特許第6865538号(P6865538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865538
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20210419BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20210419BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20210419BHJP
【FI】
   A23D9/00 506
   A23L5/10 D
   A23L29/00
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-136653(P2016-136653)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-7572(P2018-7572A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽
(72)【発明者】
【氏名】疋田 久史
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−160794(JP,A)
【文献】 特開平04−365445(JP,A)
【文献】 特開2003−079314(JP,A)
【文献】 特開2003−079315(JP,A)
【文献】 特開2004−254588(JP,A)
【文献】 特開2013−090618(JP,A)
【文献】 特開2011−120543(JP,A)
【文献】 特開平01−218549(JP,A)
【文献】 European Journal of Lipid Science and Technology, 2012, Vol.114, pp.794-800
【文献】 日本油化学会誌, 1996, Vol.45, No.11, pp.29-36
【文献】 油脂化学便 改訂三版,日本油化学協会編,1990, pp,104-106
【文献】 分析化学, 1966, Vol.15, No.11, pp.1298-1303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XXXの含有量が0.6〜1.5質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占める、Xの含有量が3.8〜5.0質量%、飽和脂肪酸の含有量が8.9〜18質量%、OおよびLの含有量が72〜85質量%であり、Lの含有量に対するOの含有量の比(O/L)が1.4〜3.0である、揚げ物用である、油脂組成物。
ただし、X、O、LおよびXXXは、以下を意味する。
O:オレイン酸
L:リノール酸
X:リノレン酸
XXX:グリセロールに3つのXがエステル結合したトリアシルグリセロール
【請求項2】
米ぬか由来の不けん化物を含む油脂組成物であって、
XXXの含有量が0.5〜1.5質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占める、Xの含有量が1.3〜7質量%、飽和脂肪酸の含有量が8〜25質量%、OおよびLの含有量が65〜90質量%であり、Lの含有量に対するOの含有量の比(O/L)が0.9〜3.0である、揚げ物用である、前記油脂組成物。
ただし、X、O、LおよびXXXは、以下を意味する。
O:オレイン酸
L:リノール酸
X:リノレン酸
XXX:グリセロールに3つのXがエステル結合したトリアシルグリセロール
【請求項3】
構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の含有量が8〜20質量%である、請求項に記載の油脂組成物。
【請求項4】
構成脂肪酸として炭素数20以上の高度不飽和脂肪酸を実質的に含有しない、請求項1〜3の何れか1項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
あまに油、えごま油、しそ油およびチアシードオイルから選択される1種以上を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の油脂組成物。
【請求項6】
パーム系油脂を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の油脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の油脂組成物を含む、揚げ物調理された状態にある食品。
【請求項8】
あまに油、えごま油、しそ油およびチアシードオイルから選択される1種以上および構成脂肪酸の全量に占めるOおよびLの含有量が75質量%以上である液体油、を少なくとも使用して、XXXの含有量が0.6〜1.5質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占める、Xの含有量が3.8〜5.0質量%、飽和脂肪酸の含有量が8.9〜18質量%、OおよびLの含有量が72〜85質量%であり、Lの含有量に対するOの含有量の比(O/L)が1.4〜3.0であるように調整する、請求項1、4〜6の何れか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
【請求項9】
米ぬか由来の不けん化物、あまに油、えごま油、しそ油およびチアシードオイルから選択される1種以上および構成脂肪酸の全量に占めるOおよびLの含有量が75質量%以上である液体油、を少なくとも使用して、XXXの含有量が0.5〜1.5質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占める、Xの含有量が1.3〜7質量%、飽和脂肪酸の含有量が8〜25質量%、OおよびLの含有量が65〜90質量%であり、Lの含有量に対するOの含有量の比(O/L)が0.9〜3.0であるように調整する、請求項2〜6の何れか1項に記載の油脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油脂組成物、特に加熱調理に適した油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油脂の主な用途は、揚げ物、炒め物などの加熱調理である。加熱調理の際に生じる臭気の抑制は、家庭用業務用を問わず、作業環境改善の面で求められている。また、消費者の嗜好は、あっさりとした風味が好まれる傾向にある。そのため、加熱調理に使用される油脂は、精製により、雑味が極力取り除かれている。また、近年では、酸化安定性に強く加熱臭の少ない高オレイン酸系の植物油脂が市場に浸透している。
一方で、揚げ物があっさりとした風味であるために、物足りなさを感じる消費者もいる。そのため、程よい風味・コク味が求められているのも事実である。
【0003】
加熱調理に使用する風味・コク味が調整された食用油脂としては、例えば、ラード及び/又は融点20〜40℃の硬化油を添加した加熱調理用油脂(特許文献1)や、微量の酸化した長鎖高度不飽和脂肪酸を含有した植物油脂組成物(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5681号公報
【特許文献2】WO2003/094633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の加熱調理用油脂は、水素添加臭を特徴とするので、獣肉類のフライ物には比較的風味が合うが、葉物や海産物の揚げ物には風味が合わない。また、特許文献2の植物油脂組成物は、海産物の揚げ物には比較的風味が合うが、獣肉類のフライ物には風味が合わない。したがって、加熱調理の対象を問わずに適用できる、あっさりとした風味の中にも、程よい風味・コク味がある加熱調理食品が得られる、油脂組成物が求められている。
【0006】
本発明の課題は、あっさりとした風味の中にも、程よい風味・コク味がある加熱調理食品が得られる、油脂組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、構成脂肪酸中に少量のリノレン酸(X)を有し、かつ、極少量のXXXを含有する油脂組成物を使用して加熱調理することにより、あっさりとした風味の中にも、程よい風味・コク味がある加熱調理食品が得られることを見出した。これにより、本発明は完成された。
【0008】
すなわち本発明は以下のようなものを提供する。
[1]XXXの含有量が0.3〜3質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占めるXの含有量が10質量%未満である、油脂組成物。
ただし、XおよびXXXは、以下を意味する。
X:リノレン酸
XXX:グリセロールに3つのXがエステル結合したトリアシルグリセロール
[2]構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の含有量が25質量%以下である、[1]の油脂組成物。
[3]構成脂肪酸全量に占めるOおよびLの含有量が65〜90質量%である、[1]または[2]の油脂組成物。
ただし、OおよびLは、以下を意味する。
O:オレイン酸
L:リノール酸
[4]構成脂肪酸として炭素数20以上の高度不飽和脂肪酸を実質的に含有しない、[1]〜[3]の何れか1つの油脂組成物。
[5]あまに油、えごま油、しそ油およびチアシードオイルから選択される1種以上を含む、[1]〜[4]の何れか1つの油脂組成物。
[6]パーム系油脂を含む、[1]〜[5]の何れか1つの油脂組成物。
[7]米ぬか由来の不けん化物を含む、[1]〜[6]の何れか1つの油脂組成物。
[8]加熱調理用である、[1]〜[7]の何れか1つの油脂組成物。
[9][1]〜[7]の何れか1つの油脂組成物を含む、加熱調理された状態にある食品。
[10]あまに油、えごま油、しそ油およびチアシードオイルから選択される1種以上を使用して、XXXの含有量が0.3〜3質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占めるXの含有量が10質量%未満であるように調整する、[1]〜[8]の何れか1つの油脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱調理に適した油脂組成物が提供できる。また、該油脂組成物を使用した、あっさりとした風味の中にも、程よい風味・コク味がある加熱調理食品が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の油脂組成物は、XXXの含有量が0.3〜3質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占めるXの含有量が10質量%未満である。ここで、Xはリノレン酸であり、XXXはグリセロールに3つのXがエステル結合したトリアシルグリセロールである。Xは、好ましくはα−リノレン酸であり、XXXは、好ましくはトリリノレニンである。XXXの含有量は、好ましくは0.4〜2.0質量%であり、より好ましくは、0.5〜1.7質量%であり、さらに好ましくは0.6〜1.5質量%である。また、構成脂肪酸全量に占めるXの含有量は、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは0.5〜5.0質量%であり、さらに好ましくは、1.3〜4.0質量%である。油脂組成物に占めるXXXの含有量、および、構成脂肪酸全量に占めるXの含有量が上記範囲内にあると、加熱調理した食品に程よい風味・コク味が付与できる。
【0011】
上記XXXは、合成されても構わない。しかし、好ましくは、あまに油、えごま油、しそ油およびチアシードオイルなどのXを豊富に含む油脂(以下、X油脂とも表す)から供給される。X油脂は1種または2種以上が使用されてもよい。X油脂は、油脂組成物中に、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜6.0質量%、さらに好ましくは2〜5.5質量%、最も好ましくは2〜5.0質量%含まれる。XXX含有量は、Journal of Oleo Science, 60(9) 451-456 (2011)など、従来公知の方法に従って測定できる。
【0012】
本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは8〜20質量%であり、さらに好ましくは、12.0〜18質量%である。ここで、飽和脂肪酸は、炭素数が14〜22の直鎖の脂肪酸である。本発明の油脂組成物は、また、好ましくは、構成脂肪酸として炭素数12以下の脂肪酸を実質的に含有しない。ここで、実質的に含有しないとは、構成脂肪酸全量に占める含有量が5質量%以下のことであり、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜1質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%のことである。本発明の油脂組成物の構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の含有量が、上記範囲内にあると、加熱調理した食品に、適度な風味・コク味を付与しやすい。
【0013】
本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の含有量を調整するために、パーム系油脂を含んでもよい。本発明の油脂組成物に占めるパーム系油脂の含有量は、好ましくは8〜33質量%であり、より好ましくは10〜25質量%であり、さらに好ましくは12〜20質量%である。ここでパーム系油脂とは、パーム油由来の油脂である。具体的には、パーム油、パーム油の分別油及びそれらの加工油(硬化、エステル交換及び分別のうち1以上の処理がなされたもの)が例示できる。より具体的には、1段分別油であるパームオレインおよびパームステアリン、パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)およびパームミッドフラクション、パームステアリンの2段分別油であるパームオレイン(ソフトパーム)およびパームステアリン(ハードステアリン)などが例示できる。また、それらの1種以上とパーム系油脂以外の油脂との混合油脂のエステル交換油脂や硬化油の場合、原料油脂(混合油脂)に占めるパーム系油脂割合に応じた量をパーム系油脂の量として扱う。
【0014】
本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全量に占めるOおよびLの含有量が65〜90質量%である。ここで、Oはオレイン酸であり、Lはリノール酸である。構成脂肪酸全量に占めるOおよびLの含有量は、好ましくは70〜85質量%であり、より好ましくは72〜83質量%である。また、OとLは、Lの含有量に対するOの含有量の比(O/L)が、好ましくは0.9〜10.0であり、より好ましくは1.1〜6.0であり、さらに好ましくは1.3〜3.0であり、最も好ましくは1.4〜2.2である。本発明の油脂組成物の構成脂肪酸全量に占めるOおよびLの含有量が、上記範囲内にあると、加熱調理した食品に、適度な風味・コク味を付与しやすい。
【0015】
本発明の油脂組成物は、構成脂肪酸全量に占めるOおよびLの含有量を調整するために、構成脂肪酸全量に占めるOおよびLの含有量が75質量%以上である液体油を含んでもよい。本発明の油脂組成物に占める液体油の含有量は、好ましくは57〜99質量%であり、より好ましくは、69〜91質量%であり、さらに好ましくは、75〜86質量%である。上記液体油としては、例として、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、高オレイン酸大豆油、コーン油、綿実油、紅花油、高オレイン酸紅花油、オリーブ油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、米油、胡麻油、ぶどう油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、椿油、茶油などが挙げられる。本発明の好ましい実施の態様によれば、液体油は、構成脂肪酸全量に占めるオレイン酸の含有量が56質量%以上である液体油と、構成脂肪酸全量に占めるリノール酸の含有量が45質量%以上である液体油が、併用される。
【0016】
本発明の油脂組成物は、好ましくは、構成脂肪酸として炭素数20以上の高度不飽和脂肪酸を実質的に含有しない。ここで、高度不飽和脂肪酸とは、一分子に二重結合を3つ以上有する脂肪酸である。ここで、実質的に含有しないとは、構成脂肪酸全量に占める含有量が5質量%以下のことであり、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜1質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%のことである。本発明の油脂組成物の構成脂肪酸が、炭素数20以上の高度不飽和脂肪酸を実質的に含有しないと、加熱調理した食品に、適度な風味・コク味を付与しやすい。
なお、油脂組成物の構成脂肪酸は、例えば、AOCS Official Method Ce 1f−96(GLC法)に準じて測定できる。
【0017】
本発明の油脂組成物は、米ぬか由来の不けん化物を含んでもよい。米ぬか由来の不けん化物は、米ぬかから抽出された米ぬか油(米ぬか粗油)を精製する際に副生する、ソーダ油滓や脱臭スカムから得られる不けん化物の濃縮物である。米ぬか由来の不けん化物の製造方法は、特に制限されない。米ぬか由来の不けん化物は、アルカリ脱酸工程で副生するソーダ油滓または脱臭工程で副生する脱臭スカムから、例えば、溶剤抽出、クロマト分離、蒸溜、その他の方法により回収される。より具体的には、米ぬか由来の不けん化物は、アルカリ液により更にけん化されたソーダ油滓から、溶剤により抽出できる。また、米ぬか由来の不けん化物は、アルカリ脱酸により遊離脂肪酸が除去された脱臭スカムから、溶剤により抽出できる。溶剤は、ヘキサン、アセトン、及びエタノールから選ばれる1種以上を使用してもよい。溶剤は、好ましくはヘキサンである。溶剤抽出され、脱溶剤された米ぬか由来の不けん化物は、脱色・脱臭等により精製されてもよい。米ぬか由来の不けん化物は、好ましくは、脱臭スカムを原料として得られる。なお、脱ガム油滓から得られるレシチンは、米ぬか由来の不けん化物には含まれない。
【0018】
上記米ぬか由来の不けん化物は、ステロール類を合計で、好ましくは20質量%以上含有し、より好ましくは25〜50質量%含有する。上記ステロール類は、コレステロールまたはコレスタノールに類似した化合物の総称である。具体例としては、β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール等のステロール、シクロアルテノール、24−メチレンシクロアルタノール等のトリテルペンアルコール、及びそれらの脂肪酸エステルが挙げられる。しかし、その成分および含有量は限定されない。米ぬか由来の不けん化物は、また、トコフェロール類及びトコトリエノール類を合計で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは4〜8質量%含有してもよい。トコフェロール類は、α−、β−、γ−、δ−の各トコフェロールの総称であり、トコトリエノール類は、α−、β−、γ−、δ−の各トコトリエノールの総称である。米ぬか由来の不けん化物は、また、γ−オリザノールを、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上含有してもよい。
【0019】
本発明の油脂組成物は、上記米ぬか由来の不けん化物を、好ましくは0.001〜0.1質量%含有してもよい。本発明の油脂組成物は、米ぬか由来の不けん化物を、風味がほとんど感じられない程度に極微量含有することで、加熱調理した食品に、さらに程よい風味・コク味が付与できる。本発明の油脂組成物における米ぬか由来の不けん化物の含有量は、好ましくは0.006〜0.06質量%であり、より好ましくは0.01〜0.04質量%である。
【0020】
本発明の油脂組成物は、本発明の構成および特徴を損なわない限りにおいて、必要に応じて通常の食用油脂に用いられる添加剤を適宜使用できる。添加剤の使用は、保存安定性向上、酸化安定性向上、熱安定性向上、低温下での結晶析出抑制などを目的とする。添加剤は、具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ビタミンE、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、オリザノール、ジグリセリド、シリコーン、トコフェロール、レシチン、着色料、および香料などが挙げられる。添加剤の使用量は、油脂組成物100質量%に対して、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0021】
本発明の油脂組成物は、XXXの含有量が0.3〜3質量%であり、かつ、構成脂肪酸全量に占めるXの含有量が10質量%未満となるように調製すればよく、その製造方法は特に制限されない。例えば、上記の、X油脂と液体油を適宜混合して調製してもよいし、上記の、X油脂、パーム系油脂および液体油を適宜混合して調製してもよい。必要に応じて、米ぬか由来の不けん化物を混合してもよい。混合は、必要に応じて、油脂が透明になる温度まで加温して行ってもよい。
【0022】
本発明の油脂組成物を加熱調理に使用すると、あっさりとした風味の中にも、程よい風味・コク味がある加熱調理食品が得られる。本発明の油脂組成物は、例えば、素揚げ、から揚げ、フライ、フリッター、天ぷらなどの揚げ物、および炒め物などの加熱調理に好適に使用できる。本発明の油脂組成物は、また、食材の表面にコーティングしてオーブンなどで輻射乃至対流加熱する加熱調理に好適に使用できる。
【0023】
本発明の油脂組成物を加熱調理に使用した、本発明の油脂組成物を含む食品は、具体例として、素揚げ、から揚げ、竜田揚げ、カツ、コロッケ、フライ、ナゲット、フリッター、天ぷら、ドーナツ、せんべい、あられ、かりんとう、パン、ケーキ、ビスケット、クラッカー、クッキー、プレッツェル、コーンチップス、コーンパフ、コーンフレークス、ポップコーン、ポテトチップス、ナッツ、バターピーナツ、およびスナック菓子などが挙げられる。
【0024】
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明について詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されない。
【実施例】
【0025】
実施に際しては、以下の素材が使用された。
(X油脂)
あまに油(日清オイリオグループ(株)社内製、X(α−リノレン酸)含有量58.4質量%、XXX含有量22.0質量%)
【0026】
(液体油)
菜種油(商品名:日清キャノーラ油、日清オイリオグループ(株)製、オレイン酸含有量61.8質量%、リノール酸含有量19.9質量%、α−リノレン酸含有量8.2質量%)
高オレイン酸菜種油(商品名:日清キャノーラ油ヘルシーライト、日清オイリオグループ(株)製、オレイン酸含有量73.4質量%、リノール酸含有量15.0質量%、α−リノレン酸含有量2.1質量%)
コーン油(商品名:日清コーン油、日清オイリオグループ(株)製、オレイン酸含有量29.0質量%、リノール酸含有量54.7質量%、α−リノレン酸含有量1.2質量%)
【0027】
(パーム系油脂)
パームスーパーオレイン(日清オイリオグループ(株)社内製、飽和脂肪酸含有量37.4質量%)
【0028】
(米ぬか由来の不けん化物)
不けん化物A(商品名:ライステロールエステル、築野食品工業(株)製、ステロール類含有量80質量%以上、トコフェロール類及びトコトリエノール類含有量0.03質量%)
不けん化物B(商品名:ライストリエノール、築野食品工業(株)製、ステロール類含有量32.7質量%、トコフェロール類及びトコトリエノール類含有量6.9質量%)
不けん化物C(商品名:米胚芽油ガンマ30N、築野食品工業(株)製、γ−オリザノール含有量30質量%)
【0029】
<油脂組成物の評価1>
比較例1〜6および実施例1〜6の油脂組成物は、表1、2の配合に従って調製された。比較例1〜6および実施例1〜6の各油脂組成物をフライ油として、フライドチキンが揚げられた。フライドチキンの風味評価(あっさり感、コク味)が、10名の専門パネラーにより、以下の方法に基づいて行われた。結果は、表1、2に示される。
【0030】
(風味評価方法)
各パネラーが以下の評価基準に従って、評点した。各パネラーの評点の平均値が算出され、平均値により、×、△、○、◎及び◎◎で最終評価された。

評価基準(あっさり感)
非常にあっさりとしている 5点
あっさりとしている 4点
ふつう 3点
くどさ・重さが感じられる 2点
非常にくどさ・重さが感じられる 1点

評価基準(コク味)
コク味がよく感じられる 5点
じわりとコク味が感じられる 4点
ふつう 3点
ややコク味が弱い 2点
異味・異臭が感じられる 1点

最終評価
◎◎ 評価点の平均値が4.4点以上5点以下
◎ 評価点の平均値が3.7点以上4.4点未満
○ 評価点の平均値が3点以上3.7点未満
△ 評価点の平均値が2点以上3点未満
× 評価点の平均値が1点以上2点未満
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】