特許第6865624号(P6865624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865624
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】立体映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 35/20 20210101AFI20210419BHJP
   G02B 30/10 20200101ALI20210419BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20210419BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20210419BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20210419BHJP
【FI】
   G03B35/20
   G02B30/10
   G02B3/00 A
   G02B13/00
   H04N13/307
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-81782(P2017-81782)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-180387(P2018-180387A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡市 直人
(72)【発明者】
【氏名】河北 真宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】三科 智之
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 岡市,渡邉,佐々木,洗井,河北,三科,複数の直視型ディスプレーパネルを用いたインテグラル立体表示,映像情報メディア学会技術報告,日本,一般社団法人 映像情報メディア学会,2016年 8月 8日,Vol.40,No.26,ME2016-82,p1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/20
G02B 3/00
G02B 13/00
G02B 30/10
H04N 13/307
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグラル方式で要素画像群を表示する立体映像表示装置であって、
前記要素画像群を分割した分割要素画像群を表示する複数の直視型ディスプレイと、
それぞれの前記直視型ディスプレイの前面に配置され、2次元状に配列された要素レンズを有するレンズアレイと、
前記レンズアレイに対応する凸レンズを互いに隣接配置し、前記レンズアレイからの入射光を拡大して1つの前記要素画像群として合成する合成光学系と、を備え、
前記凸レンズの光軸が、前記レンズアレイの中心軸に対し、前記立体映像表示装置の外周側にシフトしていることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
前記合成光学系は、前記レンズアレイの前面側から順に、前記レンズアレイの中心軸上に配置された凹レンズと、前記凸レンズとを備えることを特徴とする請求項1に記載の立体映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグラル方式の立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インテグラル方式の立体映像表示装置は、特殊な眼鏡が不要で裸眼による立体視が可能な3次元映像表示デバイスである。図6(a)に示すように、従来の立体映像表示装置9は、液晶パネルや有機EL(Electro-Luminescence)などの直視型ディスプレイPと、その前面に置かれた2次元のレンズアレイLとを備える。このレンズアレイLは、図6(b)に示すように、要素レンズLが2次元状に配列されたものである。また、図6(a)に示すように、インテグラル方式では、要素レンズLと要素画像Gとが対応しており、要素レンズLにより要素画像Gが空間中に投影され、立体映像Zが形成される。
【0003】
インテグラル方式において、立体映像Zの画素数、視域、奥行き再現範囲を向上させるためには、直視型ディスプレイPに非常に多くの画素数を表示させる必要がある。ところが、現時点においては、スーパーハイビジョンを大きく超える画素数の直視型ディスプレイPが存在しない。よって、単体の直視型ディスプレイPによるインテグラル立体映像の品質の向上が困難なため、複数の直視型ディスプレイPを用いて、多画素化する技術が知られている。
【0004】
複数の直視型ディスプレイPを結合して多画素化を図る際、そのまま並列に配置しただけでは、直視型ディスプレイPのベゼル部分(枠部分)があるため、直視型ディスプレイP間にギャップが生じてしまう。そこで、そのギャップをなくして、複数の映像をシームレスに結合するために、合成光学系を用いる手法が知られている(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献1に記載の立体映像表示装置9Aは、図7(a)に示すように、縦横に4台配列した直視型ディスプレイPの前面にレンズアレイLを配置し、それぞれの直視型ディスプレイPにおいて分割された立体映像を表示する。そして、立体映像表示装置9Aは、図7(b)に示すように、その前面に合成光学系90を配置し、立体映像を拡大し結合する。
【0006】
例えば、合成光学系90としては、図8に示すように、凹フレネルレンズ91及び凸レンズ93を組み合わせたものがあげられる。そして、立体映像表示装置9Aは、合成光学系90を用いて直視型ディスプレイPのディスプレイ面の後ろに虚像(拡大像)αを生成することで、直視型ディスプレイP間のギャップを埋めて複数の立体映像を結合することができる。
なお、図8では、要素レンズLからの光線を実線で図示し、虚像αを形成する光線を破線で図示した。
【0007】
ここで、レンズアレイLと凸レンズ93との距離をa、虚像αと凸レンズ93との距離をb、凸レンズ93の焦点距離をF、立体映像の拡大率をmとすると、レンズの公式より、以下の式(1)が成立する。
【0008】
【数1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】岡市,渡邉,佐々木,洗井,河北,三科:“複数の直視型ディスプレーパネルを用いたインテグラル立体表示,”映情学技報,Vol.40,No.26,ME2016-82,pp.1-4,(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した立体映像表示装置9Aでは、図9に示すように、同一構成の合成光学系90を並列に配列する。この合成光学系90では、立体映像にギャップができないように、隣り合う凸レンズ93を密着させている。ここで、立体映像を連続的に表示できる範囲を持たせるため、複数の虚像面が重複するように、距離a,b及び、焦点距離Fを適切に設計する必要がある。なお、虚像面とは、虚像αが形成される面のことである。
【0011】
図9において、虚像面の重複幅wと凸レンズ93の接合点βとにより、虚像面の重複角度θが決定される。この重複角度θの範囲内(例えば、視点V)で視聴する場合、図10に示すように、立体映像が連続的に結合している。一方、重複角度θの範囲外(例えば、視点V)で視聴する場合、図11に示すように、立体映像間にギャップが発生し、立体映像が連続的に結合しない。
【0012】
ここで、重複角度θは、直視型ディスプレイPの有効表示領域の幅(レンズアレイLの幅)をw、ベゼルを含む直視型ディスプレイP全体の幅(凸レンズ93の幅)をwとすると、以下の式(2)で表される。この重複角度θの値が大きいほど、視聴者が動いた場合でも、広い範囲で立体映像を途切れることなく連続的に視聴することができる。
【0013】
【数2】
【0014】
この立体映像表示装置9Aでは、レンズアレイLによって形成される立体映像の視域角をφとする。この視域角φは、図12に示すように、虚像面からの光の広がりを考慮することになるので、要素レンズLのピッチをp、要素レンズLの焦点距離をfとすると、以下の式(3)で表される。
なお、図12では、図面を見やすくするため、虚像α、凸レンズ93の位置のみを図示した。
【0015】
【数3】
【0016】
視域角φの全体で立体映像の結合部を途切れなくするためには、重複角度θを視域角φより大きくする必要がある。ところが、立体映像表示装置9Aのように、凸レンズ93の光軸と直視型ディスプレイPの中心が同一軸上にある場合、重複角度θを十分に取ることができず、立体映像を連続的に視聴できる範囲を狭めてしまうという課題がある。
【0017】
そこで、本発明は、立体映像を連続的に視聴できる範囲を拡大することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した課題に鑑みて、本発明に係る立体映像表示装置は、インテグラル方式で要素画像群を表示する立体映像表示装置であって、要素画像群を分割した分割要素画像群を表示する複数の直視型ディスプレイと、それぞれの直視型ディスプレイの前面に配置され、2次元状に配列された要素レンズを有するレンズアレイと、レンズアレイに対応する凸レンズを互いに隣接配置し、レンズアレイからの入射光を拡大して1つの要素画像群として合成する合成光学系と、を備える構成とした。
【0019】
かかる立体映像表示装置によれば、凸レンズの光軸が、レンズアレイの中心軸に対し、立体映像表示装置の外周側にシフトしている。これにより、虚像面の重複部分を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本発明に係る立体映像表示装置によれば、凸レンズの光軸を外周側にシフトさせたので、虚像面の重複部分を大きくし、立体映像を連続的に視聴できる範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る立体映像表示装置の構成を示す概略図である。
図2図1の立体映像表示装置の上面図である。
図3図1の立体映像表示装置の正面図である。
図4】凸レンズの平行移動による虚像面のシフトを説明する説明図であり、(a)はレンズアレイ面と凸レンズ面の中心が同一軸上にある場合、(b)は凸レンズを平行移動させた場合を示す。
図5図4の構成を並列に配置したときの重複角度を説明する説明図であり、(a)はレンズアレイ面と凸レンズ面の中心が同一軸上にある場合、(b)は凸レンズを平行移動させた場合を示す。
図6】従来技術における立体映像表示装置の構成を表す概略図である。
図7】従来技術において、複数の直視型ディスプレイを用いた立体映像表示装置の構成を表す概略図である。
図8】従来技術における合成光学系を説明する説明図である。
図9】複数の直視型ディスプレイに合成光学系を適用したときの説明図である。
図10図9の重複角度の範囲内で表示される立体映像の一例を示す図である。
図11図9の重複角度の範囲外で表示される立体映像の一例を示す図である。
図12】従来技術において、立体映像表示装置の視域角を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0023】
[立体映像表示装置の構成]
図1を参照し、本発明の実施形態に係る立体映像表示装置1の構成について説明する。
立体映像表示装置1は、インテグラル方式で立体映像(要素画像群)を表示するものであり、図1に示すように、拡散光投射装置10と、ディスプレイ(直視型ディスプレイ)20と、レンズアレイ30と、合成光学系40とを備える。本実施形態では、立体映像表示装置1は、拡散光投射装置10、ディスプレイ20、レンズアレイ30及び合成光学系40を4組備えることとする。
なお、図1では、図面を見やすくするため、一部符号の図示を省略した。
【0024】
拡散光投射装置10は、後記するディスプレイ20のバックライトであり、ディスプレイ20の背面側に配置されている。拡散光投射装置10は、ディスプレイ20に対応するように同一平面上に配置されており、拡散光をディスプレイ20に投射する。また、拡散光投射装置10は、ディスプレイ20から任意の距離に配置することができる。
【0025】
拡散光投射装置10としては、例えば、液晶パネル用の一般的なバックライトを用いることができる。このようなバックライトは、例えば、バックライト用光源、導光板や拡散板、光拡散フィルム等を備えている。バックライト用光源としては、例えば、LEDやCCFL(冷陰極管)等を用いることができる。
なお、図1では、拡散光投射装置10からの投射光を破線で図示した。
【0026】
ディスプレイ20は、液晶パネルなどの直視型ディスプレイであり、拡散光投射装置10から投射される拡散光により、立体映像(分割要素画像群)を表示する。本実施形態では、4個のディスプレイ20が、同一平面上で上下左右に並ぶように配置されている。このディスプレイ20としては、スーパーハイビジョン(7680×4320画素)の透過型液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを用いることができる。
【0027】
ディスプレイ20は、表示部22と、ベゼル部分(枠部分)24とを有している。表示部22は、立体映像(要素画像群)を表示する部分である。ベゼル部分24は、表示部22の周囲に形成されており、立体映像を表示することができない。
【0028】
ディスプレイ20は、当該ディスプレイの配置に応じた分割要素画像群を表示する。ここで、分割要素画像群とは、1つの立体映像(要素画像群)を分割(本実施形態では、4分割)したそれぞれの要素画像群のことである。つまり、分割要素画像群は、最終的に表示したい立体映像のうちの一部分を再現する要素画像群のことである。
【0029】
例えば、図1に示すように、人物の立体映像を4つのディスプレイ20で分割表示する場合を考える。この場合、観察方向からみて左上のディスプレイ20は、人物の右上半身部分の分割要素画像群を表示する。これと同様、右上のディスプレイ20が当該人物の左上半身の分割要素画像群を表示し、左下のディスプレイ20が当該人物の右下半身の分割要素画像群を表示し、右下のディスプレイ20が当該人物の左下半身の分割要素画像群を表示する。
【0030】
ここで、ディスプレイ20が表示する分割要素画像群について、簡単に説明する。
例えば、一般的なIP立体カメラで被写体を撮影し、取得した要素画像群をディスプレイ20と同数(例えば、4個)に分割し、この分割要素画像群を表示部22の大きさに合わせて拡大すればよい。
【0031】
レンズアレイ30は、それぞれのディスプレイ20の前面に配置され、分割要素画像群を構成する要素画像毎の要素レンズ31を有する。つまり、レンズアレイ30は、平面方向に整列するように、2次元に配列された要素レンズ31で構成されている。このレンズアレイ30のサイズは、ディスプレイ20の表示部22のサイズと同程度である。なお、要素レンズ31の個数は任意であり、例えば、数万以上の場合もある。
【0032】
レンズアレイ30は、ディスプレイ20の表示部22の近傍に配置されており、表示部22に表示された要素画像からの光が入射する。これにより、立体映像を再生することができる。なお、この時点で1組のディスプレイ20及びレンズアレイ30により再生される立体映像は、ここでは、取得した要素画像群を4つのディスプレイ20により4分割しているので、最終的な立体映像を4分割した部分的な立体映像である。
【0033】
レンズアレイ30は、ディスプレイ20の表示部22に当接するように配置されることが好ましい。このように構成することで、ディスプレイ20の表示部22に対してレンズアレイ30が固定されて位置ずれを防止できる。
【0034】
本実施形態では、一例として、要素レンズ31が平凸レンズであるものとして、平面の側をディスプレイ20の表示部22に接着することで当接した。なお、要素レンズ31の形状は円形に限らず、正方形でもよい。また、要素レンズ31の配列は、正方格子状(グリッド構造)であるものとしたが、俵積状いわゆるラインオフセット状に配列してもよい。
【0035】
合成光学系40は、レンズアレイ30の光出射側に配置されており、レンズアレイ30からの入射光を拡大して要素画像群として合成する。それぞれの合成光学系40は、ディスプレイ20及びレンズアレイ30に対応するように同一平面上に配置されている。合成光学系40には、レンズアレイ30により再生された立体映像(4分割された部分的な立体映像)の光が入射し、その立体映像を拡大する。
【0036】
合成光学系40としては、図2に示すように、凹レンズ41と凸レンズ43とを組み合わせた光学系を用いることができる。レンズの種類は、フレネルレンズ、球面レンズ、非球面レンズ等を用いることができる。本実施形態では、合成光学系40は、レンズアレイ30の側から順に、1つの凹レンズ41と、1つの凸レンズ43とを備える。
【0037】
凹レンズ41は、レンズアレイ30の前面に位置し、レンズアレイ30と密着する位置に配置されている。凹レンズ41は、光の広がり方向を制御することで、視域を最適化する役割を果たす。この凹レンズ41の出射光は、凸レンズ43に入射する。
【0038】
凸レンズ43は、凹レンズ41の出射光の多くが入射するように凹レンズ41よりもサイズが大きく形成されている。凸レンズ34は、凹レンズ32に対向するように配置されており、虚像(拡大像)を生成する役割を果たす。
【0039】
ここで、立体映像表示装置1を正面視すると、図2及び図3に示すように、4個の凸レンズ43が同一平面上で上下左右に隣接配置されている。そして、凸レンズ43の光軸Cは、レンズアレイ30の中心軸Cに対し、立体映像表示装置1の外周側にシフトしている。つまり、立体映像表示装置1では、レンズアレイ30より大きいサイズの凸レンズ43を4個、上下左右に隣接配置する。
なお、立体映像表示装置1の外周側は、それぞれの凸レンズ43が接する箇所を中心として、水平方向又は垂直方向の少なくとも一方で外側に位置することである。
【0040】
なお、図2では、凹レンズ41がレンズアレイ30から離れている状態で示したが、凹レンズ32は、レンズアレイ30に当接するように配置されていることが好ましい。このように構成することで、レンズアレイ30に対して凹レンズ41が固定されて位置ずれを防止できる。
また、図2では、水平方向(X軸方向)で凸レンズ43とレンズアレイ30との関係を図示したが、垂直方向(Y軸方向)でも同様となる。
また、図3では、図面を見やすくするため、凸レンズ43を破線で図示した。
【0041】
<合成光学系による視聴範囲の拡大>
図4図5を参照し、合成光学系40による視聴範囲の拡大について説明する。
図4図5では、説明を簡易にするため、レンズアレイ30、凸レンズ43及び虚像αのみを図示した。
【0042】
図4(a)に示すように、凸レンズ43の光軸Cとレンズアレイ30の中心軸Cが同一軸上に位置する場合、虚像面の中心Cも同一軸上に位置する。このとき、虚像αの幅wは、以下の式(4)で表される。なお、レンズアレイ30の中心軸Cとは、1つのレンズアレイ30の中心を追加する法線のことである。
【0043】
【数4】
【0044】
また、図4(b)に示すように、凸レンズ43を平行移動させることで、虚像αを凸レンズ43の移動方向の逆方向にシフトさせることができる。例えば、凸レンズ43を距離dだけ平行移動させると、虚像αは、以下の式(5)で表される距離dだけ逆方向にシフトする。
【0045】
【数5】
【0046】
なお、凸レンズ43とレンズアレイ30との距離をa、虚像αと凸レンズ43との距離をbとする。また、レンズアレイ30の幅をw、凸レンズ43の幅をwとする。
【0047】
次に、図4の構成を並列に2つ配置したときの重複角度θについて考える。図5(a)に示すように、重複角度θは、凸レンズ43をシフトさせない場合、前記式(2)で表される。このとき、虚像面の重複幅wは、以下の式(6)で表される。
【0048】
【数6】
【0049】
そして、図5(b)に示すように、凸レンズ43を距離dだけ平行移動させた場合、虚像面の重複幅wによって生成される重複角度θは、以下の式(7)で表される。このとき、虚像面の重複幅wは、以下の式(8)で表される。
【0050】
【数7】
【0051】
【数8】
【0052】
この式(7)からも分かるように、凸レンズ43の光軸Cを外側に平行移動することにより、虚像面の重複幅wを大きくすることができ、それによって形成される重複角度θも大きくすることができる。
なお、図4図5では、水平方向(X軸方向)で凸レンズ43とレンズアレイ30との関係を図示したが、垂直方向(Y軸方向)も同様である。
【0053】
[作用・効果]
立体映像表示装置1は、複数の立体映像を合成光学系40を用いて合成することにより多画素化して、立体映像の品質を向上させることができる。さらに、立体映像表示装置1は、凸レンズ43の光軸を外周側にシフトさせたので、従来技術と比べて、立体映像を連続的に視聴できる範囲を拡大することができる。
【0054】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
前記した実施形態では、4つの凸レンズを上下左右に隣接配置することとして説明したが、本発明は、これら4つの凸レンズを一体化し、1枚のレンズとしてもよい。つまり、1枚のレンズに、それぞれのレンズアレイに対応する凸レンズ部を形成してもよい。
前記した実施形態では、4つの直視型ディスプレイを上下左右に隣接配置することとして説明したが、本発明はこれに限定されず、直視型ディスプレイの個数及び配置が任意である。
【0055】
(実施例)
以下、本発明の実施例として、図1の立体映像表示装置1の構成例について説明する。
本実施例において、立体映像表示装置1は、以下のとおり構成した。
【0056】
レンズアレイ30と凸レンズ43との距離a 45mm
虚像αと凸レンズ43との距離b 60.58mm
凸レンズ43の焦点距離F 175mm
拡大率m 1.35
ディスプレイ20の有効表示領域の幅w 87.168mm
ベゼルを含むディスプレイ20全体の幅w 97.168mm
要素レンズ31のピッチp 0.5mm
要素レンズ31の焦点距離f 1.06mm
凸レンズ43のシフト量d 14.42mm
【0057】
この場合、立体映像表示装置1では、重複角度θが28.0°となり、視域角φが19.9°となった。このように、立体映像表示装置1は、凸レンズ43の光軸を外周側にシフトさせることで、重複角度θを視域角φより大きくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 立体映像表示装置
10 拡散光投射装置
20 ディスプレイ(直視型ディスプレイ)
30 レンズアレイ
40 合成光学系
41 凹レンズ
43 凸レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12