【実施例1】
【0012】
図1Aに自動分析装置1の全体構成を示す。水平面であるXY平面に設置された自動分析装置1を上(Z方向)から見た平面の構成を示している。X方向及びY方向は水平面を構成する互いに直交する方向であり、ここでは、X方向は装置1の横幅の方向に対応し、Y方向は装置1の縦幅の方向に対応している。Z方向は、X方向及びY方向に垂直な鉛直方向であり、装置1の高さ方向に対応している。また、これに加えて、水平面において試薬ディスク2の半径方向Rと、試薬ディスク2の円周方向Cとを示している。
【0013】
自動分析装置1は、制御コンピュータ123、ラック搬送部120、ラック搬送ライン118、サンプル分注機構103、インキュベータ104、搬送機構106、保持部材107、攪拌機構108、廃棄孔109、試薬ディスク2、試薬分注機構10、反応容器搬送機構116、検出ユニット117を有する。
【0014】
制御コンピュータ123は、自動分析装置1の分析依頼情報に基づいて各機構を制御して、分析のための各工程を実現する。工程には分注工程等を含む。また、制御コンピュータ123は、ユーザに対するインタフェースを提供する。
【0015】
自動分析装置1が分析対象とするサンプル(試料)はサンプル容器102に収容され、サンプル容器102はラック101に架設された状態で自動分析装置1に搬入される。ラック搬送部120は、外部と自動分析装置1との間でラック101を搬入または搬出を行う機構である。また、ラック搬送部120には、自動分析装置1の電源投入指示部121及び電源切断指示部122が備えられている。電源投入指示部121及び電源切断指示部122は、オペレータ(自動分析装置1を操作するユーザ)が入力操作するボタンである。なお、制御コンピュータ123の表示部に、電源投入指示部121及び電源切断指示部122に相当する入力部を備えてもよい。
【0016】
ラック搬送部120により搬入されたラック101は、ラック搬送ライン118によって、サンプル分注機構103近傍のサンプル分注位置まで移動される。インキュベータ104には、その円周部に複数の反応容器105が設置可能であり、円周方向に設置された反応容器105をそれぞれ所定位置に移動させる回転運動が可能である。
【0017】
搬送機構106は、X、Y、Zの3軸の各方向に移動可能である。搬送機構106は、サンプル分注チップと反応容器105とを搬送する機構であり、サンプル分注チップ及び反応容器105を保持する保持部材107、反応容器105を攪拌する攪拌機構108、サンプル分注チップまたは反応容器105を廃棄する廃棄孔109、サンプル分注チップ装着位置110、及びインキュベータ104の所定箇所の範囲を移動する。
【0018】
保持部材107には、未使用の反応容器及び未使用のサンプル分注チップが複数個保持されている。まず、搬送機構106は、保持部材107の上方に移動し、下降して未使用の反応容器105を把持した後に上昇し、更にインキュベータ104の所定位置の上方に移動した後に下降して、反応容器105をインキュベータ104の所定位置に設置する。
【0019】
次いで、搬送機構106は、再び保持部材107の上方に移動し、下降して未使用のサンプル分注チップを把持した後に上昇し、サンプル分注チップ装着位置110の上方に移動した後に下降して、サンプル分注チップをサンプル分注チップ装着位置110に設置する。サンプル分注チップは、コンタミネーションを防止するため、サンプル分注機構103がサンプルを分注する際にプローブ(ノズル)の先端に装着され、当該サンプルの分注が終了すると破棄される。
【0020】
サンプル分注機構103は、水平面での回転動作及び鉛直方向(Z方向)の上下移動が可能である。サンプル分注機構103は、サンプル分注チップ装着位置110の上方まで回転動作により移動した後、下降して、ノズルの先端にサンプル分注チップを圧入して装着する。ノズルの先端にサンプル分注チップを装着したサンプル分注機構103は、搬送ラック101に載置されているサンプル容器102の上方に移動した後、下降して、そのサンプル容器102に保持されているサンプルを所定量吸引する。サンプルを吸引したサンプル分注機構103は、インキュベータ104の上方に移動した後、下降して、インキュベータ104に保持されている未使用の反応容器105にサンプルを吐出する。サンプル吐出が終了すると、サンプル分注機構103は廃棄孔109の上方に移動し、使用済みのサンプル分注チップを廃棄孔109から廃棄する。
【0021】
試薬ディスク2はディスク形状を有し、回転動作が行われる。試薬ディスク2には複数の試薬ボトル3が設置されている。試薬ディスク2は、水平面において鉛直方向の中心軸の周りに回転する。これにより、試薬ディスク2上に配置されている試薬ボトル3が円周方向Cに移動し、工程に応じた所定の位置に搬送される。
【0022】
試薬ディスク2は、例えば3個の容器部を1セットとした試薬ボトル3が設置可能となっている。
図1Bに試薬ボトル3の斜視模式図を示す。なお、試薬ボトル3における容器部の数は複数であればよく、3には限られない。各容器部は、試薬を収容する本体部と、試薬に対してアクセス可能な吸引口301と、吸引口301を密閉可能な蓋302とを有している。試薬ボトル3全体の外形は、肩部303を有する略直方体の形状であり、肩部の上側に3つの吸引口301が並んで上側に突出している。自動分析装置の試薬容器蓋開閉機構(図示せず)による開閉動作を行うため、蓋302の一端に突起部304が設けられ、試薬ボトル3の側面方向に突出している。蓋302はヒンジ305を回転軸として回転可能とされ、蓋302には密閉部材306が設けられ、吸引口301に密閉部材306を挿入して蓋302を閉めることにより、試薬が蒸発したり、濃度変化を生じたりすることを抑制している。
図1Aに示されるように、本実施例の自動分析装置1は、試薬ボトル3の中心線が試薬ディスク2の半径方向Rに対して所定の角度θ(θ>0)を有するように配置されている(ここでは、「斜め配置」と称する)。このような試薬ボトルの斜め配置を適用することにより、試薬分注機構10の円弧軌道が1つの試薬ボトルの複数の吸引口の上を通過するように、試薬分注機構10を設置できる。従来のように試薬ボトルを試薬ディスクの径に沿って放射状に配置する(θ=0)場合、上述のようなアクセスを行うためには円弧軌道の径を大きくせざるを得ず、試薬分注機構10により安定に分注動作することが困難であるため、試薬分注機構は吸引口ごとに異なる位置の試薬ボトルにアクセスするようにされていた。
【0023】
なお、試薬ディスク2の上部には図示しないカバーが設けられており、ほこり等の侵入が防止されているとともに、試薬ディスク2を含む空間部分が所定の温度に保温または保冷されている。すなわち、試薬ディスク2を含む空間部分は、保温庫や保冷庫としても機能する。本実施例では、領域4において試薬分注機構10が試薬ボトル3にアクセスするため、カバーに開口部を設けるとともに、試薬容器蓋開閉機構を設けることが望ましい。これにより試薬容器の蓋の開閉動作と試薬吸引動作との間に試薬ディスクの回転動作を行うことを不要とし、分注工程に要する時間を短くすることができる。
【0024】
試薬分注機構10は、水平面での回転動作、及び鉛直方向の上下移動が可能である。試薬分注機構10は、領域4(カバーの開口部)の上方に回転動作で移動した後に、下降し、プローブ(ノズル)の先端を、試薬容器蓋開閉機構によって開蓋された試薬ボトル3内の試薬に浸漬して、所定量の試薬を吸引する。次いで、試薬分注機構10は、上昇した後、インキュベータ104の所定位置5の上方に回転動作で移動して、反応容器105に試薬を吐出する。
【0025】
サンプル及び試薬が吐出された反応容器105は、インキュベータ104の回転によって所定位置に移動し、搬送機構106によって、反応容器攪拌機構108へと搬送される。反応容器攪拌機構108は、反応容器105に回転運動を加えることで、反応容器105内のサンプルと試薬とを攪拌して混和する。これにより、反応容器105内に反応液が生成される。
【0026】
攪拌の終了した反応容器105は、搬送機構106によって、インキュベータ104の所定位置に戻される。反応容器搬送機構116は、インキュベータ104と検出ユニット117との間で反応容器105を移載する。反応容器搬送機構116は、反応容器105を把持して上昇し、回転動作によって検出ユニット117に反応容器105を搬送する。その反応容器105は、検出ユニット117内で分析される。分析の終了した反応容器105は反応容器搬送機構116によってインキュベータ104に戻される。その後、反応容器105は、搬送機構106によって、インキュベータ104から廃棄孔109の上方に移動し、その廃棄孔から廃棄される。
【0027】
試薬分注機構10がアクセスする試薬ディスク2上の位置4及び試薬分注機構10がアクセスするインキュベータ104上の吐出位置5は固定されており、
図1に示す位置関係にある。まず、試薬ディスク2は回転動作を行い、吸引対象となる試薬の入った試薬ボトル3を位置4に移動させる。続いて、試薬分注機構10が回転動作を行い、試薬ボトル3の吸引口31,32,33のいずれかにアクセスして試薬プローブ11を用いて試薬を吸引する。一方、インキュベータ104も回転動作を行い、試薬を吐出する反応容器105を吐出位置5に移動させておく。その後、試薬分注機構10は回転動作を行い、吸引した試薬を吐出位置5の反応容器105に吐出する。
【0028】
図2Aに、試薬分注機構10の円弧軌道12と、領域4に位置する試薬ボトル3の3か所の吸引口31,32,33との位置関係を示す(ただし、
図2Aでは分かりやすさのため、円弧軌道12を誇張して描いている)。ここで、試薬分注機構10の円弧軌道12とは、試薬分注機構10の試薬プローブ(ノズル)11が試薬分注機構の回転運動に伴って描く軌道をいう。試薬ボトル3の各吸引口の中心位置c31,c32,c33は中心線L1に沿って、かつ距離Pをもって配置されているので、
図2Aに示すように、試薬分注機構10の円弧軌道12と各吸引口の中心位置とのずれ量εを、すべて同じε
0とすることにより、最小のずれ量とすることができる。試薬分注機構10の円弧軌道12の半径をR(試薬分注機構10の回転軸O
1と試薬プローブ11との距離)とすると、3平方の定理から(数1)が成り立ち、これを変形することにより(数2)を導き出すことができる。このとき、試薬プローブ11の各吸引口31,32,33へのアクセス位置はそれぞれa31,a32,a33となる。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
したがって、(数2)より、ずれ量ε
0をできるだけ小さくするには、吸引口ピッチPをできるだけ小さく、かつ円弧軌道12の半径Rをできるだけ大きくすればよいことになる。しかしながら、装置寸法の制約上、部品製作上、または試薬の必要量などにより、ある程度制限される。また、試薬ボトル3の吸引口の寸法、試薬プローブ11の太さなどの関係により、試薬分注機構10の試薬ボトルへのアクセス時のクリアランスにも影響するため、適切な値にすることが必要である。
【0032】
例えば、試薬分注機構10の円弧軌道12の半径Rを200mm、3つの吸引口間のピッチPを26mmとした場合、試薬プローブ11の中心と試薬ボトルの吸引口31,32,33の中心とのずれ量ε
0は(数2)により0.845mmとなる。試薬ボトルの吸引口寸法をΦ12mm、試薬プローブ11の太さをΦ3mmとすると、吸引口と試薬プローブとのクリアランス値dは、(12/2)−(3/2)−0.845=3.655mmとなる(
図2Bを参照)。
【0033】
試薬分注機構10は自動分析装置1の筐体に据え付ける。上述のように、試薬ボトルの吸引口と試薬プローブとのクリアランスは比較的小さく、かつ吸引口が直線上に配列されているのに対して、試薬分注機構10は円弧軌道を有している。このため、例えば、
図2Aに示す吸引口32を基準に試薬分注機構10の据え付け位置を調整し、吸引口32でのずれ量εがε
0よりも小さく調整されていたとすると、他の吸引口でのずれ量εがε
0よりも大きくなる。このため、試薬分注機構10の位置調整を以下のように行う。
【0034】
図3に示すように、試薬ディスク2には、試薬分注機構10の円弧軌道12上で、かつ、試薬ボトル3の搭載位置の両端の外側近傍にマーク35,36が施されている。マークを施すのは、試薬ディスクのある1つの試薬ボトルの搭載位置に対してのみでよい。ここでは、試薬ボトルの搭載位置を挟んで、試薬ディスク2の回転軸に近い位置のマークを第1のマーク35、遠い位置のマークを第2のマーク36と呼ぶ。試薬分注機構10の試薬プローブ11が、第1のマーク35、第2のマーク36、およびインキュベータ104上の吐出位置5(反応容器105の中心)の3か所を通るように、試薬分注機構10を自動分析装置の筐体に固定する。第1のマーク35および第2のマーク36は、突起もしくは穴とする。試薬ディスクの試薬保持部を樹脂で形成し、マーク35,36に相当する凹凸をその金型に作り込むことにより、試薬ディスク上に正確、かつ容易に円筒状の突起もしくは穴を形成することができる。なお、突起や穴に限られず、印刷やシールにより、試薬ディスク上に試薬分注機構10の円弧軌道の通過位置を示すようにしてもよい。
【0035】
試薬分注機構10の円弧軌道12が上述の3か所を通るように試薬分注機構10が据え付けられた後、試薬プローブ11のアクセス位置はソフトウエアによる調整を行うことでより適切な位置へアクセス可能となる。具体的には、試薬分注機構10を調整対象位置に向かって回転移動後、下降させ、正しいアクセス位置となる回転移動量を求め、例えば原点からの回転移動量を制御コンピュータ123の記憶装置に記憶させておく。
【0036】
インキュベータ104に対しては、吐出位置5の反応容器105の中心の一点のみへのアクセスであるので、その位置に合うように回転移動量を調整すればよい。例えば、試薬プローブ11の原点位置が
図3に示す状態であるとすると、回転移動量として角度αを記憶させる。
【0037】
一方、試薬ディスク2に対しては、試薬ボトル3の3つの吸引口のアクセス位置a31,a32,a33へのアクセス位置を調整する必要がある。このため、第1のマーク35および第2のマーク36を利用して調整する。第1のマーク35および第2のマーク36のそれぞれに対して試薬分注機構10を回転移動させて下降させ、第1のマーク35および第2のマーク36の直上に試薬プローブ11が来る回転移動量β
1,β
2を求める。第1のマーク35および第2のマーク36と試薬ボトル3の搭載位置との関係は固定であるため、試薬ボトル3の3つの吸引口のアクセス位置a31,a32,a33への回転移動量は、回転移動量β
1,β
2に基づき算出できる。なお、記憶させる回転移動量としては、回転角そのものであってもよく、試薬分注機構10は例えばステッピングモータによって駆動されるので、モータに対する回転制御量のような情報であってもよい。
【0038】
もちろん、試薬分注機構10を各アクセス位置a31,a32,a33まで回転移動させて、下降させ、円弧軌道上での各アクセス位置に合うように、回転移動量を調整することも可能ではある。しかしながら、
図2A、
図2Bに示したように、試薬ボトル3のアクセス位置a31,a32,a33は、吸引口の中心位置a31,a32,a33とはわずかにずれているため、調整作業者によるばらつきが出やすくなるおそれがあることに加え、調整箇所も1か所多くなる。
【0039】
以上、試薬分注機構10、試薬ディスク2上に斜め配置された試薬ボトル3、インキュベータ104と反応容器105を例に実施例1を説明した。しかしながら、これは一例であって、広く円弧軌道の動作をする機構が、直線上の複数位置へアクセスする装置に対して適用可能である。
【実施例2】
【0040】
実施例2として、直線軌道の動作をする機構が、円弧上に配置される複数位置にアクセスする装置を示す。実施例2も自動分析装置の例であり、
図4に実施例2に関する要部を示す。試薬の吸引・吐出を行う試薬プローブ61を有し、直線軌道62上で動作する試薬分注機構60と、実施例1と同様の試薬ボトル3を複数保持可能で回転可能な試薬ディスク2と、反応容器105を複数保持可能で回転可能なインキュベータ104を示している。なお、
図4では実施例1と同様に、試薬ボトル3を試薬ディスク2に斜め配置する例を示しているが、試薬ボトル3を径に沿って放射状に配置する試薬ディスク2であってもよい。
【0041】
インキュベータ104上の円弧50上に設置された隣接する複数位置の反応容器105に対して、試薬分注機構60が複数の反応容器分吸引した1試薬を、連続して複数の反応容器105に分割吐出する場合を例とする(なお、常に分割吐出する必要はなく、複数位置の反応容器のいずれかにアクセスするのであってもよい)。具体的には、インキュベータ104上の隣接する3つの位置51,52,53の反応容器105に対して、試薬分注機構60の直線動作によりアクセスする。
【0042】
試薬分注機構60がアクセスする試薬ディスク2上の位置4及び試薬分注機構60がアクセスするインキュベータ104上の吐出位置51,52,53は固定されており、
図4に示す位置関係にある。まず、試薬ディスク2は回転動作を行い、吸引対象となる試薬の入った試薬ボトル3を位置4に移動させる。試薬分注機構60は試薬ボトル3の所定の吸引口(31,32,33のいずれか)にアクセスして試薬プローブ61を用いて試薬を吸引する。一方、インキュベータ104も回転動作を行い、試薬を吐出する反応容器105を吐出位置51,52,53に移動させておく。その後、試薬分注機構60は直線軌道62上を順次移動しながら、隣接する吐出位置51,52,53に位置する3個の反応容器105に吸引した試薬を吐出する。この場合、吐出位置51,52,53は円弧50上に位置するため、3か所の位置全ての中心を直線軌道62上に乗せることは不可能である。このため、3つの吐出位置の中心と直線軌道とのずれを最小にする。
【0043】
実施例1と同様の考え方で、試薬分注機構60の直線軌道62と、インキュベータ104上の3つの吐出位置51,52,53の中心位置c51,c52,c53のずれ量εを、すべて同じε
0とすることで最小のずれ量とすることができる。
図5に示すように、インキュベータ104上で反応容器105を設置するピッチをθ、インキュベータ104上で反応容器105を設置する円弧50の半径(インキュベータ104の回転軸O
2と吐出位置(反応容器105の中心位置)との距離)をRとおく(ただし、
図5では分かりやすさのため、円弧50を誇張して描いている)。また、R≫ε
0であるため、3つの吐出位置51,52,53へのアクセス位置a51,a52,a53間の距離P’はP’=(R+ε
0)sinθ≒Rsinθが成り立つ。ここで、3平方の定理から(数3)が成り立ち、これを変形することにより(数4)を導き出すことができる。
【0044】
【数3】
【0045】
【数4】
【0046】
したがって、(数4)より、ずれ量ε
0をできるだけ小さくするには、ピッチθをできるだけ小さく、または半径Rをできるだけ小さくすればよいが、実施例1と同様、装置寸法の制約上、部品製作上、または反応液の必要量などにより、ある程度制限される。また、反応容器105の開口部の寸法、試薬プローブ61の太さなどの関係により、試薬分注機構10の反応容器へのアクセス時のクリアランスにも影響するため、適切な値にすることが必要である。
【0047】
例えば、反応容器を設置する円弧50の半径Rを58mm、反応容器105間のピッチθを9.47°(360°を38ポジションに等分割)とした場合、試薬分注機構60の直線軌道62と反応容器中心c51,c52,c53のずれ量ε
0は(数4)により0.393mmとなる。反応容器105の開口部寸法をΦ6mm、試薬プローブ61の太さをΦ1mmとすると、反応容器開口部と試薬プローブとのクリアランス値は、(6/2)−(1/2)−0.393=2.107mmとなる。
【0048】
実施例2における位置調整について説明する。
図6に示すように、インキュベータ104には、試薬分注機構60の直線軌道62上で、かつ、吐出位置51,52,53の両端の外側近傍にマーク54,55が施されている。マークはインキュベータ104に1セット施されていればよい。ここでは、吐出位置51に近い位置のマークを第1のマーク54、吐出位置53に近い位置のマークを第2のマーク55と呼ぶ。試薬分注機構60の試薬プローブ61が、第1のマーク54、第2のマーク55、および試薬ディスク2上の位置4の試薬ボトル3の中心を通るように、各機構の位置関係を調整する。第1のマーク54および第2のマーク55は、突起もしくは穴とする。インキュベータ104の反応容器保持部を樹脂で形成し、マーク54,55に相当する凹凸をその金型に作り込むことにより、インキュベータ上に正確、かつ容易に円筒状の突起もしくは穴を形成することができる。なお、突起や穴に限られず、印刷やシールにより、インキュベータ上に試薬分注機構60の直線軌道の通過位置を示すようにしてもよい。
【0049】
試薬分注機構60の直線軌道62が上述の3か所を通るように各機構が据え付けられた後、試薬プローブ61のアクセス位置はソフトウエアによる調整を行うことでより適切な位置へアクセス可能となる。具体的には、試薬分注機構60を調整対象位置に向かって移動させて正しいアクセス位置となる移動量を求め、制御コンピュータ123の記憶装置に記憶させておく。
【0050】
実施例1と同様に第1のマーク54および第2のマーク55のそれぞれに対して試薬分注機構60を直線移動させて下降させ、第1のマーク54および第2のマーク55の直上に試薬プローブ61が来る移動量を求める。
図5に示すように、第1のマーク54および第2のマーク55と吐出位置のアクセス位置a51,a52,a53との関係は固定であるため、吐出位置のアクセス位置a31,a32,a33への移動量は、第1のマーク54および第2のマーク55への移動量に基づき算出できる。
【0051】
以上、試薬分注機構60、試薬ディスク2上に配置された試薬ボトル3、インキュベータ104と反応容器105を例に実施例2を説明した。しかしながら、これは一例であって、広く直線軌道の動作をする機構が、円弧上の複数位置へアクセスする装置に対して適用可能である。