(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「平坦部」とは、平均曲率半径が5000mm超である部分を意味する。
「屈曲部」とは、平均曲率半径が5000mm以下である部分を意味する。
「屈曲板(屈曲部9を有するガラス基材3)」とは、
図1に断面模式図を示すように、第1の主面3aと第2の主面3bと端面3cとを有し少なくとも1つ以上の屈曲部9を備える形状である。
図1(a)のような屈曲部9と平坦部7を組み合わせた形状、
図1(b)のような全体が屈曲部9となる形状が挙げられるが、屈曲部9を有すれば特に限定されない。
「曲げ深さ」とは、屈曲部を有するガラス基材の厚さ方向断面視で、同一の主面における2つの端部を結ぶ直線と、この直線と平行となる直線のうち、屈曲部に接する接線との距離をいう。
図2(a)および(b)に示すような屈曲板において、屈曲された方向(
図2においてはZ方向)における、屈曲板の両端間の距離hが曲げ深さとなる。なお、
図2(a)においては、平坦面をXY面とする。また、
図1(b)においては、屈曲された方向(Z方向)に直交する面をXY面とする。
「線の算術平均粗さRa」は、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)により測定される。
「平衡粘性」は、ガラス板の厚さ方向断面視中央部における組成での粘性を示す。平衡粘性は、測定される粘性範囲に応じて、ビーム曲げ法(ISO 7884−4:1987)、繊維引き伸ばし法(ISO 7884−3:1987)、平行平板粘度計(ASTMC 338−93:2003)、棒沈降式粘度計(ISO 7884−5:1987)で測定される。本発明の実施形態では、平衡粘性は、ビーム曲げ法(ISO 7884−4:1987)に基づき測定する。
「ヘイズ値」は、JIS K 7136:2000によりヘイズメータ(村上色彩研究所社製、HR−100型)を使用して測定される。
【0010】
「ベアリング高さ」は、レーザ顕微鏡(キーエンス社製、VK−X100)で(101μm×135μm)〜(111μm×148μm)の領域(以下、「観察領域」ともいう。)を測定し、測定データを画像処理ソフトウェア(イメージメトロロジー社製、商品名:SPIP)により解析して得られる、観察領域の表面形状のXYZデータから求められる高さ分布ヒストグラムにて、最も優勢な高さZの値である。XYZデータにおける高さZは、観察領域の最低点を基準とした高さ(高さZを測定する位置から、観察領域における被測定物の主面に平行な平面であって最低点を含む平面に下した垂線の長さ)であり、以下において特に基準を規定しない場合の表面形状における高さの意味も同様である。ベアリング高さ算出時のヒストグラムの刻み(bin)は1000に設定した。
「画像処理面」は、上述のようにレーザ顕微鏡で測定した際に得られた表面形状のXYZデータから得られた像について、画像処理ソフトウェア(イメージメトロロジー社製、商品名:SPIP)によりフィルタリングすることによりスムージング像を取得し、前記表面形状のXYZデータから前記スムージング像のXYZデータを差し引くことで得られた面を意味する。なお、レーザ顕微鏡による観察および測定において、測定対象物である基板が屈曲部を有する場合には、冶具を用いて基板の周囲を押さえつけ、平坦化した状態でレーザ顕微鏡による観察および測定を行い、上述の表面形状のXYZデータを得る。
【0011】
前述の「画像処理面」を得るための操作は、具体的には、以下の(i)〜(iv)の手順で実施できる。
(i)カスタムモードで、実際に測定された防眩層の表面形状のXYZデータの傾き補正を行い、ベアリング高さを0と補正した表面形状イメージを得る。
(ii)前記ベアリング高さを0と補正した表面形状イメージについて、「コンボリューション:スムージング:平均に設定」、「カーネルサイズ:X=Y=31、円形に設定」の条件で、XYデータ31個を円形単位でZを平均化するフィルタリングを行い、なだらかな凹凸表面形状イメージ(以下、「スムージング像」ともいう。)を得る。
(iii)前記ベアリング高さを0と補正した表面形状イメージから、閾値レベル:0.01μmにて「粒子」を検出する。その後、イメージウィンドウの測定にて「フィルタ差分」を選択し、「形状のホールを保存」し、フィルタサイズ51ポイントで「形状輪郭をスムージング」する後処理を行い、後処理された表面形状イメージ(以下、「表面形状」ともいう。)を得る。
(iv)前記スムージング像と前記表面形状との差分として、「画像処理面」を得る。
【0012】
(i)の「カスタムモード」は、SPIPで傾き補正(フラットニング)を行う際に表示されるモードで、具体的には以下の4つの操作が自動で行われる。
(i−1)「全体面補正法」として「平均プロファイルフィット法」が選択され、次数は3とされる。
(i−2)「ステップを処理」は選択しない。
(i−3)「ラインごとの補正」について「なし」が選択される。
(i−4)「Zオフセット法」として「ベアリング高さをゼロにする」が選択される。
傾き補正を行うと、レーザ顕微鏡で得られた表面形状のXYZデータについてフィット面がXおよびYの平均プロファイルから計算され、イメージから差し引くことによって、イメージ全体の傾きや不要な湾曲が取り除かれる。
【0013】
(ii)において、カーネルサイズをX=Y=31、円形に設定した場合、31×31の四角形に内接する八角形で、円形の代用の枠(カーネル)が設定される。フィルタリングでは、カーネル形状に関係なく、カーネル内の全ポイントの単純な平均値で元のデータが置き換えられる。また、フィルタリングを行うと、微細な凹凸が除去(平均化)されたスムージング像が得られる。
【0014】
SPIPの平均化フィルタは、31×31のフィルタの場合、以下の行列演算で示される。
ある1点:XYZに対してこの点を中心に円形に(距離が近い順)で961点が抽出され、それぞれの点XYに対するZの値が合計され、その合計値を961で割った値が座標XYの新たなZ値とされる。この計算が面内すべての点について行われる。X方向、Y方向の測定点の間隔はそれぞれ71nmである。このとき、1点ずつ隣に移動しながら全点に対して平均が求められるので、分解能が下がることは無い。
【0016】
(iii)において、閾値レベルが0.01μmとは、粒子(凸部)として高さが0.01μm以上のものを検出することを示す。高さは、ベアリング高さを基準とする。
後処理において、「形状のホールを保存」は、検出した粒子の領域内に高さ0.01μm以下の凹部があった場合、この凹部部分の面積を粒子の面積としてカウントしない操作を示す。
「形状輪郭をスムージング」は、粒子の形状輪郭のノイズをとる操作を示す。
フィルタサイズは、粒子の形状輪郭のスムージングの程度を表すもので、値が大きい程、スムージング後の形状輪郭が円に近付く。
つまり(iii)の後処理により得られる表面形状は、実際の測定データからノイズを除去し、凸部の形状輪郭を整えたものであり、実際の第一の凸部を含む凹凸表面形状とみなすことができる。
【0017】
(iv)において、(ii)で得たスムージング像から、(iii)で得た表面形状を差し引くと、「画像処理面」が得られる。
一般に、うねりのある表面上に凸部が分布している場合、該凸部の数や形状を正確に測定することは難しい。上記形状解析では、スムージング像と表面形状とを重ねたときに、スムージング像の表面より上側にある凸部を、うねりのある表面のうねりをなくしたときの、該表面上に分布する凸部と判断している。
【0018】
「面の偏り度(Ssk)」は、上述のレーザ顕微鏡測定データを画像処理ソフトウェア(イメージメトロロジー社製、商品名:SPIP)により解析して得られ、高さ分布の対称性を表す値である。Sskが0未満であることは、細かい谷が多い表面であることを示す。算出方法はISO 25178:2010に準拠する。
「面の算術平均粗さ(Sa)」は、同様に、上述のレーザ顕微鏡測定データを画像処理ソフトウェア(イメージメトロロジー社製、商品名:SPIP)により解析して得られ、Ra(線の算術平均粗さ)を面に拡張したパラメータであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す。算出方法はISO 25178:2010に準拠する。
【0019】
「反射像拡散性指標値R」は、以下に記載する方法で算出される。まず被測定物表面を基準(0°とする)として、+45°となる方向から被測定物に光を照射し、被測定物表面で反射する正反射光(45°正反射光という)の輝度を測定する。続いて、同様に+45°となる方向から被測定物に光を照射し、受光角度を0°〜+90°の範囲で変化させ被測定物表面で反射される全反射光の輝度を測定する。これらの測定値を「反射像拡散性指標値R=(全反射光の輝度−45°正反射光の輝度)/(全反射光の輝度)」の式に代入することで、反射像拡散性指標値Rが求められる。
「解像度指標値T」は、以下に記載する方法で算出される。第1の主面と第2の主面を有する被測定物の第2の主面側から、被測定物の厚さ方向と平行な方向(角度0°の方向、という)に第1の光を照射し、第1の主面から透過する透過光(0°透過光、という)の輝度を測定する。続いて、第1の主面に対する受光角度を−90°〜+90°の範囲で変化させ、第1の光の第1の主面側から透過する全透過光の輝度を測定する。これらの測定値を「解像度指標値T=(全透過光の輝度−0°透過光の輝度)/(全透過光の輝度)」の式に代入することで、解像度指標値Tが求められる。
「ギラツキ指標値S」は、以下のように求められる。第1の主面と第2の主面を有する被測定物の第2の主面を、アップルインコーポレイテッド社製iPhone4(登録商標)(ピクセル密度326ppi)の表示面側になるようにして配置する。次に被測定物の第1の主面側から撮影し、画像を取得する。この画像をソフトウェア(アイ・システム社製、商品名:EyeScale−4W)により解析し、これにより出力されるISC−Aの値をギラツキ指標値Sとした。
「60゜鏡面光沢度(グロス値)」は、JIS Z8741:1997(ISO2813:1994)に記載された方法によって、裏面(凹凸構造が形成された側とは反対側の面)反射を消さずに光沢度計(コニカミノルタ社製、MULTI GLOSS 268Plus)を用いて測定される。
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態のガラス物品の製造方法では、被加熱体であるガラス部材を例えば、600℃以上の温度まで、平衡粘性として10
6.5〜10
12.5Pa・s程度になるように加熱処理する。具体的には、前記加熱処理は成形工程またはアニール工程により実施される。前記加熱処理により、ガラス部材の表面形状を所望の形状とでき、得られたガラス物品が所望の耐久性および光学特性を示す。
以下の説明では、加熱処理前の被加熱体をガラス部材、加熱処理後のガラス部材をガラス物品と呼称する。
【0021】
図3は加熱処理によりガラス物品を作製する製造工程の一例を概略的な手順で示すフローチャートである。
ガラス物品の製造工程は、まず、ガラス部材を準備する(ガラス部材準備;S1)。ガラス部材準備(S1)後、ガラス部材に成形工程やアニール工程などの加熱処理を実施し(加熱処理;S2)、最終的にガラス物品を取り出す(ガラス物品取出;S3)。
【0022】
<ガラス部材準備;S1>
ガラス部材1は、
図4(a)〜(b)に示すように、第1の主面3aと、第2の主面3bと、端面3cとを有するガラス基材3と、少なくともいずれか一方の主面に形成された凹凸層5とを備える。ガラス部材の形状は、板状のような厚さが均一な形状でも、厚さが不均一な形状でもよく、特に制限はない。
【0023】
(ガラス基材3)
ガラス基材3として、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロンシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラスを使用できる。厚さが薄くても後述する強化処理によって大きな応力が入りやすく薄くても高強度なガラスが得られ、画像表示装置の視認側に配置される物品として好適である点から、アルミノシリケートガラスが好ましい。
【0024】
[ガラス組成]
ガラス組成の具体例としては、酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO
2を50〜80%、Al
2O
3を0.1〜25%、Li
2O+Na
2O+K
2Oを3〜30%、MgOを0〜25%、CaOを0〜25%およびZrO
2を0〜5%含むガラスが挙げられるが、特に限定されない。より具体的には、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0〜25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)および(iii)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれる。(i)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO
2を63〜73%、Al
2O
3を0.1〜5.2%、Na
2Oを10〜16%、K
2Oを0〜1.5%、Li
2Oを0〜5%、MgOを5〜13%及びCaOを4〜10%を含むガラス。(ii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO
2を50〜74%、Al
2O
3を1〜10%、Na
2Oを6〜14%、K
2Oを3〜11%、Li
2Oを0〜5%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrO
2を0〜5%含有し、SiO
2およびAl
2O
3の含有量の合計が75%以下、Na
2OおよびK
2Oの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス。(iii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO
2を68〜80%、Al
2O
3を4〜10%、Na
2Oを5〜15%、K
2Oを0〜1%、Li
2Oを0〜5%、MgOを4〜15%およびZrO
2を0〜1%含有するガラス。(iv)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO
2を67〜75%、Al
2O
3を0〜4%、Na
2Oを7〜15%、K
2Oを1〜9%、Li
2Oを0〜5%、MgOを6〜14%およびZrO
2を0〜1.5%含有し、SiO
2およびAl
2O
3の含有量の合計が71〜75%、Na
2OおよびK
2Oの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
【0025】
ガラス基材3は、後述の化学強化処理を適切に行うため、そのガラス組成におけるLi
2OとNa
2Oの含有量の合計が12モル%以上であることが好ましい。さらに、ガラス組成におけるLi
2Oの含有率が増加するにしたがって、ガラス転移点が下がり成形が容易となるため、Li
2Oの含有率は0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上がさらに好ましい。さらに、表面圧縮応力(Compressive
Stress;以下、CSとも略す)層および表面圧縮応力層深さ(Depth of
Layer;以下、DOLとも略す)を大きくするため、ガラス組成がSiO
2を60モル%以上、Al
2O
3を8モル%以上含有することが好ましい。
【0026】
さらに、ガラス基材3に着色を行い使用する際は、所望の化学強化特性の達成を阻害しない範囲において着色剤(着色成分)を添加してもよい。着色剤としては例えば、可視域に吸収を持つ、Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Se、Ti、Ce、Er、およびNdの金属酸化物である、Co
3O
4、MnO、MnO
2、Fe
2O
3、NiO、CuO、Cu
2O、Cr
2O
3、V
2O
5、Bi
2O
3、SeO
2、TiO
2、CeO
2、Er
2O
3、Nd
2O
3等が挙げられる。
【0027】
ガラス基材3に着色ガラスを用いる場合、ガラス中に酸化物基準のモル百分率表示で、着色成分(Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Se、Ti、Ce、Er、およびNdの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分)を7%以下の範囲で含有してよい。着色成分が7%を超えると、ガラスが失透しやすくなる。この含量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。また、ガラス基材3は溶融の際の清澄剤として、SO
3、塩化物、フッ化物などを適宜含有してよい。
【0028】
[ガラスの製造方法]
ガラス基材3として使用できる平板状ガラスの製造方法について説明する。先ず、各成分の原料を前述した組成となるように調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、公知の成形法により所定の厚さのガラス板を作製し、徐冷する。ガラスの作製法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法、ダウンドロー法及びロールアウト法が挙げられる。特に、大量生産に適したフロート法が好適である。また、フロート法以外の連続作製法、すなわち、フュージョン法およびダウンドロー法も好適である。任意の作製法により平板状に作製されたガラス板は、徐冷後、所望のサイズに切断され、平板状ガラスが得られる。なお、より正確な寸法精度が必要な場合等には、切断後のガラス板に後述の研磨・研削加工や端面加工、孔あけ加工を施してもよい。これにより、加熱工程などでのハンドリングにおいて割れや欠けを低減でき歩留まりを向上できるようになる。さらにガラス基材3は平板状に限らず、一部に屈曲部を有していてもよい。
【0029】
(凹凸層5)
凹凸層5は、反射光を散乱させ、光源の映り込みによる反射光の眩しさを低減する効果をもたらす層のことである。凹凸層5はガラス基材3自体の少なくとも一方の主面を加工して形成してもよく、少なくとも一方の主面に別途堆積処理方法により形成してもよい。凹凸層の形成方法として、例えば、ガラス基材3の少なくとも一部に化学的処理あるいは物理的処理により表面処理を施し、所望の表面粗さの凹凸形状を形成する方法を使用できる。また、処理液を塗布あるいは噴霧する堆積処理方法や、成形等の熱的処理方法によりガラス基材3の少なくとも一方の主面の少なくとも一部に凹凸形状を形成してもよい。
【0030】
化学的処理として、具体的には、エッチング処理(第1エッチング処理)を施す方法が挙げられる。エッチング処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液やフッ素化水素とフッ化カリウムの混合溶液、フッ化水素と塩化水素との混合溶液等に、被処理体であるガラス基材3を浸漬してエッチングする。
物理的処理として、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉等を加圧空気でガラス基材3の少なくとも一方の主面に吹きつけるいわゆるブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせて、これを用いてガラス基材3の少なくとも一方の主面を研磨する方法等で行われる。
なかでも、化学的処理であるエッチング処理が、ガラス基材3にとって被処理面にマイクロクラックを生じ難く、強度の低下が生じ難いため、好ましく利用できる。
【0031】
さらに、第1エッチング処理したガラス基材3の凹凸層5の表面形状を整えるための第2エッチング処理を行うことが好ましい。第2エッチング処理としては、例えば、ガラス基材3を、フッ化水素の水溶液であるエッチング溶液に浸漬する方法を使用できる。エッチング溶液は、フッ化水素以外にも、塩酸、硝酸、クエン酸などの酸を含有してもよい。エッチング溶液に、これらの酸を含有させることで、ガラスに含有されるNaイオン、Kイオン等の陽イオン成分とフッ化水素との反応による、析出物の局所的な発生を抑制できるほか、エッチングを処理面内で均一に進行させられる。
【0032】
第1および第2エッチング処理を行う場合、エッチング溶液の濃度や、エッチング溶液へのガラス基材3の浸漬時間等を調節することで、エッチング量を調節し、これによりガラス基材3の凹凸層5の凹凸形状を形成させ所望の表面粗さに調整できる。また、凹凸形状の形成を、ブラスト処理等の物理的表面処理で行った場合、クラックが生じることがあるが、エッチング処理によってこのようなクラックを除去できる。
第1および第2エッチング処理において、ガラス基材3表面に無機フッ化物や無機塩化物が残存するようにエッチングし、特にSi、Al、Ca、Mgなどの多価陽イオンの無機フッ化物を形成することが好ましい。
【0033】
堆積処理方法として、公知のウェットコート法(スプレーコート法、静電塗装法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フローコート法、グラビアコート法、バーコート法、フレキソコート法、スリットコート法、ロールコート法)等を使用できる。
【0034】
凹凸層5のガラス転移点(Tg)が、ガラス部材1の厚さ方向断面視中央部におけるガラス転移点以下である。後述の加熱処理(S2)の際に凹凸層5にクラックが生じにくくなり、優れた光学特性を有し、耐摩耗性を示すガラス物品10が得られる。特に後述の成形工程(S2A)において、凹凸層5が柔軟性を有するため、成形時に負荷がかかっても凹凸層5がそれにあわせて変形し、凹凸層のムラなどを抑制でき外観に優れたガラス物品10が得られる。
【0035】
<加熱処理;S2>
ガラス部材1に加熱処理、例えば、成形工程(S2A)やアニール工程(S2B)を実施する。
【0036】
(成形工程;S2A)
図5は加熱処理を成形工程(S2A)において行う製造工程の一例を概略的な手順で示すフローチャートである。成形工程(S2A)では、
図6に示すように、予熱(S2A1)、ガラス部材を成形型などに載置(S2A2)、ガラス部材に所望の形状を付与する変形(S2A3)、所望の形状を付与したガラス部材の冷却(S2A4)を実施する。特に工程の順序に制限はなく、例えば、ガラス部材を載置した後に予熱を実施してよい。予め、ガラス部材1を支持台、下型、アーム等の適宜の支持手段により支持させて、移動できる状態としてもよい。
【0037】
[予熱;S2A1]
ガラス部材1を、例えば、軟化点より低い500℃程度、平衡粘性で10
12.5Pa・s以上10
17Pa・s以下になるまで加熱する。これにより、ガラス部材1を軟化点付近まで急速加熱する場合に発生する割れ等の損傷の発生を未然に防止できる。
【0038】
[載置;S2A2]
予熱(S2A1)した後のガラス部材1を、
図7に示すような成形装置2に移送する。成形装置2はヒータ21と、成形型22と、カバー23と、外型24と、基台25とを備える。ガラス部材1を成形型22上に移動又は搬送し、ガラス部材1のいずれか一方の主面もしくは端面と接触させるように成形型22に載置する。その後、必要に応じてカバー23で成形型22の周囲を覆うなどの準備をする。なお、予熱前にガラス部材1を成形装置2内に載置してもよく、特に制限はない。
【0039】
ヒータ21は、例えば、カバー23の上方に所定の距離を有して配置される。ヒータ21は、例えばシーズヒータ等の輻射ヒータを使用できるが特に制限はない。ヒータ21は、カバー23の外側から輻射熱を放射して、カバー23を加熱し、カバー23の内側に配置されたガラス部材1を、カバー23の蓄熱により間接的に加熱し、軟化点以上の温度もしくは平衡粘性で10
12.5Pa・s以上10
17Pa・s以下になるまで加熱する。
【0040】
成形型22は、ガラス部材1の第2の主面3bを所望の形状に成形する成形面を有する。つまり、成形型22の成形面には、所望のデザインを有するガラス物品10を得るためのデザイン面を有する。成形型22の材質はステンレス鋼等の耐酸化性のある金属板、ヒューズドシリカガラスなどのガラス、セラミック、カーボンが好ましく、ヒューズドシリカガラスなどのガラスおよびカーボンがより好ましい。ヒューズドシリカは高温かつ酸化雰囲気での耐性が高く、また接触するガラス部材1に欠点を形成しにくく、傷の少ない表面のガラス物品10が得られる。カーボンは熱伝導率が高くガラス物品10を効率的に生産できる。なお、成形型22の成形面には金属や酸化物、カーボン等の被膜が形成されていてもよい。
【0041】
成形型22を覆うカバー23は、成形型22の周辺をクリーンに維持する上で有効であり、例えば、ステンレス鋼等の金属板とできる。また、ガラスやガラスセラミック等の材料でもよく、成形型22の材料と同じ組成の材料であってもよい。
【0042】
外型24は、成形型22の外周を包囲するように配置されてもよく、ガラス部材1の位置合わせをするための突き当てなどとして使用されてもよい。外型24の材質は成形型22やカバー23と同じ組成の材料であってよい。
【0043】
基台25は、基台上面に成形型22が載置される。基台25の内部は、成形型22に載置されたガラス部材1を成形面に吸着させる吸引路が形成されてもよい。基台25の材質はステンレス鋼等の金属板、ガラスやセラミック等使用でき、成形型22やカバー23と同じ組成の材料であってよい。
【0044】
[変形;S2A3]
ガラス部材1を成形型22等に載置(S2A2)した後、ヒータ21により、カバー23の内側に配置されたガラス部材1を、例えば、700〜750℃の軟化点以上の温度、平衡粘性で10
6.5〜10
12.5Pa・sとなるように加熱する。これにより加熱されたガラス部材1は、後述の変形手段により変形し、屈曲部を有する屈曲ガラスとするなど、所望の形状が付与される。変形時にガラス部材1の平衡粘性が10
6.5Pa・s未満とすると、ガラス部材1に形成された凹凸層5が所望の形状を維持しにくくなり、最終的に得られるガラス物品の光学特性を制御しにくくなる。なお、最終的に得られるガラス物品10が良好な光学品質を有し、所望のデザイン寸法からのガラス物品10の形状偏差を小さくするには、平衡粘性としては、10
7〜10
10Pa・sがより好ましい。また、温度の制御は、ガラス部材1と成形型22とが非接触である面で実施する。さらに、温度制御するガラス部材1の、成形型22との非接触面に凹凸層5を備えることが好ましい。ガラス転移点Tgの低い凹凸層5の温度制御をすることで、所望の防眩層50を形成しやすくなる。
【0045】
使用できる変形手段は、自重成形法、差圧成形法(真空成形法)、プレス成形法などから、最終的に得たいガラス物品10の形状に応じて所望の成形法を選択すればよい。
自重成形法は、ガラス物品10の形状に応じた所定の成形型22上にガラス部材1を載置した後、ガラス部材1を軟化させて、重力によりガラス部材1を曲げて成形型22になじませて、所定の形状に成形する方法である。
【0046】
差圧成形法は、ガラス部材1を軟化させた状態でガラス部材1の表裏面に差圧を与えて、ガラス部材1を曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。差圧成形法の一態様である真空成形法では、ガラス物品10の形状に応じた所定の成形型22上にガラス部材1を設置し、ガラス部材1上にクランプ金型などの上型を設置し、ガラス部材1の周辺をシールした後、成形型22とガラス部材1との空間をポンプで減圧することにより、ガラス部材1の表裏面に差圧を与える。この際に、補助的に、ガラス部材1の上面側を加圧してもよい。
【0047】
プレス成形は、ガラス物品10の形状に応じた所定の金型(成形型22、上型)間にガラス部材1を設置し、ガラス部材1を軟化させた状態で、上下の金型間にプレス荷重を加えて、ガラス部材1を曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
これらのうち真空成形法や自重成形は、ガラス物品10の所定の形状に成形する方法として優れており、ガラス物品10の二つの主面のうち、一方の主面は成形型と接触せずに成形できるため、傷、へこみなどの凹凸状欠点を減らせる。また後者では、変形における処理温度が比較的に低温とでき、ガラス部材1上の凹凸層5が機能しないような損傷を抑制できる。
なお、他に、局所加熱成形法、真空成形法と異なる差圧成形法なども使用でき、成形後のガラス物品10の形状に応じて、適切な成形法を選択すればよく、2種以上の成形法を併用してもよい。
【0048】
変形における加熱の方法として、輻射加熱または対流加熱を利用することが好ましい。
輻射加熱とは、被加熱体がヒータ等の熱源から放射されるエネルギーを吸収することにより加熱される手法である。これによりガラス物品10を量産する際に、加熱−冷却サイクルの短縮化を実現できるため、変形のタクトタイムの短縮化を実現でき、結果としてガラス物品10の生産効率を向上できる。
対流加熱とは、被加熱体が雰囲気の気体の対流により加熱される手法である。これにより、ガラス部材1の面内温度分布を均一化でき、最終的に得られるガラス物品10上の防眩層50の構造制御をしやすくなり、結果としてガラス物品10の生産効率を向上できる。
【0049】
得られたガラス物品10の曲げ深さとして、1000mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましく、300mm以下がさらに好ましい。凹凸層5にクラックを生じさせず、最終製品としての所望の特性を備える防眩層50を有するガラス物品を得られる。
【0050】
得られたガラス物品10の屈曲部の平均曲率半径として、5mm以上5000mm以下が好ましく、100mm以上3000mm以下がより好ましい。凹凸層5に過剰な負荷がかかる成形工程(S2A)を実施しても凹凸層5のムラの無い外観に優れたガラス物品10が得られる。
【0051】
[冷却;S2A4]
ガラス部材1を変形(S2A3)後、凹凸層5の表面形状が変化して得られた防眩層50を有するガラス物品10を取り出すため、室温程度といったハンドリングできるような温度まで冷却する。
【0052】
以上、成形工程(S2A)を終え、ガラス物品取出(S3)を実施し、所望の形状が付与された本実施形態のガラス物品10が得られる。エッチングにより形成された微細孔や、堆積処理で凹凸層5を形成した際に使用した溶媒や有機物を焼成して残留した残留空隙が、成形工程(S2A)により緻密化され、優れた耐擦傷性を示すようになる。一般的には、ガラス基材3を変形した後にエッチングすることが考えられるが、前記の理由から耐擦傷性を示さない。さらには、ガラス基材3を変形した後にエッチングした場合には、その基材の複雑性のため、均一な凹凸層5を形成できず光学特性を得られない。本発明で得られたガラス部材1は、耐擦傷性を有するだけでなく、優れた均一な光学的特性を有する。
なお、このガラス物品10に後述のアニール工程(S2B)を実施してよく、その場合には、このガラス物品10をガラス部材1として使用すればよい。またその際には、変形(S2A3)後に冷却(S2A4)を実施せずに、後述のアニール工程(S2B)を実施してよい。
【0053】
(アニール工程;S2B)
図8は加熱処理をアニール工程(S2B)において行う製造工程の一例を概略的な手順で示すフローチャートである。アニール工程(S2B)では、
図9に示すように、所望の温度まで昇温(S2B1)、ガラス部材を所望の温度で保持する保温(S2B2)、保温(S2B2)したガラス部材を徐々に冷却する徐冷(S2B3)を実施する。予め、ガラス部材1を支持台、成形型、アーム等の適宜の支持手段により支持させて、昇温(S2B1)、保温(S2B2)、徐冷(S2B3)のそれぞれの処理ステージを移動できる状態としてもよい。
【0054】
なお、アニールは、ガラス部材1内の残留ひずみや残留応力を除去できる効果を有する。ガラス部材1に成形工程(S2A)で所望の形状を付与した場合、大きな残留応力が発生する。残留応力のあるガラス部材1では、強化処理が不均一となる等の不都合が生じる。特に車載用表示パネルに使用する前面板のように、車内空間に適した形状となるように変形した大型で厚さの薄いガラスや複雑形状のガラスでは、ガラス内に残留応力が残りやすい。この残留応力の影響により強化処理が不均一となり強度のバラツキが発生するだけでなく、これによる光学的な歪も発生しやすくなる。そこで、ガラス部材1をアニールすることで残留ひずみを除け、均質なガラスが得られる。
【0055】
アニール工程における加熱の方法として、輻射加熱または対流加熱を利用することが好ましい。輻射加熱を使用すると、ガラス物品10を量産する際に、加熱−冷却サイクルの短縮化を実現できるため、アニール工程におけるタクトタイムの短縮化を実現でき、結果としてガラス物品10の生産効率を向上できる。対流加熱を使用すると、ガラス部材1の面内温度分布を均一化でき、最終的に得られるガラス物品10の面内応力を均一に除去でき、結果として個体差の少ないガラス物品10の生産を実現できる。なお、輻射加熱と対流加熱との両者を同時に使用してもよい。
【0056】
[昇温;S2B1]
昇温では、ガラス部材1の平衡粘性が10
12.5〜10
17Pa・sになるように加熱することが好ましい。アニール工程における所望のアニール温度としては、例えば550℃程度が好ましい。
【0057】
[保温;S2B2]
保温では、アニール温度に加熱されたガラス部材1を、例えば、10〜60分保持することが好ましい。これはクリープ変形を抑制しつつ室温まで冷却できるためである。場合により、昇温での加熱温度より保温温度を低く設定して保温を実施してもよい。なお、「クリープ変形」とは、例えば、ガラス部材1の平衡粘性が10
12.5〜10
17Pa・sになるように加熱し保持したとき、時間経過とともにガラス部材の形状が変形する現象を示す。
【0058】
[徐冷;S2B3]
徐冷では、例えば、ガラス部材の降温速度は0.3〜10℃/分が好ましく、0.3〜5℃/分がより好ましい。これによりガラス部材内に温度分布を生じなくなり、温度分布による残留応力の発生を抑制できる。徐冷の終点は、例えば、ガラス部材が室温となるまでであり、平衡粘性としては10
17.8Pa・s以上である。
【0059】
以上、アニール工程(S2B)を終え、ガラス物品取出(S3)を実施することで、所望の形状が付与された本実施形態のガラス物品10が得られる。
【0060】
上記の加熱処理(S2)によれば、凹凸層5がわずかに変化し、密度の高い防眩層50が得られる。通常、ガラス部材準備(S1)において凹凸層5を形成した際に、凹凸層5が低密度となっている。これはエッチングにより形成された微細孔や、堆積処理で凹凸層5を形成した際に使用した溶媒や有機物を焼成して残留した残留空隙が形成されるためである。これら低密度の凹凸層5を有するガラスを使用すると、凹凸層5が摩耗しやすく耐摩耗性などの耐久性が不足する。本実施形態における加熱処理(S2)を実施することで、凹凸層5の密度が改善され耐摩耗性などの耐久性がある防眩層50が得られる。
【0061】
<ガラス物品10>
図10に本実施形態であるガラス物品10の断面模式図を示す。ガラス物品10は、第1の主面10aと、第2の主面10bと、端面10cとを備え、少なくともいずれかの主面には後述のような防眩層50を有する。また、少なくともいずれかの主面のうち少なくとも一部に防眩層50を有してもよい。またガラス物品10は、少なくともいずれかの主面に屈曲部を有していてもよい。
【0062】
[防眩層50]
防眩層50を有するガラス物品10は、前述の通り、凹凸層5が形成されたガラス部材1に加熱処理(S2)を実施して得られる。
【0063】
防眩層50の表面に、画像処理面におけるベアリング高さ+0.01μmの高さでの断面における平均直径(真円換算)が0.4μm以上1.1μm以下となる凸部を有する。これにより強度の高い凸部となるため、防眩層50が高い耐摩耗性を発現する。前記凸部の平均直径(真円換算)は0.4μm以上1μm以下がより好ましい。
【0064】
防眩層50は、面の偏り度Sskが0未満である。Sskが0未満であるということは、防眩層50の表面がスプーンカット形状の凹凸であることを示している。Sskが0未満の範囲において、できるだけ大きい(0に近い)方が、凹凸がなだらかになっていることを示すため、防眩層50の耐摩耗性が向上する。面の偏り度Sskは−1.2以上0未満であることが好ましい。これは光学特性と耐擦傷性の両立をより実現できる。
【0065】
防眩層50は、面の算術平均高さSaが0.06μm以下である。Saをこの範囲にすることで防眩層50の耐摩耗性が向上する。防眩層50は、面の算術平均高さSaは、0.01μm以上0.06μm以下がより好ましく、0.02μm以上0.06μm以下がさらに好ましい。Saがこれより大きい値であると、局所的に高い凸部が増え、摩擦時に局所的に摩耗が進みやすくなるため、耐擦傷性が極端に悪くなる。グロス値が小さくなるほどSaは大きくなる傾向にあるが、同じグロス値であれば、Saが小さい方が耐擦傷性は有利となる。
【0066】
防眩層50のガラス転移点Tgは、ガラス物品10の厚さ方向断面視中央部におけるガラス転移点Tg
0以下である。加熱処理(S2)の際に防眩層50にクラックが生じにくく、優れた光学特性を有し、耐摩耗性を示すガラス物品10が得られる。ガラス転移点の差(Tg
0−Tg)は、3℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、7℃以上がさらに好ましい。上限値は特に制限はないが、20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましい。
【0067】
防眩層50の軟化点Tmは、ガラス物品10の厚さ方向断面視中央部における軟化点Tm
0以下であることが好ましい。加熱処理(S2)の際に防眩層50にクラックが生じにくく、優れた光学特性を有し、耐摩耗性を示すガラス物品10が得られる。軟化点の差(Tm
0−Tm)は、3℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。上限値は特に制限はないが、100℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移点Tgは、JIS−R3103−3(熱膨張法による転移温度測定方法)により、軟化点Tmは、JIS−R3103−1(ガラスの軟化点試験方法)により測定される。ガラス転移点Tgの測定には、例えば、真空理工株式会社製縦型熱膨張計(DL−9500型、押棒式)を使用できる。
【0068】
Siと、Al、B、Zr、Tiからなる群より選ばれる元素Xの原子組成比ZをX/Siとすると、防眩層50における原子組成比Z
1とガラス物品10の厚さ方向断面視中央部における原子組成比Z
0との比Z
1/Z
0が、0.9〜1.1となることが好ましい。これにより後述の反射防止層などを堆積しても光学的異質層となりにくく、優れたガラス物品10が得られる。
【0069】
アルカリ金属組成比{K/(Li+Na+K)}(原子組成比)が、ガラス物品10の厚さ方向断面視中央部に比べ、防眩層50の方が大きくなることが好ましい。これにより、防眩層50の耐摩耗性を高められ、また屈折率をガラス物品10の厚さ方向断面視中央部にくらべ低減でき、反射防止効果が得られる。
【0070】
防眩層50には、無機フッ化物や無機塩化物など、フッ素原子(F)または塩素原子(Cl)が含まれることが好ましい。これにより、防眩層50のTgを低減できる。また親水性が得られるため、防眩層50の最表面が汚れても水洗しやすい。特に親水性が高いことから無機フッ化物が好ましく、Si、Al、Ca、Mgなどの多価陽イオンの無機フッ化物が特に好ましい。
【0071】
以上より、所望の防眩性を示し耐摩耗性に優れた凸部を備えた防眩層50を有するガラス物品10が得られる。
【0072】
<用途>
本発明のガラス物品10の用途としては、特に限定されない。具体例としては、車載用部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板、インスツルメントパネル表面、車載用ディスプレイ前面板等。)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、建築用内装部材、建築用外装部材、前面板(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、CCD用カバー基板、太陽電池用透明基板(カバーガラス等。)、携帯電話窓、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、照明ランプ、照明器具のカバー、反射防止フィルム、偏光フィルム等が挙げられる。
【0073】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良ならびに設計の変更等が可能であり、その他、本発明の実施の際の具体的な手順、及び構造等は本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【0074】
ガラス物品10の防眩層50の最表面における60゜鏡面光沢度は、15%以上140%以下が好ましく、40%以上130%以下がより好ましい。ガラス物品の防眩層の最表面における60゜鏡面光沢度は、防眩効果の指標であり、60゜鏡面光沢度が130%以下であれば、防眩効果が充分に発揮される。
【0075】
ガラス物品10の防眩層50の最表面における線の算術平均粗さRaは、0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上0.7μm以下がより好ましく、0.07μm以上0.5μm以下がさらに好ましい。ガラス物品10の防眩層50の最表面の算術平均粗さRaが0.03μm以上であれば、防眩効果が充分に発揮され、0.7μm以下であれば、画像のコントラストの低下が充分に抑えられる。
【0076】
ガラス物品10の防眩層50の最表面の最大高さ粗さRzは、0.2μm以上5μm以下が好ましく、0.3μm以上4.5μm以下がより好ましく、0.5μm以上4μm以下がさらに好ましい。ガラス物品10の防眩層50の最表面の最大高さ粗さRzが0.2μm以上であれば、防眩効果が充分に発揮され、5μm以下であれば、画像のコントラストの低下が充分に抑えられる。
【0077】
ガラス物品10の平坦部のヘイズ値は、0.1%以上50%以下が好ましく、0.1%以上30%以下がより好ましく、0.1%以上20%以下がさらに好ましい。ヘイズ値が0.1%以上であれば、防眩効果が発揮され、ヘイズ値が50%以下であれば、ガラス物品10を前面板や各種フィルタとして画像表示装置本体の視認側に設けた場合に、画像のコントラストの低下が充分に抑えられる。
【0078】
ガラス物品10の屈曲部のヘイズ値は、0.1%以上50%以下が好ましく、0.1%以上30%以下がより好ましく、0.1%以上20%以下がさらに好ましい。ヘイズ値が0.1%以上であれば、防眩効果が発揮され、ヘイズ値が50%以下であれば、ガラス物品10を前面板や各種フィルタとして画像表示装置本体の視認側に設けた場合に、画像のコントラストの低下が充分に抑えられる。
【0079】
ガラス物品10が
図10(b)のような平坦部と屈曲部を有する場合には、反射像拡散性指標値Rの比(屈曲部の反射像拡散性指標値R/平坦部と屈曲部の反射像拡散性指標値Rの和)は0.3〜0.8が好ましく、0.4〜0.7がより好ましく、0.4〜0.6がさらに好ましい。高ヘイズ値の場合には光の散乱により白味が強くなり陰影が付きやすく目視による外観の均一性に影響がでる。反射像拡散性指標値Rの比が前記の範囲であれば目視での外観均一性が陰影により影響を受けにくく優れた外観となる。
【0080】
ガラス物品10は、ヘイズ値の面内の標準偏差が0〜10%であることが好ましく、0〜6%であることがより好ましい。この範囲であれば、使用者側からガラス物品を視認した際に、均質な防眩層であるように視認でき、美観性に優れる。また、防眩層の凹凸によるタッチ感も損なわない。また、車載用表示パネルの前面板としてガラス物品10を使用した際には、運転席から視認したときの画像均質性が得られ、快適な操作性を実現できる。
【0081】
ガラス物品10は、ギラツキ指標値Sの面内の標準偏差が0〜10%であることが好ましく、0〜6%であることがより好ましい。この範囲であれば、液晶等の表示画面を違和感なく視認できる。また、車載用表示パネルの前面板としてガラス物品10を使用した際には、運転席から視認したときの画像均質性が得られ、快適な操作性を実現できる。
【0082】
ガラス物品10は、解像度指標値Tの面内の標準偏差が0〜10%であることが好ましく、0〜6%であることがより好ましい。この範囲であれば、液晶等の表示画面を違和感なく視認できる。また、車載用表示パネルの前面板としてガラス物品10を使用した際には、運転席から視認したときの画像均質性が得られ、快適な操作性を実現できる。
【0083】
またガラス部材1やガラス物品10(以下、被加工物と記載)に以下の工程・処理がなされてもよい。
(研削・研磨加工)
被加工物の少なくとも一方の主面を研削・研磨加工を実施してもよい。
【0084】
(孔あけ加工)
被加工物の少なくとも一部に孔を形成してもよい。孔は被加工物を貫通していても、貫通していなくてもよい。孔あけ加工は、ドリルやカッタなどの機械加工でも、フッ酸などを使用したエッチング加工でもよく、特に制限はない。
【0085】
(端面加工)
被加工物の端面は、面取加工などの処理がなされていてもよい。被加工物がガラスの場合、機械的な研削により一般的にR面取、C面取と呼ばれる加工を行うのが好ましいが、エッチングなどで加工を行ってもよく、特に限定されない。また、ガラス部材を予め端面加工してから加熱処理を経てガラス物品としてもよい。
【0086】
(強化処理)
被加工物に表面圧縮応力層を形成する強化処理方法として、物理強化法や化学強化法が利用できる。ガラス主面が強化処理された被加工物は、機械的強度が高くなる。本構成においては、いずれの強化手法を採用してもよいが、厚みが薄くかつ表面圧縮応力(CS)値が大きなガラスを得る場合には、化学強化法によって強化するのが好ましい。
強化処理工程は、ガラス物品取出(S3)後に実施することが好ましい。
【0087】
[化学強化法]
化学強化法においては、450℃弱の溶融塩で、被加工物であるガラスの主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはLiイオンに対してはNaイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換することで、ガラス表面に表面圧縮応力層を形成する処理である。化学強化処理は従来公知の方法によって実施でき、一般的には硝酸カリウム溶融塩にガラスを浸漬する。この溶融塩に炭酸カリウムを10質量%程度入れて使用してもよい。これによりガラスの表層のクラックなどを除去でき高強度のガラスが得られる。化学強化時に硝酸カリウムに硝酸銀などの銀成分を混合することで、ガラスがイオン交換され銀イオンを表面に有し抗菌性を付与できる。また、化学強化処理は1回に限らず、例えば異なる条件で2回以上実施してもよい。
【0088】
被加工物は少なくとも一方の主面に表面圧縮応力層が形成されており、その表面圧縮応力(CS)値は、500MPa以上が好ましく、550MPa以上がより好ましく、600MPa以上がさらに好ましく、700MPa以上が特に好ましい。表面圧縮応力(CS)が高くなると強化ガラスの機械的強度が高くなる。一方、表面圧縮応力(CS)が高くなりすぎるとガラス内部の引張応力が極端に高くなるため、表面圧縮応力(CS)は1800MPa以下が好ましく、1500MPa以下がより好ましく、1200MPa以下がさらに好ましい。
【0089】
被加工物の主面に形成される表面圧縮応力層の深さ(DOL)は、5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。一方、DOLが大きくなりすぎるとガラス内部の引張応力が極端に高くなるため、表面圧縮応力層の深さ(DOL)は70μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、典型的には30μm以下である。
【0090】
被加工物の主面に形成される表面圧縮応力(CS)値及び表面圧縮応力層の深さ(DOL)は、表面応力計(折原製作所社製、FSM−6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察して求められる。FSM−6000の測定光源としては、例えば波長589nmや790nmのものが使用できる。なお、表面圧縮応力は複屈折を利用した測定も可能である。光学的評価が難しい場合は、3点曲げ等の機械的強度評価を利用した推定も可能である。また、被加工物の内部に形成される引張応力(CT;単位MPa)は、上記で測定した表面圧縮応力(CS;単位MPa)及び表面圧縮応力層の深さ(DOL;単位μm)を用い、以下の式によって算出できる。
【0091】
CT={CS×(DOL×10
−3)}/{t−2×(DOL×10
−3)}
なお、t(単位mm)はガラスの板厚である。
【0092】
なお、強化処理を行った後に、被加工物を洗浄してもよい。例えば、洗浄として水洗の他、酸処理、アルカリ処理、アルカリブラシ洗浄を実施してもよい。
【0093】
(機能層処理)
被加工物について必要に応じて各種機能層を形成してもよい。機能層としては、反射防止処理層、防汚処理層などが挙げられ、これらを併用してもよい。被加工物の第1の主面又は第2の主面のいずれの面でもよい。これらは得られたガラス物品10に形成されることが好ましく、強化処理工程後に形成されることがより好ましい。
【0094】
[反射防止処理層]
反射防止処理層とは反射率低減の効果をもたらし、光の映り込みによる眩しさを低減するほか、表示装置に使用した場合には、表示装置からの光の透過率を向上でき、表示装置の視認性を向上できる層のことである。
反射防止処理層が反射防止膜である場合、被加工物の第1の主面または第2の主面に形成されることが好ましいが制限は無い。反射防止膜の構成としては光の反射を抑制できれば限定されず、例えば、波長550nmでの屈折率が1.9以上の高屈折率層と屈折率が1.6以下の低屈折率層とを積層した構成、もしくは膜マトリックス中に中空粒子や空孔を混在させた波長550nmでの屈折率が1.2〜1.4の層を含む構成としてよい。
【0095】
[防汚処理層]
防汚処理層とは表面への有機物、無機物の付着を抑制する層、または、表面に有機物、無機物が付着した場合においても、ふき取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる効果をもたらす層のことである。
防汚処理層が防汚膜として形成される場合、被加工物の第1の主面と第2の主面上またはその他表面処理層上に形成されることが好ましい。防汚処理層としては、防汚性を付与できれば限定されない。中でも含フッ素有機ケイ素化合物を加水分解縮合反応により得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなることが好ましい。
【0096】
(印刷層形成)
印刷層は、用途に応じて種々の印刷方法、インキ(印刷材料)により形成されて良い。印刷方法としては、例えば、スプレー印刷、インクジェット印刷やスクリーン印刷を利用できる。これらの方法により、面積の広い被加工物でも良好に印刷できる。特に、スプレー印刷では、屈曲部を有する被加工物に印刷しやすく、印刷面の表面粗さを調整しやすい。一方、スクリーン印刷では、広い被加工物に平均厚さが均一になるように所望の印刷パターンを形成しやすい。また、インキは、複数使用してよいが、印刷層の密着性の観点から同一のインキであるのが好ましい。印刷層を形成するインキは、無機系でも有機系であってもよい。
【実施例】
【0097】
本発明の実施例について説明する。例1〜4は実施例、例5および例6は比較例である。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
[板の準備]
ガラス基材には、厚さ0.7mm、主面が300mm×300mmの四角形である板状ガラス(ドラゴントレイル(登録商標)、旭硝子社製)を用いた。以下、当該ガラス基材の一方の主面を第1の主面、他方の主面を第2の主面と称する。
ガラス基材に(1)凹凸層形成、(2)端面の研削処理を行い、ガラス部材を作製した。
【0099】
[ガラス部材]
(1)凹凸層形成
ガラス基材の第1の主面に以下の手順で、フロスト処理により凹凸層を形成した。
まず、耐酸性の保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」という)を、ガラス基材の凹凸層を形成しない側の主面(第2の主面)に貼合した。このガラス基材を3質量%のフッ化水素水溶液に浸漬し、ガラス基材をエッチングし第1の主面に付着した汚れを除去した。続いてガラス基材を15質量%フッ化水素、15質量%フッ化カリウムの混合水溶液に浸漬し、第1の主面にフロスト処理を施した。その後、ガラス基材を10質量%フッ化水素水溶液に浸漬することで第1の主面にフッ化物が残るように凹凸層を形成し、凹凸層を有するガラス部材とした。なお、ガラス転移点Tgは、ガラス部材の厚さ方向断面視中央部において593℃、凹凸層において583〜586℃となった。ガラス部材として、例1〜6はヘイズ値を約7.1%で60°鏡面光沢度(グロス値)107%となるように調整した。
【0100】
(2)端面の研削処理
前記ガラス部材を100mm×100mmの大きさに切断した。その後、ガラス基材の全周にわたってガラスの端面から0.2mmの寸法でC面取りを行った。面取りは600番の砥石(東京ダイア社製)を用い、砥石の回転数が6500rpm、砥石の移動速度が5000mm/分で処理した。これにより端面の表面粗さが450nmとなった。
【0101】
得られたガラス部材を成形型上に(3)載置し、(4)予熱・変形・冷却を実施し、ガラス物品を作製した。
【0102】
[ガラス物品]
(3)載置
図7に示すような成形型22を使用し、単曲面構造のZ軸方向に曲率半径500mmとなるデザイン面が形成されていた。成形型22の材料としてはカーボンを使用した。
図7に示すように前記第2の主面を下方として表1に示す例1〜4のガラス部材を載置した。
【0103】
(4)予熱・変形・冷却
前記載置後、ガラス部材と成形型全体を予熱・変形・冷却を行った。予熱では室温から所望の温度まで昇温し、変形では所望の温度で保持し、冷却では徐冷温度まで降温した後に室温まで放冷した。それぞれの温度条件・時間条件は表1に示す通りである。なお、変形は680℃で実施し、平衡粘性として10
9Pa・s程度とした。その後、室温まで冷却した。表1に示す条件にて例1〜4のガラス部材を処理し、それぞれの防眩層を有するガラス物品を作製した。なお、温度条件は第1の主面において制御した。なお、例5および6は予熱・変形・冷却を実施していない非加熱ガラスである。
【0104】
【表1】
【0105】
[サンドペーパーによる耐摩耗性試験]
底面が10mm×10mmである平面金属圧子にサンドペーパーを装着してサンプルを擦る摩擦子とした。次に、前記摩擦子を用い、平面摩耗試験機3連式(大栄科学精器製作所製)にて耐摩耗性試験を行った。具体的には、上記圧子の底面がサンプルの凹凸層または防眩層に接触するように摩耗試験機に取り付け、摩擦子への加重が1000gとなるように重りを載せ、平均速さ3200mm/分、片道40mmで往復摺動した。往復1回で擦り回数2回として試験を行い、擦り回数100回終了後の試験サンプルについてヘイズ値、グロス値の測定を行った。サンプルとして例1〜4のガラス物品および例5および6の非加熱ガラスを使用した。
【0106】
例1〜4のガラス物品について、変形後のヘイズ値、グロス値、ガラス物品に対する耐摩耗試験前後におけるグロス値およびヘイズ値の変化量および変化率、耐摩耗性試験前の表面形状観察結果を、例5および6の非加熱ガラスについて、耐摩耗試験前後におけるグロス値およびヘイズ値の変化量および変化率、耐摩耗性試験前の表面形状観察結果を、表2に示す。
表面形状の解析項目として、凸部の平均直径、Sa、Sskを求めた。結果を表2に示す。また、凸部の平均直径と耐摩耗試験前後でのグロス変化率を
図11に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
例1〜4において、加熱後のグロス値の変化は、加熱前のガラス物品のグロス値の変化量として+12%以内、変化率として+11%以内である。
また、
図11に示すように、耐摩耗試験前後のガラス物品のグロス値の変化率は、凸部の平均直径が小さくなるほど減少しており、1.1μm以下で急激に耐摩耗性が向上していることがわかる。
凸部直径は、「画像処理面」においてベアリング高さ+0.01μmの高さで切った凸部断面を円に換算したときの直径を平均したものであり、凸部の平均直径が減少するということは、表面の微細な凸部の急峻性が低減したことを意味し、加熱処理によってガラス物品表面の凹凸形状の急峻性が熱により低減する方向に変形したことで耐摩耗性が向上したと考えている。
以上のように、本発明によれば防眩性などの視認性に優れ、耐摩耗性の高いガラス物品が得られた。
【0109】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。