特許第6866918号(P6866918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866918
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】好気性生物処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20210419BHJP
   C02F 3/08 20060101ALI20210419BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C02F3/12 A
   C02F3/08 B
   B01D63/02
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-223738(P2019-223738)
(22)【出願日】2019年12月11日
(62)【分割の表示】特願2018-25233(P2018-25233)の分割
【原出願日】2018年2月15日
(65)【公開番号】特開2020-37111(P2020-37111A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀樹
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0020666(US,A1)
【文献】 特開2000−189742(JP,A)
【文献】 実開平06−034785(JP,U)
【文献】 特開昭64−090093(JP,A)
【文献】 特開平05−068996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44、3/00−34
B01D 53/22、61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水が通水される反応槽と、
該反応槽内に通気方向が上下方向となるように設置された酸素溶解膜を有する酸素溶解膜モジュールと、
該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、
酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを反応槽外に排出する排ガス配管と、
酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管と
を備えてなり、
凝縮水を酸素溶解膜モジュールの下端より低い(複数モジュールを使用の場合は各モジュールの下端の中でも最も下位のものより低い)位置へ排出し、酸素溶解膜モジュールから排出された凝縮水を反応槽外に排出するよう設けられている有機性排水の好気性生物処理装置
であって、
前記酸素溶解膜が中空糸膜であり、
前記排ガス配管と排水配管とを兼ねる排出配管29が設けられると共に、該排出配管29を反応槽内または反応槽外で分岐させて排ガス配管30が設けられていることを特徴とする好気性生物処理装置
【請求項2】
前記排ガス配管30はその末端の排気部が前記酸素溶解膜モジュールの下端より高い位置に配置され、かつ下り勾配を有さないことを特徴とする請求項1に好気性生物処理装置
【請求項3】
前記排水配管は鉛直下向き又は下り勾配を有するように設けられている請求項1又は2の有機性排水の好気性生物処理装置。
【請求項4】
前記排水配管から流出する凝縮水を受け入れるタンクと、該タンク内の水を前記反応槽へ送水するポンプとを備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの有機性排水の好気性生物処理装置。
【請求項5】
前記排水配管にバルブが設けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかの有機性排水の好気性生物処理装置。
【請求項6】
酸素溶解膜モジュールは非多孔質の酸素溶解膜を備えている請求項1ないしのいずれかの有機性排水の好気性生物処理装置。
【請求項7】
酸素溶解膜が疎水性である請求項に記載の有機性排水の好気性生物処理装置。
【請求項8】
反応槽内に流動床担体が充填されている請求項1ないしのいずれかの有機性排水の好気性生物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の好気性生物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
好気性生物処理方法は安価であるため有機性廃水の処理法として多用されている。本方法では、被処理水への酸素の溶解が必要であり、通常は散気管による曝気が行われている。
【0003】
散気管による曝気は溶解効率が5〜20%程度と低い。また、散気管の設置される水深にかかる水圧以上の圧力で曝気することが必要であり、高圧で多量の空気を送風するため、ブロワの電力費が高い。通常は、好気性生物処理における電力費の2/3以上が酸素溶解のために使用されている。
【0004】
中空糸膜の外側に生物膜を付着させ、内側から酸素を供給することで好気性生物処理を行うメンブレンエアレーションバイオリアクター(MABR)は、気泡の発生なしで酸素溶解できる。MABRでは、水深にかかる水圧よりも低い圧力の空気を通気すればよいため、ブロワの必要圧力が低く、また、酸素の溶解効率が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−87310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MABRにおいては、反応槽からの水蒸気の浸透や通気ガス中の水蒸気の凝縮によって、酸素溶解膜内部に凝縮水が生成し、ガス流路や中空糸膜の一部が閉塞し、通気効率が低下するという問題があった。
【0007】
即ち、MABRの中空糸膜に通気する空気量は少なく、通常使用される中空糸酸素溶解膜では中空糸内の空気流速は1mm/sec以下と極めて遅い。そのため、一部の中空糸内にわずかな凝縮水が入り込むだけで、他の中空糸と大きな圧力差が生じ、ガスの流れが止まってしまう。凝縮水が多量にヘッダー管にたまると、多量の凝縮水が中空糸内に入り込み、多くの中空糸が通気不能になり、酸素溶解効率が大きく低下する。
【0008】
特許文献1では、多数の中空糸膜を上下方向に配列し、各中空糸膜に下側からコンプレッサで空気を供給している。仮にこの特許文献1のMABRにおいて凝縮水を空気圧によって中空糸膜外へ排出しようとした場合には、コンプレッサとして反応槽の水圧以上の高圧力のものが必要なうえに、電力消費量が著しく多くなる。
【0009】
本発明は酸素溶解膜内から凝縮水が容易に排出され、高い酸素溶解効率を長期間維持することができる好気性生物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好気性生物処理装置は、反応槽と、該反応槽内に通気方向が上下方向となるように設置された酸素溶解膜モジュールと、該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、酸素溶解膜モジュールから排ガスを槽外に排出する排ガス配管と、酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管とを備えてなる。
【0011】
本発明の一態様では、凝縮水を酸素溶解膜モジュールの下端より低い(複数モジュールを使用の場合は各モジュールの下端の中でも最も下位のものより低い)位置へ排出し、酸素溶解膜モジュールから排出された凝縮水を槽外に排出するよう設けられている。
【0012】
本発明の一態様では、前記排水配管は鉛直下方向又は下り勾配を有するように設けられている。
【0013】
本発明の一態様では、排水配管の内径は50mm以下であり、その末端は酸素溶解膜モジュールの上端より高い位置に配置される。
【0014】
本発明の一態様では、前記排水配管から流出する凝縮水を受け入れるタンクと、該タンク内の水を前記反応槽へ送水するポンプとを備える。
【0015】
本発明の一態様では、前記排水配管にバルブが設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、酸素溶解膜モジュールは非多孔質の酸素溶解膜を備えている。
【0017】
本発明の一態様では、酸素溶解膜が疎水性である。
【0018】
本発明の一態様では、反応槽内に流動床担体が充填されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の好気性生物処理装置では、酸素溶解膜モジュールに上下方向に通気するとともに、酸素溶解膜モジュールの凝縮水を排水配管を介して反応槽外部へ排出するので、酸素溶解膜から凝縮水が速やかに反応槽外へ排出される。そのため、酸素溶解膜の酸素溶解効率を常に高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る生物処理装置の縦断面図である。
図2】(a)は酸素溶解膜ユニットの側面図、(b)は酸素溶解膜ユニットの斜視図である。
図3】実験結果を示すグラフである。
図4】別の実施の形態に係る生物処理装置の縦断面図である。
図5図4の酸素溶解膜ユニットの構成図である。
図6】さらに別の実施の形態に係る生物処理装置の縦断面図である。
図7図6の酸素溶解膜ユニットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0022】
図1は実施の形態に係る好気性生物処理装置1の縦断面図である。この好気性生物処理装置1は、反応槽(槽体)2と、該反応槽2の下部に水平に設置されたパンチングプレート等の多孔板よりなる透水板3と、該透水板3の上側に形成された大径粒子層4と、該大径粒子層4の上側に形成された小径粒子層5と、小径粒子層5の上側に粉粒状活性炭等の生物付着担体の充填により形成された流動床Fと、展開したときの流動床F内に少なくとも一部が配置された酸素溶解膜モジュール6と、前記透水板3の下側に形成された受入室7と、該受入室7内に原水を供給する原水散布管8と、充填層の洗浄時に逆洗のためのガス等が供給される洗浄配管9等を有する。反応槽2の上部には、処理水を流出させるためのトラフ10及び流出口11が設けられている。トラフ10は槽内壁に沿って環状流路を形成している。
【0023】
図1では、反応槽に流動床担体を充填して、酸素溶解膜の表面への生物膜の付着を担体の流動による剪断力によって抑制して生物膜の大部分が流動床担体に付着するようにしたものであり、このとき、酸素溶解膜は酸素供給の目的のみに用いられる。一方、図示しないが、反応槽に流動床担体を充填しないときは、酸素溶解膜はMABRとして作用する、つまり酸素溶解膜の表面に生物膜が付着して酸素溶解膜の一次側から溶解・供給された酸素が二次側の生物膜に消費されて好気性生物処理が行われる。
【0024】
図1では、酸素溶解膜として非多孔質(ノンポーラス)の酸素溶解膜を用い、酸素含有気体を槽外から配管を通じて酸素溶解膜の一次側に通気して、排気は配管を通じて槽外に排出するように構成している。そのため、酸素含有気体を、低圧で酸素溶解膜に通気し、酸素を酸素分子として酸素溶解膜の構成原子の間を通過し(膜に溶解し)、酸素分子として被処理水と接触させる(水に直接溶解させるので気泡を生じない)という、いわば濃度勾配による分子拡散のメカニズムを用いた処理を行っているため、従来のように散気管などによる散気が不要となる。
【0025】
また酸素溶解膜として疎水性の素材を用いると膜中に浸水しづらいので好ましいが、疎水性であっても微量の浸水は免れないので本発明の使用が好ましい。
【0026】
図2は、図1の実施の形態における酸素溶解膜モジュール6の一例を示している。この酸素溶解膜モジュール6は酸素溶解膜として中空糸膜22を用いたものである。この実施の形態では、中空糸膜22は上下方向に配列されており、各中空糸膜22の上端は上部ヘッダー20に連なり、下端は下部ヘッダー21に連なっている。中空糸膜22の内部は、それぞれ上部ヘッダー20及び下部ヘッダー21内に連通している。各ヘッダー20,21は中空管状である。なお、平膜やスパイラル膜を用いる場合にも、通気方向が上下方向となるように配列される。
【0027】
図2(b)の通り、1対のヘッダー20,21と中空糸膜22とからなるユニットが複数個平行に配列されている。図2(a)の通り、各上部ヘッダー20の上部は配管を介して上部マニホルド23が連結され、各下部ヘッダー21の下部は配管を介して下部マニホルド24が連結されていることが好ましい。図1の実施の形態の場合は、酸素溶解膜モジュール6の上部に酸素含有ガスを供給し、酸素溶解膜モジュール6の下部から排出する。空気等の酸素含有ガスは上部ヘッダー20から中空糸膜22を通って下部ヘッダー21へ流れ、この間に酸素が中空糸膜22を透過して反応槽2内の水に溶解する。
【0028】
各ヘッダー20,21及び各マニホルド23,24は流水勾配を有するように設けられていてもよい。酸素溶解膜モジュール6は上下に多段に設置されてもよい。
【0029】
図1の実施の形態では、この酸素溶解膜モジュール6に空気を供給するために、ブロワ26と空気供給用の給気配管27とが設けられており(酸素含有ガス供給手段を構成)、該給気配管27が上部マニホルド23に接続されている。下部マニホルド24には排ガス用の中継配管28が接続されている。中継配管28は排出配管29が接続している。排出配管29は、下り勾配(鉛直下向きを含む)を有するように設けられ、反応槽2外にまで延設されている。図1では排出配管29は反応槽2の側方に引き出されているが、反応槽2の底部から下方に引き出されてもよい。
【0030】
図1の通り、酸素溶解膜に溶解しなかった酸素含有気体の残部が排出配管29を通じて槽外に排気され、その末端が酸素溶解膜モジュールの下端(モジュールが複数のときは各モジュール下端の中で最も下位のもの)より低い位置となるよう配置しているため、排気に凝縮水が含まれる場合は排出配管29の下方に設置のタンク32に凝縮水が流出する。タンク32内の水は、ポンプ33及び配管34によって反応槽2に送水することもできる。
【0031】
なお、上記構成の場合は、排出配管29が排気を槽外に排出する排ガス配管と凝縮水を槽外に排出する排水配管とを兼ねることになるが、排出配管29を槽内または槽外で分岐して排気を槽外に排出する排ガス配管30を別途設けてもよい。この場合、凝縮水は排出配管29を通じて排出されるため、分岐して別途設けた排ガス配管30はその末端の排気部が酸素溶解膜モジュールの下端より高い位置に配置することができるが、凝縮水の溜まりができないよう配管は下り勾配を有さず上り勾配または鉛直上向きのみで構成することが好ましい。またこのとき排出配管29の排ガス配管30との分岐点より下流側にバルブAを設け、バルブAを開くことにより凝縮水がタンク32に流出するように構成してもよい。また、排ガス配管30にもバルブBを設け、通常の通気の時はバルブAを閉、バルブBを開とし、凝縮水を排出する時は、バルブAを開、バルブBを閉としてもよい。
【0032】
バルブは自動弁、手動弁のいずれでもよい。凝縮水を排出するためのバルブの開放は、連続式でも間欠式でもよい。間欠式の場合は、温度変化、湿度変化によって変化するが、通常の運転では、1日に1回〜30日に1回(多くても日に1回数秒、少なければ月に1回数十秒)、好ましくは1日に1回〜15日に1回、バルブを開くことにより排水する。
【0033】
このように構成された好気性生物処理装置1において、原水は散布管8を通じて受入室7に導入され、透水板3及び大径・小径の粒子層4,5を上向流通水されてSSが濾過され、次いで生物膜付着の粉粒状活性炭の流動床Fにおいて、一過式で上向流通水され生物反応を行って上部清澄領域からトラフ10と流出口11を通じて処理水として取り出される。
【0034】
給気配管27から供給された空気等の酸素含有気体は、酸素溶解膜モジュール6を下向流通気した後、酸素溶解モジュール6の下端位置より下部ヘッダー21、下部マニホルド24を経由して流出し、排空気は排出配管29から(又は排ガス配管30を設けたときは排ガス配管30から)大気中へ排出される。凝縮水は排出配管29を通じてタンク32へ流出する。
【0035】
図4,5に別の実施の形態を示す。凝縮水は下部ヘッダー21と下部マニホルド24に滞留する可能性があるが、排出配管29を通じて凝縮水を定期的に排出するので、膜が凝縮水で通気阻害を受けることを予防できる。
【0036】
なお、排出配管29にバルブAを、排ガス配管30にバルブBを設け、通常の通気時はバルブAを閉、バルブBを開として排気を行い、凝縮水の排出時はバルブAを開、バルブBを閉とし、凝縮水を排ガスと共に排出する。
【0037】
図6,7にさらに別の実施の形態を示す。排ガス配管30を兼ねて排出配管29が設置されている。末端が酸素溶解膜の上端より高い位置、特に槽内水面上または水面付近(水面±1m程度)となるように配置する。
【0038】
酸素溶解膜の下部ヘッダーから下部マニホルドに存在する凝縮水は通気LV(10〜20m/s程度)により排出配管29(この場合は内径50mm以下)を通じて排ガスと共に槽外または水面付近に排出される。排出配管29の末端が水面付近であれば、水圧が低いためブロワの供給圧力への影響は小さい。
【0039】
なお、酸素溶解膜として中空糸膜を用いるときは通気部の断面積が小さいため凝縮水の侵入が通気の阻害となりやすく影響が大きいので、酸素溶解膜が中空糸膜である好気性生物処理装置に本発明をより好適に用いることができる。
【0040】
本発明では、活性炭等の生物担体の流動床に非多孔性の酸素溶解膜を設置することで、供給酸素量が多くなるため、対象とする原水の有機性排水濃度に上限が無い。
【0041】
また、生物担体を流動床で運転するため、激しい撹乱にさらされることがない。したがって、多量の生物を安定して維持できるため、負荷を高くとることができる。
【0042】
また、本発明では酸素溶解膜を使用するため、プリエアレーション、直接曝気と比較すると、酸素の溶解動力が小さい。
【0043】
これらのことから、本発明によると、低濃度から高濃度までの有機性排水を高負荷で、かつ安価に処理することが可能となる。
【0044】
<生物担体>
生物担体としては、活性炭が好適である。
【0045】
流動床担体の充填量は反応槽の容積の40〜60%程度、特に50%程度が好ましい。この充填量は、多いほうが生物量多く活性高いが、多すぎると流出するおそれがある。従って、流動床が20〜50%程度膨張するLV(例えば7〜15m/hr程度)で通水するのが良い。なお、担体の素材として活性炭以外のゲル状物質、多孔質材、非多孔質材等も同様の条件で使用できる。例えば、ポリビニルアルコールゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタンフォーム、アルギン酸カルシウムゲル、ゼオライト、プラスチック等も用いることができる。ただし、担体として活性炭を用いると、活性炭の吸着作用と生物分解作用による相互作用により、広範囲な汚濁物質の除去を行うことが可能である。
【0046】
担体の平均粒径は0.2〜3mm程度が好ましい。平均粒径が大きいと高LVとすることが可能であり、処理水の一部を反応槽に循環する場合、循環量を増やせるため高負荷が可能となる。しかし、比表面積が小さくなるため、生物量が少なくなる。平均粒径が小さいと、低LVで流動できるため、ポンプ動力が安価となる。かつ比表面積が大きいため、付着生物量が増える。
【0047】
最適粒径は廃水の濃度によって決定され、TOC:50mg/Lであれば0.2〜0.4mm程度、TOC:10mg/Lであれば0.6〜1.2mm程度が好ましい。
【0048】
流動床の展開率は、20〜50%程度が好ましい。展開率が20%よりも低いと、目詰まり、短絡のおそれがある。展開率が50%よりも高いと、担体の流出のおそれがあると共に、ポンプ動力コストが高くなる。
【0049】
通常の生物活性炭では、活性炭流動床の膨張率は10〜20%程度であるがこの場合、活性炭の流動状態が不均一で上下左右に流動する。結果として同時に設置した膜が活性炭によってこすられ、すり減って消耗することになる。これを防止するため、本発明では、活性炭等の流動床担体は十分に流動させることが必要で、膨張率は20%以上とするのが望ましい。このため、担体の粒径は通常の生物活性炭よりも小さいほうが好ましい。なお、活性炭の場合、やしがら炭、石炭、木炭等特に限定されない。形状は球状炭が好ましいが、通常の粒状炭や破砕炭でも良い。
【0050】
<酸素含有ガス>
酸素含有ガスは空気、酸素富化空気、純酸素等、酸素を含む気体であればよい。通気する気体はフィルターを通過させて微細粒子を予め除去することが望ましい。
【0051】
通気量は生物反応に必要な酸素量の等量から2倍程度が望ましい。これよりも少ないと酸素不足で処理水中にBODやアンモニアが残存し、多いと通気量が不必要に多くなることに加えて圧力損失が高くなるため、経済性が損なわれる。
【0052】
通気圧力は所定の通気量で生ずる中空糸の圧力損失よりもわずかに高い程度が望ましい。
【0053】
<被処理水の流速>
被処理水の反応槽内の流速はLV10m/hr以上とし、処理水を循環せず、ワンパスで処理することができる。
【0054】
LVを高くすると、それに比例して酸素溶解速度が向上する。LV50m/hrでは10m/hrの2倍ほど酸素が溶解する。LVが高い場合は、粒径が大きい活性炭を使い、展開率をあまり大きくしないようにするのが好ましい。生物量、酸素溶解速度から、最適LV範囲は7〜20m/hr程度である。
【0055】
<滞留時間>
槽負荷1〜2kg−TOC/m/dayとなるように滞留時間を設定するのが好ましい。
【0056】
<ブロア>
ブロアは、吐出風圧が水深からくる水圧以下のもので十分である。但し、配管等の圧損以上であることは必要である。通常、配管抵抗は1〜2kPa程度である。
【0057】
5mの水深の場合、通常は0.55MPa程度までの出力の汎用ブロアが用いられ、それ以上の水深では高圧ブロアが用いられてきている。
【0058】
本発明では、5m以上の水深であっても0.5MPa以下の圧力の汎用ブロアを用いることができ、0.1MPa以下の低圧ブロアを用いることが好ましい。
【0059】
酸素含有ガスの供給圧は、中空糸膜の圧力損失より高く、水深圧力よりも低いこと、さらに膜が水圧でつぶれないこと、が条件となる。平膜、スパイラル膜は膜の圧損が水圧と比較すると無視できるため、極めて低い圧力、5kPa程度以上、水圧以下、望ましくは20kPa以下である。
【0060】
中空糸膜の場合、内径と長さによって圧力損失は変化する。通気する空気量は膜1mあたり20mL〜100mL/dayであるから、膜長さが2倍になると空気量は2倍になり、膜径が2倍になっても空気量は2倍にしかならない。したがって、膜の圧力損失は膜長さに正比例し、直径に反比例する。
【0061】
圧力損失の値は、内径50μm、長さ2mの中空糸で3〜20kPa程度である。
【実施例】
【0062】
中空糸膜からの凝縮水排出について以下の実験を行った。
【0063】
[実施例1]
内径300μm、外径500μmの非多孔質のシリコン製中空糸膜30本の上下をそれぞれ束ね、直径25mm、長さ1mのカラム(透明塩ビ管)内に設置して上部から下部へ向けて空気を10mL/min通気した。シリコン製中空糸の束ねた下部はカラムの外側下部に突出している。
【0064】
また、カラムには純水にイソプロピルアルコールを100mg/L添加して調製した合成排水を滞留時間20分となるよう上向流通水した。装置の運転により、カラム下部に突出している中空糸膜下端から、凝縮水が2週間で約2mL排出された。
【0065】
この酸素溶解膜の酸素溶解速度を図2に示す。酸素溶解膜の酸素溶解速度は140日間にわたって、1mあたりほぼ8g−O/m/day以上で安定していた。なお70日、120日のあたりで酸素溶解速度が8g−O/m/dayを下回っているが、これは一時的に原水のTOC濃度が下がって負荷が低くなり供給負荷自体が低くなったために酸素の膜への溶解拡散のドライビングフォースが下がり酸素溶解速度が低下したものと推定される。
【0066】
[比較例1]
実施例1と同一の試験装置を用いて、空気の通気方向を下部から上部としたこと以外は同一条件で運転した。
【0067】
酸素溶解膜の酸素溶解速度を図2に示す。図2の通り、運転開始2週間後くらいから酸素溶解速度が低下しはじめ、100日を過ぎると2g−O/m/day程度まで減少した。
【0068】
[比較例2]
実施例1において、カラム底部の空気出口配管に細いチューブの一端をつなぐと共に、チューブの他端を反応槽上部に配置したこと以外は実施例1と同一の試験装置を用いて、同一条件で運転した。その結果、酸素溶解速度は3〜4g−O/m/dayの範囲であった。
【0069】
[実施例2]
比較例2において、前記チューブの前記他端にT字管をとりつけ、空気出口配管直下部にピンチコックをつけて2週に1度ピンチコックを開け、凝縮水を排出した。その結果、酸素溶解速度は9g−O/m/dayに回復した。
【符号の説明】
【0070】
1 好気性生物処理装置
2 反応槽
6 酸素溶解膜モジュール
20,21 ヘッダー
22 中空糸膜
27 給気配管
29 排出配管(排水配管)
30 排ガス配管
32 タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7