【文献】
The Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol.279, No.49,p.50654-50661
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一本鎖RNAの簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAに、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類され、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結する工程を含む一本鎖RNAの製造方法であって、以下のa)〜g)の特徴を有する製造方法である:
a)前記第1の一本鎖RNAが、5’末端側から順に、X1領域およびZ領域からなる一本鎖RNAであり;
b)前記第2の一本鎖RNAが、5’末端側から順に、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域およびY1領域からなる一本鎖であり;
c)前記X1領域と前記X2領域とが、互いに相補的な、2以上の同数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;
d)前記Y1領域と前記Y2領域とが、互いに相補的な、2以上の同数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;
e)前記Z領域が、任意のヌクレオチド数のヌクレオチド配列を含む領域であり;
f)前記Lyリンカー領域がアミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域であり;
g)前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとの連結により生成する一本鎖RNAが、5’末端側から、前記X2領域、前記Y2領域、前記Lyリンカー領域、前記Y1領域、前記X1領域および前記Z領域からなる連結一本鎖RNAである。
【0006】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Z領域が、5’末端側から順に、Z1領域、Lzリンカー領域及びZ2領域からなる領域であり、前記Lzリンカー領域がアミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域であり、前記Z1領域と前記Z2領域とが、互いに相補的なヌクレオチド配列を含み、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとの連結により生成する一本鎖RNAが、5’末端側から順に、前記X2領域、前記Y2領域、前記Lyリンカー領域、前記Y1領域、前記X1領域および前記Z1領域、前記Lzリンカー領域およびZ2領域からなる連結一本鎖RNAである、製造方法である。
【0007】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Lyリンカー領域が、下記式(I)で表される二価の基である、製造方法である。
【0008】
【化1】
(式中、Y
11及びY
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y
12及びY
22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY
12とY
22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y
11に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y
21に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のY
11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0009】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Lyリンカー領域が、下記式(I)で表される二価の基であり、前記Lzリンカー領域が、下記式(I’)で表される二価の基である、製造方法である。
【0010】
【化2】
(式中、Y
11及びY
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y
12及びY
22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY
12とY
22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y
11に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y
21に結合している末端の酸素原子は、前記Y2領域および前記Y1領域のY
11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0011】
【化3】
(式中、Y’
11及びY’
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y’
12及びY’
22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY’
12とY’
22とがその末端で互いに結合し炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y’
11に結合している末端の酸素原子は、前記Z1領域および前記Z2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y’
21に結合している末端の酸素原子は、前記Z2領域および前記Z1領域のY’
11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0012】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Lyリンカー領域および前記Lzリンカー領域は、それぞれ独立して、下記式(II−A)または(II−B)で表される構造の二価の基である、製造方法である。
【0013】
【化4】
(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1から20の何れかの整数を表す。)
【0014】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記X1領域、前記Y1領域および前記Z領域からなるW1領域、および前記X2領域および前記Y2領域からなるW2領域の少なくとも一方に、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド配列を含む、製造方法である。
【0015】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記RNAリガーゼが、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2、KVP40由来のリガーゼ2、Trypanosoma brucei RNAリガーゼ、Deinococcus radiodurans RNAリガーゼ、またはLeishmania tarentolae RNAリガーゼである、製造方法である。
【0016】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記RNAリガーゼが、配列番号21、22、または23に記載のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるRNAリガーゼである、製造方法である。
【0017】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記RNAリガーゼが、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2またはKVP40由来のRNAリガーゼ2である、製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、一本鎖RNAを簡便に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態にかかる製造方法は、5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAに、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類され、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結する工程を含む一本鎖RNAの製造方法である。本実施形態の製造方法により得られる連結一本鎖RNAは、5’末端側から、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域、Y1領域、X1領域およびZ領域からなる一本鎖RNAである。前記Z領域は、5’末端側から、Z1領域、リンカー領域Lzおよび領域Z2からなっていてもよく、前記連結一本鎖RNAは、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域、Y1領域、X1領域、Z1領域、Lzリンカー領域および領域Z2からなる一本鎖RNAであってもよい。前記連結一本鎖RNAは、Y1領域とX1領域とZ領域(又はZ1領域)とからなるW1領域、および、X2領域とY2領域とからなるW2領域の少なくとも一方に、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制する配列を含んでいてもよい。
【0021】
W1領域およびW2領域のいずれか一方または両者は、同じ標的遺伝子に対する同一の発現抑制配列を2つ以上有してもよいし、同じ標的に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有してもよいし、異なる標的遺伝子に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有してもよい。W1領域が、2つ以上の発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、特に制限されず、X1領域およびY1領域のいずれか一領域または両者でもよいし、両者に架かる領域であってもよい。W2領域が、2つ以上の発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、X2領域およびY2領域のいずれか一領域または両者でもよいし、両者に架かる領域であってもよい。発現抑制配列は、標的遺伝子の所定領域に対して、90%以上の相補性を有していることが好ましく、より好ましくは95%であり、さらに好ましくは98%であり、特に好ましくは100%である。
【0022】
かかる連結一本鎖RNAは、5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAとにリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖とを連結する工程で製造される(
図1乃至4参照)。
【0023】
連結一本鎖RNAは、分子内において相補性のある配列部分が並び、分子内で部分的に二重鎖を形成しうる。連結一本鎖RNA分子は、
図2に示すように、X1領域とX2領域が互いに相補性を有するヌクレオチド配列を含み、さらにY1領域とY2領域が互いに相補性を有するヌクレオチド配列を含み、これらの相補性を有する配列との間で、二重鎖が形成され、LyおよびLzのリンカー領域が、その長さに応じてループ構造をとる。
図2及び
図4は、あくまでも、前記領域の連結順序および二重鎖部を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ、リンカー領域(LyおよびLz)の形状等は、これらに限定されない。
【0024】
Y1領域とX1領域とZ領域(又はZ1領域)とからなるW1領域およびX2領域とY2領域とからなるW2領域の少なくとも一方が、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制する配列を少なくとも一つ含んでいてもよい。連結一本鎖RNAにおいて、W1領域とW2領域とは、完全に相補的でもよいし、1もしくは数ヌクレオチドが非相補的であってもよいが、完全に相補的であることが好ましい。前記1若しくは数個のヌクレオチドは、例えば、1〜3個のヌクレオチド、好ましくは1または2個のヌクレオチドである。Y1領域は、Y2領域の全領域に対して相補的なヌクレオチド配列を有している。Y1領域とY2領域とは、互いに完全に相補的なヌクレオチド配列であり、2以上の同数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。X1領域は、X2領域の全領域に対して相補的なヌクレオチド配列を有している。X1領域とX2領域とは、互いに完全に相補的なヌクレオチド配列であり、2以上の同数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。本実施形態の製造方法では、Z領域は、任意の数のヌクレオチド配列を含む領域であり、必須の配列ではなく、ヌクレオチドの数が0の態様であってもよく、1以上のヌクレオチドを含む態様であってもよい。Z領域は、5’末端からZ1、LzおよびZ2の各領域を連結したものであってもよい。
【0025】
以下に各領域の長さを例示するが、これに限定されない。本明細書において、ヌクレオチド数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、具体例として、「1〜4ヌクレオチド」との記載は、「1ヌクレオチド」、「2ヌクレオチド」、「3ヌクレオチド」、および「4ヌクレオチド」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0026】
連結一本鎖RNA分子において、W2領域のヌクレオチド数(W2n)と、X2領域のヌクレオチド数(X2n)およびY2領域のヌクレオチド数(Y2n)との関係は、例えば、下記式(1)の条件を満たす。W1領域のヌクレオチド数(W1n)と、X1領域のヌクレオチド数(X1n)およびY1領域のヌクレオチド数(Y1n)との関係は、例えば、下記式(2)の条件を満たす。
W2n=X2n+Y2n ・・・(1)
W1n≧X1n+Y1n ・・・(2)
【0027】
連結一本鎖RNA分子において、X1領域のヌクレオチド数(X1n)とY1領域のヌクレオチド数(Y1n)との関係は、特に制限されず、例えば、下記式のいずれかの条件を満たす。
X1n=Y1n ・・・(3)
X1n<Y1n ・・・(4)
X1n>Y1n ・・・(5)
【0028】
本実施形態の方法において、X1領域のヌクレオチド数(X1n)、即ちX2領域のヌクレオチド数(X2n)は、2以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは10以上である。
Y1領域のヌクレオチド数(Y1n)、即ちY2領域のヌクレオチド数(Y2n)は、2以上であり、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。
【0029】
Z1領域は、好ましくは、Z2領域の全領域またはZ2領域の部分領域に対して相補的なヌクレオチド配列を含む。Z1領域とZ2領域とは、1もしくは数ヌクレオチドが非相補的であってもよいが、完全に相補的であることが好ましい。
【0030】
より詳しくは、Z2領域は、Z1領域よりも、1ヌクレオチド以上短いヌクレオチド配列からなることが好ましい。この場合、Z2領域のヌクレオチド配列全体が、Z1領域の任意の部分領域の全てのヌクレオチドと相補的となる。Z2領域の5’末端から3’末端までのヌクレオチド配列は、Z1領域の3’末端のヌクレオチドから始まり5’末端に向かってのヌクレオチド配列と相補性のある配列であることがより好ましい。
【0031】
連結一本鎖RNA分子において、X1領域のヌクレオチド数(X1n)とX2領域の塩基数(X2n)との関係、Y1領域のヌクレオチド数(Y1n)とY2領域のヌクレオチド数(Y2n)との関係、並びにZ1領域のヌクレオチド数(Z1n)とZ2領域のヌクレオチド数(Z2n)との関係は、下記式(6)、(7)および(8)の条件をそれぞれ満たす。
X1n=X2n ・・・(6)
Y1n=Y2n ・・・(7)
Z1n≧Z2n ・・・(8)
【0032】
連結一本鎖RNAの全長(ヌクレオチドの総数)は、特に制限されない。連結一本鎖RNAにおいて、ヌクレオチド数の合計(全長のヌクレオチド数)は、下限が、典型的には、38であり、好ましくは42であり、より好ましくは50であり、さらに好ましくは51であり、特に好ましくは52であり、その上限は、典型的には、300であり、好ましくは200であり、より好ましくは150であり、さらに好ましくは100であり、特に好ましくは80である。連結一本鎖RNAにおいて、リンカー領域(Ly、Lz)を除くヌクレオチド数の合計は、下限が、典型的には、38であり、好ましくは42であり、より好ましくは50であり、さらに好ましくは51であり、特に好ましくは52であり、上限が、典型的には、300であり、好ましくは200であり、より好ましくは150であり、さらに好ましくは100であり、特に好ましくは80である。
【0033】
連結一本鎖RNAにおいて、LyおよびLzのリンカー領域の長さは、特に制限されない。これらのリンカー領域は、例えば、X1領域とX2領域とが二重鎖を形成可能な長さ、あるいはY1領域とY2領域とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。LyおよびLzの各リンカー領域は、アミノ酸から誘導される原子団を有する領域である。これらのリンカー領域(Ly、Lz)は、通常、非ヌクレオチドのリンカー領域である。
【0034】
リンカー領域の主鎖を形成する原子の数は、その上限は、典型的には、100であり、好ましくは80であり、より好ましくは50である。
【0035】
Lyリンカー領域は、例えば、下記式(I)で表される二価の基であり、Lzは、例えば、下記式(I’)で表される二価の基である。
【0036】
【化5】
(式中、Y
11及びY
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y
12及びY
22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY
12とY
22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y
11に結合している末端の酸素原子は、Y1領域およびY2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y
21に結合している末端の酸素原子は、Y1領域およびY2領域のY
11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0037】
【化6】
(式中、Y’
11及びY’
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y’
12及びY’
22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY’
12とY’
22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y’
11に結合している末端の酸素原子は、Z1領域およびZ2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y’
21に結合している末端の酸素原子は、Z1領域およびZ2領域のY’
11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0038】
前記Y
11及びY
21、並びに、Y’
11及びY’
21における炭素数1〜20のアルキレン基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
前記Y
12及びY
22、並びに、Y’
12及びY’
22におけるアミノ基で置換されていてもよいアルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0039】
LyリンカーおよびLzリンカーの好適な例としては、下記式(II-A)または(II-B)で表される構造の二価の基が挙げられる。
【0040】
【化7】
(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1から20の何れかの整数を表す。)
【0041】
nおよびmは、1〜10のいずれかの整数であることが好ましく、1〜5のいずれかの整数であることがより好ましい。
【0042】
好ましい態様において、LyリンカーおよびLzリンカーは、それぞれ独立して、式(II−A)または(II−B)の何れかの二価の基を表す。
【0043】
第1の一本鎖RNAおよび第2の一本鎖RNAの例としては、具体的には、
図5及び
図6に記載したものが例示される。
【0044】
本実施形態の製造方法で実施する連結反応においては、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類されるRNAリガーゼであって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼ(以下、「本RNAリガーゼ」と記すこともある)が使用される。かかるRNAリガーゼとしては、たとえば、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2が例示される。このRNAリガーゼ2は、例えば、(New England BioLabs)から購入できる。さらに、RNAリガーゼとしては、ビブリオファージ(vibriophage)KVP40由来のリガーゼ2、Trypanosoma brucei RNAリガーゼ、Deinococcus radiodurans RNAリガーゼ、若しくはLeishmania tarentolae RNAリガーゼが例示される。かかるRNAリガーゼは、たとえば、非特許文献(Structure and Mechanism of RNA Ligase, Structure, Vol.12, PP.327-339.)に記載の方法で各生物から抽出および精製することで得られたものを用いることもできる。
【0045】
T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2としては、配列番号21に記載のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼも使用可能である。かかるRNAリガーゼ2としては、配列番号21に記載のアミノ酸配列の酵素のほかに、その変異体であるT39A,F65A,F66A(RNA ligase structures reveal the basis for RNA specificity and conformational changes that drive ligation forward, Cell. Vol.127, pp.71-84.参照)などを例示することができる。かかるRNAリガーゼ2は、例えば、前記文献の記載に基づき、ATCC(登録商標) 11303としてATCC(American Type Culture Collection)に寄託されている、Escherichia coli bacteriophage T4を用いる方法やPCR等の方法で得ることが可能である。
【0046】
KVP40由来のRNAリガーゼ2は、非特許文献(Characterization of bacteriophage KVP40 and T4 RNA ligase 2, Virology, vol. 319, PP.141-151.)に記載の方法で取得することができる。具体的には、例えば、以下のような方法で取得できる。すなわち、バクテリオファージKVP40(例えば、寄託番号Go008199としてJGIに寄託されている)から抽出したDNAのうち、オープンリーディングフレーム293を、NdeIおよびBamHIによって制限酵素消化したのちに、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる。得られたDNAをプラスミドベクターpET16b(Novagen)に組み込む。または、当該のDNA配列をPCRによって人工合成することもできる。ここで、DNA配列解析により、所望の変異体を得ることができる。続いて、得られたベクターDNAをE.coli BL21(DE3)に組み込み、0.1mg/mLアンピシリンを含むLB培地中にて培養する。イソプロピル−β−チオガラクトシドを0.5mMになるように添加し、37℃で3時間培養する。その後の操作はすべて4℃で行うことが好ましい。まず、遠心操作により菌体を沈殿させ、沈殿物を−80℃にて保管する。凍った菌体にバッファーA[50mM Tris−HCl(pH7.5),0.2M NaCl,10%スクロース]を加える。そして、リゾチームとTriton X−100を加え、超音波によって菌体を破砕し、目的物を溶出させる。その後、アフィニティクロマトグラフィやサイズ排除クロマトグラフィなどを利用して目的物を単離する。そして、得られた水溶液を遠心ろ過し、溶離液をバッファーに置換することによりリガーゼとして使用することができる。
このようにして、KVP40由来のRNAリガーゼ2を得ることができる。KVP40由来のRNAリガーゼ2としては、配列番号22のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼが使用可能である。
【0047】
Deinococcus radiodurans RNAリガーゼは非特許文献(An RNA Ligase from Deinococcus radiodurans, J Biol Chem., Vol. 279, No.49, PP. 50654-61.)に記載の方法で取得することができる。例えば、ATCC(登録商標)BAA−816としてATCCに寄託されている生物学的な材料から、前記リガーゼを得ることも可能である。Deinococcus radiodurans RNAリガーゼとしては、配列番号23のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを使用可能である。かかるリガーゼとしては、具体的には、配列番号23のアミノ酸配列からなるRNAリガーゼに加えて、配列番号23のRNAリガーゼにおいて、K165AあるいはE278Aの変異を有するアミノ酸配列からなるRNAリガーゼが例示される(An RNA Ligase from Deinococcus radiodurans, J Biol Chem., Vol. 279, No.49, PP. 50654-61.)。
【0048】
Trypanosoma brucei RNAリガーゼは非特許文献(Assiciation of Two Novel Proteins TbMP52 and TbMP48 with the Trypanosoma brucei RNA Editing Complex, Vol.21, No.2, PP.380-389.)に記載の方法で取得することができる。
【0049】
Leishmania tarentolae RNAリガーゼは非特許文献(The Mitochondrial RNA Ligase from Leishmania tarentolae Can Join RNA Molecules Bridged by a Complementary RNA, Vol. 274, No.34, PP.24289-24296)に記載の方法で取得することができる。
【0050】
本RNAリガーゼを用いる本実施形態の製造方法の反応条件は、本RNAリガーゼが機能する条件であれば、特に限定されないが、一つの典型的な例としては、第1の核酸鎖と、第2の核酸鎖と、ATP、塩化マグネシウム、およびDTTを含むTris−HCl緩衝液(pH7.5)と、純水と、を混合し、その混合液に本RNAリガーゼを加え、その後当該リガーゼが機能する温度(例えば37℃)で所定時間(例えば1時間)反応させる条件が挙げられる。
あるいは、本実施形態の製造方法は、非特許文献(Bacteriophage T4 RNA ligase 2 (gp24-1) exemplifies a family of RNA ligases found in all, Proc. Natl. Acad. Sci, 2002, Vol.99, No.20, PP.12709-12714.)に記載の条件に準じて行うこともできる。
【0051】
本RNAリガーゼを用いた第1の一本鎖RNAおよび第2の一本鎖RNAの連結反応で得られた粗生成物は、RNAを沈殿、抽出および精製する方法を用いることで通常、単離することができる。
具体的には、連結反応後の溶液にエタノールやイソプロピルアルコールなどのRNAに対して溶解性の低い溶媒を加えることでRNAを沈殿させる方法や、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(例えば、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール=25/24/1)の混合溶液を連結反応後の溶液に加え、RNAを水層に抽出する方法が採用される。
連結RNAを精製する方法としては、逆相カラムクロマトグラフィーや陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティカラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法が挙げられ、これらの方法を適宜組み合わせて用いて、粗生成物から連結したRNAを単離することができる。
【0052】
第1の一本鎖RNAは、例えば、固相合成法により調製することができる。より具体的には、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(NTS M−4MX−E(日本テクノサービス株式会社製)を用いて調製することができる。ホスホロアミダイト法は、デブロッキング、カップリング、および酸化の3段階を1サイクルとして、望みの塩基配列が得られるまでこのサイクルを繰り返す方法である。各試薬に関して、たとえば、固相担体として多孔質ガラスを使用し、デブロッキング溶液としてジクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、カップリング剤として5−ベンジルメルカプト−1H−テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液として無水酢酸溶液とN−メチルイミダゾール溶液を使用して行うことができる。固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、たとえば、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従って行うことができる。すなわち、アンモニア水溶液とエタノールを加えて塩基部およびリン酸基の脱保護と固相担体からの切り出しを行なったのち、固相担体をろ過し、その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて2’−水酸基の脱保護を行なってRNAを調製することができる。
【0053】
かかる固相合成法で使用するアミダイトとしては、特に制限されず、たとえば、下記構造式(III−a)中の、R
1がターシャリブチルジメチルシリル(TBDMS)基、ビス(2−アセトキシ)メチル(ACE)基、(トリイソプロピルシリロキシ)メチル(TOM)基、(2−シアノエトキシ)エチル(CEE)基、(2−シアノエトキシ)メチル(CEM)基、パラ―トルイルスルホニルエトキシメチル(TEM)基、(2−シアノエトキシ)メトキシメチル(EMM)基などで保護された、TBDMSアミダイト(TBDMS RNA Amidites、商品名、ChemGenes Corporation)、ACEアミダイト、TOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト(Chakhmakhchevaの総説:Protective Groups in the Chemical Synthesis of Oligoribonucleotides、Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 2013, Vol. 39, No. 1, pp. 1-21.)EMMアミダイト(国際公開第2013/027843号に記載)等を使用することもできる。
【0054】
またLyリンカー領域およびLzリンカー領域については、下記構造式(III―bに示されるプロリン骨格を有するアミダイトを国際公開第2012/017919号の実施例A4の方法にて使用することができる。また、下記構造式(III―c)、(III―d)および(III−e)のいずれかで表されるアミダイト(国際公開第2013/103146号の実施例A1〜A3参照)を使用することにより、同様に核酸合成機にて調製することができる。
【0055】
5’末端の5’位のリン酸化には、5’末端のリン酸化用のアミダイトを固相合成にて使用してもよい。5’末端のリン酸化用のアミダイトは市販のアミダイトを使用することができる。また固相合成にて、5’末端の5’位が水酸基若しくは保護された水酸基であるRNA分子を合成しておき、適宜脱保護を行った後に、市販のリン酸化剤にてリン酸化することで5’末端にリン酸基を有する一本鎖RNAを調製することができる。リン酸化剤としては下記構造式(III−f)で示される市販のChemical Phosphorylation Reagent (Glen Research)が知られている(特許文献EP0816368)。
【0057】
式(III−a)において、R
2は保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し、R
1は保護基を示す。
【0063】
第2の一本鎖RNAは、固相合成法、即ちホスホロアミダイト法に基づく核酸合成機を用いて、同様に製造することができる。
【0064】
ヌクレオチドを構成する塩基は、通常は、核酸、典型的にはRNAを構成する天然の塩基であるが、非天然の塩基を場合によっては、使用してもよい。かかる非天然の塩基としては、天然あるいは非天然の塩基の修飾アナログが例示される。
【0065】
塩基の例としては、例えば、アデニンおよびグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシルおよびチミン等のピリミジン塩基等があげられる。塩基は、この他に、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等があげられる。前記塩基は、例えば、2−アミノアデニン、6−メチル化プリン等のアルキル誘導体;2−プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン;5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン;5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル;8−ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化および他の8−置換プリン;5−トリフルオロメチル化および他の5−置換ピリミジン;7−メチルグアニン;5−置換ピリミジン;6−アザピリミジン;N−2、N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む);5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3−デアザ−5−アザシトシン;2−アミノプリン;5−アルキルウラシル;7−アルキルグアニン;5−アルキルシトシン;7−デアザアデニン;N6,N6−ジメチルアデニン;2,6−ジアミノプリン;5−アミノ−アリル−ウラシル;N3−メチルウラシル;置換1,2,4−トリアゾール;2−ピリジノン;5−ニトロインドール;3−ニトロピロール;5−メトキシウラシル;ウラシル−5−オキシ酢酸;5−メトキシカルボニルメチルウラシル;5−メチル−2−チオウラシル;5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル;5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル;3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル;3−メチルシトシン;5−メチルシトシン;N4−アセチルシトシン;2−チオシトシン;N6−メチルアデニン;N6−イソペンチルアデニン;2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン;N−メチルグアニン;O−アルキル化塩基等があげられる。また、プリン塩基およびピリミジン塩基には、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、およびイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0066】
本実施形態の方法で得られる、5’末端側から、X1領域、Y1領域、Ly領域、Y2領域、X2領域およびZ領域からなる一本鎖RNA核酸分子は、その5’末端と3’末端とが未連結であり、線状一本鎖核酸分子ということもできる。かかる一本鎖RNA核酸分子は、例えば、in vivoまたはin vitroにおいて、標的遺伝子の発現抑制に使用でき、RNA干渉により、標的遺伝子の発現抑制のために使用することができる。「標的遺伝子の発現抑制」とは、例えば、標的遺伝子の発現を阻害することを意味する。前記抑制のメカニズムは、特に制限されず、例えば、ダウンレギュレーションまたはサイレンシングでもよい。
標的遺伝子の発現抑制は、例えば、標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、転写産物の活性の減少、標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。翻訳産物としてのタンパク質は、例えば、成熟タンパク質、または、プロセシングもしくは翻訳後修飾を受ける前の前駆体タンパク質等があげられる。
【実施例】
【0067】
以下に、本実施形態による実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
1.第1の一本鎖RNAの合成
実施例1の鎖IのRNAとして、以下に示す一本鎖RNA(表2の配列1;配列番号1)を合成した。前記鎖Iは13塩基長からなり、第1の一本鎖RNAに対応する。
鎖I(配列1):5’−pGUGUACUCUGCUU−3’
【0069】
前記一本鎖RNAは、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M−4MX−E、日本テクノサービス株式会社)を用いて3’側から5’側に向かって合成した。前記合成には、RNAアミダイトとして、国際公開第2013/027843号の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイト、実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイト及び、5’リン酸化はChemical Phosphorylation Reagent(Glen Research)を使用し、固相担体として多孔質ガラスを使用し、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5−ベンジルメルカプト−1H−テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸溶液とN−メチルイミダゾール溶液を使用して行った。固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従った。すなわち、アンモニア水溶液とエタノールを加え、しばらく静置したのちに固相担体をろ過し、その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて水酸基の脱保護を行った。得られたRNAを注射用蒸留水によって用いて所望の濃度となるように溶解した。
【0070】
2.第2の一本鎖RNAの合成
実施例1の鎖IIのRNAとして、以下に示す一本鎖RNA(表2の配列2;配列番号2,3)を合成した。前記鎖IIは36塩基長からなり、第2の一本鎖RNAに対応する。
鎖II(配列2):5’−GCAGAGUACACACAGCAUAUACCKGGUAUAUGCUGU−3’
【0071】
前記一本鎖RNAは、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M−4MX−E、日本テクノサービス株式会社)により合成した。前記合成には、RNAアミダイトとして、国際公開第2013/027843号の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイト及び実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイト、および、国際公開第2012/017919号の実施例A3に記載のリジンアミダイト(Ie)を用いた。固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従った。得られたRNAを注射用蒸留水によって所望の濃度となるように溶解した。
【0072】
3.ライゲーション反応
次に、第1のRNA鎖と第2のRNA鎖のライゲーション反応を、160units/mL T4 RNAリガーゼ2、50mM Tris−HCl(pH7.5)、2mM MgCl
2、1mM DTT、400μM ATPの組成で、反応スケール7.9mLで行った。
【0073】
得られる連結一本鎖RNAを下記に示す(配列15;配列番号17,18)。
5’−GCAGAGUACACACAGCAUAUACCKGGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUU−3’
具体的には、まず、第1のRNA鎖が5.5μM、第2のRNA鎖が5.0μMとなるよう、500mMTris−HCl(pH7.5)、20mM MgCl
2、および10mM DTTを含む4000μMのATP緩衝液(10x緩衝液)790μLおよび注射用蒸留水を含む15mLチューブ内に第1のRNA鎖および第2のRNA鎖を加え、65℃水浴中に10分静置した。その後、T4 RNAリガーゼ2(New England BioLabs製)を上記の組成と反応スケールになるように加え、25℃で24時間インキュベートした。反応後、反応液を下記表1に記載の条件で、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析した。純度90%以上の画分を集めて混合した。その結果、純度90%、総収率11%で目的物を得ることができた。ここで、総収率とは、仕込んだRNA鎖の量に対する、ライゲーション反応後の生成物を精製して得られた一本鎖RNAの量の割合である。前記RNAの量のは、波長260nmの紫外線の吸光度に基づき求められる。吸光度が1を示す場合のRNAの濃度を33μg/mLとして求めた値である。得られた試料を質量分析測定によって測定した結果、計算値と合致していることから、目的物が得られていることが確認できた(測定値:15715.2464、理論値:15715.2075)。
【0074】
【表1】
【0075】
[実施例2]
(Ly,Lzがプロリン誘導体を含む連結一本鎖RNAの合成)
得られる連結一本鎖RNAは下記に示す(配列16;配列番号19,20)。
5’−AGCAGAGUACACACAGCAUAUACCPGGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUUCPG−3’
【0076】
1.第1の一本鎖RNAの合成
実施例2の鎖IのRNAとして、表3に示す鎖I(配列3)の一本鎖RNA(表2の配列3;配列番号4)を合成した。前記鎖Iは16塩基長からなり、第1の一本鎖RNAに対応する。
【0077】
前記一本鎖RNAは、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M−4MX−E、日本テクノサービス株式会社)を用いて合成した。前記合成には、RNAアミダイトとして、国際公開第2013/027843号の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイト及び実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイト、および、国際公開第2012/017919号の実施例A3に記載のプロリンアミダイト(Ib)を用いた。5’リン酸化はChemical Phosphorylation Reagent(Glen Research)を用いた(以下、同様)。固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従った。得られたRNAを、注射用蒸留水を用いて所望の濃度となるように溶解した。
【0078】
2.第2のRNAの合成
実施例2の鎖IIのRNAとして、表3に示す鎖II(配列4)の一本鎖RNA(表2の配列4;配列番号5,6)を合成した。前記鎖IIは37塩基長からなり、第2の一本鎖RNAに対応する。
【0079】
第2の一本鎖RNA鎖の合成は、脱保護以降の操作は第1の一本鎖RNAの合成と同様に行った。
【0080】
3.ライゲーション反応
次に、第1のRNA鎖および第2のRNA鎖のライゲーション反応を、58units/mL T4 RNAリガーゼ2、50mM Tris−HCl(pH7.5)、2mM MgCl
2、1mM DTT、400μM ATPの組成で、反応スケール10mLで行った。
【0081】
具体的には、まず、第1のRNA鎖が4.4μM、第2のRNA鎖が4.0μMとなるよう、500mM Tris−HCl(pH7.5)、20mM MgCl
2および10mM DTTを含む4000μM ATP緩衝液(10x緩衝液)0.96mLおよび注射用蒸留水を加えた溶液に第1のRNA鎖および第2のRNA鎖を加え、65℃水浴中に10分静置した。その後、T4 RNAリガーゼ2(New England BioLabs)を上記の組成と反応スケールになるように加え、25℃で24時間インキュベートした。反応後、反応液を表1に記載の条件を用いて、カラムクロマトグラフィー精製した。得られた画分をHPLCにより分析し、純度90%以上の画分(クロマトグラムにおいて検出されるピークの総面積に対して目的物のピーク面積が占める比率が、90%以上の割合となる画分)を集めて混合した。その結果、純度94%、総収率14%で目的物を得ることができた。また、得られた試料を質量分析測定によって測定した結果、計算値と合致していることから、目的物が得られていることが確認できた(測定値:17025.4858、理論値:17025.4672)。
【0082】
[実施例3〜6]
以下、実施例3−6において、表3に記載の鎖I(第1の一本鎖RNAに対応)および鎖II(第2の一本鎖RNAに対応)をそれぞれ核酸合成機により合成して用いること以外は、実施例2と同様に、T4 RNA リガーゼ2を用いて反応を行い、反応生成物をカラムクロマトグラフィー精製し、得られた画分をHPLCにより分析した。実施例3−6のそれぞれについて、純度90%以上の画分(前記同様の定義)を集めて混合し、純度及び総収率をそれぞれ求めた。その結果を表2にまとめて示す。
【0083】
[参考例1]
実施例2と同じ連結一本鎖RNA(配列16)を合成するために、表3に示す鎖I(配列13)と鎖II(配列14)とを核酸合成機で合成して用いる以外は実施例2と同様の操作にて実施した。このときの鎖II(配列14)におけるY1領域に対応する領域のヌクレオチド数は1個であった。ライゲーション反応後の反応液をHPLCにて分析したところ、鎖Iと鎖IIのピークには変化が見られず、また、連結一本鎖RNAの溶出位置にはピークが検出されなかったことから、連結反応は進行していないことが確認された。
【0084】
【表2】
【0085】
実施例および参考例において使用した鎖Iおよび鎖IIのRNAの配列を表3にまとめて示す。
【0086】
【表3】
【0087】
[実施例7]
第1のRNA鎖および第2のRNA鎖として表3に示す鎖I(配列11)および鎖II(配列12)をそれぞれ用いて、第1のRNA鎖および第2のRNA鎖のライゲーション反応を、58units/mL KVP40 RNAリガーゼ2、50mM Tris−HCl(pH7.0)、2mM MgCl
2、1mM DTT、400μM ATPの組成で、反応スケール15mLで行った。
【0088】
第1のRNA鎖(配列11)が2.6μM、第2のRNA鎖(配列12)が2.4μMとなるよう、500mM Tris−HCl(pH7.0)、20mM MgCl
2および10mM DTTを含む4000μM ATP緩衝液(10x緩衝液)166μLおよび注射用蒸留水からなる溶液に第1のRNA鎖および第2のRNA鎖を加え、37℃水浴中に10分静置した。その後、KVP40 RNAリガーゼ2(プロテイン・エクスプレス)を上記の組成と反応スケールになるように加え、25℃で24時間インキュベートした。反応後、反応液に0.2M エチレンジアミン四酢酸ナトリウム水溶液を1mL加え、65℃水浴中にて10分加熱することにより酵素を失活させた。そのまま表1の条件を使用してHPLCにて分析した。
【0089】
ライゲーション反応後、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAが減少し、リテンションタイムが遅れた新たなピークが観察された。この溶出ピークを質量分析測定によって分子量を確認したところ、連結一本鎖RNAの計算値と合致していたことから、ライゲーション反応により目的の連結一本鎖RNAが生成したことが確認できた。
得られた画分を表1に示す条件でHPLC分析を行ったのち、純度95%以上で得られたものを混合した。その結果、純度98%、総収率16%にて目的物を得ることができた。
【0090】
[比較例1]
比較例として、実施例2で合成した連結一本鎖RNA(配列16)と同じヌクレオチド配列の一本鎖RNAを、以下の通り、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M−4MX−E、日本テクノサービス株式会社)を用いて3’側から5’側に向かって合成した。前記合成には、RNAアミダイトとして、国際公開第2013/027843号の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイト、実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイト及び、5’リン酸化はChemical Phosphorylation Reagent (Glen Research)を使用し、固相担体として多孔質ガラスを使用し、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5−ベンジルメルカプト−1H−テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸溶液とN−メチルイミダゾール溶液を使用して行った。固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従った。すなわち、アンモニア水溶液とエタノールを加え、しばらく静置したのちに固相担体をろ過し、その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて水酸基の脱保護を行った。得られたRNAを、注射用蒸留水を用いて所望の濃度となるように溶解した。
その後、得られたRNAの粗生成体を表1の条件に従ってカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた精製フラクションをそれぞれHPLCによって分析した。そのうち、純度90%以上のフラクションは得られなかった。最も純度の高いフラクションを分析した結果、純度87%、収率5%であった。
【0091】
図5は、実施例1で用いた第1の一本鎖RNA及び第2の一本鎖RNA、並びに前記一本鎖RNAのライゲーション反応によって生成される連結一本鎖RNAを示す。
図6は、実施例2で用いた第1の一本鎖RNA及び第2の一本鎖RNA、並びに前記一本鎖RNAのライゲーション反応によって生成される連結一本鎖RNAを示す。配列1〜16ならびに
図5および
図6中の「A」、「G」、「U」及び「C」のそれぞれの略号は下記に示すリボース環を含むRNAの単位構造を意味する。
【0092】
Aは、下記式で表される。
【0093】
【化14】
【0094】
Gは、下記式で表される。
【0095】
【化15】
【0096】
Cは、下記式で表される。
【0097】
【化16】
【0098】
Uは、下記式で表される。
【0099】
【化17】
【0100】
但し、
図5及び
図6において、RNA鎖の3’側の末端部分のみは、リン酸エステル部分はなく、リボースの3位が水酸基となる。
【0101】
配列1〜16ならびに
図5および
図6中の「P」および「K」の略号は、それぞれが下記に示される構造のアミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域の構造を意味する。
【0102】
Pは、下記の式で表される。
【0103】
【化18】
【0104】
Kは、下記の式で表される。
【0105】
【化19】
【0106】
配列1〜16ならびに
図5および
図6中の「p」の略号はリボース環の5’位がリン酸基〔−O−P(=O)(OH)
2〕であることを意味する。