特許第6866038号(P6866038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866038
(24)【登録日】2021年4月9日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】パッケージデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20210419BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20210419BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20210419BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   B23K26/364
   H01L21/78 B
   H01L21/304 643Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-121277(P2017-121277)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-9176(P2019-9176A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】伴 祐人
(72)【発明者】
【氏名】青柳 元
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/026430(WO,A1)
【文献】 特開2012−164739(JP,A)
【文献】 特開2017−056465(JP,A)
【文献】 特開2016−066768(JP,A)
【文献】 特開2000−124164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 21/301
H01L 21/304
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーが混入されたモールド樹脂を含む樹脂パッケージ基板を分割して複数のパッケージデバイスを製造するパッケージデバイスの製造方法であって、
環状のフレームの開口に張られた粘着テープに該樹脂パッケージ基板を固定する固定ステップと、
該固定ステップの後、該モールド樹脂に対して吸収性を有し、該フィラーに対して透過性を有する波長のレーザービームを該樹脂パッケージ基板の該モールド樹脂に照射して、該モールド樹脂の一部を除去し、該フィラーの大きさを超える幅の溝を形成することで、該樹脂パッケージ基板を複数のパッケージデバイスへと分割する分割ステップと、
分割された該樹脂パッケージ基板の該溝を含む露出部分に洗浄用の流体を供給し、該分割ステップで除去された該モールド樹脂の一部に混入され該分割ステップで除去されずに該溝に残った該フィラーを該溝から除去する洗浄ステップと、を含むことを特徴とするパッケージデバイスの製造方法。
【請求項2】
該樹脂パッケージ基板は、デバイスチップを該モールド樹脂で被覆してなるモールド基板と、該モールド基板に重なるインターポーザー基板と、を備え、
該分割ステップの前に、該インターポーザー基板の露出した表面に液状の樹脂を塗布して保護膜を形成する液状樹脂塗布ステップを更に含み、
該固定ステップでは、該樹脂パッケージ基板の該モールド基板側を該粘着テープに固定し、
該分割ステップでは、該インターポーザー基板に対して吸収性を有する波長のレーザービームを該インターポーザー基板の該表面側から照射して、該インターポーザー基板を分割する第1溝を形成した後に、該モールド樹脂に対して吸収性を有し、該フィラーに対して透過性を有する波長のレーザービームを該第1溝の底に照射して、該第1溝に接続し該モールド樹脂を分割する第2溝を形成し、
該洗浄ステップでは、該分割ステップで除去されずに該溝に残ったフィラーを該溝から除去しながら、該保護膜を該インターポーザー基板の表面から除去することを特徴とする請求項1に記載のパッケージデバイスの製造方法。
【請求項3】
該流体は水であり、
該洗浄ステップでは、該水を5MPa以上12MPa以下の圧力で該露出部分に供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパッケージデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド樹脂を含む樹脂パッケージ基板を分割して複数のパッケージデバイスを製造するパッケージデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を複数の分割予定ライン(ストリート)で区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することで得られる。
【0003】
上述のような方法で得られたデバイスチップは、例えば、CSP(Chip Size Package)用のマザー基板に固定され、ワイヤボンデキング等の方法で電気的に接続された後に、表面側をモールド樹脂で封止される。このように、モールド樹脂によってデバイスチップを封止してパッケージデバイスを形成することで、衝撃、光、熱、水等の外的な要因からデバイスチップを保護できるようになる。
【0004】
近年では、デバイスチップの表面とともに側面をモールド樹脂で覆う方法も検討されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、まず、ウェーハの表面側に設定されている分割予定ラインに沿って溝を形成する。次に、ウェーハの表面側をモールド樹脂で覆い、樹脂パッケージ基板を完成させる。この時、モールド樹脂は、ウェーハの溝にも充填される。その後、溝に沿って樹脂パッケージ基板を分割することで、デバイスチップの表面及び側面がモールド樹脂によって覆われた状態のパッケージデバイスが得られる。
【0005】
この方法では、デバイスチップの側面が外部に露出しないので、上述した外的な要因に対する耐性は更に高まる。なお、溝に沿ってウェーハをパッケージデバイスへと分割する際には、レーザービームによるアブレーション加工を適用すると良い。このアブレーション加工では、切削ブレードによる切削加工等に比べてモールド樹脂の除去される幅(切り代)が狭くなるので、分割予定ラインの幅を狭く設定できるようになり、パッケージデバイスの取り数を増やせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ウェーハやデバイスチップを封止する際に用いられるモールド樹脂の線膨張係数(熱膨張係数)と、ウェーハやデバイスチップの線膨張係数との間には、大きな差がある。そこで、この線膨張係数の差に起因する樹脂パッケージ基板の反りを防ぐために、シリカ等でなる粒状のフィラーをモールド樹脂に混入させている。
【0008】
しかしながら、パッケージ基板を分割するアブレーション加工の際に照射されるレーザービームは、モールド樹脂には吸収されるが、フィラーには殆ど吸収されない。よって、完成したパッケージデバイスの側面に、露出した状態のフィラーが残ってしまう可能性がある。このフィラーが後に脱落すると、他の製品の製造工程等に悪影響を与えるため問題である。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モールド樹脂に混入されたフィラーの脱落を防止できるパッケージデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、フィラーが混入されたモールド樹脂を含む樹脂パッケージ基板を分割して複数のパッケージデバイスを製造するパッケージデバイスの製造方法であって、環状のフレームの開口に張られた粘着テープに該樹脂パッケージ基板を固定する固定ステップと、該固定ステップの後、該モールド樹脂に対して吸収性を有し、該フィラーに対して透過性を有する波長のレーザービームを該樹脂パッケージ基板の該モールド樹脂に照射して、該モールド樹脂の一部を除去し、該フィラーの大きさを超える幅の溝を形成することで、該樹脂パッケージ基板を複数のパッケージデバイスへと分割する分割ステップと、分割された該樹脂パッケージ基板の該溝を含む露出部分に洗浄用の流体を供給し、該分割ステップで除去された該モールド樹脂の一部に混入され該分割ステップで除去されずに該溝に残った該フィラーを該溝から除去する洗浄ステップと、を含むパッケージデバイスの製造方法が提供される。
【0011】
上述した本発明の一態様において、該樹脂パッケージ基板は、デバイスチップを該モールド樹脂で被覆してなるモールド基板と、該モールド基板に重なるインターポーザー基板と、を備え、該分割ステップの前に、該インターポーザー基板の露出した表面に液状の樹脂を塗布して保護膜を形成する液状樹脂塗布ステップを更に含み、該固定ステップでは、該樹脂パッケージ基板の該モールド基板側を該粘着テープに固定し、該分割ステップでは、該インターポーザー基板に対して吸収性を有する波長のレーザービームを該インターポーザー基板の該表面側から照射して、該インターポーザー基板を分割する第1溝を形成した後に、該モールド樹脂に対して吸収性を有し、該フィラーに対して透過性を有する波長のレーザービームを該第1溝の底に照射して、該第1溝に接続し該モールド樹脂を分割する第2溝を形成し、該洗浄ステップでは、該分割ステップで除去されずに該溝に残ったフィラーを該溝から除去しながら、該保護膜を該インターポーザー基板の表面から除去しても良い。
【0012】
また、上述した本発明の一態様において、該流体は水であり、該洗浄ステップでは、該水を5MPa以上12MPa以下の圧力で該露出部分に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係るパッケージデバイスの製造方法では、樹脂パッケージ基板を複数のパッケージデバイスへと分割する際に、モールド樹脂に含まれるフィラーの大きさを超える幅の溝を形成するので、中央部が露出し、少なくとも両端部(2箇所)がモールド樹脂に固定された状態のフィラーが溝に残ることはない。すなわち、後の洗浄による除去が難しい状態のフィラーが溝に残ってしまうことはない。
【0014】
そのため、溝に洗浄用の流体を供給することで、パッケージデバイスへの分割の際に溝に残ったフィラーを溝から除去できる。よって、完成したパッケージデバイスからフィラーが脱落してしまうこともない。このように、本発明の一態様によれば、モールド樹脂に混入されたフィラーの脱落を防止できるパッケージデバイスの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)及び図1(B)は、固定ステップを示す斜視図である。
図2図2(A)及び図2(B)は、液状樹脂塗布ステップを示す断面図である。
図3図3(A)は、分割ステップでインターポーザー基板が分割される様子を示す断面図であり、図3(B)は、分割ステップでインターポーザー基板が分割された後の状態を拡大して示す断面図である。
図4図4(A)は、分割ステップでモールド基板が分割される様子を示す断面図であり、図4(B)は、分割ステップでモールド基板が分割された後の状態を拡大して示す断面図である。
図5図5(A)は、洗浄ステップを示す断面図であり、図5(B)は、洗浄ステップの後の状態を拡大して示す断面図である。
図6図6(A)は、変形例に係る固定ステップを示す斜視図であり、図6(B)は、変形例に係る固定ステップの後の状態を拡大して示す断面図である。
図7図7(A)は、変形例に係る分割ステップの後の状態を拡大して示す断面図であり、図7(B)は、変形例に係る洗浄ステップの後の状態を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るパッケージデバイスの製造方法は、固定ステップ(図1(A)、図1(B)参照)、液状樹脂塗布ステップ(図2(A)、図2(B)参照)、分割ステップ(図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)参照)、及び洗浄ステップ(図5(A)、図5(B)参照)を含む。
【0017】
固定ステップでは、環状のフレームの開口に張られた粘着テープにモールド樹脂を含む樹脂パッケージ基板を固定する。液状樹脂塗布ステップでは、樹脂パッケージ基板に液状の樹脂を塗布して保護膜を形成する。分割ステップでは、樹脂パッケージ基板にレーザービームを照射して、この樹脂パッケージ基板を複数のパッケージデバイスへと分割する。具体的には、モールド樹脂に混入されているフィラーの大きさを超える幅の溝を形成することによって、この樹脂パッケージ基板を複数のパッケージデバイスへと分割する。
【0018】
洗浄ステップでは、樹脂パッケージ基板の溝を含む露出部分に洗浄用の流体を供給し、分割ステップで除去されずに溝に残ったフィラーを溝から除去する。なお、この洗浄ステップでは、液状樹脂塗布ステップで形成される保護膜も併せて除去する。以下、本実施形態に係るパッケージデバイスの製造方法について詳述する。
【0019】
本実施形態では、まず、樹脂パッケージ基板を固定する固定ステップを行う。図1(A)及び図1(B)は、固定ステップを示す斜視図である。図1(A)及び図1(B)に示すように、本実施形態で使用される樹脂パッケージ基板1は、円盤状のモールド基板3と、このモールド基板3に重なる円盤状のインターポーザー基板5と、を含んでいる。
【0020】
モールド基板3は、例えば、複数のデバイスチップ(不図示)をモールド樹脂3b(図3(B)参照)で被覆することにより形成される。このモールド樹脂3bには、線膨張係数(熱膨張係数)の違いに起因する樹脂パッケージ基板1の反りを抑制するために、シリカ等でなる粒状のフィラー3c(図3(B)参照)が混入されている。
【0021】
インターポーザー基板5は、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料でなるウェーハである。このインターポーザー基板5の表面5a側は、格子状に設定された分割予定ライン(ストリート)13で複数の領域15に区画されており、各領域15には、モールド基板3内のデバイスチップに接続される配線や端子等が設けられている。なお、デバイスチップは、各領域15に対応する位置にのみ配置され、平面視で分割予定ライン13に重ならない。
【0022】
ただし、樹脂パッケージ基板1(モールド基板3、インターポーザー基板5)の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる樹脂パッケージ基板を用いることもできる。また、ウェーハの表面側をモールド樹脂で封止して得られるWL−CSP(Wafer Level Chip Size Package)基板等を樹脂パッケージ基板1としても良い。
【0023】
図1(A)に示すように、本実施形態の固定ステップでは、この樹脂パッケージ基板1が備えるモールド基板3の表面3a側に、樹脂パッケージ基板1よりも径が大きい円形の粘着テープ7の中央部分を貼付する。また、この粘着テープ7の外周部分を、樹脂パッケージ基板1よりも径が大きい開口を持つ環状のフレーム9の第1面9a側に貼付する。具体的には、モールド基板3の表面3aとフレーム9の第1面9aとに対して、粘着テープ7の粘着面7aを密着させる。
【0024】
これにより、樹脂パッケージ基板1は、インターポーザー基板5の表面5aが露出した状態で、環状のフレーム9の開口に張られた粘着テープ7に固定される。すなわち、樹脂パッケージ基板1は、粘着テープ7を介してフレーム9に支持される。なお、本実施形態では、フレーム9に対応する形状及び大きさの粘着テープ7を用いているが、例えば、帯状の粘着テープを樹脂パッケージ基板(モールド基板)とフレームとに貼付してから、この粘着テープをフレームの形状に合わせてカットしても良い。
【0025】
固定ステップの後には、樹脂パッケージ基板1に液状の樹脂を塗布して保護膜を形成する液状樹脂塗布ステップを行う。具体的には、樹脂パッケージ基板1が備えるインターポーザー基板5の表面5a側に液状の樹脂を塗布して保護膜を形成する。図2(A)及び図2(B)は、液状樹脂塗布ステップを示す断面図である。
【0026】
液状樹脂塗布ステップは、例えば、図2(A)等に示すスピンコーター2を用いて行われる。スピンコーター2は、樹脂パッケージ基板1を保持するためのスピンナテーブル4を備えている。スピンナテーブル4は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0027】
スピンナテーブル4の上面の一部は、樹脂パッケージ基板1を保持するための保持面4aになっている。保持面4aは、概ね平坦且つ水平に形成されており、スピンナテーブル4の内部に設けられた吸引路4b等を介して吸引源(不図示)に接続されている。このスピンナテーブル4の周囲には、フレーム9を固定するための複数のクランプ6が設けられている。また、スピンナテーブル4の上方には、保護膜の原料である液状の樹脂17を滴下するためのノズル8が配置されている。
【0028】
液状樹脂塗布ステップでは、まず、樹脂パッケージ基板1に貼付されている粘着テープ7の非粘着面7bをスピンナテーブル4の保持面4aに接触させる。この状態で吸引源の負圧を作用させることにより、樹脂パッケージ基板1は、インターポーザー基板5の表面5a側が上方に露出した状態でスピンナテーブル4に保持される。
【0029】
次に、図2(A)に示すように、樹脂パッケージ基板1の上方に移動させたノズル8から樹脂パッケージ基板1に向けて液状の樹脂17を滴下する。また、スピンナテーブル4を回転させて、インターポーザー基板5の表面5a側全体に液状の樹脂17を被覆する。これにより、図2(B)に示す保護膜19が完成する。なお、クランプ6は、スピンナテーブル4の回転により生じる遠心力を利用してフレーム9を固定する。
【0030】
保護膜19の原料である樹脂17の種類等に特段の制限はない。本実施形態では、後の分割ステップでインターポーザー基板5の分割予定ライン13を適切に検出して加工できるように、可視域で概ね透明な樹脂17を用いる。また、本実施形態では、後の洗浄ステップで保護膜19を容易に除去できるように、水溶性の樹脂17を用いる。
【0031】
樹脂パッケージ基板1に滴下する樹脂17の分量は、例えば、5μm以下の厚みの保護膜19を形成できる範囲で調整される。樹脂パッケージ基板1の直径が4インチの場合には、例えば、10〜15ml、代表的には、12ml程度の樹脂17を樹脂パッケージ基板1に滴下すれば良い。スピンナテーブル4の回転数は、例えば、2000rpm〜3000rpm、スピンナテーブル4の回転時間は、例えば、20秒〜40秒、代表的には、30秒程度にする。
【0032】
液状樹脂塗布ステップの後には、樹脂パッケージ基板1を複数のパッケージデバイスへと分割する分割ステップを行う。具体的には、樹脂パッケージ基板1に対してレーザービームを照射し、この樹脂パッケージ基板1をアブレーション加工することで、樹脂パッケージ基板1を複数のパッケージデバイスへと分割する。
【0033】
図3(A)は、分割ステップでインターポーザー基板5が分割される様子を示す断面図であり、図3(B)は、分割ステップでインターポーザー基板5が分割された後の状態を拡大して示す断面図である。また、図4(A)は、分割ステップでモールド基板3が分割される様子を示す断面図であり、図4(B)は、分割ステップでモールド基板3が分割された後の状態を拡大して示す断面図である。
【0034】
分割ステップは、例えば、図3(A)や図4(A)等に示すレーザー加工装置12を用いて行われる。レーザー加工装置12は、樹脂パッケージ基板1を保持するためのチャックテーブル14を備えている。チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0035】
また、チャックテーブル14の下方には、移動機構(不図示)が設けられている。チャックテーブル14は、この移動機構によって加工送り方向(第1水平方向)及び割り出し送り方向(第2水平方向)に移動する。
【0036】
チャックテーブル14の上面の一部は、樹脂パッケージ基板1を保持するための保持面14aになっている。保持面14aは、チャックテーブル14の内部に形成された吸引路14b等を介して吸引源(不図示)に接続されている。このチャックテーブル14の周囲には、フレーム9を固定するための複数のクランプ16が設けられている。
【0037】
チャックテーブル14の上方には、レーザー照射ユニット18が配置されている。レーザー照射ユニット18は、例えば、レーザー発振器(不図示)でパルス発振されたレーザービーム18a,18bを所定の位置に照射、集光する。レーザー発振器は、インターポーザー基板5に対して吸収性を有する波長のレーザービーム18aと、モールド樹脂3bに対して吸収性を有し、フィラー3cに対して透過性を有する波長のレーザービーム18bと、を選択的にパルス発振できるように構成されている。
【0038】
分割ステップでは、まず、樹脂パッケージ基板1に貼付されている粘着テープ7の非粘着面7bをチャックテーブル14の保持面14aに接触させる。併せて、クランプ16でフレーム9を固定する。この状態で吸引源の負圧を作用させることにより、樹脂パッケージ基板1は、保護膜19側が上方に露出した状態でチャックテーブル14に保持される。
【0039】
その後、チャックテーブル14を回転、移動させて、樹脂パッケージ基板1とレーザー照射ユニット18との位置関係を調整する。そして、インターポーザー基板5を分割予定ライン13に沿ってアブレーション加工する。具体的には、図3(A)に示すように、レーザー照射ユニット18からレーザービーム18aを照射しながら、このレーザービーム18aが分割予定ライン13に沿って照射されるようにチャックテーブル14を移動させる。
【0040】
上述のように、レーザー照射ユニット18から照射されるレーザービーム18aは、インターポーザー基板5に対して吸収性を有している。よって、図3(A)に示すように、インターポーザー基板5の表面5a側から分割予定ライン13に沿ってレーザービーム18aを照射することで、インターポーザー基板5はアブレーション加工され、図3(B)に示すように、分割予定ライン13に沿ってインターポーザー基板5を分割する第1溝5bが形成される。
【0041】
ここで、第1溝5bの幅は、モールド樹脂3bに混入されているフィラー3cの大きさを超えるように設定される。具体的には、例えば、第1溝5bの幅を、フィラー3cの粒径(例えば、平均粒径)の1.2倍以上に設定することが望ましい。これにより、後の洗浄ステップでフィラー3cを適切に除去できるようになる。フィラー3cの粒径は任意に設定されるが、代表的には、5μm〜25μm程度である。
【0042】
上述のような動作を繰り返し、全ての分割予定ライン13に沿って第1溝5bを形成した後には、モールド基板3を第1溝5bに沿ってアブレーション加工する。具体的には、図4(A)に示すように、レーザー照射ユニット18からレーザービーム18bを照射しながら、このレーザービーム18bが第1溝5bの底に沿って照射されるようにチャックテーブル14を移動させる。
【0043】
上述のように、レーザー照射ユニット18から照射されるレーザービーム18bは、モールド樹脂3bに対して吸収性を有し、フィラー3cに対して透過性を有している。よって、図4(A)に示すように、インターポーザー基板5の表面5a側から第1溝5bの底に沿ってレーザービーム18bを照射することで、モールド基板3のモールド樹脂3bをアブレーション加工できる。
【0044】
一方で、上述のようなレーザービーム18bでは、モールド基板3のフィラー3cを殆どアブレーション加工できない。そのため、このレーザービーム18bの照射によって、図4(B)に示すように、第1溝5dに接続されモールド基板3(モールド樹脂3b)を分割する第2溝3dが形成される一方で、第2溝3dには、一部がモールド樹脂3bから露出した状態のフィラー3cが残る。
【0045】
ここで、第2溝3dの幅は、モールド樹脂3bに混入されているフィラー3cの大きさを超えるように設定される。具体的には、例えば、第2溝3dの幅を、フィラー3cの粒径(例えば、平均粒径)の1.2倍以上に設定することが望ましい。これにより、第2溝3dに残ったフィラー3cを後の洗浄ステップで適切に除去できるようになる。
【0046】
上述のような動作を繰り返し、全ての分割予定ライン13に沿って第2溝3dが形成され、樹脂パッケージ基板1が複数のパッケージデバイス21へと分割されると、分割ステップは終了する。なお、本実施形態では、インターポーザー基板5の表面5a側が保護膜19によって覆われているので、アブレーション加工の際に発生する屑(デブリ)がインターポーザー基板5の表面5aに付着することは殆どない。よって、品質の良いパッケージデバイス21が得られる。
【0047】
分割ステップの後には、樹脂パッケージ基板1の第1溝5b及び第2溝3dを含む露出部分に洗浄用の流体を供給して樹脂パッケージ基板1を洗浄する洗浄ステップを行う。図5(A)は、洗浄ステップを示す断面図であり、図5(B)は、洗浄ステップの後の状態を拡大して示す断面図である。
【0048】
洗浄ステップは、例えば、図5(A)等に示す洗浄装置22を用いて行われる。洗浄装置22は、樹脂パッケージ基板1を保持するためのスピンナテーブル24を備えている。スピンナテーブル24は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0049】
スピンナテーブル24の上面の一部は、樹脂パッケージ基板1を保持するための保持面24aになっている。保持面24aは、概ね平坦且つ水平に形成されており、スピンナテーブル24の内部に設けられた吸引路24b等を介して吸引源(不図示)に接続されている。このスピンナテーブル24の周囲には、フレーム9を固定するための複数のクランプ26が設けられている。また、スピンナテーブル24の上方には、洗浄用の流体を噴射するためのノズル28が配置されている。
【0050】
洗浄ステップでは、まず、樹脂パッケージ基板1に貼付されている粘着テープ7の非粘着面7bをスピンナテーブル24の保持面24aに接触させる。この状態で吸引源の負圧を作用させることにより、樹脂パッケージ基板1は、保護膜19側が上方に露出した状態でスピンナテーブル24に保持される。
【0051】
次に、図5(A)に示すように、スピンナテーブル24を回転させて、樹脂パッケージ基板1の上方に移動させたノズル28から樹脂パッケージ基板1に向けて洗浄用の流体23を噴射する。これにより、樹脂パッケージ基板1の第1溝5b及び第2溝3dを含む露出部分に洗浄用の流体を供給して樹脂パッケージ基板1を洗浄できる。なお、クランプ26は、スピンナテーブル24の回転により生じる遠心力を利用してフレーム9を固定する。
【0052】
洗浄用の流体23の種類や噴射の圧力等に特段の制限はないが、本実施形態では、水を洗浄用の流体23として用い、噴射の圧力を5MPa以上12MPa以下とする。これにより、パッケージデバイス21に対して不具合を生じさせることなく、一部がモールド樹脂3bから露出した状態のフィラー3cを、この第2溝3dから除去できる。
【0053】
表1には、洗浄用の流体23として水を用いる場合の噴射の圧力について調査した結果を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、圧力が3MPaの場合には、第2溝3dにフィラー3cが残る。一方で、圧力が14MPaの場合には、パッケージデバイス21が粘着テープ7から剥がれて飛散してしまう。よって、洗浄用の流体23として水を用いる場合には、噴射の圧力を5MPa以上12MPa以下とするのが望ましい。より望ましくは、10MPa以上12MPa以下である。
【0056】
なお、本実施形態では、上述のように、水溶性の樹脂17を用いて保護膜19を形成している。よって、洗浄用の流体23として水を用いることで、分割ステップで除去されずに第2溝3dに残ったフィラー3cを第2溝3dから除去しながら、インターポーザー基板5の表面5aから保護膜19を除去できる。洗浄用の流体23としては、他にも、水とエアーとを混合した混合流体(2流体)等を用いることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るパッケージデバイスの製造方法では、樹脂パッケージ基板1を複数のパッケージデバイス21へと分割する際に、モールド樹脂3bに含まれるフィラー3cの大きさを超える幅の第2溝3d(及び第1溝5b)を形成するので、中央部が露出し、少なくとも両端部(2箇所)がモールド樹脂3bに固定された状態のフィラー3cが第2溝3dに残ることはない。すなわち、後の洗浄による除去が難しい状態のフィラー3cが第2溝3dに残ってしまうことはない。
【0058】
そのため、第2溝3dに洗浄用の流体23を供給することで、パッケージデバイス21への分割の際に第2溝3dに残ったフィラー3cを第2溝3d(及び第1溝5b)から除去できる。よって、完成したパッケージデバイス21からフィラー3cが脱落してしまうこともない。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施できる。例えば、上記実施形態では、モールド基板3とインターポーザー基板5とで構成された樹脂パッケージ基板1を分割して、複数のパッケージデバイス21を製造しているが、他の態様の樹脂パッケージ基板から複数のパッケージデバイスを製造することもできる。
【0060】
図6(A)は、変形例に係る固定ステップを示す斜視図であり、図6(B)は、変形例に係る固定ステップの後の状態を拡大して示す断面図である。また、図7(A)は、変形例に係る分割ステップの後の状態を拡大して示す断面図であり、図7(B)は、変形例に係る洗浄ステップの後の状態を拡大して示す断面図である。
【0061】
図6(A)及び図6(B)に示すように、変形例で使用される樹脂パッケージ基板31は、円盤状のデバイスウェーハ33と、このデバイスウェーハ33の表面33a側等を被覆するモールド樹脂膜35と、モールド樹脂膜35から露出する球状の電極37と、を含んでいる。
【0062】
デバイスウェーハ33は、格子状に形成された溝33cによって複数のチップに分離されており、各チップの表面33a側には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス39が設けられている。一方で、モールド樹脂膜35は、モールド樹脂35aと、モールド樹脂35aに混入された粒状のフィラー35bとで構成され、溝33cに充填されるとともに、デバイスウェーハ33の表面33a側の中央部分(デバイス39が設けられた領域)を覆っている。電極37は、デバイス39の端子に接続されている。
【0063】
変形例に係る固定ステップでは、この樹脂パッケージ基板31が備えるデバイスウェーハ33の裏面33b側に、樹脂パッケージ基板31よりも径が大きい円形の粘着テープ7の中央部分を貼付する。また、この粘着テープ7の外周部分を、樹脂パッケージ基板31よりも径が大きい開口を持つ環状のフレーム9の第1面9a側に貼付する。
【0064】
具体的には、デバイスウェーハ33の裏面33bとフレーム9の第1面9aとに対して、粘着テープ7の粘着面7aを密着させる。これにより、樹脂パッケージ基板31は、モールド樹脂膜35及び電極37が露出した状態で、環状のフレーム9の開口に張られた粘着テープ7に固定される。すなわち、樹脂パッケージ基板31は、粘着テープ7を介してフレーム9に支持される。
【0065】
固定ステップの後には、分割ステップを行う。変形例に係る分割ステップは、図3(A)や図4(A)等に示すレーザー加工装置12を用いて行うことができる。この分割ステップでは、まず、樹脂パッケージ基板31に貼付されている粘着テープ7の非粘着面7bをチャックテーブル14の保持面14aに接触させる。併せて、クランプ16でフレーム9を固定する。この状態で吸引源の負圧を作用させることにより、樹脂パッケージ基板31は、モールド樹脂膜35及び電極37が上方に露出した状態でチャックテーブル14に保持される。
【0066】
その後、チャックテーブル14を回転、移動させて、樹脂パッケージ基板31とレーザー照射ユニット18との位置関係を調整する。そして、溝33cに沿ってモールド樹脂膜35をアブレーション加工する。具体的には、レーザー照射ユニット18からレーザービーム18bを照射しながら、このレーザービーム18bが溝33cに沿って照射されるようにチャックテーブル14を移動させる。
【0067】
ここで、レーザー照射ユニット18から照射されるレーザービーム18bは、モールド樹脂35aに対して吸収性を有し、フィラー35bに対して透過性を有している。よって、モールド樹脂膜35の表面側から溝33cに沿ってレーザービーム18bを照射することで、モールド樹脂膜35のモールド樹脂35aをアブレーション加工できる。
【0068】
一方で、上述のようなレーザービーム18bでは、モールド樹脂膜35のフィラー35bを殆どアブレーション加工できない。そのため、このレーザービーム18bの照射によって、図7(A)に示すように、モールド樹脂膜35(モールド樹脂35a)を分割する溝35cが形成される一方で、溝35cには、一部がモールド樹脂35aから露出した状態のフィラー35bが残る。
【0069】
ここで、溝35cの幅は、モールド樹脂35aに混入されているフィラー35bの大きさを超えるように設定される。具体的には、例えば、溝35cの幅を、フィラー35bの粒径(例えば、平均粒径)の1.2倍以上に設定することが望ましい。これにより、溝35cに残ったフィラー35bを後の洗浄ステップで適切に除去できるようになる。
【0070】
上述のような動作を繰り返し、全ての溝33cに沿って溝35cが形成され、樹脂パッケージ基板31が複数のパッケージデバイス41へと分割されると、分割ステップは終了する。
【0071】
分割ステップの後には、樹脂パッケージ基板31の溝35cを含む露出部分に洗浄用の流体を供給して樹脂パッケージ基板31を洗浄する洗浄ステップを行う。変形例に係る洗浄ステップは、図5(A)等に示す洗浄装置22を用いて行うことができる。
【0072】
この洗浄ステップでは、まず、樹脂パッケージ基板31に貼付されている粘着テープ7の非粘着面7bをスピンナテーブル24の保持面24aに接触させる。この状態で吸引源の負圧を作用させることにより、樹脂パッケージ基板31は、モールド樹脂膜35及び電極37が上方に露出した状態でスピンナテーブル24に保持される。
【0073】
次に、スピンナテーブル24を回転させて、樹脂パッケージ基板31の上方に移動させたノズル28から樹脂パッケージ基板31に向けて洗浄用の流体23を噴射する。これにより、樹脂パッケージ基板31の溝35cを含む露出部分に洗浄用の流体23を供給して樹脂パッケージ基板31を洗浄できる。
【0074】
洗浄用の流体23の種類や噴射の圧力等に特段の制限はないが、本実施形態では、水を洗浄用の流体23として用い、噴射の圧力を5MPa以上12MPa以下とする。これにより、パッケージデバイス41に対して不具合を生じさせることなく、一部がモールド樹脂35aから露出した状態のフィラー35bを、この溝35cから除去できる。
【0075】
その他、上記実施形態や変形例等に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0076】
1 樹脂パッケージ基板
3 モールド基板
3a 表面
3b モールド樹脂
3c フィラー
3d 第2溝
5 インターポーザー基板
5a 表面
5b 第1溝
7 粘着テープ
7a 粘着面
7b 非粘着面
9 フレーム
9a 第1面
13 分割予定ライン(ストリート)
15 領域
17 樹脂
19 保護膜
21 パッケージデバイス
23 流体
31 樹脂パッケージ基板
33 デバイスウェーハ
33a 表面
33b 裏面
33c 溝
35 モールド樹脂膜
35a モールド樹脂
35b フィラー
35c 溝
37 電極
39 デバイス
41 パッケージデバイス
2 スピンコーター
4 スピンナテーブル
4a 保持面
4b 吸引路
6 クランプ
8 ノズル
12 レーザー加工装置
14 チャックテーブル
14a 保持面
14b 吸引路
16 クランプ
18 レーザー照射ユニット
18a,18b レーザービーム
22 洗浄装置
24 スピンナテーブル
24a 保持面
24b 吸引路
26 クランプ
28 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7