(54)【発明の名称】基板搬送装置、基板搬送装置の制御装置、基板搬送装置における変位補償方法、当該方法を実施するプログラムおよび当該プログラムが記録された記録媒体
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の基板搬送装置であって、前記回転機構による前記ホルダ把持機構の回転移動の中心軸は、前記ホルダ把持機構の少なくとも一部を通過する、基板搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態にかかる電解めっき装置100の斜視図である。本実施形態では、電解めっき装置100は湿式の電解めっき装置である。電解めっき装置100は、乾式のめっき装置または無電解めっき装置でもよい。電解めっき装置100は、複数の槽または容器などを備え、それらの槽などに基板を収容する基板搬送装置でもよい。また、本実施形態で用いる基板は円形である。ただし、任意の形状(角形など)の基板を使用することができる。
【0012】
電解めっき装置100は、水平ガイド111、水平搬送機構112、垂直ガイド113、垂直搬送機構114およびアーム115を有する基板搬送部110を備える。基板搬送部110は、基板131および/または基板ホルダ132を搬送するために設けられている。水平ガイド111は直線状に形成されている。以下では水平ガイド111の長手方向(図中X軸方向)を「基板の搬送方向」「基板ホルダの搬送方向」「電解めっき装置の搬送方向」または単に「搬送方向」などと呼ぶ。水平搬送機構112は水平ガイド111に設けられている。水平搬送機構112は、基板131を搬送方向に移動するための機構である。垂直ガイド113は水平搬送機構に設けられている。垂直ガイド113の長手方向は鉛直方向(図中Z軸方向)である。垂直搬送機構114は垂直ガイド113に設けられている。垂直搬送機構114は、鉛直方向に基板131を移動するための機構である。アーム115は垂直搬送機構114に備えられている。アーム115の長手方向は、搬送方
向および鉛直方向によって規定される面に垂直な方向(図中Y軸方向)である。ただし、基板搬送部110の構成は上述した例に限られるものではなく、部品を適宜追加、削除または変更することができる。たとえば垂直搬送機構114に代えて、アーム115から基板131(または基板を保持する部材)を受け取ることができるリフタを採用することができる。
【0013】
基板131は基板ホルダ132によって保持され、基板ホルダ132はホルダ把持機構133に接続されて把持されている。ホルダ把持機構133は、後述する移動機構120を介して、アーム115の先端付近に備えられている。ホルダ把持機構133は、基板ホルダ132の把持を解除することが可能であるように構成されている。基板ホルダ132は複数の基板131を保持することが可能であってもよい。ホルダ把持機構133は複数の基板ホルダ132を把持することが可能であってもよい。
【0014】
電解めっき装置100はさらに、各構成要素を制御する制御ユニット140を備える。制御ユニット140は、制御装置141、記憶装置142、入力装置143および図示しない表示装置などを有することができる。
【0015】
電解めっき装置100はさらに処理槽を備える。本実施形態の電解めっき装置100は複数の処理槽150を備えるが、処理槽は1槽でもよい。
図1の例では、水平ガイド111の側部かつアーム115の下部に、水平ガイド111の長手方向に沿って複数の処理槽150が設けられている(アーム115は複数の処理槽150の上部に位置する)。ただし処理槽の位置は例示であり、処理槽は水平ガイド111およびアーム115に対して任意の位置関係にあってよい。複数の処理槽150のそれぞれの形状は、少なくともその上部に開口を有する直方体状である。ただし、処理槽の形状は例示である。複数の処理槽150のそれぞれは、基板131および基板ホルダ132を収容して、基板131を処理するための種々の槽(プリウェット槽、めっき槽、水洗槽、乾燥槽など)であってよい。たとえばめっき槽の内部にはめっき液が供給されている。めっき槽では、めっき液中の金属を基板131にめっきすることができる。たとえば水洗槽の内部には純水が供給されている。水洗槽では、めっき後の基板131を純水で洗浄することができる。電解めっき装置100には任意の槽数の処理槽を設置することが可能である。一例として、電解めっき装置100は2〜10槽の処理槽を備えることができる。大型の電解めっき装置では、30槽以上の処理槽が設けられる場合もある。
【0016】
図1の電解めっき装置100は、基板131の表面に垂直な方向が搬送方向と一致するように(簡単に言えば、基板を縦に吊り下げて)基板131を保持している。これに代え、基板131の表面に垂直な方向が鉛直方向と一致するように(簡単に言えば、基板を水平に保って)基板131を保持する電解めっき装置を用いてもよい。その場合、たとえば円柱状やボウル状の処理槽を用いてもよい。
【0017】
電解めっき装置100は、(1)水平搬送機構112によるX軸方向への基板131の移動と、(2)垂直搬送機構114によるZ軸方向への基板131の移動と、を組み合わせることで、基板131を複数の処理槽150の間で搬送している。ある処理槽に収容されている基板131および基板ホルダ132を搬送して他の処理槽へ収容する場合の、電解めっき装置100の動作を説明する。
【0018】
制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、基板の搬送中に部品同士の干渉が起こらない位置にアーム115が到達するまでアーム115を鉛直上向きまたは下向きに移動する。
次に、制御装置141は、水平搬送機構112を制御して、搬送すべき基板131および基板ホルダ132が収容された処理槽の上部にホルダ把持機構133を位置させる。
次に、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、ホルダ把持機構133が基板ホルダ132を把持可能である位置に到達するまでアーム115を鉛直下向きに移動する。
次に、制御装置141は、ホルダ把持機構133を制御して、ホルダ把持機構133によって基板ホルダ132を把持する。
次に、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、基板の搬送中に部品同士の干渉が起こらない位置にアーム115が到達するまでアーム115を鉛直上向きに移動する。
次に、制御装置141は、水平搬送機構112を制御して、搬送先である処理槽の上部にホルダ把持機構133を移動する。
次に、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、アーム115を鉛直下向きに移動する。アーム115の降下により、基板131および基板ホルダ132が搬送先である処理槽に収容される。
最後に、制御装置141は、ホルダ把持機構133を制御して、ホルダ把持機構133による基板ホルダ132の把持を解除する。
【0019】
近年の基板の大型化およびめっき工程の複雑化に伴って、電解めっき装置100は大型化する傾向にある。大型のめっき装置における処理槽の大きさは、一例として、高さ1メートル、幅1メートル、奥行き30センチメートル程度になる場合がある。このような大きさの処理槽を誤差なく製造することおよび誤差なく組み立てることは困難である。製造誤差および組み立て誤差を原因として、各処理槽には、理想の位置または形状からの変位が存在し得る。
【0020】
本明細書では、処理槽の実際の位置と理想の位置の間の変位、および、処理槽の実際の形状と理想の形状の間の変位を「処理槽の変位」と総称する。処理槽の変位には、製造誤差による変位、組み立て誤差による変位、変形による変位などを含み、変位の生じた原因を問わない。処理槽の変位には、任意の方向を軸とした回転量で表現することができる変位、および、任意の方向への直動量で表現することができる変位を含む。特に、処理槽の変位には、角変位と直線変位とを含む。本明細書における「角変位」とは、Z軸方向を軸とした回転量で表現することができる変位である。本明細書における「直線変位」とは、Y軸方向への直動量で表現することができる変位である。
【0021】
図2は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の上面図である。
図2では、理想の位置または形状からの変位を有する処理槽が図示されている。処理槽の理想の位置または形状150b’〜150f‘は、
図2中において点線で示されている。説明の便宜のため、
図2では各処理槽の変位量が強調されている。
【0022】
図2の例では、第1の処理槽150aは理想の位置に配置され、理想の形状に形成されている。第2の処理槽150bは、理想の位置150b’から傾いて配置されている。すなわち、上面から見たときの第2の処理槽150bの長辺は、水平ガイド111の長手方向と直交していない。第3の処理槽150cは上面から見て平行四辺形状に形成されており、理想の形状150c’のような矩形には形成されていない。第4の処理槽150dは理想の位置150d’より水平ガイド111に近い位置に配置されている。第5の処理槽150eは理想の位置150e’より水平ガイド111から遠い位置に配置されている。第6の処理槽150fは理想の位置150f’から傾いて配置されており、かつ水平ガイド111に近い位置に配置されている。すなわち
図2の例では、第2、第3および第6の処理槽が角変位を有し、第4、第5および第6の処理槽が直線変位を有する。
【0023】
従来の装置が基板を処理槽に収容する場合には、処理槽の変位が考慮されていなかった。そのため、第2〜第6の処理槽150b〜150fのように、処理槽の変位が存在する
場合、めっき装置が処理槽の所定の位置に基板131を収容することができない可能性がある。
【0024】
電解めっき工程においては、基板131上の電流密度がめっきの品質に影響する。基板131の収容位置が処理槽の所定の位置ではない状態で電解めっきを行うと、電流密度が所望の値から外れ、めっきの品質を悪化させ得る。めっき装置が許容できる処理槽150の変位量の一例は、図中のXY平面内において1ミリメートル程度となり得る。よって、従来の電解めっき装置100の組み立ての際には、各処理槽の変位または変位による影響を低減するため、各処理槽の位置を調整していた。
【0025】
製造誤差および組み立て誤差のみではなく、処理槽内の液体が処理槽の変位をもたらす場合もある。一例として、高さ1メートル、幅1メートル、奥行き30センチメートルの大きさの処理槽の中に水が完全に充填された場合、水の質量は1槽あたり約300キログラム(0.3立方メートル×1000キログラム/立方メートル)となる。
【0026】
処理槽内の液体の質量による重さは、各処理槽および/または他の部品(装置の筐体など)を変形させ得る。各処理槽および/または他の部品の変形は、各処理槽の変位をもたらし得る。そのため、液体による処理槽および/または他の部品の変形を考慮したうえで、処理槽の位置を調整することが好ましい。しかし、液体を供給するための配管を接続したのちに処理槽の位置を調整することは困難である場合がある。その場合、処理槽および/または他の部品の実際の変形量を測定しながら、処理槽の位置を調整することもまた困難である。よって、実際の変形量に基づかずに、事前に算出した変形量に基づいて処理槽を位置調整する場合がある。しかし、処理槽および/または他の部品の変形量を高精度に算出することは困難であり、かつ非常に手間とコストを要し得る。
【0027】
大型の電解めっき装置100は多くの処理槽を有する場合がある。処理槽数が増えるほど、処理槽の位置調整の手間が増大する。大型の電解めっき装置100は、輸送のために複数のユニットに分割されている場合がある。分割した複数のユニットは装置の納入先で結合される。ユニットの分割および結合によっても処理槽の変位が生じ得る。処理槽の位置を調整するための人員および設備を納入先に派遣することは困難であり、かつ非常に手間とコストを要し得る。
【0028】
以上のように、電解めっき装置をはじめとした従来の基板搬送装置においては、処理槽の位置調整により装置の組み立てが長時間化しており、組み立てに多くのコストが必要となっている。
【0029】
そこで本実施形態にかかる電解めっき装置100は、それぞれの処理槽の変位を補償するための構成を備える。
図3は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の、アーム115付近の斜視図である。本実施形態にかかる電解めっき装置100は、アーム115の先端付近に移動機構120を備える。移動機構120は、ホルダ把持機構133を移動するための基板搬送部110とは独立した機構である。移動機構120は、回転機構121および直動機構122を含む。
【0030】
回転機構121は、鉛直方向(Z軸方向)を軸としてホルダ把持機構133を回転移動する機構である。
図4は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の、アーム115付近の上面図である。
図4では、回転機構121によるホルダ把持機構133の回転移動が図示されている(
図4中の矢印の方向に回転移動する)。
図4に図示されているとおり、回転機構121は、上面から見て時計回りの回転移動および反時計回りの回転移動の双方が可能である。
【0031】
直動機構122は、アーム115の長手方向(Y軸方向)に沿ってホルダ把持機構133を直動移動する機構である。
図5は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の左側面図である(
図1〜
図4で示したY軸の正方向を、電解めっき装置100の正面とする)。
図5では、直動機構122によるホルダ把持機構133の直動移動が図示されている(
図5中の矢印の方向に直動移動する)。
図5に図示されているとおり、直動機構122は、水平ガイド111から遠ざかる直動移動および水平ガイド111に近づく直動移動の双方が可能である。
【0032】
ホルダ把持機構133は基板ホルダ132を把持することができ、基板ホルダ132は基板131を保持することができる。よって、基板131が保持され、基板ホルダ132が把持されている場合は、回転機構121によりホルダ把持機構133が回転移動することにより、基板131および基板ホルダ132も回転移動する。同様に、直動機構122によりホルダ把持機構133が直動移動することにより、基板131および基板ホルダ132も直動移動する。
【0033】
この例では、回転機構121は直動機構122を介してアーム115に設けられている。さらにこの例では、ホルダ把持機構133は回転機構121を介してアーム115に設けられている。ただしこれらの要素の位置関係は例示であり、これらの要素はアーム115に対して任意の位置関係にあってよい。電解めっき装置100は、移動機構120として、回転機構121または直動機構122のどちらかのみを備えてもよい。回転機構121はロータリエンコーダ321を備えてよい。直動機構122はリニアエンコーダ322を備えてよい。制御装置141がエンコーダを用いてクローズドループ方式で各機構を制御することで、各機構の動作を精密に制御することができる。
【0034】
図6は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の上面図であり、電解めっき装置100が処理槽の変位を補償する様子が示されている。
図6では、第6の処理槽150fに基板131および基板ホルダ132を収容する場合を図示している。電解めっき装置100は、(1)水平搬送機構112によるX軸方向への基板131の移動と、(2)垂直搬送機構114によるZ軸方向への基板131の移動と、(3)回転機構121によるZ軸方向を中心としたホルダ把持機構133の回転移動と、(4)直動機構122によるY軸方向へのホルダ把持機構133の直動移動と、を組み合わせることで、基板131を複数の処理槽の間で搬送し、かつそれぞれの処理槽の変位を補償している。制御装置141は、処理槽に関する変位補償値に基づいて、回転機構121および直動機構122を制御する。
【0035】
本明細書における「処理槽の変位の補償」とは、何らかの手段によって、変位を有する処理槽における基板の収容位置を所定の位置に近づけること、すなわち処理槽の変位を打ち消すことをいう。ただし、処理槽の変位を完全に打ち消すことには限らない。本実施形態にかかる電解めっき装置100は、移動機構120を作動することで処理槽の変位を補償する。
【0036】
本明細書における「処理槽に関する変位補償値」とは、処理槽の変位を補償するためのホルダ把持機構133の移動量である。ここで「ホルダ把持機構の移動量」には、任意の方向を中心としたホルダ把持機構133の回転量、および、任意の方向へのホルダ把持機構の直動量を含む。第nの処理槽に関する変位補償値には、角変位補償値θ
nと直線変位補償値Y
nを含む。
【0037】
本明細書における「角変位補償値θ
n」とは、第nの処理槽の角変位を補償するための、回転機構121によるホルダ把持機構133の回転量である。角変位補償値θ
nと第nの処理槽の角変位は一致していることが好ましい。以下では、処理槽の角変位がゼロのと
きの角変位補償値θ
nをゼロとする。
【0038】
本明細書における「直線変位補償値Y
n」とは、第nの処理槽の直線変位を補償するための、直動機構122によるホルダ把持機構133の直動量である。直線変位補償値Y
nと第nの処理槽の直線変位は一致していることが好ましい。以下では、処理槽の直線変位がゼロのときの直線変位補償値Y
nをゼロとする。
【0039】
図6の例では、第1の処理槽150aの変位はない。よって、第1の処理槽150aに関する角変位補償値θ
1および直線変位補償値Y
1はともにゼロである。第1の処理槽150aに基板131および基板ホルダ132を収容する場合、制御装置141は、回転機構121および直動機構122を制御して、ホルダ把持機構133の回転量および直動量をゼロにする。その後、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、基板131および基板ホルダ132を第1の処理槽150aに収容する。
【0040】
第2の処理槽150bは角変位を有するため、第2の処理槽150bに関する角変位補償値θ
2はゼロでない特定の値となる。第2の処理槽150bに基板131および基板ホルダ132を収容する場合、制御装置141は、回転機構121を制御してホルダ把持機構133をθ
2だけ回転移動する。この際、直動機構122によるホルダ把持機構133の直動量はゼロである。その後、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、基板131および基板ホルダ132を第2の処理槽150bに収容する。第3の処理槽150cに関しても、第2の処理槽150bと同様である。
【0041】
第4の処理槽150dは直線変位を有するため、第4の処理槽150dに関する直線変位補償値Y
4はゼロでない特定の値となる。第4の処理槽150dに基板131および基板ホルダ132を収容する場合、制御装置141は、直動機構122を制御してホルダ把持機構133をY
4だけ直動移動する。この際、回転機構121によるホルダ把持機構133の回転量はゼロである。その後、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、第4の処理槽150dに基板131および基板ホルダ132を収容する。第5の処理槽150eに関しても、第4の処理槽150dと同様である。
【0042】
第6の処理槽150fは角変位および直線変位をともに有するため、第6の処理槽150fに関する角変位補償値θ
6および直線変位補償値Y
6はゼロでない特定の値となる。第6の処理槽150fに基板131および基板ホルダ132を収容する場合、制御装置141は、回転機構121を制御して、ホルダ把持機構133をθ
6だけ回転移動する。さらに制御装置141は、直動機構122を制御して、ホルダ把持機構133をY
6だけ直動移動する。その後、制御装置141は、垂直搬送機構114を制御して、第6の処理槽150fに基板131および基板ホルダ132を収容する。
【0043】
上記の制御を行う基板搬送装置もしくは基板搬送装置の制御装置または上記の変位補償方法によれば、処理槽に変位が生じていても、その変位を補償することが可能となる。換言すれば、装置の組み立ての際に処理槽の位置調整が不要となり、装置の組み立ての手間とコストを削減することが可能となる。ただし、装置の組み立ての際に処理槽の位置を調整したうえで上記の制御を行ってもよい。上記の制御は処理槽に配管を据え付けたのちでも可能である。よって、処理槽内の液体による各部品の実際の変形量を考慮して処理槽の変位を補償することも可能となる。
【0044】
本実施形態の回転機構121によるホルダ把持機構133の回転移動の中心軸は、ホルダ把持機構133の少なくとも一部を通過する。ホルダ把持機構133の中心は、ホルダ把持機構133の回転移動の中心軸上にあることが好ましい。これにより、回転軸と基板の中心との距離が近くなり、ホルダ把持機構133を精度よく制御することができる。ま
た、本実施形態の回転機構121は、基板搬送部110とは独立して、アーム115を回転移動および直動移動することなくホルダ把持機構133を回転移動することができる。本実施形態の直動機構122は、基板搬送部110とは独立して、アーム115を回転移動および直動移動することなくホルダ把持機構133を直動移動することができる。換言すれば、処理槽の変位の補償は、基板の搬送から独立して実行することができる。これにより、基板を搬送方向および鉛直方向に移動することなく、各処理槽の変位を補償することができる。この記載は例示した構成以外の構成を排斥するものではない。
【0045】
図7は、処理槽の変位を補償する方法を示すフローチャートである。ここでは、第1の処理槽150aに収容されている基板131および基板ホルダ132を第2の処理槽150bへ搬送し、そこからさらに第nの処理槽まで繰り返し搬送する場合を例に説明する。説明の簡略化のため、制御の開始時は、ホルダ把持機構133が搬送すべき基板131および基板ホルダ132が収容された処理槽の上部に位置している状態とする。制御の開始に先立ち、処理槽の角変位の補償の要否、処理槽の直線変位の補償の要否、各処理槽での処理時間T
nおよびnの最大値n
maxは入力装置143によって入力され、記憶装置142に記憶されている。各処理槽に関する角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nは事前に測定されて、記憶装置142に記憶されているものとする。
【0046】
ステップ701:制御装置141は、制御の開始時におけるnを1と設定する。
ステップ702:制御装置141は、垂直搬送機構114およびホルダ把持機構133を制御して、第nの処理槽に収容されている基板ホルダ132を把持する。ループの1週目においては、第1の処理槽150aに収容されている基板ホルダ132が対象となる。
ステップ703:制御装置141は、nに1を足した数値を新たなnとする。
ステップ704:制御装置141は、水平搬送機構112および垂直搬送機構114を制御して、基板131および基板ホルダ132を第nの処理槽の上部へ搬送する。ループの1週目においては、第2の処理槽150bが対象となる。
ステップ705:制御装置141は、記憶装置142に記憶された、処理槽の角変位の補償の要否を読み込む。角変位の補償が必要であればステップ706へ進み、角変位の補償が不要であればステップ708へ進む。
ステップ706:制御装置141は、記憶装置142に記憶された角変位補償値θ
nを読み込む。ループの1週目においては、角変位補償値θ
2が読み込まれる。
ステップ707:制御装置141は、角変位補償値θ
nに基づいて回転機構121を制御し、ホルダ把持機構133を回転移動する。
ステップ708:制御装置141は、記憶装置142に記憶された、処理槽の直線変位の補償の要否を読み込む。直線変位の補償が必要であればステップ709へ進み、直線変位の補償が不要であればステップ711へ進む。
ステップ709:制御装置141は、記憶装置142に記憶された直線変位補償値Y
nを読み込む。ループの1週目においては、直線変位補償値Y
2が読み込まれる。
ステップ710:制御装置141は、直線変位補償値Y
nに基づいて直動機構122を制御し、ホルダ把持機構133を直動移動する。
ステップ711:制御装置141は、垂直搬送機構114およびホルダ把持機構133を制御し、第nの処理槽に基板131および基板ホルダ132を収容し、ホルダ把持機構133による基板ホルダ132の把持を解除し、処理時間T
nのあいだ待機する。搬送すべき基板が2枚以上存在する場合、制御装置141は、T
nの間に他の基板の搬送を制御してもよい。
ステップ712:制御装置141は、記憶装置142からn
maxを読み込み、現在のnがn
max未満かどうか判定する。現在のnがn
max未満の場合はステップ702に戻り、現在のnがn
max未満ではない場合(すなわち、n=n
maxとなった場合)は制御を終了する。
【0047】
以上のフローチャートは一例であり、ステップの変更・追加・削除等が可能である。たとえば上記のフローチャートでは、制御装置141は、回転機構121および直動機構122を別々のステップで制御するものとした。制御装置141は、角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nの双方を読み込んだのち、回転機構121と直動機構122を同時に制御してもよい。制御装置141は、水平搬送機構112と同時に(たとえばステップ703とステップ704の間に)回転機構121および/または直動機構122を制御してもよい。たとえば電解めっき装置100が回転機構121または直動機構122のどちらかを有さない場合は、対応するステップを削除してもよい。たとえば回転機構121がロータリエンコーダを備える場合または直動機構122がリニアエンコーダを備える場合は、クローズドループ制御を実施するためのステップを加えてもよい。たとえばステップ706および709において、ユーザが手動で角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nを入力してもよい。角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nは、少なくとも一つの処理槽に関して記憶されていればよい。角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nのどちらかのみが記憶されていてもよい。変位補償値が記憶されていない処理槽に関する変位補償値をゼロとみなしてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0048】
上記の制御を行う基板搬送装置もしくは基板搬送装置の制御装置または上記の制御方法によれば、いったん処理槽に関する角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nを測定し記憶すれば、電解めっき装置100の運転中に処理槽の変位を自動で補償することができる。
【0049】
また、上記の制御方法はプログラムによって実施されてよい。当該プログラムは、コンピュータ(たとえば制御装置141)可読な非一過性の記録媒体に記録されてよい。非一過性の記録媒体は、たとえば記憶装置142であってよい。非一過性の記録媒体は、たとえばCD−ROMやDVD−ROMなどであってもよい。
【0050】
<第2実施形態>
前述の実施形態で説明したフローチャートを実行するためには、事前に処理槽に関する変位補償値を測定し記憶する必要がある。ユーザがこれらの補償値を手動で測定してもよいが、処理槽の槽数が増加するにつれ測定の手間も増加する。そこで本実施形態では、処理槽に関する変位補償値を自動で取得する基板搬送装置、基板搬送装置の制御装置、方法、プログラムおよび当該プログラムが記録された記録媒体について説明する。
【0051】
図8は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の、アーム115付近の斜視図である。
図8に示す電解めっき装置100は、これまで説明した構成に加えて衝突検知機構800を備える。
【0052】
衝突検知機構800は、基板ホルダ132と処理槽の衝突を検知する任意の機構である。ただし、基板ホルダ132が処理槽に収容されない構成である場合(例として、基板ホルダ132が基板131の上端のみを保持している構成)は、基板131を処理槽の衝突を検知してもよい。この場合、基板131はダミーの基板であってよい。
図8の例における衝突検知機構800は、回転機構121および直動機構122の負荷の変化から、基板ホルダ132と処理槽の衝突を検知する機構である。衝突検知機構800として、通電センサ、静電容量センサ、加速度センサ、マイクロスイッチなどの種々の機構を採用することが可能である。
【0053】
制御装置141は、基板ホルダ132を所定の処理槽に収容した状態で回転機構121を制御し、衝突検知機構800により基板ホルダ132と処理槽の衝突が検知されるまで、ホルダ把持機構133を一方向に回転移動する。衝突が検知された場合、制御装置14
1は、回転機構121によるホルダ把持機構133の回転移動を停止する。制御装置141は、衝突が検知されるまでのホルダ把持機構133の回転量を記憶装置142に記憶する。制御装置141は、記憶された回転量に基づいて、この処理槽に関する角変位補償値θ
nを算出する。ホルダ把持機構133を他方向に回転移動した場合に基板ホルダ132と処理槽が衝突するまでの回転量をさらに用い、それぞれの衝突時の回転量の平均値からθ
nを算出してもよい。
【0054】
以下では、ホルダ把持機構133の回転について、装置を上部から見た場合の反時計回りの回転を正の方向、時計回りの回転を負の方向として説明する。たとえば、回転量がゼロの状態から、ホルダ把持機構133を+5度回転移動した場合に衝突が検知されたとする。さらに、回転量をゼロに戻したのち、ホルダ把持機構133を−1度回転移動した場合に衝突が検知されたとする。その場合、制御装置141はその処理槽に関するθ
nを+2度({5+(−1)}/2=2)であると算出し、記憶装置142に記憶する。
【0055】
直線変位補償値Y
nに関しても、角変位補償値θ
nの測定手法と同様の手法で測定することができる。以下では、ホルダ把持機構133の直動について、水平ガイド111から遠ざかる方向を正の方向、水平ガイド111に近づく方向を負の方向として説明する。たとえば、直動量がゼロの状態から、ホルダ把持機構133を+3.0センチメートル直動移動した場合に衝突が検知されたとする。さらに、直動量をゼロに戻したのち、ホルダ把持機構133を−2.0センチメートル直動移動した場合に衝突が検知されたとする。その場合、制御装置141はその処理槽に関するY
nを+0.5センチメートルであると算出し、記憶装置142に記憶する。
【0056】
図9は、衝突検知機構800に代えてカメラ900を備える電解めっき装置100の、アーム115付近の斜視図である。カメラ900は、基板131と処理槽150を撮影することができる位置に備えられていることが好ましい。
図9の例では、カメラ900はアーム115に備えられている。電解めっき装置100はカメラ900を複数備えてもよいし、カメラ900の撮影方向を変更できる構成を備えてもよい。
【0057】
制御装置141は、カメラ900により取得された画像を処理することで、基板131と所定の処理槽の位置関係を求める。制御装置141は、基板131と処理槽の位置関係から、その処理槽に関する変位補償値(たとえば角変位補償値θ
nまたは直線変位補償値Y
nの双方またはどちらか一方)を算出する。カメラ900に代えて、光学測位計などによって基板131と処理槽の位置関係を求めてもよい。
【0058】
上記の制御を行う基板搬送装置もしくは基板搬送装置の制御装置または上記の方法によれば、処理槽150のそれぞれについての変位補償値を自動で取得することができる。
【0059】
また、上記の方法はプログラムによって実施されてよい。当該プログラムは、コンピュータ(たとえば制御装置141)可読な非一過性の記録媒体に記録されてよい。非一過性の記録媒体は、たとえば記憶装置142であってよい。非一過性の記録媒体は、たとえばCD−ROMやDVD−ROMなどであってもよい。
【0060】
<第3実施形態>
電解めっき装置の基板ホルダの製造および組み立てにおいては、製造誤差および組み立て誤差が生じ得る。製造誤差および組み立て誤差を原因として、基板ホルダ実際の形状と理想の形状の間には変位が存在し得る。基板ホルダの変位が存在する場合、基板搬送装置が処理槽の所定の位置に基板を収容することができない可能性がある。その結果、たとえば装置が電解めっき装置である場合は、電流密度が所望の値から外れ、めっきの品質を悪化させ得る。電解めっき装置が複数の基板ホルダを有する場合は、使用する基板ホルダに
よってめっきの品質が変化し得る。そこで本実施形態では、基板ホルダの変位を補償する基板搬送装置、基板搬送装置の制御装置、変位補償方法、当該方法を実施するプログラムおよび当該プログラムが記録された記録媒体について説明する。
【0061】
本明細書における「基板ホルダの変位」とは、基板ホルダ132の実際の形状と理想の形状の間の変位であって、電解めっき装置100が処理槽の所定の位置に基板131を収容することができない要因となるものを指す。基板ホルダの変位には、製造誤差による変位、組み立て誤差による変位、変形による変位などを含み、変位の生じた原因を問わない。基板ホルダの変位には、任意の方向を軸とした回転量で表現することができる変位、および、任意の方向への直動量で表現することができる変位を含む。特に、基板ホルダ132の変位には、角変位と直線変位とを含む。
【0062】
本明細書における「基板ホルダの変位の補償」とは、何らかの手段によって、基板ホルダ132の変位を打ち消すことをいう。ただし、基板ホルダ132の変位を完全に打ち消すことに限らない。本実施形態にかかる電解めっき装置100は、移動機構120を作動することで基板ホルダ132の変位を補償する。
【0063】
本明細書における「基板ホルダに関する変位補償値」とは、基板ホルダ132の変位を補償するためのホルダ把持機構133の移動量である。第kの基板ホルダに関する変位補償値には、角変位補償値θ’
kと直線変位補償値Y’
kを含む。
【0064】
本明細書における「角変位補償値θ’
k」とは、第kの基板ホルダの角変位を補償するための、回転機構121によるホルダ把持機構133の回転量である。角変位補償値θ’
kと第kの基板ホルダの角変位は一致していることが好ましい。以下では、基板ホルダの角変位がゼロのときの角変位補償値θ’
kをゼロとする。
【0065】
本明細書における「直線変位補償値Y’
k」とは、第kの基板ホルダの直線変位を補償するための、直動機構122によるホルダ把持機構133の直動量である。直線変位補償値Y’
kと第kの基板ホルダの直線変位は一致していることが好ましい。以下では、基板ホルダの直線変位がゼロのときの直線変位補償値Y’
kをゼロとする。
【0066】
図10は、本実施形態にかかる電解めっき装置100の、アーム115付近の斜視図である。基板ホルダ132は、ひとつまたは複数備えられている。基板ホルダ132は、図示しないストッカに保管されていてもよく、複数の処理槽150のいずれかに収容されていてもよい。
図10では、基板ホルダ132のほか、基板131’を保持している基板ホルダ132’および基板を保持していない基板ホルダ132’’が示されている。基板ホルダ132にはIDタグ1001が取り付けられている。IDタグ1001として、一次元バーコード、二次元バーコード、RFIDタグなどを採用可能である。IDタグ1001には、基板ホルダ132を特定するためのID番号が格納されている。基板ホルダ132が複数存在する場合、複数の基板ホルダ132のすべてにIDタグが備えられていることが好ましい。ただし、複数の基板ホルダ132の少なくとも一つにIDタグが備えられていれば、以下に説明する制御を実施することができる。複数の基板ホルダ132は、それぞれ別の処理槽に収容されているか、図示しないホルダストッカに保管されていてよい。
【0067】
電解めっき装置100は、IDタグ1001の情報を読み取るためのID読取装置1002を備える。IDタグ1001の情報を読み取ることが可能である限り、ID読取装置1002は任意の位置に配置することができる。本実施形態のID読取装置1002はホルダ把持機構133に備えられている。
【0068】
図11は、基板ホルダ132の変位を補償する方法を示すフローチャートである。ここでは、
図7に示したフローチャートのステップ710と711の間に
図11のフローチャートが実施されるものとして説明する。制御の開始に先立ち、基板ホルダ132の角変位の補償の要否および基板ホルダ132の直線変位の補償の要否は入力装置143を介して入力され、記憶装置142に記憶されている。各基板ホルダに関する角変位補償値θ’
kおよび直線変位補償値Y’
kは、事前に測定されて記憶装置142に記憶されているものとする。
【0069】
ステップ1101:制御装置141は、IDタグ1001を読み取るようID読取装置1002を制御し、ホルダ把持機構133が現在把持している基板ホルダ132のID番号を特定する。
ステップ1102:制御装置141は、記憶装置142に記憶された基板ホルダ132の角変位の補償の要否を読み込む。角変位の補償が必要であればステップ1103へ進み、角変位の補償が不要であればステップ1105へ進む。
ステップ1103:制御装置141は、ID番号を特定した基板ホルダ132に関する角変位補償値θ’
kを記憶装置142から読み込む。
ステップ1104:制御装置141は、角変位補償値θ’
kに基づいて回転機構121を制御し、ホルダ把持機構133を回転移動する。
ステップ1105:制御装置141は、記憶装置142に記憶された基板ホルダ132の直線変位の補償の要否を読み込む。直線変位の補償が必要であればステップ1106へ進み、直線変位の補償が不要であれば処理を終了する(ステップ711に進む)。
ステップ1106:制御装置141は、ID番号を特定した基板ホルダ132に関する直線変位補償値Y’
kを記憶装置142から読み込む。
ステップ1107:制御装置141は、直線変位補償値Y’
kに基づいて直動機構122を制御し、ホルダ把持機構133を直動移動する。その後に制御装置141は、処理を終了する(ステップ711に進む)。
【0070】
以上のフローチャートは一例であり、ステップの変更・追加・削除等が可能である。たとえば上記のフローチャートは、ステップ703と704の間で実施されてもよい。上記のフローチャートは、ステップ711において基板ホルダ132の把持を解除する前に実施されてもよい。θ’
kおよびY’
kはIDタグ1001に記録されていてもよい。たとえば電解めっき装置100が回転機構121または直動機構122を有さない場合は、対応するステップを削除してもよい。ユーザの目視によりIDタグ1001を読み取ることで、基板ホルダ132のID番号を特定してもよい。上記のフローチャートでは、ステップ706でθ
nに基づいてホルダ把持機構133を回転移動したのち、ステップ1103でθ’
kに基づいてホルダ把持機構133を回転移動する(処理中に回転機構121が2回動作する)例を示した。これに代え、たとえばθ
nとθ’
kを加減算した値に基づいて基板を回転移動する(処理中に回転機構121が1回のみ動作する)手法を採用することもできる。ステップ1103およびステップ1106において、ユーザが手動で角変位補償値θ’
kおよび直線変位補償値Y’
kを入力してもよい。角変位補償値θ’
kおよび直線変位補償値Y’
kは、少なくとも一つの基板ホルダに関して記憶されていればよい。角変位補償値θ’
kおよび直線変位補償値Y’
kのどちらかのみが記憶されていてもよい。ステップ1101において、基板ホルダ132のIDタグ1001を読み込むことができなかった場合(基板ホルダ132にIDタグ1001が付されていなかった場合など)、制御装置141は、その基板ホルダ132のID番号を「ID番号なし」として特定してもよい。「ID番号なし」であるか、または変位補償値が記憶されていない基板ホルダ132に関する変位補償値はゼロとみなして制御してもよい。
【0071】
基板搬送装置は、処理槽の変位および基板ホルダの変位のいずれかのみを補償してもよいし、その双方を補償してもよい。処理槽の変位と基板ホルダの変位の双方を補償する場
合は、どちらか一方のみを補償する場合よりも高い精度で、処理槽の所定の位置に基板を収容することができるであろう。
【0072】
角変位補償値θ’
kおよび直線変位補償値Y’
kはホルダごとに手動で測定してもよく、第2実施形態で説明した方法を基板ホルダ132に対して適用することなどにより自動で取得してもよい。
【0073】
上記の制御を行う基板搬送装置もしくは基板搬送装置の制御装置または上記の変位補償方法によれば、基板ホルダの変位を補償することができ、基板を処理槽の理想の位置(に近い位置)に収容することができる。その結果、たとえば装置が電解めっき装置である場合は、使用する基板ホルダによるめっきの品質のばらつきを抑制することが可能となる。
【0074】
また、上記の変位補償方法はプログラムによって実施されてよい。当該プログラムは、コンピュータ(たとえば制御装置141)可読な非一過性の記録媒体に記録されてよい。非一過性の記録媒体は、たとえば記憶装置142であってよい。非一過性の記録媒体は、たとえばCD−ROMやDVD−ROMなどであってもよい。
【0075】
<第4実施形態>
本実施形態では、これまでの実施形態に加え、移動機構としてさらに第1の基板傾斜機構および/または第2の基板傾斜機構を備える基板搬送装置を説明する。
【0076】
図12は、本実施形態にかかるアーム115付近の斜視図である。本実施形態にかかる電解めっき装置100は、移動機構120としてさらに第1の傾斜機構1201および第2の傾斜機構1202を備えている。第1の傾斜機構1201および第2の傾斜機構1202は、回転機構121とホルダ把持機構133の間に設けられている。第1の傾斜機構1201は、水平ガイド111の長手方向(X軸方向)を軸としてホルダ把持機構133を傾斜移動する機構である。第2の傾斜機構1202は、アーム115の長手方向(Y軸方向)を軸としてホルダ把持機構133を傾斜移動する機構である。電解めっき装置100は、第1の傾斜機構1201および第2の傾斜機構1202のいずれかのみを備えてもよい。本実施形態にかかる制御装置141は、第1の傾斜機構1201および/または第2の傾斜機構1202を、回転機構121および直動機構122と同様の手法で制御する。電解めっき装置100は、さらに衝突検知機構800および/またはカメラ900を備えてもよい。
【0077】
上記の制御を行う基板搬送装置もしくは基板搬送装置の制御装置または上記の変位補償方法によれば、処理槽がX軸またはY軸を中心に傾いている場合であっても処理槽の変位を補償することができる。また上記の基板搬送装置、制御装置または変位補償方法によれば、基板ホルダがX軸またはY軸を中心に傾いて基板を保持している場合であっても、基板ホルダの変位を補償することができる。
【0078】
本実施形態の第1の傾斜機構1201および第2の傾斜機構1202は、複数の処理槽150の上部に位置する。これにより、各処理槽および基板ホルダの変位を精度よく補償することができる。また、本実施形態の第1の傾斜機構1201および第2の傾斜機構1202は、基板搬送部110とは独立してホルダ把持機構133を傾斜移動することができる。これにより、基板を搬送方向および鉛直方向に移動することなく、各処理槽および基板ホルダの変位を補償することができる。ただし上記の記載は、例示した構成以外の構成を排斥するものではない。
【0079】
また、上記の変位補償方法はプログラムによって実施されてよい。当該プログラムは、コンピュータ(たとえば制御装置141)可読な非一過性の記録媒体に記録されてよい。
非一過性の記録媒体は、たとえば記憶装置142であってよい。非一過性の記録媒体は、たとえばCD−ROMやDVD−ROMなどであってもよい。
【0080】
<第5実施形態>
第1実施形態では、各処理槽に関する角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nが事前に測定されて、記憶装置142に記憶されているものとして説明した。第5実施形態では、これらの補償値を事前に測定する必要がない基板搬送装置、基板搬送装置の制御装置、方法、プログラムおよび当該プログラムが記録された記録媒体について説明する。本実施形態の電解めっき装置100は、第2実施形態で述べた衝突検知機構800、カメラ900または光学測位計などを備え、基板の搬送の際に、変位補償値を自動で取得する。
【0081】
図13は、本実施形態における処理槽の変位を補償する方法を示すフローチャートである。ここでは、電解めっき装置100が光学測位計を備える場合について説明する。制御条件は、各処理槽に関する角変位補償値θ
nおよび直線変位補償値Y
nが事前に測定されていない点を除き、
図7のフローチャートで示した場合と同等である。
【0082】
ステップ1301〜ステップ1304:これらのステップは、ステップ701〜ステップ704と同等である。
ステップ1305:制御装置141は、光学測位計による測位を実施し、基板131と第nの処理槽の位置関係を求める。
ステップ1306:このステップは、ステップ705と同等である。
ステップ1307:制御装置141は、ステップ1305で求めた基板131と第nの処理槽の位置関係から、角変位補償値θ
nを算出する。
ステップ1308〜ステップ1309:これらのステップは、ステップ707〜708と同等である。
ステップ1310:制御装置141は、ステップ1305で求めた基板131と第nの処理槽の位置関係から、直線変位補償値Y
nを算出する。
ステップ1311〜ステップ1313:これらのステップは、ステップ710〜712と同等である。
【0083】
以上のフローチャートは一例であり、ステップの変更・追加・削除等が可能である。制御装置141は、ステップ1305で測位を行った直後に変位補償値を算出してもよい。制御装置141は、算出した変位補償値を記憶装置142に記憶し、次回以降の搬送において記憶された変位補償値を用いてもよい。制御装置141は、搬送のたびに変位補償値を算出してもよい。この場合、変位補償値の経時変化に対応できるという効果がある。電解めっき装置100が光学測位計ではなく衝突検知機構800またはカメラ900を備える場合は、それらを用いて変位補償値を算出してよい。処理槽に関する変位補償値ではなく、ホルダに関する変位補償値について
図13のフローチャートを適用してもよい。
【0084】
また、上記の制御方法はプログラムによって実施されてよい。当該プログラムは、コンピュータ(たとえば制御装置141)可読な非一過性の記録媒体に記録されてよい。非一過性の記録媒体は、たとえば記憶装置142であってよい。非一過性の記録媒体は、たとえばCD−ROMやDVD−ROMなどであってもよい。
【0085】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、複数の水平ガイドを備える装置(たとえば2本の水平ガイドを対向するように備え、それぞれのガイドによって2レーンで基板を搬送可能な装置)にも適用することが可能である。本発明は、1本の水平ガイドに複数の水平搬送機構を備える装置にも適用することが可能である。
【0086】
以上のように、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0087】
本願は、一実施形態として、基板を保持するための基板ホルダと、基板ホルダを把持するホルダ把持機構と、基板ホルダを搬送する基板搬送部と、鉛直方向を軸としてホルダ把持機構を回転移動する回転機構と、基板搬送部による基板ホルダの搬送方向および鉛直方向によって規定される面に垂直な方向にホルダ把持機構を直動移動する直動機構と、を備える基板搬送装置を開示する。
【0088】
この基板搬送装置は、回転機構および直動機構を備えることで、ホルダ把持機構を回転移動および直動移動することができ、処理槽の変位および/または基板ホルダの変位を補償することができるという効果を一例として奏する。この装置は、処理槽の変位を補償することで、装置の組み立ての手間とコストを削減することができるという効果を一例として奏する。この装置は、基板ホルダの変位を補償することで、基板を処理槽の理想の位置(に近い位置)に収容することができるという効果を一例として奏する。
【0089】
さらに本願は、一実施形態として、基板搬送装置の制御装置であって、基板搬送装置は、基板を保持するための一つまたは複数の基板ホルダと、一つまたは複数の基板ホルダのうちの一つを把持するホルダ把持機構と、基板を処理するための一つまたは複数の処理槽と、ホルダ把持機構を移動するための移動機構と、を備え、制御装置は、所定の基板ホルダに関する変位補償値に基づいて、所定の基板ホルダの変位を補償するよう移動機構を制御する、基板搬送装置の制御装置を開示する。
【0090】
さらに本願は、一実施形態として、基板搬送装置の制御装置であって、基板搬送装置は、一つまたは複数の基板ホルダの少なくとも一つに関する変位補償値を記憶する記憶装置と、ID読取装置と、を備え、一つまたは複数の基板ホルダの少なくとも一つは、IDタグを備え、制御装置は、ID読取装置により所定の基板ホルダのIDタグの情報を読み取ることで、所定の基板ホルダのID番号を特定し、ID番号に基づいて、所定の基板ホルダに関する変位補償値を記憶装置から読み込む、基板搬送装置の制御装置を開示する。
【0091】
これらの制御装置は、所定の構成を備える基板搬送装置において、処理槽の変位を補償する制御または基板ホルダの変位を補償する制御を可能にするという効果を一例として奏する。
【0092】
さらに本願は、一実施形態として、処理槽に基板を収容するための基板搬送装置における変位補償方法であって、ホルダ把持機構を移動するための移動機構を作動して、所定の処理槽の変位を補償するステップを含む、変位補償方法、当該方法を実施する基板搬送装置のためのプログラムおよび当該プログラムが記録された非一過性の記録媒体を開示する。
【0093】
さらに本願は、一実施形態として、変位補償方法であって、所定の処理槽の変位を補償するステップは、所定の処理槽に関する変位補償値に基づいて移動機構を制御するステップを含む、変位補償方法を開示する。
【0094】
これらの方法、プログラムおよび記録媒体は、変位補償値に基づき処理槽の変位を補償することで、装置の組み立ての手間とコストを削減することができるという効果を一例と
して奏する。
【0095】
さらに本願は、一実施形態として、処理槽に基板を収容するための基板搬送装置における変位補償方法であって、基板搬送装置は、基板を保持するための一つまたは複数の基板ホルダと、一つまたは複数の基板ホルダのうちの一つを把持するホルダ把持機構と、を備え、変位補償方法は、ホルダ把持機構を移動するための移動機構を作動して、所定の基板ホルダの変位を補償するステップを含む、変位補償方法、当該方法を実施する基板搬送装置のためのプログラムおよび当該プログラムが記録された非一過性の記録媒体を開示する。
【0096】
これらの方法、プログラムおよび記録媒体は、基板ホルダの変位を補償することができるという効果を一例として奏する。これらの方法、プログラムおよび記録媒体は、基板ホルダの変位を補償することで、基板を処理槽の理想の位置(に近い位置)に収容することができるという効果を一例として奏する。