(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、20MHzより大きい周波数であって、前記プラズマを生成するための高周波電力を前記第1電極に印加するか、前記第1電極及び前記第2電極に印加するか、又は前記ステージに対向して設けられた上部電極に印加するように制御する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[プラズマ処理装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置1を例に挙げて説明する。プラズマ処理装置1は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなるチャンバ10を有する。チャンバ10は、接地されている。チャンバ10内には半導体ウェハ(以下、「ウェハW」という。)とフォーカスリング16を載置するステージ12が設けられている。ステージ12は、支持体42により支持されている。なお、ウェハWは、プラズマ処理対象である基板の一例である。
【0012】
本実施形態にかかるプラズマ処理装置1は、下部電極としても機能するステージ12と、上部電極としても機能するガスシャワーヘッド40を対向配置し、ガスシャワーヘッド40からガスをチャンバ10内に供給する平行平板型のプラズマ処理装置である。
【0013】
ステージ12は、ステージ12中央のウェハ載置側(以下、「ウェハW側」という。)とステージ12外縁のフォーカスリング16側に分離され、その間は完全に分離されている。
【0014】
ステージ12中央のウェハW側上面には、ウェハWを静電吸着するための静電チャック11が設けられている。静電チャック11は、誘電体15aの中に導電層である吸着用電極11aを介在させて構成されている。静電チャック11は、ステージ12中央のウェハW側上面全体を覆うように配設されている。なお、誘電体15bに吸着用電極を設けてフォーカスリング16を吸着するようにしてもよい。
【0015】
本実施形態のステージ12のウェハW側では、円盤状の第1電極13及び静電チャック11が基台12aの上に設置されている。ステージ12のフォーカスリング16側では、リング状の第2電極14及び誘電体15bが基台12aの上に設置されている。静電チャック11の上にはウェハWが載置される。誘電体15bの上にはフォーカスリング16が設置されている。フォーカスリング16は、ウェハWの外縁を囲むように配置される。なお、基台12aは、誘電体部材から形成されている。
【0016】
誘電体15a及び誘電体15bは、例えばイットリア(Y
2O
3)、アルミナ(Al
2O
3)又はセラミックスにより形成されている。第1電極13及び第2電極14は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、スチール、ステンレス等の導電性部材により形成されている。フォーカスリング16は、シリコン又は石英から形成されている。
【0017】
第1電極13には、第1電力供給装置20が接続されている。第1電力供給装置20は、第1高周波電源21、第3高周波電源22及び第1直流電源25を有する。第1高周波電源21は、主にイオンを引き込むための高周波電力LFである第1高周波電力を供給する。第3高周波電源22は、主にプラズマを生成するための高周波電力HFである第3高周波電力を供給する。第1直流電源25は、第1直流電流を供給する。
【0018】
第1高周波電源21は、例えば20MHz以下の(例えば13.56MHz等)周波数の第1高周波電力を第1電極13に供給する。第3高周波電源22は、20MHzより大きい(例えば40MHzや60MHz等)周波数の第3高周波電力を第1電極13に供給する。第1直流電源25は、第1直流電流を第1電極13に供給する。
【0019】
第1高周波電源21は、第1整合器23を介して第1電極13に電気的に接続される。第3高周波電源22は、第3整合器24を介して第1電極13に電気的に接続される。第1整合器23は、第1高周波電源21の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。第3整合器24は、第3高周波電源22の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。
【0020】
第2電極14には、第2電力供給装置26が接続されている。第2電力供給装置26は、第2高周波電源27、第4及び高周波電源28及び第2直流電源31を有する。第2高周波電源27は、主にイオンを引き込むための高周波電力LFである第2高周波電力を供給する。第4高周波電源28は、主にプラズマを生成するための高周波電力HFである第4高周波電力を供給する。第2直流電源31は、第2直流電流を供給する。
【0021】
第2高周波電源27は、例えば20MHz以下の(例えば13.56MHz等)周波数の第2高周波電力を第2電極14に供給する。第4高周波電源28は、20MHzより大きい(例えば40MHzや60MHz等)周波数の第4高周波電力を第2電極14に供給する。第2直流電源31は、第2直流電流を第2電極14に供給する。
【0022】
第2高周波電源27は、第2整合器29を介して第2電極14に電気的に接続される。第4高周波電源28は、第4整合器30を介して第2電極14に電気的に接続される。第2整合器29は、第2高周波電源27の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。第4整合器30は、第4高周波電源28の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。
【0023】
以上のように、本実施形態に係るステージ12は、ウェハW側とフォーカスリング16側に分離されている。つまり、ステージ12は、上部にウェハWが載置される静電チャック11及び第1電極13と、上部にフォーカスリング16が設置され、第1電極13の周囲に設けられた誘電体15b及び第2電極14とが離間して誘電体部材の基台12aの上に形成されている。
【0024】
また、本実施形態に係るステージ12に高周波電力等を供給する電源系についても、ウェハW側の第1電力供給装置20とフォーカスリング16側の第2電力供給装置26の2系統がそれぞれ独立して設けられている。これにより、ウェハW側の電源制御とフォーカスリング16側の電源制御を別々に独立して行うことができる。
【0025】
第1電極13及び第2電極14の内部には、冷媒流路18a及び冷媒流路18dが形成されている。冷媒流路18a及び冷媒流路18dには、チラーユニット19から適宜冷媒として例えば冷却水等が供給され、冷媒入口配管18b及び冷媒出口配管18cを通って冷媒が循環するようになっている。なお、冷媒流路18a及び冷媒流路18dは、それぞれ別個のチラーユニットに接続され、独立して温度制御可能な構成としてもよい。
【0026】
伝熱ガス供給源34は、ヘリウムガス(He)やアルゴンガス(Ar)等の伝熱ガスをガス供給ライン33に通して静電チャック11の上のウェハWの裏面に供給する。かかる構成により、静電チャック11は、冷媒流路18a、18dを循環する冷媒と、ウェハWの裏面に供給する伝熱ガスとによって温度制御される。この結果、ウェハWを所定の温度に制御することができる。
【0027】
ガスシャワーヘッド40は、その外縁部を被覆する誘電体のシールドリング43を介してチャンバ10の天井部に取り付けられている。ガスシャワーヘッド40は、電気的に接地されてもよいし、図示しない可変直流電源を接続してガスシャワーヘッド40に所定の直流(DC)電圧が印加されるように構成してもよい。
【0028】
ガスシャワーヘッド40には、ガス供給源41からガスを導入するためのガス導入口45が形成されている。ガスシャワーヘッド40の内部にはガス導入口45から導入されたガスを拡散する中央側の拡散室50a及び外周側の拡散室50bが設けられている。
【0029】
ガスシャワーヘッド40には、これらの拡散室50a、50bからガスをチャンバ10内に供給する多数のガス供給孔55が形成されている。各ガス供給孔55は、ステージ12とガスシャワーヘッド40の間にガスを供給できるように配置されている。
【0030】
かかる構成により、ガスシャワーヘッド40の外周側から第1ガスを供給し、ガスシャワーヘッド40の中央側から第1ガスとはガス種又はガス比が異なる第2ガスを供給するように制御できる。
【0031】
排気装置37は、チャンバ10の底面に設けられた排気口36に接続されている。排気装置37は、チャンバ10内のガスを排気し、これにより、チャンバ10内を所定の真空度に維持する。
【0032】
チャンバ10の側壁にはゲートバルブGが設けられている。ウェハWは、ゲートバルブGからチャンバ10の内部に搬入され、チャンバ10の内部にてプラズマ処理された後にゲートバルブGからチャンバ10の外部に搬出される。
【0033】
プラズマ処理装置1には、装置全体の動作を制御する制御部101が設けられている。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、RAM等の記憶領域に格納された各種レシピに従って、ウェハWに所望のプラズマ処理を実行する。レシピには、各プロセスに対する装置の制御情報であるプロセス時間、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種プロセスガス流量、チャンバ内温度(上部電極温度、チャンバの側壁温度、静電チャック(ESC)温度等)等が記載されている。なお、レシピは、ハードディスクや半導体メモリに記憶されてもよく、CD−ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶領域の所定位置に保存されてもよい。
【0034】
なお、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側を分離し、その間に形成された溝17は、真空空間であってもよく、
図2に示すように、アルミナ等の絶縁体9や樹脂が埋め込まれてもよい。アルミナ等の絶縁体9や樹脂が埋め込まれている場合には、第1直流電源25あるいは第2直流電源31のどちらか一方、あるいは、両方の接続を省いてもよい。
【0035】
[効果]
本実施形態に係るプラズマ処理装置1では、ガス供給源41からチャンバ10内に供給されたガスが、第3高周波電源22からステージ12に印加した第3高周波電力HF、及び、第4高周波電源28からステージ12に印加した第4高周波電力HF、を用いて電離や解離することでプラズマが生成され、そのプラズマ中のイオンを第1高周波電源21からステージ12に印加した第1高周波電力LF、及び、第2高周波電源27からステージ12に印加した第2高周波電力LF、を用いてウェハWに引き込むことでウェハWにプラズマ処理が行われる。プラズマ処理の際、
図3の上段に示すように、シース領域SがウェハW上及びフォーカスリング16上に形成される。シース領域Sの内部では、プラズマ中の主にイオンがウェハWに向かって加速する。
【0036】
プラズマ処理の度にプラズマに暴露されるフォーカスリング16の表面は徐々に消耗する。そうすると、
図3の左下に示すように、フォーカスリング16の上部に形成されるシース領域Sの高さは、ウェハWの上部に形成されるシース領域Sよりも低くなる。そうすると、ウェハWの最外周の近傍においてシース領域Sが傾斜して形成されていることから、ウェハWの最外周の近傍では、イオンがウェハWに形成されるホールに斜めに入射する。これにより、イオンにより斜めに削られ、斜めに傾斜したホールが形成される、所謂「チルティング」が発生する。チルティングが発生すると、プラズマ処理の均一性が低下するため、チルティングが発生する前にフォーカスリング16を定期交換し、歩留まりの低下を回避する必要がある。しかしながら、フォーカスリング16の交換周期が短くなることでダウンタイムが長くなると、スループットの低下とともにフォーカスリング16の交換費用が高くなる。
【0037】
そこで、本実施形態の静電チャック11は、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とが電気的に分離した構造となっており、2系統の電源系により、ウェハW側の電源制御とフォーカスリング16側の電源制御を別々に独立して行う。これにより、例えばフォーカスリング16側に印加する高周波電力をウェハW側に印加する高周波電力よりも高くするように独立して制御することができる。
【0038】
例えば、
図3の下段の左側に示すように、フォーカスリング16が消耗した場合、フォーカスリング16のシース領域Sの高さは低くなる。この場合、制御部101は、フォーカスリング16側に印加する第2高周波電力LFをウェハW側に印加する第1高周波電力LFよりも高くするように第1高周波電源21及び第2高周波電源27を制御する。これにより、
図3の下段の右側に示すように、フォーカスリング16の上部のシース領域Sの厚さを厚くすることができる。これにより、フォーカスリング16が消耗する前と同様に、フォーカスリング16の上部のシース領域SとウェハWの上部のシース領域Sを同じ高さに制御することができる。これにより、チルティングの発生を防止し、プラズマ処理の均一性を高め、歩留まりの低下を防ぐことができる。また、フォーカスリング16の交換サイクルを遅くし、フォーカスリング16の交換にかかるコストを低減することができる。
【0039】
[電源制御]
本実施形態では、2系統の電源系を有し、その制御は制御部101により行われる。制御部101は、例えば、第2高周波電源27から出力される第2高周波電力LFを、第1高周波電源21から出力される第1高周波電力LFよりも相対的に高くするように制御する。これにより、フォーカスリング16の上部に形成されるシース領域Sの厚さを、ウェハWの上部に形成されるシース領域Sの厚さよりも厚くすることができる。これにより、フォーカスリング16が消耗しても、フォーカスリング16とウェハWの上部のシース領域Sを同じ高さに制御することで、チルティングの発生を回避することができる。
【0040】
なお、第2高周波電力LFと第1高周波電力LFは、主にシースの厚みに寄与するため、制御部101両方の第1高周波電源21及び第2高周波電源27のそれぞれを独立して制御するようにする。例えば、フォーカスリング16側に印加する第2高周波電力LFを、ウェハW側に印加する第1高周波電力LFよりも高くすれば、フォーカスリング16側の上部のシース領域Sの厚さをウェハWの上部のシース領域Sの厚さよりも厚く制御することができる。
【0041】
具体的な制御方法の一例としては、制御部101は、フォーカスリング16の消耗の程度に応じて、フォーカスリング16側に印加する第2高周波電力LFを徐々に高くする方である。制御方法の他の例としては、予めフォーカスリング16を厚めに作成しておき、制御部101は、初期では第2高周波電力LFを第1高周波電力LFよりも低めに制御し、フォーカスリング16の厚さに応じて徐々に高くしてもよい。
【0042】
制御部101は、イオンの引き込み用に第1高周波電力LF及び第2高周波電力LFを印加するとともに、第3高周波電源22又は第4高周波電源28の少なくともいずれかを制御することで、ステージ12にプラズマ生成用の高周波電力HFを印加する。
【0043】
具体的な制御方法の一例としては、制御部101は、フォーカスリング16の消耗の程度に応じて、フォーカスリング16側に印加する第4高周波電力HFを徐々に高くしてもよい。制御方法の他の例としては、予めフォーカスリング16を厚めに作成しておき、制御部101は、初期では第4高周波電力HFを第3高周波電力HFよりも低めに制御し、フォーカスリング16の厚さに応じて徐々に高くしてもよい。このようにして、第1高周波電力及び第2高周波電力LFに加えて、第3高周波電力HF及び第4高周波電力HFを制御することで、フォーカスリング16側とウェハW側の上部のシース領域Sの厚さの制御性を高めることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、ステージ12のウェハW側に第1高周波電源21及び第3高周波電源22を接続し、フォーカスリング16側に第2高周波電源27及び第4高周波電源28を接続したが、これに限らない。例えば、ステージ12のウェハW側に第1高周波電源21及び第3高周波電源22を接続し、フォーカスリング16側に第2高周波電源27のみを接続してもよい。また、例えば、ステージ12のウェハW側に第1高周波電源21のみを接続し、フォーカスリング16側に第2高周波電源27及び第4高周波電源28を接続し、ガスシャワーヘッド40(上部電極)に第3高周波電源22を接続してもよい。また、例えば、ステージ12のウェハW側に第1高周波電源21のみを接続し、フォーカスリング16側に第2高周波電源27のみを接続し、ガスシャワーヘッド40(上部電極)に第3高周波電源22を接続してもよい。
【0045】
また、制御部101は、第1直流電源25及び第2直流電源31の少なくともいずれかから、第1直流電流及び第2直流電流の少なくともいずれかを、ステージ12のウェハW側及びフォーカスリング16側の少なくともいずれかに印加してもよい。本実施形態のステージ12の構造では、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側が離隔しており、2系統の電源系を用いて別々に制御されるため、第1電極13と第2電極14の間に電位差が生じる。電位差が生じると、溝17の内部の空間にて異常放電が発生する場合がある。よって、制御部101は、溝17の内部において放電現象を生じ難くするために、電位差をキャンセルするように第1直流電流及び第2直流電流の少なくともいずれかを制御することが好ましい。
【0046】
かかる構成のプラズマ処理装置1によれば、2系統の電源系を、ステージ12のウェハWとフォーカスリング16側に独立して設けることで、フォーカスリング16側の上部のシース領域Sの厚さと、ウェハWの上部のシース領域Sの厚さを別々に制御することができる。これにより、チルティングの発生を防止することができる。この結果、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0047】
[他の電源制御]
他の制御の一例として、制御部101は、フォーカスリング16側に印加する第2高周波電力LFを、ウェハW側に印加する第1高周波電力LFよりも低くするように第1高周波電源21及び第2高周波電源27を制御してもよい。これによれば、フォーカスリング16側の上部のシース領域Sの厚さは、ウェハWの上部のシース領域Sの厚さよりもより薄くなる。このような制御は、ウェハレスドライクリーニング(WLDC)時に、ステージ12中央のウェハW側の誘電体15аの最外周の角部に付着した反応生成物を除去するために使用することができる。つまり、制御部101は、ウェハレスドライクリーニング(WLDC)時に、第1高周波電力LFを第2高周波電力LFよりも低くする制御を行う。これにより、フォーカスリング16側の上部のシース領域Sの厚さがステージ12中央のウェハW側の誘電体15аの上部に形成されるシース領域Sの厚さよりもより薄くなる。この結果、ステージ12の最外周の角部(肩部)にイオンを斜めにアタックさせ易くなり、ステージ12中央のウェハW側の誘電体15аの最外周の角部に付着した反応生成物を効果的に除去することができる。なお、ウェハレスドライクリーニングだけでなく、ウェハWをステージ12に載置した状態で行うドライクリーニングを含むクリーニング処理時に、第1高周波電力LFに対する第2高周波電力LFを低くするように制御してもよい。これにより、ステージ12中央のウェハW側の誘電体15аの最外周の角部に堆積した反応生成物を除去するクリーニングを実行できる。
【0048】
上記では、主にイオンを引き込むための高周波電力LFの制御についてのみ記載した。しかし、これに限定されず、制御部101は、フォーカスリング16側に印加する第4高周波電力HFをウェハW側の誘電体15аに印加する第3高周波電力HFより高くするように第3高周波電源22及び第4高周波電源28を制御してもよい。この様に制御することで、フォーカスリング16上のプラズマ密度をステージ12中央のウェハW側の誘電体15а上のプラズマ密度より、より高くし、ウェハレスドライクリーニング時に誘電体15aの消耗を抑えつつフォーカスリング16上のプラズマから拡散してきたラジカルによりステージ12中央のウェハW側の誘電体15аの最外周の角部に付着した反応生成物を効率的に除去することが可能となる。クリーニング処理時には、上記高周波電力LFのみの制御、上記高周波電力HFのみの制御に加えて上記高周波電力LFと上記高周波電力HFを組合わせた制御を行ってもよい。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理装置1によれば、ステージ12をウェハW側とフォーカスリング16側に分離した構造を有し、かつ、2系統の電源系をウェハWとフォーカスリング16側に独立して設ける。これにより、フォーカスリング16側の上部に形成されるシース領域SとウェハWの上部に形成されるシース領域Sの厚さを別々に制御することができる。この結果、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置1によれば、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とを分離した構造とすることで、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の間の熱干渉を低減させることができる。これにより、ステージ12の温度制御を容易かつ正確に行うことができる。
【0051】
[温度制御]
プラズマ処理の均一性を向上させるために、ウェハWの温度に対し、フォーカスリング16の温度を高温で制御したい要望がある。例えば、ステージ12のウェハW側に対してステージ12のフォーカスリング16側の温度を高く制御することで、フォーカスリング16に付着する反応生成物の堆積量を少なくすることができる。これにより、ウェハWの最外周におけるエッチングレートの上昇等を抑制し、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0052】
そこで、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の冷却ラインを独立し、2系統の冷却構造にすることで、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の間の温度差をより容易に制御することが可能となる。しかし、冷却ラインを2系統にするとステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側で温度差をつけたときにステージ12の電気的接触面から熱の授受が生じる。そして、ステージ12のフォーカスリング16側が高温の場合、熱が、ステージ12のフォーカスリング16側からウェハW側に回り込み、ウェハWにおける面内均一性を悪化させ、プラズマ処理の均一性を低下させる。
【0053】
例えば、
図4(a)に示すように、ステージ12に印加する電源系が1系統の第1電力供給装置20のみであり、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とが電極113により少なくとも一部において分離していない構造となっており、電気的に接続されている場合の熱の授受について説明する。冷却ラインが2系統の場合、制御部101は、フォーカスリング16側の冷媒流路18dに流す冷媒の温度を、ウェハW側の冷媒流路18aに流す冷媒の温度をよりも高く制御すると、フォーカスリング16側からウェハW側へ電極113の電気的に接続された部分から熱の授受が発生してしまう。つまり、フォーカスリング16側の高い温度の熱が、より低い温度のステージ12のウェハW側に流れていく。これにより、ウェハWの最外周側がウェハWの中央側よりも温度が高くなり、ウェハW表面の温度分布の均一性が悪くなり、プラズマ処理の均一性が低下する。
【0054】
そこで、本発明の一実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1では、
図4(b)に示すように、マルチコンタクト部材100により電気的接続を維持したまま、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とを直接ふれない構造とし、かつ、ステージ12の材料に熱伝導の低い誘電体材料を採用する。これにより、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とを熱的に切り離す構造にする。これにより、ウェハW表面の温度分布の均一性を高め、プラズマ処理の均一性を向上させる。
【0055】
具体的には、第1電極13と第2電極14を分離し、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側を非接触とすることで、ウェハW側とフォーカスリング16側のステージ12において熱の授受が生じ難くする。この場合、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とを離隔する溝117は、真空空間であってもよいし、
図4(b)に示すように、真空空間の溝117を断熱材125で覆ってもよい。断熱材125は、樹脂、シリコン、テフロン(登録商標)、ポリイミド等の高分子系シートで形成されてもよい。また、溝117には、セラミックス等の誘電体材料が埋め込まれていてもよい。いずれの構造においても、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の間において熱の授受を発生し難くすることができる。
【0056】
また、ステージ12を熱伝導率の低い材料で構成するために、第2電極14は、例えば、アルミニウムより熱伝導の低いチタン、スチール、ステンレス等により形成されてもよい。また、第2電極14は、第1電極13よりも熱伝導率が低い材料で形成されてもよい。第1電極13がアルミニウムで形成され、第2電極14が上記チタンなどで形成されている場合が一例として挙げられる。これにより、ステージ12のフォーカスリング16側からウェハW側への熱の移動をより生じ難くすることができる。
【0057】
さらに、第2電極14の内部には、真空空間120が形成されてもよい。これにより、第2電極14の内部において熱の伝わる断面を減らし、断熱効果を高めることができる。真空空間120には、セラミックス等の誘電体材料が埋め込まれていてもよい。また、真空空間120は、断熱効果を高めるために、熱の授受が生じ易いマルチコンタクト部材100の上方に設けられ、かつ、径方向になるべく広い空間を形成することが好ましい。
【0058】
また、第2電極14と基台12aの間に断熱材110を敷いてもよい。これにより、第2電極14と基台12aとの接触面積を小さくし、熱の伝わりをより抑制するようにしてもよい。断熱材110は、樹脂、シリコン、テフロン(登録商標)、ポリイミド等の高分子系シートで形成されてもよい。
【0059】
マルチコンタクト部材100は、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の電気的な接続を維持するために、第1電極13と第2電極14とをつなぐように、基台12aに嵌め込まれている。
図5にマルチコンタクト部材100の一例を示す。
【0060】
マルチコンタクト部材100は金属から形成され、外周側のリングプレート100aと内周側のリングプレート100bを電線等の金属部材100cで繋ぐ構造となっていてもよい。
図4(b)には、マルチコンタクト部材100の一部の断面が示されている。
図4(b)のマルチコンタクト部材100の底部のA−A部は、
図5のA−A部に対応する。マルチコンタクト部材100は、基台12aに嵌め込まれた状態で、金属部材100cが周方向に均等に配置されている。これにより、プラズマの生成に偏りが生じ難いようにすることができる。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1によれば、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とを離間し、かつ、ステージ12の材料を熱伝導の低い誘電体材料にする。これにより、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側とを熱的に切り離す構造とすることで、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側との熱の授受を生じ難くすることができる。
【0062】
かかる構成に加えて、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の冷却ラインを独立して制御することで、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の間の温度差を正確に制御することができる。これにより、ウェハWの温度分布の面内均一性を高め、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0063】
加えて、本実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1では、マルチコンタクト部材100により、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側との電気的接続を確保する。これにより、1系統の電源系からステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側に高周波電力を供給することができる。
【0064】
ただし、
図1を参照して説明した本実施形態に係るプラズマ処理装置1のように、電源系を2系統にし、マルチコンタクト部材100を設けない構成としてもよい。この場合、ステージ12のウェハW側とフォーカスリング16側の間でより熱の授受が生じ難い構造とすることができる。
【0065】
なお、
図1を参照して説明した本実施形態に係るプラズマ処理装置1において、本実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1のように冷却ラインを2系統にし、冷媒流路18aと冷媒流路18dを独立して制御可能な構成としてもよい。
【0066】
本実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1によれば、上部に基板が載置される第1電極13と、上部にフォーカスリング16が設置され、第1電極13の周囲に設けられた第2電極14とが離間して形成されたステージ12と、主にプラズマ中のイオンを引き込むための第1高周波電力LFを第1電極13及び第2電極14に印加する第1高周波電源21と、第1電極13及び第2電極14に設けられ、それぞれが独立した冷媒流路18a、18dとなる2系統の冷却ラインとを有する。
【0067】
また、本実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1は、誘電体の基台12aの一部を導体のマルチコンタクト部材100で形成し、第1高周波電源21からの第1高周波電力LFを第1電極13に印加することで第2電極14にも第1高周波電力LFを印加する構成とすることができる。
【0068】
さらに、本実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1は、上部電極(ガスシャワーヘッド40)を有し、主にプラズマを生成するための第3高周波電源22からの高周波電力HFを、上部電極、第1電極13、又は、第1電極13と第2電極14、のいずれかに印加してもよい。
【0069】
第2電極14は、第1電極13よりも熱伝導率が低い材料で構成されていてもよい。
【0070】
第2電極14の内部には、真空空間120が設けられていてもよい。
【0071】
第2電極14と誘電体の基台12aの間に断熱材110が設けられてもよい。
【0072】
以上、プラズマ処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明にかかるプラズマ処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0073】
例えば、本発明に係るステージ12の構造は、
図1の平行平板型2周波印加装置だけでなく、その他のプラズマ処理装置に適用可能である。その他のプラズマ処理装置としては、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)装置、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)処理装置、ラジアルラインスロットアンテナを用いたプラズマ処理装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance Plasma)装置、表面波プラズマ処理装置等であってもよい。
【0074】
本明細書では、処理対象の基板として半導体ウェハWについて説明したが、これに限らず、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)等に用いられる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であっても良い。