特許第6868267号(P6868267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6868267アミノ酸含有両親媒性分子および有機ナノチューブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868267
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】アミノ酸含有両親媒性分子および有機ナノチューブ
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/062 20060101AFI20210426BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210426BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20210426BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20210426BHJP
【FI】
   C07K5/062
   A61K8/11
   A61K9/51
   A61K47/18
   B82Y5/00
   B82Y30/00
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-16835(P2017-16835)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-123092(P2018-123092A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】亀田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 光俊
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/001599(WO,A1)
【文献】 特表平11−508604(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/017520(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/93861(WO,A1)
【文献】 国際公開第99/47504(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/011865(WO,A1)
【文献】 Biopolymers,2006年,Vol.84, No.6,p.605-614
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2001年,Vol.44, No.26,p.4696-4703
【文献】 Physical Chemistry Chemical Physics,2015年,Vol.17, No.45,p.30398-30403
【文献】 Biomacromolecules,2013年,Vol.14, No.1,p.27-37
【文献】 European Journal of Organic Chemistry,2004年,No.19,p.4048-4059
【文献】 Polymer,1996年,Vol.37, No.18,p.4175-4181
【文献】 International Journal of Biological Macromolecules,1983年,Vol.5, No.1,p.42-48
【文献】 DATABASE REGISTRY (STN) RN 1822264-22-1, [online],2015年12月 3日,[Retrieved on 2020.11.24]
【文献】 DATABASE REGISTRY (STN) RN 2058397-13-8, [online],2017年 1月25日,[Retrieved on 2020.11.24]
【文献】 Chemistry of Materials,2008年,Vol.20, No.6,p.2282-2290
【文献】 Chemistry - An Asian Journal,2009年,Vol.4, No.12,p.1817-1823
【文献】 Langmuir,2016年,Vol.32, No.7,p.1836-1845
【文献】 Physical Chemistry Chemical Physics,2014年,Vol.16, No.13,p.6041-6049
【文献】 Langmuir,2014年,Vol.30, No.3,p.929-936
【文献】 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2010年,Vol.20, No.24,p.7388-7392
【文献】 Archives of Biochemistry and Biophysics,1966年,Vol.114, No.3,p.459-464
【文献】 European Journal of Inorganic Chemistry,2004年,No.20,p.4140-4145
【文献】 DATABASE REGISTRY (STN) RN 309295-67-8, [online],2000年12月18日,[Retrieved on 2020.11.24]
【文献】 DATABASE REGISTRY (STN) RN 1026546-84-8, [online],2008年 6月 8日,[Retrieved on 2020.11.24]
【文献】 DATABASE REGISTRY (STN) RN 1026530-00-6, [online],2008年 6月 8日,[Retrieved on 2020.11.24]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/00−5/12
A61K 8/00−9/72
A61K 47/00−47/69
B82Y 5/00
B82Y 30/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表わされるアミノ酸含有両親媒性分子を含有し、外表面にRが存在し、内表面にRが存在する有機ナノチューブ
【化1】


(式中、lはであり、mは11であり、nは〜4であり、Aはグリシン以外のアミノ酸残基であり、RはH、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、エチルカルボニル基PEG化カルボニル基であり、RはOH、OMe、OEt、エチルアミノ基またはヒドロキシエチルアミノ基である。)
【請求項2】
下記一般式2で表わされるアミノ酸含有両親媒性分子を含有し、外表面に前記Rが存在し、内表面に前記Rが存在する有機ナノチューブ
【化2】


(式中、lはであり、mは11であり、nは〜4であり、Aはグリシン以外のアミノ酸残基であり、RはH、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルエチルカルボニル基PEG化カルボニル基であり、RはOH、OMe、OEt、エチルアミノ基またはヒドロキシエチルアミノ基である。)
【請求項3】
請求項1または2において、
前記アミノ酸残基が、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、フェニルアラニン残基、トリプトファン残基およびチロシン残基から選択される少なくとも一種である有機ナノチューブ
【請求項4】
請求項において、
前記RHのカチオン性基であり、前記ROHのアニオン性基、ヒドロキシエチルアミノ基の中性基、またはOMe、OEt、もしくはエチルアミノ基から選択される疎水性基である有機ナノチューブ。
【請求項5】
請求項において、
前記RPEG化カルボニル基の中性基であり、前記ROHのアニオン性基またはOMe、OEt、もしくはエチルアミノ基から選択される疎水性基である有機ナノチューブ。
【請求項6】
請求項において、
前記Rtert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、またはエチルカルボニル基から選択される疎水性基であり、前記ROHのアニオン性基またはヒドロキシエチルアミノ基のから選択される中性基である有機ナノチューブ。
【請求項7】
請求項において、
前記ROHのアニオン性基であり、前記RHのカチオン性基、PEG化カルボニル基の中性基、またはtert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、もしくはエチルカルボニル基から選択される疎水性基である有機ナノチューブ。
【請求項8】
請求項において、
前記がヒドロキシエチルアミノ基の中性基であり、前記RHのカチオン性基またはtert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、もしくはエチルカルボニル基から選択される疎水性基である有機ナノチューブ。
【請求項9】
請求項において、
前記ROMe、OEt、またはエチルアミノ基から選択される疎水性基であり、前記RHのカチオン性基またはPEG化カルボニル基の中性基である有機ナノチューブ。
【請求項10】
請求項のいずれかにおいて、
前記Rである有機ナノチューブ。
【請求項11】
請求項のいずれかにおいて、
前記ROHである有機ナノチューブ。
【請求項12】
請求項のいずれかにおいて、
前記Rヒドロキシエチルアミノ基である有機ナノチューブ。
【請求項13】
請求項のいずれかにおいて、
前記Rが、OMe、OEt、またはエチルアミノ基である有機ナノチューブ。
【請求項14】
請求項のいずれかにおいて、
前記Rが、PEG化カルボニル基である有機ナノチューブ。
【請求項15】
請求項のいずれかにおいて、
前記Rが、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはエチルカルボニル基である有機ナノチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸を含有する両親媒性分子と、このアミノ酸含有両親媒性分子から形成され、有効成分のカプセル化等に用いられる有機ナノチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖アミンと脂肪酸、またはアミノ酸と脂肪酸から一段階で合成できる糖脂質またはペプチド脂質を、水中または有機溶媒中で自己組織化させることで、数十〜数百グラムのチューブ状ナノ構造体(有機ナノチューブ)が簡便に量産できる(特許文献1から特許文献4)。この有機ナノチューブは、脂質分子の二分子膜構造から成り、内表面および外表面には同じ糖残基またはアミノ酸残基が配置される。このような内外表面が同一の官能基で被覆された有機ナノチューブは、外表面へのゲストの非特異吸着により、効率的で選択的なゲストのカプセル化が不可能である(非特許文献1)。
【0003】
液相中での自己組織化により、長鎖ジカルボン酸の片方のC端だけに糖アミンを結合させた非対称脂質(特許文献5)や、長鎖ジカルボン酸の両方のC端に、糖アミンと、エチレンジアミンまたはオリゴグリシン誘導体をそれぞれ結合させた非対称脂質(特許文献6から特許文献8)からも、有機ナノチューブが形成できる。これらの有機ナノチューブは、非対称脂質が平行に並んだ単分子膜構造を有し、外表面に糖残基が配置される一方、内表面にカルボキシル基、アミノ基、またはグリシン残基などが配置される。
【0004】
このような内外表面が異なる官能基で被覆された有機ナノチューブは、ゲストと相互作用する官能基を内表面に配置できるため、効率的で選択的なゲストのカプセル化が可能である(非特許文献2)。しかしながら、内外表面が異なる官能基で被覆された有機ナノチューブには、非対称脂質が逆平行に並んだ単分子膜からなる有機ナノチューブや、その他のナノ構造体が共存する場合がある。また、非対称脂質の合成には、煩雑なカラムクロマトグラフィーや抽出の精製工程を含む十段階程度の工程が必要である。このため、非対称脂質の量産は極めて困難であった(非特許文献3)。
【0005】
長鎖アミノカルボン酸のN端にオリゴグリシンが結合し、C端に糖アミンが結合した非対称脂質は、合成の工程数が少ない(非特許文献4)。また、長鎖アミノカルボン酸二量体のC端にリシンが結合した非対称脂質も、合成の工程数が少ない(非特許文献5)。これらの非対称脂質は、単分子膜構造からなる有機ナノチューブを形成する。非特許文献4に記載された非対称脂質からなる有機ナノチューブは、内径が約8nmで、内外表面がグリシンのアミノ基と糖残基とでそれぞれ被覆されている。また、非特許文献5に記載された非対称脂質からなる有機ナノチューブは、内径が約40nmで、内外表面がアミノ基とリシンのアミノ基およびカルボキシル基とでそれぞれ被覆されている。
【0006】
このため、これらの有機ナノチューブは、プロトン化によってカチオン性を帯びた内表面アミノ基により、静電相互作用を介して、内径より小さなアニオン性ゲストを効率的かつ選択的にカプセル化できる。しかしながら、これらの有機ナノチューブは、内径より大きなアニオン性ゲストや、大きさに関わらずカチオン性ゲストおよび疎水性ゲストをカプセル化できない。このため、これらの有機ナノチューブでは、ゲストが限定されていた(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−224717号公報
【特許文献2】特開2008−030185号公報
【特許文献3】特開2009−233825号公報
【特許文献4】特開2012−188484号公報
【特許文献5】特許第4174702号公報
【特許文献6】特許第5721130号公報
【特許文献7】特許第5807927号公報
【特許文献8】米国特許第9018156号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】亀田ら, 高分子論文集, Vol.67, No.10, p.560-573 (2010)
【非特許文献2】T. Shimizu et al., Langmuir, 2016, 32, p.12242-12264
【非特許文献3】N. Kameta et al., Soft Matter 7, 85 (2011)
【非特許文献4】N. Kameta et a., Chem. Lett. (2007)
【非特許文献5】J.-H. Fuhrhop et al., J. Am. Chem. Soc., 115, 1600 (1993)
【非特許文献6】N. Kameta et al., Soft Matter 4, 1681 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、様々な種類のゲストをカプセル化でき、量産が容易な有機ナノチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様のアミノ酸含有両親媒性分子は、下記一般式1で表わされる
【0011】
【化1】
【0012】
本発明の他の態様のアミノ酸含有両親媒性分子は、下記一般式2で表わされる
【0013】
【化2】
【0014】
一般式1および一般式2において、lは1または2であり、mは1〜11であり、nは0〜4であり、Aはグリシン以外のアミノ酸であり、R1はH、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、脂肪酸、PEG化カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン、またはアミノカルボン酸であり、R2はOH、OMe、OEt、OPr、O−tert−Bu、Oベンゾイル、脂肪アミン、PEG化アミン、アミノアルコール、またはアミノカルボン酸エステルである。
【0015】
本発明のある態様の有機ナノチューブは、一般式1で表わされるアミノ酸含有両親媒性分子を含有し、外表面にR1が存在し、内表面にR2が存在する。本発明の他の態様の有機ナノチューブは、一般式2で表わされるアミノ酸含有両親媒性分子を含有し、外表面にR2が存在し、内表面にR1が存在する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、様々な種類のゲストをカプセル化でき、量産が容易な有機ナノチューブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係るアミノ酸含有両親媒性分子と、このアミノ酸含有両親媒性分子が形成する有機ナノチューブを模式的に示した図。
図2】本発明の第二実施形態に係るアミノ酸含有両親媒性分子と、このアミノ酸含有両親媒性分子が形成する有機ナノチューブを模式的に示した図。
図3】本発明の第一実施形態に係る有機ナノチューブの透過型電子顕微鏡像。
図4】本発明の第二実施形態に係る有機ナノチューブの透過型電子顕微鏡像。
図5】本発明の第一実施形態に係る有機ナノチューブの透過型電子顕微鏡像。
図6】実施例で得られた有機ナノチューブに包接された色素の放出量の時間変化を示すグラフで、(a)は実施例35で得られた有機ナノチューブに包接されたローダミン6Gの放出を、(b)は実施例36で得られた有機ナノチューブに包接されたカルボキシフルオロセインの放出をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のアミノ酸含有両親媒性分子および有機ナノチューブについて、図面を参照しながら実施形態と実施例に基づいて説明する。なお、重複説明は適宜省略する。また、本願では、2つの数値の間に「〜」を記載して数値範囲を表す場合、この2つの数値も数値範囲に含まれるものとする。
【0019】
本発明の第一実施形態に係るアミノ酸含有両親媒性分子は、下記一般式1で表わされる。
【0020】
【化3】
【0021】
ここで、lは1または2である。mは1〜11である。nは0〜4である。Aはグリシン以外のアミノ酸である。このようなアミノ酸として、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、またはヒスチジンが例示できる。
【0022】
1は、H、tert−ブトキシカルボニル(以下「Boc」と記載することがある)、ベンジルオキシカルボニル(以下「Z」と記載することがある)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(以下「Fmoc」と記載することがある)、脂肪酸、PEG化カルボン酸(PEGはポリエチレングリコール)、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン、またはアミノカルボン酸である。R2は、OH、OMe(Meはメチル)、OEt(Etはエチル)、OPr(Prはプロピル)、O−tert−Bu(Buはブチル)(以下「Ot−Bu」と記載することがある)、Oベンゾイル(以下「OBz」と記載することがある)、脂肪アミン、PEG化アミン、アミノアルコール、またはアミノカルボン酸エステルである。
【0023】
図1は、第一実施形態のアミノ酸含有両親媒性分子と、このアミノ酸含有両親媒性分子が形成する本発明の第一実施形態に係る有機ナノチューブを模式的に示している。本実施形態の有機ナノチューブは、図1に示すように、一般式1で表わされるアミノ酸含有両親媒性分子を含有し、外表面にR1が存在し、内表面にR2が存在する。
【0024】
本発明の第二実施形態に係るアミノ酸含有両親媒性分子は、下記一般式2で表わされる。l、m、n、A、R1、およびR2は、一般式1の場合と同じである。
【0025】
【化4】
【0026】
図2は、第二実施形態のアミノ酸含有両親媒性分子と、このアミノ酸含有両親媒性分子が形成する本発明の第二実施形態に係る有機ナノチューブを模式的に示している。本実施形態の有機ナノチューブは、図2に示すように、一般式2で表わされるアミノ酸含有両親媒性分子を含有し、外表面にR2が存在し、内表面にR1が存在する。各実施形態の有機ナノチューブは、市販品を原料として、簡便な再沈・再結晶の精製工程を含む3〜7段階の工程を経て合成できる。
【0027】
第一実施形態の有機ナノチューブでは、R1がカチオン性基のとき、R2がアニオン性基、中性基、または疎水性基であることが好ましい。R1が中性基のとき、R2がアニオン性基または疎水性基であることが好ましい。R1が疎水性基のとき、R2がアニオン性基または中性基であることが好ましい。第二実施形態の有機ナノチューブでは、R2がアニオン性基のとき、R1がカチオン性基、中性基、または疎水性基であることが好ましい。R2が中性基のとき、R1がカチオン性基または疎水性基であることが好ましい。R2が疎水性基のとき、R1がカチオン性基または中性基であることが好ましい。
【0028】
このような構成にすることによって、内径が5〜40nmの有機ナノチューブがアミノ酸含有両親媒性分子から簡易に製造できるとともに、有機ナノチューブの内側に様々な種類のゲストを取り込めるからである。このため、有機ナノチューブは、様々な種類のゲストを選択的かつ効率的にカプセル化でき、カプセル化されたゲストは、有機ナノチューブへの刺激に応じて放出の制御ができる。
【0029】
カチオン性基のR1としては、Hまたはアミノカルボン酸が例示できる。アニオン性基のR2としては、OHまたはカルボキシルアミンが例示できる。中性基のR2としては、PEG化アミンまたはアミノアルコールが例示できる。疎水性基のRとしては、OMe、OEt、OPr、Ot−Bu、OBz、脂肪アミン、またはアミノカルボン酸エステルが例示できる。中性基のR1としては、PEG化カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、またはラクトンが例示できる。疎水性基のR1としては、Boc、Z、Fmoc、または脂肪酸が例示できる。
【実施例】
【0030】
実施例1:アミノ酸含有両親媒性分子の中間体1−Phe−X(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=フェニルアラニン(以下「Phe」と記載することがある)、R1=BocまたはZ、R2=OEt)の合成
メタノール150mLとTHF50mLの混合液中で、12−アミノドデカン酸1.5g(6.9mmol)と、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンスクシンイミジル(以下「Boc−Phe−OSu」と記載することがある。OSuはN−ヒドロキシスクシンイミド基(NHS基)を示す)2.5g(6.9mmol)またはN−(ベンジルオキシカルボニル)−L−フェニルアラニンスクシンイミジル(以下「Z−Phe−OSu」と記載することがある)2.7g(6.9mmol)を数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液と水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。
【0031】
トリエチルアミン0.7g(6.9mmol)および縮合剤4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(以下「DMT−MM」と記載することがある)1.9g(6.9mmol)の存在下、得られた固体とHCl・H2N−GlyGly−COOEt1.4g(6.9mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0032】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−Xであることを確認した(3.6g(5.9mmol)、収率86%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.24 (NH, 1H, t), 8.08 (NH, 1H, t), 7.81 (NH, 1H, t), 7.24 (C6H5, 5H, m), 6.86 (NH, 1H, d), 4.08 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.03 (-CH2-, 2H, m), 2.89 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.74 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.47 (-CH2-, 2H, t), 1.30 (-O(CH3)3, 9H, s), 1.23 (-CH2-, 16H, m), 1.18 (-CH3, 3H, t).
【0033】
実施例2:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−a(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=H、R2=OEt)の合成
N,N−ジメチルホルミアミド100mLに、実施例1で得られた中間体1−Phe−X1g(1.7mmol)を溶解した。4NのHClと酢酸エチル(以下「AcOEt」と記載することがある)の混合液20mLをこの溶液に滴下し、6時間撹拌した後、溶媒を留去して生成物を得た。
【0034】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−aの塩酸塩であることを確認した(0.8g(1.5mmol)、収率90%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.22 (NH, 1H, dd), 8.06 (NH, 1H, dd), 7.27 (NH, H, dd), 7.20 (C6H5, 5H, m), 4.08 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.04 (-CH2-, 2H, m), 2.89 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.73 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.47 (-CH2-, 2H, t), 1.30 (-CH2-, 2H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m), 1.19 (-CH3, 3H, t).
【0035】
実施例3:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−b(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=H、R2=OH)の合成
水5mLおよびエタノール40mLの混合液に2当量の水酸化カリウムを溶かした溶液中で、実施例2で得られた1−Phe−a0.8g(1.5mmol)を6時間撹拌した後、溶媒を留去した。得られた固体を少量の水に溶解した後、濃HClを加えて固体を析出させ、濾過により回収し、真空乾燥して生成物を得た。
【0036】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−bの塩酸塩であることを確認した(0.7g(1.4mmol)、収率95%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.51 (NH, 1H, t), 8.41 (NH3, 3H, br), 8.16 (NH, H, t), 8.11 (NH, 1H, t), 7.30 (C6H5, 2H, m), 7.25 (C6H5, 3H, m), 3.97 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.75 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.08 (-CH2-, 2H, m), 3.04 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.92 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.13 (-CH2-, 2H, t), 1.48 (-CH2-, 2H, t), 1.24 (-CH2-, 16H, m).
【0037】
実施例4:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−c(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=H、R2=エタノールアミン)の合成
水5mLおよびエタノール40mLの混合液に1.5当量の水酸化カリウムを溶かした溶液中で、実施例1で得られた中間体1−Phe−X0.6g(1.0mmol)を6時間撹拌した後、溶媒を留去した。固体を少量の水に溶解した後、濃HClを加えて固体を析出させ、濾過により回収し、真空乾燥した。トリエチルアミン0.1g(1.0mmol)と縮合剤DMT−MM0.3g(1.0mmol)の存在下、得られた固体とエタノールアミン0.12g(2.0mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0038】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−cの塩酸塩であることを確認した(0.4g(5.9mmol)、収率73%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.41 (NH, 1H, t), 8.16 (NH, H, t), 8.08 (NH, 1H, t), 7.80 (NH, 1H, t), 7.30 (C6H5, 2H, m), 7.25 (C6H5, 3H, m), 3.97 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.75 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.39 (ethanolamine-CH2-, 2H, t), 3.13 (ethanolamine-CH2-, 2H, q), 3.08 (-CH2-, 2H, m), 3.04 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.92 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.13 (-CH2-, 2H, t), 1.48 (-CH2-, 2H, t), 1.24 (-CH2-, 16H, m).
【0039】
実施例5:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−d(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=MeO−(CH2)2−O−(CH2)2−COOH(以下「m−dPEG2カルボン酸」と記載することがある)、R2=OEt)の合成
実施例2で得られた1−Phe−a0.20g(0.40mmol)およびMeO−(CH2)2−O−(CH2)2−CO−OBu(以下「m−dPEG−NHS ester」と記載することがある)100mg(0.40mmol)を、メタノール中で数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0040】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−dであることを確認した(0.24g(0.38mmol)、収率96%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.22 (NH, 1H, dd), 8.19 (NH, 1H, t), 8.06 (NH, 1H, dd), 7.27 (NH, H, dd), 7.20 (C6H5, 5H, m), 4.08 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (PEG-CH2-, 2H, t), 3.48 (PEG-CH2-, 4H, m), 3.28 (PEG-OCH3, 3H, s), 3.04 (-CH2-, 2H, m), 2.89 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.73 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.39 (PEG-CH2-, 2H, t), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.47 (-CH2-, 2H, t), 1.30 (-CH2-, 2H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m), 1.19 (-CH3, 3H, t).
【0041】
実施例6:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−e(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=m−dPEG2カルボン酸、R2=OH)の合成
水2mLおよびエタノール20mLの混合液に1.5当量の水酸化カリウムを溶かした溶液中で、実施例5で得られた1−Phe−d0.2g(0.32mmol)を6時間撹拌した後、溶媒を留去した。残った固体を少量の水に溶解した後、濃HClを加え、固体を析出させ、濾過により回収し、真空乾燥して生成物を得た。
【0042】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−eであることを確認した(0.19g(0.32mmol)、収率100%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.22 (NH, 1H, dd), 8.19 (NH, 1H, t), 8.06 (NH, 1H, dd), 7.27 (NH, H, dd), 7.20 (C6H5, 5H, m), 4.08 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (PEG-CH2-, 2H, t), 3.48 (PEG-CH2-, 4H, m), 3.28 (PEG-OCH3, 3H, s), 3.04 (-CH2-, 2H, m), 2.89 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.73 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.39 (PEG-CH2-, 2H, t), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.47 (-CH2-, 2H, t), 1.30 (-CH2-, 2H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m).
【0043】
実施例7:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−f(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=プロピオン酸、R2=OH)の合成
実施例3で得られた1−Phe−b0.5g(1.0mmol)およびプロピオン酸クロライド0.09g(1.0mmol)をメタノール中で数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0044】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−fであることを確認した(0.5g(1.0mmol)、収率98%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.51 (NH, 1H, t), 8.16 (NH, H, t), 8.11 (NH, 1H, t), 7.70 (NH, 1H, t), 7.30 (C6H5, 2H, m), 7.25 (C6H5, 3H, m), 3.97 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.75 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.08 (-CH2-, 2H, m), 3.05 (-CH2, 2H, ddd), 3.04 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.92 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.13 (-CH2-, 2H, t), 1.48 (-CH2-, 2H, t), 1.24 (-CH2-, 16H, m), 0.97 (-CH3, 3H, t).
【0045】
実施例8:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−g(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=プロピオン酸、R2=エタノールアミン)の合成
縮合剤DMT−MM0.3g(1.0mmol)の存在下、実施例7で得られた1−Phe−f0.5g(1.0mmol)とエタノールアミン0.06g(1.0mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0046】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Phe−gであることを確認した(0.5g(0.9mmol)、収率91%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.51 (NH, 1H, t), 8.16 (NH, H, t), 8.11 (NH, 1H, t), 8.08 (NH, 1H, t), 7.70 (NH, 1H, t), 7.30 (C6H5, 2H, m), 7.25 (C6H5, 3H, m), 3.97 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.75 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.39 (ethanolamine-CH2-, 2H, t), 3.13 (ethanolamine-CH2-, 2H, q), 3.08 (-CH2-, 2H, m), 3.05 (-CH2, 2H, ddd), 3.04 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.92 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.13 (-CH2-, 2H, t), 1.48 (-CH2-, 2H, t), 1.24 (-CH2-, 16H, m), 0.97 (-CH3, 3H, t).
【0047】
実施例9:アミノ酸含有両親媒性分子の中間体2−Phe−X(一般式2で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=Z、R2=OEt)の合成
メタノール150mLおよびTHF50mLの混合液中で、12−アミノドデカン酸3.0g(14mmol)とZ−GlyGly−OSu5.0g(14mmol)を数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液と水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。トリエチルアミン1.4g(14mmol)と縮合剤DMT−MM3.9g(14mmol)の存在下、得られた固体とHCl・HN−Phe−COOEt3.2g(14mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0048】
1H−NMRより、この生成物が目的物2−Phe−Xであることを確認した(7.5g(12mmol)、収率84%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.23 (NH, 1H, dd), 8.15 (NH, 1H, dd), 7.73 (NH, 1H, dd), 7.55 (NH, 1H, dd), 7.36 (Z-C6H5, 5H, m), 7.27 (phenylalanine-C6H5, 2H, m), 7.22 (phenylalanine-C6H5, 3H, m), 5.04 (Z-CH2, 2H, s), 4.43 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 4.23 (-OCH2-, 2H, q), 3.66 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.64 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.04 (-CH2-, 2H, m), 2.99 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.88 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.03 (-CH2-, 2H, t), 1.38 (-CH2-, 4H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m), 1.11 (-CH3, 3H, t).
【0049】
実施例10:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−a(一般式2で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=Z、R2=OH)の合成
水10mLおよびエタノール100mLの混合液に1.5当量の水酸化カリウムを溶かした溶液中で、実施例9で得られた中間体2−Phe−X1.0g(1.6mmol)を6時間撹拌した後、溶媒を留去した。残った固体を少量の水に溶解した後、濃HClを加え、固体を析出させ、濾過により回収し、真空乾燥して生成物を得た。
【0050】
1H−NMRより、この生成物が目的物2−Phe−aであることを確認した(1.0g(1.6mmol)、収率100%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.23 (NH, 1H, dd), 8.15 (NH, 1H, dd), 7.73 (NH, 1H, dd), 7.55 (NH, 1H, dd), 7.36 (Z-C6H5, 5H, m), 7.27 (phenylalanine-C6H5, 2H, m), 7.22 (phenylalanine-C6H5, 3H, m), 5.04 (Z-CH2, 2H, s), 4.43 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 3.66 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.64 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.04 (-CH2-, 2H, m), 2.99 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.88 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.03 (-CH2-, 2H, t), 1.38 (-CH2-, 4H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m).
【0051】
実施例11:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−b(一般式2で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=H、R2=OH)の合成
活性炭にPdを担持させた触媒(以下「Pd/C」と記載することがある)の存在下で水素ガスを通気させながら、実施例10で得られた2−Phe−a1.0g(1.6mmol)をメタノール中で3時間撹拌した。濾過によりPd/Cを除去した後、溶媒を留去し、残った固体を真空乾燥して生成物を得た。
【0052】
1H−NMRより、この生成物が目的物2−Phe−bであることを確認した(0.8g(1.6mmol)、収率100%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.09 (NH, 1H, d), 7.74 (NH, 2H, t), 7.23 (phenylalanine-C6H5, 5H, m), 4.41 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.05 (-CH2-, 2H, m), 3.03 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.83 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.02 (-CH2-, 2H, t), 1.37 (-CH2-, 4H, t), 1.24 (-CH2-, 14H, m).
【0053】
実施例12:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−c(一般式2で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=m−dPEG2カルボン酸、R2=OH)の合成
実施例11で得られた2−Phe−b0.19g(0.40mmol)およびm−dPEG2−NHS ester100mg(0.40mmol)をメタノール中で数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥して生成物を得た。
【0054】
1H−NMRより、この生成物が目的物2−Phe−cであることを確認した(0.23g(0.38mmol)、収率95%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.19 (NH, 1H, d), 8.17 (NH, 1H, t), 7.70 (NH, 1H, t), 7.55 (NH, 1H, t), 7.23 (phenylalanine-C6H5, 5H, m), 4.41 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (PEG-CH2-, 2H, t), 3.48 (PEG-CH2-, 4H, m), 3.28 (PEG-OCH3, 3H, s), 3.05 (-CH2-, 2H, m), 3.03 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.83 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.39 (PEG-CH2-, 2H, t), 2.02 (-CH2-, 2H, t), 1.37 (-CH2-, 4H, t), 1.24 (-CH2-, 14H, m).
【0055】
実施例13:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−d(一般式2で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=H、R2=エタノールアミン)の合成
縮合剤DMT−MM0.2g(0.8mmol)の存在下、実施例10で得られた2−Phe−a0.5g(0.8mmol)とエタノールアミン0.05g(0.8mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。Pd/Cの存在下で水素ガスを通気させながら、得られた固体をメタノール中で3時間撹拌した。濾過によりPd/Cを除去した後、溶媒を留去し、残った固体を真空乾燥して生成物を得た。
【0056】
1H−NMRより、この生成物が目的物2−Phe−dであることを確認した(0.4g(0.7mmol)、収率83%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.09 (NH, 1H, d), 7.74 (NH, 2H, t), 7.55 (NH, 1H, t), 7.23 (phenylalanine-C6H5, 5H, m), 4.41 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.39 (ethanolamine-CH2-, 2H, t), 3.13 (ethanolamine-CH2-, 2H, q), 3.05 (-CH2-, 2H, m), 3.03 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.83 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.02 (-CH2-, 2H, t), 1.37 (-CH2-, 4H, t), 1.24 (-CH2-, 14H, m).
【0057】
実施例14:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−e(一般式2で、l=1、m=11、n=2、A=Phe、R1=H、R2=エチルアミン)の合成
縮合剤DMT−MM0.20g(0.8mmol)の存在下、実施例10で得られた2−Phe−a0.50g(0.8mmol)とエチルアミン0.036g(0.8mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。Pd/Cの存在下で水素ガスを通気させながら、得られた固体をメタノール中で3時間撹拌した。濾過によりPd/Cを除去した後、溶媒を留去し、残った固体を真空乾燥して生成物を得た。
【0058】
1H−NMRより、この生成物が目的物2−Phe−eであることを確認した(0.37g(0.73mmol)、収率92%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.24 (NH, 1H, d), 8.10 (NH, 1H, t), 7.84 (NH, 1H, t), 7.70 (NH, 1H, t), (phenylalanine-C6H5, 5H, m), 4.41 (phenylalanine-CH-, 1H, m), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.60 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.05 (-CH2-, 2H, m), 3.05 (-CH2-, 2H, m), 3.03 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.83 (phenylalanine-CH2-, 1H, m), 2.02 (-CH2-, 2H, t), 1.37 (-CH2-, 4H, t), 1.24 (-CH2-, 14H, m), 0.97 (-CH3, 3H, t).
【0059】
実施例15:アミノ酸含有両親媒性分子1−Ala−a(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=アラニン(以下「Ala」と記載することがある)、R1=H、R2=OEt)の合成
メタノール150mLとTHF50mLの混合液中で、12−アミノドデカン酸1.5g(7.0mmol)とBoc−Ala−OSu2.0g(7.0mmol)を数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液と水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。トリエチルアミン0.7g(7.0mmol)と縮合剤DMT−MM1.9g(7.0mmol)の存在下、得られた固体とHCl・H2N−GlyGly−COOEt1.4g(7.0mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。得られた固体をN,N−ジメチルホルミアミド140mLに溶解した。4NのHClとAcOEtの混合液50mLをこの溶液に滴下し、6時間撹拌した後、溶媒を留去して生成物を得た。
【0060】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Ala−aの塩酸塩であることを確認した(2.7g(5.8mmol)、収率83%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.88 (NH, 1H, t), 8.49 (NH, 1H, t), 8.24 (NH3, 3H, br), 8.10 (NH, H, t), 4.50 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.77 (alanine-CH, 1H, m), 3.71 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.07 (-CH2-, 2H, m), 2.12 (-CH2-, 2H, t), 1.48 (-CH2-, 2H, t), 1.41 (-CH2-, 2H, t), 1.34 (alanine-CH3, 3H, d), 1.24 (-CH2-, 14H, m), 1.19 (-CH3, 3H, t).
【0061】
実施例16:アミノ酸含有両親媒性分子1−Val−a(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=バリン(以下「Val」と記載することがある)、R1=H、R2=OEt)の合成
メタノール150mLとTHF50mLの混合液中で、12−アミノドデカン酸1.5g(7.0mmol)とBoc−Val−OSu2.2g(7.0mmol)を数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液と水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。トリエチルアミン0.7g(7.0mmol)と縮合剤DMT−MM1.9g(7.0mmol)の存在下、得られた固体とHCl・H2N−GlyGly−COOEt1.4g(7.0mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。得られた固体をN,N−ジメチルホルミアミド140mLに溶解した。4NのHClとAcOEtの混合液50mLをこの溶液に滴下し、6時間撹拌した後、溶媒を留去して生成物を得た。
【0062】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Val−aの塩酸塩であることを確認した(2.8g(5.7mmol)、収率81%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.45 (NH, 1H, t), 8.23 (NH, 1H, t), 8.14 (NH3, 3H, br), 8.06 (NH, H, t), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.62 (valine-CH, 1H, m), 3.03 (-CH2-, 2H, m), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.87 (valine-CH, 1H, m), 1.48 (-CH2-, 2H, t), 1.42 (-CH2-, 2H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m), 1.19 (-CH3, 3H, t) 0.92 (valine-CH3, 6H, d).
【0063】
実施例17:アミノ酸含有両親媒性分子1−Leu−a(一般式1で、l=1、m=11、n=2、A=ロイシン(以下「Leu」と記載することがある)、R1=H、R2=OEt)の合成
メタノール150mLとTHF50mLの混合液中で、12−アミノドデカン酸1.5g(7.0mmol)とBoc−Leu−OSu2.3g(7.0mmol)を数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液と水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。トリエチルアミン0.7g(7.0mmol)と縮合剤DMT−MM1.9g(7.0mmol)の存在下、得られた固体とHCl・H2N−GlyGly−COOEt1.4g(7.0mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。得られた固体をN,N−ジメチルホルミアミド140mLに溶解した。4NのHClとAcOEtの混合液50mLをこの溶液に滴下し、6時間撹拌後、溶媒を留去して生成物を得た。
【0064】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Leu−aの塩酸塩であることを確認した(2.6g(5.1mmol)、収率73%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 8.57 (NH, 1H, t), 8.25 (NH, 1H, t), 8.24 (NH3, 3H, br), 8.08 (NH, H, t), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.68 (leucine-CH, 1H, m), 3.16 (-CH2-, 1H, m), 3.03 (-CH2-, 1H, m), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.61 (leucine-CH, 1H, m), 1.54 (leucine-CH2, 2H, m), 1.47 (-CH2-, 2H, t), 1.42 (-CH2-, 2H, t), 1.24 (-CH2-, 14H, m), 1.19 (-CH3, 3H, t), 0.91 (leucine-CH3, 3H, d), 0.86 (leucine-CH3, 3H, d).
【0065】
実施例18:アミノ酸含有両親媒性分子1−Tyr−a(一般式で、l=1、m=11、n=2、A=チロシン(以下「Tyr」と記載することがある)、R1=H、R2=OEt)の合成
メタノール150mLとTHF50mLの混合液中で、12−アミノドデカン酸1.4g(6.6mmol)とBoc−Tyr−OSu2.5g(6.6mmol)を数時間撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液と水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。トリエチルアミン0.7g(6.6mmol)と縮合剤DMT−MM1.8g(6.6mmol)の存在下、得られた固体とHCl・H2N−GlyGly−COOEt1.3g(6.6mmol)をメタノール中で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、クエン酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で残った固体を順次洗浄濾過し、真空乾燥した。得られた固体をN,N−ジメチルホルミアミド140mLに溶解した。4NのHClとAcOEtの混合液50mLをこの溶液に滴下し、6時間撹拌した後、溶媒を留去して生成物を得た。
【0066】
1H−NMRより、この生成物が目的物1−Tyr−aの塩酸塩であることを確認した(2.6g(4.7mmol)、収率71%)。
1H-NMR (500 MHz, in DMSO-d6): 9.37 (OH, 1H, s), 8.22 (NH, 1H, dd), 8.06 (NH, 1H, dd), 7.27 (NH, H, dd), 7.01 (C6H4, 2H, d), 6.70 (C6H4, 2H, d), 4.08 (tyrosine-CH-, 1H, m), 4.08 (-OCH2-, 2H, q), 3.82 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.70 (glycine-CH2-, 2H, d), 3.04 (-CH2-, 2H, m), 2.89 (tyrosine-CH2-, 1H, m), 2.73 (tyrosine-CH2-, 1H, m), 2.11 (-CH2-, 2H, t), 1.47 (-CH2-, 2H, t), 1.30 (-CH2-, 2H, t), 1.23 (-CH2-, 14H, m), 1.19 (-CH3, 3H, t).
【0067】
実施例19:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−aの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
図3は、一般式1で表されるアミノ酸含有両親媒性分子が形成する有機ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示している。実施例2で得られた1−Phe−a(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(a)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。
【0068】
また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−aが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面が疎水性である有機ナノチューブが得られた。
【0069】
実施例20:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−bの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例3で得られた1−Phe−b(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(b)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−bが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面がアニオン性である有機ナノチューブが得られた。
【0070】
実施例21:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−cの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例4で得られた1−Phe−c(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(c)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−cが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面が中性である有機ナノチューブが得られた。
【0071】
実施例22:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−dの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例5で得られた1−Phe−d(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(d)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−dが平行に分子パッキングしていることがわかった。
【0072】
実施例19、実施例20、および実施例21で得られた有機ナノチューブは、いずれも−Gly−R2と比較して立体的に嵩高い−Phe−R1が外表面に配置されていた。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでも、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在すること、すなわち、外表面が中性であり、内表面が疎水性であることが示唆された。
【0073】
実施例23:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−eの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例6で得られた1−Phe−e(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(e)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−eが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が帯電していないことが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面が中性であり、内表面がアニオン性である有機ナノチューブが得られた。
【0074】
実施例24:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−fの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例7で得られた1−Phe−f(10mg)をエタノール(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(f)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−eが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブのエタノール分散液のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が帯電していないことが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面が疎水性であり、内表面がアニオン性である有機ナノチューブが得られた。
【0075】
実施例25:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−gの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例8で得られた1−Phe−g(10mg)をエタノール(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図3(g)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Phe−gが平行に分子パッキングしていることがわかった。
【0076】
実施例19、実施例20、実施例21、実施例23、および実施例24で得られた有機ナノチューブは、いずれも−Gly−R2と比較して立体的に嵩高い−Phe−R1が外表面に配置されていた。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブも、外表面に−Phe−R1が、内表面に−Gly−R2が存在すること、すなわち、外表面が疎水性であり、内表面が中性であることが示唆された。
【0077】
実施例26:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−aの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
図4は、一般式2で表されるアミン酸含有両親媒性分子が形成する有機ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示している。実施例10で得られた2−Phe−a(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図4(a)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、2−Phe−aが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が負に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−A−R2が、内表面に−Gly−R1が存在することがわかった。すなわち、外表面がアニオン性であり、内表面が疎水性である有機ナノチューブが得られた。
【0078】
実施例27:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−bの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例11で得られた2−Phe−b(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図4(b)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、2−Phe−bが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が負に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−A−R2が、内表面に−Gly−R1が存在することがわかった。すなわち、外表面がアニオン性であり、内表面がカチオン性である有機ナノチューブが得られた。
【0079】
実施例28:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−cの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例12で得られた2−Phe−c(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図4(c)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、2−Phe−cが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が負に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−A−R2が、内表面に−Gly−R1が存在することがわかった。すなわち、外表面がアニオン性であり、内表面が中性である有機ナノチューブが得られた。
【0080】
実施例29:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−dの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例13で得られた2−Phe−d(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図4(d)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、2−Phe−dが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が帯電していないことが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−A−R2が、内表面に−Gly−R1が存在することがわかった。すなわち、外表面が中性であり、内表面がカチオン性である有機ナノチューブが得られた。
【0081】
実施例30:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−eの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例14で得られた2−Phe−e(10mg)をエタノール(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図4(e)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、2−Phe−eが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブのエタノール分散液のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が帯電していないことが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−A−R2が、内表面に−Gly−R1が存在することがわかった。すなわち、外表面が疎水性であり、内表面がカチオン性である有機ナノチューブが得られた。
【0082】
実施例31:アミノ酸含有両親媒性分子1−Ala−aの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
図5は、一般式1で表されるアミン酸含有両親媒性分子が形成する有機ナノチューブの透過型電子顕微鏡像を示している。実施例15で得られた1−Ala−a(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図5(a)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。また、オリゴメチレン鎖の副格子構造を反映するCH2はさみ振動吸収帯において、三斜晶系平行型を示す1本の鋭いピークが1465cm-1に確認された。
【0083】
これらより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Ala−aが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Ala−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面が疎水性である有機ナノチューブが得られた。
【0084】
実施例32:アミノ酸含有両親媒性分子1−Val−aの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例16で得られた1−Val−a(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図5(b)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。また、オリゴメチレン鎖の副格子構造を反映するCH2はさみ振動吸収帯において、三斜晶系平行型を示す1本の鋭いピークが1465cm-1に確認された。
【0085】
これらより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Val−aが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Val−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面が疎水性である有機ナノチューブが得られた。
【0086】
実施例33:アミノ酸含有両親媒性分子1−Leu−aの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例17で得られた1−Leu−a(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図5(c)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。また、オリゴメチレン鎖の副格子構造を反映するCH2はさみ振動吸収帯において、三斜晶系平行型を示す1本の鋭いピークが1465cm-1に確認された。
【0087】
これらより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Leu−aが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水溶液のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Leu−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面が疎水性である有機ナノチューブが得られた。
【0088】
実施例34:アミノ酸含有両親媒性分子1−Tyr−aの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブの製造
実施例18で得られた1−Tyr−a(10mg)を水(5mL)中で数分間加熱還流した後、室温まで徐冷し、自己組織化を行った。図5(d)に示すように、得られた構造体はナノチューブであった。また、本実施例で得られた有機ナノチューブの赤外分光測定により、グリシン部位がポリグリシンII型の分子間水素結合網を形成していることを示すCH変角振動(1420cm-1)と骨格振動(1026cm-1)の吸収帯が確認された。したがって、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、1−Tyr−aが平行に分子パッキングしていることがわかった。さらに、ナノチューブ分散水溶液のゼータ電位測定により、ナノチューブ外表面が正に帯電していることが明らかとなった。これより、本実施例で得られた有機ナノチューブでは、外表面に−Tyr−R1が、内表面に−Gly−R2が存在することがわかった。すなわち、外表面がカチオン性であり、内表面が疎水性である有機ナノチューブが得られた。
【0089】
実施例35:アミノ酸含有両親媒性分子1−Phe−bの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブに包接されたカチオン性色素の放出
凍結乾燥した実施例20の有機ナノチューブ10mg(21μmol)に、カチオン性色素であるローダミン6G115mg(240μmol)を含む水溶液を添加した。一晩放置した後、メンブランフィルター(細孔径200nm)上で水洗浄を行い、凍結乾燥してローダミン6Gが包接された有機ナノチューブを得た。
【0090】
ローダミン6Gが包接された有機ナノチューブを、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と記載することがある)中で加熱して、有機ナノチューブを分解し、有機ナノチューブに包接されていたローダミン6Gを取り出した。吸光光度法により、有機ナノチューブ1mg(2.1μmol)に対し、0.34mg(0.72μmol)のローダミン6Gが包接されていたと定量した。
【0091】
つぎに、pH5.5とpH7.4にそれぞれ調整したリン酸バッファー中に、ローダミン6Gを包接した有機ナノチューブを分散した。所定の時間ごとにこの分散水溶液をメンブランフィルターにかけ、分離した溶液中に放出されたローダミン6Gの量を吸光光度法により定量し、放出率(質量%)を算出した。その結果を図6(a)のグラフに示す。図6(a)に示すように、pH7.4の分散液では、有機ナノチューブの内表面のカルボキシル基がプロトン解離によりアニオン性を帯び、静電引力によりカチオン性のローダミン6Gの放出を抑制した。これに対して、pH5.5の分散液では、有機ナノチューブの内表面のカルボキシル基のプロトン解離がpH7.4よりも抑えられ、カチオン性のローダミン6Gに対する静電引力が減少するため、放出が促進された。
【0092】
実施例36:アミノ酸含有両親媒性分子2−Phe−bの自己組織化による単分子膜有機ナノチューブに包接されたアニオン性色素の放出
凍結乾燥した実施例27の有機ナノチューブ10mg(24μmol)に、アニオン性のカルボキシフルオレセイン90mg(240μmol)を含む水溶液を添加した。一晩放置した後、メンブランフィルター(細孔径200nm)上で水洗浄を行い、凍結乾燥してカルボキシフルオレセインが包接された有機ナノチューブを得た。カルボキシフルオレセインが包接された有機ナノチューブを、DMSO中で加熱して、有機ナノチューブを分解し、有機ナノチューブに包接されていたカルボキシフルオレセインを取り出した。蛍光光度法により、有機ナノチューブ1mg(2.4μmol)に対し、0.22mg(0.60μmol)のカルボキシフルオレセインが包接されていたと定量した。
【0093】
つぎに、pH6.5とpH8.1にそれぞれ調整したリン酸バッファー中に、カルボキシフルオレセインを包接したナノチューブを分散した。所定の時間ごとにこの分散水溶液をメンブランフィルターにかけ、分離した溶液中に放出されたカルボキシフルオレセインの量を蛍光光度法により定量し、放出率(質量%)を算出した。その結果を図6(b)に示す。図6(b)に示すように、pH6.5の分散液では、有機ナノチューブの内表面のアミノ基がプロトン化によりカチオン性を帯び、静電引力によりアニオン性のカルボキシフルオレセインの放出を抑制した。これに対して、pH8.1の分散液では、有機ナノチューブの内表面のアミノ基の脱プロトン化により、アニオン性のカルボキシフルオレセインに対する静電引力が減少するため、放出が促進された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の有機ナノチューブは、有効成分のカプセル化、カプセル化された有効成分の放出や徐放、および難溶性物質の可溶化や分散化が必要とされる化粧品分野や医療分野などで利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6