特許第6867034号(P6867034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6867034熱可塑性エラストマー組成物、部材、ウェザーシール、ウェザーシール用コーナー部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6867034
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物、部材、ウェザーシール、ウェザーシール用コーナー部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20210419BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 23/18 20060101ALI20210419BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20210419BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C08L23/00
   C08L23/04
   C08L23/14
   C08L23/18
   C08L91/00
   C09K3/10 K
   C09K3/10 Z
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-547868(P2017-547868)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081960
(87)【国際公開番号】WO2017073695
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-214859(P2015-214859)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】小西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓光
(72)【発明者】
【氏名】上原 陽介
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−072556(JP,A)
【文献】 特開2001−131360(JP,A)
【文献】 特開昭63−112649(JP,A)
【文献】 特開平07−286078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08L 23/00
C08L 23/04
C08L 23/14
C08L 23/18
C08L 91/00
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部位(X1)からなるコーナー部と、部位(Y1)からなるストレート部とを有するウェザーシールであって、
前記部位(X1)は、
オレフィン系ゴム(I)、
下記水添ブロック共重合体(II)、
ポリオレフィン系樹脂(III)、および
軟化剤(IV)
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物からなり、
前記部位(Y1)は動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)からなり、
前記熱可塑性エラストマー組成物において、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]が質量比で90/10〜10/90であり、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10〜200質量部、軟化剤(IV)の含有量が15〜300質量部である、ウェザーシール。
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンに由来する構造単位またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。
【請求項2】
前記水添ブロック共重合体(II)のガラス転移温度が−45〜0℃である、請求項1に記載のウェザーシール。
【請求項3】
前記水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜40質量%である、請求項1または2に記載のウェザーシール。
【請求項4】
水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜18質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【請求項5】
前記水添ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が同一または異なる2つの重合体ブロック(A1)と(A2)とを含有し、且つ、該水添ブロック共重合体(II)が、前記重合体ブロック(A1)、前記重合体ブロック(B)および前記重合体ブロック(A2)から構成されるトリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【請求項6】
前記水添ブロック共重合体(II)において、
前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A1)である重合体ブロック(A1)と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A2)である重合体ブロック(A2)とを有し、
前記Mp(A1)と前記Mp(A2)との比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たす、請求項5に記載のウェザーシール。
【請求項7】
前記オレフィン系ゴム(I)と前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とが架橋されてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【請求項8】
前記オレフィン系ゴム(I)が、(I−1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、並びに(I−2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【請求項9】
前記ポリオレフィン系樹脂(III)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)およびポリ(4−メチル−1−ペンテン)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【請求項10】
前記部位(X1)が射出成形により得られた部位である、請求項1〜のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【請求項11】
自動車用、船舶用または航空機用である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のウェザーシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物、部材、ウェザーシールおよびウェザーシール用コーナー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで自動車用部品に用いられてきた加硫ゴムと共に、動的架橋型熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Vulcanizates:TPV)も注目を浴びている材料であり、現在、自動車用途等で広く用いられている。
自動車用部品の1つとしてウェザーシールが挙げられる。該ウェザーシールの材料としては、これまでは、圧縮永久歪が小さく、且つ柔軟性に優れる加硫ゴムが用いられてきた。しかし、昨今の二酸化炭素の排出量削減に向けた規制に伴い、より成形加工性が良好であり、且つ比重が軽いTPVに置き換わる傾向にある(非特許文献1参照)。
自動車用のウェザーシールは、通常、ストレート部とコーナー部とを有する。工業的には、ストレート部は押出し成形によって製造されるが、コーナー部は射出成形によって製造されるため、コーナー部の材料としては、射出成形が可能なものを選択する必要がある。しかし、加硫ゴムよりも成形加工性が良好なTPVであっても、十分な成形加工性であるとは言えず、更なる改善の余地がある。そのため、ウェザーシールのストレート部の材料としては加硫ゴムまたはTPVが用いられるが、コーナー部の材料としては、諸特性を維持しながら成形加工性にも優れる別の材料を使用することが望まれる。
【0003】
ここで、制振部材;パッキンなどの建材用途;バンパー部品、エアバッグカバーなどの自動車内外装部品用途などとして有用な、成形加工性、柔軟性、制振性、高温での歪み回復性および軟化剤の保持性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が知られている(特許文献1)。
該特許文献1に記載の熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系ゴム(I)、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000である水添ブロック共重合体(II)、前記(I)以外のポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)をオレフィン系ゴム(I):水添ブロック共重合体(II)=90:10〜10:90(質量比)の割合で含有し、かつオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)を10〜200質量部、軟化剤(IV)を10〜300質量部の割合で含有する、熱可塑性エラストマー組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−080488号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JSR TECHNICAL REVIEW, No.119, 2012年, p.20-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等の検討により、特許文献1に記載の熱可塑性エラストマー組成物は成形加工性にさらなる改良の余地があることがわかり、ウェザーシールのコーナー部の材料としては、より良い材料の開発が求められている。さらに、ウェザーシールのストレート部の材料がTPVである場合には、コーナー部の材料として特許文献1に記載の熱可塑性エラストマー組成物を使用すると、ストレート部との接着性にさらなる改善の余地があることが判明した。
そこで、本発明の課題は、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。さらに、該熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有する部材、該部材を含有するウェザーシール、前記熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有するウェザーシール用コーナー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、オレフィン系ゴム(I)、特定の水添ブロック共重合体(II)、ポリオレフィン系樹脂(III)、および軟化剤(IV)を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合が特定範囲内であり、且つポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)の含有量が特定範囲内である熱可塑性エラストマー組成物であれば、前記課題を解決し得ることが判明し、本発明に至った。
【0008】
本発明は、下記[1]〜[18]に関する。
[1]オレフィン系ゴム(I)、
下記水添ブロック共重合体(II)、
ポリオレフィン系樹脂(III)、および
軟化剤(IV)
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]が質量比で90/10〜10/90であり、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10〜200質量部、軟化剤(IV)の含有量が15〜300質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。
[2]前記水添ブロック共重合体(II)のガラス転移温度が−45〜0℃である、上記[1]の熱可塑性エラストマー組成物。
[3]前記水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜40質量%である、上記[1]または[2]の熱可塑性エラストマー組成物。
[4]水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜18質量%である、上記[1]〜[3]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[5]前記水添ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が同一または異なる2つの重合体ブロック(A1)と(A2)とを含有し、且つ、該水添ブロック共重合体(II)が、前記重合体ブロック(A1)、前記重合体ブロック(B)および前記重合体ブロック(A2)から構成されるトリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物である、上記[1]〜[4]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[6]前記水添ブロック共重合体(II)において、
前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A1)である重合体ブロック(A1)と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A2)である重合体ブロック(A2)とを有し、
前記Mp(A1)と前記Mp(A2)との比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たす、上記[5]の熱可塑性エラストマー組成物。
[7]前記オレフィン系ゴム(I)と前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とが架橋されてなる、上記[1]〜[6]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[8]前記オレフィン系ゴム(I)が、(I−1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、並びに(I−2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[7]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[9]前記ポリオレフィン系樹脂(III)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)およびポリ(4−メチル−1−ペンテン)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[8]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する部材。
[11]前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有する、上記[10]の部材。
[12]前記部位(Y1)の材料が、加硫ゴムまたは動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)である、上記[11]の部材。
[13]前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物(但し、前記部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。)からなる部位(X2)を有する、上記[10]の部材。
[14]前記部位(X1)が射出成形により得られた部位である、上記[10]〜[13]のいずれかの部材。
[15]上記[10]〜[14]のいずれかの部材を含有するウェザーシール。
[16]上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有し、且つ、
前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有するか、または、前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物(但し、前記部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。)からなる部位(X2)を有する部材を含有するウェザーシールであって、
前記部位(X1)からなるコーナー部と、前記部位(X2)または(Y1)からなるストレート部とを有するウェザーシール。
[17]自動車用、船舶用または航空機用である、上記[15]または[16]のウェザーシール。
[18]上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する、ウェザーシール用コーナー部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。さらに、該熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有する部材を提供することができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ウェザーシール用、特にウェザーシールのコーナー部用として適しているため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有する部材を含有するウェザーシール、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有するウェザーシール用コーナー部材をも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
オレフィン系ゴム(I)、
下記水添ブロック共重合体(II)、
ポリオレフィン系樹脂(III)、および
軟化剤(IV)
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]が質量比で90/10〜10/90であり、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10〜200質量部、軟化剤(IV)の含有量が15〜300質量部の熱可塑性エラストマー組成物である。
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。
以下、各成分について順に詳細に説明する。
【0011】
(オレフィン系ゴム(I))
オレフィン系ゴム(I)としては、
(I−1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体ゴム(以下、「エチレン/α−オレフィン共重合体ゴム」ということがある)またはその架橋物、
(I−2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体ゴム(以下、「エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴム」ということがある)またはその架橋物、
などが挙げられる。オレフィン系ゴム(I)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、前記エチレン/α−オレフィン共重合体ゴムの架橋物と、前記エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムの架橋物を併用することが好ましい。
中でも、オレフィン系ゴム(I)としては、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムまたはその架橋物であることが、高温での歪み回復性がより良好になる点から好ましく、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムであってもよいし、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムの架橋物であってもよい。
【0012】
前記共重合体ゴムまたはその架橋物を構成する炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは1種を単独で、または2種以上を併用してもよい。中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、プロピレンおよび1−ブテンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、プロピレンであることがさらに好ましい。
【0013】
エチレン/α−オレフィン共重合体ゴムでは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/炭素数3〜20のα−オレフィン)は、機械的強度および高温での歪み回復性がバランス良く維持されるという観点から、40/60〜93/7が好ましく、50/50〜85/15がより好ましく、60/40〜80/20がより好ましい。
【0014】
また、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムを構成する非共役ポリエンとしては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン等の環状ポリエン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、7−エチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン等の、内部不飽和結合を有する炭素数6〜15の鎖状ポリエン;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカジエン等のα,ω−ジエンなどが挙げられる。
中でも、環状ポリエン、内部不飽和結合を有する炭素数6〜15の鎖状ポリエンが好ましく、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンおよび7−メチル−1,6−オクタジエンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、架橋剤との反応性に優れるという観点から、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0015】
エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムでは、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンとのモル比[エチレン/(炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエン)]が90/10〜40/60、特に80/20〜50/50であることが、柔軟性およびゴム弾性の観点から好ましい。
【0016】
また、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムのヨウ素価(架橋前のヨウ素価)は、機械的強度およびゴム弾性の観点から、好ましくは3〜40、より好ましくは5〜25、さらに好ましくは5〜15である。ヨウ素価が3以上であれば、熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形体の機械的強度が良好となる傾向にあり、ヨウ素価が40以下であれば、熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性が損なわれ難い傾向にある。なお、本明細書でいう「ヨウ素価」とは、JIS K1525(2005年)に記載の方法により測定したヨウ素価をいう。
【0017】
また、オレフィン系ゴム(I)のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、成形加工性および機械的強度の観点から、25〜350が好ましく、40〜300がより好ましく、60〜150がさらに好ましい。
なお、本明細書でいう「ムーニー粘度(ML1+4,100℃)」とは、JIS K6300−1(2013年)に記載の方法で測定した粘度をいう。
【0018】
オレフィン系ゴム(I)は、予め架橋したものを用いてもよく、その架橋度に特に制限はないが、架橋後のオレフィン系ゴム(I)を、シクロヘキサンを用いて10時間ソックスレー抽出処理した時に、シクロヘキサンに溶解せずに残留するゲルの質量割合(ゲル分率)が抽出処理前の架橋後のオレフィン系ゴムの質量に対して80%以上、特に95%以上となるような架橋度であることが、高温での歪み回復性の観点から好ましい。
なお、上記架橋反応に使用し得る架橋剤および架橋助剤は、後述する架橋剤および架橋助剤と同じものを使用することができる。
【0019】
(水添ブロック共重合体(II))
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(II)を含有してなるものである必要がある。該水添ブロック共重合体(II)を含有しない場合、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れるという課題のうちの少なくとも1つを解決することができなくなる。特に、成形加工性、並びにTPVおよび加硫ゴムに対する接着力の影響が大きい。
水添ブロック共重合体(II)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体である。
本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位並びにブタジエンに由来する構造単位における1,2−結合単位を「ビニル結合単位」と総称し、その合計量を「ビニル結合含有量」と称することがある。
【0020】
水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、芳香族ビニル化合物単位と略称することがある。)から主としてなる。ここで、「主として」とは、重合体ブロック(A)の質量に基づいて、芳香族ビニル化合物単位が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%であることを意味する。
【0021】
該重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。該重合体ブロック(A)は、前記した芳香族ビニル化合物の1種に由来する構造単位のみを含んでいてもよいし、2種以上に由来する構造単位を含んでいてもよい。中でも、重合体ブロック(A)は、スチレンに由来する構造単位から主としてなることが好ましい。
【0022】
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共に、他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量含有していてもよい。このとき、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(A)の質量に基づいて10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。かかる他の共重合性単量体としては、例えば1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどの、イオン重合し得る共重合性単量体が挙げられる。芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を含有する場合、それらの結合形態は、ランダム状、テーパード状などのいずれであってもよい。
【0023】
水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量は、水添ブロック共重合体(II)に対して5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜18質量%が特に好ましい。重合体ブロック(A)の含有量が5質量%以上であれば、機械的特性および柔軟性が良好となる傾向にあり、また、高温での良好な歪み回復性が得られ、耐熱性にも優れる傾向にある。重合体ブロック(A)の含有量が40質量%以下であれば、水添ブロック共重合体(II)の溶融粘度が高くなり過ぎず、他の成分との溶融混合が容易となる傾向にあり、さらに、柔軟性、並びにTPVおよび加硫ゴムとの接着性が優れる傾向にある。なお、水添ブロック共重合体(II)における重合体ブロック(A)の含有量は、実施例に記載した方法により求めた値である。
【0024】
水添ブロック共重合体(II)が有する重合体ブロック(B)は、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択させる少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなる。ここでいう「主として」とは、重合体ブロック(B)の質量に基づいて、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択させる少なくとも1種に由来する構造単位が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることを意味する。
なお、重合体ブロック(B)は、イソプレンに由来する構造単位、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位から主としてなることが好ましい。
【0025】
重合体ブロック(B)がイソプレンに由来する構造単位のみからなる場合は、その構造単位は2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH−C(CH)=CH−CH−;1,4−結合単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH)=CH)−CH−;3,4−結合単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH)(CH=CH)−CH−;1,2−結合単位]からなり、本発明においては、そのビニル結合含有量は45%(モル%)以上である。ビニル結合含有量は、47%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。ビニル結合含有量の上限に特に制限はないが、通常、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0026】
また、重合体ブロック(B)がイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる場合は、その構造単位は、イソプレンに由来する2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基、ならびにブタジエンに由来する2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH−CH=CH−CH−;1,4−結合単位]およびビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH−;1,2−結合単位]からなっており、ビニル結合含有量が45%(モル%)以上である。ビニル結合含有量は、47%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。ビニル結合含有量の上限に特に制限はないが、通常、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。
該共重合体ブロックでは、イソプレンに由来する構造単位とブタジエンに由来する構造単位の結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパード状のいずれであってもよい。
【0027】
重合体ブロック(B)がイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなる場合は、接着力および柔軟性の観点から、イソプレンに由来する構造単位/ブタジエンに由来する構造単位(モル比)は10/90〜99/1であることが好ましく、30/70〜99/1であることがより好ましく、40/60〜99/1であることがさらに好ましく、40/60〜70/30であることが特に好ましく、40/60〜55/45であることが最も好ましい。
【0028】
該重合体ブロック(B)は、イソプレンに由来する構造単位またはイソプレンとブタジエンに由来する構造単位と共に、他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量有していてもよい。このとき、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(B)の質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
かかる他の共重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどの芳香族ビニル化合物などの、アニオン重合可能な共重合性単量体が挙げられる。これら他の共重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合体ブロック(B)がイソプレンに由来する構造単位またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位以外に、上記した他の共重合性単量体に由来する構造単位を有する場合、それらの結合形態は、ランダム状、テーパード状のいずれでもよい。
【0029】
水添ブロック共重合体(II)は、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基の1種または2種以上を有していてもよい。
【0030】
水添ブロック共重合体(II)は、特に耐熱性および耐候性の観点から、その重合体ブロック(B)における不飽和二重結合(炭素−炭素二重結合)の70モル%以上が水素添加されている必要がある。同様の観点から、80モル%以上が水素添加されていることがより好ましく、85モル%以上が水素添加されていることがさらに好ましい。
なお、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、後述する実施例に記載されたヨウ素価測定から求めることができる。
【0031】
水添ブロック共重合体(II)は、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1個含むブロック共重合体の水素添加物である。好ましくは、水添ブロック共重合体(II)は、重合体ブロック(A)を2個以上および重合体ブロック(B)を1個以上含むブロック共重合体の水素添加物である。重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直線状に結合した形態が好ましい。特に、重合体ブロック(A)を‘A’、重合体ブロック(B)を‘B'で表したときに、(A−B)l、A−(B−A)m、B−(A−B)n(式中、l、mおよびnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す)の結合形態であるのが好ましく、ゴム弾性、機械的強度および取り扱い容易性などの観点から、(A−B)lまたはA−(B−A)mで表される結合形態であるのがより好ましく、A−Bで表されるジブロック構造またはA−B−Aで表されるトリブロック構造の結合形態であるのがさらに好ましく、A−B−Aで表されるトリブロック構造の結合形態であるのが特に好ましい。
また、水添ブロック共重合体(II)が重合体ブロック(A)を2個以上または重合体ブロック(B)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロック(A)およびそれぞれの重合体ブロック(B)は互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック構造における2個の重合体ブロック(A)は、それらを構成する芳香族ビニル化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量(Mp)は、好ましくは2,000〜60,000、より好ましくは2,500〜30,000、さらに好ましくは3,000〜20,000である。重合体ブロック(B)のピークトップ分子量は、水素添加前の状態で、好ましくは130,000〜190,000、より好ましくは50,000〜180,000である。
【0033】
前記水添ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が同一または異なる2つの重合体ブロック(A1)と(A2)とを含有し、且つ、該水添ブロック共重合体(II)が、前記重合体ブロック(A1)、前記重合体ブロック(B)および前記重合体ブロック(A2)から構成されるトリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物であることが好ましい。
この場合、水添ブロック共重合体(II)は、前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A1)である重合体ブロック(A1)と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A2)である重合体ブロック(A2)とを有し、前記Mp(A1)と前記Mp(A2)との比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たすことが、成形加工性の観点からは好ましい。該比[Mp(A1)/Mp(A2)]は、Mp(A1)がMp(A2)より小さいことを示しており、同様の観点から、より好ましくは3/10〜7/10である。該トリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物は、Mp(A1)とMp(A2)が上記の通りに異なるため、見かけ上、左右が非対称のトリブロック共重合体であるといえる。
なお、Mp(A1)とMp(A2)とが略等しい水添ブロック共重合体(II)も好ましい。ここで、略等しいとは、[Mp(A1)/Mp(A2)]がおおよそ1/1であるか、または1/1に近いことであり、より具体的には、9/10〜11/10の範囲にあることをいう。
また、Mp(A1)、Mp(A2)は、それぞれ、好ましくは1,000〜30,000、より好ましくは2,000〜20,000、さらに好ましくは2,000〜15,000である。前記数値範囲の中でも、Mp(A1)としては、特に好ましくは3,000〜10,000であり、Mp(A2)としては、特に好ましくは4,000〜14,000である。
【0034】
また、水添ブロック共重合体(II)の全体のピークトップ分子量(Mp)は、水素添加後の状態で、50,000〜200,000であり、好ましくは70,000〜200,000、より好ましくは100,000〜200,000である。水添ブロック共重合体(II)のピークトップ分子量(Mp)が上記の範囲内であれば、嵩密度が0.10〜0.40g/mlの粉末の水添ブロック共重合体(II)が容易に得られる傾向にあり、成形加工性、柔軟性および高温での歪み回復性に優れる傾向にある。
なお、該ピークトップ分子量(Mp)は、実施例に記載の方法によって求めた値である。
【0035】
水添ブロック共重合体(II)のガラス転移温度(Tg)は、制振性の観点から、好ましくは−45〜0℃、より好ましくは−45〜−5℃、さらに好ましくは−45〜−10℃、特に好ましくは−40〜−10℃である。
【0036】
<水添ブロック共重合体(II)の製造方法>
水添ブロック共重合体(II)の製造方法は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などの重合方法が挙げられる。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種とを逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることによりブロック共重合体を製造することができる。そして得られたブロック共重合体を好ましくは単離せずに引き続き不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体(II)を得ることができる。
【0037】
アルキルリチウム化合物の例としては、アルキル残基の炭素原子数が1〜10のアルキルリチウム化合物が挙げられるが、特にメチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、ペンチルリチウムが好ましい。これらのアルキルリチウム化合物などの開始剤の使用量は、水添ブロック共重合体(II)のピークトップ分子量(Mp)により適宜決定されるものであるが、重合に用いられる全モノマー100質量部に対し、好ましくは0.01〜0.2質量部用いられる。重合は、通常、好ましくは0〜80℃で、好ましくは0.5〜50時間行われる。
【0038】
水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)において、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位が、45%以上のビニル結合含有量となるためには、重合の際に共触媒としてルイス塩基を用いる。ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン系化合物が挙げられる。該ルイス塩基の使用量は、開始剤として用いるアルキルリチウム化合物のリチウム原子1モルに対して、好ましくは0.1〜1000モルである。
【0039】
水素添加反応としては、水添触媒の存在下、反応および水添触媒に対して不活性な、n−ヘキサンまたはシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒に未水添のブロック共重合体を溶解させた状態で、分子状水素を反応させる方法が好ましく用いられる。なお、芳香族ビニル化合物と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種とを逐次共重合させて得られた反応液をそのまま水添反応に付すことも可能である。
水添触媒としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの単体に担持させたものなどの不均一触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー系触媒などが用いられる。
反応は、通常、水素圧力が好ましくは0.1〜20MPa、反応温度が好ましくは20℃〜250℃、反応時間が好ましくは0.1〜100時間の条件で行われる。
【0040】
なお、例えば以下の方法により、嵩密度0.10〜0.40g/mlの粉末の水添ブロック共重合体(II)を製造できる。なお、本明細書でいう嵩密度は、秤量した粉末の水添ブロック重合体(II)をメスシリンダーに入れてその容積を測定し、重合体の質量を容積で除することにより算出した値である。
上記の水素添加反応後に濾過により水添触媒を除去した反応溶液を40〜150℃、好ましくは60〜150℃に加熱し、必要に応じて脂肪酸塩やポリオキシアルキレン誘導体などの界面活性剤を混和した状態で、100質量部/時間の速度で80〜130℃の熱水中に供給する。同時に、1MPaのスチームを40〜60質量部/時間の速度で供給し、飽和炭化水素などの不活性有機溶媒の沸点または不活性有機溶媒と水とが共沸する場合はその共沸温度以上から150℃以下の温度でスチームストリッピングした後、圧縮水絞機で含水率55質量%/WB(ウェットベース、以下同じ)以下、好ましくは45質量%/WB以下まで脱水する。次いで、スクリュー押出機型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、伝導伝熱型乾燥機、熱風乾燥機などを用いて60〜100℃で乾燥することにより、含水率0.1質量%/WB以下の所望の粉末の水添ブロック共重合体(II)を製造できる。
【0041】
(オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]は、質量比で、90/10〜10/90であり、好ましくは90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは80/20〜60/40である。この範囲であれば、成形加工性、柔軟性および高温での歪み回復性に優れる。
【0042】
(ポリオレフィン系樹脂(III))
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂(III)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂(III)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形加工性の観点から、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンに由来する構造単位の含有量(以下、エチレン含有量と略称することがある。)が60モル%以上である重合体を言い、該エチレン含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構造単位の含有量(以下、プロピレン含有量と略称することがある。)が60モル%以上である重合体を言い、該プロピレン含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、言うまでもなく、ポリオレフィン系樹脂(III)は、「ゴム」であるオレフィン系ゴム(I)とは区別される。
【0043】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのエチレンの単独重合体;エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/ヘプテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体、エチレン/4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン系共重合体が挙げられる。中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体、プロピレン/ブテン−1共重合体、プロピレン/エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン/4−メチルペンテン−1共重合体などが挙げられる。中でも、成形加工性の観点から、プロピレン単独重合体、エチレン/プロピレンランダム共重合体およびエチレン/プロピレンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂(III)の230℃、2.16kgの条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、成形加工性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.1〜50g/10分であることがより好ましく、1〜40g/10分であることがさらに好ましく、5〜40g/10分であることが特に好ましい。なお、当該MFRは、JIS K7210−1(2014年)に準拠して測定した値である。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して10〜200質量部であり、10〜100質量部が好ましく、15〜100質量部がより好ましく、20〜80質量部がより好ましく、30〜70質量部がさらに好ましい。オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して10質量部未満では、成形加工性が乏しくなり、一方、200質量部を超えると、柔軟性およびゴム弾性が低下する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量を上記範囲とすることによって、熱可塑性エラストマー組成物中でポリオレフィン系樹脂(III)が連続相をなし、その連続相中に、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)が微粒子状で分散したモルフォロジーとなり、これが、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対する接着力、柔軟性、耐候性および成形加工性に良好な影響を与えているものと推測される。
【0047】
(軟化剤(IV))
軟化剤(IV)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;落花生油、ロジンなどの植物油系軟化剤;流動パラフィン;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体などの合成軟化剤などが挙げられる。
軟化剤(IV)としては、特に40℃における動粘度が20〜800mm/s(好ましくは40〜600mm/s、より好ましくは60〜400mm/s、さらに好ましくは60〜200mm/s、特に好ましくは70〜120mm/s)である軟化剤が好ましい。なお、動粘度はJIS K2283(2000年)に準拠して測定した値である。
軟化剤(IV)の流動点は、好ましくは−40〜0℃、より好ましくは−30〜0℃である。また、軟化剤(IV)の引火点(COC法)は、好ましくは200〜400℃、より好ましくは250〜350℃である。
【0048】
軟化剤(IV)としては、石油系プロセスオイル、エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー、流動パラフィンが好ましく、石油系プロセスオイルがより好ましく、パラフィン系プロセスオイルがさらに好ましい。
軟化剤(IV)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
軟化剤(IV)の市販品としては、例えば出光興産株式会社が上市している商品名「ダイアナプロセスオイル」シリーズにおけるパラフィン系プロセスオイルおよびナフテン系プロセスオイル(好ましくはパラフィン系プロセスオイル)などを使用できる。
【0049】
軟化剤(IV)の含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して15〜300質量部であり、15〜150質量部が好ましく、20〜120質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましい。オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して300質量部を超えると、機械的特性が低下するほか、熱可塑性エラストマー組成物より得られる成形体から軟化剤(IV)がブリードアウトし易くなり、且つ機械的強度が低下する。一方、15質量部未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性および成形加工性が不足する。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物であれば、該軟化剤(IV)の含有量を少なくしても、十分な柔軟性および成形加工性を有するという利点がある。例えば特開2014−080488号公報(特許文献1)に記載の熱可塑性エラストマー組成物と比較して、同等以上の柔軟性および成形加工性を付与するための軟化剤(IV)の含有量は少ない。そのため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記軟化剤(IV)の含有量の上限値は、上記いずれの数値範囲においても、60質量部であってもよいし、50質量部であってもよいし、40質量部であってもよいし、30質量部であってもよい。
【0050】
前記オレフィン系ゴム(I)と前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)を架橋させる場合は、後述する架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を必要に応じて含有させることができる。つまり、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記オレフィン系ゴム(I)と前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とが架橋されてなるものであってもよい。このように架橋させることによって、前記モルフォロジーを形成し易くなる傾向にある。
【0051】
(架橋剤(V))
架橋剤(V)としては、例えばラジカル発生剤、硫黄および硫黄化合物などが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルモノペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートなどのジペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド;t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのモノアシルアルキルペルオキシド;t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどの過炭酸;ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドが反応性の観点から好ましい。
ラジカル発生剤を用いる場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
【0052】
硫黄化合物としては、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
硫黄または硫黄化合物を用いる場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
【0053】
架橋剤(V)としては、その他に、アルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂;p−キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなども使用することができる。
【0054】
(架橋助剤(VI))
架橋助剤(VI)としては、公知の架橋助剤を使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリセロールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレートなどの多官能性単量体;塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレン、クロルスルホン化ポリエチレンなどが挙げられる。中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
架橋助剤(VI)は、珪藻土、ホワイトカーボンなどに含浸させて用いてもよい。特に、前記多官能性単量体(さらにはトリアリルイソシアヌレート)は、珪藻土またはホワイトカーボンに含浸されていることが好ましく、ホワイトカーボンに含浸されていることがより好ましい。
架橋助剤(VI)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋助剤(VI)を用いる場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜40質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは2〜20質量部である。
【0055】
(架橋促進剤(VII))
架橋促進剤(VII)としては、例えば、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン−アセトアルデヒド反応物などのアルデヒド−アミン系反応物またはアルデヒド−アンモニア系反応物;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア類;ジベンゾチアジルジスルフィド;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類またはチウラムポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩類;亜鉛華などが挙げられる。架橋促進剤(VII)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに他の熱可塑性重合体を含有してなるものであってもよい。他の熱可塑性重合体としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物(但し、液状のものを除く。);天然ゴム;クロロプレンゴム;アクリルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
なお、他の熱可塑性重合体を含有する場合、その含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性および機械的強度が損なわれない範囲で用いればよく、他の熱可塑性重合体を添加する前の熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0057】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、さらに各種添加剤を含有させてなるものであってもよい。かかる添加剤としては、例えば滑剤、発泡剤、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、防菌剤、防かび剤、分散剤、着色剤などが挙げられる。これらのうちの1種を単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
【0058】
中でも、滑剤は熱可塑性エラストマー組成物の流動性を向上させると共に、熱劣化を抑制する作用を有するため好ましい。該滑剤としては、例えば、シリコンオイル;パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸ステアリル、不飽和脂肪酸モノアマイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
滑剤を含有する場合、その含有量は、滑剤を除く熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1質量部、さらに好ましくは、0.1〜0.8質量部である。
【0059】
また、発泡剤は、ウェザーシールの製造の際に使用されることがある。発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などの無機系発泡剤;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのN−ニトロソ系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのスルホニルヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのスルホニルセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物などの有機系発泡剤;イソブタン、ペンタンなどの加熱膨張性化合物が、塩化ビニリデン、アクロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセルに封入された熱膨張性微粒子などを挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このように、ウェザーシールを発泡体とする場合には、必要に応じて造核剤を含有させてもよい。造核剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、チタニア、酸化亜鉛、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどの、金属酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属水酸化物などを用いることができる。造核剤を用いることにより、発泡体の発泡セルのセル径の調整が容易となる傾向にあり、適度な柔軟性を有する発泡体を得易い。
【0060】
[架橋方法について]
前述のとおり、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)の部分が架橋されていてもよい。架橋方法としては、オレフィン系ゴム(I)および水添ブロック共重合体(II)に、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を適宜添加して混練する方法(架橋方法1)、樹脂架橋法(架橋方法2)、キノイド架橋法(架橋方法3)、活性エネルギー線などを用いる方法(架橋方法4)などが挙げられる。以下、これらの架橋方法について順に説明する。
【0061】
<架橋方法1について>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、オレフィン系ゴム(I)および水添ブロック共重合体(II)に、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を適宜添加して混練することで、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)を架橋できる。
例えば、前記ラジカル発生剤などの架橋剤(V)と共に、必要に応じて、前記多官能性単量体などの架橋助剤(VI)と、ジベンゾチアジルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド(いわゆるジスルフィド系化合物)などの架橋促進剤(VII)を用いてもよい。
かかる方法で架橋を行う場合、例えば、ラジカル発生剤および必要に応じて他の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性エラストマー組成物を、加熱下で溶融混練する方法などが挙げられる。加熱温度は、好ましくは140〜230℃である。溶融混練は、押出機、ニーダー、ロール、プラストグラフなどの装置でバッチ式または連続式で行うことができる。かかる溶融混練工程により架橋反応が進行する。
【0062】
また、架橋剤(V)として硫黄または硫黄化合物を用いる場合は、チアゾール類、グアニジン類、ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン−アセトアルデヒド反応物、アルデヒド−アミン系反応物などの架橋促進剤(VII)を併用するのが極めて好ましい。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋剤(V)、架橋促進剤(VII)などをロール、バンバリーミキサーなどのミキサー類を用いて、好ましくは50〜250℃(より好ましくは80〜200℃)で混練後、好ましくは60℃以上(より好ましくは90〜250℃)で通常1分〜2時間(より好ましくは5分〜1時間)維持することによって架橋を形成することができる。
【0063】
<架橋方法2について>
樹脂架橋法による架橋方法では、架橋剤(V)としてアルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂を用い、架橋助剤(VI)として塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレンまたはクロルスルホン化ポリエチレンなどを用いる。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋温度については、100〜250℃であるのが好ましく、より好ましくは130〜220℃である。樹脂架橋を行う場合は、架橋促進剤(VII)を併用するのが極めて好ましい。
【0064】
<架橋方法3について>
キノイド架橋法による架橋方法では、架橋剤(V)としてp−キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなどを用いる。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋温度については、90〜250℃であるのが好ましく、より好ましくは110〜220℃である。キノイド架橋を行う場合は、架橋促進剤(VII)を併用するのが好ましい。
【0065】
<架橋方法4について>
活性エネルギー線による架橋方法で使用し得る活性エネルギー線としては、例えば、粒子線、電磁波、およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては、電子線(EB)、α線などが挙げられ、電磁波としては、紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線(EB)または紫外線(UV)が好ましい。
照射時間および照射量に特に制限はなく、架橋の程度に合わせて任意に選択できる。
【0066】
(熱可塑性エラストマー組成物の製造方法)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に特に制限はない。
例えば、[1]オレフィン系ゴム(I)、水添ブロック共重合体(II)、ポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)を特定の割合で含有してなる熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合、予め架橋処理したオレフィン系ゴム(I)、ポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)の混合物を準備し、これに水添ブロック共重合体(II)、ポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)の混合物をさらに添加してから溶融混合する方法が挙げられる。
また、[2]オレフィン系ゴム(I)、ポリオレフィン系樹脂(III)、軟化剤(IV)、並びに必要に応じて、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)などを混合した後、水添ブロック共重合体(II)、または水添ブロック共重合体(II)および軟化剤(IV)を添加して、その混合物を溶融条件下に動的架橋する方法が、オレフィン系ゴム(I)を架橋すると同時に各成分を均一に混合できる点で好ましい。
ここで、本明細書における「溶融条件下に動的架橋する」とは、溶融状態にした前記混合物に、混練によって剪断応力をかけながら架橋することを意味する。
【0067】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、動的架橋を行う装置としては、各成分を均一に混合し得る溶融混練装置のいずれもが使用でき、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。中でも、混練中の剪断力が大きく連続運転が可能な二軸押出機を使用するのが好ましい。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を、公知の成形方法、好ましくは押出成形または射出成形によって、ウェザーシールを得ることができる。特に、ウェザーシールのコーナー部を形成する場合には、射出成形が利用される。ウェザーシールのストレート部を形成する場合には、押出成形が好ましく利用される。
また、発泡剤を含有する熱可塑性エラストマー組成物の場合、発泡成形を行なうが、発泡成形する方法としては、発泡剤の分解または反応により発泡させる化学的方法と、前記化学的方法と超臨界発泡または水発泡などの物理的方法とを併用する方法などが挙げられる。これらの方法を利用し、射出発泡成形、押出発泡成形など、発泡成形に通常用いられる方法によって発泡成形することができる。例えば、ウェザーシールのコーナー部を形成するための発泡体は、発泡剤をドライブレンドした熱可塑性エラストマー組成物を、所望の形状をしたキャビティーを備えた金型内に射出発泡成形することにより得られる。
【0068】
(熱可塑性エラストマー組成物の物性および特性)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、実施例に記載の方法に従って測定した硬度(JIS−A)が30〜90となり、詳細には40〜80となり、ウェザーシールとして相応しい柔軟性を有する。特に、グラスランのコーナー部用であれば、硬度の上限値は80以下が好ましく、76以下がより好ましく、ドアシールのコーナー部用であれば、硬度の上限値は57以下が好ましく、52以下がより好ましい。
また、実施例に記載の方法に従って測定した加硫ゴムに対する接着力が、100〜300N/cmであり、TPVに対する接着力が100〜400N/cmであるため、加硫ゴムおよびTPVに対する接着力に優れる。特に、グラスランのコーナー部用であれば、TPVに対する接着力は、250N/cm以上が好ましく、310N/cm以上がより好ましく、加硫EPDMに対する接着力は、220N/cm以上が好ましく、240N/cm以上がより好ましい(表3参照)。また、ドアシールのコーナー部用であれば、TPVに対する接着力は、110N/cm以上が好ましく、140N/cm以上がより好ましく、加硫EPDMに対する接着力は、100N/cm以上が好ましく、115N/cm以上がより好ましい(表4参照)。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐候性および成形加工性にも優れている。
【0069】
[部材、ウェザーシール、ウェザーシール用コーナー部材]
本発明は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する部材を提供する。部位(X1)は、部材の一部であってもよいし、全体であってもよい。つまり、本発明は、部位(X1)の他に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有する部材も提供する。
部位(Y1)の材料に特に制限はないが、ウェザーシール用途の場合、加硫ゴム、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)などが挙げられる。
加硫ゴムとしては、(1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体の架橋物、(2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体の架橋物、などが挙げられる。特に、加硫ゴムとしては、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体の架橋物が好ましく、エチレンとプロピレンと非共役ポリエンとの共重合体の架橋物がより好ましい。
TPVとしては、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとを含有してなるオレフィン系TPVが好ましく、ポリプロピレン樹脂とオレフィン系ゴムとを含有してなるオレフィン系TPVがより好ましい。該オレフィン系ゴムとしては、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体の架橋物が好ましく、エチレンとプロピレンと非共役ポリエンとの共重合体(EPDM)の架橋物がより好ましい。TPVとしては、「Excelink 1303B」、「Excelink 1703B」(いずれもJSR株式会社製)などの市販品を使用することもできる。
なお、「炭素数3〜20のα−オレフィン」および「非共役ポリエン」については、前記オレフィン系ゴム(I)における説明と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
加硫ゴムおよびTPVは、必要に応じて、例えば加硫助剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤、カーボンブラック、酸化亜鉛、滑剤などの各種添加剤を含有してなるものであってもよい。
【0070】
また、本発明は、前記部位(X1)の他に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X2)を有する部材も提供する。該部位(X2)の材料は、部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。部位(X2)の材料が、部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と異なるとき、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を2種以上用いた部材となる。
【0071】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成形加工性にも優れるため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)は、好ましくは、射出成形して得られた部位である。
【0072】
本発明は、前記部材を含有するウェザーシールをも提供する。より具体的には、前記部位(X1)からなるコーナー部と、前記部位(X2)または(Y1)からなるストレート部とを有するウェザーシールを提供する。
該ウェザーシールは、自動車用、船舶用または航空機用として有用である。
前記部位(X1)は、柔軟性および成形加工性に優れるため、特にコーナー部材として有用であり、ウェザーシール用コーナー部材として有用である。例えば、自動車用途であれば、グラスランのコーナー部材、ドアシールのコーナー部材などとして有用である。
【0073】
本明細書の記載事項は、いずれも任意に採用することができる。つまり、好ましいとされる事項を1つ採用するのみならず、好ましいとされる事項と、その他の好ましいとされる事項とを組み合わせて採用することもできる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、物性測定は、以下に示す方法で行った。
【0075】
(1)ピークトップ分子量(Mp)
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、水素添加前の重合体ブロック(A1)および(A2)と、水素添加後の水添ブロック共重合体(II)とにおいて、ポリスチレン換算のピークトップ分子量(Mp)を求めた。なお、重合体ブロック(A2)のMp(A2)は、水素添加後の水添ブロック共重合体(II)のMpから、水素添加前の重合体ブロック[A1−B]のMpを差し引くことによって求めた。
(GPC測定装置および測定条件)
・装置 :GPC装置「HLC−8320」(東ソー株式会社製)
・分離カラム :カラム「TSKgelSuperHZM−M」(東ソー株式会社製)
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7ml/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
・検出器:示差屈折率(RI)検出器
・検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0076】
(2)重合体ブロック(A)の含有量
水素添加後のブロック共重合体(II)をCDClに溶解してH−NMRスペクトルを測定[装置:JNM−Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、スチレンに由来するピーク強度から重合体ブロック(A)の含有量を算出した。
【0077】
(3)水添ブロック共重合体(II)の水素添加率
水素添加前後におけるブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その測定値を用いて、下記式により水添ブロック共重合体(II)の水素添加率(%)を算出した。
水素添加率(%)={1−(水素添加後のブロック共重合体のヨウ素価/水素添加前のブロック共重合体のヨウ素価)}×100
(ヨウ素価の測定方法)
水素添加前後におけるブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を用いて、ウィイス法によってヨウ素価を測定した。
【0078】
(4)重合体ブロック(B)のビニル結合含有量
水素添加前のブロック共重合体をCDClに溶解してH−NMRスペクトルを測定[装置:JNM−Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、イソプレンおよび/またはブタジエン由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位、ブタジエン構造単位における1,2−結合単位、または、イソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位の場合はそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比からビニル結合含有量(3,4−結合単位と1,2−結合単位の含有量の合計)を算出した。
【0079】
(5)分子量分布(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で求めた。
測定装置および条件は、前記ピークトップ分子量(Mp)の測定におけるGPC測定装置および測定条件と同様とした。
【0080】
(6)ガラス転移温度(℃)
示差走査型熱量計「DSC6200」(セイコーインスツル株式会社製)を用い、水添ブロック共重合体(II)を精秤し、10℃/分の昇温速度にて−120℃から100℃まで昇温し、測定曲線の変曲点の温度を読みとり、ガラス転移温度とした。
【0081】
[実施例で使用した各成分]
以下に、実施例および比較例で用いた各成分の詳細または製造方法を示す。
【0082】
〔オレフィン系ゴム(I)〕
オレフィン系ゴム(I):エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム「JSR EP37F」(JSR株式会社製、ヨウ素価=8、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)=100、エチレン含有量54モル%)
【0083】
〔水添ブロック共重合体(II)〕
(II)−1:スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例1および表1参照)
(II)−2:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例2および表1参照)
(II)−3:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例3および表1参照)
(II)−4:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例4および表1参照)
【0084】
〔水添ブロック共重合体(比較用)〕
(II')−5:スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例5および表1参照)
(II')−6:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例6および表1参照)
(II')−7:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例7および表1参照)
【0085】
[製造例1]水添ブロック共重合体(II)−1の製造
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、表1に示す使用量にて、溶媒としてシクロヘキサン、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフランを仕込んだ。60℃に昇温した後、スチレン(A1)を加えて1時間重合させ、引き続いてブタジエンおよびイソプレンの混合物を加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(A2)を加えて1時間重合することにより、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−1と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−1の各物性の測定結果を表1に示す。
【0086】
[製造例2]水添ブロック共重合体(II)−2の製造
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、表1に示す使用量にて、溶媒としてシクロヘキサン、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を仕込み、ルイス塩基としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを仕込んだ。40℃に昇温した後、スチレン(A1)を加えて1時間重合させ、引き続いてブタジエンを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(A2)を加えて1時間重合することにより、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−2と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−2の各物性の測定結果を表1に示す。
【0087】
[製造例3]水添ブロック共重合体(II)−3の製造
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、表1に示す使用量にて、溶媒としてシクロヘキサン、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフランを仕込んだ。60℃に昇温した後、スチレン(A1)を加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレンを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(A2)を加えて1時間重合することにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−3と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−3の各物性の測定結果を表1に示す。
【0088】
[製造例4]水添ブロック共重合体(II)−4の製造
製造例3において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−4と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−4の各物性の測定結果を表1に示す。
【0089】
[製造例5(比較用)]水添ブロック共重合体(II’)−5の製造
製造例1において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II’)−5と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II’)−5の各物性の測定結果を表1に示す。
【0090】
[製造例6(比較用)]水添ブロック共重合体(II’)−6の製造
製造例3において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II’)−6と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II’)−6の各物性の測定結果を表1に示す。
【0091】
[製造例7(比較用)]水添ブロック共重合体(II’)−7の製造
製造例3において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II’)−7と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II’)−7の各物性の測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
〔ポリオレフィン系樹脂(III)〕
ポリオレフィン系樹脂(III):ランダムポリプロピレン(プロピレンエチレンランダム共重合体)「J226T」(MFR[230℃、荷重21.2N]=20g/10分、株式会社プライムポリマー製)
〔軟化剤(IV)〕
軟化剤(IV):パラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスPW−90」(動粘度=95.54mm/s(40℃)、出光興産株式会社製)
〔架橋剤(V)〕
架橋剤(V):2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン/シリカ(質量比:40/60)「パーヘキサ(登録商標)25B−40」(日本油脂株式会社製)
〔架橋助剤(VI)〕
架橋助剤(VI):トリアリルイソシアヌレート/ホワイトカーボン(質量比:60/40)「タイク(登録商標)WH−60」(日本化成株式会社製)
〔滑剤〕
滑剤:不飽和脂肪酸モノアマイド「ダイヤミッド(登録商標)L−200」(日本化成株式会社製)
【0094】
[実施例1〜16、比較例1〜14]
表3または表4に示す配合割合(単位:質量部)で全成分をスーパーミキサーV−20(株式会社カワタ製)を用いてドライブレンドにて予備混合した後、二軸押出機[株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」、スクリュー長(L)/スクリュー径(D)=42]に供給して温度170〜200℃、回転数300min−1で溶融混練し、ホットカットすることによって、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
得られたペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、各物性および特性を下記方法に従って測定または評価した。結果を表3および表4に示す。
【0095】
[物性および特性の測定方法または評価方法]
(7)硬度(JIS−A)
各例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、射出成形機「EC75SX」(東芝機械株式会社製)によりシリンダー温度230℃で射出成形し、縦100mm、横35mm、厚み2mmのシートを作製した。次いで、JIS K6253−3(2012年)に準拠して、得られたシートを3枚重ねて厚み6mmの積層体とし、その硬度を測定した。硬度計はタイプAデュロメータを用い、測定値は瞬間の数値を記録した。
硬度が小さいほど、得られる成形体は柔軟性に優れることを示す。
【0096】
(8)成形加工性
各例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、射出成形機「EC75SX」(東芝機械株式会社製)によりシリンダー温度230℃で射出成形し、縦100mm、横35mm、厚み2mmのシートを作製し、該シートを縦50mm、横35mmに切り取り、試験片を作製した。該試験片中のフローマークの有無を目視で観察し、下記の基準によって、成形加工性を評価した。
A:フローマークが無い
B:フローマークが少ない
C:フローマークが多い
【0097】
(9)接着力
下記方法によって、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)からなる被着体、または加硫ゴムからなる被着体との接着力を測定した。
(TPVからなる被着体)
TPV−1:「Excelink 1703B」(JSR株式会社製)のペレットを用いて、前記「(8)成形加工性」に記載の方法に従って、縦50mm、横35mm、厚み2mmの試験片を作成し、これを被着体「TPV−1」とした。該TPV−1の前記「(7)硬度」に記載の方法に従って測定した硬度は71であった。
TPV−2:「Excelink 1303B」(JSR株式会社製)のペレットを用いたこと以外は上記TPV−1と同様にして試験片を作成し、これを被着体「TPV−2」とした。該TPV−2の前記「(7)硬度」に記載の方法に従って測定した硬度は42であった。
(加硫ゴムからなる被着体)
加硫EPDM−3:下記表2に示す配合量にて、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体ゴム「EPT4045」(三井化学株式会社製)、カーボンブラック「ダイアブラックH」(三菱化学株式会社製)、老化防止剤「ノクラック6C」(大内進興化学工業株式会社製)、ステアリン酸「ルナックS−20」(花王株式会社製)および亜鉛華「酸化亜鉛」(堺化学工業株式会社製)を、バンバリーミキサーを用いて150℃で6分間混練した(混練第一ステージ)。次いで、得られた組成物を取り出して冷却した後、下記表2に示す配合量にて加硫剤「硫黄」(微粉硫黄、200メッシュ、鶴見化学工業株式会社製)並びに加硫促進剤(1)「ノクセラーTS」(大内進興化学工業株式会社製)および加硫促進剤(2)「ノクセラーM−P」(大内進興化学工業株式会社製)を加え、バンバリーミキサーを用いて温度50℃および圧力1MPaにて20分間混練し(混練第二ステージ)、混練物を得た。
さらに圧縮成形機を用いて、下記表2に示す加硫条件にて圧縮成型し、シート(縦150mm×横150mm×厚さ2mm)を得た。このシートから縦50mm、横35mm、厚み2mmを打ち抜いて試験片を作成し、これを被着体「加硫EPDM−3」とした。この加硫EPDM−3の前記「(7)硬度」に記載の方法に従って測定した硬度は70であった。
【表2】
<接着力の測定方法>
上記のようにして得られた各被着体(縦50mm×横35mm×厚み2mm)を、縦100mm×横35mm×厚み2mmのキャビティー内に装着して、そこへ、射出成形機「EC75SX」(東芝機械株式会社製)にて、熱可塑性エラストマーを230℃で射出成形し、複合成形体のシートを得た。なお、該複合成形体のシートは完全溶融して、2mm厚の1枚のシートとなり、つまり、それぞれの被着体(TPV−1、TPV−2または加硫EPDM−3)と熱可塑性エラストマー組成物とは、そのシートの側面において接着した状態である(接着面積:35mm×2mm)。
得られた複合成形体のシート(縦100mm×横35mm×厚さ2mm)を縦100mm×横10mm×厚さ2mmに切り取り、23℃の温度条件および200mm/minの引張速度条件下でインストロン万能試験機「インストロン5566」(インストロンジャパン社製)を用いて、熱可塑性エラストマー組成物と被着体との間の接着力を測定した。
【0098】
(10)耐候性
前記「(8)成形加工性」の記載と同じ操作を行うことによりシート(縦100mm×横35mm×厚さ2mm)を得た。このシートを、「サンテストCPS+」(光源:キセノン、照射強度:550W/m、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、24時間、光暴露試験を行った。試験前後の変化の触感を調査し、下記の基準に従って耐候性を評価した。
A:変化が無い
B:若干のべたつきがある
C:べたつく
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
表3および表4より、実施例の熱可塑性エラストマー組成物はいずれも、TPV−1、TPV−2および加硫EPDM−3に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れていることがわかる。
さらに、実施例6と実施例8とを対比すると、水添ブロック共重合体(II)中の重合体ブロック(A1)と(A2)におけるピークトップ分子量(Mp)の比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たしている実施例8の方が、より一層、成形加工性に優れていることが分かる。
実施例1〜8で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、特に、自動車におけるグラスランのコーナー部用として有用である。また、実施例9〜16で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、特に、自動車におけるドアシールのコーナー部用として有用である。
一方、水素添加率が低い水添ブロック共重合体を用いた比較例1、2、8および9では、TPVに対する接着力が不十分な場合があり(比較例2参照)、また、耐候性が不足している(比較例1、2、8および9参照)ことが分かる。重合体ブロック(B)のビニル結合含有量が45%未満である水添ブロック共重合体を用いた比較例3、4、10および11では、柔軟性が不足している場合があり(比較例3および10参照)、また、TPVおよび加硫ゴムに対する接着力に乏しい場合がある(比較例4および11参照)ことがわかる。ピークトップ分子量(Mp)が20万を超える水添ブロック共重合体を用いた比較例5、6、12および13では、成形加工性に乏しく、また、柔軟性が不足する場合もある(比較例12参照)ことが分かる。さらに、水添ブロック共重合体(II)を用いなかった比較例7および14では、成形加工性に乏しく、また、加硫ゴムに対する接着力が不足する場合もある(比較例14参照)ことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れるため、ウェザーシール用、特にウェザーシールのコーナー部用として有用である。