特許第6865731号(P6865731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6865731エポキシ樹脂用の硬化剤としてのオリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6865731
(24)【登録日】2021年4月8日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂用の硬化剤としてのオリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20210419BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20210419BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210419BHJP
【FI】
   C08G59/50
   C09D163/00
   C09D7/63
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-501273(P2018-501273)
(86)(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公表番号】特表2018-527432(P2018-527432A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016066249
(87)【国際公開番号】WO2017009220
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年7月8日
(31)【優先権主張番号】15176379.4
(32)【優先日】2015年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー パンチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ シャラク
(72)【発明者】
【氏名】アンスガー ゲレオン アルテンホフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ライスナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン クラウシェ
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−514178(JP,A)
【文献】 特表2011−517716(JP,A)
【文献】 特表2016−503114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C09D 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と硬化剤成分とを含み、前記樹脂成分が1つ以上のエポキシ樹脂を含み、かつ前記硬化剤成分がオリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンを含み、前記オリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンが、400〜5000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、硬化可能な組成物。
【請求項2】
前記樹脂成分は、1つ以上の反応性希釈剤を含むことを特徴とする、請求項1記載の硬化可能な組成物。
【請求項3】
前記反応性希釈剤は、1つ以上のエポキシ基を有する低分子量の有機化合物、または3〜10のC原子を有する環状カルボナートであることを特徴とする、請求項2記載の硬化可能な組成物。
【請求項4】
前記オリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンが、≦0.3の分枝度DBHFを有し、
ここで、DBHF=2D/(2D+L)であり、
かつDは、メチル置換された第三級アミノ基を除いた第三級アミノ基の割合に相当し、かつLは、第二級アミノ基の割合に相当することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物。
【請求項5】
前記オリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンは、10〜1000mgKOH/gの範囲の第一級アミンについてのアミン価、および50〜1500mgKOH/gの範囲の第二級アミンについてのアミン価、および50〜1500mgKOH/gの範囲の第三級アミンについてのアミン価を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物。
【請求項6】
前記オリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンは、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン構造要素だけから構成されていて、前記N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン内部のN結合メチル基は、前記基の最大10%の割合で遊離されていてよいか、または前記ポリマーの他の第二級もしくは第一級アミン基に移転されていてよいことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物。
【請求項7】
一方の、前記硬化可能な組成物の前記エポキシ樹脂および場合による反応性希釈剤と、他方の、前記硬化可能な組成物の前記アミン系硬化剤とは、前記エポキシ樹脂および場合による反応性希釈剤の反応性基と、前記アミン系硬化剤のNH官能基とに関してほぼ化学量論比で使用されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物。
【請求項8】
前記1つ以上のエポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、および水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物。
【請求項9】
硬化可能な組成物中のエポキシ樹脂用の硬化剤としてのオリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンの使用であって、前記オリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミンが、400〜5000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、前記使用
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物を準備し、引き続き硬化させることを特徴とする、硬化したエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項1からまでのいずれか1項記載の硬化可能な組成物の硬化により得られることを特徴とする、硬化したエポキシ樹脂。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化したエポキシ樹脂からなることを特徴とする、成形体。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化したエポキシ樹脂と、1つ以上の強化繊維を含むことを特徴とする、複合材料。
【請求項14】
請求項11に記載の硬化したエポキシ樹脂からなることを特徴とする、被覆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂用の硬化剤としてのオリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン(polyBAPMA)の使用、ならびに1つ以上のエポキシ樹脂およびpolyBAPMAを含む硬化可能な組成物に関する。本発明は、さらに、硬化可能な組成物の硬化、および硬化可能な組成物の硬化により得られた硬化したエポキシ樹脂に関する。
【0002】
エポキシ樹脂は、一般に公知であり、かつその靭性、柔軟性、付着性および化学的耐久性に基づき、表面被覆のための材料として、接着剤として、ならびに付形および積層のために使用される。ことに、炭素繊維強化されたまたはガラス繊維強化された複合材料の製造のために、エポキシ樹脂が使用される。
【0003】
エポキシ材料はポリエーテルに属し、かつ例えばエピクロロヒドリンとジオール、例えばビスフェノールAのような芳香族ジオールとの縮合により製造することができる。このエポキシ樹脂は、引き続き、硬化剤、典型的にはポリアミンとの反応により硬化される。
【0004】
少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物から出発して、例えば2つのアミノ基を有するアミノ化合物を用いて重付加反応(鎖長延長)により硬化を行うことができる。高い反応性を有するアミノ化合物は、一般に、所望の硬化の直前に添加される。したがって、このような系は、いわゆる二成分(2K)系である。
【0005】
原則として、アミン系硬化剤は、その化学構造によって、脂肪族型、脂環式型、または芳香族型に分類される。さらに、第一級、第二級または第三級であることができるアミノ基の置換度に基づく分類が可能である。しかしながら、第三級アミンについては、エポキシ樹脂の接触硬化メカニズムが前提とされるのに対して、第二級および第一級アミンについては、それぞれポリマー網目構造の構築のための化学量論的硬化反応に基づいている。
【0006】
一般に、第一級アミン硬化剤のなかで、脂肪族アミンがエポキシ硬化において最も高い反応性を示すことが示されている。通常では脂環式アミンはいくらかゆっくりと反応するのに対して、芳香族アミン(芳香環のC原子にアミノ基が直接結合しているアミン)は、群を抜いて最も低い反応性を示す。
【0007】
この公知の反応性の相違は、エポキシ樹脂の硬化の際に、加工時間および硬化したエポキシ樹脂の機械特性を必要に応じて調節するために利用される。
【0008】
例えば接着剤、フロアコーティング、および所定のトランスファー成形(RTM)用途のような、例えば≦10minの硬化時間を有する急速に硬化する系にとって、頻繁に短鎖脂肪族アミンが使用されるのに対して、大面積の複合材料の製造の際には、型を均一に充填しかつ強化繊維の十分な含浸を保証するために、比較的長いポットライフ(pot life)が必要とされる。ここでは、主に脂環式アミン、例えばイソホロンジアミン(IPDA)、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジシカン(Dicykan))、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン(ジメチルジシカン(Dimethyldicykan))、 水素化ビスアニリンA(2,2−ジ(4−アミノシクロヘキシル)プロパン)、水素化トルエンジアミン(例えば2,4−ジアミノ−1−メチル−シクロヘキサンまたは2,6−ジアミノ−1−メチル−シクロヘキサン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)が使用される。更により長い硬化時間は、芳香族ポリアミン、例えばフェニレンジアミン(オルト、メタ、またはパラ)、ビスアニリンA、トルエンジアミン(例えば2,4−トルエンジアミンまたは2,6−トルエンジアミン)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、または2,6−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン(DETDA 80)の使用により達成することができる。
【0009】
ことに、フロアコーティングでの用途のために、高すぎる初期粘度を示すことなく、かつ良好な機械特性を有する被覆を生じさせるために、エポキシ樹脂と既に室温で急速に硬化する硬化剤が必要とされる。好ましくは、この被覆は数時間内で既に初期耐水性に到達する。
【0010】
典型的には、この用途のために、トリエチレンテトラミン(TETA)またはポリエーテルアミンD−230(230の平均分子量を有するポリプロピレングリコールを基礎とする二官能性の第一級ポリエーテルアミン;D230)のような硬化剤が使用される。この硬化剤の場合の欠点は、ことにその比較的高い揮発性であり、この揮発性により加工の間におよびエポキシ樹脂との不完全な反応の場合にも、後に障害が起こりかねない。
【0011】
エポキシ樹脂にとって、TETAまたはD230と同様に良好な特性を有するが、より低い揮発性を有するアミン系硬化剤が望ましい。
【0012】
したがって、硬化可能なエポキシ樹脂組成物にとって比較的低い初期粘度を有し、かつ硬化したエポキシ樹脂にとって良好な構造特性(例えばガラス転移温度(Tg)、柔軟性、破断強さ、およびショアD硬度)を可能にし、かつ同時に比較的低い揮発性を有する、エポキシ樹脂用の急速に硬化するアミン系硬化剤の提供が、本発明の根底をなす課題であると見なされる。好ましくは、このような硬化剤は、比較的短い時間内でも、硬化するエポキシ樹脂の初期耐水性を生じさせることが好ましい。
【0013】
したがって、本発明は、エポキシ樹脂用の硬化剤としてのオリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン(polyBAPMA)の使用に関し、ならびに硬化可能な組成物において、この組成物は、樹脂成分および硬化剤成分を含み、この樹脂成分は1つ以上のエポキシ樹脂を含み、かつ硬化剤成分はpolyBAPMAを含むことを特徴とする、硬化可能な組成物に関する。
【0014】
本発明によるpolyBAPMAは、1分子当たり第一級、第二級、または第三級アミノ基の形で平均して少なくとも9のN原子を有する。
【0015】
本発明の範囲内で、polyBAPMAの概念は、好ましくはN,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン(BAPMA)単位(−NH−CH2−CH2−CH2−N(CH3)−CH2−CH2−CH2−NH−)からなるホモポリマーに関し、この場合、BAPMA内部のN結合性メチル基(製造に基づく)は、この基の最大10%、好ましくは最大5%、特に好ましくは最大1%の割合で遊離しているか、またはポリマーの他の第二級アミノ基または第一級アミノ基に移転されていてよい。本発明によるpolyBAPMAは、BAPMA単位の他に、例えば−NH−CH2−CH2−NH−、−NH−(CH24−NH−、−NH−(CH26−NH−または−NH−(CH28−NH−構造要素のような他のアルキレンジアミン構造要素を有するヘテロポリマーであってもよく、この場合、このようなヘテロポリマー中でBAPMA単位はモル割合で多数をなし、全てのアルキレンジアミン構造要素を基準として好ましくは少なくとも60mol%、ことに少なくとも70mol%である。
【0016】
本発明によるpolyBAPMAは、線状または分枝状であることができ、この場合、分枝により第三級アミノ基が形成される。分枝は、−CH2−CH2−CH2−N(CH3)−CH2−CH2−CH2−NH2基であることができるが、それ自体また分枝されていてもよい複数のBAPMA単位からなるより長い分枝であることもできる。分枝度(DB)は、例えば13C−NMRまたは15N−NMR分光法により決定することができる。Frechetの近似により、分枝度は次のように決定される:
DBF=(D+T)/(D+T+L)
式中、D(「樹枝状」)は、第三級アミノ基の割合に相当し(BAPMAの中間のアミノ基から生じるメチル置換された第三級アミノ基を計算に含めない)、L(「線状」)は、第二級アミノ基の割合に相当し、かつT(「末端」)は、第一級アミノ基の割合に相当する。しかしながら、この近似は、分枝したポリマーの注目された基を取り入れるのではなく、高い重合度についてだけ通用する。オリゴマー領域内でもこの関係の適切な説明は、FreyによるDB定義に基づいて可能である。したがって、次の式が通用する:
DBHF=2D/(2D+L)
本発明の範囲内で、CH3基は分枝とは見なされない。
【0017】
好ましくは、本発明によるpolyBAPMAは、分枝を有しないかまたは僅かにだけ分枝を有し、つまり線状であるかまたはほぼ線状である。好ましくは、本発明によるpolyBAPMAは、≦0.3、ことに≦0.1、全く特に好ましくは≦0.05のDBHFを有する。
【0018】
本発明によるpolyBAPMAは、好ましくは、場合により1つ以上の他のジアミンと一緒での、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン(BAPMA)の触媒作用によるポリ−アミノ基転移を用いて製造される。
【0019】
任意に、BAPMAの40mol%まで、ことに30mol%までを、1つ以上の脂肪族ジアミン(他のジアミン)により置き換えることができる。
【0020】
このような他のジアミンは、好ましくは、線状、分枝状、または環状の脂肪族ジアミンである。このような他のジアミンの例は、エチレンジアミン、ブチレンジアミン(例えば1,4−ブチレンジアミンまたは1,2−ブチレンジアミン)、ジアミノペンタン(例えば1,5−ジアミノペンタンまたは1,2−ジアミノペンタン)、ジアミノヘキサン(例えば1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノヘキサンまたは1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン)、ジアミノヘプタン(例えば1,7−ジアミノヘプタンまたは1,2−ジアミノヘプタン)、ジアミノオクタン(例えば1,8−ジアミノオクタンまたは1,2−ジアミノオクタン)、ジアミノノナン(例えば1,9−ジアミノノナンまたは1,2−ジアミノノナン)、ジアミノデカン(例えば1,10−ジアミノデカンまたは1,2−ジアミノデカン)、ジアミノウンデカン(例えば1,11−ジアミノウンデカンまたは1,2−ジアミノウンデカン)、ジアミノドデカン(例えば1,12−ジアミノドデカンまたは1,2−ジアミノドデカン)(この場合、相応するα,ω−ジアミンは、その1,2−異性体と比べて好ましい)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、ポリエーテルアミンおよび3−(メチルアミノ)プロピルアミンである。1,2−エチレンジアミンおよび1,4−ブタンジアミンが好ましい。
【0021】
特に好ましくは、本発明によるpolyBAPMAは、他のジアミンなしでBAPMAの触媒作用によるポリ−アミノ基転移を用いて製造される。
【0022】
したがって、本発明の好ましい実施形態の場合に、polyBAPMAは、BAPMA単位(−NH−CH2−CH2−CH2−N(CH3)−CH2−CH2−CH2−NH−)だけから構成されているホモポリマーであり、この場合、BAPMA内部のN結合性メチル基(製造に基づく)は、この基の最大10%、好ましくは最大5%、特に好ましくは最大1%の割合で遊離されているか、またはポリマーの他の第二級または第一級アミノ基に移転されていてよい。
【0023】
BAPMAおよび場合による1つ以上の他のジアミンのポリ−アミノ基転移のために適した触媒は、ことに、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択される、好ましくはCo、Ni、Ru、CuおよびPdからなる群から選択される、特に好ましくはCo、NiおよびCuからなる群から選択される1つ以上の遷移金属を含む不均一系触媒である。
【0024】
場合による1つ以上の他のジアミンと一緒での、BAPMAのポリ−アミノ基転移は、水素の存在で、例えば1〜400bar、好ましくは1〜200bar、ことに1〜100barの水素分圧下で実施することができる。
【0025】
場合による1つ以上の他のジアミンと一緒での、BAPMAのポリ−アミノ基転移は、50〜200℃の範囲、好ましくは90〜180℃の範囲、ことに120〜170℃の範囲の温度で実施することができる。
【0026】
場合による1つ以上の他のジアミンと一緒での、BAPMAのポリ−アミノ基転移は、1〜400barの範囲、好ましくは1〜200barの範囲、ことに1〜100barの範囲の圧力で実施することができる。
【0027】
本発明によるpolyBAPMAは、DIN53240により決定して、好ましくは≦100mgKOH/g、特に好ましくは≦50mgKOH/g、全く特に好ましくは≦5mgKOH/g、ことに≦2mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。特に好ましくは、polyBAPMAは、0mgKOH/g、またはほぼ0mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、つまりヒドロキシル基を有しないか、またはほぼ有しない。
【0028】
本発明によるpolyBAPMAは、好ましくは10〜1000mgKOH/g、好ましくは20〜500mgKOH/g、特に好ましくは30〜300mgKOH/g、全く特に好ましくは50〜100mgKOH/gの範囲の第一級アミンについてのアミン価を有する。第一級アミンについてのアミン価は、ASTM D2074−07の規格により決定される。
【0029】
本発明によるpolyBAPMAは、好ましくは50〜1500mgKOH/g、好ましくは100〜1000mgKOH/g、特に好ましくは150〜600mgKOH/gの範囲の第二級アミンについてのアミン価を有する。第二級アミンについてのアミン価は、ASTM D2074−07の規格により決定される。
【0030】
本発明によるpolyBAPMAは、好ましくは50〜1500mgKOH/g、好ましくは100〜1000mgKOH/g、特に好ましくは150〜600mgKOH/gの範囲の第三級アミンについてのアミン価を有する。第三級アミンについてのアミン価は、ASTM D2074−07の規格により決定される。
【0031】
本発明によるpolyBAPMAは、好ましくは10〜1000mgKOH/g、好ましくは20〜500mgKOH/g、特に好ましくは30〜300mgKOH/g、全く特に好ましくは50〜100mgKOH/gの範囲の第一級アミンについてのアミン価、および50〜1500mgKOH/g、好ましくは100〜1000mgKOH/g、特に好ましくは150〜600mgKOH/gの範囲の第二級アミンについてのアミン価、および50〜1500mgKOH/g、好ましくは100〜1000mgKOH/g、特に好ましくは150〜600mgKOH/gの範囲の第三級アミンについてのアミン価を有する。第一級、第二級および第三級アミンについてのアミン価は、ASTM D2074−07の規格により決定される。
【0032】
本発明によるpolyBAPMAは、第三級アミノ基について、polyBAPMA中の窒素の全体量を基準として、好ましくは30〜70mol%、有利に40〜60mol%の範囲の割合を有する。
【0033】
本発明によるpolyBAPMAは、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて決定可能な、好ましくは400〜5000g/molの範囲、特に好ましくは600〜3000g/molの範囲、全く特に好ましくは800〜2000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。好ましくは、polyBAPMAは、1.1〜20の範囲、特に好ましくは1.1〜10の範囲、ことに1.2〜5の範囲の分子量分布Mw/Mn(多分散指数(PDI)、この場合、Mwは、重量平均分子量である)を有する。
【0034】
本発明によるpolyBAPMAは、好ましくは25℃で、最大0.1Pa、特に好ましくは最大0.02Pa、ことに最大0.005Paの蒸気圧を有する。したがって、例えばTETAのような比較可能な硬化剤よりも明らかに低い揮発性を有する。
【0035】
本発明による硬化可能な組成物は、polyBAPMAの他に、さらに他のポリアミン、ことに脂肪族および脂環式ポリアミンを、硬化剤成分の構成要素として含むことができる。好ましくは、polyBAPMAは、硬化可能な組成物中のアミン系硬化剤の全体量を基準として、少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、全く特に好ましくは少なくとも90質量%である。好ましい実施形態の場合に、硬化可能な組成物は、polyBAPMAの他に、他のアミン系硬化剤を含まない。アミン系硬化剤とは、本発明の範囲内で、≧2のNH官能基を有するアミンであると解釈される(したがって、例えば第一級モノアミンは、2のNH官能基を有し、第一級ジアミンは、4のNH官能基を有し、3つの第二級アミノ基を有するアミンは3のNH官能基を有する)。
【0036】
本発明によるエポキシ樹脂は、2〜10、好ましくは2〜6、全く特に好ましくは2〜4、ことに2のエポキシ基を有する。エポキシ基とは、ことに、アルコール基とエピクロロヒドリンとの反応の際に生じるようなグリシジルエーテル基である。エポキシ樹脂とは、一般に1,000g/mol未満の平均分子量(Mn)を有する低分子量の化合物であるか、または高分子量の化合物(ポリマー)であることができる。このようなポリマーのエポキシ樹脂は、好ましくは2〜25、特に好ましくは2〜10の単位のオリゴマー化度を有する。これは、脂肪族化合物、脂環式化合物、または芳香族基を有する化合物であることができる。ことに、エポキシ樹脂は、2つの芳香族または脂肪族6員環を有する化合物、またはそのオリゴマーである。工業的には、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つの反応性H原子を有する化合物、ことにポリオールとの反応によって得られるエポキシ樹脂が重要である。特に重要であるのは、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つ、好ましくは2つのヒドロキシル基を有しかつ2つの芳香族または脂肪族6員環を含む化合物との反応により得られるエポキシ樹脂である。この種の化合物として、ことにビスフェノールAおよびビスフェノールF、ならびに水素化ビスフェノールAおよび水素化ビスフェノールFが挙げられ、この相応するエポキシ樹脂は、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF、または水素化ビスフェノールAもしくは水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテルである。本発明によるエポキシ樹脂として、通常ではビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(DGEBA)が使用される。本発明による適切なエポキシ樹脂は、テトラグリシジル−メチレンジアミン(TGMDA)およびトリグリシジルアミノフェノールまたはこれらの混合物でもある。エピクロロヒドリンと、他のフェノール、例えばクレゾール、またはフェノール−アルデヒド付加物、例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、ことにノボラックとの反応生成物も挙げられる。エピクロロヒドリンから誘導されていないエポキシ樹脂も適している。例えば、エポキシ基がグリシジル(メタ)アクリラートとの反応により得られるエポキシ樹脂が挙げられる。好ましくは、室温(25℃)で液状である本発明によるエポキシ樹脂またはこれらの混合物が使用される。エポキシ当量(EEW)は、エポキシ基1Mol当たりのgで表すエポキシ樹脂の平均質量である。
【0037】
好ましくは、本発明による硬化可能な組成物は、少なくとも50質量%がエポキシ樹脂からなる。
【0038】
本発明の特別な実施形態は、樹脂成分および硬化剤成分を含み、樹脂成分は1つ以上のエポキシ樹脂および1つ以上の反応性希釈剤を含み、硬化剤成分はpolyBAPMAを含むことを特徴とする硬化可能な組成物に関する。
【0039】
反応性希釈剤とは、本発明の主旨で、硬化可能な組成物の初期粘度を低下させ、かつ硬化可能な組成物の硬化の過程で、エポキシ樹脂と硬化剤とから形成される網目構造と化学的に結合する化合物である。本発明の主旨で好ましい反応性希釈剤は、1つ以上のエポキシ基、好ましくは2つのエポキシ基を有する、低分子量の有機の、好ましくは脂肪族の化合物、ならびに環式カルボナート、ことに3〜10のC原子を有する環式カルボナート、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレンまたは炭酸ビニレンである。
【0040】
本発明による反応性希釈剤は、好ましくは、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸プロピレン、1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、グリシジルネオデカノアート、グリシジルフェルザタート(Glycidylversatat)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p−tert−ブチルグリシドエーテル、ブチルグリシドエーテル、C8〜C10−アルキルグリシジルエーテル、C12〜C14−アルキルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシドエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシドエーテル、フェニルグリシドエーテル、o−クレシルグリシドエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシドエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル(TMP)、グリセリントリグリシドエーテル、トリグリシジルパラアミノフェノール(TGPAP)、ジビニルベンジルジオキシドおよびジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択される。この反応性希釈剤は、特に好ましくは、1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、C8〜C10−アルキルグリシジルエーテル、C12〜C14−アルキルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p−tert−ブチルグリシドエーテル、ブチルグリシドエーテル、ノニルフェニルグリシドエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシドエーテル、フェニルグリシドエーテル、o−クレシルグリシドエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル(TMP)、グリセリントリグリシドエーテル、ジビニルベンジルジオキシド、およびジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択される。この反応性希釈剤は、ことに、1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル、C8〜C10−アルキルモノグリシジルエーテル、C12〜C14−アルキルモノグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル(TMP)、グリセリントリグリシドエーテル、およびジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択される。
【0041】
本発明の特別な実施形態の場合に、反応性希釈剤は、2つ以上の、好ましくは2つのエポキシ基を有する低分子量の有機化合物、例えば1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシドエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル(TMP)、グリセリントリグリシドエーテル、トリグリシジルパラアミノフェノール(TGPAP)、ジビニルベンジルジオキシドまたはジシクロペンタジエンジエポキシド、好ましくは1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル(TMP)、グリセリントリグリシドエーテル、ジビニルベンジルジオキシドまたはジシクロペンタジエンジエポキシド、ことに1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル(TMP)、グリセリントリグリシドエーテルまたはジシクロペンタジエンジエポキシドである。特別な実施形態の場合に、反応性希釈剤は、2つ以上の、好ましくは2つのエポキシ基を有する低分子量の脂肪族化合物である。
【0042】
本発明の特別な実施形態の場合に、反応性希釈剤は、1つのエポキシ基を有する低分子量の有機化合物、例えばグリシジルネオデカノアート、グリシジルフェルザタート、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルグリシドエーテル、ブチルグリシドエーテル、C8〜C10−アルキルグリシジルエーテル、C12〜C14−アルキルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシドエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシドエーテル、フェニルグリシドエーテルまたはo−クレシルグリシドエーテル、好ましくは2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルグリシドエーテル、ブチルグリシドエーテル、C8〜C10−アルキルグリシジルエーテル、C12〜C14−アルキルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシドエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシドエーテル、フェニルグリシドエーテルまたはo−クレシルグリシドエーテル、ことにC8〜C10−アルキルグリシジルエーテルまたはC12〜C14−アルキルグリシジルエーテルである。特別な実施形態の場合に、反応性希釈剤は、1つのエポキシ基を有する低分子量の脂肪族化合物である。
【0043】
本発明の特別な実施形態の場合に、反応性希釈剤は、3〜10のC原子を有する環式カルボナート、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレンまたは炭酸ビニレン、好ましくは炭酸エチレン、炭酸プロピレンまたは炭酸ビニレンである。
【0044】
本発明による反応性希釈剤は、好ましくは、硬化可能な組成物の樹脂成分(エポキシ樹脂および場合により使用された反応性希釈剤)を基準として、30質量%まで、特に好ましくは25質量%まで、ことに1〜20質量%の割合である。本発明による反応性希釈剤は、好ましくは、全体の硬化可能な組成物を基準として、25質量%まで、特に好ましくは20質量%まで、ことに1〜15質量%の割合である。
【0045】
好ましくは、本発明による硬化可能な組成物の場合に、樹脂成分の化合物(場合によりそれぞれ反応性の基を有する反応性希釈剤を含めたエポキシ樹脂)およびアミン系硬化剤を、樹脂成分の化合物の反応性基(エポキシ基および場合によるカルボナート基)もしくはNH官能基に対して、例えば化学量論比で使用する。樹脂成分の化合物の反応性基のNH官能基に対する特に適切な比は、例えば1:0.8〜1:1.2である。樹脂成分の化合物の反応性基は、硬化条件下で1つ以上のアミノ硬化剤のアミノ基と化学的に反応する基である。
【0046】
本発明の硬化可能な組成物は、他の添加剤、例えば不活性希釈剤、硬化促進剤、強化繊維(ことにガラス繊維または炭素繊維)、顔料、染料、充填剤、離型剤、靭性を高める薬剤(toughener)、流動化剤、抑泡剤(anti-foamer)、難燃剤または増粘剤を含むこともできる。このような添加剤は、通常では、機能性の量で添加される、つまり、例えば顔料は、組成物に対して所望の色調を生じる量で添加される。通常では、本発明による組成物は、全体の硬化可能な組成物を基準にして、全ての添加物の全体について、0〜50質量%、好ましくは0〜20質量%、例えば2〜20質量%含む。添加物とは、本発明の範囲内で、エポキシ化合物でもアミン系硬化剤でもない、硬化可能な組成物に対する全ての添加剤であると解釈される。
【0047】
本発明は、硬化可能な組成物中のエポキシ樹脂用の、ことに被覆の製造のための、特に初期耐水性を有するフロアコーティングの製造のための硬化剤としてのpolyBAPMAの使用に関する。
【0048】
好ましくは、本発明は、1つ以上の反応性希釈剤を有する硬化可能な組成物中のエポキシ樹脂用の硬化剤としてのpolyBAPMAの使用に関する。
【0049】
本発明の別の主題は、本発明による硬化可能な組成物からの硬化したエポキシ樹脂の製造方法である。このような硬化したエポキシ樹脂の本発明による製造方法の場合に、成分(エポキシ樹脂、polyBAPMA、および場合による他の成分、例えば添加物)を、互いに任意の順序で接触させ、混合し、かつその後で適用のために実行可能な温度で硬化させる。好ましくは、少なくとも0℃、特に好ましくは少なくとも10℃の温度で硬化が行われる。
【0050】
特別な実施形態の場合に、硬化したエポキシ樹脂は、さらに、例えば硬化の範囲内でまたは任意の後続するアニールの範囲内で熱的後処理に供される。
【0051】
硬化は、常圧で、かつ250℃未満の温度で、ことに210℃未満の温度で、好ましくは185℃未満の温度で、ことに0〜210℃の温度範囲で、全く特に好ましくは10〜185℃の温度範囲で行うことができる。
【0052】
硬化は、例えば金型中で寸法安定性に達し、かつワークピースを金型から取り出すことができるまで行われる。引き続く、ワークピースの残留応力を除去しおよび/または硬化したエポキシ樹脂の架橋を完全にするためのプロセスを、アニールという。基本的に、アニールプロセスを、金型からワークピースを取り出す前に、例えば架橋を完全にするために、実施することも可能である。アニールプロセスは、通常では寸法安定性の境界の温度で行われる。通常では、120〜220℃の温度で、好ましくは150〜220℃の温度でアニールされる。通常では、硬化したワークピースは、30〜240minの時間、アニール条件に曝される。ワークピースの寸法に依存して、より長いアニール時間が適当であることもある。
【0053】
本発明の別の主題は、本発明による硬化可能な組成物から硬化したエポキシ樹脂である。ことに、本発明による硬化可能な組成物の硬化により得られるかまたは得られた硬化したエポキシ樹脂が、本発明の主題である。ことに、硬化したエポキシ樹脂を製造するための本発明による方法により得られるかまたは得られた硬化したエポキシ樹脂が、本発明の主題である。
【0054】
本発明による硬化可能な組成物は、被覆剤もしくは含浸剤として、接着剤として、成形体および複合材料の製造のため、または成形体の埋め込み、接続または固定のための注入剤として適している。この硬化可能な組成物は、RTM法を用いた成形体の製造のためにことに適している。例えば塗料、またはことにフロアコーティングは、被覆剤といわれる。ことに、本発明による硬化可能な組成物を用いて、例えば金属、プラスチックまたは木材素材からなる任意の基材上に耐引掻性の保護塗料を得ることができる。この硬化可能な組成物は、電子的用途における絶縁被覆としても、例えばワイヤおよびケーブル用の絶縁被覆としても適している。また、フォトレジストの製造のための使用も挙げられる。この硬化可能な組成物は、補修塗料としても、例えば管を取り外さずに管を修復(現場硬化型更生管(CIPP)での修復)する際にも適している。この硬化可能な組成物は、ことにフロアの補強のために適している。この硬化可能な組成物は、複合材料の製造のためにも適している。
【0055】
複合材料(Komposite)内では、多様な材料、例えばプラスチックおよび強化材料(例えばガラス繊維または炭素繊維)が互いに結合されている。
【0056】
複合材料の製造方法としては、成層後の予備含浸された繊維もしくは繊維織物(例えばプリプレグ)の硬化、または押出、引き抜き(pultrusion)、巻き付け(winding)、インフュージョン法もしくはインジェクション法、例えば真空インフュージョン(VARTM)、トランスファー成形(resin transfer molding、RTM)ならびに湿式プレス法、例えばBMC(bulk mold compression)が挙げられる。
【0057】
本発明の別の主題は、本発明による硬化したエポキシ樹脂からなる成形体、本発明による硬化したエポキシ樹脂を含む複合材料、および本発明による硬化可能な組成物で含浸されている繊維に関する。本発明による複合材料は、本発明による硬化したエポキシ樹脂の他に、特にガラス繊維および/または炭素繊維を含む。
【0058】
本発明の別の主題は、本発明による硬化したエポキシ樹脂からなる被覆、好ましくはフロアコーティングに関する。ことに、この被覆は初期耐水性の被覆である。
【0059】
ガラス転移温度(Tg)は、例えばDIN EN ISO 6721の規格による動的機械分析(DMA)、または例えばDIN 53765の規格による示差熱量計(DSC)を用いて決定することができる。DMAの場合、長方形の試験体に、強制振動および所定の変形でねじれるまで負荷をかける。この場合、温度を定義された傾斜で上昇させ、かつ貯蔵弾性率および損失弾性率を一定の時間間隔で記録する。前者は、粘弾性素材の剛性を表す。後者は、材料中で分散した仕事に対して比例する。動的応力と動的歪みとの間の位相のずれは、位相角δにより特徴付けられる。ガラス転移温度は、多様な方法によって決定することができる:tanδ曲線の最大値として、損失弾性率の最大値として、または貯蔵弾性率での接線法による。示差熱量計の使用下でのガラス転移温度の決定の場合、極めて少ない試料量(約10mg)をアルミニウム坩堝中で加熱し、かつ基準坩堝に対する熱流を測定する。このサイクルを3回繰り返す。ガラス転移の決定は、第2回と第3回の測定の平均値として行われる。熱流曲線のTg段階の評価は、屈曲点により、半値幅により、または中心点温度の方法により決定することができる。
【0060】
ポットライフの概念とは、多様な樹脂/硬化剤の組み合わせおよび/または樹脂/硬化剤混合物の組み合わせの反応性を比較するために一般に利用される特性パラメータである。ポットライフの測定は、温度測定による積層系の反応性を特性決定する方法である。用途に応じて、そこに記載されるパラメータ(量、試験条件、測定方法)からの相違が定着している。この場合、ポットライフは次のように決定される:エポキシ樹脂および硬化剤または硬化剤混合物を含む硬化可能な組成物100gを容器(通常はペーパーカップ)内に充填する。この硬化可能な組成物内に、一定の時間間隔で温度を測定かつ記録する温度センサを浸漬する。この硬化可能な組成物が凝固すると同時に、測定は完了し、かつ最大温度に到達するまでの時間を算出する。硬化可能な組成物の反応性が低すぎる場合には、この測定を高めた温度で実施する。ポットライフの他に、常に試験温度を記載しなければならない。
【0061】
ゲル化時間は、DIN 16945により、反応混合物への硬化剤の添加と、反応樹脂材料の液状からゲル状態への移行の間の時間間隔に関する手引きを提供する。温度は、この場合、重要な役割を果たすため、このゲル化時間は所定の温度についてそれぞれ測定される。動的機械的方法、ことに回転粘度測定を用いて、僅かな試料量でも、準等温的に調査することができ、かつその全体の粘度推移または剛性推移を検知することができる。ASTM D 4473の規格により、減衰tan−δが1の値を有する、貯蔵弾性率G′および損失弾性率G″の間の交点がゲル化点であり、かつ反応混合物への硬化剤の添加からゲル化点に達するまでの時間がゲル化時間である。こうして決定されたゲル化時間は、硬化速度についての尺度と見なすことができる。
【0062】
ショア硬度は、例えば硬化したエポキシ樹脂のようなポリマーについての、試験体中への圧子(Indenter)の押込深さに直接的に関係する特性値であり、かつ試験体の硬度についての尺度である。このショア硬度は、例えば、DIN ISO 7619−1の規格にしたがって決定される。ショアA、CおよびDの方法の間で区別される。圧子として、硬化した鋼からなるばね荷重がかかったピンを使用する。この場合、圧子をばね張力で試験体に押し込み、かつこの押込深さが、ショア硬度についての尺度である。ショア硬度AおよびCの決定について、圧子として、直径で0.79mmの端面および35°の頂角を有する円錐台が使用されるが、ショア硬度D試験の場合には、圧子として、0.1mmの半径を有する球形の先端部および30°の頂角を有する円錐台を利用する。ショア硬度値を測定するために、0ショア(2.5mmの押込深さ)から100ショア(0mmの押込深さ)まで達するスケールを導入する。この場合、スケール値0は、最大に可能な押し込みに相当し、つまり素材は、圧子の押し込みに抵抗しない。それに対して、スケール値100は、押し込みに対する素材の極めて高い抵抗に相当し、かつ実際に圧痕を生じない。ショア硬度の決定の際に、温度が決定的な役割を果たすので、この測定は、規格通りに23℃±2℃の制限された温度間隔で実施しなければならない。
【0063】
初期耐水性は、被覆が損傷を受けることなく、塗布後の短時間後に既に水と接触することができる被覆の特性である。これは、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを基礎とする被覆の場合には、ことに、塗りたての被覆の表面上での白色の縞または表皮の形成について認識することができるカルバマート形成である。
【0064】
本発明を、限定することのない次の実施例により詳細に説明する。
【0065】
実施例1
オリゴ−N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン(polyBAPMA)の製造
【0066】
N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン(BAPMA)の重合を、特殊鋼(1.4571)からなる0.3Lの反応器(長さ2.4m、直径1.2cm)中で実施した。この反応器に、コバルト全接触触媒(欧州特許出願公開第636409号明細書(EP636409A)により製造(実施例 触媒A))0.38kgを充填した。アップフロー法で、1時間当たりBAPMA0.04kgおよび水素10NLを160℃でかつ50barの水素全圧で触媒を通過するように案内した。触媒負荷量は、触媒1リットルおよび1時間あたり0.2kgであった。反応搬出物を凝縮し、かつBAPMA、二量体および三量体を、蒸発器で250℃でかつ1mbarで蒸留により重合混合物から分離した。この生成物からアミン価を、ならびにサイズ排除クロマトグラフィーを用いて分子量MnおよびMwを、ならびに多分散指数(PDI)を決定した(表1)。
【0067】
表1:
製造されたpolyBAPMAの特性決定
【表1】
【0068】
実施例2
硬化可能な組成物(反応樹脂材料)の製造および反応性プロフィールの調査
【0069】
互いに比較されるべき配合物を、それぞれアミン(TETA(Huntsman)、D230(ポリエーテルアミンD230 BASF)、またはpolyBAPMA(実施例1から)の化学量論量を、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルに基づくエポキシ樹脂(Epilox A19-03, Leuna Harze, EEW 183)と混合することにより製造し、かつ即座に調査した。
【0070】
脂肪族アミンとエポキシ樹脂との反応性プロフィールを調査するための流動学的測定は、15mmのプレート直径および0.25mmのギャップ間隔での剪断応力制御されたプレート−プレート型レオメーター(MCR 301, Anton Paar)で、多様な温度で実施した。
【0071】
調査1a) 製造したての反応樹脂材料が、定義された温度で10,000mPa・sの粘度に到達するのに必要な時間の比較。この測定は、上述のレオメーターを用いて、異なる温度(23℃および75℃)で回転させて実施した。同時に、それぞれの温度でのそれぞれの混合物についての初期粘度(成分の混合後の2〜5minの時間にわたる平均)を決定した。この結果は、表2にまとめられている。
【0072】
表2:
10,000mPa・sへの等温粘度上昇
【表2】
【0073】
調査1b) ゲル化時間の比較。この測定を、上述のレオメーターで、23℃または75℃の温度で振動させて実施した。損失弾性率(G″)と貯蔵弾性率(G′)との交点が、ゲル化時間を提供する。この測定結果は、表3にまとめられている。
【0074】
表3:
等温ゲル化時間
【表3】
【0075】
実施例3
硬化可能な組成物(反応樹脂材料)の発熱プロフィールおよび硬化したエポキシ樹脂(硬化し終えた熱硬化性樹脂)のガラス転移温度
【0076】
化学量論的に使用されたアミン(TETA(Huntsman)、D230(ポリエーテルアミンD230,BASF)、もしくはpolyBAPMA(実施例1に対応))のビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルを基礎とするエポキシ樹脂(Epilox A19-03, Leuna Harze, EEW 183)との硬化反応のDSC調査を、オンセット温度(To)および発熱エネルギー(H)の決定のため、ならびに温度プログラム(0℃→5K/min 180℃→30min 180℃→20K/min 0℃→20K/min 220℃)でのガラス転移温度(Tg)の決定のために、ASTM D3418により実施した。それぞれ2回の走行を実施した。この測定結果は、表4にまとめられている。温度プログラムの第2回目の走行のTg測定が示されている。
【0077】
表4:
発熱プロフィールおよびガラス転移温度
【表4】
【0078】
実施例4
硬化したエポキシ樹脂(硬化し終えた熱硬化樹脂)の機械的試験
【0079】
アミン(TETA(Huntsman)、D230(ポリエーテルアミンD230, BASF)、もしくはpolyBAPMA(実施例1に対応))と、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルを基礎とするエポキシ樹脂(Epilox A19-03, Leuna Harze, EEW 183)とからの熱硬化性樹脂の機械的特性の調査のために、両方の成分を、Speedmixer中で混合し(2000rpmで1min)、23℃で真空(1mbar)を印加することにより脱気し、かつ引き続き成形品を作製した。80℃で2h、引き続き125℃で3h硬化させた。この機械的試験は、ISO 527−2:1993およびISO 178:2006により実施した。
【0080】
表5:
熱硬化性樹脂の機械的特性
【表5】
【0081】
polyBAPMAで硬化されたエポキシ樹脂は、TETAまたはD230で硬化されたエポキシ樹脂と比べてより柔軟(より低い引張弾性率および曲げ弾性率)であり、この場合、高められた破断点伸びが達成されることが判明した。
【0082】
実施例5
熱硬化性樹脂の初期耐水性
【0083】
アミン(TETA(Huntsman)、D230(ポリエーテルアミンD230, BASF)、もしくはpolyBAPMA(実施例1に対応))と、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルを基礎とするエポキシ樹脂(Epilox A19-03, Leuna Harze, EEW 183)とからの熱硬化性樹脂の初期耐水性の調査のために、両方の成分を化学量論比でSpeedmixer中で混合し(2000rpmで1min)、複数のシャーレに注ぎ込み、空調室(60%の相対湿度)中で23℃で貯蔵した。規則的な時間間隔でそれぞれ1つのシャーレを取り出し、エポキシ樹脂の表面に蒸留水2mlを添加した。エポキシ樹脂が水との接触でもはやカルバマート形成を示さず、したがって初期耐水性が達成された時間を決定した。カルバマート形成は、エポキシ樹脂の表面上での表皮または白色の曇りの形成に基づき認識することができる。この結果は、表6にまとめられている。
【0084】
表6:
異なる硬化剤を有するエポキシ樹脂組成物についての初期耐水性(tF:初期耐水性が達成されるまでの時間)
【表6】
【0085】
polyBAPMAで硬化されたエポキシ樹脂の初期耐水性は、D230で硬化されたエポキシ樹脂よりも明らかに良好である。
【0086】
実施例6
硬化したエポキシ樹脂(硬化し終えた熱硬化性樹脂)機械的試験
【0087】
アミン(TETA(Huntsman)、D230(ポリエーテルアミンD230, BASF)、もしくはpolyBAPMA(実施例1に対応))と、エポキシ樹脂成分(ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルを基礎とするエポキシ樹脂Araldit GY 240(Huntsman;180のEEWを有する)900部、C12〜C14−アルキルグリシジルエーテルEpodil 748 DA(Air Products;290のEEWを有する)50部、およびHDDE Araldit DY-H/BD(Huntsman;150のEEWを有する)50部からなる)とからの熱硬化性樹脂の機械特性の調査のために、両方の成分をSpeedmixer中で混合し(2000rpmで1min)、23℃で真空(1mbar)を印加することにより脱気し、引き続きポリアミドフィルム上にブレード塗布した。この場合、アミンは次のように配合した:
(a)polyBAPMA:polyBAPMA70部およびベンジルアルコール30部、
(b)D230:D230 90部およびベンジルアルコール10部、
(c)TETA:TETA70部およびベンジルアルコール30部。
【0088】
ショア硬度をDIN ISO 7619−1の規格により決定した。8℃、12℃、20℃または30℃の貯蔵温度Tで1日後の結果が、表7にまとめられている。
【0089】
表7:
ショア硬度および表面粘着性
【表7】