(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一分離工程で得られた前記高沸点炭化水素と前記硫化水素吸収剤とを混合する予備混合工程を有し、前記硫化水素除去工程は、前記第一の原料と前記予備混合工程で得られた混合物とを接触させることを特徴とする、請求項4または5に記載の硫化水素除去方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硫化水素除去装置は、硫化水素除去部と混合部とを備える。
本発明の硫化水素除去装置は、例えば、炭化水素の精製装置(精製された炭化水素を製造する装置)として適用できる。特に、LNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)製造装置として好適である。
本発明の硫化水素除去方法は、硫化水素除去工程と混合工程とを有する。
本発明の硫化水素除去方法は、例えば、炭化水素精製方法(精製された炭化水素を製造する方法)として適用できる。特に、LNG製造方法として好適である。
【0012】
[第一の実施形態]
以下、本発明の第一実施形態に係る硫化水素除去装置、及びこの装置を用いた硫化水素除去方法について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明の硫化水素除去装置は、炭化水素(アルカン)及び硫化水素を含有する第一の原料から硫化水素を除去し、精製された炭化水素を目的ガスとして取り出す装置である。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<硫化水素除去装置>
図1は、本発明の第一実施形態に係る硫化水素除去装置の構成を示す系統図である。
図1に示すように、硫化水素除去装置1は、セパレータ12と、第一の分離部20と、硫化水素除去部30と、混合部40と、吸収剤供給源50と、LPG(Liquefied Petroleum Gas、液化石油ガス)タンク60と、配管L1〜L8と、を備えて概略構成されている。
【0014】
原料供給源10の後段にはセパレータ12が備えられ、原料供給源10とセパレータ12とは、配管L1で接続されている。
セパレータ12の後段には第一の分離部20が備えられ、セパレータ12と第一の分離部20とは、配管L1で接続されている。
第一の分離部20の後段には硫化水素除去部30と混合部40とが備えられている。第一の分離部20と硫化水素除去部30とは、配管L2で接続されている。第一の分離部20と混合部40とは、配管L3で接続されている。配管L3にはコンプレッサー90が備えられている。硫化水素除去部30には配管L5が接続されている。硫化水素除去部30の後段には混合部40が備えられ、硫化水素除去部30と混合部40とは、配管L4で接続されている。配管L4には分岐101とポンプ71とが備えられている。
混合部40の後段にはLPGタンク60が備えられ、混合部40とLPGタンク60とは、配管L8で接続されている。配管L6は、分岐101から分岐して、硫化水素除去部30内に備えられた導入部80と接続されている。配管L6にはポンプ70と分岐102とが備えられている。配管L7は、分岐102から分岐して、吸収剤供給源50と接続されている。
【0015】
(原料供給源)
原料供給源10は、炭化水素及び硫化水素を含有する第一の原料を硫化水素除去装置1に供給する供給源(供給部)である。
第一の原料は、炭化水素及び硫化水素を含有していればよく、例えば、採掘された天然ガスや、石油を精製する際に得られる液化石油ガス、石油生産に伴い産出される油田随伴ガス、石炭層から採取可能なコールベッドメタン(CBM)、石炭をコークス炉で乾留したときに得られるコークス炉ガス等が挙げられる。第一の原料には、炭化水素及び硫化水素の他、二酸化炭素、窒素、ヘリウム等のガスが含有されてもよい。
第一の原料は、気体でも液体でもよいし、気体と液体との混合体でもよく、気体と液体と固体との混合体であってもよい。
【0016】
原料供給源10は、第一の原料を供給できればよく、油ガス田の地上設備や、これに接続されるパイプラインや、第一の原料を一時貯留することができるタンクや、移動可能なタンク積載車両等が挙げられる。また、原料供給源10は、LNGプラントや、バイオガスプラント等にも適用可能である。
【0017】
配管L1としては、金属製または樹脂製の配管等が挙げられるが、これらの配管等に限定されるものではない。また、配管L1の材質は、他の配管L2等の材質と同じであってもよく、異なっていてもよい。以下、本明細書における配管の種類、材質については同様とする。
【0018】
(セパレータ)
セパレータ12は、第一の原料に含まれる水分やスラッジ等を除去する装置である。
セパレータ12としては、天然ガスや原油等から水分やスラッジ等を除去する公知の装置が用いられてもよい。セパレータ12としては、例えば、親油性の繊維等でできたコアレッサーや親水性のフィルターを用いて、第一の原料中の水分やスラッジ等を除去する装置が挙げられる。
なお、本実施形態においては、セパレータ12で炭素数5以上の炭化水素がスラッジ等として除去され、第一の分離部20へは、炭素数4以下の炭化水素(メタン、エタン、プロパン、ブタン)等が供給される。
【0019】
(第一の分離部)
第一の分離部20は、第一の原料から、プロパンの沸点以上の沸点を有する高沸点炭化水素(以下、単に「高沸点炭化水素」ともいう)を分離する装置である。ここで、「プロパンの沸点」とは−42℃のことである。また、前記高沸点炭化水素は、プロパン及び炭素数4以上の炭化水素(アルカン)であるが、上記のようにセパレータ12を設けて、炭素数5以上の炭化水素(アルカン)は実質的に除去することが好ましい。すなわち、前記高沸点炭化水素は、主にプロパン又はブタン、あるいはその双方により構成されることが好ましい。
第一の分離部20で、第一の原料から高沸点炭化水素を含有する第二の原料が分離される。
本実施形態では、第一の分離部20で、第一の原料から高沸点炭化水素(プロパン、ブタン等)を含有する第二の原料が分離される。
【0020】
第一の分離部20では、炭化水素の分子量や大きさの違いによって炭化水素を分離することができる分離膜が用いられる。
本実施形態において、分離膜とは、微細な貫通孔等により、気体の種類による透過率に差を備えた構造を有し、ガス透過性を有する透過体をいう。そのメカニズムは、貫通孔と分子の大きさの関係で、透過率を制御するメカニズム、気体の分子量に基づく平均自由工程を利用するメカニズム等が挙げられる。種々のメカニズムに基づき、ゼオライト等のセラミックス、ポリイミドや、セルロース、シリコーン、フッ素系高分子等の有機化合物等の多様な素材が存在する。分離膜を用いた分離装置の形態は、円筒状、中空糸、平板、あるいは、袋状の分離膜を巻いて円筒状にする等の多様な分離膜モジュールとして提供される形態が挙げられる。これらの分離膜は、第一の原料となる天然ガスの価格、製品ガスとなるメタン等の炭化水素ガスの価格等に応じて、選択することができる。
【0021】
第一の分離部20は、第一の原料から第二の原料を分離できれば、分離膜を用いた分離装置に限定されるものではなく、炭化水素を分離するための公知の装置が用いられてもよい。第一の分離部20としては、例えば、スラグキャッチャー、トッパー、ナフサ・スプリッター等の常圧蒸留装置等が挙げられる。
【0022】
(硫化水素除去部)
硫化水素除去部30は、第一の原料を油溶性の硫化水素吸収剤(以下、単に「吸収剤」ともいう)に接触させて硫化水素を除去する装置である。
硫化水素除去部30は、例えば、吸収塔のような反応器で構成され、吸収塔の内部には、吸収剤を供給するための導入部80が備えられる。
硫化水素除去部30は、導入部80から吸収剤を吸収塔の内部に噴霧して、第一の原料と接触させる装置である。
硫化水素除去部30としては、吸収剤を噴霧する装置に限定されず、吸収剤を吸収塔の底部に溜めた液体に、第一の原料をバブリングさせて硫化水素を除去する装置でもよい。
【0023】
油溶性の硫化水素吸収剤としては、長鎖のアルカン骨格の両端部近傍にアルデヒド基を有するジアルデヒドが挙げられる。上記ジアルデヒドとしては、例えば、毒性が低く、耐熱性に優れ、保存安定性を有する1,9−ノナンジアール(1,9-nonanedial)や、2−メチル−1,8−オクタンジアール(2-methyl-1,8-octanedial)等が挙げられる。
吸収剤は、溶液の形で使用することが好ましい。例えば、前記吸収剤として、1,9−ノナンジアールや、2−メチル−1,8−オクタンジアール等を2〜10倍(体積基準)の灯油、ナフサ、低分子量ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)等の溶媒に溶解させたものが好適に用いられる。ここで、灯油とは、引火点が40℃以上で、95容量%留出温度が300℃以下の留分を意味する。なお、引火点とは、JIS K2265に準拠して測定した値を指す。また、ナフサとは、10容量%留出温度が50℃以上で、90容量%留出温度が150℃以下の留分であり、沸点範囲が30〜150℃の留分を含有する留分を意味する。
なお、本明細書において、「油溶性」とは、JIS K2203:2009に規定する1号の灯油に、化合物と灯油を2:8〜8:2の範囲で混合して、相分離しない化合物が有する性質をいうものとする。
【0024】
(混合部)
混合部40は、高沸点炭化水素を含有する第二の原料と、硫化水素吸収済剤とを混合する装置である。
混合部40としては、例えば、バッチ式の混合装置や、インライン型の混合装置等が挙げられる。
【0025】
(吸収剤供給源)
吸収剤供給源50は、硫化水素除去部30に硫化水素吸収剤を供給する供給源である。
吸収剤供給源50は、吸収剤を供給できればよく、例えば、吸収剤を一時貯留することができる備え付けのタンクや、移動可能なタンク積載車両等が挙げられる。
【0026】
(LPGタンク)
LPGタンク60は、吸収済剤と第二の原料との混合物を一時貯留するためのタンクである。
LPGタンク60は、吸収済剤と第二の原料との混合物を一時貯留できればよく、例えば、混合物を一時貯留することができる備え付けのタンクや、移動可能なタンク積載車両等が挙げられる。
【0027】
<硫化水素除去方法>
次に、硫化水素除去装置1を用いた、第一の原料の硫化水素除去方法について説明する。
本実施形態は、硫化水素除去工程と、混合工程とを有し、前記硫化水素除去工程の前段に、第一の原料から高沸点炭化水素を分離する第一分離工程をさらに有する。
【0028】
炭化水素及び硫化水素を含有する第一の原料は、原料供給源10から配管L1を介してセパレータ12へと供給される。
第一の原料中の炭化水素は、メタン、エタンと、プロパンの沸点以上の沸点を有するプロパン、ブタン等の高沸点炭化水素とを含有する。
第一の原料中には、炭化水素及び硫化水素以外にも、水分やスラッジ等が含まれている。
水分やスラッジ等が第一の原料中に含まれていると、純度の高い目的ガスや高品質のLPGを得ることができない。そのため、第一の原料中の水分やスラッジ等の不純物を除去しておくことが好ましい。
第一の原料中の水分やスラッジ等を除去することにより、純度の高い目的ガスや高品質のLPGを得ることができる。
【0029】
セパレータ12で処理された第一の原料は、水分やスラッジ等を除去され、配管L1を介して第一の分離部20へと供給される。
第一の分離部20で、第一の原料から高沸点炭化水素を含有する第二の原料が分離される(第一分離工程)。
本実施形態において、高沸点炭化水素は、プロパン、ブタンであり、室温で気体として分離される。
本明細書において、室温とは、1〜30℃をいう。
【0030】
第一の分離部20で処理された第一の原料は、配管L2を介して硫化水素除去部30へと供給される。硫化水素除去部30へと供給される第一の原料は、高沸点炭化水素が除去されている。したがって、硫化水素除去部30へ供給される第一の原料中の炭化水素(アルカン)は、メタンとエタンである。
分離された第二の原料は、配管L3を介して混合部40へと供給される。
本実施形態において、高沸点炭化水素は室温で気体として分離されるため、高沸点炭化水素は、コンプレッサー90で圧縮されることにより、室温で液体(LPG)として配管L3中を移動して、混合部40へと供給される。
【0031】
吸収剤供給源50から、配管L7、分岐102、配管L6を介して導入部80へと吸収剤を供給する。導入部80に供給された吸収剤は、硫化水素除去部30中の吸収塔中で噴霧され、硫化水素を吸収する吸収操作が行われる(硫化水素除去工程)。噴霧された吸収剤は、硫化水素を吸収して硫化水素吸収済剤(以下、単に「吸収済剤」ともいう)として吸収塔底部で回収され、一部は分岐101からポンプ70で昇圧され、配管L6を循環する。
硫化水素除去部30では、第一の原料を吸収剤と吸収済剤との混合物に接触させることで、第一の原料中の硫化水素が混合物中の吸収剤に移行する。
吸収剤に硫化水素を吸収させた硫化水素吸収済剤は、配管L4中のポンプ71で昇圧された後、配管L4を介して混合部40へと供給される。
【0032】
硫化水素除去部30において、第一の原料は、硫化水素が除去され、目的ガスとして、配管L5に送られる。目的ガスは、必要に応じて、LNG製造工程等で、窒素やヘリウム等の不活性ガス、メタンやエタン等のLNGに分離され製品として出荷される。
硫化水素除去工程における硫化水素除去部30内の温度は、−30〜150℃が好ましく、0〜130℃がより好ましい。硫化水素除去工程における硫化水素除去部30内の圧力は、−0.1〜10MPaが好ましく、0〜1.0MPaがより好ましい。
目的ガス中の硫化水素含有濃度は、100ppm(体積基準)以下が好ましく、30ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、4ppm以下が特に好ましい。目的ガス中の硫化水素含有濃度が100ppm以下であると、漏えい事故等で漏れた目的ガスに暴露されても、嗅覚への影響を抑えられるという利点があり、30ppm以下であると、上記利点に加えて気道刺激や結膜炎等への影響を抑えられるという利点があり、4ppm以下であると、上記利点に加えてガスパイプライン用の原料ガスとして出荷できるという利点がある。
なお、硫化水素含有濃度は、0ppmであることが最も好ましいが、前記上限値以下であれば、上述したような利点が確保できるため、0ppmまで減じる場合の経済性なども考慮して0ppm超であってもよい。
【0033】
混合部40では、配管L3を介して供給された第二の原料と、配管L4を介して供給された吸収済剤とが混合される(混合工程)。吸収剤は油溶性のため、硫化水素を吸収した吸収済剤も油溶性である。このため、吸収済剤と第二の原料中の高沸点炭化水素とは相溶性を有し、吸収済剤と第二の原料とを混合することができる。このとき、吸収済剤と第二の原料とが、ともに液体で混合部40へと供給されることで、両者の相溶性はより向上する。
よって、混合部40において、高沸点炭化水素が加圧液化状態となる条件で、第二の原料と吸収済剤とを混合することが好ましい。また、混合部40において、高沸点炭化水素が室温で液体であることが好ましい。混合部40は、第二の原料と吸収済剤とをより良好に混合するため、攪拌機を備えてもよい。
混合部40では、第二の原料に混合される吸収済剤は、第二の原料の不純物である。このため、第二の原料に混合される吸収済剤の質量は、第二の原料100質量%に対して、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、既存のLPG設備を使用する場合には、0.1質量%以下がさらに好ましい。
吸収剤の溶媒に灯油またはナフサを使用している場合は、第二の原料100質量%に対して吸収済剤の溶媒を100質量%以上にすると、第二の原料の蒸気圧を下げることができる。第二の原料の蒸気圧を下げると、コンプレッサー90、配管L3、配管L8、LPGタンク60等を簡易化できる。このため、吸収済剤の溶媒の質量は、第二の原料100質量%に対して、100質量%以上が好ましい。
【0034】
混合部40で混合された吸収済剤と第二の原料との混合物は、配管L8を介してLPGタンク60へと供給される。
なお、本実施形態においては、セパレータ12で第一の原料から炭素数5以上の炭化水素が除去されるため、第二の原料中の高沸点炭化水素はプロパン又はブタン、あるいはその双方である。このため、混合部40で混合された吸収済剤と第二の原料との混合物は、主成分をプロパン、ブタン等とするLPGとして混合部40へと供給される。
硫化水素を含有する吸収済剤は、大量のLPGで希釈されるため、吸収済剤と第二の原料との混合物中の硫化水素含有濃度を低減することができる。吸収済剤と第二の原料との混合物中の硫化水素含有濃度は、50〜100質量ppmが好ましく、50〜70質量ppmがより好ましい。吸収済剤と第二の原料との混合物中の硫化水素含有濃度が100質量ppm以下であると、LPG出荷規格に適合するため、改めて硫化水素を除去する工程を経ることなくLPG製品として出荷することが可能となる。吸収済剤と第二の原料との混合物中の硫化水素含有濃度が50質量ppm以上であると、本発明による効果がより得られやすい。
【0035】
吸収済剤と第二の原料との混合物は、LPGタンク60で一時貯留された後、タンクローリー等の手段で外部へ搬出することができる。
搬出された吸収済剤と第二の原料との混合物は、別途生産された原油と混合され、既存の石油精製設備が有する水素化脱硫設備にて処理されてもよい。吸収済剤に吸収された硫化水素は、水素化脱硫設備にて分離され、別の設備の硫黄回収装置で単体硫黄として製品化することができる。
【0036】
本実施形態においては、目的ガス中の硫化水素含有濃度を低くすることが可能であるため、本実施形態の硫化水素除去装置は、LNGの製造装置として好適である。
【0037】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る硫化水素除去装置、及びこの装置を用いた硫化水素除去方法について説明する。以下、上述した第一実施形態と異なる部分を中心に
図2を説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る硫化水素除去装置の構成を示す系統図である。
図2に示すように、硫化水素除去装置2は、セパレータ12と、重金属除去部14と、第一の硫化水素除去部32と、第二の硫化水素除去部34と、吸収剤供給源52と、第二の分離部22と、混合部42と、LPGタンク60と、配管L1’〜L8’と、配管L9〜11とを備えて概略構成されている。
【0038】
原料供給源10の後段にはセパレータ12が備えられ、原料供給源10とセパレータ12とは、配管L1’で接続されている。
セパレータ12の後段には重金属除去部14が備えられ、セパレータ12と重金属除去部14とは、配管L1’で接続されている。重金属除去部14の後段には第一の硫化水素除去部32が備えられ、重金属除去部14と第一の硫化水素除去部32とは、配管L1’で接続されている。
第一の硫化水素除去部32の後段には第二の硫化水素除去部34と混合部42とが備えられている。第一の硫化水素除去部32と第二の硫化水素除去部34とは、配管L2’で接続されている。第一の硫化水素除去部32と混合部42とは、配管L3’で接続されている。配管L3’にはポンプ74が備えられている。
第二の硫化水素除去部34の後段には第二の分離部22が備えられ、第二の硫化水素除去部34と第二の分離部22とは、配管L5’で接続されている。第二の分離部22の後段には、混合部42が備えられ、第二の分離部22と混合部42とは、配管L10で接続されている。配管L10には、コンプレッサー92が備えられている。第二の分離部22には、配管L11が接続されている。
配管L9は、配管L3’に備えられた分岐103から分岐して、第一の硫化水素除去部32内に備えられた導入部82と接続されている。配管L9にはポンプ72と分岐104とが備えられている。
配管L4’は、配管L9の分岐104から分岐して、第二の硫化水素除去部34と接続されている。配管L4’には分岐105が備えられている。
配管L6’は、配管L4’の分岐105から分岐して、第二の硫化水素除去部34内に備えられた導入部84と接続されている。配管L6’にはポンプ73と分岐106とが備えられている。
配管L7’は、配管L6’の分岐106から分岐して、吸収剤供給源52と接続されている。
混合部42の後段にはLPGタンク60が備えられ、混合部42とLPGタンク60とは、配管L8’で接続されている。
【0039】
(重金属除去部)
重金属除去部14は、第一の原料から、水銀蒸気等の重金属成分を除去するための装置である。
重金属除去部14としては、特に限定されず、重金属を除去する公知の装置を用いることができる。重金属除去部14としては、例えば、シリカゲルやアルミナ等に金属硫化物を担持した吸着剤や、活性炭に金属硫化物を担持した吸着剤を充填した水銀除去装置等が挙げられる。
【0040】
(第一の硫化水素除去部)
第一の硫化水素除去部32は、上述した第一の実施形態における硫化水素除去部30と同様、第一の原料を油溶性の硫化水素吸収剤に接触させて硫化水素を除去する装置である。
【0041】
(第二の硫化水素除去部)
第二の硫化水素除去部34は、上述した第一の実施形態における硫化水素除去部30と同様、第一の原料を油溶性の硫化水素吸収剤に接触させて硫化水素を除去する装置である。
【0042】
本実施形態においては、上述した第一の実施形態における第一の分離部20を第一の硫化水素除去部32の前段に備えていない。そのため、第一の硫化水素除去部32へと供給される第一の原料には、高沸点炭化水素が含まれる。第一の硫化水素除去部32において、硫化水素とともに高沸点炭化水素の一部が吸収剤に吸収される。このため、第一の硫化水素除去部32は、第一の原料から高沸点炭化水素を分離する第一の分離部としての機能を有する。第二の硫化水素除去部34についても同様である。
第一の硫化水素除去部32と第二の硫化水素除去部34とは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
(第二の分離部)
第二の分離部22は、上述した第一の実施形態における第一の分離部20と同様、第一の原料から、プロパンの沸点以上の沸点を有する高沸点炭化水素を分離する装置である。
第二の分離部22は、上述した第一の実施形態における第一の分離部20と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
(混合部)
混合部42は、上述した第一の実施形態における混合部40と同様、高沸点炭化水素を含有する第二の原料と、硫化水素吸収済剤とを混合する装置である。
混合部42としては、例えば、バッチ式の混合装置や、インライン型の混合装置等が挙げられる。
混合部42は、混合部40と互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
吸収剤供給源52は、上述した第一の実施形態における吸収剤供給源50と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
ポンプ72〜74は、上述した第一の実施形態におけるポンプ70〜71と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
コンプレッサー92は、上述した第一の実施形態におけるコンプレッサー90と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
次に、硫化水素除去装置2を用いた、第一の原料の硫化水素除去方法について説明する。
本実施形態は、硫化水素除去工程と、混合工程とを有し、前記硫化水素除去工程の後段に、前記硫化水素除去工程で処理した第一の原料から、高沸点炭化水素を分離する第二分離工程をさらに有する。
【0047】
第一の原料は、セパレータ12で水分やスラッジ等が除去され、その後、重金属除去部14で水銀蒸気等の重金属が除去される。水分やスラッジ等、重金属が除去された第一の原料は、配管L1’を介して第一の硫化水素除去部32へと供給される。
吸収剤は、吸収剤供給源52から、配管L7’、分岐106、配管L6’を介して導入部82へと供給される。導入部82に供給された吸収剤は、第二の硫化水素除去部34中の吸収塔中で噴霧され、硫化水素を吸収する吸収操作が行われる(硫化水素除去工程)。
噴霧された吸収剤は、硫化水素を吸収して吸収済剤として吸収塔底部で回収され、一部は分岐105からポンプ73で昇圧され、配管L6’を循環する。配管L6’からオーバーフローした吸収済剤は、配管L4’、分岐104、配管L9を介して、導入部84へと供給される。導入部84に供給された吸収済剤は、第一の硫化水素除去部32中の吸収塔中で噴霧され、硫化水素を吸収する吸収操作が行われる。噴霧された吸収済剤は、さらに硫化水素を吸収して吸収塔底部で回収され、一部は分岐103からポンプ72で昇圧され、配管L9を循環する。
さらに硫化水素を吸収させた吸収済剤は、配管L3’中のポンプ74で昇圧され、室温で液体として配管L3’を介して混合部42へと供給される。
【0048】
一方、第一の硫化水素除去部32で硫化水素と高沸点炭化水素の一部が除去された第一の原料は、配管L2’を介して第二の硫化水素除去部34へと供給される。
第二の硫化水素除去部34でさらに硫化水素と高沸点炭化水素の一部が除去された第一の原料は、配管L5’を介して第二の分離部22へと供給される。
第二の分離部22は、供給される第一の原料から硫化水素が除去されている(第二分離工程)。そのため、第二の分離部22で高沸点炭化水素が分離されたガスは、目的ガスとして配管L11を介して外部へと搬出することが可能となる。
【0049】
一方、高沸点炭化水素を含有する第二の原料は、コンプレッサー92で圧縮され、室温で液体として配管L10を介して混合部42へと供給される。
混合部42では、配管L3’から供給される吸収済剤と、配管L10から供給される第二の原料とが混合される(混合工程)。混合部42で混合された吸収済剤と第二の原料との混合物は、硫化水素を含む液体として、配管L8’を介してLPGタンク60へと供給される。
【0050】
本実施形態では、LPGと混合された吸収済剤は、減圧することで容易にLPG成分を除去できる。LPG成分を除去した吸収済剤は、必要に応じて再生プロセスで再生し、吸収剤とすることができる。再生プロセスで除去された硫化水素は、既存の硫化水素処理設備で処理することが可能である。この場合、吸収剤の溶媒(希釈溶剤)は、灯油、トルエン等が好ましい。
本実施形態は、特に小規模で、LPG成分が少ない(例えば濃度1体積%未満)場合に有効で、スラグキャッチャー等の大規模な設備を必要としない点で、効率が良い。
加えて、LPG成分を吸収剤に吸収させて輸送することが可能であるため、設備を簡略化できる。
【0051】
[第三の実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る硫化水素除去装置、及びこの装置を用いた硫化水素除去方法について説明する。以下、上述した第一実施形態、第二実施形態と異なる部分を中心に
図3を説明する。
図3は、本発明の第三実施形態に係る硫化水素除去装置の構成を示す系統図である。
図3に示すように、硫化水素除去装置3は、吸収剤供給源54と、第一の分離部24と、硫化水素除去部36と、重金属除去部14と、水分除去部16と、第二の分離部26と、混合部44と、配管L12〜L24とを備えて概略構成されている。
【0052】
原料供給源10の後段には第一の分離部24が備えられ、原料供給源10と第一の分離部24とは、配管L12で接続されている。第一の分離部24の後段には硫化水素除去部36が備えられ、第一の分離部24と硫化水素除去部36とは、配管L13で接続されている。第一の分離部24の後段には、配管L14が接続されている。
原料供給源18の後段には配管L15が接続され、配管L17に備えられた分岐109と接続されている。配管L15は、分岐107で配管L14と合流し、分岐108で配管L16と合流し、分岐109で配管L17と合流する。
吸収剤供給源54の後段には配管L16が接続され、分岐108で配管L15と合流する。
硫化水素除去部36の後段には重金属除去部14と混合部44とが備えられている。硫化水素除去部36と重金属除去部14とは、配管L18で接続されている。硫化水素除去部36と混合部44とは、配管L19で接続されている。配管L19には分岐110が備えられている。配管L17は、分岐110で分岐し、硫化水素除去部36内に備えられた導入部86と接続されている。配管L17にはポンプ75が備えられている。
重金属除去部14の後段には、水分除去部16が備えられ、重金属除去部14と水分除去部16とは、配管L18で接続されている。水分除去部16の後段には、第二の分離部26が備えられ、水分除去部16と第二の分離部26とは、配管L18で接続されている。第二の分離部26には、配管L20〜L22が接続されている。
第二の分離部26の後段には混合部44が備えられ、第二の分離部26と混合部44とは、配管L23で接続されている。
混合部44の後段には、配管L24が接続されている。
【0053】
(水分除去部)
水分除去部16は、第一の原料から水蒸気等の水分を除去する装置である。
水分除去部16としては、天然ガスや原油等から水分を除去する公知の装置が用いられてもよい。水分除去部16としては、例えば、親水性のフィルターを用いて、第一の原料中の水分を除去する装置が挙げられる。
【0054】
第二の分離部26は、上述した第一の実施形態における第一の分離部20と同様、第一の原料から、プロパンの沸点以上の沸点を有する高沸点炭化水素を分離する装置である。
第二の分離部26は、上述した第一の実施形態における第一の分離部20と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
硫化水素除去部36は、上述した第一の実施形態における硫化水素除去部30と同様、第一の原料を油溶性の硫化水素吸収剤に接触させて硫化水素を除去する装置である。
硫化水素除去部36は、上述した第一の実施形態における硫化水素除去部30と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
混合部44は、上述した第一の実施形態における混合部40と同様、高沸点炭化水素を含有する第二の原料と、硫化水素吸収済剤とを混合する装置である。
混合部44としては、例えば、バッチ式の混合装置や、インライン型の混合装置等が挙げられる。
混合部44は、混合部40と互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
原料供給源18は、上述した第一の実施形態における原料供給源10と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
吸収剤供給源54は、上述した第一の実施形態における吸収剤供給源50と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
ポンプ75は、上述した第一の実施形態におけるポンプ70〜71と、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
次に、硫化水素除去装置3を用いた、第一の原料の硫化水素除去方法について説明する。
本実施形態は、第一の原料中の高沸点炭化水素が比較的多い場合に好適な実施形態である。
本実施形態は、第一分離工程と、硫化水素除去工程と、混合工程とを有し、前記第一分離工程で得られた高沸点炭化水素と硫化水素吸収剤とを混合する予備混合工程をさらに有する。前記硫化水素除去工程は、第一の原料と前記予備混合工程で得られた混合物とを接触させることを特徴とする。
【0059】
第一の原料は、原料供給源10から配管L12を介して第一の分離部24へと供給される。第一の分離部24で、第一の原料から高沸点炭化水素を含有する第二の原料が分離される(第一分離工程)。第一の分離部24は、上述した分離部と同じものであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態では、第一の分離部24は、セパレータ及びスラグキャッチャーを兼ねる。第一の分離部24で分離された第二の原料は、炭素数3〜4のアルカンを含み、炭素数5〜10のアルカンを主成分とする、いわゆるコンデンセートオイルである。コンデンセートオイルとは、天然ガス田より天然ガスの採取、精製を行う過程で得られる常温、常圧で液体の炭化水素のことであり、油田から得られる一般の原油に比べて極めて軽質でナフサに近い性状である。コンデンセートオイルは、配管L14を介して配管L15中に備えられた分岐107で、原料供給源18から供給されたナフサや灯油等と合流する。
【0060】
吸収剤は、吸収剤供給源54から、配管L16を介して、分岐108へと供給され、コンデンセートオイルとナフサや灯油等との混合物と合流する。分岐108では、コンデンセートオイルとナフサや灯油等と吸収剤とが混合され(予備混合工程)、これらの混合物は、配管L15を介して配管L17中に備えられた分岐109へと供給される。配管L17中の混合物は、ポンプ75によって、導入部86へと供給される。導入部86に供給された吸収剤と高沸点炭化水素との混合物は、硫化水素除去部36中の吸収塔中で噴霧され、硫化水素を吸収する吸収操作が行われる(硫化水素除去工程)。噴霧された吸収剤と高沸点炭化水素との混合物は、吸収済剤として吸収塔底部で回収され、一部は分岐110からポンプ75で昇圧され、配管L17を循環する。
【0061】
本実施形態では、導入部86は、硫化水素除去部36に、コンデンセートオイルとナフサや灯油等の高沸点炭化水素と、吸収剤との混合物を導入する。硫化水素除去部36に導入される吸収剤が、既に高沸点炭化水素と混合されている点で、本実施形態の導入部86は、上述した第一実施形態における導入部80並びに第二実施形態における導入部82及び導入部84とは異なる。
【0062】
硫化水素を吸収させた吸収剤と高沸点炭化水素との混合物は、液体の吸収済剤として配管L19を介して混合部44へと供給される。
本実施形態においては、吸収済剤は常温で液体として配管L19内を移動するため、配管L19中にはコンプレッサーは不要となる。
【0063】
一方、硫化水素が除去された第一の原料は、配管L18を介して第二の分離部26へと供給される。第一の原料は、重金属除去部14で水銀蒸気等の重金属が除去され、その後、水分除去部16で水蒸気等の水分が除去される。重金属及び水分が除去された第一の原料は、配管L18を介して第二の分離部26へと供給される。
【0064】
第二の分離部26において、硫化水素、重金属成分、水分が除去された第一の原料は、二酸化炭素等の不活性ガス成分と、LNG成分と、LPG成分と、コンデンセートオイル成分とに分離される。分離された不活性ガス成分は、配管L20を介して外部に排出され、LNG成分は、配管L21を介して製品として出荷される。分離されたLPG成分は配管L22を介して製品として出荷され、コンデンセートオイル成分は、配管L23を介して混合部44へと供給される。
混合部44では、吸収済剤とコンデンセートオイル成分とが混合されて(混合工程)、配管L24を介して外部の石油精製施設等へと供給される。
【0065】
本実施形態では、硫化水素を吸収した吸収済剤が室温でも液体であるため、吸収済剤を輸送する際に、室温でも耐圧容器を必要としないメリットがある。
また、本実施形態では、天然ガスのLNGに代えて、GTL(Gas to Liquids、液体燃料)等その他の液化処理で置き換えることも可能である。
【0066】
本実施形態のLPGは硫化水素を含有するが、第二の原料と吸収済剤とを混合することにより、硫化水素の濃度が薄められ、LPGを製品として出荷することが可能となる。
また、LPGのような耐圧容器で貯蔵し搬送する場合、吸収済剤から遊離した微量の硫化水素を付臭剤として使用することができ、半製品の貯蔵、搬送時のガス漏れチェックが可能となる利点を有する。
【0067】
以上説明したように、本発明の硫化水素除去装置によれば、第一の原料から効率よく硫化水素を除去することができる。その結果、高品質なLNGを得ることができる。加えて、本発明の硫化水素除去装置では、油溶性の硫化水素吸収剤を用いているため、硫化水素を吸収した吸収済剤も油溶性であり、吸収済剤を高沸点炭化水素と混合することにより、LPGを得ることができる。
また、本発明の硫化水素除去装置によれば、硫化水素に限らず、S−H(チオール)結合を有するメルカプタン類(硫化水素と総称して硫化水素類ともいう)も除去することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
例えば、上述した硫化水素除去装置2は、二つの硫化水素除去部を有するが、硫化水素除去部は、三つでもよく、四つ以上でもよい。硫化水素除去部の数が増えると、プラントの規模は大きくなるが、第一の原料に含まれる硫化水素の濃度をより低減することができる。
また、本実施形態では、高沸点炭化水素としてLPGが得られる場合について説明してきたが、LPGと原油を混ぜて、クルードオイルを得て、クルードオイルを出荷する形態としてもよい。