(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成について詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
【0013】
本発明は、厚み30μmとした場合の紫外線透過率が、波長250nmにおいて40%以下であり、かつ波長500nmにおいて95%以上であるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物樹脂組成物に関するものである。
かかる樹脂組成物は、例えば、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物樹脂組成物が塩素系樹脂を含み、その含有量が、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物と塩素系樹脂の合計量に対して少量とすることにより得られる。
以下、かかる樹脂組成物について述べる。
【0014】
<EVOH>
本発明で用いるEVOHについて説明する。
本発明で用いるEVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行ない得る。
すなわち、本発明で用いるEVOHは、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
【0015】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物の処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。この他、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0016】
EVOHにおけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値であり、通常20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、特に好ましくは25〜35モル%である。かかる含有量が少なすぎると、高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
【0017】
EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値であり、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
【0018】
また、上記EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは3〜35g/10分である。かかるMFRが高すぎると、製膜性が低下する傾向がある。また、MFRが低すぎると溶融押出が困難となる傾向がある。
【0019】
また、本発明に用いられるEVOHは、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
上記コモノマーは、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類や、そのエステル化物である、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、特に、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル等、アシル化物等の誘導体;2−メチレンプロパン−1,3−ジオール、3−メチレンペンタン−1,5−ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類(但し、塩素化ビニル化合物を除く);トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル等のアリル化合物類;アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類;トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。
【0020】
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
【0021】
特に、側鎖に1級ヒドロキシ基を有するEVOHは、二次成形性が良好になる点で好ましく、特には、1,2−ジオールを側鎖に有するEVOHが好ましい。
【0022】
また、本発明で使用されるEVOHは、異なる他のEVOHとの混合物であってもよく、上記他のEVOHとしては、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの等をあげることができる。
【0023】
本発明で用いられるEVOH(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOHに配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等が含有されていてもよい。
【0024】
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩等の塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩等の添加剤を配合してもよい。
これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を配合することが好ましい。
【0025】
酢酸を配合する場合、その配合量は、EVOH(A)100重量部に対して通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.01〜0.1重量部である。酢酸の配合量が少なすぎると、酢酸の含有効果が充分に得られない傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
【0026】
また、ホウ素化合物を配合する場合、その配合量は、EVOH(A)100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。ホウ素化合物の配合量が少なすぎると、ホウ素化合物の含有効果が充分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
【0027】
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の配合量としては、EVOH(A)100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。上記配合量が少なすぎるとその含有効果が充分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。なお、EVOH(A)に2種以上の塩を配合する場合は、その総量が上記の配合量の範囲にあることが好ましい。
【0028】
EVOH(A)に、熱安定剤を、例えば、酢酸、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を配合する方法については、例えば、i)含水率20〜80重量%のEVOH(A)の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、前記多孔性EVOHに添加物を含有させてから乾燥する方法;ii)EVOH(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、ついで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH(A)と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH(A)の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整する方法等をあげることができる。
中でも、本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
【0029】
<塩素系樹脂>
本発明の樹脂組成物においては、塩素系樹脂を少量配合することにより、所望とする特定の紫外線吸収能を有する樹脂組成物が得られるという効果が得られるものである。
本発明においては、配合剤として塩素系樹脂を選択したことで、上記効果が得られるものである。これは、加熱により塩素系樹脂から塩酸が発生し、かかる塩酸がEVOHを適度に分解し、主鎖に適度な長さのポリエン構造を有するEVOH分子を精製することにより、特定の紫外線領域の波長(例えば、波長280nm未満のUV−C)の吸収能を有する樹脂組成物が得られるものと推測される。
かかる塩素系樹脂は高分子であるため、一般の紫外線吸収剤のようにブリードアウトする恐れが無いという利点も有する。
【0030】
本発明において使用される塩素系樹脂は、側鎖に塩素原子を有する高分子であり、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。
【0031】
かかる塩素系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲(通常、塩素系樹脂の30重量%以下)において、一般的に配合される配合剤、例えば可塑剤、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤等を含有していてもよい。特に、可塑剤を含む塩素系樹脂を軟質塩化ビニル樹脂という。一方、これら可塑剤等の配合剤の配合量が低い塩素系樹脂を硬質塩化ビニル樹脂という。
【0032】
本発明においては、硬質塩化ビニル樹脂、すなわち上記配合剤の配合量が低い塩素系樹脂を用いることが好ましい。通常、EVOHは水酸基を豊富に有するため、塩素系樹脂があらかじめ可塑剤等の添加剤を含有するほうが、EVOHとの相溶性が高まると考えられるところ、本発明では以外にも、添加剤を含有しない塩素系樹脂を用いる場合に、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。これは、後述する塩素系樹脂の配合量が特定少量であることにより、EVOH樹脂との相溶性が問題とならない傾向があるものと推測される。
【0033】
上記塩素系樹脂の含有量は、EVOHと塩素系樹脂との合計量(重量基準)に対して、0.001〜1重量%であり、好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.007〜0.3重量%、殊更に好ましくは0.05〜0.2重量%である。塩素系樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、特定の波長における紫外線吸収効果が効果的に得られる傾向がある。
【0034】
<他の熱可塑性樹脂(C)>
本発明の樹脂組成物には、樹脂成分として、EVOH、塩素系樹脂以外に、他の熱可塑性樹脂(C)を含有してもよい。かかる含有量は通常、EVOH100重量部に対して通常30重量部以下であり、好ましくは1〜20重量%である。
【0035】
上記他の熱可塑性樹脂(C)としては、具体的には例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、ポリ環状オレフィン、あるいはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義の炭化水素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリスチレン熱可塑性エラストマー、ポリエステル熱可塑性エラストマー、ポリウレタン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、極性基変性ポリスチレン熱可塑性エラストマー、極性基変性ポリエステル熱可塑性エラストマー、極性基変性ポリウレタン熱可塑性エラストマー等の極性基変性熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂があげられる。これらは複数種を併用してもよい。
【0036】
特に、他の熱可塑性樹脂(C)として極性基を含有しない熱可塑性エラストマーや極性基変性熱可塑性エラストマーを含有する樹脂組成物を用いる場合、耐屈曲疲労性の点で好ましい。これらは併用することが好ましい。
EVOHに対する極性基を含有しない熱可塑性エラストマーおよび極性基変性熱可塑性エラストマーの含有重量比率{EVOH/(極性基を含有しない熱可塑性エラストマー+極性基変性熱可塑性エラストマー)}は、通常50以上/50未満〜99/1であり、好ましくは60/40〜90/10である。前記極性基を含有しない熱可塑性エラストマーに対する極性基変性熱可塑性エラストマーの重量比率(極性基変性熱可塑性エラストマー/極性基を含有しない熱可塑性エラストマー)が通常0.01〜10、好ましくは1〜5である。
さらに、数平均分子量100〜3000であり且つ60℃以上170℃未満の軟化点を有している炭化水素系樹脂を有することも好ましく、かかる成分を含有する場合その含有率{前記炭化水素系樹脂/(EVOH+極性基を含有しない熱可塑性エラストマー+極性基変性熱可塑性エラストマー+前記炭化水素系樹脂)}は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である
【0037】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物には、上記各成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内にて(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満にて)、無機フィラー、乾燥剤、酸素吸収剤、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);充填材(例えば無機フィラー等);界面活性剤、ワックス;分散剤(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノグリセリド等)等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物全体におけるベース樹脂はEVOHである。従って、EVOHの量は、樹脂組成物全体に対して通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。かかる量が少なすぎる場合、ガスバリア性が低下する傾向がある。
【0039】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして調製される。すなわち、EVOH、塩素系樹脂を配合して、単軸または二軸の押出機等で溶融混練等により樹脂組成物を調製してもよいし(溶融混練法)、両樹脂の共通する良溶媒に溶解して配合してもよいし(溶液混合法)、各成分を所定割合で例えばバンバリーミキサー等でドライブレンドしてもよい(ドライブレンド法)。
【0040】
また、あらかじめ塩素系樹脂を公知の粉砕方法で小粒子化することが好ましい。かかる粉砕方法には、ローラーミル、回転ミル、ハンマーミル等の公知の粉砕機を用いることができ、凍結粉砕、低温粉砕を行うことが好ましい。
【0041】
上記溶融混錬温度は、通常150〜300℃、好ましくは170〜250℃である。中でも経済性と生産性の点で、ドライブレンド法が好ましい。
【0042】
また、本発明の樹脂組成物は、EVOH、塩素系樹脂を配合し、あらかじめ塩素系樹脂濃度の高い組成物(マスターバッチ)を作成し、かかる組成物(マスターバッチ)をEVOHと配合することにより、所望の樹脂組成物を得ることも可能である。
【0043】
なお、上記樹脂組成物をペレットとする場合、かかる樹脂組成物製ペレットの形状は、例えば、球形、円柱形、立方体形、直方体形等があるが、通常、球状(オーバル状)または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、球状の場合は径が通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、高さは通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、円柱状の場合は底面の直径が通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、長さは通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmである。
【0044】
溶融成形時のフィード性を安定させる点から、得られた樹脂組成物製ペレットの表面に滑剤を付着させることも好ましい。滑剤の種類としては、高級脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等)、高級脂肪酸金属塩(高級脂肪酸のアルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、高級脂肪酸エステル(高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪族アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、または低分子量ポリプロピレン等、またはその酸変性品)、高級アルコール、エステルオリゴマー、フッ化エチレン樹脂等があげられ、好適には高級脂肪酸および/またはその金属塩、エステル、アミドが、更に好適には高級脂肪酸金属塩および/または高級脂肪酸アミドが用いられる。
【0045】
上記滑剤の性状としては、固体状(粉末、微粉末、フレーク等)、半固体状、液体状、ペースト状、溶液状、エマルジョン状(水分散液)等、任意の性状のものが使用可能であるが、本発明の目的とする樹脂組成物製ペレットを効率よく得るためには、エマルジョン状のものが好ましい。
【0046】
上記滑剤を樹脂組成物製ペレットの表面に付着させる方法としては、ブレンダー等で滑剤と樹脂組成物製ペレットを混合させて付着させる方法、滑剤の溶液または分散液に樹脂組成物製ペレットを浸漬させて付着させる方法、樹脂組成物製ペレットに滑剤の溶液または分散液を噴霧して付着させる方法等をあげることができる。好適には、ブレンダー等に樹脂組成物製ペレットを仕込んで攪拌下にエマルジョン状の滑剤を、樹脂組成物製ペレット100重量部に対して滑剤の固形分として0.001〜1重量部/hr、更には0.01〜0.1重量部/hrの速度で徐々に配合することが、滑剤の均一付着のためには好ましい。さらに、ペレット表面に付着させた滑剤が全てペレット表面に密着し、溶融成形機内で滑剤が遊離することがない樹脂組成物製ペレットを得るためには、樹脂組成物製ペレットの表面温度を、上記滑剤の融点−50℃以上の高温とし、かつ上記EVOHの融点未満にて滑剤と接触させる方法が最も好ましい方法である。
【0047】
上記滑剤の含有量としては、樹脂組成物製ペレットに対して10〜1000ppm、更には20〜500ppm、特には50〜250ppmであることが、溶融成形時のフィード性が安定する点で好ましい。
【0048】
<溶融成形品>
本発明の樹脂組成物は、溶融成形法により、各種溶融成形品、例えばフィルム、さらにはカップやボトル等に成形することができる。上記溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等があげられる。溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から適宜選択される。
なお、本発明において、「フィルム」とは、特に「シート」、「テープ」と区別するものではなく、これらも含めた意味として記載するものである。
【0049】
本発明の樹脂組成物より溶融成形物を得る場合は、上記ドライブレンドにより得られた樹脂組成物を押出機等を用いて溶融成形することにより溶融成形品を得てもよいし、上記溶融混練により樹脂組成物製ペレットを作製し、これを溶融成形法に供し、溶融成形品を得てもよい。本発明においては、経済性の点から、ドライブレンドにより得られた樹脂組成物を押出機等を用いて溶融成形することにより溶融成形品を得る方法が好ましい。
かかる上記樹脂組成物を溶融成形してなる溶融成形品は、本発明の効果がより効率的に得られる傾向がある。
【0050】
本発明の樹脂組成物を含む溶融成形品はそのまま各種用途に用いてもよい。このとき、樹脂組成物の層(単層としてフィルムを作製する場合にはフィルム)の厚みは通常1〜5000μm、好ましくは5〜4000μm、特に好ましくは10〜3000μmである。
【0051】
なお、上記樹脂組成物の層(単層としてフィルムを作製する場合にはフィルム)は、EVOHおよび塩素系樹脂を少量含有するものである。また、樹脂組成物の層は、上記のようにして得られる樹脂組成物から形成される層であり、通常、上記のような溶融成形を行なうことにより得られる。上記EVOHと塩素系樹脂の合計量に対する塩素系樹脂の含有量は、例えば、樹脂組成物を用いてイオン化クロマトグラフィー分析法により測定を行い、定量することができる。
【0052】
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有するものである。本発明の樹脂組成物からなる層(以下、単に「樹脂組成物層」というと、本発明の樹脂組成物からなる層をいう。)は、他の基材と積層することで、さらに強度を上げたり、他の機能を付与することができる。
【0053】
上記基材としては、EVOH以外の熱可塑性樹脂(以下「他の熱可塑性樹脂」という。)が好ましく用いられる。
【0054】
多層構造体の層構成は、本発明の樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、他の熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とする場合、a/b、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。また、上記多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。本発明の多層構造体の層数は、のべ数にて通常2〜15層、好ましくは3〜10層である。
なお、上記層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を介層してもよい。
【0055】
本発明の多層構造体における、多層構造の層構成として、好ましくは、本発明の樹脂組成物層を中間層として含み、その中間層の両外側層として、他の熱可塑性樹脂層を設けた多層構造体の単位(b/a/b、またはb/接着性樹脂層/a/接着性樹脂層/b)を基本単位として、この基本単位を少なくとも構成単位として備える多層構造体が好ましい。
【0056】
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖および/または側鎖に有する重合体)等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル熱可塑性エラストマー、ポリウレタン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類等があげられる。
【0057】
これらのうち、疎水性を考慮した場合、疎水性樹脂である、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂およびこれらの不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、特にポリ環状オレフィン系樹脂は疎水性樹脂として好ましく用いられる。
【0058】
また、上記接着性樹脂層形成材料である接着剤樹脂としては、公知のものを使用でき、基材となる他の熱可塑性樹脂(b)に用いる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体をあげることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等であり、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0059】
上記他の熱可塑性樹脂(基材樹脂)、接着性樹脂層には、本発明の趣旨を阻害しない範囲内(例えば、30重量%以下、好ましくは10重量%以下)において、従来公知の可塑剤、フィラー、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいてもよい。
【0060】
本発明の樹脂組成物を他の基材(他の熱可塑性樹脂)と積層させて多層構造体を作製する場合(接着性樹脂層を介在させる場合を含む)の積層方法は公知の方法にて行なうことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に本発明の樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、本発明の樹脂組成物と他の基材とを共押出する方法、本発明の樹脂組成物からなるフィルム(層)および他の基材(層)を各々作製し、これらを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、他の基材上に本発明の樹脂組成物の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等があげられる。これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出する方法が好ましい。
【0061】
上記多層構造体は、ついで必要に応じて(加熱)延伸処理が施される。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。延伸温度は、通常40〜170℃、好ましくは60〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
【0062】
なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、次いで熱固定を行なってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸した多層構造体(延伸フィルム)を、緊張状態を保ちながら通常80〜180℃、好ましくは100〜165℃で、通常2〜600秒間程度熱処理を行なう。
【0063】
また、本発明の樹脂組成物を用いて得られてなる多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行なえばよい。
【0064】
さらに、場合によっては、本発明の多層構造体からカップやトレイ状の多層容器を得ることも可能である。多層容器の作製方法としては、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等があげられる。さらに、多層パリソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器を得る場合はブロー成形法が採用され、具体的には押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法(押出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形インライン式二軸延伸ブロー成形法等)等があげられる。本発明の多層積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行なうことができる。
【0065】
本発明の多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、さらには多層構造体を構成する樹脂組成物層、他の熱可塑性樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性等により適宜設定されるものである。なお、下記の数値は、樹脂組成物層、接着性樹脂層、他の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1種の層が2層以上存在する場合には、同種の層の厚みを総計した値である。
【0066】
本発明の多層構造体(延伸したものを含む)の厚みは、通常10〜5000μm、好ましくは30〜3000μm、特に好ましくは50〜2000μmである。多層構造体の総厚みが薄すぎる場合には、ガスバリア性が低下することがある。また、多層構造体の総厚みが厚すぎる場合には、ガスバリア性が過剰性能となり、不必要な原料を使用することとなるため経済的でない傾向がある。そして、樹脂組成物層は、通常1〜500μm、好ましくは3〜300μm、特に好ましくは5〜200μmであり、他の熱可塑性樹脂層は通常5〜30000μm、好ましくは10〜20000μm、特に好ましくは20〜10000μmであり、接着性樹脂層は、通常0.5〜250μm、好ましくは1〜150μm、特に好ましくは3〜100μmである。
【0067】
さらに、多層構造体における樹脂組成物層と他の熱可塑性樹脂層との厚みの比(樹脂組成物層/他の熱可塑性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常1/99〜50/50、好ましくは5/95〜45/55、特に好ましくは10/90〜40/60である。また、多層構造体における樹脂組成物層と接着性樹脂層の厚み比(樹脂組成物層/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常10/90〜99/1、好ましくは20/80〜95/5、特に好ましくは50/50〜90/10である。
【0068】
上記のようにして得られたフィルム、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
【0069】
中でも、本発明の樹脂組成物からなる層は、複数回の溶融成形等により多くの熱履歴が掛かった場合であっても着色抑制に優れることから、一般的な食品、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、スープ、飲料、化粧品、医薬品、洗剤、香粧品、工業薬品、農薬、燃料等各種の容器として有用である。特に、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、味噌、わさび、からし、焼肉等のたれ等の半固形状食品・調味料、サラダ油、みりん、清酒、ビール、ワイン、ジュース、紅茶、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、牛乳等の液体状飲料・調味料用のボトル状容器やチューブ状容器、フルーツ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、マヨネーズ、味噌、加工米、調理済み食品、スープ等の半固形状食品・調味料用のカップ状容器や、生肉、畜肉加工品(ハム、ベーコン、ウインナー等)、米飯、ペットフード用の広口容器等の包装材料として特に有用である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは重量基準である。
【0071】
[評価項目]
<ガスバリア性>
厚み30μmのフィルムを用い、酸素ガス透過量測定装置(モコン社製、OX−TRAN 2/20)を用いて、酸素透過度(23℃、相対湿度65%)を測定した。
【0072】
<紫外線透過率>
得られたフィルムを用い、島津製作所社製の分光光度計「UV2550」を使用して、波長250nm(紫外線領域)の透過率(%)および波長500nm(可視光領域)の透過率(%)を測定した。
【0073】
〔樹脂組成物の製造〕
EVOHとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物[エチレン構造単位の含有量29モル%、MFR 4.0g/10分 (210℃、荷重2160g)、ケン化度99.7モル%]90部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体[SEBS、MFR5g/10分(230℃、2160g)]7.6部、カルボキシル基変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体[MFR4、5g/10分(230℃、2160g)1.2部、酸価2mg:CH
3ONa/g]、脂環族系炭化水素樹脂(アルコンP125)1.2部を溶融混練して得られた樹脂組成物ペレットを99.99部用い、塩素系樹脂として、軟質塩化ビニル樹脂を0.01部用い、ドライブレンドした。
なお、かかる塩素系樹脂は、あらかじめ凍結粉砕することにより小粒子化したものを用いた。
【0074】
かかる樹脂組成物を下記条件にて厚み30μmのフィルムを製膜した。
スクリュー:フルフライトタイプ
スクリーンメッシュ:90/120/90
スクリュー径: 40 mmφ
L/D:28
スクリュー圧縮比:3.4
ダイ:コートハンガーダイ
押出機バレル温度:C1/C2/C3/C4/H/D=180/200/220/220/220/220℃
回転数:20rpm
吐出量:4kg/hr
得られたフィルムについて上記評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例2]
実施例1において、樹脂組成物ペレットを99.9部用い、塩素系樹脂として、軟質塩化ビニル樹脂を0.1部用いた以外は同様に厚み30μmのフィルムを得、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例3]
実施例1において、塩素系樹脂として、硬質塩化ビニル樹脂を用いた以外は同様に厚み30μmのフィルムを得、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1]
実施例1において、塩素系樹脂を用いなかった以外は同様に厚み30μmのフィルムを得、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
[表1]
【0079】
塩素系樹脂を配合しなかった比較例1においては波長500nmの可視光領域の透過率が98%と非常に良好であり、UV−Cに相当する波長250nmにおいては41%であった。これに対して本発明の樹脂組成物を用いた実施例においては、同可視光領域の透過率が98%と比較例と同等に非常に良好であることがわかる。一方、波長250nmにおいては透過率が比較例1よりも低下し、紫外線吸収能が得られることがわかる。特に実施例3においては波長250nmにおける透過率が最も低く良好な値を示した。
【0080】
一方で、ガスバリア性評価においては実施例比較例ともに同レベルに優れていた。すなわち、本発明の樹脂組成物を用いる場合、すなわちEVOHに塩素系樹脂を配合しても、配合しない場合と同様の優れたガスバリア性が得られることがわかる。
【0081】
従って、本発明の樹脂組成物より得られる溶融成形品は、優れた透明性とガスバリア性を有しつつ、特定の紫外線領域の波長(例えば、波長280nm未満のUV−C)の吸収能を有することが明らかである。