特許第6868627号(P6868627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6868627
(24)【登録日】2021年4月14日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】銅粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/20 20060101AFI20210426BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B22F9/20 E
   B22F1/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-531787(P2018-531787)
(86)(22)【出願日】2017年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2017024661
(87)【国際公開番号】WO2018025562
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-152693(P2016-152693)
(32)【優先日】2016年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】縫田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】森田 博
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−069457(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/104032(WO,A1)
【文献】 特開2006−022394(JP,A)
【文献】 特開2008−050650(JP,A)
【文献】 特開2008−050661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00− 9/30
B22F 1/00− 8/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)亜酸化銅、(B)ホウ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種、(C)アンモニア及びアンモニウムイオン供給源からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに(D)単糖類、二糖類及び多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種を原料として用いることを特徴とする銅粉の製造方法。
【請求項2】
前記(C)成分が、アンモニア、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ギ酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の銅粉の製造方法。
【請求項3】
前記(D)成分が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース及びアラビノガラクタンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅粉の製造方法。
【請求項4】
前記(B)成分が、ホウ酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銅粉の製造方法。
【請求項5】
前記銅粉の平均粒子径D50が0.5μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銅粉の製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分1モルに対して、前記(B)成分を0.05モル〜2.0モル、前記(C)成分を0.05モル〜5.0モル、前記(D)成分を0.05モル〜5.0モル用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の銅粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅粉の製造方法に関する。詳細には、本発明は、電気回路、セラミックコンデンサの外部電極などを形成する際に用いられる導電性ペーストに配合される導電フィラーのような各種用途の導電材として使用可能な銅粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅粉は、電子部品の導電部(例えば、電極、回路など)を形成する導電性ペーストの導電材として広く用いられている。この銅粉の製造方法としては湿式還元法が一般的に知られている。
例えば、特許文献1には、還元剤を用いて液中の水酸化銅を金属銅粒子に還元する際に、還元剤としてヒドラジン又はヒドラジン化合物を使用すると共に、その還元反応を消泡剤の存在下で行い、還元反応の前、後又は途中に表面処理剤を添加することにより、短径と長径とがいずれも100nm未満の銅粉を得る方法が開示されている。
また、特許文献2には、銅イオン含有水溶液とアルカリ溶液とを反応させた水酸化銅スラリーに還元剤を添加して第1還元処理を行って亜酸化銅スラリーとし、当該亜酸化銅スラリーを静置して亜酸化銅粒子を沈殿させ、上澄液を除去して水を添加することによって亜酸化銅粒子を洗浄して洗浄亜酸化銅スラリーとし、当該洗浄亜酸化銅スラリーに還元剤を添加して第2還元処理を行って銅粉を得る銅粉の製造方法において、第1還元処理は、水酸化銅スラリーに、還元剤であるヒドラジン類とpH調整剤であるアンモニア水溶液とを併用して添加することにより、微粒で均一な粒子の銅粉を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211108号公報
【特許文献2】特開2007−254846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の製造方法を用いて平均粒子径D50(体積累積分布における累積50%での粒子径)が0.5μm〜10μmの銅粉を製造した場合、当該銅粉を用いて形成される導電部の体積抵抗率が大きくなるという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmであっても、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、銅粉の製造方法において特定の原料を用いることにより、上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)亜酸化銅、(B)ホウ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種、(C)アンモニア及びアンモニウムイオン供給源からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに(D)単糖類、二糖類及び多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種を原料として用いることを特徴とする銅粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmであっても、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の銅粉の製造方法は、(A)成分〜(D)成分を原料として用いることを特徴とする。
(A)成分は亜酸化銅である。なお、亜酸化銅は酸化銅(I)と同義である。(A)成分としては、市販の亜酸化銅を使用してもよいし、硫酸銅などの無機酸の銅塩を還元することによって製造した亜酸化銅を使用してもよい。
【0008】
(B)成分は、ホウ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。ホウ酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸鉛、ホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、四ホウ酸ナトリウム及びこれらの水和物が挙げられる。(B)成分は、1種の成分のみを用いてもよいし、2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。その中でも、(B)成分としてホウ酸を用いると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易いことから好ましく、(B)成分としてホウ酸のみを用いると、この効果が特に高くなることからより好ましい。
【0009】
(B)成分の使用量としては、使用する(B)成分の種類などに応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、(A)成分1モルに対して、好ましくは0.05モル〜2.0モル、より好ましくは0.1モル〜1.0モルである。(B)成分の使用量が上記の範囲内であると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易い。
【0010】
(C)成分は、アンモニア及びアンモニウムイオン供給源からなる群から選ばれる少なくとも1種である。アンモニウムイオン供給源としては、アンモニウムイオンを供給することができる化合物であれば特に限定されないが、例えば、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、及びリンゴ酸アンモニウムなどが挙げられる。(C)成分は、1種の成分のみを用いてもよいし、2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。その中でも、(C)成分として、アンモニア、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ギ酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いると、充填性が良好な扁平形状の銅粉が得られ、体積抵抗率が低い導電部を形成し易いことから好ましい。
【0011】
(C)成分の使用量としては、使用する(C)成分の種類などに応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、(A)成分1モルに対して、好ましくは0.05モル〜5.0モル、より好ましくは0.1モル〜3.0モルである。(C)成分の使用量が上記の範囲内であると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易い。
【0012】
また、(B)成分と(C)成分との割合は、使用する各成分の種類などに応じて適宜設定すればよいが、モル比で、好ましくは1:0.1〜1:10である。(B)成分と(C)成分との割合が上記の範囲内であると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易い。
【0013】
(D)成分は、単糖類、二糖類及び多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。単糖類としては、特に限定されないが、例えば、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドースなどのアルドース;ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソロボース、タガトースなどのケトースが挙げられる。二糖類としては、特に限定されないが、例えば、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースなどが挙げられる。多糖類としては、特に限定されないが、例えば、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン、アラビノガラクタンなどが挙げられる。なお、上記に例示した化合物の中には立体異性体を有する化合物があるが、D体又はL体のいずれであってもよい。また、(D)成分は、1種の成分のみを用いてもよいし、2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。その中でも、(D)成分として、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース及びアラビノガラクタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用すると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易いことから好ましく、(D)成分として、グルコース、フルクトース、ガラクトース及びマンノースからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用すると、この効果が特に高くなることからより好ましい。
【0014】
(D)成分の使用量としては、使用する(D)成分の種類などに応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、(A)成分1モルに対して、好ましくは0.05モル〜5.0モル、より好ましくは0.1モル〜3.0モルである。(D)成分の使用量が上記の範囲内であると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易い。
【0015】
本発明の製造方法では、上記の(A)成分〜(D)成分を必須の原料として用いるけれども、本発明の効果を阻害しない範囲において周知の原料(添加剤)を更に追加してもよい。添加剤の例としては、特に限定されないが、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤などが挙げられる。また、添加剤の使用量としては、特に限定されないが、一般的に(A)成分100質量部に対して0.0001質量部〜50質量部である。
【0016】
消泡剤としては、例えば、2−プロパノール、ポリジメチルシリコーン、ジメチルシリコーンオイル、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシレート、アルコールプロポキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸プロポキシレート及びソルビタン部分脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、2−プロパノールを用いると、消泡するまでの時間が短く、銅粉の生産性が向上することから好ましい。
【0017】
pH調整剤としては、例えば、水溶性塩基性化合物及び水溶性酸性化合物を挙げることができる。水溶性塩基性化合物の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属類;水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの水酸化アルカリ土類金属類;炭酸アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの4級アンモニウムヒドロキシド類;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミンなどの有機アミン類が挙げられる。これらの中でも、pH調整剤として水酸化アルカリ金属類を用いると、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉が得られ易いことから好ましく、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いると、この効果が特に高くなることからより好ましい。
還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン化合物が挙げられる。
【0018】
本発明の銅粉の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を原料として用いること以外は当該技術分野において公知の方法に準じて行うことができる。具体的には、本発明の銅粉の製造方法は、必須の原料である(A)成分〜(D)成分を溶媒に配合する工程(原料投入工程)を有していれば特に限定されないが、湿式還元法に適用することが好適である。本発明の銅粉の製造方法を湿式還元法に適用する場合、(A)成分〜(D)成分を溶媒に配合して還元反応を行なえばよい。なお、消泡剤などの任意の原料を配合する場合、必須の原料と同時に加えるか、又は必須の原料を配合した後に任意の原料を配合すればよい。
溶媒としては、特に限定されないが、純水などの水が最適である。
各原料を溶媒に配合する際、溶媒の温度を10℃〜90℃に制御することが好ましく、40℃〜70℃に制御することがより好ましい。溶媒の温度を上記の範囲内とすることにより、銅粉の生産性を向上させることができる。溶媒の温度が10℃未満であると、各原料が溶媒に溶解し難くなることがある。
【0019】
各原料を配合した溶媒のpHは、所望とする銅粉の形状、粒子径などに応じて適宜調整すればよいが、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmの銅粉を製造する場合、8〜14のpHに制御することが好ましい。
還元反応は、各原料を配合した溶媒を50℃〜90℃の温度で加熱保持することによって進行する。加熱保持時間は、特に限定されないが、一般に5分〜120分である。
また、還元反応の際、必要に応じてマイクロウェーブ処理などを行ってもよい。
【0020】
還元反応の直後、生成した銅粉の表面には有機物が付着していることから、純水で洗浄することが好ましい。また、銅粉は非常に空気酸化し易いことから、洗浄後、ステアリン酸などの脂肪酸を用いて直ちに銅粉の表面を処理することが好ましい。
【0021】
上記のようにして製造される銅粉は、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmであっても、体積抵抗率が低い導電部を形成することができるため、電子部品の導電部(例えば、電極、回路など)を形成するための導電性ペーストの導電材として用いることができる。導電性ペーストは、銅粉に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂及びその硬化剤などの各種添加剤を配合して混練することによって製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
亜酸化銅42.0g、ホウ酸21.6g及びグルコース74.0gを純水74.0gに加えて50℃に加温した。次に、アンモニア濃度が28質量%のアンモニア水31.45g、及び消泡剤としての2−プロパノール3.52gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液70.4gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0024】
(実施例2)
亜酸化銅34.0g、ホウ酸17.5g、グルコース59.9g及び塩化アンモニウム25.42gを純水59.9gに加えて50℃に加温した。次に、消泡剤としての2−プロパノール2.9gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液114.0gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0025】
(実施例3)
亜酸化銅40.0g、ホウ酸20.6g、グルコース70.5g及び臭化アンモニウム53.1gを純水70.5gに加えて50℃に加温した。次に、消泡剤としての2−プロパノール3.4gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液134.2gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0026】
(実施例4)
亜酸化銅45.0g、ホウ酸23.2g、グルコース79.3g及びギ酸アンモニウム39.7gを純水79.3gに加えて50℃に加温した。次に、消泡剤としての2−プロパノール3.8gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液100.6gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0027】
(実施例5)
亜酸化銅45.0g、ホウ酸23.2g、グルコース79.3g及び酢酸アンモニウム48.5gを純水79.3gに加えて50℃に加温した。次に、消泡剤としての2−プロパノール3.8gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液100.6gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0028】
(実施例6)
亜酸化銅50.0g、ホウ酸25.7g及びフルクトース88.1gを純水88.1gに加えて50℃に加温した。次に、アンモニア濃度が28質量%のアンモニア水37.4g、及び消泡剤としての2−プロパノール4.2gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液83.8gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0029】
(実施例7)
亜酸化銅42.0g、ホウ酸21.6g及びガラクトース74.0gを純水74.0gに加えて50℃に加温した。次に、アンモニア濃度が28質量%のアンモニア水31.5g、及び消泡剤としての2−プロパノール3.5gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液70.4gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0030】
(実施例8)
亜酸化銅42.0g、ホウ酸21.6g及びマンノース74.0gを純水74.0gに加えて50℃に加温した。次に、アンモニア濃度が28質量%のアンモニア水31.5g、及び消泡剤としての2−プロパノール3.5gを更に加えて60℃に昇温した。次に、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液70.4gを更に加えた後、75±5℃の温度範囲で1時間撹拌して還元反応を行った。還元反応によって生成した銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、扁平形状を有していた。
【0031】
(比較例1)
硫酸銅五水和物(銅原料)200gを純水100gに加えて50℃に加温した。次に、アンモニア濃度が28質量%のアンモニア水(錯化剤)77.3g、水酸化ナトリウム濃度が50質量%の水酸化ナトリウム水溶液(pH調整剤)96.2g、2−プロパノール(消泡剤)9.6gを更に加えて70℃に昇温した。次に、グルコース57.7gを純水57.7gに溶解させたものを更に加えた後、ヒドラジン一水和物40.6gを更に加えた。このようにして得られた銅粉は純水で洗浄し、ステアリン酸で表面処理を行った後に乾燥させた。得られた銅粉をFE−SEMで観察したところ、球状を有していた。
【0032】
上記の実施例及び比較例で得られた銅粉について下記の評価を行った。
(1)平均粒子径D50の測定
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製Micro Trac MT−3000II型)を用いて測定した。
【0033】
(2)体積抵抗率の測定
銅粉とアクリル樹脂(三菱レイヨン製BR−113)とを4:1の質量比(銅粉の含有量80質量%)で配合し、溶媒としてトルエンをさらに加えて混練することによって銅ペーストを得た。得られた銅ペーストをPETフィルム上にウェット膜厚が10μmになるようにして塗布した後、大気中にて150℃で30分間加熱焼成を行うことにより、導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の体積抵抗率を4端子法によって測定装置(三菱化学アナリテック社製ロレスタGP)で測定した。
上記の各評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示されているように、実施例1〜8の銅粉は、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmの範囲内であり、銅ペーストに用いた際に体積抵抗率が低い導電性塗膜を形成することができた。
これに対して比較例1の銅粉は、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmの範囲内であったものの、銅ペーストに用いた際に体積抵抗率が大きい導電性塗膜が形成された。
【0036】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、平均粒子径D50が0.5μm〜10μmであっても、体積抵抗率が低い導電部を形成可能な銅粉の製造方法を提供することができる。
【0037】
なお、本国際出願は、2016年8月3日に出願した日本国特許出願第2016−152693号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本国際出願に援用する。