(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップ(iv)が、前記複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子のブロックを、前記複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子の個々の粒子にほぐすステップをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
ステップ(iii)において、前記複数の吸水性ポリマー含水粒子に吸水させ、前記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する、請求項1又は2に記載の製造方法。
ステップ(iii)において、前記複数の吸水性ポリマー含水粒子を乾燥することにより、複数の吸水性ポリマー粒子を形成し、次いで、前記複数の吸水性ポリマー粒子に規定量の水を吸収させ、前記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する、請求項1又は2に記載の製造方法。
前記ラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤であり、前記複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成するステップにおいて、前記複数の液滴に光を照射することにより、前記複数の液滴内の前記重合組成物を光重合させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
(i)エチレン系不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤及び水を含む重合組成物を、複数の液滴として、疎水性溶媒に放出するステップ、
(ii)上記疎水性溶媒内で、上記複数の液滴内の上記重合組成物を重合させ、上記複数の液滴から、複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成するステップ、
(iii)上記複数の吸水性ポリマー含水粒子から、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成するステップ、そして
(iv)上記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を凍結乾燥し、上記複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子を形成するステップ、
を含み、
上記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子が、60mN以上のゲル強度を有する、
ことを特徴とする、上記製造方法。
【0012】
上記製造方法では、ステップ(iii)において形成される複数の凍結乾燥前粒子が所定のゲル強度を有し、ゲル強度に優れるため、ステップ(iv)において形成される、複数の凍結乾燥後粒子が、ゲルブロッキング等により一体化しにくく、一体化した凍結乾燥後粒子を粉砕工程が不要となる。従って、上記製造方法は、製造効率に優れる。
【0013】
[態様2]
ステップ(iv)が、上記複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子のブロックを、上記複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子の個々の粒子にほぐすステップをさらに含む、態様1に記載の製造方法。
【0014】
上記製造方法では、ステップ(iv)において、複数の凍結乾燥後粒子のブロックを、それらの個々の粒子にほぐすステップを含むので、複数の凍結乾燥後粒子が、それらのブロックを含みにくく、ひいては、上記製造方法において、粒度分布の狭い、複数の凍結乾燥後粒子を製造することができる。
【0015】
[態様3]
ステップ(iii)において、上記複数の吸水性ポリマー含水粒子に吸水させ、上記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する、態様1又は2に記載の製造方法。
【0016】
上記製造方法では、ステップ(iii)において、複数の吸水性ポリマー含水粒子に直接吸水させ、複数の凍結乾燥前粒子を形成するので、一度、複数の吸水性ポリマー粒子を形成し、次いで、複数の吸水性ポリマー粒子に吸水させる場合と比較して、製造効率に優れる。
【0017】
[態様4]
ステップ(iii)において、上記複数の吸水性ポリマー含水粒子を乾燥することにより、複数の吸水性ポリマー粒子を形成し、次いで、上記複数の吸水性ポリマー粒子に吸水させ、上記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する、態様1又は2に記載の製造方法。
【0018】
上記製造方法では、ステップ(iii)において、複数の吸水性ポリマー粒子を形成し、次いで、複数の凍結乾燥前粒子を形成するので、複数の凍結乾燥前粒子の吸水度の制御がしやすくなり、ひいては、複数の凍結乾燥後粒子の特性、例えば、多孔性度を制御しやすくなる。
【0019】
[態様5]
上記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子が、10〜100倍の含水倍率(質量比)を有する、態様1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【0020】
上記製造方法では、ステップ(iii)において、複数の凍結乾燥前粒子の吸水度を所定の範囲に調整するので、ステップ(iv)において形成される凍結乾燥後粒子が、その性能に優れる。
【0021】
[態様6]
上記複数の吸水性ポリマー含水粒子が、水分率1質量%以下に乾燥させた場合に、0.01〜0.20の粒径の変動係数を有する、態様1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【0022】
上記製造方法では、複数の吸水性ポリマー含水粒子が、所定の水分率まで乾燥させた場合に所定の粒径の変動係数を有するので、複数の吸水性ポリマー含水粒子が同様の粒径の変動係数を有しやすく、そしてステップ(iv)における凍結乾燥前粒子が、同様の粒径の変動係数を有しやすくなる。その結果、ステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士の接点が少なくなり、複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
また、上記製造方法では、複数の吸水性ポリマー含水粒子が、所定の水分率まで乾燥させた場合に所定の粒径の変動係数を有するので、ステップ(iii)における吸水時間と、ステップ(iv)における凍結乾燥時間とを短縮化することができる。
【0023】
[態様7]
上記複数の吸水性ポリマー含水粒子が、水分率1質量%以下に乾燥させた場合に、0.90〜0.99の平均真球度を有する、態様1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【0024】
上記製造方法では、複数の吸水性ポリマー粒子が、所定の水分率まで乾燥させた場合に所定の平均真球度を有するので、複数の吸水性ポリマー含水粒子が同様の平均真球度を有しやすく、そしてステップ(iv)における凍結乾燥前粒子が、同様の粒径の変動係数を有しやすくなる。その結果、ステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士の接点が少なくなり、複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
また、上記製造方法では、複数の吸水性ポリマー含水粒子が、所定の水分率まで乾燥させた場合に所定の平均真球度を有するので、ステップ(iii)における吸水時間と、ステップ(iv)における凍結乾燥時間とを短縮化することができる。
【0025】
[態様8]
上記複数の吸水性ポリマー含水粒子が、含水倍率1000倍において60〜200mNのゲル強度を有する、態様1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【0026】
上記製造方法では、複数の吸水性ポリマー含水粒子が、所定のゲル強度を有するので、ステップ(ii)において形成される複数の吸水性ポリマー含水粒子同士が衝突等した際に、吸水性ポリマー含水粒子から微細な粒子片が発生する、吸水性ポリマー含水粒子にヒビが入る等の現象が生じにくくなる。その結果、ステップ(iv)において、凍結乾燥後粒子が、微細な粒子片により、凝集、一体化等しにくくなる。
また、上記吸水性ポリマー含水粒子が上述のゲル強度を有することにより、ステップ(iii)及びステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士が衝突等した際に、凍結乾燥前粒子から微細な粒子片が発生する、吸水性ポリマー含水粒子にヒビが入る等の現象が生じにくくなる。さらに、ステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士がゲルブロッキングしにくくなり、そして複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
【0027】
[態様9]
ステップ(i)において、上記複数の液滴が0.01〜0.20の液滴径の変動係数を有するように、上記複数の液滴を上記疎水性溶媒に放出する、態様1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【0028】
上記製造方法では、ステップ(i)において、上記複数の液滴が、所定の液滴径の変動係数を有するので、製造される複数の吸水性ポリマー粒子が、所定の粒径の変動係数を有しやすくなり、ひいては上記製造方法が、態様7の効果を有しやすくなる。
【0029】
[態様10]
上記ラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤であり、上記複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成するステップにおいて、上記複数の液滴に光を照射することにより、上記複数の液滴内の上記重合組成物を光重合させる、態様1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
上記製造方法では、上記ラジカル重合開始剤が光ラジカル重合開始剤であることにより、製造される上記複数の吸水性ポリマー含水粒子が、上述の特性を有しやすくなる。
【0030】
[態様11]
複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成するステップにおいて、上記疎水性溶媒の温度が、0℃超且つ30℃以下の範囲にある、態様1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
上記製造方法では、記疎水性溶媒の温度が所定の範囲にあることにより、製造される上記複数の吸水性ポリマー含水粒子が、上述の特性を有しやすくなる。また、上記複数の吸水性ポリマー吸水粒子が、気泡を含みにくくなる。
【0031】
[態様12]
上記疎水性溶媒が、シリコーンオイル、油及び炭化水素、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、態様1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
上記製造方法では、製造される複数の吸水性ポリマー粒子が、上述の特性を有しやすくなる。
【0032】
[定義]
・[吸水性ポリマー含水粒子]
本明細書において、「吸水性ポリマー含水粒子」は、本開示の製造方法のステップ(ii)において形成される粒子を意味する。
・[吸水性ポリマー粒子]
本明細書において、「吸水性ポリマー粒子」は、上述の「吸水性ポリマー含水粒子」から、後述の乾燥を行うことにより、水分を除去した粒子を意味する。
【0033】
・[凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子]
本明細書において、「凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子」は、ステップ(iii)において形成される粒子である。吸水性ポリマー粒子は、概念上、水を含む吸水性ポリマー粒子を意味し、水を含む点で「吸水性ポリマー含水粒子」と同義である。
凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子は、吸水性ポリマー含水粒子に吸水させることにより形成される場合と、吸水性ポリマー含水粒子を乾燥し次いで吸水させることにより形成される場合とがある。
なお、本明細書では、「凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子」を、『凍結乾燥前粒子』と称する場合がある。
【0034】
・[凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子]
本明細書において、「凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子」は、ステップ(iv)において形成される粒子である。
なお、本明細書では、「凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子」を、『凍結乾燥後粒子』と称する場合がある。
【0035】
・[凍結乾燥]及び[乾燥]
本明細書において、「凍結乾燥」は、水分を昇華させることにより行う乾燥を意味する。上記凍結乾燥では、凍結させた対象物を、減圧下、凍結させたまま乾燥するのが一般的である。
また、本明細書において、単に「乾燥」と称する場合には、乾燥は、水分を昇華させずに行う乾燥を意味する。上記乾燥は、通常、0℃以上、例えば、常温、好ましくは、高温、例えば、40〜200℃の温度で実施することができる。上記乾燥は、1気圧又は減圧下で実施することができる。
【0036】
・重合組成物に関する「含水倍率」
本明細書において、重合組成物に関する「含水倍率」は、重合組成物の水の質量を、重合組成物が含む水以外の成分(例えば、エチレン系不飽和モノマー及びラジカル重合開始剤)の総質量で除することにより算出される。上記含水倍率は、重合組成物から形成される吸水性ポリマー含水粒子が、固形分である吸水性ポリマー粒子に対して、どの程度の水を含むか概算するための値である。
【0037】
・吸水性ポリマー含水粒子に関する「含水倍率」
本明細書では、吸水性ポリマー含水粒子に関する「含水倍率」は、吸水性ポリマー含水粒子のポリマー本体に対する、吸水性ポリマー含水粒子が含む水の比率(質量比)を意味する。同様に、凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子に関する「含水倍率」は、凍結乾燥すべき吸水性ポリマー含水粒子のポリマー本体に対する、凍結乾燥すべき吸水性ポリマー含水粒子が含む水の比率(質量比)を意味する。なお、ポリマー本体は、後述の「水分率」の測定における乾燥後粒子と同義である。
【0038】
・「水分率」
本明細書では、粒子(吸水性ポリマー含水粒子、凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子、及び凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子)に関する「水分率」は、粒子の総質量に対する、吸水性ポリマー粒子が含む水の百分率(質量比)を意味する。
【0039】
水分率は、以下の通り測定される。
質量:m
1(g)を測定した吸水性ポリマー粒子を、110℃のオーブンで10時間乾燥することにより乾燥後粒子を形成し、乾燥後粒子の質量:m
2(g)を測定し、以下の式:
水分率(質量%)=(m
1−m
2)/m
1
により算出する。
なお、本明細書では、吸水性ポリマー含水粒子又は凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を水分率が1質量%以下に乾燥させたものを、「吸水性ポリマー粒子」と称する場合がある。
【0040】
本開示の複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子の製造方法(以下、単に「本開示の製造方法」と称する場合がある)は、以下のステップを含む。
(i)エチレン系不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤及び水を含む重合組成物を、複数の液滴として、疎水性溶媒に放出するステップ(以下、「液滴放出ステップ」と称する場合がある)
(ii)上記疎水性溶媒内で、上記複数の液滴内の上記重合組成物を重合させ、上記複数の液滴から複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成するステップ(以下、「吸水性ポリマー含水粒子形成ステップ」と称する場合がある)
(iii)上記複数の吸水性ポリマー含水粒子から、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成するステップ(以下、「凍結乾燥前粒子形成ステップ」と称する場合がある)
(iv)上記複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を凍結乾燥し、複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子を形成するステップ(以下、「凍結乾燥後粒子形成ステップ」と称する場合がある)
【0041】
[液滴放出ステップ(ステップ(i))]
液滴放出ステップにおける重合組成物は、エチレン系不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤、水等を含む。
上記エチレン系不飽和モノマーとしては、当技術分野で用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
上記重合組成物は、上記エチレン系不飽和モノマーを、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは35〜70質量%、そしてさらに好ましくは40〜70質量%の比率で含む。
【0042】
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(すなわち、(メタ)アクリル酸の非中和物)、(メタ)アクリル酸の中和物、(メタ)アクリル酸の誘導体、例えば、エステル化物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸の中和物としては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム塩等が挙げられ、ナトリウム及びカリウム塩が好ましい。
【0043】
なお、上記重合組成物から形成される凍結乾燥後粒子が、(メタ)アクリル酸系モノマーに由来するモノマー骨格を有する場合には、凍結乾燥後粒子では、(メタ)アクリル酸の誘導体に由来するモノマー骨格を除き、酸基(カルボキシル基)の85〜100モル%が、中和されていることが好ましい。
【0044】
従って、凍結乾燥後粒子において、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸の中和物に由来する骨格の酸基(カルボキシル基)の85〜100モル%が中和されている場合には、上記重合組成物が、酸基の85〜100モル%が中和された(メタ)アクリル酸系モノマーを含んでもよく、あるいは、例えば、吸水性ポリマー含水粒子に含まれる上記酸基を中和し、最終的に、凍結乾燥後粒子が、酸基の85〜100モル%が中和された(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する骨格を含むようにしてもよい。
【0045】
上記重合組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。上記架橋剤としては、例えば、(i)重合性不飽和基を少なくとも2つ有する重合性架橋剤、(ii)カルボキシル基と反応しうる反応性基を少なくとも2つ有する反応性架橋剤、(iii)重合性不飽和基と、カルボキシル基と反応しうる反応性基とを有する重合性反応性架橋剤が挙げられる。形成される凍結乾燥後粒子の吸水特性の観点からは、上記架橋剤としては、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤であることが好ましい。上記重合組成物が架橋剤を含む場合には、上記重合組成物は、上記架橋剤を、エチレン系不飽和モノマーに対して、好ましくは0.02〜0.15モル%の割合で含む。
【0046】
上記架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0047】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
形成される凍結乾燥後粒子の特性の観点からは、上記ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ラジカル重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤を含む場合には、光ラジカル重合開始剤と併用されることが好ましい。
上記重合組成物は、上記ラジカル重合開始剤を、エチレン系不飽和モノマーに対して、好ましくは0.001〜20質量%、そしてより好ましくは0.1〜10質量%の割合で含む。
【0048】
上記光ラジカル重合開始剤としては、約200nm〜約600nmの波長の光によりラジカルを発生しうるものが好ましく、例えば、ベンゾイン、アセトイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、キサントン、クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ナフトール、アントラキノン、ヒドロキシアントラセン、アセトフェノンジエチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパン、それらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0049】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0050】
上記重合組成物は、好ましくは0.1〜9倍、より好ましくは0.2〜6倍、そしてさらに好ましくは0.5〜4倍の含水倍率(質量比)を有する。上記重合組成物が、上記含水倍率を満たすように水を含むことにより、重合組成物の液滴の温度が、エチレン系不飽和モノマーの重合に伴って発生する熱により上昇しにくくなる、また、吸水性ポリマー含水粒子のハンドリング性を維持したまま、吸水性ポリマー含水粒子が含む水を、次の凍結乾燥後粒子形成ステップに利用することができる。
【0051】
上記疎水性溶媒としては、重合組成物と混和せず、重合組成物中の成分と反応しないものであれば、特に制限されない。また、上記疎水性溶媒は、重合組成物に近い比重を有することが好ましい。
上記疎水性溶媒としては、例えば、シリコーンオイル(例えば、ジメチルポリシロキサン)、油(例えば、トリグリセリド、例えば、植物性油、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド)、炭化水素(例えば、流動パラフィン)、それらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0052】
上記疎水性溶媒の温度は、好ましくは0℃超且つ30℃以下の範囲にある。そうすることにより、製造される上記複数の吸水性ポリマー含水粒子が、上述の特性を有しやすくなる。また、上記複数の吸水性ポリマー吸水粒子が、気泡を含みにくくなる。
【0053】
上記重合組成物は、疎水性溶媒に液滴として放出されるのであれば、放出方法は特に制限されず、例えば、上記重合組成物は、射出ノズルを備える重合装置を用いて、液滴として、疎水性溶媒に放出される。具体的には、上記射出ノズルの先端を、疎水性溶媒中に浸漬した状態で、上記重合組成物を、上記射出ノズルから、疎水性溶媒中に、直接、定量的に射出し、疎水性溶媒内で上述の液滴を形成する。上記射出ノズルから、重合組成物を射出する量としては、例えば、30〜60mL/分が挙げられる。上記射出ノズルは、特開2008−11765号公報等に記載されるものを利用することができ、そして
図1に示される重合装置1に関連して後述する。上記重合組成物は、疎水性溶媒の内部に液滴として放出されることが好ましい。液滴の形状を保持するためである。
【0054】
上記複数の液滴のそれぞれが、原則として、重合により、複数の吸水性ポリマー含水粒子(複数の吸水性ポリマー粒子)のそれぞれを形成する。従って、所定の粒径の変動係数を有する、複数の吸水性ポリマー粒子を製造する観点からは、上記複数の液滴は、所定の液滴径の変動係数を有することが好ましい。具体的には、上記複数の液滴は、吸水性ポリマー粒子の粒径の変動係数と同様の液滴径の変動係数を有することが好ましく、好ましくは0.01〜0.20、より好ましくは0.03〜0.15、そしてさらに好ましくは0.05〜0.10の粒径の変動係数を有する。
【0055】
また、上記複数の液滴が、上述の液滴径の変動係数を有することにより、複数の吸水性ポリマー含水粒子(複数の吸水性ポリマー粒子)のそれぞれが、均質な特性を有しやすくなり、ひいては、複数の吸水性ポリマー含水粒子(複数の吸水性ポリマー粒子)が、小さな粒径の変動係数、高い平均真球度、吸水した際の高いゲル強度等を有しやすくなる。
上記液滴径の変動係数は、後述する吸水性ポリマー粒子の変動係数の測定方法と同様に測定されうる。
【0056】
[吸水性ポリマー含水粒子形成ステップ(ステップ(ii))]
吸水性ポリマー含水粒子形成ステップでは、疎水性溶媒内で、複数の液滴内の重合組成物を重合させ、複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成する。
ラジカル重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤である場合には、光源、例えば、水銀灯、蛍光灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、UV-LEDランプ等から、光、例えば、約200nm〜約600nmの波長の光を、例えば、疎水性溶媒及び複数の液滴を含む形成管に照射し、複数の液滴のそれぞれにおいて、重合組成物を光重合させ、複数の液滴のそれぞれから、吸水性ポリマー含水粒子を形成することができる。当該観点からは、疎水性溶媒は、光源から照射される光の波長に対する透過率が高いことが好ましい。また、上記形成管は、光源から照射される光の波長に対する透過率が高いことが好ましく、例えば、石英ガラスから形成される。
【0057】
上記ラジカル重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤のみを含む場合には、重合組成物及び疎水性溶媒は、加熱されないことが好ましい。形成される、複数の吸水性ポリマー含水粒子(複数の吸水性ポリマー粒子)が、気泡を含みにくくなるためである。
【0058】
上記ラジカル重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤のみを含む場合には、疎水性溶媒の温度は、熱ラジカル重合開始剤が機能しうる温度、例えば、10時間半減期温度以上の温度に維持することが好ましい。上記ラジカル重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤のみを含む場合には、例えば、疎水性溶媒及び複数の液滴を含む重合槽を、当該熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度以上の温度に維持することにより、複数の液滴のそれぞれにおいて、重合組成物を熱重合させ、複数の液滴のそれぞれから、吸水性ポリマー含水粒子を形成することができる。
【0059】
なお、この場合には、液滴を形成する前の重合組成物を加熱しないことが好ましい。重合組成物が、疎水性溶媒に液滴として放出される前に重合が開始し、重合性組成物が液滴化しにくくなる可能性があるからである。
【0060】
上記ラジカル重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤の両方を含む場合には、液滴を形成する前の重合組成物を、加熱しないことが好ましい。重合組成物が疎水性溶媒に液滴として放出される前に重合が開始し、重合性組成物が液滴化しにくくなる可能性があるからである。また、疎水性溶媒を、熱ラジカル重合開始剤が機能しうる温度に維持することができる。さらに、例えば、形成管及び重合槽を備える重合装置を準備し、上記形成管において疎水性溶媒を室温に維持するとともに光源から光を照射して、重合組成物を光重合させ、次いで、上記重合槽において、疎水性溶媒を熱ラジカル重合開始剤が機能しうる温度に維持し、重合組成物を熱重合させてもよい。
【0061】
上記吸水性ポリマー含水粒子を水分率1質量%以下に乾燥させたもの、すなわち、吸水性ポリマー粒子が、好ましくは0.01〜0.20、より好ましくは0.03〜0.15、そしてさらに好ましくは0.05〜0.10の粒径の変動係数を有する。そうすることにより、複数の吸水性ポリマー含水粒子が、同様の粒径の変動係数を有しやすく、そしてステップ(iv)における凍結乾燥前粒子が、同様の粒径の変動係数を有しやすくなる。その結果、ステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士の接点が少なくなり、複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
【0062】
また、そうすることにより、ステップ(iii)における吸水時間、すなわち、複数の吸水性ポリマー含水粒子に吸水させ、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する時間を短縮化させることができる。複数の吸水性ポリマー含水粒子の粒径の変動係数が小さくなることにより、複数の吸水性ポリマー含水粒子の個々の粒子の吸水速度にばらつきが生じにくくなるためである。
【0063】
さらに、そうすることにより、ステップ(iv)における凍結乾燥時間、すなわち、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を凍結乾燥し、複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子を形成する時間を短縮化することができる。凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子の粒径の変動係数が小さくなることにより、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子の個々の粒子の凍結乾燥速度にばらつきが生じにくくなるためである。
【0064】
上記吸水性ポリマー含水粒子を水分率1質量%以下に乾燥させたもの、すなわち、吸水性ポリマー粒子が、好ましくは0.90〜0.99、より好ましくは0.92〜0.98、そしてさらに好ましくは0.93〜0.97の平均真球度を有する。そうすることにより、複数の吸水性ポリマー含水粒子が同様の平均真球度を有しやすく、そしてステップ(iv)における凍結乾燥前粒子が、同様の粒径の変動係数を有しやすくなる。その結果、ステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士の接点が少なくなり、複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
【0065】
また、そうすることにより、ステップ(iii)における吸水時間、すなわち、複数の吸水性ポリマー含水粒子に吸水させ、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する時間を短縮化させることができる。複数の吸水性ポリマー含水粒子の平均真球度が高くなることにより、複数の吸水性ポリマー含水粒子の個々の粒子の吸水速度にばらつきが生じにくくなるためである。
【0066】
さらに、そうすることにより、ステップ(iv)における凍結乾燥時間、すなわち、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を凍結乾燥し、複数の凍結乾燥された吸水性ポリマー粒子を形成する時間を短縮化することができる。凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子の平均真球度が高くなることにより、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子の個々の粒子の凍結乾燥速度にばらつきが生じにくくなるためである。
【0067】
なお、本明細書では、粒子の粒径、平均粒径、粒径の変動係数及び平均真球度は、以下の通り測定される。
(1)温度:20±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室に、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ(商品名:VHX−1000,ズームレンズ:×20〜×200)及び付属のソフトウェアを準備する。
(2)粒子のサンプルを、上記恒温恒湿室に24時間静置する。
(3)上記デジタルマイクロスコープでサンプルを撮影する。
【0068】
(4)各粒子の粒径は、各粒子の投影画像の投影面積から算出した円相当径を意味する。具体的には、各粒子の投影面積:Aを付属のソフトウェアで計測し、各粒子の円相当径:CDを、次の式:
【数1】
から算出する。
(5)平均粒径は、粒度分布(個数基準)のメジアン径(
50D
p)を意味する。具体的には、付属のソフトウェアにて、粒子1,000個の円相当径CDの粒度分布(個数基準)を作成し、当該粒度分布(個数基準)からメジアン径(
50D
p)を決定する。
【0069】
(6)粒径の変動係数は、上記粒度分布(個数基準)から、付属のソフトウェアにて算出する。
(7)平均真球度:S
pは、粒子1,000個の真球度s
pの相加平均である。具体的には、各粒子の真球度:s
pは、各粒子の外縁から、最も長い径である長径:k
1と、最も短い径である短径:k
2とを測定し、次の式:
s
p=k
2/k
1
により算出する。なお、各粒子の長径:k
1及び短径:k
2は、付属のソフトウェアにより、自動で決定される。
【0070】
上記吸水性ポリマー含水粒子は、含水倍率1000倍において、好ましくは60〜200mN、より好ましくは80〜160mN、そしてさらに好ましくは100〜140mNのゲル強度を有する。そうすることにより、ステップ(ii)において形成される複数の吸水性ポリマー含水粒子同士が衝突等した際に、吸水性ポリマー含水粒子から微細な粒子片が発生する、吸水性ポリマー含水粒子にヒビが入る等の現象が生じにくくなる。その結果、ステップ(iv)において、凍結乾燥後粒子が、微細な粒子片により、凝集、一体化等しにくくなる。
【0071】
また、上記吸水性ポリマー含水粒子が上述のゲル強度を有することにより、ステップ(iii)及びステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士が衝突等した際に、凍結乾燥前粒子から微細な粒子片が発生する、吸水性ポリマー含水粒子にヒビが入る等の現象が生じにくくなる。さらに、ステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士がゲルブロッキングしにくくなり、そして複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
【0072】
本明細書では、上述のゲル強度は、以下の通り測定される。
(1)温度:20±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室に、ミネベア製テクノグラフTG−500Nを準備する。
(2)吸水性ポリマー含水粒子を、80℃で6時間乾燥した後、上記恒温恒湿室に24時間静置し、サンプルを準備する。
(3)10mg程度のサンプルの質量を正確に秤量し、サンプル10mg当たり、イオン交換水10gを加え、3時間静置して、サンプルを膨潤させる。
【0073】
(4)膨潤したサンプルから、膨潤した粒子1つを、テクノグラフTG−500Nの試料ステージに載せ、膨潤した粒子を2mm/分の速度で圧縮する。
(5)膨潤した粒子が破断した際の荷重を測定する。
(6)異なる膨潤した粒子で計50回の測定を行い、50回分の上記荷重の相加平均をゲル強度として採用する。
【0074】
上記吸水性ポリマー含水粒子を水分率1質量%以下に乾燥させたもの、すなわち、吸水性ポリマー粒子は、任意の平均粒径を有しうるが、一般的には、100〜1,000μm、好ましくは300〜1,000μm、そしてより好ましくは300〜800μmの平均粒径を有する。
なお、平均粒径の測定方法は、上述の通りである。
【0075】
吸水性ポリマー含水粒子形成ステップでは、複数の吸水性ポリマー含水粒子を形成した後、複数の吸水性ポリマー含水粒子を、疎水性溶媒から取り出すことが好ましい。
【0076】
[凍結乾燥前粒子形成ステップ(ステップ(iii))]
凍結乾燥前粒子形成ステップでは、複数の吸水性ポリマー含水粒子から、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する。
凍結乾燥前粒子形成ステップは、以下のステップを含むことができる。
(iii−1)複数の吸水性ポリマー含水粒子に吸水させ、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する(以下、「ステップ(iii−1)」と称する場合がある」)。
(iii−2)複数の吸水性ポリマー含水粒子を乾燥することにより、複数の吸水性ポリマー粒子を形成し、次いで、複数の吸水性ポリマー粒子に吸水させ、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する(以下、「ステップ(iii−2)」と称する場合がある」)。
【0077】
ステップ(iii−1)では、複数の吸水性ポリマー含水粒子に吸水させ、具体的には、複数の吸水性ポリマー含水粒子を水で膨潤させ、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する。吸水させる前に、複数の吸水性ポリマー含水粒子の表面に付着した疎水性溶媒を除去することが好ましい。複数の凍結乾燥前粒子のそれぞれが、水を均一に含み、ひいては、複数の凍結乾燥後粒子が、凍結乾燥後に、孔を均一に備えることになるからである。ステップ(iii−1)は、製造効率の観点から好ましい。
【0078】
ステップ(iii−2)では、疎水性溶媒から取り出した複数の吸水性ポリマー含水粒子を、乾燥し、複数の吸水性ポリマー粒子を形成した後、複数の吸水性ポリマー粒子に吸水させ、具体的には、複数の吸水性ポリマー粒子を水で膨潤させ、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を形成する。ステップ(iii−2)を選択する場合には、乾燥の前に、複数の吸水性ポリマー含水粒子の表面に付着した疎水性溶媒を除去せず、乾燥の際に、上記疎水性溶媒を揮発させてもよい。
なお、乾燥の好ましい条件は、定義の箇所に記載されている。
ステップ(iii−2)は、凍結乾燥後粒子の特性を制御する観点から好ましい。
【0079】
ステップ(iii−2)では、複数の吸水性ポリマー含水粒子は、1質量%以下の水分率を有する、すなわち、吸水性ポリマー粒子を形成するように乾燥させることが好ましい。凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子の含水倍率を調整しやすくするためである。
【0080】
上記吸水性ポリマー粒子は、発塵試験において、好ましくは0.00〜0.20質量%、より好ましくは0.00〜0.15質量%、さらに好ましくは0.00〜0.10質量%、そしてさらにいっそう好ましくは0.00〜0.05質量%の発塵率を有する。そうすることにより、ステップ(iii)において、吸水性ポリマー粒子同士が衝突した場合であっても、吸水性ポリマー粒子から微細な粒子片が発生しにくく、ステップ(iv)において、凍結乾燥後粒子が、微細な粒子片により、凝集、一体化等しにくくなる。
【0081】
本明細書では、上述の発塵試験は、以下の通り実施される。
(1)温度:20±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室に、NISSEI社製のエクセルオートホモジナイザーを準備する。
(2)吸水性ポリマー粒子のサンプルを、目開き150μmのふるいにかけ、上記恒温恒湿室に24時間静置する。
(3)おおよそ10gのサンプルの質量:m
1(g)を正確に秤量し、サンプルをホモジナイザーに投入し、サンプルを1,000rpmの回転速度で1分間攪拌する。
【0082】
(4)攪拌を終えたサンプルを、目開き150μmのふるいにかけ、ふるいを通過した微粉の質量:m
2(g)を測定する。
(5)発塵率:D(質量%)を、次の式:
D(質量%)=100×m
2/m
1
により算出する。
(6)試験を異なる試料で計3回実施し、3回の発塵率の相加平均を採用する。
【0083】
上記吸水性ポリマー含水粒子を水分率1質量%以下に乾燥させたもの、すなわち、吸水性ポリマー粒子は、好ましくは20N以上、より好ましくは30N以上、さらに好ましくは40N以上、そしてさらにいっそう好ましくは50N以上の破断強度を有する。そうすることにより、ステップ(iii)において、吸水性ポリマー粒子同士が衝突した場合であっても、吸水性ポリマー粒子から微細な粒子片が発生しにくく、ステップ(iv)において、凍結乾燥後粒子が、微細な粒子片により、凝集、一体化等しにくくなる。
【0084】
上記破断強度は、工程(3)を省略した以外は、吸水性ポリマー含水粒子のゲル強度と同様にして測定され、工程(4)及び工程(5)における、「膨潤したサンプル」及び「膨潤した粒子」は、それぞれ、「サンプル」及び「粒子」と読み替える。なお、荷重は、50Nを上限とする。
【0085】
ステップ(iii)では、複数の吸水性ポリマー含水粒子から、複数の凍結乾燥前粒子を、凍結乾燥前粒子が、好ましくは10〜200倍、より好ましくは20〜170倍、そしてさらに好ましくは30〜150倍の含水倍率(質量比)を有するように形成する。そうすることにより、ステップ(iv)にて形成される凍結乾燥後粒子が、吸水倍率と、吸水した際のゲル強度と、吸収速度とに優れる傾向がある。
【0086】
上記凍結乾燥前粒子は、60mN以上、より好ましくは80mN以上、そしてより好ましくは100mN以上のゲル強度を有する。そうすることにより、ステップ(iii)及びステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士が衝突等した際に、凍結乾燥前粒子から微細な粒子片が発生する、吸水性ポリマー含水粒子にヒビが入る等の現象が生じにくくなる。また、次のステップ(iv)において、凍結乾燥前粒子同士がゲルブロッキングしにくくなり、そして複数の凍結乾燥後粒子が、凝集、一体化等しにくくなる。
【0087】
上記凍結乾燥前粒子のゲル強度は、以下の通り測定される。
(1)温度:20±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室に、ミネベア製テクノグラフTG−500Nを準備する。
(2)凍結乾燥前粒子を、水分が蒸発しないように密閉した容器に保存して、上記恒温恒湿室で3時間静置し、サンプルを準備する。
(3)サンプルから粒子1つを、テクノグラフTG−500Nの試料ステージに載せ、粒子を2mm/分の速度で圧縮する。
(5)粒子が破断した際の荷重を測定する。
(6)異なる粒子で計50回の測定を行い、50回分の上記荷重の相加平均をゲル強度として採用する。
【0088】
[凍結乾燥後粒子形成ステップ(ステップ(iv))]
凍結乾燥後粒子形成ステップでは、複数の凍結乾燥すべき吸水性ポリマー粒子を凍結乾燥し、凍結乾燥された、複数の吸水性ポリマー粒子を形成する。
上記凍結乾燥は、当技術分野で公知の方法により実施することができる。
凍結乾燥の好ましい条件は、定義の箇所に記載されている。
凍結乾燥後粒子形成ステップでは、凍結乾燥に加え、その前後に、乾燥を実施してもよい。
【0089】
本開示の製造方法では、凍結乾燥後粒子形成ステップにおいて、複数の凍結乾燥後粒子の一部の凝集等により、複数の凍結乾燥後粒子から成るブロックが形成される場合がある。従って、本開示の製造方法では、凍結乾燥後粒子形成ステップにおいて、複数の凍結乾燥後粒子のブロックを、それらの個々の粒子にほぐすステップをさらに含むことができる。そうすることにより、凍結乾燥後粒子が、それらの凝集物を含みにくくなる。なお、上述のとおり、本開示の製造方法では、凍結乾燥後粒子を粉砕する粉砕工程が不要となるため、生産性に優れる。粉砕工程を加えると、微粉が発生するのが一般的であり、生産性が劣るのが一般的である。
【0090】
本開示の製造方法を実施するための重合装置の例を、
図1に示す。
図1において、重合装置1は、重合組成物103を保持している重合組成物タンク3、重合組成物103の搬送速度を調節する定量ポンプ5、重合組成物103を搬送する送液管7、光源11を備える光照射室9、重合組成物103を射出する射出ノズル13、整流多孔盤15、疎水性溶媒105を保持し、液滴を光重合させる形成管17、吸水性ポリマー含水粒子101を疎水性溶媒105から分離する分離スクリーン19、疎水性溶媒105を保持する疎水性溶媒タンク21、疎水性溶媒105の搬送速度を調整する定量ポンプ23、疎水性溶媒105の温度を調整する温度調整器25、及び疎水性溶媒105を搬送する送液管27を備える。
【0091】
疎水性溶媒105は、形成管17、疎水性溶媒タンク21、定量ポンプ23、温度調整器25、送液管27及び整流多孔盤15の間を循環しており、循環速度は、定量ポンプ23により制御され、疎水性溶媒105の温度は、温度調整器25により制御されている。形成管17は、その大部分が、光照射室9の内部に配置されている。
【0092】
重合組成物103は、重合組成物タンク3から、定量ポンプ5及び送液管7を介して、射出ノズル13に供給される。次いで、重合組成物103は、射出ノズル13から射出され、形成管17内で液滴107を形成する。次いで、液滴107は、形成管17内で、光源11から照射された光に暴露され、液滴107内の重合組成物103が光重合し、吸水性ポリマー含水粒子101を形成する。吸水性ポリマー含水粒子101は、分離スクリーン19により、疎水性溶媒105と分離される。
【0093】
図1には示されていないが、次いで、吸水性ポリマー含水粒子101に規定量の水を吸収させ、吸水性ポリマー含水粒子を形成し、吸水性ポリマー含水粒子を冷凍乾燥することにより、冷凍乾燥された吸水性ポリマー粒子を製造する。
【0094】
本開示の製造方法により製造される、冷凍乾燥された吸水性ポリマー粒子は、吸収性物品(例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等)、農園芸用資材(例えば、保水剤、土壌改良剤等)、工業用資材(例えば、ケーブル用止水剤、結露防止剤等)等の用途に用いられうる。
【実施例】
【0095】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[実施例1]
エチレン系不飽和モノマーとしての60質量%のアクリル酸カリウム(日本触媒製)水溶液90質量部及びアクリルアミド(和光純薬製)10質量部と、光ラジカル重合開始剤としてのベンゾインイソブチルエーテル1.0質量部と、架橋剤としてのN,N'−メチレンビスアクリルアミド0.5重量部とを混合し、重合組成物No.1を準備した。
【0096】
図1に示される重合装置1を用いて、重合組成物No.1から、複数の吸水性ポリマー含水粒子No.1を製造した。具体的には、重合組成物No.1を、射出ノズル13から、30mL/秒の速度で、形成管17の疎水性溶媒の内部に液滴として射出した。なお、形成管17は、全長:約1.0m、内径:約12mmの大きさを有し、形成管17内では、疎水性溶媒として、約10℃に保持されたジメチルポリシロキサンが、約3L/分の速度で循環していた。
【0097】
形成管17内に液滴として射出された重合組成物No.1に、光源11としての高圧水銀灯(波長320〜400nm)から紫外線を照射し、液滴内の重合組成物No.1を重合し、複数の吸水性ポリマー含水粒子No.1を形成した。
ジメチルポリシロキサンから、複数の吸水性ポリマー含水粒子No.1を取り出し、大気圧下、80℃で6時間乾燥し、吸水性ポリマー粒子No.1を製造した。吸水性ポリマー粒子No.1の水分率は、0.8質量%であった。
【0098】
ビーカーに吸水性ポリマー粒子No.1及びイオン交換水を所定量投入し、吸水性ポリマー粒子No.1をイオン交換水に浸漬させた。吸水性ポリマー粒子No.1の含水倍率を経時で追跡した。イオン交換水への浸漬から3時間後に、含水倍率が100倍である凍結乾燥前粒子No.1を得た。
【0099】
凍結乾燥前粒子No.1を、容器に1cm程度の厚さで積層し、市販のフリーザー(−25℃)中で凍結させた。24時間後、凍結した凍結乾燥前粒子No.1を、アルバック社製の凍結乾燥機に移し、0.1mmHgの減圧下で凍結乾燥させることにより、凍結乾燥後粒子No.1を製造した。
【0100】
[比較例2]
溶液重合法により製造された、アクリル酸系モノマーに由来する骨格を有する吸水性ポリマー粉末(市販品、以下、「粉末No.2」と称する)を準備した。粉末No.2は、溶液重合法により製造されたポリマー塊を粉砕し、粒子化することにより形成されたものである。
【0101】
実施例1と同様の操作により、含水倍率が100倍である凍結乾燥前粉末No.2を得た。凍結乾燥前粉末No.2を、実施例1と同様に凍結乾燥させ、凍結乾燥後に形成された一体化物を粉砕機で粉砕し、凍結乾燥後粉末No.2を製造した。
【0102】
吸水性ポリマー粒子No.1及び粉末No.2の、平均粒径、粒径の変動係数、平均真球度、含水倍率1000倍におけるゲル強度を評価した。なお、測定方法は、本明細書に記載の通りである。結果を表1に示す。また、粒子No.1及び粉末No.2の粒度分布(個数基準)を、
図2及び
図3に示す。
図2及び
図3に示される粒度分布は、本明細書の平均粒径等の測定方法に従って測定されたものであり、粒径/μmの「400−450」は、『400μm超且つ450μm以下』を意味する。
【0103】
また、凍結乾燥後粒子No.1及び凍結乾燥後粉末No.2のそれぞれの吸水倍率及び保水倍率を以下の通り測定した。
[吸水倍率]
(1)粒子のサンプルを、温度:20±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室に24時間静置する。
(2)20mg程度のサンプルの質量:m
3(g)を正確に秤量し、秤量したサンプルに、イオン交換水約22mL(サンプルの約1,100倍の質量)を加えて3時間静置し、サンプルを膨潤させる。
(3)サンプルを、目開き75μmのナイロンメッシュで形成した袋に入れ、サンプルを含む袋を、150Gで90秒間、遠心分離器で脱水する。
【0104】
(4)袋から、サンプルを取り出し、その質量:m
4(g)を測定する。
(5)サンプルの保水倍率(質量比):W
HRを、次の式:
W
HR=100×(m
4−m
3)/m
3
により算出する。
(6)異なるサンプルで、工程(1)〜工程(5)を計3回繰り返し、3つのサンプルの保水倍率:W
HRの相加平均を保水倍率として採用する。
【0105】
[保水倍率]
(1)粒子のサンプルを、温度:20±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室に24時間静置する。
(2)20mg程度のサンプルの質量:m
5(g)を正確に秤量し、秤量したサンプルに、イオン交換水約22mL(サンプルの約1,100倍の質量)を加えて3時間静置し、サンプルを膨潤させる。
(3)サンプルを、目開き75μmのナイロンメッシュで形成した袋に入れ、サンプルを含む袋を、150Gで90秒間、遠心分離器で脱水する。
【0106】
(4)袋から、サンプルを取り出し、その質量:m
6(g)を測定する。
(5)サンプルの保水倍率(質量比):W
HRを、次の式:
W
HR=100×(m
6−m
5)/m
5
により算出する。
(6)異なるサンプルで、工程(1)〜工程(5)を計3回繰り返し、3つのサンプルの保水倍率:W
HRの相加平均を保水倍率として採用する。
結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例1の凍結乾燥後粒子No.1は、凍結乾燥機から取り出した際に、簡易にほぐすことができたが、比較例2の凍結乾燥後粉末No.2は、凍結乾燥機から取り出した際に、全体が一体化しており、粉末状に戻すために、粉砕機にかける必要が有った。
また、実施例1では、比較例1よりも、吸水時間及び冷凍乾燥時間が短かった。