【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0027】
[各種条件、成分量等の測定]
各工程における成分量及び条件の測定は以下のように行った。
(1)TOC含有量
全有機体炭素計(株式会社島津製作所社製、製品名:TOC-L
CSH)と、固体試料燃焼装置(株式会社島津製作所社製、製品名:SSM−5000A)を使用して、廃硫酸のTOC含有量、水洗前の石膏のTOC含有量、及び水洗後の石膏のTOC含有量を測定した。
(2)廃硫酸のpH
pH計(株式会社堀場製作所製、製品名:pHメータ D−51)、pH電極(株式会社堀場製作所製、製品名:スリーブTough電極 9681−10D)を使用して、廃硫酸のpHを測定した。
(3)TOCの分配率
測定した水洗後の石膏のTOC含有量及びろ液のTOC含有量より、石膏又はろ液へのTOCの分配率を算出した。なお、石膏への分配率及びろ液への分配率は、合計が100%となるように標準化した。
【0028】
(実施例1)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、3.72倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、1.0%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、2,480mg/kgであった。
【0029】
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
【0030】
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
【0031】
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
【0032】
(実施例2)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、5.58倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、1.5%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、1,840mg/kgであった。
【0033】
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
【0034】
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
【0035】
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表1に示す。
【0036】
(
参考例1)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、1.86倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、0.5%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、2,990mg/kgであった。
【0037】
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
【0038】
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
【0039】
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表1に示す。
【0040】
(比較例1)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。廃硫酸に対して、過酸化水素を添加する酸化処理は行わなかった。
【0041】
<工程(B)>
廃硫酸を、水と混合して希釈した。
【0042】
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(0.7)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
【0043】
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表1に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例
3〜8)
<工程(A)>
フッ素樹脂製造工程の過程(モノマー精製工程)で発生した廃硫酸を用意した。
この廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は2,690mg/kgであった。そして、廃硫酸を酸化処理するために、廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)に対し、3.72倍の濃度となる過酸化水素(32.5wt%水溶液)を添加した。このときの過酸化水素の廃硫酸における濃度は、1.0%である。処理後の廃硫酸中のTOC濃度(mg/kg)は、2,480mg/kgであった。
【0046】
<工程(B)>
工程(A)で過酸化水素を添加した廃硫酸を、水と混合して希釈した。
【0047】
<工程(C)>
工程(B)で希釈した廃硫酸に炭酸カルシウム(関東化学株式会社製、グレード:鹿1級)を、所定のpH(2.0〜7.0)となるように添加し、石膏を析出させた。
石膏を析出させたときのpH、及び水洗前の石膏のTOC含有量を後述の表2に示す。
【0048】
<工程(D)>
析出した石膏に付着している廃硫酸を除去するために水洗した。
水洗後の石膏のTOC含有量を後述の表2に示す。
また、石膏への分配率及びろ液への分配率を後述の表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
(結果)
実施例1〜
8及び参考例1では、廃硫酸に過酸化水素を添加する処理を行うことによって、TOC含有量の少ない石膏を製造することができた。また、実施例
1〜8では、廃硫酸を水で希釈した際に有機物を多量に含む黒色粒子は発生しなかった。
一方、未処理の廃硫酸を用いた比較例1では、石膏のTOC含有量が多く、廃硫酸を水で希釈した際に黒色粒子が発生した。
【0051】
[セメントの物理試験]
実施例の石膏の製造方法により製造された石膏を用いたセメントと市販の石膏を用いたセメントの物理試験として以下のように測定及び評価した。
(1)凝結試験
JIS R5201:2015に規定された「セメントの物理試験方法」に準拠して、凝結試験を実施した。結果を後述の表3に示す。
(2)モルタル圧縮試験
モルタル試験はJIS R 5201:2015に規定された「セメントの物理試験方法」に準拠して実施した。材齢3日(3d)、7日(7d)、28日(28d)におけるモルタル圧縮強さを後述の表3に示す。
【0052】
(実施例
9)
以下に示す条件で実施例
9のセメントを試作し、凝結試験及びモルタル圧縮試験を行った。凝結試験及びモルタル圧縮試験の結果を後述の表3に示す。
【0053】
<セメント試作条件>
・クリンカ:NC
・石膏:実施例2で製造した石膏
・粉砕条件:混合粉砕
・セメントSO
3:2.0%
・ブレーン値:3400±100cm
2/g
【0054】
(参考例
2)
以下に示す条件で参考例
2のセメントを試作し、凝結試験及びモルタル圧縮試験を行った。凝結試験及びモルタル圧縮試験の結果を後述の表3に示す。
【0055】
<セメント試作条件>
・クリンカ:NC
・石膏:市販石膏(排脱石膏)
・粉砕条件:混合粉砕
・セメントSO
3:2.0%
・ブレーン値:3400±100cm
2/g
【0056】
【表3】
【0057】
(結果)
実施例
9で用いた石膏(実施例2)は、表1で示すように、廃硫酸から完全に有機物を取り除けてはおらず、少量の有機物を含んでいる。しかしながら、表3に示すように、凝結試験及びモルタル圧縮試験の結果では、市販の石膏を用いた参考例
2と同等の物性を有することが分かる。つまり、本発明の石膏の製造方法により製造される石膏は、物性に影響を及ぼさない程度まで有機物を減少させていることが分かる。