特許第6869024号(P6869024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869024
(24)【登録日】2021年4月15日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】パーティクル除去方法及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210426BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20210426BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L21/302 102
   H01L21/302 101E
   H01L21/302 106
   H01L21/31 B
   H01L21/316 X
   C23C16/44 J
   H01L21/304 645C
   H01L21/304 645A
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-246925(P2016-246925)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-101697(P2018-101697A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年5月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】米澤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貴司
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−517368(JP,A)
【文献】 特開2016−162930(JP,A)
【文献】 特開2012−209394(JP,A)
【文献】 特開平10−256232(JP,A)
【文献】 特開2007−305981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/304
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/312−21/32
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469−21/475
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有ガスを用いてエッチングを行った膜上のパーティクルを除去するパーティクル除去方法であって、
活性化された酸素含有ガスに活性化されていない水素を添加した混合ガスを、前記エッチングを行った膜上に供給する工程を有するパーティクル除去方法。
【請求項2】
前記酸素含有ガスは、アルゴンも更に含む請求項1に記載のパーティクル除去方法。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスは、炭素も含むフルオロカーボン系のガスである請求項1又は2に記載のパーティクル除去方法。
【請求項4】
前記エッチングを行った膜は、基板上に形成された膜であり、
該基板は、処理室内に収容され、
該処理室内にガス供給が可能なガス吐出手段、該処理室外にはプラズマ発生室が設けられるとともに、該ガス吐出手段と該プラズマ発生室とは配管で接続され、
前記水素は、前記プラズマ発生室で活性化された前記酸素含有ガスを前記ガス吐出手段に供給する際に、前記配管内に供給される請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパーティクル除去方法。
【請求項5】
前記基板は、前記処理室内に設けられた回転テーブルの表面上に周方向に沿って配置され、
前記ガス吐出手段は、前記回転テーブル上の周方向に沿った所定位置に設けられ、
前記回転テーブルを回転させ、前記基板が前記ガス吐出手段の下方を通過する度に、前記混合ガスが前記エッチングを行った膜上に供給される請求項4に記載のパーティクル除去方法。
【請求項6】
前記ガス吐出手段はシャワーヘッドであり、前記混合ガスは、該シャワーヘッドの底面に設けられたガス吐出孔を介して、上方から前記エッチングを行った膜上に供給される請求項4又は5に記載のパーティクル除去方法。
【請求項7】
基板上に形成された膜上にフッ素含有ガスを供給してエッチングを行う工程と、
活性化された酸素含有ガスに活性化されていない水素を添加した混合ガスを、前記エッチングを行った前記膜上に供給して前記膜上のパーティクルを除去する工程と、を有する基板処理方法。
【請求項8】
前記基板は、処理室内に収容され、
該処理室内にガス供給が可能なガス吐出手段、該処理室外にはプラズマ発生室が設けられるとともに、該ガス吐出手段と該プラズマ発生室とは配管で接続され、
前記エッチングを行う工程において、前記フッ素含有ガスは、前記プラズマ発生室で活性化されてから前記ガス吐出手段を介して前記基板上に形成された膜上に供給され、
前記膜上のパーティクルを除去する工程において、前記水素は、前記プラズマ発生室で活性化された前記酸素含有ガスを前記ガス吐出手段に供給する際に、前記配管内に供給される請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板は、前記処理室内に設けられた回転テーブルの表面上に周方向に沿って配置され、
前記ガス吐出手段は、前記回転テーブル上の周方向に沿った所定位置に設けられ、
前記回転テーブルを回転させ、前記基板が前記ガス吐出手段の下方を通過する度に、前記フッ素含有ガス又は前記混合ガスが前記膜上に供給される請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記ガス吐出手段はシャワーヘッドであり、前記フッ素含有ガス又は前記混合ガスは、該シャワーヘッドに底面に設けられたガス吐出孔を介して、上方から前記膜上に供給される請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記エッチングを行う工程の前に、前記基板上に前記膜を成膜する工程を有する請求項9又は10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板上に前記膜を成膜する工程は、前記基板上に原料ガスを供給して吸着させる工程と、
該原料ガスと反応して反応生成物を生成可能な反応ガスを前記基板上に供給し、前記基板上に反応生成物を生成する工程と、
前記プラズマ発生室で活性化された前記反応ガスを、前記ガス吐出手段を介して前記基板上に供給し、前記反応生成物を改質する工程と、を有する請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記処理室内の前記回転テーブルの上方には、前記回転テーブルの回転方向の上流側から、前記原料ガスを前記基板上に供給する原料ガス供給手段と、前記反応ガスを前記基板上に供給する反応ガス供給手段と、前記ガス吐出手段が設けられ、
前記回転テーブルを前記回転方向に回転させ、前記基板に前記原料ガス供給手段、前記反応ガス供給手段、前記ガス吐出手段の下方を順に通過させることにより、前記基板上に原料ガスを供給して吸着させる工程、前記基板上に反応生成物を生成する工程、前記反応生成物を改質する工程を行う請求項12に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクル除去方法及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転テーブル式のALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積法)成膜装置を用いてエッチングを行うことが可能な基板処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の基板処理装置は、真空容器内に回転可能に設けられ、基板を載置可能な回転テーブルと、回転テーブルの表面に第1の反応ガスを供給可能な第1の反応ガス供給部と、第1の反応ガス供給部から回転テーブルの周方向に離間して設けられ、回転テーブルの表面に第1の反応ガスと反応する第2の反応ガスを供給可能な第2の反応ガス供給部と、第1の反応ガス供給部及び第2の反応ガス供給部から前記回転テーブルの周方向に離間して設けられ、回転テーブルの表面に活性化されたフッ素含有ガスを供給可能な吐出部を含む活性化ガス供給部と、を備える。そして、活性化ガス供給部は、吐出部よりも上流側に設けられ、吐出部にフッ素含有ガスを供給可能な配管と、配管に設けられ、配管の内部に水素含有ガスを供給可能な1又は複数の水素含有ガス供給部とを含んで構成される。
【0003】
かかる構成を有する基板処理装置において、成膜を行う際には、第1の反応ガス供給部からSi含有ガス等の原料ガスを供給し、第2の反応ガス供給部からオゾン等の反応ガスを供給しながら回転テーブルを回転させることにより、SiO等の成膜を行うことができる。そして、成膜したSiO等の膜をエッチングする場合には、第1の反応ガス供給部及び第2の反応ガス供給部からはガスの供給を停止し、活性化ガス供給部でフッ素含有ガスを活性化し、途中の配管で水素含有ガスを添加し、吐出部から水素含有ガスが添加され、活性化されたフッ素含有ガスを供給することにより、基板上に形成された膜をエッチングすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−162930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ALD成膜装置をベースにした基板処理装置を用いて、1つの真空容器内で成膜とエッチングを行うのは必ずしも容易ではない。特に、元々が成膜装置であるため、エッチング処理を行った際、エッチング後の膜の品質が不十分な場合もある。例えば、フッ素含有ガスを用いてエッチングを行ったときに、表面にフッ素が残存し、エッチング後の膜上にパーティクルが発生し、エッチング後の膜の表面が粗くなる場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、かかるエッチング後の膜の表面に残留するパーティクルを低減させることができるパーティクル除去方法及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るパーティクル除去方法は、フッ素含有ガスを用いてエッチングを行った膜上のパーティクルを除去するパーティクル除去方法であって、
活性化された酸素含有ガスに活性化されていない水素を添加した混合ガスを、前記エッチングを行った膜上に供給する工程を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エッチング後の膜上のパーティクルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基板処理装置の概略断面図である。
図2】基板処理装置の概略平面図である。
図3】基板処理装置における分離領域を説明するための一部断面図である。
図4】基板処理装置の他の断面を示す一部断面図である。
図5】基板処理装置における第3の処理領域P3を説明するための一部断面図である。
図6】シャワーヘッド部の底面のガス吐出孔の配置の一例を説明するための図である。
図7】基板処理装置の水素ガス供給部の第1の態様を説明するための概略斜視図である。
図8】基板処理装置の水素ガス供給部の第2の態様を説明するための概略斜視図である。
図9】本発明の実施例に係るパーティクル除去方法を実施した実施結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[基板処理装置の構成]
まず、本発明の一実施形態に係るパーティクル除去方法及び基板処理方法に好適に用いられる基板処理装置について説明する。図1は、基板処理装置の概略断面図である。図2は、基板処理装置の概略平面図である。図3は、基板処理装置における分離領域を説明するための一部断面図である。図4は、基板処理装置の他の断面を示す一部断面図である。
【0012】
基板処理装置は、図1及び図2に示すように、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。
【0013】
真空容器1は、基板を収容して基板処理を行うための処理室である。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばO−リング等のシール部材13を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0014】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0015】
回転テーブル2の表面には、図2に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を載置可能な円形状の凹部24が設けられている。なお、図2では、便宜上、1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに(例えば4mm)大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0016】
回転テーブル2の上方には、図2に示すように、反応ガスノズル31、32、分離ガスノズル41、42及び活性化ガス供給部90が配置されている。図示の例では、真空容器1の周方向に間隔をおいて、搬送口15(後述)から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、活性化ガス供給部90、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び反応ガスノズル32の順に配列されている。なお、反応ガスノズル31は第1の反応ガス供給部の一例であり、反応ガスノズル32は第2の反応ガス供給部の一例である。
【0017】
反応ガスノズル31、32は、各々の基端部であるガス導入ポート31a、32aが容器本体12の外周壁に固定され、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入されている。そして、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して反応ガスノズル31、32が平行に伸びるように取り付けられている。
【0018】
分離ガスノズル41、42は、各々の基端部であるガス導入ポート41a,42aが容器本体12の外周壁に固定され、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入されている。そして、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して分離ガスノズル41、42が平行に伸びるように取り付けられている。
【0019】
活性化ガス供給部90については後述する。
【0020】
反応ガスノズル31は、例えば石英からなり、不図示の配管及び流量調整器等を介して第1の反応ガスとしてのSi(シリコン)含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。反応ガスノズル32は、例えば石英からなり、不図示の配管及び流量調整器等を介して、第2の反応ガスとしての酸化ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量調整バルブ等を介して、分離ガスの供給源(図示せず)に接続されている。
【0021】
Si含有ガスとしては、例えば有機アミノシランガスを用いることができ、酸化ガスとしては、例えばO(オゾン)ガス、O(酸素)ガスを用いることができる。分離ガスとしては、例えばN(窒素)ガス、Ar(アルゴン)ガスを用いることができる。
【0022】
反応ガスノズル31、32には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔33(図3参照)が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたSi含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0023】
図2を参照すると、分離ガスノズル41、42と共に分離領域Dを構成する、天板11の裏面から回転テーブル2に向かって突出する凸状部4が真空容器1に設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0024】
図3は、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図3に示すように、真空容器1内には、凸状部4によって、凸状部4の下面である平坦な低い第1の天井面44と、この第1の天井面44の周方向両側に位置する、第1の天井面44よりも高い第2の天井面45とが存在する。
【0025】
第1の天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、この溝部43内に分離ガスノズル41が収容されている。また、高い第2の天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。これらの反応ガスノズル31、32は、第2の天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、図3に示すように、高い第2の天井面45の下方の空間481に反応ガスノズル31が設けられ、高い第2の天井面45の下方の空間482に反応ガスノズル32が設けられる。
【0026】
第1の天井面44は、回転テーブル2に対し、狭隘な空間である分離空間Hを形成している。分離空間Hは、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとを分離することができる。具体的には、分離ガスノズル42からNガスを吐出すると、Nガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、空間481及び482に比べて容積の小さい分離空間HをNガスが流れるため、分離空間Hの圧力は空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481と482の間に圧力障壁が形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るNガスが、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、Si含有ガスも酸化ガスも分離空間Hへ流入することは殆どできない。よって、真空容器1内においてSi含有ガスと酸化ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0027】
一方、天板11の下面には、図2に示すように、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が第1の天井面44と同じ高さに形成されている。
【0028】
なお、図2においては、説明の便宜上、第2の天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて容器本体12が切断されているように、容器本体12及びその内部を示している。
【0029】
先に参照した図1は、図2のI−I'線に沿った断面図であり、第2の天井面45が設けられている領域を示している一方、図4は、第1の天井面44が設けられている領域を示す断面図である。
【0030】
図4に示すように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。この屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する第1の天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0031】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図3に示すように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外においては図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、矩形の断面形状を有する、この窪んだ部分を排気領域Eと記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域Eを第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する排気領域Eを第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、各々、第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように、各々、排気管63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。また、排気管63には、圧力調整手段65が設けられている。
【0032】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図4に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けることができ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを、プロセスレシピで決められた温度に加熱することができる。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。カバー部材71は、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画している。
【0033】
このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられている。内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0034】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心側の部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっており、これら狭い空間はケース体20に連通している。そして、ケース体20にはパージガスであるNガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。
【0035】
また、真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(図4には一つのパージガス供給管73を示す)。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは、例えば石英で作製することができる。
【0036】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されており、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるNガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるSi含有ガスと第2の処理領域P2に供給される酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0037】
さらに、真空容器1の側壁には、図2に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は、図示しないゲートバルブにより開閉される。また、回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24では、この搬送口15に対向する位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われる。このため、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0038】
次に、図2及び図5から図8を参照しながら、活性化ガス供給部90について説明する。図5は、基板処理装置における第3の処理領域P3を説明するための一部断面図である。図6は、シャワーヘッド部のガス吐出孔の配置の一例を説明するための図である。図7及び図8は、基板処理装置の水素ガス供給部96を説明するための概略斜視図である。
【0039】
活性化ガス供給部90は、ウエハW上に成膜された膜に対して活性化されたフッ素含有ガスを供給し、その膜をエッチングする。活性化ガス供給部90は、図2及び図5に示すように、プラズマ発生室91と、ガス供給管92と、シャワーヘッド部93と、配管94と、水素含有ガス供給部96とを備えている。なお、シャワーヘッド部93は、吐出部の一例である。
【0040】
プラズマ発生室91は、ガス供給管92から供給されたフッ素含有ガスをプラズマ源により活性化する。プラズマ源としては、フッ素含有ガスを活性化することでF(フッ素)ラジカルを生成可能であれば、特に限定されるものではない。プラズマ源としては、例えば誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)を用いることができる。
【0041】
ガス供給管92は、その一端がプラズマ発生室91と接続されており、プラズマ発生室91に、用途に応じたガスを供給する。本実施形態に係るパーティクル除去方法においては、Ar/O等の酸素含有ガスがガス供給管92から供給される。ガス供給管92の他端は、例えば開閉バルブ及び流量調整器を介して酸素含有ガスが貯留された酸素含有ガス供給源と接続されている。酸素含有ガスとしては、O、O、HO等を含有するガスを用いることができるが、プラズマ発生室91でプラズマを発生させる観点からは、Oガスを用いることが好ましく、更に、プラズマを発生し易くする観点から、Arを含有するAr/Oの混合ガスを用いることが好ましい。但し、プラズマ発生室91において、酸素プラズマを発生させることができれば、酸素含有ガスの種類は問わない。
【0042】
なお、基板処理装置では、エッチング後の膜上のパーティクルを除去するだけでなく、その前のエッチング工程を真空容器1内で行い、膜のエッチングと、エッチング後の膜上のパーティクル除去を、真空容器1内で連続的に行うことが可能である。このような場合には、エッチング工程において、活性化ガス供給部90は、活性化されたエッチングガスをウエハWに供給する。その場合、ガス供給管92からプラズマ発生室91に供給されるガスは、ウエハWに成膜された膜をエッチング可能なガスを用いることができる。具体的には、例えば、CHF(トリフルオロメタン)等のハイドロフルオロカーボン、CF(四フッ化炭素)、C(八フッ化プロパン)等のフルオロカーボン等、更にHF、F等を含む、酸化シリコン膜をエッチング可能なフッ素含有ガス等を用いることができる。また、これらのフッ素含有ガスに、Arガス、Oガス等を適宜添加してもよい。
【0043】
シャワーヘッド部93は、配管94を介してプラズマ発生室91と接続されており、プラズマ発生室91で活性化された酸素含有ガス等のガスを真空容器1内に供給する部分である。よって、プラズマ発生室91は真空容器1の外部に設けられるが、シャワーヘッド部93は、真空容器1内に活性化ガスの供給が可能なように設けられる。より正確には、シャワーヘッド部93は、真空容器1の天板1に組み込まれ、シャワーヘッド部93の底面にあるガス吐出孔193が、真空容器1の内部に配置されるように設けられる。シャワーヘッド部93は、扇型の平面形状を有し、扇型の平面形状の外縁に沿うように形成された押圧部材95によって下方側に向かって周方向に亘って押圧される。また、押圧部材95が図示しないボルト等により天板11に固定されることにより、真空容器1の内部雰囲気が気密状態とされる。天板11に固定されたときのシャワーヘッド部93の下面と回転テーブル2の上面との間隔は、例えば0.5mmから5mm程度とすることができ、このシャワーヘッド部93の下方領域が、エッチングされた膜上のパーティクルを除去するための第3の処理領域P3となる。また、例えば、基板処理装置でエッチング処理を行う場合には、第3の処理領域P3は、シリコン酸化膜等の膜をエッチングするための処理領域となる。これにより、シャワーヘッド部93を介して真空容器1内に供給される活性化されたガスが効率よくウエハWの表面上に供給される。
【0044】
シャワーヘッド部93には、回転テーブル2の角速度の違いに対応して回転中心側で少なく、外周側で多くなるように複数のガス吐出孔193が設けられている。複数のガス吐出孔193の個数としては、例えば数十〜数百個とすることができる。また、複数のガス吐出孔193の直径としては、例えば0.5mmから3mm程度とすることができる。シャワーヘッド部93に供給された活性化された酸素含有ガス等のガスは、ガス吐出孔193を通って回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間に供給される。このように、シャワーヘッド部93は、真空容器1の内部に活性化ガスの供給が可能なガス吐出手段として構成される。
【0045】
図6は、シャワーヘッド部93の底面のガス吐出孔193の配置の一例を示した図である。ガス吐出孔193は、ウエハW上の総ての領域に活性ガスを供給できればよく、回転テーブル2の半径方向において凹部24を総て覆うことができる形状、配置であれば、その構成は問わないが、例えば、図6に示される構成を有していてもよい。図6においては、回転テーブル2の半径方向全体、つまり回転テーブル2の中心軸側から外周側まで延在するガス吐出孔193aを備えるとともに、軸側領域、中間領域、外周領域に局所的にガスの供給が可能なガス吐出孔193b、193c、193dが設けられている。このように、ガス吐出孔193は、凹部24の全体領域に活性化ガスを供給可能なガス吐出孔193aの他、凹部24の軸側領域、中間領域、外周領域の各々にガスを供給可能なガス吐出孔193b〜193dを備える構成としてもよい。一方で、ガス吐出孔193aのみを設ける構成としてもよい。更に、図6の構成において、ガス吐出孔193a〜193dの総てをプラズマ発生室91に接続する構成としてもよいし、ガス吐出孔193aのみをプラズマ発生室91に接続し、補助的なガス吐出孔193b〜193dは、プラズマ発生室91には接続せずに独立したラインとして構成し、活性化されていないガスを供給可能に構成してもよい。このように、シャワーヘッド部93のガス吐出孔193は、用途に応じて種々の構成とすることができる。
【0046】
配管94は、シャワーヘッド部93の上流側に設けられ、プラズマ発生室91とシャワーヘッド部93とを接続する。回転テーブル2の半径方向における配管94の外周側には、水素ガス供給部96が設けられている。
【0047】
水素ガス供給部96は、その一端が配管94と接続されており、配管94の内部に水素ガスを供給する。水素ガス供給部96の他端は、例えば開閉バルブ及び流量調整器を介して水素ガス供給源と接続されている。
【0048】
また、水素ガス供給部96は、プラズマ発生室91よりもシャワーヘッド部93に近い位置に設けられていることが好ましい。これにより、配管94の内部に供給される水素ガスがプラズマ発生室91に逆流することを抑制できる。このため、プラズマ発生室91においてHプラズマが発生することを抑制することができる。結果として、プラズマ発生室91を構成する金属による汚染(コンタミ)の抑制やプラズマ発生室91を構成する機器の寿命の向上を図ることができる。
【0049】
なお、エッチングされた膜上のパーティクルを除去するパーティクル除去工程を行う場合には、水素ガス供給部96を介して配管94内に水素ガスを供給し、活性化された酸素含有ガスに水素を単独で添加してウエハW上に形成された膜上に供給すればよいが、基板処理装置でエッチング工程も行う場合には、水素ガス供給部96には何もガスを供給しないか、又は、水素とArの混同ガスを水素ガス供給部96に供給してもよい。
【0050】
エッチングを行う場合、プラズマ発生室91でエッチング用のフッ素含有ガスを活性化させてウエハW上の膜に供給するが、水素ガス供給部96から水素含有ガスを供給しながらエッチング処理を行うプロセス手法もある。
【0051】
その場合、水素含有ガスとしては、例えばH(水素)ガスとArガスとの混合ガス(以下「H/Arガス」という。)を用いることができる。また、Hガスの供給流量としては、例えば1sccm以上50sccm以下とすることができ、Arガスの供給流量としては、例えば500sccm以上10slm以下とすることができる。なお、その場合、水素ガス供給部96は、正確には、水素含有ガス供給部96として機能することになる。
【0052】
なお、図5及び図7の例では、一つの水素ガス供給部96が回転テーブル2の半径方向における配管94の外周側に設けられているが、本発明はこの点において限定されるものではない。水素ガス供給部96は、例えば図8に示すように、回転テーブル2の回転方向における配管94の前方又は後方に設けられていてもよい。また、配管94に複数の水素ガス供給部96が設けられていてもよい。
【0053】
また、基板処理装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられている。この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する基板処理方法を基板処理装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0054】
[パーティクル除去方法及び基板処理方法]
上述の基板処理装置を用いた本発明の実施形態に係るパーティクル除去方法及び基板処理方法の一例について説明する。なお、本発明の実施形態に係るパーティクル除去方法及び基板処理方法は、活性化したガスを基板上に形成された膜上に供給できる構造を有する装置であれば、種々の構造を有する基板処理装置に適用可能であるが、本実施形態においては、説明の容易のため、上述の基板処理装置を用いて実施する例について説明する。
【0055】
なお、上述の基板処理装置は、ALD成膜装置をベースとして構成された装置であり、真空容器1内で、成膜工程、エッチング工程、パーティクル除去工程の総ての工程を実施可能に構成されている。よって、以下の実施形態では、基板上に成膜をし、成膜した膜のエッチングを行い、エッチングした膜上のパーティクルを除去するという、総ての工程を含んだ内容について説明する。
【0056】
また、以下の実施形態では、ウエハW上に形成された凹形状パターンの1つであるビア内にSiO膜を形成する方法を例として説明する。なお、成膜工程における第1の反応ガスとしてSi含有ガス、第2の反応ガスとして酸化ガス、エッチング工程におけるフッ素含有ガスとしてCFとArガスとOガスとの混合ガス(以下「CF/Ar/Oガス」という。)、パーティクル除去工程における酸素含有ガスとしてArガスとOガスとの混合ガス(以下「Ar/Oガス」という。))をそれぞれ用いる場合を例として説明する。
【0057】
まず、図示しないゲートバルブを開き、図2に示すように、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に各々ウエハWを載置する。
【0058】
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるNガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からNガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。次いで、回転テーブル2を時計回りに例えば60rpmの回転速度で回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば450℃に加熱する。
【0059】
次に、成膜工程を実行する。成膜工程では、反応ガスノズル31からはSi含有ガスを供給し、反応ガスノズル32からは酸化ガスを供給する。なお、酸化ガスとしては、例えば、Oガスを用いてもよい。また、活性化ガス供給部90からは、何もガスを供給しないか、又は活性化された酸化ガスを供給する。活性化された酸化ガスとしては、例えば、Oガス、又はAr/Oガスを用いてもよい。活性化ガス供給部90から供給される活性化された酸化ガスは、Si含有ガスと酸化ガスとの反応生成物であるSiO膜を改質するための改質ガスである。
【0060】
ウエハWが第1の処理領域P1を通過したときに、原料ガスであるSi含有ガスが反応ガスノズル31から供給されてウエハWの表面に吸着する。表面にSi含有ガスが吸着したウエハWは、回転テーブル2の回転により分離ガスノズル42を有する分離領域Dを通過してパージされた後、第2の処理領域P2に入る。第2の処理領域P2では、反応ガスノズル32から酸化ガスが供給され、Si含有ガスに含まれるSi成分が酸化ガスにより酸化され、反応生成物であるSiOがウエハWの表面に堆積する。次に、SiOが表面に堆積したウエハWは、第3の処理領域P3に入る。第3の処理領域P3では、ガス吐出孔193から活性化された酸素が供給され、未反応のSi成分と反応して更にSiOを生成する。かかる改質工程を行うことにより、堆積したSiO膜が緻密化され、高品質化される。なお、活性化ガス供給部90から何も供給しない場合には、改質工程を省略することになる。改質工程は、生成した膜を緻密化して高品質化するために行われる選択的な工程であるため、省略することも可能である。
【0061】
第2の処理領域P2を通過したウエハWは、分離ガスノズル41を有する分離領域Dを通過してパージされた後、再び第1の処理領域P1に入る。そして、反応ガスノズル31からSi含有ガスが供給され、Si含有ガスがウエハWの表面に吸着する。
【0062】
以上、回転テーブル2を複数回連続的に回転させながら、フッ素含有ガスを真空容器1内に供給することなく、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを真空容器1内に供給する。これにより、ウエハWの表面に反応生成物であるSiOが堆積し、SiO膜(シリコン酸化膜)が成膜される。
【0063】
必要に応じて、所定の膜厚までSiO膜が成膜された後、反応ガスノズル31からはSi含有ガスの供給を停止し、反応ガスノズル32からは酸化ガスを供給し続け、回転テーブル2の回転を継続することにより、SiO膜の改質処理を行うようにしてもよい。
【0064】
成膜工程を実行することにより、凹形状パターンの1つであるビア内にSiO膜が成膜される。最初にビア内に形成されるSiO膜は、凹形状に沿った断面形状を有する。
【0065】
次に、エッチング工程を実行する。エッチング工程では、SiO膜が、V字の断面形状にエッチングされる。エッチング工程は、具体的には、以下のように実行される。
【0066】
図2に示すように、反応ガスノズル31、32からのSi含有ガス及び酸化ガスの供給を停止し、Arガスをパージガスとして供給する。回転テーブル2は、エッチングに適した温度、例えば600℃程度に設定される。また、回転テーブル2の回転速度は、例えば60rpmに設定される。この状態で、活性化ガス供給部90のシャワーヘッド部93からCF/Ar/Oガスを供給し、水素ガス供給部96からは、例えば予め設定した流量のH/Arガスを供給することで、エッチング処理が開始される。
【0067】
その際、回転テーブル2が低速で回転しているので、SiO膜はV字の断面形状にエッチングされる。ビア内のSiO膜をV字形状にエッチングすることにより、最上部の開口が広い孔をSiO膜に形成することができ、次の成膜の際に底部までSiO膜を埋め込むことができ、ボトムアップ性が高く、ボイドが発生し難い成膜を行うことができる。
【0068】
ところで、エッチング工程においてSiO膜に対してエッチングを行う際、ウエハW面内における回転中心側と外周側との間でエッチング量が異なることがある。そして、ウエハW面内におけるエッチング量が異なると、ウエハW面内のエッチング均一性を確保することが困難である。
【0069】
しかしながら、本発明の一実施形態に係る基板処理装置は、活性化ガス供給部90がシャワーヘッド部93よりも上方に設けられ、シャワーヘッド部93にフッ素ガスを供給可能な配管94と、配管94に設けられ、配管94の内部に水素ガスを供給可能な1又は複数の水素含有ガス供給部96とを含む。
【0070】
かかる水素ガス供給部96から配管94の内部に供給される水素含有ガスは、プラズマ発生室91から配管94及びシャワーヘッド部93に供給されたフッ素ガスに含まれるFラジカルと反応してHF(フッ化水素)を生成する。このため、配管94及びシャワーヘッド部93に供給されたフッ素含有ガスに含まれるFラジカルの量が減少し、Fラジカル主体のエッチング反応をCFラジカル主体のエッチング反応に調整可能となる。
【0071】
ここで、Fラジカルと比較してCFラジカルは、SiO膜をSiN膜やSiに比べて選択的にエッチングする特性を有している。このため、水素含有ガス供給部96を備える本実施形態に係る基板処理装置では、SiO膜のみを選択的にエッチングすることが可能となる。
【0072】
また、配管94に設けられる水素ガス供給部96の位置や水素含有ガス供給部96から供給される水素ガスの流量を調整することで、シャワーヘッド部93から回転テーブル2とシャワーヘッド部93との間の空間に供給されるFラジカルの濃度の面内分布を制御することができる。結果として、ウエハW面内でのエッチング量分布を制御することができる。
【0073】
なお、水素含有ガス供給部96から供給される水素含有ガス流量の調整は、予め設定した流量となるように、制御部100によって制御されてもよく、オペレータによって制御されてもよい。
【0074】
以上、回転テーブル2を複数回連続的に回転させながら、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを真空容器1内に供給することなく、フッ素含有ガス及び水素含有ガスを真空容器1内に供給する。これにより、SiO膜がエッチングされる。
【0075】
次に、再び前述した成膜工程を実行する。成膜工程では、エッチング工程でV字状にエッチングされたSiO膜上に更にSiO膜が成膜され、膜厚が増加する。V字状にエッチングされたSiO膜上に成膜されるため、成膜の際に入口が塞がれず、SiO膜の底部から膜を堆積することができる。
【0076】
次に、再び前述したエッチング工程を実行する。エッチング工程では、SiO膜がV字形状にエッチングされる。
【0077】
以上に説明した成膜工程とエッチング工程とを必要な回数だけ交互に繰り返し、SiO膜内にボイドが発生しないようにしながら、ビアを埋め込んでゆく。これらの工程の繰り返し回数は、ビア等の凹形状パターンのアスペクト比を含めた形状に応じて、適切な回数とすることができる。例えばアスペクト比が大きい場合、繰り返し回数は多くなる。また、トレンチよりもビアの方が、繰り返し回数が多くなることが推定される。
【0078】
このように、成膜工程とエッチング工程とを繰り返したときに、エッチング工程の後の膜上に、パーティクルが多く存在する場合がある。例えば、ある計測によれば、エッチング処理終了直後に140個計測され、エッチング処理終了から5時間後に計測すると26,000個に増加し、エッチング処理終了から8時間後に計測すると350個に減少していた事例がある。かかるパーティクルは、CF等を含むフッ素含有ガスでエッチング処理を行った場合に、エッチングを行った膜にフッ素が残留し、残留フッ素に起因して発生していると考えられる。
【0079】
よって、エッチングされた膜に残留するフッ素を除去する処理を行えば、パーティクルを抑制することができると考えられる。かかる残留フッ素を除去するため、本実施形態に係るパーティクル除去方法では、プラズマ発生室91で酸素含有ガス、例えばAr/Oガスをプラズマ化し、活性化したAr/Oガスを、配管94を介してシャワーヘッド部93に供給するとともに、水素ガス供給部96から水素ガスを添加し、活性化されたAr/Oガスに水素ガスを添加した混合ガスをガス吐出孔193からウエハW上に供給する。かかるパーティクル除去工程では、水素自体は活性化されていないが、活性化されたAr/Oガスに添加することにより、ラジカルの影響を受け、ある程度水素ガスも活性化し、反応し易い状態になると考えられる。そして、フッ素、酸素、水素の間で反応が起こり、最終的にはHFが形成されてSiO膜から離脱すると考えられる。
【0080】
なお、発明者等の実験によれば、図6に示したシャワーヘッドのガス吐出孔193の配置において、ガス吐出孔193aはプラズマ発生室91に連通し、ガス吐出孔193b〜193dはプラズマ発生室91に連通しない構成としたときに、水素ガス供給部96から配管94を介してガス吐出孔193aから供給した場合には、パーティクルを低減させることができたが、ガス吐出孔193b〜193dから単独で水素ガスを供給した場合には、パーティクルを低減させることができなかった。よって、パーティクルを低減させる効果を得るためには、少なくとも活性化された酸素含有ガスに水素ガスを添加することが必要である。これにより、水素ガスが必要な反応エネルギーを得ることができ、残留フッ素の除去に寄与することができる。
【0081】
よって、水素を添加する位置は、酸素ガスが活性化している箇所であればどこでもよく、必ずしも配管94に接続された水素ガス供給部96に限定される訳ではない。例えば、シャワーヘッド部93内で酸素ガスが十分に活性化した状態を保っているようであれば、シャワーヘッド部93内に供給してもよいし、プラズマ発生室91内に供給してもよい。
【0082】
パーティクル除去工程は、具体的には、ウエハWを保持した回転テーブル2を回転させながら、ガス供給管92からAr/O等の酸素含有ガスをプラズマ発生室91に供給し、プラズマ発生室91で発生したプラズマによりAr/Oガスをプラズマ化し、活性化したAr/Oガスを、配管94を介してシャワーヘッド部93に供給する際、水素ガス供給部96から配管94に水素ガスが添加され、水素ガスが添加された活性化Ar/Oガスがシャワーヘッド部93に送られる。そして、シャワーヘッド部93の底面に設けられたガス吐出孔193からウエハWの表面上に形成されたSiO膜上に水素ガスが添加された活性化Ar/Oガスが供給される。これにより、SiO膜上のパーティクルが除去される。
【0083】
エッチング後の膜に、このようなパーティクル除去工程を行うことにより、膜内の残留フッ素を除去し、これにより膜上のパーティクルを除去することができる。
【0084】
パーティクル除去後は、活性化ガス供給部90からのガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を停止させ、回転テーブル2の凹部24上のウエハWを順次取り出し、真空容器1の外部に搬出する。そして、総てのウエハWを搬出したら、基板処理が終了する。
【0085】
なお、本実施形態においては、成膜工程とエッチング工程とを繰り返し、ウエハWの表面に形成された凹形状パターンに埋め込み成膜を行う例について説明したが、本発明はこの点において限定されるものではない。例えば、成膜工程を連続的に行った後、エッチング工程のみを連続的に行い、最後にパーティクル除去工程を行うような順番であってもよい。また、平坦な表面を有するウエハW上にいわゆるベタ膜を成膜し、エッチング工程、パーティクル除去工程を行うようなプロセスを実施してもよい。パーティクル除去工程をエッチング工程後に行う限り、本実施形態に係るパーティクル除去方法及び基板処理方法は、種々のプロセスに適用可能である。
【0086】
また、例えば、予め表面に膜が形成されたウエハWを搬入し、エッチング工程及びパーティクル除去工程のみを行うようにしてもよい。更に、既にエッチングが行われた膜が形成されたウエハWを真空容器1内に搬入し、パーティクル除去工程のみを行うようにしてもよい。このように、エッチング工程後にパーティクル除去工程を行う限り、それ以外の前後の工程は、用途に応じて適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0087】
次に、図9を参照して、本発明の実施形態に係るパーティクル除去方法を実施した実施例について説明する。図9は、実施例に係るパーティクル除去方法を実施した実施結果を示した図である。
【0088】
図6に示す実施例においては、エッチング工程とパーティクル除去工程とを連続して行った。基板処理装置は、図1乃至図6及び図8に示した基板処理装置を用いた。エッチング条件は、基板温度が620℃、真空容器1内の圧力が1.3Torr、回転テーブル2の回転速度が60rpmであった。20nmの厚さを有するSiO膜に対して、83秒の時間で5nmのエッチングを行った。フッ素含有ガスであるCFの流量は、10sccmとした。
【0089】
また、パーティクル除去工程においては、基板温度は620℃、真空容器1内の圧力が1.3Torr、回転テーブル2の回転速度が60rpmである点は、エッチング工程の条件と同一である。シャワーヘッド部93から供給される活性化Ar/Oガスの流量は3500/100sccmであり、水素ガス供給部96から配管94に添加される水素ガスのシャワーヘッド部93から供給される流量は30sccmである。
【0090】
図9において、横軸はパーティクル除去工程における水素の供給時間(sec)、縦軸は、エッチング量(nm)と表面平均粗さRa(nm)を示している。また、曲線Aはエッチング量の特性を示し、曲線Bは表面平均粗さRaの特性を示している。また、点Cは、成膜のみを行った時の表面粗さを示している。なお、膜の平均表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM、Atomic Force Microscope)を用いて観察し、計算した。
【0091】
まず。曲線Aに示されるように、エッチング量はほぼ一定の6nmに設定した、その時のSiO膜の平均表面粗さRaは、0.4前後でほぼ一定である。成膜のみを行った膜Cの平均表面粗さRaは0.17程度であるから、成膜後、6nm程度のエッチングを施すと、膜の平均表面粗さRaが2倍以上増加してしまうことが分かる。
【0092】
曲線Bに示されるように、水素ガスを活性化した酸素含有ガス(Ar/O)に添加して混合ガスをエッチングされた膜上に供給すると、時間が経過するにつれて、平均表面粗さRaが減少していることが分かる。特に、最初の10秒程度は減少の幅が大きい。このように、本実施例に係るパーティクル除去工程を実施することにより、膜の平均表面粗さRaを低減させ、パーテティクルを低減できることが示された。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 真空容器
2 回転テーブル
24 凹部
31、32 反応ガスノズル
90 活性化ガス供給部
93 シャワーヘッド部
193、193a〜193d ガス吐出孔
94 配管
96 水素ガス供給部
100 制御部
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9