(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液晶配向剤の全質量%に対して、溶媒Aが、50〜80質量%であり、溶媒Bが1〜30質量%であり、溶媒Cが1〜20質量%含有される請求項1〜8のいずれかに1項に記載の液晶配向剤。
溶媒B及び溶媒Cの合計が、液晶配向剤の全質量に対して、10〜60質量%含有され、かつ溶媒Bが、溶媒Cよりも多く含有される請求項1〜9のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶配向剤は、ポリイミド前駆体及びそのイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(以下、特定重合体ともいう。)と、下記する溶媒A,溶媒B、及び溶媒Cを含有する溶媒(以下、特定溶媒ともいう。)を含有する。
【0013】
<特定溶媒>
本発明の液晶配向剤に含有される溶媒は、上記溶媒A、溶媒B、及び溶媒Cを含有するが、以下に、それぞれについて説明する。
<溶媒A>
溶媒Aは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、γ‐ブチロラクトン(GBL)、及び1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒である。溶媒Aは、液晶配向剤中の重合体を溶解させるものである。
【0014】
なかでも、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、又はγ‐ブチロラクトン(GBL)が好ましく、より好ましくはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、又はγ‐ブチロラクトン(GBL)である。
本発明の液晶配向剤において、溶媒Aの含有量は、液晶配向剤の全質量に対し、20〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、更に好ましくは、50〜80質量%である。
【0015】
<溶媒B>
溶媒Bは、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DME)である。溶媒Bは、液晶配向剤の塗布均一性の向上と低粘度化に寄与する溶媒である。
本発明の液晶配向剤において、溶媒Bの含有量は、液晶配向剤の全質量に対し、5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
【0016】
<溶媒C>
溶媒Cは、下記式(a)で表される化合物からなる。
【化2】
式(a)中、R
1、R
2は,それぞれ独立して、直鎖又は分岐状の炭素数1〜8、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜6のアルキル基である。但し、R
1及びR
2の炭素数の合計は4以上であり、好ましくは5〜12である。
【0017】
式(a)で表される溶媒Cは、具体的には、以下のa−1〜a−48が例示されるが、これらに限定されない。
【化3】
【0020】
溶媒Cは、なかでも、入手性と実用性の点から、a−22、a−13〜a−21、a−24、a−26、a−27、a−31、a−34、a−37、又はa−38が好ましく、a−22、又はa−37がより好ましい。
本発明の液晶配向剤において、溶媒Cの含有量は、液晶配向剤の全質量に対し、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0021】
また、溶媒B及び溶媒Cの合計含有量が、液晶配向剤の全質量に対し、20〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。また、その際、溶媒Bの含有量は、溶媒Cの含有量より大きいことが好ましく、特に、溶媒Cの含有量より、1〜20質量%大きいことがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、特定溶媒以外の溶媒を含有していてもよい。その例としては、ブチルセロソルブ、1−ブトキシ‐2−プロパノール、ブチルセロソルブアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、プロピレングリコールジアセタート、ジイソブチルケトン、エチルカルビトールおよびジプロピレングリコールジメチルエーテル、ガンマバレロラクトンなどが挙げられる。特定溶媒以外の溶媒は、液晶配向剤の全質量に対し、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0022】
<特定重合体>
本発明の液晶配向剤に含有される特定重合体であるポリイミド前駆体は、以下の式(1)で表わされる構造を有することが好ましい。
【化6】
【0023】
式(1)中、X
1は、テトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基である。Y
1はジアミン由来の2価の有機基である。R
1は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレンである。加熱時のイミド化反応の進行のしやすさの観点から、R
1は水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、水素原子又は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数2〜5のアルキニル基である。液晶配向性の観点から、A
1及びA
2は水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0024】
以下に、上記ポリイミド前駆体を製造する原料となる各成分について説明する。
<ジアミン>
ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミン成分は特に限定されないが、上記式(1)で表されるポリイミド前駆体の原料であるジアミンは、下記の式(2)で表される。
【化7】
【0025】
式(2)中、A
1及びA
2は好ましい例も含めて、上記式(1)のA
1及びA
2と同様の定義である。Y
1を例示すると、以下の(Y−1)〜(Y−170)が挙げられる。
【化8】
【0041】
【化25】
式中、nは、1〜6の整数であり、Meはメチル基である。
なかでも、(Y−7)、(Y−8)、(Y−16)、(Y−17)、(Y−18)、(Y−20),(Y−21)、(Y−22)、(Y−28)、(Y−35)、(Y−38)、(Y−43)、(Y−48)、(Y−64),(Y−66)、(Y−71)、(Y−72)、(Y−76),(Y−77)、(Y−80)、(Y−81)、(Y−82)、(Y−83)、(Y156)、(Y−159)、(Y−160)、(Y−161)、(Y−162)(Y−168)、(Y−169)又は(Y−170)が好ましく、特には、(Y−7)、(Y−8)、(Y−16)、(Y−17)、(Y−18)、(Y−21)、(Y−22)、(Y−28)、(Y−38)、(Y−64),(Y−66)、(Y−72)、(Y−76),(Y−81)、(Y156)、(Y−159)、(Y−160)、(Y−161)、(Y−162)(Y−168)、(Y−169)又は(Y−170)が好ましい。
【0042】
<テトラカルボン酸誘導体>
ポリイミド前駆体の製造に用いられるテトラカルボン酸誘導体は特に限定されないが、上記式(1)で表されるポリイミド前駆体の原料であるテトラカルボン酸誘導体成分としては、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、その誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
【0043】
テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体としては、下記式(3)で表されものが好ましい。
【化26】
【0044】
式(3)中、X
1は、脂環式構造を有する4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。具体例としては、下記式(X1−1)〜(X1−44)が挙げられる。
【化27】
【0045】
式(X1−1)〜(X1−4)において、R
3〜R
23は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1〜6の1価の有機基、又はフェニル基である。液晶配向性の点から、R
3〜R
23は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
なお、式(X1−1)の具体例としては、下記式(X1−1−1)〜(
X1−1−6)が挙げられる。液晶配向性及び光反応の感度の点から、(X1−1−1)が特に好ましい。
【0052】
本発明のポリイミド前駆体及びポリイミドの原料であるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体としては、全テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体1モルに対して、上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を60〜100モル%含むことが好ましい。良好な液晶配向性を有する液晶配向膜が得られるため、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
【0053】
<ポリイミド前駆体>
<ポリアミック酸エステルの製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体の一つであるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の方法で製造できる。
(1)ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成できる。
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成できる。
【0054】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。
【0055】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応液中のポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0056】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから製造できる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって製造できる。
【0057】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の使用量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応液中のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0058】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸エステルを製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより製造できる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって製造できる。
【0059】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルが好ましい。
【0060】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の使用量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルが好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0〜1.0倍モルが好ましい。
【0061】
上記3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の製造法が特に好ましい。
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0062】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により製造できる。
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成できる。
【0063】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0064】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0065】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造できる。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0066】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用できる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を有するので好ましい。
【0067】
イミド化反応を行うときの温度は、−20℃〜140℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸エステル基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御できる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0068】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0069】
イミド化反応を行うときの温度は、−20℃〜140℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0070】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0071】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、特定重合体が特定溶媒を含む溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。本発明に記載のポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、5,000〜50,000である。
【0072】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下とすることが好ましい。
【0073】
<その他の溶媒>
本発明の液晶配向剤には、上記溶媒A、B及びC以外の溶媒(以下、その他の溶媒ともいう。)を含有できる。その他の溶媒としては、ポリイミド前駆体及びポリイミドを溶解させる溶媒(良溶媒ともいう)や、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を含有させても良い。
【0074】
下記に、その他の溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
良溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−メトキシーN,N−ジメチルプロパンアミド(IPME)又は4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどを挙げることができる。
【0075】
貧溶媒の具体例としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2−ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−エトキシブチルアセタート、1−メチルペンチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2−(メトキシメトキシ)エタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1−ブトキシ‐2−プロパノール、1−(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセタート、ジイソペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、ジイソブチルケトン、エチルカルビトール等が挙げられる。
【0076】
また、貧溶媒としては、下記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒が挙げられる。
【化34】
式[D−1]中、D
1は炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−2]中、D
2は炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−3]中、D
3は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0077】
本発明の液晶配向剤には、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合を有する架橋性化合物を含んでいても良い。これら置換基や重合性不飽和結合は、架橋性化合物中に2個以上有する必要がある。
【0078】
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物としては、例えば、ビスフェノールアセトングリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニレン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ビスフェノールヘキサフルオロアセトジグリシジルエーテル、1,3−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロメチル)ベンゼン、4,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、2−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−2−(4−(1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパン又は1,3−ビス(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチル)フェノキシ)−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0079】
オキセタン基を有する架橋性化合物は、下記式[4A]で示されるオキセタン基を少なくとも2個有する化合物である。
【化35】
具体的には、国際公開公報WO2011/132751号(2011.10.27公開)の58〜59頁に掲載される式[4a]〜式[4k]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0080】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物としては、下記式[5A]で示されるシクロカーボネート基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
【化36】
具体的には、国際公開公報WO2012/014898号(2012.2.2公開)の76〜82頁に掲載される式[5−1]〜式[5−42]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0081】
ヒドロキシル基及びアルコキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物としては、例えば、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するアミノ樹脂、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂又はエチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。具体的には、アミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基又はその両方で置換されたメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体、又はグリコールウリルを用いることができる。このメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体は、2量体又は3量体であってもよい。これらはトリアジン環1個当たり、メチロール基又はアルコキシメチル基を平均3〜6個有するものが好ましい。
【0082】
上記のメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体の例としては、市販品のトリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30(以上、三和ケミカル社製)やサイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712などのメトキシメチル化メラミン、サイメル235、236、238、212、253、254などのメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン、サイメル506、508などのブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、サイメル1123などのメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1123−10などのメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1128などのブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(以上、三井サイアナミド社製)が挙げられる。また、グリコールウリルの例として、サイメル1170などのブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172などのメチロール化グリコールウリルなど、パウダーリンク1174などのメトキシメチロール化グリコールウリル等が挙げられる。
【0083】
ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するベンゼン又はフェノール性化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(メトキシメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(イソプロポキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(sec−ブトキシメチル)ベンゼン又は2,6−ジヒドロキシメチル−p−tert−ブチルフェノールが挙げられる。
より具体的には、国際公開公報WO2011/132751号(2011.10.27公開)の62〜66頁に掲載される、式[6−1]〜式[6−48]の架橋性化合物が挙げられる。
【0084】
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン又はグリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を分子内に3個有する架橋性化合物、更に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート又はヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を分子内に2個有する架橋性化合物、加えて、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル又はN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を分子内に1個有する架橋性化合物等が挙げられる。
【0085】
更に、下記式[7A]で示される化合物を用いることもできる。
【化37】
(式[7A]中、E
1はシクロヘキサン環、ビシクロヘキサン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環又はフェナントレン環からからなる群から選ばれる基を示し、E
2は下記式[7a]又は式[7b]から選ばれる基を示し、nは1〜4の整数を示す)。
【化38】
本発明の液晶配向剤に用いる架橋性化合物は、1種類でも、2種類以上組み合わせてもよい。
【0086】
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して、0.1〜150質量部が好ましい。なかでも、架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、0.1〜100質量部が好ましい。より好ましいのは、1〜50質量部である。
【0087】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を含有することができる。
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(以上、大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(以上、旭硝子社製)などが挙げられる。
【0088】
界面活性剤の使用量は、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
更に、液晶配向剤には、液晶配向膜中の電荷移動を促進して素子の電荷抜けを促進させる化合物として、国際公開公報WO2011/132751号(2011.10.27公開)の69〜73頁に掲載される、式[M1]〜式[M156]で示される窒素含有複素環アミンを添加することもできる。このアミンは、液晶配向剤に直接添加しても構わないが、濃度0.1〜10質量%、好ましくは1〜7質量%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒は、特定重合体を溶解させるならば特に限定されない。
【0089】
本発明の液晶配向剤には、上記の貧溶媒、架橋性化合物、樹脂被膜又は液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物及び電荷抜けを促進させる化合物の他に、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、さらには塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を含有せしめても良い。
【0090】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板等を用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極などが形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0091】
液晶配向剤の塗布方法は、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などが知られている。
なかでも、本発明の液晶配向剤は、上記したように、重合体の含有成分比率や重合体の分子量を高く維持しながら液晶配向剤の低粘度にできるため、インクジェット法による塗布、成膜法が好適に使用できる。
【0092】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される溶媒を十分に除去するために50〜120℃で1〜10分焼成し、その後、150〜300℃で5〜120分焼成する条件が挙げられる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光配向処理などで配向処理をし、また、垂直配向用途などでは配向処理無しで、液晶配向膜として用いることができる。ラビング処理や光配向処理などで配向処理では、既知の方法や装置を使用できる。
【0093】
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。なお、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
具体的には、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル−ゲル法によって形成されたSiO
2−TiO
2の膜とすることができる。
【0094】
次に、各基板の上に液晶配向膜を形成し、一方の基板に他方の基板を互いの液晶配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール剤で接着する。シール剤には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておき、また、シール剤を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール剤の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。次いで、シール剤に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール剤で包囲された空間内に液晶材料を注入し、その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。液晶材料は、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料のいずれを用いてもよいが、好ましいのは、ネガ型液晶材料である。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。
【0095】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記で用いる略語は、以下のとおりである。
DA−1:1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン
DA−2:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
DA−3:4,4’−ジアミノジフェニルアミン、CA−1:ピロメリット酸二無水物
CA−2:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
CA−3:3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
NMP:N−メチル−2−ピロリドン、GBL:γブチロラクトン、
BCS:ブチルセロソルブ、PB :1−ブトキシ‐2−プロパノール
DME:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
DAA:ダイアセトンアルコール、DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
DIBC:2,6−ジメチル‐4−ヘプタノール
AD−1:下記式の化合物
【化39】
【0096】
<粘度の測定>
ポリアミック酸、液晶配向剤などの粘度は、E型粘度計(東機産業社製)を使用し、温度25℃で測定した。
<固形分濃度の測定>
溶液1.0gをアルミニウム製カップに測りとり、200℃、2時間の条件で加熱処理した後、カップの上に残存している固体量を計測し、溶液の固形分濃度を測定した。
【0097】
[ポリアミック酸A1の製造]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの2000mlフラスコにDA−1を171.8g入れ、NMP1676gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA−1を113.8g加え、さらに固形分濃度が12重量%になるようにNMPを加え、窒素雰囲気下、50度で加熱しながら20時間撹拌し、ポリアミック酸(A1)の溶液(粘度:90mPa・s)を得た。このポリアミック酸(A1)溶液1.0gをアルミ二ウム製カップに測りとり、200℃2時間の条件で処理した際の固形分濃度は11.2重量%であった。
【0098】
[ポリアミック酸溶液a1の製造]
ポリアミック酸(A1)溶液535.7gに対して、NMPを264.3g、およびBCS200.0g加え、固形分濃度の濃度が6.0重量%のポリアミック酸溶液(a1)溶液を得た。
[ポリアミック酸溶液a2の製造]
ポリアミック酸(A1)溶液535.7gに対して、NMPを264.3g、およびPB200.0g加え、固形分濃度の濃度が6.0重量%のポリアミック酸溶液(a2)溶液を得た。
[ポリアミック酸溶液a3の製造]
ポリアミック酸(A1)溶液535.7gに対して、NMPを264.3g、およびDME200.0g加え、固形分濃度の濃度が6.0重量%のポリアミック酸溶液(a3)を得た。
【0099】
[ポリアミック酸A2の製造]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの2000mlフラスコにDA−1を100.8g及びDA−5を34.9g入れ、NMP1337gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA−1を92.2g加え、さらに固形分濃度が12重量%になるようにNMPを加え、窒素雰囲気下、50℃に加熱しながら20時間撹拌し、ポリアミック酸(A2)の溶液(粘度:520mmPa・s)を得た。
【0100】
[ポリアミック酸B1の製造]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの2000ml四つ口フラスコにDA−3を87.7g入れ、NMPとGBLが各50重量%の比率でブレンドされた溶媒(以下溶媒1)1052.5gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA−2を70.1gと溶媒1を382.7g加えて、窒素雰囲気下、水冷下で3時間攪拌した。その後、DA−2を21.8gと溶媒1を191.3g加えて攪拌した。DA−2が溶解した後、CA−3を33.0gと溶媒1を287.0g加えて、再び窒素雰囲気下、水冷下で3時間攪拌することで、固形分濃度が9.8重量%のポリアミック酸(B1)の溶液(粘度:65mPa・s)を得た。このポリアミック酸(B1)溶液1.0gをアルミ二ウム製カップに測りとり、200℃2時間の条件で処理した際の固形分濃度は9.8重量%であった。
【0101】
[ポリアミック酸B2の製造]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの2000ml四つ口フラスコにDA−3を95.6g及びDA−4を18.2g入れ、NMPを967g加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA−2を54.8gとNMPを276g加えて、窒素雰囲気下、水冷下で3時間攪拌した。その後、CA−4を75.0gと、固形分濃度が15重量%となるようにNMPを加えて、窒素雰囲気下、50℃に加熱しながら、12時間攪拌し、ポリアミック酸(B2)溶液(粘度:302mmPa・s)を得た。
【0102】
[実施例1]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを95.9g、DMEを53.5g、及びDIBCを50.0g加え、室温で1時間撹拌した。その後、a3を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:DME:DIBCの比率が、4.3:30:40.7:15:10(重量%)の溶液(C1)を500.0g得た。
【0103】
[実施例2]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを120.9g、DME28.5g及びDIBC50.0gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、a3を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:DME:DIBC=4.3:30:40.7:10:10(重量%)の溶液(C2)を500.0g得た。
【0104】
[実施例3]
12重量%のポリアミック酸(A2)溶液33.3gと、15重量%のポリアミック酸(B2)溶液106.6gとの混合液を30分撹拌した後、これに対し、NMPを11.1g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液20.0g、GBLを204.0g、DMEを75.0g及びDIBCを50.0g加え、室温で3時間撹拌することで、A2とB2のポリマー固形分比が2:8であり、固形分:NMP:GBL:DME:DIBC=4.2:30:40.8:15:10(重量%)の溶液(C8)を500.0g得た。
【0105】
[実施例4]
12重量%のポリアミック酸(A2)溶液33.3gと、15重量%のポリアミック酸(B2)溶液106.6gとの混合液を30分撹拌した後、これに対し、NMPを5.1g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液20.0g、AD−1が10重量%入ったNMP溶液を6.0g、GBLを204.0g、DMEを75.0g及びDIBCを50.0g加え、室温で3時間撹拌することで、A2とB2のポリマー固形分比が2:8であり、固形分:NMP:GBL:DME:DIBC=4.2:30:40.8:15:10(重量%)の溶液(C9)を500.0g得た。
【0106】
[比較例1]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを145.9g及びDME53.5gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、a3を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:DME=4.3:30:50.7:15(重量%)の溶液(C3)を500.0g得た。
【0107】
[比較例2]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを145.9g及びBCS53.5gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、a1を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:BCS=4.3:30:50.7:15(重量%)の溶液(C4)を500.0g得た。
【0108】
[比較例3]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを95.9g、BCS53.5g及びDPM50.0gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、a1を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:BCS:DPM=4.3:30:40.7:15:10(重量%)の溶液(C5)を500.0g得た。
【0109】
[比較例4]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを95.9g、DME53.5g及びDPM50.0gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、a3を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:DME:DPM=4.3:30:40.7:15:10(重量%)の溶液(C6)を500.0g得た。
【0110】
[比較例5]
ポリアミック酸(B1)溶液153.4gを測りとり、その溶液へ、NMPを1.3g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが1.3重量%入ったGBL溶液を38.5g、GBLを95.9g、PB53.5g及びDPM50.0gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、a2を107.5g加えて、さらに1時間撹拌することで、固形分:NMP:GBL:PB:DPM=4.3:30:40.7:15:10(重量%)の溶液(C7)を500.0g得た。
【0111】
実施例1〜4及び比較例1〜5については、孔径1μmのフィルターで濾過した後、粘度を測定し、表2に示した。その後、以下の塗布性評価を実施した。
[インクジェット塗布性評価]
上記で調製した実施例1〜4及び比較例1〜5について、インクジェット塗布装置(石井表記社製)を用いて、TFT基板上に塗布した。塗布条件は、ノズル間ピッチ127μm、塗布速度250mm/sec、ディスペンス量70pL、塗布面積36×36mmで行った。また、塗布は、110℃のホットプレート上で1分仮乾燥を行った後、230℃で15分の条件でIRオーブンで焼成した際に、塗膜の厚みが120nmとなる条件で塗布した。
【0112】
[塗膜の評価方法]
塗布された基板を110℃で仮乾燥した塗膜について、コンタクトホールや配線の影響で発生するドットやスジ状のムラ程度を比較して、以下の4段階で評価した。
目視で全面に顕著なムラが確認できるものをLv4、目視で部分的にムラが確認できるものをLv3、ムラが目視では見えないものをLv2、光学顕微鏡でもムラが全くないものをLv1とした。
【0113】
また、クロムが表面に蒸着されたガラス基板上にも塗布を行い、塗膜端部の色調変化(膜厚ムラ)がある部分の幅を、ノギスで測長し、Haloサイズとして評価した。なお、Haloサイズは値が小さいほど、良好な塗膜であるとされる。
さらに、塗膜幅を実測し、設定塗布領域に対して、実測値と設定値の差を寸法安定性として評価した。なお、この評価では、値が小さいものほど良好な塗膜であるとされる。
これらの結果を表1、2に示す。
【0115】
【表2】
なお、2016年3月31日に出願された日本特許出願2016−072567号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。