(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウエーハを保持する保持手段と、研削砥石を環状に配設する研削ホイールを回転可能に装着して該保持手段が保持するウエーハを研削する研削手段と、該研削手段を該保持手段に対して接近および離間する研削送り手段と、を備える研削装置であって、
研削加工時の振動を検知して該研削装置の受信部に振動を送信する振動送信手段を備え、
該振動送信手段は、該保持手段もしくは該研削手段に配設し、該研削砥石がウエーハを研削加工して発生した振動により発電する発電部と、該発電部により発電された電圧値を該発電部より発電した電力を利用して該受信部に無線で送信する送信部と、を備え、
研削加工で発生した振動で該発電部が発電し、該発電部が発電した該電圧値を該発電部より発電した電力を利用して該送信部から該受信部に送信し、予め設定された設定値と該送信部が送信して該受信部が受信した該電圧値とを比較して研削送り手段を制御する制御部を備える研削装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
振動を検知する検知部は、研削装置のコントローラと配線で接続されている(例えば、特許文献1参照)。検知部が振動を検知すると、検知部において振動により微弱電流が発生され、配線を介して研削装置のコントローラに振動値として取り入れられる。研削装置は振動値の大きさを判断して研削を停止するか否かを決定する。これにより装置の振動を検知して研削不良を防止できるが、配線により検知部と検知部から離れた場所に設置されるコントローラを接続することで装置構成が複雑になる問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な装置構成でウエーハの研削を制御できる研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の研削装置は、ウエーハを保持する保持手段と、研削砥石を環状に配設する研削ホイールを回転可能に装着して保持手段が保持するウエーハを研削する研削手段と、研削手段を保持手段に対して接近および離間する研削送り手段と、を備える研削装置であって、研削加工時の振動を検知して研削装置の受信部に振動を送信する振動送信手段を備え、振動送信手段は、保持手段もしくは研削手段に配設し、研削砥石がウエーハを研削加工して発生した振動により発電する発電部と、発電部により発電された電圧値を
発電部より発電した電力を利用して受信部に無線で送信する送信部と、を備え、研削加工で発生した振動で
発電部が発電し、発電部が発電した電圧値を
発電部より発電した電力を利用して送信部から受信部に送信し、予め設定された設定値と
送信部が送信し
て受信部が受信した電圧値とを比較して研削送り手段を制御する制御部を備える。
【0008】
この構成によれば、振動送信手段により研削加工時の振動が検知されると、発電部が発電して振動に応じた電圧値が得られるとともに、振動によって発電部で発電される電力を利用して電圧値が送信部から受信部に無線で送信される。無線送信された電圧値に応じて制御部でウエーハの研削が制御できるため、送信部から受信部の通信に配線を用いなくても研削装置が振動を認識しウエーハの研削を制御することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な装置構成でウエーハの研削を制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る研削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る研削装置の斜視図である。なお、本実施の形態に係る研削装置は、
図1に示すように研削加工専用の装置構成に限定されず、例えば、研磨加工装置や、研削加工、研磨加工、洗浄加工等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。
【0012】
図1に示すように、研削装置1は、多数の研削砥石48を円環状に配設した研削ホイール46を用いて、保持テーブル24に保持されたウエーハWを研削するように構成されている。研削装置1は、保持テーブル24の回転軸と研削ホイール46の回転軸が間隔を開けて配置され、研削砥石48がウエーハWの上面を通過することでウエーハWが削られて薄化される。なお、ウエーハWとしては、サファイア、炭化ケイ素等の硬質なウエーハに限らず、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板でもよいし、樹脂や金属等で形成された基板でもよい。
【0013】
基台11上のコラム14には、研削手段41を保持テーブル24に研削送り方向(Z軸方向)に接近および離間する方向に移動させる研削送り手段31が設けられている。研削送り手段31は、コラム14に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール32と、一対のガイドレール32にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル33とを有している。Z軸テーブル33の背面側には図示しないナット部が形成され、ナット部にボールネジ34が螺合されている。ボールネジ34の一端部に連結された駆動モータ35によりボールネジ34が回転駆動されることで、研削手段41がガイドレール32に沿ってZ軸方向に移動される。
【0014】
研削手段41は、ハウジング42を介してZ軸テーブル33の前面に取り付けられており、モータ等を含むスピンドル43の下端にマウント44を設けて構成されている。スピンドル43にはフランジ45が設けられ、フランジ45を介してハウジング42に研削手段41が支持される。マウント44の下面には、ホイール基台47に複数の研削砥石48が真円の環状に配設された研削ホイール46が回転可能に装着されている。研削ホイール46は、スピンドル43の駆動によって回転される。複数の研削砥石48は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンド等のボンド剤で固めたセグメント砥石で構成される。研削砥石48により、保持テーブル24に保持されたウエーハWを研削する。
【0015】
研削手段41の下方には、保持テーブル24が設けられている。保持テーブル24の表面には、多孔質のポーラス材によってウエーハWを吸着する保持面23が形成されている。保持面23は、保持テーブル24内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されており、保持面23に生じる負圧によってウエーハWが吸引保持される。
【0016】
保持テーブル24は、位置付け手段50の移動基台52に立設した支持柱25によって下方から支持されている。保持テーブル24と、支持柱25と、位置付け手段50とで、保持手段21を構成している。保持テーブル24は回転手段(不図示)によって回転される。移動基台52上には、後述する振動送信手段60が設けられている。
【0017】
研削装置1の基台11の上面には、X軸方向に延在する矩形状の開口が形成され、この開口は蛇腹状の防水カバー13に覆われている。防水カバー13の下方には、保持テーブル24をX軸方向に移動させる位置付け手段50が設けられている。
【0018】
位置付け手段50は、基台11上に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール51と、その間に配置されたボールネジ53とを有している。一対のガイドレール51には、上述の移動基台52がスライド可能に設置されている。移動基台52の背面側には、ナット部(不図示)が形成され、このナット部にボールネジ53が螺合されている。そして、ボールネジ53の一端部に連結された駆動モータ54が回転駆動されることで、保持テーブル24が一対のガイドレール51に沿ってX軸方向に動かされる。保持テーブル24は位置付け手段50によりウエーハWの搬入位置から研削位置に移動してウエーハWを位置付けて、研削手段41により研削が開始される。研削中は保持テーブル24が回転するとともに、研削砥石48が回転しながらウエーハWに接触してウエーハWが研削され、研削終了後は保持テーブル24は位置付け手段50によりウエーハWの研削位置から搬出位置に移動される。
【0019】
また、研削装置1には、コラム14の側面に制御部70が配設されており、制御部70には振動送信手段60から送信される電圧値を受信する受信部72及び予め設定された設定値C、L(
図3参照)と受信した電圧値とを比較する判断部71が備えられている。制御部70は、電圧値に応じ、研削送り手段31の研削送り速度を制御する。制御部70は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。
【0020】
ここで、ウエーハの研削を行うと研削砥石に目詰まりや目潰れが生じ、研削砥石の研削能力が低下する場合がある。この状態で研削が続けられると、研削抵抗によって保持テーブル及び研削手段に振動が発生する。このため、従来構造では研削手段のスピンドル付近に検知部を設置し、検知部で振動を検知している。検知部で検知された振動は振動値として制御部に備えられる受信部に入力され、制御部が研削送り手段を制御することで研削が停止される。これにより研削不良を防止できるが、スピンドル付近に配置される検知部と、コラムに配置される制御部とが配線を介して接続されるため、配線同士が絡まって、研削手段の動きを邪魔する問題があった。また、配線の部品が増えるため装置構成が複雑になり、配線の設置場所を確保する必要があった。そこで本実施の形態では、振動送信手段において振動によって得られた電圧値を送信部から受信部に無線で送信するようにしている。
【0021】
以下、
図2を参照して、本実施の形態に係る振動送信手段の構成について詳細に説明する。
図2は、本実施の形態に係る振動送信手段の斜視図である。なお、
図1に示すように振動送信手段60は、保持テーブル24の下方の移動基台52上に、コラム14に配設される受信部72に対向して配置され、研削砥石48がウエーハWを研削加工して発生した振動を検知して受信部72に振動を送信する。
図2に示すように、振動送信手段60には、発電部61と、発電部61に接続される送信部62とが備えられている。
【0022】
発電部61においては、例えば、エレクトレット振動発電が用いられる。エレクトレット振動発電においては、相対的に移動可能に配置された一対の基板の一方に複数のエレクトレットが並設され、他方に電極が備えられる。ウエーハWを研削加工して振動が発生すると、一対の基板の相対的に移動して電極とエレクトレット間の静電容量が変化するため、その変化分が電力として出力される。これにより発電部61が発電することによって、研削加工時の振動が検知される。エレクトレットが並設された基板と、電極が備えられた基板が相対的に一定周期で移動すると、電圧が一定周期でカーブを描いて変動する。カーブの振幅の大きさは振動の大きさに対応しており、振幅の大きさが電圧値とされる。電圧値は発電部61から送信部62に出力される。
【0023】
送信部62は、発電部61で発電される電力を利用して、電圧値を制御部70の受信部72に無線で送信する(
図1参照)。受信部72で受信された電圧値は、判断部71で予め設定された設定値L、C(
図3参照)と比較され、電圧値の大きさに応じて研削が制御される。振動によって発電部61で発電される電力を利用して電圧値を無線送信できるため、送信部62から受信部72の通信に配線を用いなくても研削装置1が振動を認識して研削を制御することができる。このため、配線の設置場所をとらず、研削装置1の構成を簡易にすることができる。
【0024】
振動送信手段60は、保持テーブル24の下方の移動基台52上に配置される(
図1参照)。研削砥石48の目詰まり及び目潰れを起因とする振動は保持テーブル24で発生するため、振動送信手段60が保持テーブル24の下方に配置されることで、発電部61で振動を検知し易くなる。また、保持テーブル24が配設されている移動基台52は、材質の違いから保持テーブル24よりも振動が大きくなるため、振動送信手段60が移動基台52上に配置されることで、発電部61で更に振動を検知し易くなる。また、振動送信手段60は、移動基台52上のコラム14側で受信部72に対向する位置に配設される。これにより、振動送信手段60と受信部72との間には通信を妨げる構成がなくなるため、送信部62から受信部72に電圧値が送信され易くなる。
【0025】
振動送信手段60から無線送信される電圧値に対して、制御部70においては設定値として、限界値Lと警戒値Cを設定して(
図3参照)、研削送り手段31を制御することができる(
図1参照)。限界値Lは、発電部61において研削が続行可能な振動から求められる電圧値の最大値であり、電圧値0から限界値Lまでが電圧値の許容範囲とされる。また、警戒値Cは限界値Lの80%の電圧値として設定される。なお、警戒値Cの電圧値は限界値Lより小さければよく、研削条件により適宜設定することができる。
【0026】
次に、
図3を参照して、電圧値と設定値との関係から制御部70が研削送り手段31を制御する動作について詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係る電圧値と設定値との関係を示す図である。なお、
図3において、横軸は時間、縦軸は電圧値をそれぞれ示している。
【0027】
ウエーハWが搬入され保持テーブル24に吸引保持されると、保持テーブル24は位置付け手段50により搬入位置から研削位置に移動されウエーハWは研削手段41の下方に位置付けられる(
図1参照)。保持テーブル24が回転するとともに、研削送り手段31により所定の研削送り速度で所定量研削手段41が研削送りされ、研削砥石48が回転しながらウエーハWに接触してウエーハWが研削されると、保持テーブル24に振動が発生する。保持テーブル24及び研削砥石48の回転が速くなるに連れ、保持テーブル24の振動は徐々に大きくなり、所定の振動で一定となる。この場合、移動基台52に配置される振動送信手段60の発電部61で生じる電圧の振幅は徐々に大きくなり、所定の振幅で一定となる。
【0028】
このとき、
図3Aに示すように、発電部61で求められる電圧値は振動が大きくなるに連れて徐々に大きくなり、電圧値が警戒値Cを下回る所定の値に維持される。電圧値は、振動により発電部61で発電された電力によって送信部62から受信部72に無線送信される。判断部71は、電圧値を予め設定された設定値L、Cと比較し、電圧値が警戒値Cを超えない場合は、ウエーハWの研削が続行可能である許容範囲内にあると判断して、研削送り手段31の研削送り速度が維持される。
【0029】
研削が続行されているうちに研削砥石48が目潰れ又は目詰まりを引き起こすと、その時点(
図3Bの時間t1)からウエーハWの研削が困難になるため振動が大きくなり、発電部61の電圧の振幅が大きくなる。このとき、
図3Bに示すように、発電部61で求められる電圧値は振動が大きくなるに連れて徐々に大きくなり、目潰れ又は目詰まりが起きた時点で電圧値が上昇し始め(
図3Bの時間t1)、警戒値Cを上回るが限界値L以下となる値をとる(
図3Bの時間t2)。電圧値が送信部62から受信部72に無線送信されると、判断部71は、電圧値は警戒値Cを超えるが限界値Lを超えない許容範囲内にあると判断して、振動が小さくなり発電部61の電圧の振幅が小さくなるような研削加工条件に切り替える。例えば、研削送り手段31の研削送り速度を半分にして所定時間研削を続行した後、元の研削送り速度に戻す。研削送り速度を下げることで研削砥石48に自生発刃を行わせて目潰れ及び目詰まりを解消することができるため、振動が所定の大きさに戻り、電圧値が所定の値に戻る(
図3Bの時間t3)。このため、研削送り手段31の研削送り速度が元の速さに戻されてウエーハWの研削が続行される。なお、判断部71により切り替えられる研削加工条件は、研削砥石48に自生発刃を行わせることができる条件であれば限定されない。
【0030】
また、研削が続行されているうちに、研削装置1の不具合によりウエーハWに研削砥石48を押し付ける圧力が異常になり、その時点(
図3Cの時間t4)で目潰れ又は目詰まりにより引き起こされる振動よりも大きな振動が生じて、発電部61の電圧の振幅が瞬間的に増大する場合がある。このとき、
図3Cに示すように、発電部61で求められる電圧値は振動が大きくなるに連れて徐々に大きくなり、ウエーハWに対する研削砥石48の圧力が異常になった時点で電圧値が瞬間的に限界値Lを上回る値をとる(
図3Cの時間t4からt5)。電圧値が送信部62から受信部72に無線送信されると、判断部71は、電圧値が限界値Lを超える異常な振動が生じていると判断して、研削送り手段31の研削送りを停止し、研削手段41をウエーハWから上昇させて研削を中止する。これにより、保持テーブル24の回転軸の傾き及び研削手段41の回転軸の傾きを調整する等、研削装置1のメンテナンスを行うことができる。
【0031】
以上のように、振動送信手段60により研削加工時の振動が検知されると、発電部61が発電して振動に応じた電圧値が得られるとともに、振動によって発電部61で発電される電力を利用して電圧値が送信部62から受信部72に無線で送信される。無線送信された電圧値に応じて制御部70でウエーハWの研削が制御できるため、送信部62から受信部72の通信に配線を用いなくても研削装置1が振動を認識しウエーハWの研削を制御することができる。
【0032】
上記実施の形態においては、振動送信手段60が移動基台52上に配設される構成としたが、発電部61が振動を検知できれば、振動送信手段60はスピンドル43の上部又は支持柱25に配設されていてもよい。また、フルオートタイプの加工装置の場合は、ターンテーブルに配設されていてもよい。
【0033】
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0034】
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0035】
本実施の形態では、本発明をウエーハを研削する研削装置に適用した構成について説明したが、加工により振動が発生する加工装置に適用することも可能である。