラム温度:25℃
試料注入量:20μL(濃度0.1質量%のトルエン溶液)
【0017】
上記(A)オルガノポリシロキサンは公知の方法、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。
【0018】
[(B)補強性シリカ]
(B)成分は、BET法による比表面積50m/g以上を有する補強性シリカである。該補強性シリカとしては、例えば、煙霧質シリカ、焼成シリカ、及び沈降性シリカ等が例示されるが、これらに制限されるものでない。耐熱性の観点から煙霧質シリカが好ましい。
【0019】
(B)補強性シリカはBET法による比表面積50m/g以上を有し、好ましくは100m/g以上、特に好ましくは100〜400m/gを有する。該BET法による比表面積が上記下限値未満では、得られるシリコーンゴム成形品の機械的強度が不十分となる。
【0020】
該補強性シリカは、必要に応じて、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、及びメチルトリクロロシランなどのクロロシラン類、あるいはヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等のシラザン類等、公知の処理剤で、シリカ表面を疎水化処理したものであってもよい。
【0021】
本発明のシリコーンゴム組成物における該補強性シリカの配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、10〜100質量部、好ましくは20〜70質量部、特に好ましくは30〜60質量部である。上記下限値未満では添加量が少なすぎて、得られるシリコーンゴムに十分な補強効果を与えることができない。また、上記上限値を超えると、シリコーンゴム組成物の加工性が悪くなり、またシリコーンゴムの機械的強度が低下してしまう。
【0022】
[(C)アクリル酸亜鉛]
(C)成分は、アクリル酸亜鉛であり、シリコーンゴムの加硫特性を向上させるために機能する。該アクリル酸亜鉛を後述する(D)有機過酸化物硬化剤と併用することで、シロキサン鎖に新たにアクリル酸由来の架橋点を生成し、組成物全体の架橋点が増すため加硫速度が速くなる。
【0023】
シリコーン組成物中における(C)アクリル酸亜鉛の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜2質量部、好ましくは0.05〜1質量部である。上記下限値未満では、加硫速度を向上させる効果が不十分であり、上記上限値を超えると、シリコーンゴムの強度や伸び等の物理的特性が低下する。
【0024】
[(D)有機過酸化物硬化触媒]
(D)成分は、有機過酸化物硬化触媒である。有機過酸化物は硬化阻害要因が付加硬化系触媒に比べて少ないため、取扱いの面などで好ましい。また、前記(C)成分と併用することでシリコーンゴム組成物の加硫速度を向上する。
【0025】
有機過酸化物としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、及び、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び2,4−ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0026】
(D)有機過酸化物硬化触媒の量は、シリコーンゴム組成物を硬化させるのに十分な量であればよい。詳細には、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部である。
【0027】
[(E)オルガノシラン/シロキサン]
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記(A)〜(D)成分に加え、更に(E)成分として、下記一般式(2)で表されるオルガノシラン又はシロキサンを含有することが好ましい。(E)成分を配合することにより、本発明のシリコーンゴム組成物の作業性、押出特性等が向上する。
O[(RSiO2/2 (2)
(式中、Rは互いに独立に、アルキル基又は水素原子であり、Rは、互いに独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、及びmは1〜50の正数である)
該オルガノシラン又はシロキサンは、分子鎖両末端にアルコキシ基又は水酸基を有している。
【0028】
上記式(2)において、Rは、アルキル基又は水素原子である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。Rは好ましくは、メチル基、エチル基、または水素原子であるのがよい。
【0029】
としては、好ましくは炭素数1〜12の、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12、より好ましくは炭素数6〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは6〜10のアリール基、及び、好ましくは炭素数7〜12、より好ましくは8〜10のアラルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が特に好ましい。
【0030】
上記式(2)において、mは1〜50の正数であり、好ましくは1〜30の正数、特に好ましくは1〜20の正数である。mが上記範囲内であれば、(E)成分を大量に配合しなくとも十分な添加効果が得られる。(E)成分を大量配合することによるゴム物性の低下が発生する恐れがない。
【0031】
(E)成分の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であれば、添加効果が十分に得られ、50質量部以下であれば、得られるシリコーンゴム組成物に粘着性が発生する恐れがない。従って、加工性が低下したり、得られるゴム物性が低下したりする恐れがない。
【0032】
[その他の成分]
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記成分に加え、任意成分として、必要に応じ、白金化合物、酸化鉄やハロゲン化合物のような難燃性付与剤や耐油性向上剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤等のシリコーンゴム組成物における公知の添加剤を添加することができる。
【0033】
本発明のシリコーンゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等公知の混練機で混練することによって得ることができる。また必要により熱処理(加熱下での混練)をしてもよい。詳細には、(A)及び(B)成分を混練し、必要に応じて熱処理してから室温において(C)及び(D)成分を添加し混練する方法が好ましい。熱処理する場合、熱処理温度、時間は特に制限されないが、100〜250℃、特に140〜180℃で30分〜5時間程度行うことが好ましい。
【0034】
本発明のシリコーンゴム組成物を成形する際は、必要とされる用途(成形品)に応じて、適宜成形方法を選択すればよい。詳細には、コンプレッション成形、インジェクション成形、トランスファー成形、常圧熱気加硫、及びスチーム加硫等が挙げられる。硬化条件は特に限定されず、硬化方法や成形品に応じて適宜選択すればよい。一般的には、80〜600℃、特に100〜450℃で、数秒〜数日、特に5秒〜1時間程度で行うことができる。また、必要に応じて2次加硫してもよい。2次加硫は通常180〜250℃で1〜10時間程度で行うことができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1]
主鎖であるジオルガノシロキシ単位が、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%からなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された、重合度4,000を有するオルガノポリシロキサン100質量部、BET法による比表面積200m/gの煙霧質シリカ(アエロジル200(日本アエロジル(株)製))60質量部、及び、両末端にシラノール基を有し、重合度10を有するジメチルポリシロキサン15質量部をニーダーで配合し、150℃で2時間熱処理を行った。得られた混合物にアクリル酸亜鉛を2本ロールで0.2質量部添加し、次いで2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.5質量部を添加し、シリコーンゴム組成物を得た。
【0037】
[実施例2]
主鎖であるジオルガノシロキシ単位が、ジメチルシロキサン単位99.980モル%、及びメチルビニルシロキサン単位0.020モル%からなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された、重合度8,000を有するオルガノポリシロキサン90質量部、ジメチルシロキサン単位90.0モル%、及びメチルビニルシロキサン単位10.0モル%からなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された重合度8,000を有するオルガノポリシロキサン10質量部、BET法による比表面積130m/gの煙霧質シリカ(アエロジル130(日本アエロジル(株)製))40質量部、及び両末端にシラノール基を有し、重合度10を有するジメチルポリシロキサン15質量部をニーダーで配合し、150℃で2時間熱処理を行った。得られた混合物にアクリル酸亜鉛を2本ロールで0.3質量部添加し、次いでパラメチルベンゾイルパーオキサイド0.7質量部を添加し、シリコーンゴム組成物を得た。
【0038】
[加硫速度測定]
上記実施例1及び2で得たシリコーンゴム組成物の加硫速度を、レオメーターMDR2000(アルファテクノロジーズ社製品)を用いて測定した。詳細には、円盤状のステージに各シリコーンゴム組成物を載せ、ねじれ方向のトルク(力)をかけながら、それぞれ実施例1の組成物は170℃/10分で、実施例2の組成物は120℃/10分で、加熱し硬化させ、振れ角1度にて以下の値を測定した。
T10:加硫が10%進行する(即ち、加硫曲線においてトルクが最大トルク値MHの10%に達するまで)のに要した加熱初期からの時間(=加硫開始点)
T90:加硫が90%進行する(即ち、加硫曲線においてトルクが最大トルク値MHの90%に達するまで)のに要した加熱初期からの時間(=最適加硫点)
MH:最大トルクとは、170℃/10分または120℃/10分の条件で、加硫曲線が安定した領域での特定時間における最大トルク値である。本実施例及び比較例での特定時間は10分である。シリコーンゴム組成物の硬化が進むにつれてトルクは上昇し、該最大トルクの時点は一般的に硬化が完了した時点を意味する。
結果を表1に示す。
【0039】
[物理物性評価]
上記実施例1及び2で得たシリコーンゴム組成物を、それぞれ実施例1は1次加硫170℃/10分、2次加硫200℃/2時間、及び実施例2は120℃/10分、2次加硫200℃/2時間の条件でプレス成形して、2mm厚のシリコーンゴム成形品を作製した。該成形品について、JIS K 6249:2003に準拠する方法にて硬さ(デュロメータtypeA)、引張強さ、及び切断時伸びを測定した。結果を表1に示す(即ち、エージング前の初期物理物性)。
【0040】
[比較例1]
アクリル酸亜鉛を添加しなかった以外は実施例1を繰り返し、シリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物について実施例1同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
アクリル酸亜鉛の量を5.0質量部に変更して添加した以外は実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物について実施例1同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例3]
アクリル酸亜鉛の量を0.005質量部に変更して添加した以外は実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物について実施例1同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例4]
実施例2において、パラメチルベンゾイルパーオキサイドを付加型ゴム加硫剤C−25A/C−25B(0.5/2.0質量比)(信越化学工業株式会社製品)に替えた以外は実施例2を繰り返してシリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物を用いて、実施例2同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例5]
比較例4において、アクリル酸亜鉛を添加しない以外は比較例4を繰り返してシリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物について、実施例2同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例6]
アクリル酸亜鉛を添加しなかった以外は実施例2を繰り返し、シリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物について実施例2同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例7]
実施例2においてアクリル酸亜鉛に替えてメタクリル酸亜鉛を0.3質量部添加した他は実施例2を繰り返して、シリコーンゴム組成物を得た。得られたシリコーンゴム組成物について、実施例2同様の方法にて加硫速度および物理物性を測定した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示す通り、アクリル酸亜鉛を添加したシリコーンゴム組成物(実施例1及び2)は、アクリル酸亜鉛を添加していないシリコーンゴム組成物(比較例1及び6)及びアクリル酸亜鉛の量が少なすぎるシリコーンゴム組成物(比較例3)に比べて加硫速度が速く、さらに、得られるシリコーンゴムは、アクリル酸亜鉛を添加していないシリコーンゴムと同等の良好な物理特性を有した(実施例1と比較例1及び3の対比、及び実施例2と比較例6の対比)。当該加硫速度を速める効果は、メタアクリル酸亜鉛を添加したシリコーンゴム組成物(比較例7)より優れたものであった。また、アクリル酸亜鉛の量が多すぎるシリコーンゴム組成物(比較例2)では、加硫速度は改善されるが、物理物性(引張強さ、切断時伸び)が著しく低下した(実施例1と比較例2の対比)。尚、比較例4及び5に示すように、付加硬化性シリコーンゴム組成物ではアクリル酸亜鉛を添加しても加硫速度は速くならない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物は加硫速度が速く、且つ、良好な物理物性を与えるシリコーンゴム成形品を与える。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。