(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜
図8を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の構成及び動作を説明する。自動分析装置100は、例えば、生化学や免疫など異なる種類の分析を1つのシステムで行うものである。なお、同一部分には同一符号を付する。
【0014】
最初に、
図1、及び、
図2−1、
図2−2を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100の全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態である自動分析装置100の構成図である。
【0015】
自動分析装置100は、サンプル容器ラック2を搬送するラック搬送ライン3、試薬保冷庫5、インキュベータディスク9、サンプル分注機構10、試薬分注機構11、補充用の反応容器・サンプル分注チップ収納部12、反応容器・サンプル分注チップ供給部13、反応容器攪拌機構14、廃棄孔15、搬送機構16、ノズル17a、17b、検出ユニット18a、18b、制御装置19、前面カバー26を備える。
【0016】
図2−1は自動分析装置100を正面から見たときの全体像、
図2−2はその前面カバー26の正面から向かって左側を開放したときの装置内部の拡大図である。前面カバー26を開放すると、各種外置き試薬容器21a、21b、21cに対応して、外置き試薬ホルダ6a、6b、6c、チューブリフタ22a、22b、22c、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23c、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cを備える。6a、6b、6cにはそれぞれ異なる種類の外置き試薬容器21a、21b、21cが設置できる。なお、本願発明を実現可能であれば、他の構成を有する自動分析装置であっても良く、一種類につき1つの外置き試薬容器21a、21b、21cを設置できる構成をもった自動分析装置であればよい。また、ここでいう外置き試薬容器21a、21b、21cは、試薬のみに限らず、洗剤や希釈液など装置に搭載する液体の消耗品の容器を含むこととする。
【0017】
サンプル容器ラック2は、血液や尿などの生体サンプル(以下、試料と称する)を収容する複数のサンプル容器1を収納する。ラック搬送ライン3は、サンプル容器ラック2を搬送する。
【0018】
試薬保冷庫5(試薬容器保持部)は、試薬保冷庫カバー7により覆われ、試料の分析に用いる種々の試薬が収容された複数の試薬容器4を一定の温度に保温した状態で収納する。さらに試薬保冷庫5には、前記試薬容器4の開封を行う試薬容器開封機構(不図示)が設けられることで、前記試薬容器4の蓋を試薬保冷庫5内で開閉でき、試薬の劣化を抑制することが可能となる。なお、試薬保冷庫5はディスク型に限定されず、前記試薬容器4を一列以上の列に配置したシリアル方式でも良い。
【0019】
インキュベータディスク9は、試料と試薬を混合するための複数の反応容器8を収納可能な容器保持孔を円周上に複数配置しており、分析の進行に応じて所定の位置に反応容器8を位置づけるように間欠的に回転駆動する。インキュベータディスク9が停止した箇所において、試料や試薬の分注、攪拌、分析等の工程に必要な処理が実行される。
【0020】
サンプル分注機構10は、回転駆動および上下駆動するアーム部および、およびサンプルを吸引・吐出するノズル部を有する。ノズル部の先端にはサンプル分注チップ10aが着脱可能である。ラック搬送ライン3によりサンプル分注位置に搬送されたサンプル容器1に対して、ノズル部を下降させて所定量の試料を吸引し、アーム部を回転させてインキュベータディスク9の所定の位置に位置付けられた反応容器8に試料を吐出する。
【0021】
試薬分注機構11は、試薬を吸引・吐出するノズル部を有する。試薬保冷庫カバー7に設けられた試薬保冷庫カバー開口部7aを介して、水平駆動や垂直駆動および吸引・吐出動作により、試薬容器4から吸引した所定量の試薬をインキュベータディスク9の所定の位置に位置付けられた反応容器8に吐出する。
【0022】
反応容器攪拌機構14は、インキュベータディスク9から取り出された反応容器8内に収容された反応液を攪拌する。
【0023】
反応容器・サンプル分注チップ供給部13は、未使用である複数の反応容器8やサンプル分注チップ10aを収納する。反応容器・サンプル分注チップ収納部12は、その補充用にスタンバイされる。サンプル分注機構10のノズル先端にサンプル分注チップ10aを装着し、サンプル容器内の試料を吸引すると、使用済みのサンプル分注チップ10aは廃棄孔15から廃棄される。分析が終了した後の、使用済みの反応容器8も同様に排気孔から廃棄される。
【0024】
搬送機構16は、反応容器・サンプル分注チップ供給部13内に収納されたサンプル分注チップ10a及び反応容器8を把持するグリッパ部と、グリッパ機構をXYZ軸に沿って搬送する駆動部を有する。詳細には、搬送機構16は、X軸、Y軸、Z軸方向(図示せず)に移動可能に設けられている。搬送機構16は、反応容器・サンプル分注チップ収納部13に収納された反応容器8をインキュベータディスク9に搬送したり、使用済み反応容器8を廃棄孔15に破棄したり、未使用のサンプル分注チップ10aをチップ装着位置16aに搬送したりする。
【0025】
ノズル17a、17bは、回転駆動や上下駆動により、インキュベータディスク9の反応容器8で混合された反応液と試薬を吸引して検出ユニット18a、18bにそれぞれ送る。検出ユニット18a、18bは、ノズル17a、17bで吸引されて送られた反応液に検出処理を施し特定成分の検出を行う。
【0026】
制御装置19は、自動分析装置100の全体の動作を制御する。制御装置19は、制御部19a、表示部19b、入力部19c、記憶部19dを備える。制御装置19の構成の詳細は、
図4を用いて後述する。
【0027】
図2−2に示すように前面カバー26を開放すると、外置き試薬容器21a、21b、21cを設置できる外置き試薬ホルダ6a、6b、6cがある。外置き試薬ホルダ6a、6b、6cにはそれぞれ異なる種類の外置き試薬容器21a、21b、21cが設置できる。なお、外置き試薬容器は、試薬保冷庫以外に設置される試薬を保管する容器である。具体的には複数の検査項目に共通に使用される、バッファ液などのシステム試薬や洗浄液などの液体を、たとえば2リットル程度保管した試薬容器である。
【0028】
チューブリフタ22a、22b、22cは手動で上下に動かすことができ、上部へ引き上げた状態で外置き試薬ホルダ6a、6b、6cを外置き試薬容器21a、21b、21c上に設置し、その後、外置き試薬容器21a、21b、21cの口の部分から内部へ向けて差し込む。この状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを引いたり押したりすることで外置き試薬容器21a、21b、21cから試薬が流路へ供給される。
【0029】
複数の外置き試薬ホルダ6a,6b,6cのそれぞれの位置ごとに設けられた第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cは、ユーザが試薬交換を開始する際に押す。第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのインジケータは、例えば、黄色の点灯、点滅、消灯の状態を表現することができるLEDなどのランプとし、試薬交換処理の状況を第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのインジケータで表現する。たとえば第1のインジケータ付きスイッチが消灯している場合は、この第1のインジケータ付きスイッチが設けられている位置に置かれた外置き試薬容器の交換を開始可能な状態(試薬容器が空であり、後述する試薬貯留流路からの試薬供給を行っている状態)を示す。第1のインジケータ付きスイッチが点灯している場合は、この第1のインジケータ付きスイッチが設けられている位置に置かれた外置き試薬容器の交換が不可能な状態(外置き試薬容器が使用中である状態)を示す。第1のインジケータ付きスイッチが点滅している場合は、この第1のインジケータ付きスイッチが設けられている位置に置かれた外置き試薬容器が、交換中である状態(ユーザが外置き試薬容器にアクセスしている状態)、を示す。なお、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cの表現する状態については、ここに示す限りではない。
【0030】
複数の外置き試薬ホルダ6a,6b,6cのそれぞれの位置ごとに設けられた第2のインジケータ付きスイッチは、ユーザが試薬交換を完了した際に押す。第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cのインジケータは、例えば、緑色の点灯、点滅、消灯の状態を表現することができるLEDなどのランプとする。試薬容器の状態を第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cのインジケータで表現する。たとえば第2のインジケータ付きスイッチが消灯している場合は、その第2のインジケータ付きスイッチが設けられている位置に置かれた外置き試薬容器が分析に使用中である状態を示す。また、第2のインジケータ付きスイッチが点灯している場合は、その第2のインジケータ付きスイッチが設けられている位置に置かれた外置き試薬容器がユーザによる交換作業中である状態を示す。なお、本実施例では第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cの表現する状態のうち、点滅に試薬容器の状態を割り当てていないが、割り当ててもよいこととする。また、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cの表現する状態については、ここに示す限りではない。
【0031】
なお、本実施例ではインジケータとスイッチが組み合わさった構成のハードウェアを使用しているが、これはあくまで一例であるため、インジケータとスイッチが分離されたハードウェア構成でもよい。また、本実施例では、試薬交換開始のトリガとして第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23c、試薬交換完了のトリガとして第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cを使用しているが、試薬交換開始のトリガと試薬交換完了トリガはこれに限定しない。例えば、試薬交換開始のトリガはチューブリフタ22a、22b、22cを引き上げたことを検出できるセンサでもよく、試薬交換完了トリガはチューブリフタ22a、22b、22cを押し下げたことを検出できるセンサでもよい。
【0032】
外置き試薬ホルダ6a、6b、6cに設置された外置き試薬容器21a、21b、21cの背面に付された個体識別標識(図示せず、本実施の形態ではRFIDタグ)を読み取り、その識別情報を制御装置19の制御部19aに送る読取装置(図示せず)が設けられている。なお、外置き試薬容器21a、21b、21cの個体識別標識としてバーコードラベルなどを用いても良い。個別識別標識に記録される識別情報には、外置き試薬容器21a、21b、21cに収容された試薬を識別するための試薬識別番号(識別コード)、収容された試薬が対応する検査項目名、試薬識別コード、ロット番号、およびシーケンス番号等が含まれている。
【0033】
次に、
図3を用いて本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる外置き試薬容器21a、21b、21cの周辺の部位、及び、その流路構成について説明する。
【0034】
外置き試薬の流路は、試薬を収容する外置き試薬容器を交換可能に保持する試薬容器保持部と、前記外置き試薬容器内の試薬の一部を貯留する試薬貯留流路と、前記試薬容器内の測定部に試薬を供給する第一の流路と、前記第一の流路から分岐して配置され、前記試薬貯留流路を接続する第二の流路と、前記第一の流路および前記第二の流路に陰圧または陽圧を印加することで、試薬を前記測定部および前記試薬貯留流路に送液する送液手段と、少なくとも前記第一の流路および前記第二の流路に設けられた弁と、所定のタイミングで前記測定部へ試薬を供給する供給元を、前記試薬容器から前記試薬貯留流路に切り替えるよう前記弁および前記送液手段を制御する制御手段と、で構成される。
【0035】
外置き試薬容器21a、21b、21cは第一の流路36を通じて試薬供給ノズル20a、20b、20cと接続されており、その中間には試薬容器側電磁弁30a、30b、30c、及び、試薬供給ノズル側電磁弁32a、32b、32cが配置されている。試薬容器側電磁弁30a、30b、30cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを引き、試薬供給ノズル側電磁弁32a、32b、32cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを押すことで外置き試薬容器21a、21b、21cより試薬が試薬供給ノズル20a、20b、20cよりリザーバ34に設置されたリザーバカップ35a、35b、35cへ供給される。リザーバ34にはインキュベータから供給される反応容器と、各試薬専用に設けられたリザーバカップ35a、35b、35cが設置されている。各リザーバカップ35a、35b、35cに供給された試薬と反応容器内の反応液を併せてノズル17a、17bで吸引し、検出ユニット18a、18bへ送る。
【0036】
さらに、外置き試薬容器21a、21b、21cは第一の流路36から分岐して配置された第二の流路37を通じて試薬貯留流路27a、27b、27cとも接続されており、その間には試薬貯留流路側電磁弁31a、31b、31cが配置されている。試薬容器側電磁弁30a、30b、30cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを引き、試薬貯留流路側電磁弁31a、31b、31cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを押すことで外置き試薬容器21a、21b、21cより試薬が試薬貯留流路27a、27b、27cへ供給される。試薬貯留流路27a、27b、27cの内液は試薬貯留流路専用廃液流路28a、28b、28cを通じて図示しない廃液部へ排出される。
【0037】
また、試薬貯留流路27a、27b、27cは試薬供給ノズル20a、20b、20cと接続されており、その間には試薬貯留流路側電磁弁31a、31b、31c、及び、試薬供給ノズル側電磁弁32a、32b、32cが配置されている。試薬貯留流路側電磁弁31a、31b、31cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを引き、試薬供給ノズル側電磁弁32a、32b、32cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを押すことで試薬貯留流路27a、27b、27cより試薬が試薬供給ノズル20a、20b、20cへ供給される。
【0038】
共用廃液流路29a、29b、29cは第一の流路から分岐した第三の流路38に接続されており、排出対象の液体が移送されている流路と対となる電磁弁を開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを引き、共用廃液流路側電磁弁33a、33b、33cのみを開放した状態で試薬シリンジ25a、25b、25cを押すことで対象の流路の内液が共用廃液流路29a、29b、29cを通じて図示しない廃液部へ排出される。
【0039】
システム水は試薬シリンジ25a、25b、25cと接続されたシステム水供給ユニット39より供給される。
【0040】
なお、試薬貯留流路27a、27b、27cの容量(流路の太さ、及び、長さ)は、試薬貯留流路からの試薬供給により分析が継続可能な時間が、想定する試薬容器の交換時間と同じ、もしくは、それよりも長くなるように、決定されればよい。そのため、図に示すように試薬貯留流路27は第二の流路37よりも大きな径を有している必要は必ずしもなく、第二の流路37の長さを十分長くし、試薬貯留流路27および試薬貯留流路専用廃液流路28と一体の流路として形成されていてもよい。
【0041】
本発明では、試薬貯留流路27a、27b、27cが第一の流路36から分岐した第二の流路37に配置されているため、試薬の一部を試薬貯留流路27a、27b、27cに貯留させた状態で試薬容器の交換を行ったとしても、交換前後の試薬が試薬貯留流路27a、27b、27cで混ざることがない。そのため、たとえば同一種類であっても異なるロットの試薬が混ざることでpHが変動して傷みやすい試薬を扱う場合でも、試薬のコンタミネーションによる劣化を防ぐことができ、傷んでしまった試薬を使用したことで著しい分析性能の低下を避けることが可能である。
【0042】
図4は、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる制御装置19の機能ブロック図である。
図4を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100に用いられる制御装置19の機能を説明する。制御装置19は、自動分析装置100全体の動作を制御するものである。
【0043】
制御装置19は、予め設定したプログラムや、入力部19cなどにより入力されるユーザからの指令に基づいて試料の分析、試薬容器の交換、及び、試薬貯留流路27a、27b、27cへの試薬の充填、などの制御を実施する。自動分析装置100の動作制御や分析結果の処理をおこなう制御部19aと、キーボードやマウス、タッチパネル、ボタン等で構成され、試料や分析項目に関する情報、及びその設定、外置き試薬容器の交換開始、及び、終了のトリガの入力等を行い、必要に応じて制御部19aに情報を送信する入力部19cと、ディスプレイやインジケータ等で構成され、分析に関する設定入力画面や分析結果、異常検出時の内容、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換を促すメッセージ、及び、外置き試薬容器21a、21b、21cの切り替えタイミングを含む情報、表示する表示部19bと、分析に関する設定や試料、試薬等に関する情報、分析結果、各外置き試薬容器21a、21b、21cの試薬の残量情報、試薬貯留流路27a、27b、27cの試薬の使用状況に関する情報、及び、試薬貯留流路27a、27b、27cに試薬が充填されてから現在までの時間に関する情報等を記憶する記憶部19dとを備えている。
【0044】
制御部19aは、試薬貯留流路充填検出部119a、試薬貯留流路充填制御部119b、試薬供給制御部119c、及びシステム水供給制御部119dを有している。
【0045】
試薬貯留流路充填検出部119aは、外置き試薬容器21a、21b、21cの試薬を試薬貯留流路27a、27b、27cへ充填するトリガを検出する機能ブロックである。具体的には、試薬貯留流路27a、27b、27cの試薬の使用状況、及び、試薬貯留流路27a、27b、27cに試薬が充填されてから現在までの時間に関する情報を記憶部19dから取得し、それらに基づいて試薬貯留流路27a、27b、27cへ試薬を充填するタイミングか否かを確認する。具体的には、
図6を使って後述する。その結果、試薬貯留流路27a、27b、27cへ試薬を充填する必要がある場合は試薬貯留流路充填制御部119bへその旨を通知する。
【0046】
本実施例では試薬貯留流路27a、27b、27cに充填された試薬が放置されうる最大時間として、たとえば12時間以上経過した場合に試薬の入れ替えが必要とすることができる。なお、放置時間としては12時間に限るものではなく、試薬の種類に応じて個別に設定するようにしてもよい。また、本実施例では分析開始時、または、分析中にのみ試薬貯留流路への試薬充填のタイミングを確認しているが、タイミングについては装置が待機中など、その他の別の状態であってもよい。
【0047】
試薬貯留流路充填制御部119bは、試薬貯留流路充填検出部119aからの通知に応じて試薬貯留流路27a、27b、27cへの試薬の充填を制御する機能ブロックである。具体的には、例えば使用済みなどの理由で交換すべき古い外置き試薬容器21a、21b、21cを新しい試薬容器に交換するのに要すると想定される時間内は分析が実施できる分量の試薬を試薬貯留流路27a、27b、27cへ充填するよう、各電磁弁やシリンジを制御する。
【0048】
試薬供給制御部119cは、試薬貯留流路充填制御部119bの指示により、試薬を供給する流路を制御する機能ブロックである。詳細には、外置き試薬容器21a、21b、21cと試薬貯留流路27a、27b、27cのいずれから試薬供給ノズル20a、20b、20cへ試薬を供給するのかに応じて試薬シリンジ25a、25b、25c、試薬容器側電磁弁30a、30b、30c、試薬貯留流路側電磁弁31a、31b、31c、試薬供給ノズル側電磁弁32a、32b、32c、及び、共用廃液流路側電磁弁33a、33b、33cを制御する。
【0049】
システム水供給制御部119bは、試薬貯留流路充填制御部119bの指示により、システム水を供給する流路を制御する機能ブロックである。詳細には、外置き試薬容器21a、21b、21cと試薬貯留流路27a、27b、27cのいずれから試薬供給ノズル20a、20b、20cへ試薬を供給するのかに応じて試薬シリンジ25a、25b、25c、試薬貯留流路側電磁弁31a、31b、31c、試薬供給ノズル側電磁弁32a、32b、32c、及び、共用廃液流路側電磁弁33a、33b、33cを制御する。
【0050】
図5は、分析中の外置き試薬容器21a、21b、21cの交換の実施形態を示すフローチャートである。
図5を用いて、本発明の実施形態である自動分析装置100における試薬交換について説明する。
【0051】
分析が開始されると、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換前の第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cの初期状態を消灯(ステップS50)、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cの初期状態を消灯(ステップS51)にする。
【0052】
試薬貯留流路充填検出部119aによって試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が必要と判断された場合(ステップS52;NO)、試薬貯留流路充填検出部119aは試薬貯留流路充填制御部119bに対して指示し、試薬貯留流路27a、27b、27cへの試薬の充填処理を行う。まず、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを点灯し、ユーザに外置き試薬容器の交換が不可能なタイミングであることを通知する(ステップS53)。次に、外置き試薬容器21a、21b、21cより試薬貯留流路27a、27b、27cへ試薬を充填する(ステップS54)。最後に、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを消灯し、外置き試薬容器の交換を開始可能なタイミングであることを通知する。なお、試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が必要な条件については前述の通りとする。
【0053】
試薬貯留流路充填検出部119aが試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が不要と判断した場合(ステップS52;YES)、試薬貯留流路充填検出部119aは試薬貯留流路充填制御部119bに対して指示を出さず、試薬貯留流路27a、27b、27cへの試薬の充填処理は行われない。
【0054】
第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cの押下があるまで試薬交換処理は待機中となる(ステップS56;NO)。
【0055】
第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cがユーザにより押下された場合(ステップS56;YES)、試薬貯留流路充填制御部119bは試薬交換処理を開始する。まず、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを点灯して、外置き試薬容器の交換が不可能なタイミングであることをユーザに通知する(ステップS57)。次に、外置き試薬容器21a、21b、21cから試薬貯留流路27a、27b、27cへ試薬を供給する流路を切り替える(ステップS58)。流路の切り替えが完了したら、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを消灯して外置き試薬容器の交換を開始可能な状態であることを示し(ステップS59)、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cのランプを点灯することで、外置き試薬容器が使用中であることを示す(ステップS60)。
【0056】
外置き試薬容器21a、21b、21cの交換の残り時間が第一のタイムアウト時間である規定時間Aになったら(ステップS61;YES)、試薬交換の残り時間が少ないことを表示部19bの画面に出力し(ステップS62)、第1のインジケータ付きスイッチのランプを点滅する(ステップS63)。その後、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cの押下があるまで試薬交換処理は待機する(ステップS66;NO)。なお、試薬交換の残り時間である第一のタイムアウト時間は、例えば30秒に設定することが可能であるが、残り時間の長さについてはこれに限定しない。
【0057】
また、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換の残り時間が第一のタイムアウト時間ではなく(ステップS61;NO)、かつ、まだ残時間がある場合(ステップS64;YES)、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cの押下があるまで試薬交換処理は待機する(ステップS66;NO)。
【0058】
第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cが押下されたら(ステップS66;YES)、外置き試薬容器保持部上に保持されている外置き試薬容器21a、21b、21cの個体識別標識が読取装置で読み取られ、その識別情報は制御装置19の制御部19aに送られる(ステップS67)。本識別情報により、外置き試薬容器21a、21b、21cの種類やロット等の情報が特定される。その後、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換の残り時間が0秒になるまで試薬交換処理は待機する(ステップS68;NO)。
【0059】
外置き試薬容器21a、21b、21cの交換の残り時間が第二のタイムアウト時間になったら(ステップS68;YES)、試薬供給ノズル20a、20b、20cへ試薬を供給する流路を、試薬貯留流路27a、27b、27cから外置き試薬容器21a、21b、21cへ切り替え(ステップS69)、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを消灯し(ステップS70)、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cのランプを消灯する(ステップS71)。第二のタイムアウト時間は、例えば残り時間が0秒に設定されている。
【0060】
一方、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換がされないまま第二のタイムアウト時間になった場合(ステップS64;NO)、試薬交換がタイムアウトとなったことを表示部19bの画面に出力される(ステップS65)。その後、試薬貯留流路27a、27b、27cから外置き試薬容器21a、21b、21cへ試薬を供給する流路を切り替え(ステップS69)、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを消灯し(ステップS70)、第2のインジケータ付きスイッチ24a、24b、24cのランプを消灯する(ステップS71)。なお、この場合外置き試薬容器は交換されていないので、測定は停止される。
【0061】
以上のようにして、ステップS58からステップS69の間は試薬貯留流路内に貯留された試薬を用いて分析動作を継続させる。この間は外置き試薬容器に対する装置のアクセスはないため、オペレータは外置き試薬容器の交換作業にをおこなうことが可能となる。また、S66で外置き試薬容器の交換作業が完了したことを検出した後に、試薬の供給元が新しい外置き試薬容器に自動的に切り替わるので、外置き試薬容器の交換によって分析作業が中断することない。
【0062】
図6は、試薬貯留流路27a、27b、27cに充填された試薬を入れ替える処理を示すフローチャートである。
図6を用いて、試薬貯留流路27a、27b、27c内の試薬を入れ替える処理をについて説明する。
【0063】
まず、試薬貯留流路充填検出部119aは現在の装置状態を確認し、「分析中」であった場合(ステップS80;YES)、または、「分析開始タイミング」であった場合(ステップS80;NO、かつ、ステップS81;YES)、更に試薬貯留流路27a、27b、27cの状態が「満杯」か否かを確認する。試薬貯留流路27a、27b、27cが「満杯でない」場合(ステップS82;YES)、試薬貯留流路充填検出部119aは試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が必要と判断し、その旨を記憶部19dへ記憶する(ステップS83)。装置の状態が「分析中」でも「分析開始タイミング」でもなかった場合(ステップS80;NO、かつ、ステップS81;NO)は次のステップへ進む。
【0064】
次に試薬貯留流路充填検出部119aが試薬貯留流路27a、27b、27cに試薬が充填されて所定の時間(規定時間B)以上経過していないと判断した場合(ステップS84;NO)は、所定の時間を経過するまで待機する。なお、規定時間Bは、例えば12時間程度の時間を想定しているが、規定時間の長さについてはこの限りではない。
【0065】
試薬貯留流路充填検出部119aが試薬貯留流路27a、27b、27cに試薬が充填されて規定時間B以上経過したと判断した場合(ステップS84;YES)、試薬貯留流路充填検出部119aは試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が必要と判断し、その旨を記憶部19dへ記憶する(ステップS85)。
【0066】
最終的に、記憶部19dに試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が必要と記憶されている場合(ステップS86;YES)、試薬貯留流路充填検出部119aは試薬貯留流路充填制御部119bに対して指示し、第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cのランプを点灯する(ステップS87)。試薬貯留流路充填制御部119bからシステム水供給制御部119dに指示し、試薬貯留流路27a、27b、27cに対してシステム水を供給し、内液を試薬貯留流路専用廃液流路28a、28b、28cへ排出する(ステップS88)。システム水は、システム水供給ユニット14と、これに流路を通じて接続された試薬シリンジ25a、25b、25cが動作することで供給される。その後、試薬貯留流路充填制御部119bから試薬給制御部119cに指示し、外置き試薬容器21a、21b、21cより試薬貯留流路27a、27b、27cへ再度試薬を充填する(ステップS89)。
【0067】
試薬貯留流路27a、27b、27cへの試薬の充填が終わったら、試薬貯留流路充填制御部119bは第1のインジケータ付きスイッチ23a、23b、23cを消灯する(ステップS90)。
【0068】
一方、記憶部19dに試薬貯留流路27a、27b、27cに対して試薬の充填が必要と記憶されていない場合(ステップS86;NO)、何も行わない。
【0069】
なお、特に図示しないが、装置の電源を落とす際には前述のステップS87同様、試薬貯留流路27a、27b、27cへシステム水を送り、試薬貯留流路27a、27b、27c内の試薬を排出し、内液をシステム水に置換する。
【0070】
以上のように、試薬貯留流路27a、27b、27cに充填された試薬の待機時間を監視し、待機時間のタイムアウトを検出して試薬貯留流路27a、27b、27cを洗浄してから新鮮な試薬に入れ替えることで、試薬貯留流路27a、27b、27c内に試薬が滞留して、最悪の場合、試薬貯留流路27a、27b、27c内で細菌が繁殖してしまうリスクを排除している。
【0071】
さらに、定期的に試薬貯留流路27a、27b、27c内の液体を排出するため、試薬貯留流路27a、27b、27c内に気泡が混入した場合も、気泡を廃液流路へと排出する。これにより、気泡の影響で試薬の分注性能が低下することを回避することが可能である。
【0072】
図7は、外置き試薬容器21a、21b、21cをはじめとする外置き容器の情報を一覧で表示する外置き容器情報画面の実施形態を示す構成図である。
図7を用いて、外置き容器情報画面について説明する。
【0073】
外置き容器情報画面では、自動分析装置100に搭載する各種外置き容器の情報を一覧で表示する。表示する情報には、少なくとも、容器の内液の名前、容器の種類を示す容器番号、ロット番号、同一ロット内の識別情報であるシーケンス番号、及び、使用開始時刻を含むこととする。なお、使用開始時刻とは、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換時に、試薬貯留流路27a、27b、27cの試薬を使い切った後、試薬の供給元が試薬貯留流路27a、27b、27cから外置き試薬容器21a、21b、21cに切り替わったタイミングを意味する。そのため、外置き容器情報画面は、試薬貯留流路充填制御部119bが試薬を供給する流路を試薬貯留流路27a、27b、27c側から外置き試薬容器21a、21b、21c側に切り替えたときに更新する。閉じるボタンを押すことで外置き容器情報画面は閉じる。
【0074】
なお、本実施例では、外置き容器情報を一覧で3種類のみ表示しているが、種類数はその限りではない。
【0075】
図8は、外置き試薬容器21a、21b、21cをはじめとする外置き容器について、ユーザの設定する交換目安残量となったタイミングで試薬交換を促すアラーム機能で用いる、交換目安残量の設定を行う容器交換アラーム設定画面の実施形態を示す構成図である。
図8を用いて、容器交換アラーム設定画面について説明する。
【0076】
容器交換アラーム設定画面では、自動分析装置100に搭載する各種外置き容器の情報を一覧で表示し、それらに対して交換目安残量を入力できる。表示する情報には、少なくとも、容器の内液の名前、容器の種類を示す容器番号、ロット番号、同一ロット内の識別情報であるシーケンス番号、及び、交換目安残量の現在の設定値を含むこととする。なお、交換目安残量とは、外置き試薬容器21a、21b、21cの交換を促すメッセージを表示部119bに出力するタイミングの残量を意味する。ユーザは容器交換アラーム設定画面にて交換目安残量の列に数値を入力し、保存ボタンを押すと設定値が更新される。閉じるボタンを押すと容器交換アラーム設定画面は閉じる。
【0077】
自動分析装置100は、外置き試薬容器21a、21b、21cの残量が容器交換アラーム設定画面の設定値となった場合、及び、残量が0になった場合に容器交換を促すアラームを発行する。これにより、ユーザはそれぞれの用途に応じて試薬交換のタイミングを知るための設定が可能となる。