(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0011】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書に段階的に記載されているが数値範囲において、ひとつの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えても良い。また、本明細書中に記載されている数値範囲において。その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合成の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において「エポキシ化合物」とは、分子中にエポキシ基を有する化合物を意味し、「エポキシ樹脂」とは、複数のエポキシ化合物を集合体として捉える概念を意味する。
【0012】
<エポキシ樹脂>
本開示のエポキシ樹脂は、2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物を含み、硬化前の35℃における損失正接が1以上であるエポキシ樹脂である。
【0013】
上記構成を有するエポキシ樹脂は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むために硬化物として優れた靭性を示す。また、2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物(以下、特定エポキシ化合物ともいう)を含むことで、特定エポキシ化合物を含まないエポキシ樹脂に比べて硬化前の粘度が低く、取り扱い性に優れている。さらに、硬化前の35℃における損失正接(tanδ)が1以上であるために、優れた密着性を示す。
【0014】
エポキシ樹脂の損失正接は、損失弾性率(粘性項)/貯蔵弾性率(弾性項)で表される値(tanδ)であり、その値が大きいほど、粘性体的性質が強いといえる。例えば、粘性体的性質が強いエポキシ樹脂を含む2枚の樹脂シートを貼り合わせるとその界面でよくぬれ、よく密着する傾向にある。したがって、上記構成を有するエポキシ樹脂を含む樹脂シートを用いることで、樹脂シート間の密着性に優れる積層体を得ることができる。
【0015】
密着性の観点からは、エポキシ樹脂の硬化前の35℃における損失正接は1以上であり、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の硬化前の35℃における損失正接の上限は特に制限されない。例えば、100以下であってもよい。
エポキシ樹脂の35℃における損失正接は、例えば、後述する実施例に記載した方法で測定することができる。
【0016】
エポキシ樹脂の35℃における損失正接の値は、例えば、エポキシ樹脂に含まれる特定エポキシ化合物の分子構造、エポキシ樹脂に含まれる特定エポキシ化合物の割合等によって制御することができる。
【0017】
(特定エポキシ化合物)
特定エポキシ化合物は、2つ以上のメソゲン構造を有するものであれば、その構造は特に制限されない。特定エポキシ化合物の1分子中に含まれる2つ以上のメソゲン構造は、異なっていても同じであってもよい。
【0018】
特定エポキシ化合物が有するメソゲン構造とは、これを有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂が、硬化すると液晶性を発現する可能性のある構造を意味する。具体的には、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、アントラセン構造、これらの誘導体、これらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造等が挙げられる。
【0019】
メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂は、硬化物中に高次構造を形成する。ここで、高次構造とは、その構成要素が配列してミクロな秩序構造を形成した高次構造体を含む構造を意味し、例えば結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造体の存在の有無は、偏光顕微鏡によって判断することができる。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉縞が見られることで判別可能である。この高次構造体は、通常はエポキシ樹脂組成物の硬化物中に島状に存在してドメイン構造を形成しており、その島の一つが一つの高次構造体に対応する。この高次構造体の構成要素自体は、一般には共有結合により形成されている。
【0020】
硬化物中に形成される高次構造としては、ネマチック構造とスメクチック構造とが挙げられる。ネマチック構造とスメクチック構造は、それぞれ液晶構造の一種である。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向を向いており、配向秩序のみをもつ液晶構造である。これに対し、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、層構造を有する液晶構造である。秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。従って、硬化物の熱伝導性及び靭性の観点からは、スメクチック構造の高次構造が好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂の硬化物中にスメクチック構造が形成されているか否かは、上述した偏光顕微鏡による観察のほか、X線回折測定を行うことで判断できる。X線回折測定は、例えば、後述する実施例に記載した方法で行うことができる。
【0022】
特定エポキシ化合物が有するメソゲン構造は、下記一般式(1)で表される構造であってもよい。
【0024】
一般式(1)中、Xは単結合又は下記2価の基からなる群(A)より選択される少なくとも1種の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示す。
【0026】
群(A)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示し、kは0〜7の整数を示し、mは0〜8の整数を示し、lは0〜12の整数を示す。
【0027】
一般式(1)で表されるメソゲン構造において、Xが上記2価の基からなる群(A)より選択される少なくとも1種の連結基である場合、下記2価の基からなる群(Aa)より選択される少なくとも1種の連結基であることが好ましく、群(Aa)より選択される少なくとも1種の連結基であって少なくとも1つの環状構造を含む連結基であることがより好ましい。
【0029】
群(Aa)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示し、kは0〜7の整数を示し、mは0〜8の整数を示し、lは0〜12の整数を示す。
【0030】
特定エポキシ化合物が有する2つ以上のメソゲン構造のうち、少なくとも1つが下記一般式(2)で表されるメソゲン構造であることが好ましく、全部が下記一般式(2)で表されるメソゲン構造であることがより好ましい。
【0032】
一般式(2)において、X、Y、nの定義及び好ましい例は、一般式(1)のX、Y、nの定義及び好ましい例と同様である。
【0033】
さらに、特定エポキシ化合物が有する2つ以上のメソゲン構造のうち、少なくとも1つが下記一般式(3)又は一般式(4)で表されるメソゲン構造であることが好ましく、全部が下記一般式(3)又は一般式(4)で表されるメソゲン構造であることがより好ましい。
【0035】
一般式(3)又は一般式(4)中、R
3〜R
6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
【0036】
R
3〜R
6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R
3〜R
6のうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R
3〜R
6のいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R
3及びR
6の少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0037】
硬化前の取り扱い性及び密着性の観点からは、特定エポキシ化合物は、2つ以上のメソゲン構造のうちの2つのメソゲン構造と、その間に配置される2価の芳香族基とを有することが好ましい。この場合、2つのメソゲン構造と2価の芳香族基とは直接に結合していても、連結基を介して結合していてもよい。
【0038】
本開示において、特定エポキシ化合物が有するメソゲン構造が2価の芳香族基を含む場合、2つのメソゲン構造の間に配置される2価の芳香族基は、当該メソゲン構造に含まれる2価の芳香族基とは異なるものとする。
【0039】
2つのメソゲン構造の間に配置される2価の芳香族基としては、フェニレン基及び2価のビフェニル基が挙げられる。フェニレン基としては下記一般式(5A)で表される構造が挙げられ、2価のビフェニル基としては下記一般式(5B)で表される構造が挙げられる。
【0041】
一般式(5A)及び一般式(5B)において、*は隣接する原子との結合位置を表す。隣接する原子としては酸素原子及び窒素原子が挙げられる。R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す。mはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
【0042】
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0043】
mはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0044】
一般式(5A)で表される構造の中でも、下記一般式(5a)で表される構造が好ましく、一般式(5B)で表される構造の中でも、下記一般式(5b)で表される構造が好ましい。このような構造を有する特定エポキシ化合物は、分子構造が直線的になりやすい。このため、分子のスタッキング性が高く、高次構造をより形成し易いと考えられる。
【0046】
一般式(5a)及び一般式(5b)において、*、R
1、R
2及びmの定義並びに好ましい例は、一般式(5A)及び一般式(5B)の*、R
1、R
2及びmの定義並びに好ましい例と同様である。
【0047】
特定エポキシ化合物は、下記一般式(1−A)又は一般式(1−B)で表される構造を有するエポキシ化合物であってもよい。
【0049】
一般式(1−A)及び一般式(1−B)において、X、Y及びnの定義並びに好ましい例は、一般式(1)におけるX、Y及びnの定義並びに好ましい例と同様である。また、R
1、R
2及びmの定義並びに好ましい例は、一般式(5A)及び一般式(5B)におけるR
1、R
2及びmの定義並びに好ましい例と同様である。Zはそれぞれ独立に、−O−又は−NH−を表す。
【0050】
硬化物中に高次構造を形成する観点からは、一般式(1−A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(2−A)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましく、一般式(1−B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(2−B)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましい。
【0052】
一般式(2−A)及び一般式(2−B)において、X、Y、n、m、R
1、R
2及びZの定義並びに好ましい例は、一般式(1−A)及び一般式(1−B)におけるX、Y、n、m、R
1、R
2及びZの定義並びに好ましい例と同様である。
【0053】
一般式(1−A)で表される構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(3−A−1)〜一般式(3−A−4)で表される構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
一般式(1−B)で表される構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(3−B−1)〜一般式(3−B−4)からなる群より選択される少なくとも一つの構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
【0054】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0055】
一般式(3−A−1)〜(3−A−4)及び一般式(3−B−1)〜(3−B−4)において、R
1、R
2、m及びZの定義並びに好ましい例は、一般式(1−A)及び一般式(1−B)におけるR
1、R
2、m及びZの定義並びに好ましい例と同様である。R
3〜R
6の定義並びに好ましい例は、一般式(3)及び一般式(4)におけるR
3〜R
6の定義並びに好ましい例と同様である。
【0056】
硬化前の取り扱い性及び密着性の観点からは、特定エポキシ化合物は、2つのメソゲン構造を有する化合物(以下、二量体化合物ともいう)であることが好ましく、2つのメソゲン基の間に2価の芳香族基(好ましくは、フェニレン基又は2価のビフェニル基)が配置された状態の構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0057】
特定エポキシ化合物が二量体化合物である場合の構造としては、下記一般式(4−A−1)又は下記一般式(4−B−1)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
一般式(4−A−1)又は一般式(4−B−1)において、X、Y、n、m、R
1、R
2及びZの定義並びに好ましい例は、一般式(1−A)及び一般式(1−B)におけるX、Y、n、m、R
1、R
2及びZの定義並びに好ましい例と同様である。
【0060】
硬化物中に高次構造を形成する観点からは、一般式(4−A−1)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(5−A−1)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましく、一般式(4−B−1)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(5−B−1)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましい。
【0062】
一般式(5−A−1)及び一般式(5−B−1)において、X、Y、n、m、R
1、R
2及びZの定義並びに好ましい例は、一般式(4−A−1)及び一般式(4−B−1)におけるX、Y、n、m、R
1、R
2及びZの定義並びに好ましい例と同様である。
【0063】
一般式(4−A−1)で表される構造を有するエポキシ化合物の具体例としては、下記一般式(6−A−1)〜(6−A−6)で表される構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
一般式(4−B−1)で表される構造を有するエポキシ化合物の具体例としては、下記一般式(6−B−1)〜(6−B−6)で表される構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
【0064】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【0065】
一般式(6−A−1)〜(6−A−6)及び一般式(6−B−1)〜(6−B−6)において、R
1、R
2、m及びZの定義並びに好ましい例は、一般式(1−A)及び一般式(1−B)におけるR
1、R
2、m及びZの定義並びに好ましい例と同様である。R
3〜R
6の定義並びに好ましい例は、一般式(3)及び一般式(4)におけるR
3〜R
6の定義並びに好ましい例と同様である。
【0066】
エポキシ樹脂は、特定エポキシ樹脂に加え、下記一般式(1−m)で表される構造を有するエポキシ化合物をさらに含むものであってもよい。
【0068】
一般式(1−m)において、X、Y及びnの定義並びに好ましい例は、上述した一般式(1)におけるX、Y及びnの定義並びに好ましい例と同様である。
【0069】
硬化物中に高次構造を形成する観点からは、一般式(1−m)で表されるメソゲンエポキシモノマーは、下記一般式(2−m)で表される構造を有するメソゲンエポキシモノマーであることが好ましい。
【0071】
一般式(2−m)において、X、Y及びnの定義並びに好ましい例は、一般式(1−m)におけるX、Y及びnの定義並びに好ましい例と同様である。
【0072】
一般式(1−m)で表されるメソゲンエポキシモノマーは、下記一般式(3−m)又は一般式(4−m)で表される構造を有するメソゲンエポキシモノマーであることがより好ましい。
【0074】
一般式(3−m)及び一般式(4−m)において、R
3〜R
6の定義及び好ましい例は、一般式(3)のR
3〜R
6の定義及び好ましい例と同様である。
【0075】
(特定エポキシ化合物の合成方法)
特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。例えば、特定エポキシ化合物の有するメソゲン構造と同じメソゲン構造を1つと、エポキシ基と、を有する化合物(以下、メソゲンエポキシモノマーとも称する)と、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを反応させて得てもよい。
メソゲンエポキシモノマーの構造は特に制限されない。例えば、上述した一般式(1−m)で表される構造を有するエポキシ化合物であってもよい。
【0076】
メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを反応させて特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。具体的には、例えば、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを溶媒中に溶解し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
【0077】
あるいは、例えば、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を、必要に応じて用いる反応触媒と溶媒を用いずに混合し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
【0078】
溶媒は、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを溶解でき、かつ両化合物が反応するのに必要な温度にまで加温できる溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0079】
溶媒の量は、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを反応温度において溶解できる量であれば特に制限されない。反応前の原料の種類、溶媒の種類等によって溶解性が異なるものの、例えば、仕込み固形分濃度が20質量%〜60質量%となる量であれば、反応後の溶液の粘度が好ましい範囲となる傾向にある。
【0080】
メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物の種類は、特に制限されない。耐熱性の観点からは、少なくとも1つのベンゼン環を有する化合物(芳香族化合物)が好ましい。硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、1つのベンゼン環に2つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシベンゼン化合物、1つのベンゼン環に2つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノベンゼン化合物、ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシビフェニル化合物及びビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノビフェニル化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、特定芳香族化合物とも称する)であることが好ましい。
【0081】
ジヒドロキシベンゼン化合物としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノベンゼン化合物としては、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0082】
ジヒドロキシビフェニル化合物としては、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノビフェニル化合物としては、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、2,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
【0083】
特定芳香族化合物の誘導体としては、芳香族化合物のベンゼン環に炭素数1〜8のアルキル基等の置換基が結合した化合物が挙げられる。特定芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
反応触媒の種類は特に限定されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から適切なものを選択できる。具体的には、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。反応触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
硬化物の耐熱性の観点からは、反応触媒としては有機リン化合物が好ましい。
有機リン化合物の好ましい例としては、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体などが挙げられる。
【0086】
有機ホスフィン化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
【0087】
キノン化合物として具体的には、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。
【0088】
有機ボロン化合物として具体的には、テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等が挙げられる。
【0089】
反応触媒の量は、特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点からは、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との合計質量100質量部に対し、0.1質量部〜1.5質量部であることが好ましく、0.2質量部〜1質量部であることがより好ましい。
【0090】
エポキシ樹脂は、特定エポキシ化合物と、メソゲンエポキシモノマーとの両方を含んでいることが好ましい。エポキシ樹脂中に特定エポキシ化合物とメソゲンエポキシモノマーとが適切な割合で存在していると、硬化する際の架橋密度をより高い状態にすることができ、耐熱性により優れるエポキシ樹脂硬化物が得られる傾向にある。エポキシ樹脂中に存在する特定エポキシ化合物及びメソゲンエポキシモノマーの割合は、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との配合比又はその他の反応条件によって調節することができる。
【0091】
エポキシ樹脂に含まれるメソゲンエポキシモノマーの含有割合は、エポキシ樹脂全体の50%以下であることが好ましい。メソゲンエポキシモノマーの含有割合が50%以下であるエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーの含有割合が50%を超えるエポキシ樹脂に比べて昇温時に粘度が下がりやすく、取り扱い性に優れる傾向にある。その理由は明らかではないが、メソゲンエポキシモノマーの割合がエポキシ樹脂全体の50%以下であると、メソゲンエポキシモノマーの含有割合が50%を超える場合に比べ、エポキシ樹脂の溶融温度以下の温度での結晶の析出がより抑制されるためと推測される。
【0092】
本開示において、エポキシ樹脂中のメソゲンエポキシモノマーの含有割合は、例えば、液体クロマトグラフにより得られるチャートから算出することができる。
より具体的には、液体クロマトグラフにより得られるチャートにおける、エポキシ樹脂を構成する全ての成分に由来するピークの合計面積に占めるメソゲンエポキシモノマーに由来するピークの面積の割合(%)として求める。具体的には、測定対象のエポキシ樹脂の280nmの波長における吸光度を検出し、検出された全てのピークの合計面積と、メソゲンエポキシモノマーに相当するピークの面積とから、下記式により算出する。
【0093】
メソゲンエポキシモノマーに由来するピークの面積の割合(%)=(メソゲンエポキシモノマーに由来するピークの面積/エポキシ樹脂を構成する全ての成分に由来するピークの合計面積)×100
【0094】
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。測定は、例えば、株式会社日立製作所製の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所製のデータ解析装置「C−R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社製のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
【0095】
取り扱い性向上の観点からは、メソゲンエポキシモノマーの割合は、エポキシ樹脂全体の50%以下であることが好ましく、49%以下であることがより好ましく、48%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
固有粘度(溶融時の粘度)の低減の観点からは、メソゲンエポキシモノマーの割合は、エポキシ樹脂全体の35%以上であることが好ましく、37%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0097】
特定エポキシ化合物の合成は、少量スケールであればフラスコ、大量スケールであれば合成釜等の反応容器を使用して行うことができる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。まず、メソゲンエポキシモノマーを反応容器に投入し、必要に応じて溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、メソゲンエポキシモノマーを溶解する。そこにメソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を投入し、次いで必要に応じて反応触媒を投入し、反応を開始させる。次いで、必要に応じて減圧下で溶媒を留去することで、特定エポキシ化合物が得られる。
【0098】
反応温度は、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基との反応が進行する温度であれば特に制限されない。例えば、100℃〜180℃の範囲であることが好ましく、100℃〜150℃の範囲であることがより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで、反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることで、ゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
【0099】
メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との配合比は、特に制限されない。例えば、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:10〜10:0.01の範囲となる配合比としてもよい。硬化物の靭性及び耐熱性の観点からは、A:Bが10:5〜10:0.1の範囲となる配合比が好ましい。
【0100】
合成により得られた特定エポキシ化合物の構造は、例えば、合成に使用したメソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との反応より得られると推定される特定エポキシ化合物の分子量と、UV及びマススペクトル検出器を備える液体クロマトグラフを用いて実施される液体クロマトグラフィーにより求めた目的化合物の分子量とを照合させることで決定することができる。
【0101】
液体クロマトグラフィーは、例えば、株式会社日立製作所製の「LaChrom II C18」を分析用カラムとして使用し、グラジエント法を用いて、溶離液の混合比(体積基準)をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/10mmol/l酢酸アンモニウム水溶液=20/5/75からアセトニトリル/テトラヒドロフラン=80/20(開始から20分)を経てアセトニトリル/テトラヒドロフラン=50/50(開始から35分)と連続的に変化させて測定を行う。また、流速を1.0ml/minとして行う。UVスペクトル検出器では280nmの波長における吸光度を検出し、マススペクトル検出器ではイオン化電圧を2700Vとして検出する。
【0102】
エポキシ化合物を含むエポキシ樹脂全体のエポキシ当量は、特に制限されない。エポキシ樹脂の流動性と硬化物の熱伝導率とを両立する観点からは、245g/eq〜360g/eqであることが好ましく、250g/eq〜355g/eqであることがより好ましく、260g/eq〜350g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量が245g/eq以上であれば、エポキシ樹脂の結晶性が高くなりすぎず、流動性が低下しにくい傾向にある。一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が360g/eq以下であれば、エポキシ樹脂の架橋密度が低下しにくく、成形物の熱伝導率が高くなる傾向にある。本開示において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、過塩素酸滴定法により測定する。
【0103】
本開示のエポキシ樹脂は、特定エポキシ化合物及びメソゲンエポキシモノマーの両方を含んでいることが好ましい。エポキシ樹脂中に特定エポキシ化合物とメソゲンエポキシモノマーとが適切な割合で存在していると、硬化前の取り扱い性により優れる傾向にある。エポキシ樹脂中に存在する特定エポキシ化合物及びメソゲンエポキシモノマーの割合は、メソゲンエポキシモノマーと、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との配合比又はその他の反応条件によって調節することができる。
【0104】
本開示のエポキシ樹脂は、必要に応じて特定エポキシ化合物と構造が異なるエポキシ化合物(ただし、特定エポキシ化合物の多量体を除く)を含んでいてもよい。この場合、特定エポキシ化合物と構造が異なるエポキシ化合物の含有割合は、エポキシ樹脂全体の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
特定エポキシ化合物と構造が異なるエポキシ化合物の種類は、特に制限されない。中でも、ビフェニル型エポキシ化合物及びビスフェノール型エポキシ化合物が好ましい。
【0105】
ビフェニル型エポキシ化合物としては、下記一般式(B)で表されるエポキシ化合物が挙げられる。
【0107】
一般式(B)において、Zはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。
【0108】
一般式(B)において、Zはそれぞれ独立に炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。また、Zはそれぞれ独立にビフェニル構造の単結合の位置に対してメタ位にあることが好ましい。
nはそれぞれ独立に1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0109】
一般式(B)で表される化合物としては、下記構造で示されるエポキシ化合物(Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である)が挙げられる。
【0111】
ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール化合物のグリシジルエーテルが挙げられる。
【0112】
上記以外の特定エポキシ化合物と構造が異なるエポキシ化合物としては、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール化合物のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸化合物のグリシジルエステル;アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型(メチルグリシジル型も含む)エポキシモノマー;分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシモノマー;ビス(4−ヒドロキシ)チオエーテルのエポキシ化物;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレンパラキシリレン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂等のグリシジルエーテル;スチルベン型エポキシモノマー;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシモノマーなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
<エポキシ樹脂組成物>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む。
【0114】
(硬化剤)
硬化剤は、エポキシ樹脂と硬化反応を生じることができる化合物であれば、特に制限されない。硬化剤の具体例としては、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0115】
エポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成する観点からは、硬化剤としては、アミン硬化剤又はフェノール硬化剤が好ましく、アミン硬化剤がより好ましく、芳香環に直接結合しているアミノ基を2つ以上有する化合物であることがさらに好ましい。
【0116】
アミン硬化剤として具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、トリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアート等が挙げられる。
【0117】
エポキシ樹脂組成物の硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、アミン硬化剤としては3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びトリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアートが好ましく、低吸水率及び高靭性の硬化物を得る観点からは、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンがより好ましい。
【0118】
フェノール硬化剤としては、低分子フェノール化合物、及び低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂が挙げられる。低分子フェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能フェノール化合物、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2官能フェノール化合物、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能フェノール化合物などが挙げられる。
【0119】
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は、特に制限されない。硬化反応の効率性の観点からは、エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の官能基の当量数と、エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数との比(官能基の当量数/エポキシ基の当量数)が0.3〜3.0となる量であることが好ましく、0.5〜2.0となる量であることがより好ましい。
【0120】
(その他の成分)
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂及び硬化剤以外のその他の成分を含んでもよい。例えば、硬化触媒、フィラー等を含んでもよい。硬化触媒の具体例としては、多量体の合成に使用しうる反応触媒として例示した化合物が挙げられる。
【0121】
(用途)
エポキシ樹脂組成物の用途は特に制限されず、粘度が低く、流動性に優れていることが要求される加工方法にも好適に用いることができる。例えば、繊維間の空隙にエポキシ樹脂組成物を加温しながら含浸する工程を伴うFRPの製造、エポキシ樹脂組成物を加温しながらスキージ等で広げる工程を伴うシート状物の製造などにも好適に用いることができる。
【0122】
本開示のエポキシ樹脂組成物を含む樹脂シートは密着性に優れていることから、複数の樹脂シートを一体化(積層等)する用途にも好適に用いることができる。このとき、複数の樹脂シートは同種のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。同種のエポキシ樹脂を含む樹脂シートは互いに対する親和性がより高く、よりよく密着する傾向にある。
【0123】
本開示のエポキシ樹脂組成物は硬化前の取り扱い性に優れているため、粘度を低減するための溶剤を添加しないか、添加量が少ない状態でも好適に用いることができる。このため、硬化物中のボイドの発生を抑制するために溶剤を添加しないか、添加量の低減が望まれる加工方法(例えば、航空機、宇宙船等に用いるFRPの製造)にも好適に用いることができる。
【0124】
<エポキシ樹脂硬化物及び複合材料>
本開示のエポキシ樹脂硬化物は、本開示のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる。
本開示の複合材料は、本開示のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む。
【0125】
複合材料に含まれる強化材の材質は特に制限されず、複合材料の用途等に応じて選択できる。強化材として具体的には、炭素材料、ガラス、芳香族ポリアミド系樹脂(例えば、ケブラー(登録商標))、超高分子量ポリエチレン、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、シリコン等が挙げられる。強化材の形状は特に制限されず、繊維状、粒子状(フィラー)等が挙げられる。複合材料の強度の観点からは、強化材は炭素材料であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。複合材料に含まれる強化材は、1種でも2種以上であってもよい。
【0126】
本開示のエポキシ樹脂組成物は密着性に優れていることから、複数の複合材料を一体化(積層等)する用途にも好適に用いることができる。このとき、複数の複合材料が同種のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。同種のエポキシ樹脂を含む複合材料は互いに対する親和性がより高く、よりよく密着する傾向にある。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
<実施例1>
500mLの三口フラスコに、下記構造で表されるメソゲンエポキシモノマーを50g量り取り、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。メソゲンエポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、特定芳香族化合物として4,4’−ジヒドロキシビフェニルをメソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)と4,4’−ジヒドロキシビフェニルの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:2.5となるように添加し、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、120℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、メソゲンエポキシモノマーの一部が4,4’−ジヒドロキシビフェニルと反応して多量体(特定エポキシ化合物)を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。
【0129】
【化35】
【0130】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0131】
次いで、得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン9.4gをステンレスシャーレに量り取り、ホットプレートで180℃に加熱した。ステンレスシャーレ内の樹脂が溶融した後に、スパチュラで撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物(5g程度)を層間密着評価用に分取した後、180℃で1時間加熱した。常温(25℃)まで冷却した後にステンレスシャーレから樹脂を取り出し、恒温槽にて230℃で1時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を3.75mm×7.5mm×33mmの直方体に切り出し、破壊靭性評価用の試験片を作製した。
【0132】
<実施例2>
500mLの三口フラスコに、下記構造で表されるメソゲンエポキシモノマーを50g量り取り、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。メソゲンエポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、特定芳香族化合物として2,2’−ジヒドロキシビフェニルをメソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)と2,2’−ジヒドロキシビフェニルの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:2.5となるように添加し、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、120℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシモノマーの一部が2,2’−ジヒドロキシビフェニルと反応して多量体(特定エポキシ化合物)を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。
【0133】
【化36】
【0134】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、2,2’−ジヒドロキシビフェニルに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0135】
次いで、得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン9.4gをステンレスシャーレに量り取り、ホットプレートで180℃に加熱した。ステンレスシャーレ内の樹脂が溶融した後に、スパチュラで撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物(5g程度)を層間密着評価用に分取した後、180℃で1時間加熱した。常温(25℃)まで冷却した後にステンレスシャーレから樹脂を取り出し、恒温槽にて230℃で1時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0136】
<実施例3>
500mLの三口フラスコに、下記構造で表されるメソゲンエポキシモノマーを50g量り取り、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。メソゲンエポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、特定芳香族化合物としてヒドロキノンをメソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)とヒドロキノンの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:2.5となるように添加し、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、120℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシモノマーの一部がヒドロキノンと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。
【0137】
【化37】
【0138】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、ヒドロキノンに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0139】
次いで、得られたエポキシ樹脂を50g、下記構造で表されるエポキシ化合物(テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂)5.0g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン11.4gをステンレスシャーレに量り取り、ホットプレートで180℃に加熱した。ステンレスシャーレ内の樹脂が溶融した後に、スパチュラで撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物(5g程度)を層間密着評価用に分取した後、180℃で1時間加熱した。常温(25℃)まで冷却した後にステンレスシャーレから樹脂を取り出し、恒温槽にて230℃で1時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0140】
【化38】
【0141】
<実施例4>
500mLの三口フラスコに、下記構造で表されるメソゲンエポキシモノマーを50g量り取り、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを100g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。メソゲンエポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、特定芳香族化合物として4,4’−ジヒドロキシビフェニルをメソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)と4,4’−ジヒドロキシビフェニルの水酸基(B)の当量比(A:B)が10:0.5となるように添加し、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、120℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、メソゲンエポキシモノマーの一部が4,4’−ジヒドロキシビフェニルと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。
【0142】
【化39】
【0143】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0144】
次いで、得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン12.9gをステンレスシャーレに量り取り、ホットプレートで180℃に加熱した。ステンレスシャーレ内の樹脂が溶融した後に、スパチュラで撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物(5g程度)を層間密着評価用に分取した後、180℃で1時間加熱した。常温(25℃)まで冷却した後にステンレスシャーレから樹脂を取り出し、恒温槽にて230℃で1時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0145】
<比較例1>
特定芳香族化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに代えてヒドロキノンを用い、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)とヒドロキノンの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:1.0となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂を得た。
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、ヒドロキノンに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0146】
得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン12.1gをステンレスシャーレに量り取り、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0147】
<比較例2>
特定芳香族化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに代えてレゾルシノールを用い、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)とヒドロキノンの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:2.0となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂を得た。
【0148】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、レゾルシノールに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0149】
得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン10.57gをステンレスシャーレに量り取り、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0150】
<比較例3>
特定芳香族化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに代えてレゾルシノールを用い、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)とレゾルシノールの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:3.0となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂を得た。
【0151】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、レゾルシノールに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0152】
得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン9.0gをステンレスシャーレに量り取り、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0153】
<比較例4>
特定芳香族化合物として、レゾルシノールに代えてヒドロキノンを用い、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)とヒドロキノンの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:2.0となるように添加した以外は、比較例2と同様にして、エポキシ樹脂を得た。
【0154】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、ヒドロキノンに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0155】
得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン10.57gをステンレスシャーレに量り取り、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0156】
<比較例5>
特定芳香族化合物として、レゾルシノールに代えてヒドロキノンを用い、メソゲンエポキシモノマーのエポキシ基(A)とヒドロキノンの水酸基(B)の当量数比(A:B)が10:3.0となるように添加した以外は、比較例3と同様にして、エポキシ樹脂を得た。
【0157】
得られたエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーに由来する2つのメソゲン構造と、ヒドロキノンに由来する2価の芳香族基とを有するエポキシ化合物(二量体)を含んでいることを液体クロマトグラフィーにより確認した。
【0158】
得られたエポキシ樹脂を50g、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン9.0gをステンレスシャーレに量り取り、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0159】
[損失正接の測定]
エポキシ樹脂の35℃における損失正接の測定は、レオメータ(MCR−301、アントンパール社製)により振動モードで測定した。測定には直径12mmの平行平板プレートを用い、測定条件は、周波数1Hz、ギャップ0.2mm、ひずみ2%とした。
測定は、エポキシ樹脂を150℃で3分以上放置して溶融させた後、エポキシ樹脂の温度を150℃から30℃まで2℃/分の速度で下降させる降温工程と、エポキシ樹脂の温度を30℃から150℃まで2℃/分の速度で上昇させる昇温工程と、をこの順に実施し、昇温工程における35℃での損失正接を測定した。結果を表1に示す。
【0160】
[層間密着性の評価]
エポキシ樹脂組成物を用いてシートを作製し、シート同士の密着性を次のように評価した。150℃に加熱したホットプレート上にステンレス板を設置して充分加熱した後、ステンレス板の上にPETフィルムを置き、固定した。次いで、PETフィルムの上にエポキシ樹脂組成物を数g程度載せて、溶融させた。次いで、ホットプレートの温度を100℃まで下げ、同温度で5分ほど放置した。その後、予め100℃に加熱したアプリケータを、ギャップ100μmとして掃引し、エポキシ樹脂組成物をPETフィルム上に引き伸ばして樹脂シートを作製した。
次に、シートをカットして2cm×6cmの短冊を2枚作製し、それらを長辺方向に2cmずらして2cm×4cmの面積で重なるように、50℃に加温したホットプレート上で、手動で貼り合わせた。その後、貼り合わせた2枚のうち一方のシートの長辺方向にみて下側の端部に200gの重りを吊るし、せん断荷重を1分間与えた際の挙動を観察し、次のように評価した。
【0161】
A…1分後も良好に密着
B…初期は良好に密着したが,1分以内にせん断はく離
C…貼り合わせ時は良好に密着したが,せん断荷重印加ではく離
D…貼り合わせ時に密着しない
【0162】
[靭性の評価]
エポキシ樹脂硬化物の靭性の評価の指標として、破壊靭性値(MPa・m
1/2)を測定した。試験片の破壊靭性値は、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行って算出した。評価装置には、インストロン5948(インストロン社製)を用いた。結果を表1に示す。
【0163】
[スメクチック構造の有無]
エポキシ樹脂硬化物中にスメクチック構造が形成されているか否かを確認するために、X線回折測定を行った。測定条件は、CuKα線を用い、管電圧50kV、管電流300mA、走査速度を1°/分、測定角度を2θ=2°〜30°とした。評価装置には、株式会社リガク製のX線回折装置を用いた。結果を表1に示す。
有…2θ=2°〜10°の範囲に回折ピークが現れ、スメクチック構造が形成されている。
無…2θ=2°〜10°の範囲に回折ピークが現れておらず、スメクチック構造が形成されていない。
【0164】
【表1】
【0165】
表1に示すように、硬化前の35℃における損失正接が1以上である実施例のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物から作製したシートは、35℃における損失正接が1未満である比較例のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物から作製したシートに比べて良好な密着性を示した。さらに、硬化物中にスメクチック構造が形成され、良好な破壊靭性を示した。
【0166】
日本国特許出願第2018−026891号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。