(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の線状感圧部材が、前記スライドドアの移動方向及び前記戸先ゴムの長手方向に対して交差する並び方向に並び、かつ前記スライドドアの移動方向に重ならないように配置されている、
請求項1に記載の挟み込み検知センサ。
3つの前記線状感圧部材を有し、前記3つの線状感圧部材のうち、1つの線状感圧部材が前記空洞部における前記並び方向の中央部に配置され、他の2つの線状感圧部材が前記1つの線状感圧部材の前記並び方向における一方側及び他方側に配置されている、
請求項2に記載の挟み込み検知センサ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2が左右のスライドドア11,11にそれぞれ取り付けられた鉄道車両1の乗降口10付近を示す説明図である。
図1では、鉄道車両1から駅のプラットフォーム7に降車する乗客8、及び乗客8の携行品9を示している。また、
図1では、乗客8の乗降方向を矢印A
1で示し、スライドドア11,11の閉動作時の移動方向(閉方向)を矢印A
2で示している。
【0013】
スライドドア11,11の移動方向は、鉄道車両1の進行方向と平行である。乗降方向は、鉄道車両1の進行方向に対して垂直で、スライドドア11,11の厚み方向と平行である。それぞれのスライドドア11は、戸板111と、戸板111の窓部111aに嵌め込まれた窓ガラス112とを有している。
【0014】
携行品9は、例えばカード類を収容するパスケース等の本体部材91と、一方の端部が本体部材91に連結された紐状部材92とを有している。紐状部材92の他方の端部は乗客8に把持されている。なお、紐状部材92の他方の端部は、例えば乗客8のベルト等に吊り下げられる場合もある。
【0015】
スライドドア11,11は、車体12に設けられた駆動装置13,13により、車体12の前後方向にスライドして乗降口10を開閉する。駆動装置13,13は、乗降口10の上方に配置され、例えばリニアモータやボールねじ等の直動機構を有して構成されている。また、駆動装置13,13は、制御装置14によって制御される。スライドドア11,11の移動範囲(前進端及び後退端の位置)は、駆動装置13,13に設けられた図略のストッパにより規定される。
【0016】
挟み込み検知センサ2は、互いに向かい合う左右のスライドドア11,11のそれぞれの端部に上下方向に沿って取り付けられており、スライドドア11,11の閉動作時において乗客8又はその携行品9が挟まれたとき、挟み込みを検知する。制御装置14は、挟み込みが発生したことを示す信号を挟み込み検知センサ2から受けると、駆動装置13,13を制御してスライドドア11,11を開動作させる。なお、制御装置14は、挟み込みが発生したことを示す信号を挟み込み検知センサ2から受けたとき、運転手や車掌等の乗員に警報を発するための警報信号を発するようにしてもよい。この場合には、乗員の操作によってスライドドア11,11が開かれる。
【0017】
図2は、挟み込みが発生していない自然状態における挟み込み検知センサ2を示す断面図である。
図2では、挟み込み検知センサ2を乗降方向A
1及び閉方向A
2に対して平行な断面(長手方向直交断面)で示している。また、
図2では、図面上側が鉄道車両1の車室外側(プラットフォーム7側)に、図面下側が車室内側にあたるものとする。
【0018】
挟み込み検知センサ2は、スライドドア11の閉方向の先端部に取り付けられる戸先ゴム3と、複数の線状感圧部材4とを有している。戸先ゴム3は、内部に空洞部30を有しており、この空洞部30に複数の線状感圧部材4が収容されている。本実施の形態では、3つの線状感圧部材4が空洞部30に収容されている。
【0019】
戸板111には、戸先ゴム3を取り付けるための嵌合溝111bが上下方向に沿って形成されている。嵌合溝111bは、互いに対向する一対の突片111c,111c間の開口部111dを通じて閉方向に開放されている。
【0020】
戸先ゴム3は、
図2に示す断面において矩形状の基体部31と、空洞部30よりも閉方向側で3つの線状感圧部材4を覆うカバー部32と、戸板111の嵌合溝111bに嵌合される嵌合部33と、基体部31と嵌合部33とを接続する接続部34とを一体に有している。戸先ゴム3は、例えばウレタンゴム、EPゴム、シリコーンゴム、スチレンブタンジエンゴム、クロロプレンゴム、オレフィン系又はスチレン系の熱可塑性エラストマ、あるいはウレタン樹脂等からなり、押し出し成型によって形成される。
【0021】
基体部31は、戸板111の一対の突片111c,111cの閉方向側に配置され、カバー部32との間に空洞部30を形成する。カバー部32は、乗降方向の中央部において閉方向に突出するアーチ状(半円状)に湾曲しており、両端部が基体部31に連続している。接続部34は、戸板111の開口部111dに配置されている。
【0022】
また、戸先ゴム3は、空洞部30を複数(本実施の形態では3つ)の収容スペース301〜303に仕切る仕切り部35を基体部31とカバー部32との間に有している。以下、3つの収容スペース301〜303を、第1乃至第3の収容スペース301,302,303とする。第1乃至第3の収容スペース301,302,303は、乗降方向に並び、第1の収容スペース301が乗降方向の中央部に形成され、第2の収容スペース302が第1の収容スペース301よりも車室外側に、また第3の収容スペース303が第1の収容スペース301よりも車室内側に、それぞれ形成されている。
【0023】
仕切り部35は、第1の収容スペース301と第2の収容スペース302とを仕切る第1の壁部351、及び第1の収容スペース301と第3の収容スペース303とを仕切る第2の壁部352からなる。第1の壁部351と第2の壁部352とは、互いに平行に、スライドドア11の移動方向に沿って設けられている。また、第1の壁部351及び第2の壁部352は、一方の端部が基体部31に連続し、他方の端部がカバー部32に連続している。これにより、第1乃至第3の収容スペース301,302,303は、仕切り部35によって隙間なく区画されている。3つの線状感圧部材4は、第1乃至第3の収容スペース301,302,303のそれぞれに収容されている。
【0024】
このように、本実施の形態では、戸先ゴム3が、空洞部30に複数の線状感圧部材4をそれぞれ収容する第1乃至第3の収容スペース301,302,303を有し、第1乃至第3の収容スペース301,302,303間の線状感圧部材4の移動が仕切り部35によって規制されている。
【0025】
図1に示す断面において第1の収容スペース301が占める面積のうち、線状感圧部材4が配置されている部分を除く中空空間の面積は、線状感圧部材4が配置された部分の面積よりも大きい。すなわち、第1の収容スペース301における中空空間の割合を空間率とすると、この空間率が50%以上である。これにより、スライドドア11,11の閉動作時に戸先ゴム3が乗客8の身体に衝突したときの衝撃が緩和される。
【0026】
本実施の形態では、第2及び第3の収容スペース302,303についても、空間率が50%以上である。ただし、第2及び第3の収容スペース302,303の空間率は、第1の収容スペースの空間率よりも低い。第1の収容スペースの空間率の望ましい範囲は、50%以上80%以下であり、第2及び第3の収容スペース302,303の空間率の望ましい範囲は、40%以上70%以下である。空間率が低すぎるとクッション性が低下し、空間率が高すぎると線状感圧部材4の位置が適切な範囲に定まらないおそれがあるためである。
【0027】
図3(a)は、線状感圧部材4を示す斜視図である。
図3(b)は、外力が加わらない自然状態における線状感圧部材4の断面図である。
図3(c)は、外力が加わった加圧状態における線状感圧部材4の断面図である。
【0028】
線状感圧部材4は、管状の弾性体であるチューブ41と、チューブ41の内側に互いに離間して配置された複数の導体線42とを有している。より詳細には、チューブ41の内面に2本の導体線42がその一部を露出させて螺旋状に保持されており、空間40がチューブ41の中心部に形成されている。チューブ41は、例えばシリコーンゴムやエチレンプロピレンゴム等の絶縁性のゴム材料からなり、外力が加わることにより変形し、外力がなくなれば直ちに復元する弾性を有している。
【0029】
チューブ41に外力が加わっていない自然状態では、複数の導体線42が空間40を挟んで互いに非接触に保持されている。また、チューブ41に外力が加わると、チューブ41が弾性変形して複数の導体線42同士が接触する。それぞれの導体線42は、複数の金属素線を撚り合わせた金属撚線421が、導電性被覆層422により被覆されている。この構造により、線状感圧部材4は、チューブ41の径方向におけるあらゆる方向からの外力を感圧することが可能である。
【0030】
図4は、線状感圧部材4によってスライドドア11による挟み込みを検知するための電気回路5の一例を示す回路図である。この電気回路5は、線状感圧部材4の2本の導体線42を含んで構成され、電源51と、2本の導体線42の端部同士を接続する接触検知用の抵抗器52と、電源51と直列に接続された電流計53及び電流制限用の抵抗器54とを有している。電流計53は、例えばホールIC等の電流センサ及び増幅器を有し、その検出信号が制御装置14に出力される。
【0031】
上記のように構成された電気回路5において、線状感圧部材4が加圧されて導体線42同士が接触すると、電流計53によって検出される電流が変化する。制御装置14は、電流計53の検出信号の変化によってスライドドア11による挟み込みが発生したことを認識し、駆動装置13を停止又は反転動作させる。
【0032】
なお、
図4では、1本の線状感圧部材4に対応する電気回路5のみを示しているが、本実施の形態では、挟み込み検知センサ2が3本の線状感圧部材4を有しているので、それぞれの線状感圧部材4に対応して電気回路5が設けられており、それぞれの電気回路5の電流計53の検出信号が制御装置14に出力される。制御装置14は、いずれかの線状感圧部材4が加圧されたことを認識したとき、駆動装置13を停止又は反転動作させる。
【0033】
本実施の形態では、スライドドア11の閉動作時の移動方向に対して傾斜した方向から外力が作用した場合でも挟み込みを確実に検知することを可能とするため、複数の線状感圧部材4を乗降方向において互いに異なる位置に配置している。つまり、複数の線状感圧部材4は、スライドドア11,11の移動方向及び戸先ゴム3の長手方向(上下方向)に対して交差する方向に並び、かつスライドドア11の移動方向に重ならないように配置されている。以下、スライドドア11,11の移動方向及び戸先ゴム3の長手方向に対して交差する方向を並び方向という。
【0034】
より具体的には、3つの線状感圧部材4のうち、第1の収容スペース301に収容された1つの線状感圧部材4が空洞部30における並び方向の中央部に配置され、他の2つの線状感圧部材4が、第1の収容スペース301に収容された1つの線状感圧部材4の並び方向における一方側(車室外側)及び他方側(車室内側)に配置されている。一方側に配置された線状感圧部材4は、第2の収容スペース302に収容されており、他方側に配置された線状感圧部材4は、第3の収容スペース303に収容されている。
【0035】
スライドドア11の移動方向に沿ったスライドドア11の幅方向における第1乃至第3の収容スペース301〜303の長さは、線状感圧部材4の直径よりも大きく、第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4は第1の収容スペース301内で、第2の収容スペース302に収容された線状感圧部材4は第2の収容スペース302内で、また第3の収容スペース303に収容された線状感圧部材4は第3の収容スペース303内で、それぞれスライドドア11の幅方向に沿って移動可能である。
【0036】
この戸先ゴム3の構造により、スライドドア11,11の閉動作時に乗客8の身体の一部がスライドドア11,11の間に挟まれても、第1乃至第3の収容スペース301〜303の空間により高められた戸先ゴム3のクッション性により、乗客8が感じる痛みが緩和される。特に、並び方向の中央部に位置する第1の収容スペース301は、第2及び第3の収容スペース302,303よりもスライドドア11の幅方向の長さが長く、カバー部32における閉方向の先端部が乗客8に衝突したときの衝撃が大きく緩和される。本実施の形態では、スライドドア11の幅方向における第1の収容スペース301の長さが線状感圧部材4の直径の2倍以上である。
【0037】
図5は、スライドドア11の閉動作時に、乗客8の身体の一部81に戸先ゴム3のカバー部32における閉方向の先端部が衝突し、第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4が加圧された状態を示している。第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4は、カバー部32と基体部31との間に挟まれ、チューブ41が弾性変形して2本の導体線42同士が接触する。
【0038】
図6は、車室外側に降車した乗客8の携行品9の紐状部材92が左右のスライドドア11,11の間に挟まれ、本体部材91が車室内側に取り残された状態で、鉄道車両1が矢印A
3で示す進行方向に走り出したときの状態を示している。
【0039】
この状態では、左右のスライドドア11,11のうち進行方向後方側にあたるスライドドア11に取り付けられた挟み込み検知センサ2の第2の収容スペース302に収容された線状感圧部材4が加圧され、2本の導体線42同士が接触する。これにより挟み込みが検知される。つまり、本実施の形態に係る挟み込み検知センサ2では、紐状部材92の太さが、左右のスライドドア11,11の間に挟まれただけでは挟み込みが検知されない寸法であっても、
図6に示すようにスライドドア11の閉方向に対して傾斜した方向から外力が作用することで、挟み込みを検知することが可能である。
【0040】
なお、図示は省略しているが、紐状部材92が左右のスライドドア11,11の間に挟まれた状態で鉄道車両1が走り出した際には、戸先ゴム3のカバー部32が車室外側に引っ張られることで、第3の収容スペース303に収容された線状感圧部材4が加圧されて2本の導体線42同士が接触する場合もある。また、第3の収容スペース303に収容された線状感圧部材4は、スライドドア11,11の閉動作中に乗客8が車室内側から車室外側に出ようとして戸先ゴム3にぶつかった場合にも加圧され得る。同様に、第2の収容スペース302に収容された線状感圧部材4は、スライドドア11,11の閉動作中に乗客8が車室外側から車室内側に入ろうとして戸先ゴム3にぶつかった場合にも加圧され得る。
【0041】
鉄道車両1が発車した後に挟み込み検知センサ2によって挟み込みが検知された場合には、警報を受けた運転者の手動操作により、もしくは自動運転の場合には自動的に、鉄道車両1を速やかに停止させてスライドドア11,11が開動作される。
【0042】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、下記(1)〜(3)の作用及び効果を得ることができる。
【0043】
(1)空洞部30が仕切り部35によって第1乃至第3の収容スペース301〜303に区画されているので、戸先ゴム3の空洞部30内における複数の線状感圧部材4の移動を制限し、複数の線状感圧部材4を各方向からの外力を受ける位置にそれぞれ定位させることができる。これにより、スライドドア11の閉動作時の移動方向に対して傾斜した方向から外力が作用した場合でも、挟み込みを検知することが可能となる。
【0044】
(2)複数の線状感圧部材4は、スライドドア11の移動方向には重ならず、並び方向において互いに異なる位置に配置されているので、挟み込み検知センサ2によって圧力を検知可能な角度範囲が拡がる。また、本実施の形態では、発生頻度が高いスライドドア11の閉方向の挟み込みを並び方向の中央部に配置された線状感圧部材4によって検知し、スライドドア11の閉方向に対して傾斜した方向の挟み込みを他の2つの線状感圧部材4によって検知するので、様々な態様の挟み込みを確実に検知することが可能である。
【0045】
(3)第1乃至第3の収容スペース301,302,303は、仕切り部35によって隙間なく区画されているので、戸先ゴム3がどのように変形しても、第1乃至第3の収容スペース301,302,303間を線状感圧部材4が移動してしまうことがなく、複数の線状感圧部材4を適切に配置することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、
図7を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は、第2の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Aを示す断面図である。本実施の形態では、戸先ゴム3の基体部31が、並び方向の中央部で閉方向側(カバー部32側)に突出する半円状の突起311を有している。この突起311は、第1乃至第3の収容スペース301〜303に跨って形成されており、第1の収容スペース301に向かって最も大きく張り出している。
【0047】
この第2の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Aによれば、第1の実施の形態に比較して、第1の収容スペース301の長さが短くなるので、カバー部32の変形量が少なくても第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4の2本の導体線42が接触し、比較的小さな外力であっても挟み込みを検知することが可能となる。また、スライドドア11の閉方向に対して傾斜した方向から外力が加わった場合には、第2の収容スペース302又は第3の収容スペース303に収容された線状感圧部材4が突起311に押し付けられ、2本の導体線42が接触するので、この方向の挟み込みに対しても、比較的小さな外力で挟み込みを検知することが可能となる。
【0048】
[第3の実施の形態]
図8は、第3の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Bを示す断面図である。この検知スイッチ2Bは、第2の実施の形態に係る検知スイッチ2Aと同様に、基体部31に並び方向の中央部で閉方向側に突出する突起311が設けられているが、この突起311の形状が第2の実施の形態とは異なり、台形状に形成されている。突起311は、第1の収容スペース301における頂面から遠ざかるほど並び方向の幅が広くなり、第2及び第3の収容スペース302,303における両側面の間の距離が長くなる。また、挟み込み検知センサ2Bでは、第1の壁部351及び第2の壁部352が、突起311の頂面と両側面との間の角部から、スライドドア11の移動方向に対して互いに離間するように傾斜して延在している。
【0049】
この第3の実施の形態によっても、第2の実施の形態と同様に、比較的小さな外力であっても挟み込みを検知することが可能となる。
【0050】
[第4の実施の形態]
次に、
図9を参照して本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0051】
図9は、第4の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Cを示す断面図である。第1乃至第3の実施の形態では、戸先ゴム3の空洞部30が3つの収容スペースに区画された場合について説明したが、本実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Cでは、空洞部30が2つの収容スペースに区画されている。より詳細には、空洞部30が単一の壁状の仕切り部353によって第1の収容スペース304と第2の収容スペース305とに区画され、第1の収容スペース304及び第2の収容スペース305にそれぞれ1つの線状感圧部材4が収容されている。
【0052】
本実施の形態によっても、スライドドア11の閉動作時の移動方向に対して傾斜した方向から外力が作用する挟み込みを検知することが可能となる。また、線状感圧部材4の本数を削減できるので、第1乃至第3の実施の形態に比較して、低コスト化を図ることが可能となる。
【0053】
[第5の実施の形態]
次に、
図10を参照して本発明の第4の実施の形態について説明する。
図10は、第5の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Dを示す断面図である。第1乃至第4の実施の形態では、第1乃至第3の収容スペース301〜303が仕切り部35によって隙間なく区画された場合について説明したが、本実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Dでは、第1乃至第3の収容スペース301〜303が隙間S
1,S
2を介して連通している。この隙間S
1,S
2の大きさは線状感圧部材4の直径よりも狭く、第1乃至第3の収容スペース301〜303間の線状感圧部材4の移動は、上記の各実施の形態と同様に仕切り部35によって規制されている。
【0054】
この第5の実施の形態によっても、複数の線状感圧部材4を各方向からの外力を受ける位置にそれぞれ定位させることができると共に、戸先ゴム3の押し出し成型に用いられるダイスの構成が単純化され、製造が容易となる。
【0055】
[第6の実施の形態]
次に、
図11を参照して本発明の第6の実施の形態について説明する。
図11は、第6の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Eを示す断面図である。この挟み込み検知センサ2Eは、第5の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Dの戸先ゴム3の基体部31に第2の実施の形態と同様に突起311を設けたものである。
【0056】
この第6の実施の形態によれば、第5の実施の形態の効果に加え、第2の実施の形態と同様に、比較的小さな外力で挟み込みを検知することが可能となる。
【0057】
[第7の実施の形態]
次に、
図12を参照して本発明の第7の実施の形態について説明する。
図12は、第7の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Fを示す断面図である。この挟み込み検知センサ2Fは、戸先ゴム3の基体部31に突起311が設けられると共に、この突起311の先端部に仕切り部35が設けられている。仕切り部35は、カバー部32との対向面が線状感圧部材4の外周面よりも曲率が大きい円弧面からなり、並び方向の両端部に第1及び第2の突角部354,355を有している。第1及び第2の突角部354,355とカバー部32との間には、それぞれ隙間S
3,S
4が形成されている。隙間S
3,S
4の大きさは線状感圧部材4の直径よりも狭く、第1乃至第3の収容スペース301〜303間の線状感圧部材4の移動が規制されている。
【0058】
この第7の実施の形態によれば、突起311によって比較的小さな外力で挟み込みを検知することが可能となると共に、第1乃至第3の収容スペース301〜303が隙間S
3,S
4を介して連通しているため、戸先ゴム3の製造が容易となる。
【0059】
[第8の実施の形態]
次に、
図13を参照して本発明の第8の実施の形態について説明する。
図13は、第8の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Gを示す断面図である。この挟み込み検知センサ2Gは、戸先ゴム3のカバー部32が、第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4に向かって基体部31側に突出する内方突起321を有している。第1の収容スペース301と第2の収容スペース302とを仕切る第1の壁部351、及び第1の収容スペース301と第3の収容スペース303とを仕切る第2の壁部352は、基体部31とカバー部32の内方突起321との間に設けられている。
【0060】
この第8の実施の形態によれば、第1の実施の形態に比較して、カバー部32の変形量が少なくても第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4の2本の導体線42が接触し、比較的小さな外力でもスライドドア11の閉方向の挟み込みを検知することが可能となる。
【0061】
[第9の実施の形態]
次に、
図14を参照して本発明の第9の実施の形態について説明する。第1乃至第8の実施の形態では、左右のスライドドア11,11に同じ構造の挟み込み検知センサを用いること前提として説明したが、本実施の形態では、左右のスライドドア11,11のうち一方のスライドドア11に取り付けられる挟み込み検知センサと、他方のスライドドア11に取り付けられる挟み込み検知センサの構造が異なっている。以下、一方のスライドドア11に取り付けられる挟み込み検知センサを一方側挟み込み検知センサ2Hとし、他方のスライドドア11に取り付けられる挟み込み検知センサを他方側挟み込み検知センサ2Iとして説明する。
【0062】
一方側挟み込み検知センサ2Hは、第8の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Gのカバー部32にさらに外方突起322を設けたものである。外方突起232は、カバー部32の並び方向中央部から他方側挟み込み検知センサ2Iに向かって、空洞部30とは反対側に突出している。
【0063】
他方側挟み込み検知センサ2Iは、第4の実施の形態に係る挟み込み検知センサ2Cを変形したものであり、カバー部32の並び方向中央部に、一方側挟み込み検知センサ2Hの外方突起322が嵌合する嵌合凹部300が凹設されている。嵌合凹部300は、カバー部32から仕切り部353に至る範囲に形成されている。なお、他方側挟み込み検知センサ2Iの戸先ゴム3において空洞部30を第1の収容スペース304と第2の収容スペース305とに区画する仕切り部353の並び方向の厚みは、少なくとも閉方向側の端部において、嵌合凹部300の並び方向の幅よりも厚く形成されている。
【0064】
この第9の実施の形態によれば、左右のスライドドア11,11に乗客8あるいはその携行品9が挟まれたとき、挟み込みによる圧力が一方側挟み込み検知センサ2Hの外方突起322から第1の収容スペース301に収容された線状感圧部材4に伝わりやすくなり、挟み込みを確実に検知することができる。また、一方側挟み込み検知センサ2Hの外方突起322が他方側挟み込み検知センサ2Iの嵌合凹部300に嵌合することにより、鉄道車両1の車内の気密性が向上する他、スライドドア11,11のガタつきも抑制される。
【0065】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0066】
[1]スライドドア(11)の閉動作時における挟み込みを検知する挟み込み検知センサ(2)であって、内部に空洞部(30)を有し、前記スライドドア(11)の閉移動方向(A
2)の先端部に取り付けられる戸先ゴム(3)と、前記空洞部(30)に収容され、複数の導体線(42)を管状の弾性体(チューブ41)の内側に互いに離間して配置してなる複数の線状感圧部材(4)と、を備え、前記戸先ゴム(3)は、前記空洞部(30)に前記複数の線状感圧部材(4)をそれぞれ収容する複数の収容スペース(301〜303)を有し、前記複数の収容スペース(301〜303)間の前記線状感圧部材(4)の移動が仕切り部(35)によって規制されている、挟み込み検知センサ(2,2A〜2G)。
【0067】
[2]前記複数の線状感圧部材(4)が、前記スライドドア(11)の移動方向及び前記戸先ゴム(3)の長手方向に対して交差する並び方向に並び、かつ前記スライドドア(11)の移動方向に重ならないように配置されている、上記[1]に記載の挟み込み検知センサ(2,2A〜2G)。
【0068】
[3]3つの前記線状感圧部材(4)を有し、前記3つの線状感圧部材(4)のうち、1つの線状感圧部材(4)が前記空洞部(30)における前記並び方向の中央部に配置され、他の2つの線状感圧部材(4)が前記1つの線状感圧部材(4)の前記並び方向(A
1)における一方側及び他方側に配置されている、上記[2]に記載の挟み込み検知センサ(2,2A,2B,2D〜2G)。
【0069】
[4]前記戸先ゴム(3)は、前記空洞部(30)よりも前記閉移動方向(A
2)側で前記複数の線状感圧部材(4)を覆うカバー部(32)と、前記カバー部(32)との間に前記空洞部(30)を形成する基体部(31)とを一体に有し、前記カバー部(32)は、前記並び方向の中央部で前記閉移動方向(A
2)に突出するアーチ状に湾曲しており、前記基体部(31)は、前記並び方向の中央部で前記閉移動方向(A
2)に突出する突起(311)を有する、上記[2]又は[3]に記載の挟み込み検知センサ(2A,2B,2E,2F)。
【0070】
[5]前記戸先ゴム(3)は、前記空洞部(30)よりも前記閉移動方向(A
2)側で前記複数の線状感圧部材(4)を覆うカバー部(32)と、前記カバー部(32)との間に前記空洞部(30)を形成する基体部(31)とを一体に有し、前記カバー部(32)は、前記並び方向の中央部で前記閉移動方向(A
2)に突出するアーチ状に湾曲しており、かつ前記1つの線状感圧部材(4)に向かって前記基体部(31)側に突出する内方突起(321)を有する、上記[3]に記載の挟み込み検知センサ(2G)。
【0071】
[6]前記戸先ゴム(3)は、前記空洞部(30)よりも前記閉移動方向(A
2)側で前記複数の線状感圧部材(4)を覆うカバー部(32)と、前記カバー部(32)との間に前記空洞部(30)を形成する基体部(31)とを一体に有し、前記カバー部(32)は、前記並び方向の中央部で前記閉移動方向(A
2)に突出するアーチ状に湾曲しており、かつ前記空洞部(30)側とは反対側に突出する外方突起(322)を有する、上記[3]に記載の挟み込み検知センサ(2H)。
【0072】
[7]前記複数の収容スペース(301〜303)は、前記仕切り部(35)によって隙間なく区画されている、上記[1]乃至[6]に記載の挟み込み検知センサ(2,2A〜2C,2G)。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0074】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、本発明を鉄道車両1の乗降口10を開閉するスライドドア11に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えばプラットフォーム7に設けられて鉄道車両1の停止後に開き、かつ鉄道車両1の発車前に閉まる所謂ホームドアのスライドドアに本発明を適用することも可能である。